前回の群馬・渋川書店巡りの続きです。
先の記事の渋川から伊香保温泉まではバスで30分ほど。伊香保には書店はありませんが、いくつかブックスポットがあります。
まずは、竹久夢二伊香保記念館。
大正文化には大いに関心がありますし、大正時代の文芸で好きな作家・作品はいろいろありはするのですが、夢二についてはとくに関心があるわけではありませんでした。ウェッジ文庫の『竹久夢二と妻他万喜 愛せしこの身なれど』など、関連書籍を読んだことはありますが、それくらい。
今回もとくに大きな期待をしていたわけではないのですが、想像していたよりもずっと充実した記念館でしたよ。うれしい驚きでした。
↑記念館は「大正ロマンの森」というエリアの一画にあります。
↑建物は大正時代の洋館。部屋数の多い大きな建物でした。
館がどのような施設なのかは、サイトを見ていただくのがいいでしょう。収蔵作品の点数も多く、肉筆ものが多いのも特徴でしょうか。書簡や日記など、作家が残した文芸作品以外のもの、作家の人生の様子を伝えてくれるものに興味のある人には見応えのある展示内容になっているのではないかと思います。
記念館のなかには「書斎」と名付けられた一室もあり、そこには夢二の著作や装丁を手がけた作品が数百点、ずらりと並んでいます。当時の本、初版本ではなく復刻版ですが、貴重な当時本でないので、自由に手にとれるようになっているのがうれしいところ。箱入り、三方金、布クロス、箔押し、色刷り本文といった、造本の妙を存分に味わえるようになっています。
壁面の書棚には、夢二関連の本や雑誌なども並んでいます。これらは、地元の愛好家の方が昨年同館に寄贈したものだそうです。常駐しておられるのかどうかわかりませんが、ぼくが訪問したときは、その寄贈者の方が部屋にいらっしゃって、来館者に本の説明などをしていました。本好き装丁好きは、この部屋は時間をかけてチェックするといいでしょう。
常設展のほかに企画展も行われています。ぼくが訪問したときは「夢二の遺した文字 その美と心」という「文字」=肉筆ものにスポットをあてた展示が開催中でした。書簡や原稿、日記などが展示されていますので、本好きにはぴったりの展示といっていいでしょう。
1階にはミュージアムショップがあります。何か手頃な本があれば買っていきたいなあと思ったのですが、すぐに欲しくなるような本は残念ながらなし。収蔵作品・企画展に合わせてのことなのか、筑摩書房から出ている全集の書簡と日記の巻が並んでいましたが、さすがにいきなり全集はね。
文庫のような手軽に買える値段&分量の本が並んでいたら、売れるんじゃないかなあと、そんなことを思ったりもしました。たとえば、夢二が装丁を手がけた作品も収録されている『明治・大正 詩集の装幀 The Art of Japanese Book Covers: Late 19th and Early 20th Century』(紫紅社文庫)とか、夢二の装画を手がけた与謝野晶子『私の生い立ち』(岩波文庫)とか。
本館のほかに、童画を集めた「夢二・子供絵の館」と、ガラス細工を集めた「義山楼(ぎやまんろう)」があります。それらは別料金になっています。童画は気になりましたが、ガラスにはそれほど関心がなく、時間もなかったため、今回はスルー。
というわけで、先にも書きましたが、本好きも意外なくらい楽しめる内容になっていますので、伊香保にお出かけの際はチェックしてみてはいかがでしょうか。
文学関係の記念館では、徳冨蘆花記念文学館もあります。
雨が降っていなければなんてことのない距離のはずなんですが、宿や夢二記念館のあたりからは微妙に離れていたため、今回は断念しました。
徳冨蘆花って熊本の人じゃなかったっけ?と思って案内を見ると、伊香保を気に入ってたびたび訪れていたそうで、最後は伊香保の地でその生涯を閉じたのだとか。記念館には最後を迎えた蘆花終演の部屋も用意されているようです。
↑徳冨蘆花といえば、これも持っていたなあと、帰京後、本棚から引っ張りだしてきました。徳冨蘆花が手がけた探偵小説を集めた『徳冨蘆花探偵小説選』(論創社)
探偵小説といえば。探偵小説関連で群馬ときたら、これにもふれておかないとね。高崎市にある群馬県立土屋文明記念文学館で企画展「ミステリー小説の夜明け」が開催されています。
せっかく群馬に行ってきたのだから、寄ってくればいいものを、と思われそうですが、ついでに寄るには、車でない身にはアクセスがやや厳しいんですよね。高崎駅から徒歩圏なら、途中下車して寄ってきたんだけどなあ。今回は断念。なんだか、寄るべきところばかりあきらめちゃってる感じですなあ(苦笑)。
《雑誌『新青年』と、江戸川乱歩、横溝正史の世界に迫るとともに、群馬県渋川市ゆかりの探偵小説作家・渡辺啓助と、その弟・渡辺温の作品等を紹介する》という内容の展示とのこと。乱歩・正史関連は、書籍もイベントもたくさんありますが、渡辺啓助・渡辺温兄弟にスポットがあたることはそう多くはありませんから、本来であれば、探偵小説読みはおさえておくべき企画展なんですよね。東京にも巡回してこないかな。6/9までとのことです。