fc2ブログ

空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

神田古本まつり、初日の様子を見てきましたよ

今日から神田古本まつり。一年前に書いた記事を見てみると、昨年は雨に降られちゃったんですよね。今年は、天気に恵まれ、初日は快晴。出店されるお店の方にとっても、我々客・ファンにとっても、うれしい天気になりましたね。天気予報によれば、日月はくもりマークになっていますが、期間中、雨は大丈夫そうな感じ。よかったよかった。


このところ、昼休みに、残業帰りに毎日、露店の台ができあがっていくのを目にしていたんですが、途中の過程もいいものです。こんな感じ。


神田古本まつり2011 露店1

今日は、これらが本でいっぱいになっています。朝、出版健保に行くついでがあったので(インフルエンザの予防接種を受けたのです)行き帰りに、開始前の様子をのぞいてみたんですが、10時にならないうちから、もうたくさんの人が集まっていましたよ。朝の神保町の様子はこんな感じ。


神田古本まつり2011 神保町交差点1神田古本まつり2011 神保町交差点2

↑神保町交差点の青空古本市の様子です。10時前とは思えませんよね。


神田古本まつり2011 露店2神田古本まつり2011 露店3

↑こちらは、靖国通り沿いにずらりと並ぶ露店を違う角度からパチリ。写真のお店は、ブルーシートがかかっていますが、この時間、すでに棚がオープンになっているところもけっこうあって、たくさんのお客さんが本を見始めていました。ぼくも一緒になって見ていきたかったんですが、さすがにそこは昼休みまでガマン。


こういうとき、神保町に職場があるっていいですよね(笑)。我が身の幸運を喜ばねばなりません。というわけで、早速昼休み、靖国にずらりと並ぶ露店、それに、神保町交差点と岩波ブックセンター脇の通りの青空古本市を探検してきましたよ。


もちろん、小一時間では十分に見られるはずもないのですが、そこは勝手知ったる身の強さで、新古が中心っぽいところはとばして、興味のありそうなところを、店名や棚の「色」や雰囲気でセレクト、見るべきところをピックアップして、効率よく回ります。ふふふ、神保町歴、長いからね、これでも(笑)。で、そんなふうにして見て回って目についたものを、ここであれこれあげてしまうと、これからいらっしゃる方の楽しみを奪ってしまうことになってはいけませんから、控えますが、でも、迷ってる方もいるかもなので、ちょっとだけ。(以下、何があった、とか、何を買ったとか、そんなことばっかり書いてますので、興味のある方だけどうぞ。)



全集はひと昔前に比べたら、値崩れがすごくて、神保町ではふだんから安い値段で売られていますが、古本まつり価格になっているのかなあ、いくつか目についたもののなかには、自分で相場だと思っていたのから、かなり安くなっているもの、破格といっていいものもちらほら。三一書房の記事を書いたときに宝物だとした香山滋全集も、ファンとしては悲しくなるような値段で出てたなあ(泣)。全巻揃い、月報付きだよ。間違えてもう1回買いそうになっちゃったよ……。


文学全集以外にも気になる「揃い」ものはいくつかありました。ツルコミック(鶴書房)版のピーナッツの52巻セットがあったなあ。青背の。これ、たまに古本屋さんで見かけますし、中央線沿線のお店で置いているところも知っているんですが、かなり安い値段でしたよ。思わず買いそうになっちゃうぐらいに。


安いのばかりが見つかるわけではありません。高い本の例も。天文・宇宙本好きだけではなく、松岡正剛ファン・工作舎ファン・杉浦康平ファンにも探している人がたくさんいそうな、『全宇宙誌』。それが、ある露店でふつうに棚に並んでましたよ。おお!と、思って確認すると、3万円超……まあ、当たり前ですよね(苦笑)。いくら古本まつり、といっても、このクラスの本が安くなったりはないですよね。さすがに。この値段を出してでも欲しい!という人は、ぜひ会場を探してみてください。


SFファン向けの情報も。野田さんのこの本、探してる人、いないかなあ。『SFパノラマ館』。ものすごくレアな本ではないけれど、状態のいい本はそれなりの値段がするし、Amazonにも、すごい値段の中古があがってたりしますよね。これがリーズナブルな値段で出てましたよ。これ、けっこう探して買ったんだよなあ。探求期間が長かった本って、探していたときの気分が色濃く自分のなかに残っていて、それが入手したうれしさを上回っていたりするものだから、間違えて買いそうになるんだよね。みんな、そうでしょ? えっ、そんなことない? おかしいなあ……。


さて。ぼくが初日に買った本ですが、報告するような大した本、稀少本、掘り出し本はないんだけど、雑本ばかり買ってるのはいつものことだから、気にせずに報告しちゃいましょう。


