小学生のころに初めて読んだ作家の「新刊」を、40年ほど後のいま手にするのって、なんだか不思議な感じですよね。
- ジョーン・エイキン『月のケーキ』(東京創元社)
↑タイトルも装画もいい感じです。
児童書・YA好きにはおなじみの、それも、古い世代には「エイケン」の表記でおなじみの作家による幻想短編集。版元の内容紹介によれば、こんな本です。
《祖父の住む風変わりな村での少年の体験を描く「月のケーキ」等、愉快な中にもちょっぴり背筋が寒くなる、ガーディアン賞受賞の名手による奇妙な味わいの13編を収めた短編集》。
もう少しくわしく作者や作品のことを知りたいという方は、本書の訳者、三辺律子さんによる「あとがき」が公開されていますので、そちらを参考にするのもいいでしょう。
ジョーン・エイキン、昔は「エイケン」表記で冨山房からたくさん翻訳が出ていましたが、今は岩波書店含め、みな「エイキン」表記で統一のようですね。
ジョーン・エイキンの名前を新刊案内で見かけたらなつかしくなってしまい、しばらく前に、我が家の本棚から『ウィロビーチェースのおおかみ』と『かっこうの木』(冨山房)を引っ張りだして、読み直し、新刊の発売を楽しみに待っていたのでした。
ゆるめの組で10数ページ程度の短めの作品を13編収録。家族や大事な人の死が扱われた作品が複数含まれるなど、ややダークなところもある、日常と非日常の間をゆらゆらしていそうな雰囲気の作品群です。ただ、ホラー作品集というわけではありません。恐怖味が強すぎることもなく、読後、なんとも言えない余韻が残ります。
「エイケン」表記時代からの読者には久しぶりの新刊として楽しめそう。もちろん、エイキンの作品は読んだことがないという読者の最初の1冊にも良さそうですよ。本書が気に入った方は、ぜひ過去の作品群へ。なお、次の作品を探す場合は、著者名表記に注意を。〈おおかみ年代記〉の冨山房は「エイケン」ですが、その他、岩波少年文庫他の作品群は本書と同じ「エイキン」です。