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空犬通信

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国書刊行会が創業50周年……記念小冊子が発行されました

みんな大好き、国書刊行会が創業50周年、ということで記念の小冊子が発行されましたね。



国書刊行会50周年記念冊子

40周年の時も同様の冊子が刊行され、そうそうたるメンバーが私を3冊を選んでいたのですが、今回も同じく、各界の国書者のみなさんが、私の3冊をセレクトしています。


3冊といってもシリーズや叢書がオーケーなので、全集叢書ものの多い国書刊行会ですから、選ぶ側も、けっこうな割合の人が、叢書まるごとをあげていたりします。


一方で、《十年前、『私が選ぶ国書刊行会の3冊 国書刊行会40周年記念小冊子』を読みながら、姉が「『3冊』って言ってるのにみんな叢書やシリーズをまるごと選んでいてずるい、そりゃ国書の本から3冊しか選べないなんて大変だから、全何十巻みたいなのを選びたくもなるけど」と理不尽に憤慨していたのをよくおぼえている》と書く川野芽生さんのように、3冊にこだわる方もいます。やっぱりこういう時は3冊に絞ってみたい(それがいかに困難なことであっても、というか、困難だからこそ)ところですよね、本読みとしては。それもプロの本読みならば。


というわけで、誰に依頼されたわけでも尋ねられたわけでもないけれど、ぼくがいま、国書刊行会の3冊を上げるならばどんなセレクトになるか、考えてみました。3日くらい(空犬主観)悩んだ結果がこちらです。



1冊目は〈探偵クラブ〉の『天狗』。大坪砂男の著作は、まとまって読めるものとしては薔薇十字社(およびそれの復刊の出帆社版)の全集と、創元推理文庫の全4巻全集があります。ただ、薔薇十字社の全集は1970年代に刊行されたもので絶版、この版元の本ですから部数も多くはないせいもあり、一時期は古書価もけっこうなものになっていましたし、そもそもめったに店頭では出会えない、という代物でした。


創元推理文庫の全集が2013年に出るまでは、この著者の作品を手軽に読める手段はなく、この1993年刊の国書刊行会の1冊本選集が、手軽に読める唯一のものだったのでした。著者一世一代の傑作である表題作の他に、代表作をバランスよくセレクト、さらに都筑道夫による解説(何度読んでもいいのです、これが;涙)も収録。一巻もの選集としては、創元推理文庫の全集が出た今でもなお、存在価値のある1冊なのです。残念なことに、この本も、そして創元推理文庫版全集も現在は品切れなのですが……。


2冊目は『山尾悠子作品集成』。国書刊行会の刊行物としては、その後に出た『ラピスラズリ』『歪み真珠』もありますし、初期作品をまとめた『夢の遠近法』もいいのですが、国書刊行会の山尾悠子作品で1冊を挙げるなら、やはりこの作品集成ということになるでしょう。


なにしろ寡作な書き手ですから、愛読者は必然的に、過去作を再読して愛でる時間が長くなるわけですが、そのような読者にとって、この、(ある時期までの、という限定つきとはいえ)過去作の決定版的な集大成があるのとないのとでは大違い、でしょう。


手元のものは、初版ではないのですが、サイン本。もともとは初版で持っていたのですが、あるとき、サイン本を見つけ、買い換えたのです。けっこう高価な本を2回買っているという(苦笑)、興味外の人から見ればちょっと気持ちの悪い読者になっています。そのような入手の経緯もあって、我が手元の山尾悠子本のなかでも、思い入れの深く強い1冊、なのです。


3冊目はボルヘスです。〈世界幻想文学大系〉を3冊の1つに挙げている人が今回の冊子にたくさんいます。3期、全45巻におよぶ、まさに「大系」と呼ぶほかない叢書。たしかに、いかにも国書な叢書ですし、これをあげれば、幻想文学関連の多くがごっそりカバーできますからね。気持ちはわからなくもない。でも、ちょっと「ずるい」感じ(笑)もしますよね、全45巻のこの叢書をまるごと挙げるのは。


ぼくはというと、幻想怪奇は大好き、幻想文学大好きではあるのですが、さすがにこの大部の叢書をすべてそろえることはしていません(というか、金銭的にも物理スペース的にも無理……)。学生のころに夢中で読んだラテンアメリカ文学関連を優先して購入することにしたのでした。当然、そうして手元に残った数冊の1つが、ボルヘスの本書。この『創造者』は個人的には特別な1冊です。今では岩波文庫でも読めますし、国書刊行会からも新装版が出ていますが、やはり、〈世界幻想文学大系〉第15巻の『創造者』が、造本も含めて、いいんですよね。


学生時代にスペイン語を学び、スペイン語圏の文学、ラテンアメリカ文学にはまった者として、ラテンアメリカ関係は、集英社(〈ラテンアメリカ文学全集〉の版元ですね)や水声社と並んで、国書刊行会にはずいぶんお世話になっています。ボルヘスの諸作のほか、〈ラテンアメリカ文学叢書〉はもちろんのこと、〈世界幻想文学大系〉〈バベルの図書館〉〈文学の冒険〉、いずれも複数のラテンアメリカ文学を含みますからね。ちなみに、ラテンアメリカ文学で、大系入りしているのは、ほかにボルヘス『夢の本』と、コルタサル『秘密の武器』があり、これらも思い入れの深い作品群となっています。スペイン本国ではセルバンテスの『ペルシーレスとシヒスムンダの苦難』もあります。


こうして自分でも選んでみると、3冊に絞るなんて(シリーズもOKだとしても)とうてい無理!というのがよくわかりますね。〈文学の冒険〉からだけでも3冊を埋められそうだし、SF者としては、〈未来の文学〉からセレクトできていないのもなんだかくやしい感じ。ほんと、悩ましい出版社だなあ(笑)


でも。個人的に、国書刊行会関連でいちばんの出来事は、自分が書き手の一人となれたこと、かもしれません。共著だけど。



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