神田古本まつり2011 収穫3点

左は、尾崎士郎『人間随筆』。もともと関心のある分野ではあったんですが、『昔日の客』(夏葉社)を読んで以来、馬込文士関連が個人的に盛り上がってしまっていて、とくに両尾崎先生(もちろん、一雄先生と士郎先生)の未所有本があると買っちゃうのです。『昔日の客』関連作家のなかには、野呂邦暢のように古書的にいい値段がついている作家もいますが、このお二人の本は(もちろん、ものによりますが)そんなに高くもなく、探せば1000円を切る値段で初版本が買えるんですよね。それらが駄本かというと、そこはさすがにひと昔前の文芸書、装丁・造本がいい感じで、古本の買い物としても楽しめるんですよ。そのへんの新古書店には転がってないけど、神保町や中央線沿線だと割りによく出会うから、適度に探す楽しみも味わえますしね。つまり、素人が古本買いを楽しみやすい要素がそろっていて、いいんですよね。


夏葉社さんの2冊、『昔日の客』と上林暁『星を撒いた街』 を読んで、ああいう世界もいいなあ、あの頃の作家や作品もいいなあ、とひと昔前の「昭和文学」の世界に興味を引かれた方はたくさんいると思います。もちろん、講談社文芸文庫など、今の本で読めるものをあたるのもいいんですが、古本屋さんをちょっとあたってみたら、この2冊の関連の作家・作品に意外に簡単に出会えたりするんですよ。神田古本まつりを一周するだけで、たとえば両尾崎先生の本なら、何冊も手にすることができますから。夏葉社本で古書の世界に興味を持たれた方には、ぜひ神田古本まつりに来てほしいなあ。


真ん中は、奥野健男『北杜夫の文学世界』(中央公論社)。昨日、北杜夫さんの記事を書いたばかりですが、そういうときにこういう書名に出会うとつい手がのびますよね。評論を読みたい気分ではないんですが、この本、対談がけっこう長めに収録されているんですよね。北杜夫さんは文章だけじゃなく、話もおもしろいし、なにしろ相手がただの評論家じゃなくて、交遊のあったお友だちですからね。対談集として読むならいいかなと。これが当たりでした。


帰りに電車のなかで開いてみたら、偶然にも、開いた頁にこんなくだりが。《江戸川乱歩は図書館へ行って読んだ。「芋虫」やなんか、みんな伏字だらけで、〝乱歩のスケベ〟とか、余白にだれからいたずら書きしていた。ただぼくには、どこがスケベなのかわからないのね。怖いとは思うけれど、べつにスケベとは思わなかった。》


このくだりに続いて、「新青年」を読んでた話、小栗虫太郎が「奇怪」だと感じた話なども出てきて、平田晋策の名前まで! まさか、探偵者がうれしくなるような話が北杜夫さんの対談に出てくるとはなあ。うれしい驚きでした。そのほかにも、北杜夫さんの読書歴、マンボウができあがるまで、みたいな話がたくさん出てきます。気心の知れた相手だからというのもあるせいか、気軽な感じで自らのバックグラウンドを開示していて、おもしろい読み物になっていますよ。


右は、これも、最近書いた記事の関連本です。田中冬二『詩集 い夜道』(「青」は旧字)。元版は昭和4年、第一書房刊。もちろん、そんな本が手に入るわけはないので、ぼくにはこの名著刊行会による稀覯詩集復刻叢書(それとも、日本図書センターの愛蔵版詩集シリーズだろうか。でも、装丁が違うからなあ)で十分。


先日、TAKEO PAPER SHOWを見てきた話を記事に書きました。いろいろな人が思い思いの本をセレクト、それが会場で展示されていたんですが、そのなかに、何冊か気になる本がありました。うち1冊が、この『詩集 い夜道』だったんです。選んだのは、林望さん


これ、装丁が、造本が、本文がとってもいいんですよ。こんな感じ。


青い夜道1青い夜道2青い夜道3

ね、いいでしょ。実物を手にしたくなるでしょ。独特の手ざわりの本文用紙といい、活版のでこぼこといい、アクセントで使われた色刷りといい、そして、このタイトルといい、とにかく、意匠が、その組み合わせ方がすばらしい。とっても美しい本なんですよ。


気になって著者名と書名は覚えていたものの、昭和4年の詩集にそう簡単に出会えるとも思えない。そのときはとくに調べもしなかったので、復刻版が出ていることも知りませんでした。そうしたら、いきなり出会っちゃったんですよねえ、今日。


先の北杜夫関連本といい、この詩集といい、なんかあまりにもできすぎなタイミングで出会ってしまって、ほんとにうれしいです。どちらも、別に稀覯本でもなんでもないけれど、こういう、自分だけにとって特別な本と、ふらりと出会えるっていいですよね。これこそ、新刊古本を問わず、書店に通う楽しみの1つだと思うのです。


神田古本まつりは11/3まで。本好き書店好きのみなさんは、ぜひ神保町に遊びに来てください。期間中に神保町を訪れた本好きのみなさんに、幸せな本との出会いがありますように。なお、この2日ほどで急に寒くなりましたから、古本まつりにお出かけになる際は、ぜひあったかい格好で。外で、長時間本を見ているのはけっこう体が冷えますからね。



コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://sorainutsushin.blog60.fc2.com/tb.php/1731-80589694
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)