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空犬通信

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幻想・怪奇・ホラーの一年

今年はたくさん本が読めました。なかでも、個人的には、幻想怪奇系の読書が充実していた一年だったように思います。


それは、『幻想と怪奇』(新紀元社;12まで刊行)『新編 怪奇幻想の文学』(新紀元社;2巻まで刊行)『異形コレクション』(光文社文庫;LⅣまで刊行)の刊行・継続によるところが大きいのではないかと思うのです。このジャンル=幻想・怪奇・ホラーをこよなく愛する闇世界の愛好者の一人として関係者のみなさんにはお礼とエールとをおくりたいと思います。


そんなわけで、幻想怪奇ジャンルの本は上記シリーズ・叢書以外の単発ものも含めてけっこう読めているはずと思っていたのですが、やはりプロ、目利きにはかないませんね。この記事を見ると、未読のものがたくさんありました。



朝日新聞「好書好日」の連載「朝宮運河のホラーワールド渉猟」の朝宮運河さんがホラー小説シーンを振り返ったもの。最後にベスト10があがっていますので、このジャンルのファンは自分の読書本・ベスト本と比べてみるのも楽しそう。


ぼくの場合、朝宮運河さんがベスト10にあげている作品にも未読があるくらい。今年の見落とし、読み逃しは、来年の楽しみということにしておきたいと思います。



幻想・怪奇・ホラージャンルの本といえば、今年は「吸血鬼」関連の本が目立った年でもありました。「吸血鬼」……人気&定番のテーマとはいえ、別に周年記念がからんでいるわけではない年に、一年でこんなに関連本が出るとは、(このジャンルに興味や思い入れのない人には、だからなんだ、という話だろうと思いますが;苦笑)うれしい驚きです。



ほかに、佐藤亜紀『吸血鬼』(角川文庫)の文庫入りや、翻訳ものでは、グレイディ・ヘンドリクス『吸血鬼ハンターたちの読書会』(早川書房)もありました。


うち、『吸血鬼ハンターたちの読書会』、ゴア度がけっこう高い作品。吸血鬼もの好きには、同じホラーでもスラッシャーとは違った、スタイリッシュな感じ、耽美な感じが好みな人も少なくないだろうと思いますが、そういう好みの方にはこの作品、どうなのかなとちょっと不安になるくらい、血塗れです。ホラー映画好きには良さそう、かな。


『吸血鬼ハンターたちの読書会』の著者、グレイディ・ヘンドリクス、名前だけではピンとこなかったんですが、略歴を見て、『Paperbacks from Hell: The Twisted History of '70s and '80s Horror Fiction』の人であることに気づきました。


書影 Paperbacks from hell

↑表紙からしてこれですから(持ってるのかよ!という突っ込みはさておき)。


タイトルの通り、70年代、80年代のホラー小説の通史で、おどろおどろしい表紙がこれでもかと並ぶ、このジャンルに入れ込んでいる人でなければつくれない、非常に濃い1冊になっています。なるほど、こういう人が『吸血鬼ハンターたちの読書会』を書いたのかとわかると、いろいろ腑に落ちます。


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