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空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

珈琲か麦酒か、それが問題……かもしれない

先日購入本として紹介した山川直人『コーヒーもう一杯』(エンターブレイン)を読了。いやあ、これ、いいですね。


ふだんほとんどコミックを読まないので、コミックとしての出来についてはさっぱりわからない。でも、個人的にはとても好きな世界でした。



良質の短篇に珈琲のうんちくが絶妙にからんで切ない余韻を残す、表題作で最初の一編から惹かれました。続く、街角で歌う素人歌手と不思議な子どもとの出会いを描く1編もいい。離婚家庭の父親の古本趣味が出てくる「バビロン再訪」もgood。作家の趣味なのだろう、どの作品も小道具や舞台がいい味を出しています。神保町を思わせる街が出てくるし、実際、神保町に実在する古書店、喫茶店を思わせるような店も出てくる。作品に出てくる書名や、喫茶店の店内の様子といった細部に注目して読むのもおもしろい。


正直なところを言うと、絵柄があまり好みでないこと、一つだけ残念な点があるとすればそれだけ。ただ、版画のようなあたたかみのある感じなので、これはこれで魅力に感じる人もいるだろうから、良し悪しというよりは、単に好みの問題です。


ときどきCoffee Breakとしてはさまれる訥々とした短文もいい感じ。なんだか趣味の合いそうな人だなあ、などと勝手なことを思いながら読みました。あと、挟み込みの読者アンケート葉書が、表裏とも著者の描き文字によるものなのも、この本の雰囲気にぴったり。これ、目を引くし、いいアイディアだと思うけれど、この本を気に入った人、ファンの人なら手元に置いておきたくなってしまい、結果、アンケート葉書が返ってこない、ということになりはしないかしら。と、心配になるぐらい、あたたかい感じの葉書です。


ところで、偶然というのは重なるものですね。この本を手にするまでまったく知らなかった名前に、同じ日に立て続けに出会うことに。「[書評]のメルマガ 」(『まぐまぐ』メルマガID:0000036518)の最新号を読んでいたら、8月20日に、阿佐ヶ谷の「よるのひるね」で、マンガ家の藤本和也さんと講談師の旭堂南湖さんのトークが行なわれるのだとか。イベント名は、「第1回『藤本・南湖の茶のみ咄』~縁側の企画会議~」。この回のゲストが、山川直人氏だそうです。転載禁止とあるので、メルマガの紹介文を引けないのが残念だが、興味のある方は、メルマガのサイトで調べてみるといいでしょう。


この本を読むと、自分で珈琲を淹れて飲みたくなります。ところで、みなさんは、本を読むときの飲み物は何派でしょうか。ぼくはほとんどの場合、麦酒と珈琲です。外ではもっぱら珈琲ですが、自宅読書はたいてい夜で、夜は珈琲は飲まないので、もっとも多いのは麦酒を飲みながらの読書、ということになりそうです。


麦酒読書はとても幸せな時間なのですが、難があるとすれば2つほど。1つは、本を汚してしまうことがあること。ふつうのビールの「はね」ぐらいならすぐにふけばいいのですが、ぼくの場合、黒ビールというのが好きなもので、こいつははねたりこぼしたりすると、大変やっかいです。あと、何かつまみながらということも多いので、食べ物付きのときはやはり要注意です。たしか、リリーさんが本屋大賞をとったときのコメントだったでしょうか、調べずに書くので間違っているかもしれませんが、ポテトチップの脂のついた手でさわられないよう白い装丁にした、という主旨の話をしていたと読んだ記憶があります。ベストセラー作家がこういうことを気にするぐらいだから、カウチポテトの読書版を楽しむ人は多いのでしょう。


もう1つは、読書と飲酒の両立、の問題です。麦酒を飲みながらの読書の場合、仮に飲み始めの時点の理解度というか頭脳明晰度を100とすると、缶(または小瓶)が何本か空くころには、確実にそれは半分、へたすると30ぐらいにまで低下しているわけです。はたして、そのような場合、最初の読書と終わり近くの読書は、同等の行為なんでしょうか。つまり、ある本を読んでいて、クライマックスにさしかかったとします。まあ、終盤、5分の4ぐらいのところでしょうか。その時点で、ぼくの脳の7割ぐらいがアルコールの影響下にあった場合、ぼくはその本を、本当に楽しめたことになるのか、本当に読めたことになるんでしょうか。むずかしい問題です。


ですが、まあ、それはよしとすることにしましょう。なぜなら、これを書いているぼくが、いまや、アルコールの影響下にあり、おそらくは飲み始めを100とすると、今や50を切っている気がするので、些末なことなど、どうでもよくなってきているからであります。


みなさんも、読書中の飲物の選択にはじゅうぶんに気をつけてください。って、いったい何について書いているのかよくわからない文章になってしまいました。あしからず。


◆今日のBGM◆

  • ボブ・ディラン『欲望』(ソニー)

今日はもちろん、これ。理由は、今日紹介した本の書名を見てピンとこない人は、ぜひ本を読んでたしかめてください。



コメント

コーヒーもう一杯

ぼくもこの本は読みました。
 悪くはないんですが、西岸良平さんの『三丁目の夕日』に似たテイストでありながら、『三丁目の夕日』よりも高級気取りですかしている感じがあって、絶賛というわけにはいきません。
 ただ、この作品の影響で今ではすっかりブラック党になりました。

  • 2006/08/14(月) 11:15:45 |
  • URL |
  • じっちゃん #4o1CV0zs
  • [ 編集 ]

なるほど

コメント、ありがとうございます。なるほど、そういうふうに感じられたりもするんですね。
ちなみに、この作品の影響、というわけではないのですが、ぼくもブラック党です。

  • 2006/08/15(火) 00:17:10 |
  • URL |
  • 空犬 #-
  • [ 編集 ]

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