黒人音楽好き、ブルース者にとっては必携の定番、『ブルースCDガイド・ブック』の新版が出ましたね。
- 小出斉 『ブルースCDガイド・ブック2.0』(ブルースインターアクションズ)
旧版が出たのが1995年。当時、実はわたくし空犬も別の本の仕事で、このガイドの著者、小出さんと音楽本の仕事をしていたのです。お会いするとき、このCDガイドの打ち合わせと前後になったりすることがあり、どこまで進んだ、とか、何を取り上げた、とか、あのジャケ写はガイドで使うから早く戻して、なーんて話をしたのをなつかしく思い出します。
そんなわけで、旧ガイドはこの10年ほど愛読愛用してきた本なのです。だから、新版の登場はうれしい。うれしいのです。「最新情報を盛り込み、ほぼすべてを加筆・修正」などと内容紹介にあれば、これは買わねばと思うのです。思うのですが、その一方で、困ったなあ……という気持ちもあるのです。
愛用の辞書をお持ちのみなさんならおわかりでしょう。辞書の改訂版が出ると、当然内容は新しくなっているし、間違いなども正されているかもしれないしで、使うには新しいほうがいいに決まっています。しかし、元版がまっさらなまま、なんて人はともかく、元版を愛用した人、使いまくった人ほど、元版から簡単には乗り換えられないのです。線を引いたり、書き込みをしたり、時には間違いを書き直してみたり、足りないものを追加したり、折ったり付箋を立てたり……そうして使い込んで小口が黒ずんだ辞書やリファレンス図書にはやはり愛着があるものです。
当方の『ブルースCDガイド・ブック』旧版もまさにそのような状態です。ブルースをもっとも熱心に聞いていた数年間(今も好きですが、仕事で関わっていた数年は確実に人生のなかでもっともブルース漬けでした)を共にしたガイドなのです。
というわけで、書店の音楽書コーナーで手に取るたびに、はあー、とため息をついています。ブルース者には悩みが絶えません。
◆今日のBGM◆
- マジック・サム『ウェスト・サイド・ソウル』