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空犬通信

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岩波少年文庫が創刊70周年

岩波少年文庫が今年、創刊70周年を迎えたとのことです。


「少年文庫創刊70年特設サイト」が開設され、子どもの本の書き手や書店関係者、図書館関係者など、岩波少年文庫にゆかりのある方、岩波少年文庫に親しんできた方がエッセイやレポートを寄せています。



最初に出会ったのは、小学校の図書室だったか、それとも移動図書館の棚だったか。いずれにしても、小学生のころから親しんできたシリーズです。自分が生まれる前から続いてきたシリーズがこうして70周年を迎え、今なお現役として多くの人に読まれていることをうれしく思います。


70周年記念ということで、70点の電子書籍が一斉配信となっています。



版元の案内を引きます。《岩波少年文庫は1950年のクリスマスに創刊されました。70回目の誕生日を記念して、70点(81冊)の電子書籍版を一挙配信いたします! 子どもから大人まで幅広い読者に支持されている、選りすぐりの多彩なラインアップが勢ぞろい。魅力的なさし絵もそのままに、どんなデバイスでも読みやすいリフロー型でお届いたします》。


岩波書店は、電子化に力を入れていなかったわけではなく、すでに文庫・新書・単行本は多くが電子でも発売になっていますし、児童書も、単行本やジュニア新書、(元本の発売が比較的最近の)岩波少年文庫の一部が電子化され、毎月のように配信されています。


今回一斉配信となったのは、『くまのプーさん』『エーミールと探偵たち』といった同レーベルの定番・名作を中心とする作品群です。ラインナップはこちら。なつかしいタイトルがずらり、ですね。ぼくは小学生のときから読んできたレーベルですから、読んだことがあるものがほとんど。今も本棚に並んでいる本も多いので、ぼく自身は電子で買うことはないかもしれませんが、電子化を待っていたという読者もいるでしょう。また、公共図書館や学校図書館に電子図書館の導入が進んでいますから、これから生まれ広がっていくニーズに対応できることにもなるでしょう。


空犬通信を訪問してくださる方は紙の本好き、リアル書店好きの方が多いでしょうから、あまりいないかもしれませんが、紙では読まないけど電子ならば、という方がいたら、この機に昔親しんだなつかしいタイトルを電子で手にするのもいいかもしれませんね。



ところで。


今回の岩波少年文庫70点が一斉配信となった件、ツイッターで紹介したところ、待っていた方、興味を持った方がやはりたくさんいたのでしょう、多く方が反応していたようですが、そんななかに、紙で読んでくれたほうがうれしい、みたいなことをわざわざ書いてくる方がいて、ちょっと驚きました。


これまで電子になっていなかった作品群が電子化された。そういうニュースなのに、紙で読んでくれたほうが「うれしい」と、自分の好悪だけを言ってくるというのはどういう理由なんでしょうね。


岩波少年文庫は、ここにあらためて書くのもばかばかしい感じですが、これまで長く、ずっと紙で売られてきたわけですよね。ぼくが生まれる前から本屋さんや図書館に並んできたわけです。そして、今も主要タイトルはふつうに紙で書店や図書館に並んでいます。つまり、紙で読みたい派は、いつだって岩波少年文庫を手にすることができたわけです。手にすることができなかったのは、電子で読みたい派です。で、そういう読書スタイルの人は、先のコメントの方の好き嫌いとは関係なく、世の中にすでにたくさんいるわけです。


だからこそ、出版社は、本の送り手は、電子にも対応しようとしているわけです。今回のように周年記念にまとめて出したり、新刊は同時に出したりということをしているわけです。紙派には想像がしにくいのかもしれませんが、紙だと読まないけど電子なら、という層もすでにたくさん出てきています。読書=紙の本を読むことは、もうとっくの昔に成立しなくなっています。教育現場もICT化が進んでいます。最初に手にした教科書が紙ではなくデジタルというのが、現実のものになっているわけです。


電子でないと読まない読めないという読者がすでに一定程度いるわけです。そんなときに、自分が紙派だからといって、紙で読んでくれたほうがうれしい、と、自分でそう思っているのはともかく、こういう周年記念でようやく電子化されたことを告げる記事やツイートに対してそのように発言することの意味はどこにあるんでしょうか。。


紙が好きな人は紙の本で読めばいいと思います。誰からも電子で読むことを強制されたりは今のところないはずです。でも、自分が紙が好きだ、自分が紙で読みたいからといって、紙で読んでくれたほうがうれしい、と、他の人の読み方まで規定するようなことを言うのはどうなんでしょうか。


自分で思うのは自由にしても、わざわざ他人のツイートにかぶせるように書くのはどうなんでしょうか。


こういう考え方が本の世界を狭いものにしてしまっているのではないか。そのような感じがしてなりません。


岩波少年文庫は、今では紙でも読め、電子でも読めるレーベルとなったわけです。紙で読みたい人は紙で、電子で読みたい人は電子で読めばいい、それだけのことだと思います。


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