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空犬通信

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この星のことを知りたい人に……『生命の星の条件を探る』

文系の宇宙好きにも大変にわかりやすい、それでいて物足りなさを感じさせることもない、読み応えのある1冊でした。




書影 生命の星の条件を探る

テーマ的に重なるところの多い小野雅裕さんの『宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八』(SB新書)を読了したばかりのところに出会ったので、続けて読むことになりました。『宇宙に命はあるのか』も大変に読みやすくておもしろい本でしたが、『生命の星の条件を探る』も同様に、ひょっとすると、それ以上にわくわくさせてくれる本でした。


このような本です。《もし地球の水の量が10分の1だったら? もし太陽系に木星がなかったら?「生命の存在する星は、地球にも必ずあるはずだ」という信念のもと、様々な「if」を想定しながら、生命が存在できる惑星の条件を、宇宙生命学の世界的研究者・阿部豊氏が明快に答える》。


アストロバイオロジーは、もともと個人的に好きなテーマだということもありますが、とにかく文章がわかりやすく、当方のような超文系の素人にも難なく読み進められる構成と書き方とになっています。全編に発見のある本ですが、たとえば「海惑星と陸惑星」(が何なのかは、ここで簡単にまとめることはできないので、ぜひ本編にあたっていただくとして)の話などは、一読、とても印象に残るものになっています。


著者の阿部豊さんは、本書で初めて出会った書き手です。わかりやすくておもしろい本を書く人だなあ、ほかにも読んでみようかなあ、などと思いながら本編を読み終え、解説を読むと、不勉強で知らなかったのですが、著者は長くALSを患い、その闘病中に本書(の親本)を書き上げたそうで、文庫の発売を待たずに、今年の1月に亡くなったとのこと。なんと……。


奥様で自身も科学者である阿部彩子さんの解説によれば、著者、阿部豊さんが《生命の星の条件を探る研究を仕事にするようになったきっかけは、幼稚園の時に出会った一冊の本に遡》るそうで、その一冊とはバージニア・リー・バートンの『せいめいのれきし』(岩波書店)なんだそうです。子どもの本に関心のある方には説明不要の、科学絵本の定番の1つですね。


先日ちょうど、宇宙本・天文本を読むようになったきっかけの1つが、かこさとし先生の科学絵本『宇宙』であったことを記事に書いたばかりでした。(無理矢理そのように思おうと思えば)通じるものがあると言えなくもないこの話を読んで、なんだかうれしくなってしまったのでした。


この『生命の星の条件を探る』は、アストロバイオロジーに関心にある人にはもちろんのこと、地球がどういう星であり、どういう環境なのかを知りたい(それも、あまり専門的でない文章で)という方にはぴったりの1冊。おすすめです。


解説は、奥様でご自身も科学者(東京大学大気海洋研究所教授)である阿部彩子さんと、新聞記者で大宅賞受賞作家でもある科学ライター、須田桃子さん。奥様の解説は、上に一部引きましたが、このお二人の解説もすばらしいので、こちらも合わせてぜひ。



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