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空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

澁澤、ガラパゴス、ダーウィン……最近買った新書たち。そして、がんばれ光文社

最近、よそで見かけないビールがよく置いてある近くのコンビニに寄ったら、またしても新たな銘柄が。「全国第一号地ビール」なるコピーが缶に踊るエチゴビールビアブロンド。グラスに空けるとなかなかにいい色で、味も悪くない。


こうして次々にいろんなビールを手軽に試せるのはいいことなんだけど、よく考えればわたくし、節麦酒を宣言している身。まるで誰かが当方の節麦酒作戦を妨害しているかのような事態なわけで、その意味では困ったこととも言えるなあ、などといいながら、グラスを傾けている空犬です。


さて、今回のお買い物は新書ばかり3冊。


  • 澁澤龍彦・澁澤龍子・沢渡朔 『澁澤龍彦 ドラコニア・ワールド』(集英社新書ヴィジュアル版)
  • 日本ガラパゴスの会『ガラパゴスふしぎ ゾウガメが1千キロの海を越えた方法は?』(サイエンス・アイ新書)
  • 渡辺政隆『ダーウィンの夢』(光文社新書)



何度も書いてることですが、新書の熱心な読者ではないもので、同じ月の新書新刊に3冊も読みたいものがあるなんて、めずらしい事態です。


集英社、直筆原稿を新書にするというおもしろい試みがありましたが、今度は澁澤できましたか。集英社のヴィジュアル版、中公のカラー版にはときどきいいものが出るので、新書にあまり興味のない当方もちょっと気になります。


ヴィジュアルものの新書といえば、このサイエンス・アイ新書は、テーマ設定といい、ヴィジュアルの多用といい、やさしめの文章といい、ぼくのような「理系ネタに興味はあるんだけど知識の範囲と理解能力は典型的な文系」という素人にもわかりやすい新書シリーズで、けっこう何冊も読んでいたりします。ブルーバックスのやさしめ版という感じでしょうか。ガラパゴス好きとしては、この値段この内容なら即買いですね。


ガラパゴスといえばダーウィン。光文社のPR誌『本が好き!』で楽しみにしていた連載が新書にまとまったのが『ダーウィンの夢』。


ところで、光文社といえば、今朝、いつものように新文化を眺めていたら、こんなニュースが。「光文社、早期退職者50人募る」(3/17新文化)。同じ出版業界で働く者として、そして出版文化を深く愛する者としては、大変にショックなニュースです……。



「出版不況」ということばが一般に浸透してしまって久しいわけで、次々にいろんな版元が倒れたり、雑誌が休廃刊になったりしていることは業界外の方でもふつうに知っていること。でも、光文社のクラスのメジャー出版社の苦境が、噂レベルではなく、このような具体的な数字や施策とともに報道されたのは、初めてではないでしょうか。もちろん、小さなところ、マイナーなところだったら何かあってもいい、とか、そんなことを言いたいわけではありません。ただ、やはり読者や業界に与える影響が大きすぎると思うのですよ、このクラスの版元に何かあったりしたら。


だって、光文社ですよ。『週刊宝石』『FLASH』『JJ』……それぞれに一時代を築いた雑誌をいくつも抱えた版元ですよ。雑誌だけじゃありません。エンタメ・雑学系新書のパイオニアにしてベストセラーの宝庫だったカッパブックス。そして、そのカッパブックスのフィクション部門として創刊され、清張や小松左京らのベストセラーを生み出し、昨年末に創刊50周年を迎えたカッパノベルス。


いずれも出版史に確実に名を残す、そうそうたる出版物でありシリーズです。それらを手がけてきた版元、それが光文社ですよ。そんな版元が、まさかこのような事態に陥るとは……。『本が好き!』の休刊もあったし、いろいろ業界の噂が聞こえてこなかったわけではありません。でも実際このように報道されると、やっぱりショックは大きいですね。




光文社の出版物、ほかにもいろいろありますよ。最近は少し落ち着いてしまいましたが、一時期の光文社文庫の探偵路線は、我々探偵者を狂喜させてくれたものです。江戸川乱歩、決定版といっていい内容の文庫版全集。そして、ミステリー文学資料館名義の数々のアンソロジー(とくに「幻の探偵雑誌」『甦る推理雑誌」のシリーズ!)。乱歩者・探偵者は足を向けて寝られません。山田風太郎もありましたし、シャーロック・ホームズの新訳シリーズもありました。




そうそう、新訳といえば、そのブームに大きく寄与したのが光文社古典新訳文庫。洒脱なデザイン、そして、すれた本好きもうならせたセレクトは、出てきた当時は実に新鮮でしたね。途中誤訳論争などもありはしましたが、今でも文庫レーベルの魅力はあせていないと思います。




光文社のみなさん、今は苦しいかもしれませんが、これまでの出版活動を見てきた読者や同じ業界人たちは、みんな応援していると思いますよ。だから、ぜひ、ここはふんばって、また魅力的な雑誌や書籍をたくさん作り出せるようになってください。一読者として、同じ出版界で働く者として、応援しています。がんばれ、光文社


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