岩波少年文庫の特集が読めるリトルプレスがあると知ってから、入手までにずいぶん時間がかかってしまいましたが、待ったかいのある1冊でした。
- 『murren(ミューレン)』Vo.22 2018 January
2年ほど前の刊行ですが、特集号の存在は知りながらも入手できずにいたところ、最近になってやっと出会えましたので、このタイミングでの紹介となりました。
B6判横置きで、60ページほどの小冊子です。サイトの説明によれば、《「街と山のあいだ」をコンセプトに、身近な自然や山をテーマにした小冊子》だとのことです。他の号を見ていないのでよくわかりませんが、雑誌のコンセプトからすると、岩波少年文庫のような特定の文庫レーベルが特集に取り上げられるというのは異例ということなんでしょうか。
自分にとって思い出の深いタイトルをピックアップして紹介する「少年文庫 私の10冊」「僕の10冊」などの記事を収録。関係者のインタビューが3本も掲載されているのも目を引きます。作家の中川李枝子さん、岩波少年文庫編集部の愛宕裕子さん、そして、岩波少年文庫創刊時の中心人物である石井桃子さん。石井桃子さんのインタビューはもちろん再録ですが、それでも、こうして関係者のインタビューをまとめて読めるのは同文庫の愛読者には貴重ですね。
あと、うれしいのは、昔の装丁の岩波少年文庫の書影がたくさん収録されていること。ご存じの通り、岩波少年文庫は、創刊時から現在までに何度か装丁の変更が行われていて、時期により、函・カバーの有無、上製・並製の違い、4色・2色など表紙の色刷りの違いなどがあります。
ぼくが実際に子どものころに読んでいたのは、『murren』の表紙に写っている函・4色カバーのない時期の装丁のころのもの。『murren』には「岩波少年文庫のあゆみ 装丁の移り変わり」という記事が収録されていて、装丁・造本の移り変わりが解説されているのですが、それによれば、ぼくが親しんでいたのは、第4期(1974〜)のものだそうです。
昔は、この時期の装丁でたくさんそろえていたのですが、たびたびの引っ越しなどで処分してしまったことがあり、現在、手元に残っている岩波少年文庫は、自分で読みたくて、もしくはうちの本好きっ子用にと後に買い直したものばかり。新しい版でも何も問題はないのですが、今回『murren』を見ていたら、なつかしくなってしまい、神保町のみわ書房のような児童書に強い古書店で手元にない巻を昔の親しんだ装丁で探してみたくなりました。
さらに岩波少年文庫特集の詳細を知りたいという方は、2年近く前のものですが、往来堂書店のこの紹介記事をどうぞ。「『murren』vol.22 2018january 入荷しました。特集は「岩波少年文庫」!!」。
↑手元にある岩波少年文庫の一部たち。みな4色カバーがかかった版のものです。
↑古書店で入手したものですが、創刊40周年記念としてセット販売された、モリス柄の表紙のハードカバー版も数冊手元にあります。
特集を読み終えて、ふと、自分にとっての10冊、いや1冊は何かなあ、などと考えました。当時大好きだった作品で再読もしている『クローディアの秘密』『エーミールと探偵たち』『トムは真夜中の庭で』らは最有力候補。NHKで放送していた海外ドラマ『大草原の小さな家』の原作ということで、初めてシリーズものに挑戦した『長い冬』も思い出深い作品です。ほかにもいろいろと候補が多すぎて迷います。
一方、同じころに読んでいる作品で、岩波少年文庫の収録されている作品のなかにも、単行本で読んでいるため、岩波少年文庫の1冊にはあげられない作品群もあります。『星の王子さま』『クマのプーさん』「ドリトル先生」シリーズ、「アーサー・ランサム全集」などは、いずれも岩波少年文庫版を後に入手していますが、当時はみな、単行本、上製本で読んでいるからなあ。
……と、別に誰に聞かれたわけでもないので迷うも何もないのですが(笑)、こうして、当時読んだ本のことや、読んだときの表紙や装丁のことを思い出したりして、古本散策を楽しんだり、本棚から次の再読候補を引っ張りだしたりするのも楽しいものですからね。
今回紹介した『murren(ミューレン)』ですが、リトルプレスですので、どこの本屋さんでも買えるわけではないようですが、サイトに取扱店の一覧がありますので、そちらをチェックするといいでしょう。