あああ、こんなものが出てしまうんですか……。
- 『定本 久生十蘭全集』全11巻(国書刊行会)
東京国際ブックフェアの国書刊行会のブースで発見した内容見本です。
没後50年ということで、こんな本たちが出たりしてましたから、今年はほかにも何かあるかもなあ、ぐらいには思ってたんですけどね。まさか新全集とは。このご時世によくぞ、という思いを禁じ得ません。版元、国書刊行会の英断に、ファンの1人として、心から拍手を贈りたいと思います。
久生十蘭、大好きなんです。もちろん、三一書房版『久生十蘭全集』も、薔薇十字社/出帆社の『コレクシオン・ジュラネスク』も、教養文庫の『久生十蘭傑作選』も、その他関連本もろもろも全部持ってます。「湖畔」なんて、いったい何度読み返したことか。特別な作家の1人、なんですよ。だから。だからこそ、新全集の刊行はうれしいというかなんというか、大変フクザツな気分……。
旧全集の倍の分量で、しか未収録作が小説だけで40数作、さらにそのうち11は長編だというのですから、これはもうファンとしては買わないわけにはいかんでしょう。しかしなあ、9,975円が11冊ですか。しかも、A5判函入りで一巻約650頁。物理的にも経済的にも被害甚大ですなあ……。それに、重なったからって、三一版全集も処分できないしなあ……。
いきなり全集で買うような人はまあいないと思いますが、もしも未読か、かじったぐらいであまりよく知らないけど興味あり、という、“これから十蘭”な幸福な読書人がいらっしゃったら、まずは上の全集内容見本をゲットしてください。この冊子自体がすでにすばらしい出来になっていて、久生十蘭がどんな作家なのか、そのすごさ、その評価の高さを一覧できます。購買欲を強烈に刺激されること請け合いです。本文組見本として名作「湖畔」の冒頭が掲載されてますから、未読の人も既読の人もまずはこれをお読みいただきたい。この書き出しの2行、100回ぐらい読んでますが、それでもやっぱりたまりませんよ。
ちなみに、三一版全集の内容見本はこれ。古本(なんだったか忘れましたが、久生十蘭本ではなかった)を買ったら、これがはさまってたんです。あまりのうれしさに、その晩は独りで乾杯してしまいましたことですよ。