大変遅くなりましたが、先日訪問してきた福岡と熊本の書店の様子をレポートします。福岡は書店の数が多いので、今回は、昨年行けなかったお店と、リニューアルなどで昨年と様子が変わっているお店に絞って紹介します。(以下、店内の写真は、すべてお店の方に断って撮影したものです。写真は、11/2〜4ごろの様子で、現在とは棚やフェアの様子が変わっている場合があります。)
まずは、福岡編、天神界隈から。天神の書店は、今回は2店をピックアップ。まずは、昨年、ちょうど開店直前の時期にあたってしまって、見ることができなかったリブロ福岡天神店。
↑リブロ福岡天神店。岩田屋本館の7階にある、ワンフロア、330坪のお店。業界紙などの報道で店内の写真を見て楽しみにしていたのですが、期待以上のお店でした。
↑入り口付近。ふつうなら、新刊の面陳か売上ランキングなどに使われそうな場所に、「BOOK WALL」という棚が設けられていて、各ジャンル担当の方のおすすめ本が並んでいます。写真だとちょっとわかりにくいですが、お店の入り口脇の「一等地」に、この本を並べるのか!、といった、いい意味での驚きの本が並んでいたりして、すごくお店の主張のようなものを感じさせる棚になっています。ちなみに、ランキングはこの裏側。右はフェア用と思われる棚。季節が季節なので、今はこのときは日記・手帳。
↑ブックオカの主催イベントは「激オシ文庫フェア」は入り口のワゴンで展開。参加各店でセレクトが違っているので、全部のお店でチェックしたくなります。本には写真のようなフェア帯がかかっています。ちなみに、フリペ展も同じワゴンで展開中でした。フリペもお店によって配られているものが違うのですが、吉っ読の「ブックトラック」は、こちらでに置いていただきました。
この福岡天神店、リブロの他のお店とは什器など、店内の雰囲気がけっこう違っていて、独自な感じになっています。後でふれる「カルトグラフィア」や「わむぱむ」など、池袋本店と同じコーナーがあることから、もっと池袋本店寄りの雰囲気なのかと想像していましたが、同じなのはコーナーの名前だけで、お店全体としては、どこにも似ていない感じになっているように思えました。
↑什器もご覧の通り、この店独自のもので、色味といい、ジャンルガイドの表示といい、なかなかかっこいい。照明も、場所によって違うものが使われていたりなど、こまかいところにも工夫が。
文芸書の棚は、ひと昔前のリブロ池袋本店のそれを思わせるような雰囲気もあったりして、文学好きなら、にやりとさせられるかもしれません。(レギュラーでそうなっているのかはわかりませんが、ぼくが訪問したときは、海外文学の棚前では、パウル・ツェラン全詩集全3巻(!)が平積みになっていました。詩のコーナーは別にあるのに。)
写真は撮れなかったのですが、この文芸の棚の一角に、地元、福岡の作家の棚がありました。しかも、なかなかの充実ぶり。昨年、福岡の書店を回ったときは、地元作家棚・郷土本棚は、あちこちのお店になかったわけではないものの、あまり印象に残らなかったので、こういう棚に出会えるとやっぱりうれしいですね。
文芸以外のレギュラーの棚もなかなかおもしろいのですが、このお店の目玉はやはり「カルトグラフィア」「わむぱむ」といった、池袋本店の遺伝子を引き継ぎながら独自展開させたコーナーたちでしょう。順に見ていきます。
↑「カルトグラフィア」は、店内の中央より少し手前、レジの斜め前あたりにあります。ご覧の通り、レギュラーの棚とは、色味や形状の異なる、ブロックを組み合わせたような感じの什器が使われていて、店内で非常に目立ちます。1つのテーマでまとめられているのではなく、池袋本店1階のような人文をまとめた棚もあれば、フェアに使われている棚もあったりと、複数のテーマが同居、全体として独特の雰囲気を出しています。
↑とくに目を引いたのが、「BOOK COVER EXHIBITION 2012」の副題のある「BOOK at ME.」。B4判オールカラー16ページの立派なフェア冊子(写真中)によれば、《九州のクリエイター100人が「愛した本」のブックカバーをデザインします!!》ということで、その「愛した本」が並べられていました。人気の展示のようで、街を歩いていると、写真右のようなブックカバーセットの袋を持った人を何人も見かけましたよ。
このフェア、「イムズプラザ」がメイン会場のようですが、リブロにもこのような販売ブースが特設されていて、さらに、同店限定ということで、全100作品の「ブックカバーコンプリートセット」も販売されていました。おみやげに買っていこうと思ったら、なんと最後の1セット! 人気なんですねえ。というわけで、こんなたくさんのすてきなブックカバーを独り占めしていてもしかたないので、吉っ読の飲み会か、beco cafeのイベントのどちらかで、ブックカバー好きの方に配布したいなあなどと考えています。
↑開店前後のメディアの紹介記事で、もっとも多く取り上げられたのが、「わむぱむ」のコーナーでしょう。すてきな児童書コーナーはあちこちでたくさん目にしてきたつもりですが、この「わむぱむ」、実際に目の当たりにすると、すごいですよ。きらきらで、楽しくて、いい大人までうれしくなってしまいます。池袋本店のそれとも、まったく雰囲気の違う売場になっています。
円筒状のスペースで、天井はミラー貼りになっています。そこから写真にあるように、たくさんの本がぶらさがっています。棚は天井までの背の高いものですが、本は大人がふつうに手の届くあたりまで。大人の背を超えるあたりの一段には、絵本が面で並べられていますが、その上は空いているので、それほど広くはないにもかかわらず、圧迫感はありません。
