もう、あまりにも最高でした。本年のベスト3入り、確定。
- 『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』(監督:エドガー・ライト)
DVDスルーされそうになったのが、熱心なファンたちによる公開を求める署名運動によって劇場公開が実現したということで、メディアでは話題になりましたね。ほんと、こんなすばらしい映画が、こんな映画らしい映画が、こんな映画好きのための映画が劇場にかからないなんて、絶対にそんなことがあってはいけません。
R-15のスプラッターな刑事アクションコメディって、なんかジャンルの説明になってるんだかなってないんだかわからないところがいいですよね。
80~90年代の大味なハリウッド製刑事アクションのパロディかと思いきや、これ、オマージュなんですよね。もちろん笑いにしている部分はたくさんあるんですが、なにより先行作品への深い愛が感じられるです。作中に登場する『ハートブルー』や『バッドボーイズ2バッド』なんてのは、とても名作なんて呼べない作品たちですが、監督のエドガー・ライトがこれらの作品をこよなく愛しているのが、実にようくわかる使われ方になっていて、なんか妙な感動を覚えます。
このあたりの先行作品の影響というか「ネタ」については、別に知らなくても十分に映画を楽しむことはできますが、知っていれば楽しみが増すことは確実なので、『映画秘宝』2008年6月号で予習しておくといいでしょう。
監督のエドガー・ライトの映画愛は、刑事アクションにだけ向けられているわけではありません。なにしろ、『ショーン・オブ・ザ・デッド』の人ですからね。ホラー映画ネタもいろんなところにちりばめられています。こまかくは挙げませんが、ガーデニングショップの女主人が植栽ばさみで殺されるシーンは凶器といい角度といい『バーニング』っぽい。教会の前に立っている新聞記者が上から落ちてきたもので殺されるシーンはもちろん『エクソシスト』を思わせますね。場面といい台詞といい、全編にこういう小ネタが仕込まれていますから、ほんと映画好きにはたまりませんよね。
DVDが出たらすぐに買って、10回ぐらい観て、トリビアを楽しみまくりたいです。そういうDVDで監督のオーディオコメンタリーを楽しみたくなるタイプの作品なんですが、小ネタとお笑いだけではありません。アクションシーンもかなり力が入っていますし、ちゃんとカーチェイスもあります(70年代のニューヨークとかサンフランシスコじゃなくて、舞台がイギリスの片田舎で、しかも白鳥を乗せてたりするのがおかしい)。そういう部分も含めて楽しむには、やはりまずは劇場で観るべきでしょう。関東エリアの方は、渋谷のシネマGAGAに全速力で駆けつけてください!
ちなみに映画の半券があると、まもなく公開のブラック兄貴の新作『テネイシャスD 運命のピックを探せ』(シネクイント)が割り引きで観られるようなので、捨てちゃわないようにしてください。