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空犬通信

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『ハイキック・ガール』礼賛(したかった……)

またこんなんばっかり観て、とか言われそうですが、はい、観てきました。



『チョコレート・ファイター』と並ぶガールファイトものとして、大変に楽しみにしていたのです。ところが……うーん、ボンクラ映画には大変に寛容なほうだと思うのですが、期待が大きすぎたのものあってか、正直なところ、ちょっとがっかり……。



↑このシーンはよかったんだけどなあ……。


以下、そのがっかりの理由含め、映画の内容にふれますので、未見の方はご注意を。



がっかりの理由はいくつかありまして。まず、主人公に感情移入できない。主演の武田莉奈ちゃん自身は、強いし、蹴りのフォームもきれいだし、絵に描いたような美少女でない点もむしろ好印象だったりしていいんですが、役柄がなあ。自分の強さをひけらかす、小生意気な娘で、まったく感情移入できません。なので、彼女が闘っても、いっこうに応援気分にならないもので、アクションにカタルシスがないんですよねえ。


ジージャーはその点、可憐なルックス、不幸な生い立ちとハンデを背負っていること、守りたいものが明確であること(家族)の黄金3点セット。映画開始後いくらもたたぬうちに、男子は全員、ジージャー応援団に入団している始末。だから、格闘シーンになると大変です。男子は全員、(心の中で)拳をにぎりしめ、ジージャーが敵をやっつけるたびに、「よっしゃあ!」とか(心の中で)叫びながら応援していたりしますから。


理由その2。アクションシーンが少ない。前半はいい調子だったんですが、「壊し屋」(いちいち説明しませんが、要するに悪役集団)につかまって以降は、武田莉奈本人が活躍する格闘シーンがほとんどない。誰が闘っているかというと、ぜんぶ師匠(演ずるは中達也)だったりするのです。


理由その3。敵がいまいち。敵が「壊し屋」なる集団で、昔のカンフー映画みたいに、敵が出てくるたびに、「拳牙」とか「跳猿」とか、ゲームチックな名前が、いちいち字幕で表示されるんですね。それはいいんですが、なんか人数が多すぎるうえに、1人1人は意外にあっさり負けちゃったりするものだから、印象に残らないのです。「最強何人衆」とかにして、得意技やファイトスタイルをもっと明確にし、それぞれのキャラをもっと立たせて、1人1人をもっと活躍させてもよかったのでは、などと思います。


まったくの余談ですが、この「壊し屋」のなかで、個人的にいちばんよかったのは、道場破りのシーンに出てきた「跳華」。見た目はギャルなのに、くるくるととんぼ切りまくって、プロレスのジュニアヘビー級の試合でしか見たことないような、派手な回転蹴り技(大車輪キック!)を次々に披露。すばらしい動きでした。おいしいキャラなのに、登場はこの場面のみ……。武田莉奈との対決シーンを用意しないとはいったいどういうことですか……。


あと、敵集団との対決もね、ヒロインがぜんぜん闘わないのはまあ師匠のがんばりで許すにしても、ラストが決定的に盛り上がらないんですよ。こいつが最後に出てくる最強の刺客なんだろうなあ、という感じで画面に映っていた悪役が、なんかあっさり負けちゃうんですね。しかも、いきなりピストル持ち出したりして、格闘シーンすらなし(伏線はあったから、そうだろうな、とは思ってたけど……)。


やはりここは、ベタと言われようがなんだろうが、最後は、絵に描いたような「最強の敵」に出てきてほしかったなあ。っていうか、そうすべきでしょう。格闘もののお約束として。


ここはさ、やはり、こんな感じにすべきでしょう(以下、空犬の妄想)。
「壊し屋」たちに囚われた武田莉奈を救うべく、独り敵陣に乗りこんできた師匠。師匠は、「壊し屋」たちを独りで次々に倒していく。しかし、いくら雑魚相手とはいえ、二十数人を相手にし、徐々に疲れの見えてきた師匠。
そして、とうとう最後の1人となった相手と対峙。「壊し屋」最強の刺客である。最後の敵は、あまりにも強い。一進一退の攻防のなか、徐々に追い詰められる師匠。師匠、大ピンチ!
師匠の闘いぶりを見て、真の強さとは何かに目覚めたヒロインは、師匠を救うために、かなうはずのない相手と知りながら、決死の闘いを挑む。圧倒的な力の差に追い詰められるヒロイン……。
だが、土壇場で復活した手負いの師匠と力を合わせ、合体技を繰り出し、二人はとうとう最強の敵を倒す。師匠の胸にとびこむヒロイン……。


……どうですか、これ。こんな感じの格闘シーンと、傷だらけのヒロインのほおに浮かぶ涙とかで終わっていたら、ボンクラ男子は全員スタンディングオベーションだったのではないかと思うのですよ。


ちなみに、本物のラストはどうだったかっていうと、道場で師匠が白帯に戻っていちから修行をやり直すことになったヒロインに稽古をつけてる場面で終わります。作中、やたらに空手の精神論みたいなのが語られるので、ちょっと嫌な予感はしてたんですが、教育映画じゃないんだからねえ(苦笑)。ヒロインが実際の女子高生なら、教育的指導と精神論で終わってもいいのだろうけれど、映画、それもアクション映画としては間違っていると言わざるを得ません。


と、理由はいろいろあるのですが、あと、格闘シーンがやたらに(全体の8割ぐらい?)スローモーションで再現されるのもよしあしかもしれません。これ、マジであたってるよ、みたいな場面が次々に見られるのはいいんですが、ここぞというシーンだけならともかく、さして魅力があるとも重要とも思えない格闘シーンまでやたらにスロー再生されるものだから、アクションシーンのスピード感が失われることはなはだしいんですね。やっぱりスピード感って大事だと思うのです。実際はどうなってんだかわからないが、圧倒的なスピード感ですげー、みたいに思わせるのも、この種の映画の醍醐味だと思うんですよね。主人公が動いたら、一瞬で、周りに人がばたばた倒れてた、みたいなギミックって、やっぱり必要ですから。全部スロー再生してくれなくてもいいんですよ。


しかし、『ハイキック・ガール』について、延々とこんなこと書いてる四十男も、我ながらほんとどうかと思いますが、脳内の映画観劇を司る部分の成長はずっと以前に止まっていますから、許していただきたいのであります。



◆今日のBGM◆


  • Jeff Beck『Wired』



大変、ショックです……。「<プロレスラー>三沢光晴さん死亡 試合中倒れる 広島」(6/13付毎日新聞)。


地上派の放映が打ち切られる前から、ぜんぜん観ていませんでしたが、それでも、80~90年代にそれなりにプロレスを観ていた者にとって、特別なレスラーであることは変わりありません。2代目タイガーのデビューも、マスクをとった試合も、鶴田から初めてフォールを奪った試合も、リアルタイムで観てるなあ……。


すばらしい試合の数々を残してくれた三沢光晴さんのご冥福を心からお祈り申し上げます。ありがとう。今晩は、三沢さん(という「さん」付けがなじまない。やはりレスラーは呼び捨てが似合うのです)のテーマカラーであったgreenを曲名に持つ、このやさしいメロディのインスト「Love is green」を、勝手に追悼曲としてピックアップ、独り聞きながら、YouTubeで観られる試合を眺めたいと思います。



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