2006.08.25.発行「[本]のメルマガ」vol.259(ID:0000013315)を読んでいたら、新刊書店の開店閉店の記事の1つに、8月10日リニューアルオープンした香川県高松市の宮脇書店総本店のことが載っていた。気になりながら紹介しそこねていた話題なので、ここであらためて。
宮脇書店は、東京には2店舗しかないので(東京に店があること自体、いまHPで見て初めて知った)、東京近辺の本好きにはあまりなじみのない名前かもしれないが、全国に320店舗も展開しているチェーン店だ。
今回、リニューアルオープンした総本店は、売場面積2000坪。娯楽要素も兼ね備えた「本のテーマパーク」をうたっていて、屋上に観覧車があるのが話題になっているようだ。なんで書店に観覧車が、とかえって色つきの目で見てしまいそうな本好きもいるかもしれないが、いやいや、サイトで見るかぎり、観覧車はあくまでもおまけみたいなもの、約60万点という在庫、日本最大をうたう展示スペース、専門書の充実、特定の出版社と協力したブース展示「パブリッシュ・タウン」、地方限定出版物の展示「ふるさと図書コーナー」などなど、大型書店の王道とも言うべき、読書人のニーズを全面的にカバーしようという意気込みの感じられる、しっかりしたリニューアル内容になっている。この流れならば、訪問者についでに楽しんでもらおう、という観覧車、というかプレイグラウンドの設置もうなずける。子どもや家族客を呼ぶのは書店にとって大事なことだから。
ところで、「[本]のメルマガ」は同じ号で、「私の〈理想の書店像〉」をテーマに読者投稿を募集している。「屋上に観覧車を設置して、その中で本が読みたい!」なんて書いたら笑われそうだけど、こうして読者が思いつくより先に書店戦略で実現している例だってある。つまり、なんでもあり、ということだ。書店へのリクエストというと、在庫やディスプレイ、注文への対応など、当たり前のことばかりつい出てきてしまうが、書店が居心地のいい空間であるためには、娯楽面での充実を望んだっていいのである。まあ、そこらじゅうの書店に観覧車は要らないけど、でも、そういう書店があったら楽しいよね。
なんて話を書いてたら、今日の朝日新聞の夕刊に、「売り場に工夫『雑貨書店』 輸入玩具・カメラ・花…着物姿の店員も」なんて記事が載っていた。要するに、本の品揃え勝負はネット書店への対抗という意味では限界がある、だったら本以外の要素の充実で「楽しめる空間」作りをしましょう、ということらしい。
その手の本屋さんとしてはすぐにヴィレッジ・ヴァンガードが思い浮かぶが、今回の記事では、青山ブックセンター六本木店、今年神田小川町にできた歴史書専門の時代屋、ブックスキディランド亀有店、トーキョーヒップスターズクラブが紹介されている。
「わざわざ足を運んでもらうためには、楽しめる空間がないと」とは、時代屋グループの代表の言葉。本屋さんが本以外のものに力を入れないとお客さんに来てもらえない、というのは皮肉な話だが、でも、これも観覧車の話と同じ、品揃えの充実、見やすい棚構成、専門や得意分野の有無といった、まずは書店としての根幹がしっかりした店に、魅力的な付加価値が加われば、「わざわざ足を運」びたくなる、「楽しめる空間」が生まれるのかもしれない。それはたしかにそうだろう。でも。
一方で、書店さんにはやっぱり本で……ツボを得た品揃え、魅力的な棚作り、個性的なポップ、etc.……勝負してほしいとも思う。書店さんが「楽しめる空間」になることは大歓迎だけど、でも、雑貨なんてぜんぜんない、本だらけの空間を楽しんでいる本好きがいることも忘れずに、魅力的なお店作りの工夫をしてほしいなあと思う。
◆今日のBGM◆
- 小野リサ『QUESTA BOSSA MIA...』