写真が中途半端なアングルになっているのは、滞在中、ずっと子どもの姿が絶えなくて、お客さんを入れずに撮影することが不可能だったため。本当は、コーナーの入り口あたりから、全体をとらえた写真も撮ってきたんですが、何人もの子どもたちの姿が、お顔まで含めてばっちり写っていて、さすがに修正しきれず……。写真右は、外側部分で、棚がおもしろい形状になっているのがわかるでしょうか。外側も、高さをうまく使ったディスプレイになっていました。
↑池袋本店B1でおなじみの「アトリエ・ヌーヴォー」。ここだけ、おしゃれ雑貨店のようなイメージになっていますが、店内で浮いているわけではありません。写真手前あたりが実用書(趣味・生活)のコーナーで、料理書なども並んでいるため、お客さんの動線的にも自然な流れになっているようでした。ちなみに、この右奥も出入り口になっていて、エレベータで上がってきた人は、このコーナーが最初に目に入ることになります。
↑天井は高め。棚の上の空きの部分をを活かして、ギャラリーのような使われ方がされていました。写真が飾られているのですが、これは、旧店舗と現店舗の写真なんだそうです。ぼくは目が悪い上に、デジカメのズームではこれ以上寄れなくて、どの写真が何、というのまでは確認できなかったのが残念。
写真右は、通路を使った、「Wall Gallery」。先に写真をあげた文芸書のあたりから見たところになります。このときは写真展が開催中で、点数こそそれほど多くはないですが、コンクリート様の壁にアルコーブのようにあけられたスペースに作品が展示されていて、なかなか雰囲気のある空間になっていました。
生まれ変わったばかりの、地元の老舗デパート内にある書店ということで、幅広い客層に対応する必要があるのだろうと思いますが、単に売れ線のものを並べただけのお店にはなっていなくて、リブロらしさ、それも、池袋本店のいいところをぎゅっと凝縮したうえで、さらにそれを独自展開させたような工夫があちこちに見られ、店内を歩いていてあきません。とても楽しいお店でした。
ただ、おしゃれに走ったり、とんがった方向に行き過ぎたりすると、場所がデパート内だけに、お客さんの求めるものから離れてしまったりがあるかもしれません。特徴的なところを紹介したので、そういう方向に偏ったお店だという印象を与えてしまっているといけないのですが、そのあたり、とてもバランスが取れているお店で、文庫、雑誌、コミック、実用などもひと通り見てきましたが、品揃えや見せ方で、とくに気になるところはありませんでした。
同店で気になることがあるとしたら、1点だけ。それは、お店の認知が十分にされているかどうか、ということ。最初の写真に、デパートの建物の外壁に大きな垂れ幕が出ている様子を紹介しましたが、これは、ぼくのように書店目当てでやってきた者が、そういうつもりで見るから目に入るのであって、誰の目にも飛び込んでくる、というものではありません。
新規店(というには少し時間がたっていますが)をチェックするときは、必ず、周囲も合わせて見るようにしています。街を、建物の周りを、建物の入り口付近を歩いている人が、お店があることに気づくかどうか、というのは重要ですからね。
その意味でいうと、開店から1年経っているからかもしれませんが、「本」と大書された看板が、建物入り口や、建物付近にあるわけではなく、建物内にもありません。夕方の天神界隈の人通りはすごくて、別に街がさびれているとか、繁華街や商店街として機能してないとかではありません。すぐそばの商店街には、手頃なサイズの街の本屋さんが3軒もありますから、そちらで済ませてしまうお客さんも当然いるでしょう。だとしても、もう少しリブロにお客さんが来ていてもいいと思うのですが、残念ながら、それほどの混雑、という感じではありませんでした。
お店の人にも話を聞きましたが、開店1年がたった今でも、「こんなところに書店があったのね」というお客さんが複数いるそうです。実際に、お店の周辺を歩いてみて、そういう人がいるのもわかる気がちょっとしました。
商業施設の都合、周囲のお店・商店街の兼ね合いなどもあるでしょうから、リブロの意向だけでどうこうするのは難しいかもしれませんが、もう少し、地元のお客さんにお店のことを知ってもらうために、何かをしてもいいのかもしれません。デパートの買い物、催事場のついで、ではなく、わざわざ書店を見るために、上まで上がってきてくれるお客さんがもっといていいと、そんなふうに思えるお店だからです。
そのうちに、blog記事で紹介しますが、先日、日比谷シャンテにできた、八重洲ブックセンターの新しいお店を見てきました。「本」と大きく書かれた目立つ看板が、シャンテの入り口にも、建物内1階にも、お店のある3階にもあり、さらに館外、斜め前のTOHO CINEMASの中や建物前の広場のようなところにも看板が出ています。
これだけあれば、ふだんは日比谷シャンテ内に入っていく用事のない、(ぼくのような)お父さんの目にも入るでしょう。開店から時間がさほどたっていないお店と、1年たったお店をそのまま比べてもしかたありませんが、ちょっとリブロを見たあとに感じたことを思い出したので、ふれておきます。
……さらりと仕上げて、福岡は1回でコンパクトにまとめようと思っていたら、リブロだけでこんなに長くなってしまいました。すみません、残りのお店は稿を分けます。