fc2ブログ

空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

百町森、水曜文庫……静岡書店巡り その2

静岡の本屋さん訪問記、第2回の今回は、一般新刊書店以外のお店を紹介します。まずはこちら。




1802 百町森 看板

↑とても目立つ同店の看板。


前回の記事で紹介した、MARUZEN&ジュンク堂新静岡店が入っているセノバから歩いて少しのところにある児童書専門店です。店名は『クマのプーさん』の舞台の森の名前ですね。(余談ですが、同店の住所表示「葵区鷹匠」って、なんだかすてきな地名ですね。)
1802 百町森 外観1802 百町森 入り口1802 百町森 入り口 ハンモック

↑同店の外観。入り口の脇には、座って使うタイプのハンモックが。入り口の右側がおもちゃ売り場で、そちらも撮影したかったんですが、車がとまっていたり、お店の前で遊んでいる親子連れがいたりで、泣く泣くはずして撮りました。


同店のサイトによれば、こんなお店です。《子どもの本とおもちゃの専門店「百町森(ひゃくちょうもり)」です。「子どもは遊ぶことで成長する」という考えのもと、遊びに集中できる落ち着いた環境(木のおもちゃ、絵本、家具など)づくりをお手伝いしています。 キャラクターものでも、「知育」でもない、ロングセラーの木のおもちゃや絵本を中心に販売しています》。


いやはや。ここは、ほんと、すばらしいお店でした。ちょっと感激してしまいました。ぼくが、うわあ、これは!と思いながら、店内を見ていたら、後から入ってきた女性のお客さんグループが、「わー、すごい! ここ、パラダイスだね」と、当方同様に感銘を受けたらしく、感想を口にしていましたが、まったくその通りで、思わず「そうですよね!」って、勝手に返事しそうになりました。旅先でこんなすばらしい児童書専門店に、それも、こんな本格的な児童書専門店に出会えるとはなあ。これだから本屋巡りはやめられません。


お店は3つの部分に分かれていて、正面入り口から見て、真ん中が本のスペース、右側がおもちゃのスペース、左側がプレイルームになっています。プレイルームに入れなかったのと、おもちゃスペースが奥に広がっている感じだったので、広さのイメージがつかみにくかったのですが、後で調べたら30坪とありました。


児童書専門店ということで、児童書の品ぞろえはもちろんすばらしく、絵本に読み物に、大人向けの児童文学評論や教育書にと、さまざまなタイプの子どもの本および子ども関連本がしっかりとそろっていました。


特筆すべきは、おもちゃの品ぞろえ。木製のおもちゃ、輸入おもちゃを扱う児童書専門店はめずらしくないかもしれませんが、この店では、そうしたおもちゃだけでなく、日本の伝統的なおもちゃ(こま、おはじき、などなど)、ボードゲーム、カードゲーム、人形・フィギュア、組み立ておもちゃ、ミニカー、などなど、量も種類もすごいのです。入り口脇の写真に写っている、天井からつるして子どもが座って使うタイプのハンモックも売り物として並んでいました。いやはや、これはすごい。短時間では見切れないくらいの種類と量がそろっていましたよ。


お店の方の対応がこれまたすばらしくて。たまたま、お客さんから本に関する質問を受けているところを複数見聞きしたのですが、これが実に丁寧な説明で、感激してしまいました。そんなに長時間店内にいたわけではないのですが、そのわずかな時間で充分過ぎるほどに伝わってくるくらい、お客さんとのコミュニケーションが丁寧かつ密なのです。


1802 百町森 プレイルーム外観

店内左側には、書店スペースと同じか、それ以上にも見えるくらいのプレイルームがありました。こちらの利用は有料で、書店スペースとは仕切られた、独立のスペースになっています。店内にキッズスペースがある店は専門店にかぎらずたくさんありますが、独立していて、中で思う存分遊べるようになっているスペースを用意している店はめずらしいかもしれません。仕切られているので、音や声も(中の人も買い物をしている人も)お互いに気にせずにすみますし、売り場と別になっていますから、商品の破損などの心配もなく、出入りが制限されていますから、子どもたちの安全も確保されているなど、いろいろな意味で安心な、小さいお子さん連れのお客さんには最高のスペースになっているようでした。


大人だけでは利用ができないので、中には入れなかったんですが、複数の親子連れが利用しているのが、ガラス越しに見えました。時間が来てしまったのか、帰りたくない、と泣きべそをかいている小さな女の子がいました。子どもたちにとって、帰りたくなくなるくらい居心地のいい空間なのでしょう。


山のように買い物をしていきたくなるお店だったんですが、このお店に並んでいる本やおもちゃは、地元の人たちにこそ買ってもらうべきだから、東京の児童書専門店にいつでも行ける身が在庫を減らしてしまっても……と妙な気を遣ってしまって、1冊しか買えませんでした。こうして、文章にするために、店内の様子を思い出しているだけでも幸せな気分になれます。


このお店は、子どもの本やおもちゃに関心のある方には、本当におすすめです。今回の静岡書店回り、最大の収穫でした。


1802 百町森 ショップガイド1802 百町森 イベント案内

↑左は百町森のショップ案内。右は店内イベントの予定表。裏面はセール情報になっています。


1802 百町森 フリペ各種

↑百町森は、無料配布物も充実。レジにこうした無料配布物、それも手書きやワープロで手作りされたものではなく、きちんと印刷されたカラーのものが、テーマ別にたくさん並んでいました。サイズは、A5判(A3四つ折りとA4二つ折りがあり)



1802 水曜文庫 看板1802 水曜文庫 看板2

こちらもセノバから歩いて少しのところにある古書店。古書がメインのお店ですが、小出版社の本など、一部新刊やミニコミも扱っているようです。


1802 水曜文庫 入り口1802 水曜文庫 入り口2

入り口を入るとすぐ目の前に児童書が並んでいます。周りには、詩歌や芸術、ミニコミなどの棚が。店は奥行きがあり、奥には背の高い棚が並んでいて、そちらには、文芸や人文など、新古書店では見かけない、古本らしい古本がしっかりと並んでいて、ちょっとうれしくなります。


文学の棚を見てみると、上林暁、小沼丹ら中央線人脈や、後藤明生、保坂和志ら本好きに人気の高い(そしてぼくも大好きな)作家の作品がよくそろっています。海外文学にもかなり棚が割かれていて、翻訳もの冬の時代と言われるようになる前の時代の本がたくさん並んでいました。『本の雑誌』の古い号や、文芸誌などにも棚が割かれています。


文学以外も充実しています。人文・社会・歴史書などが並ぶ棚を見ると、「郷土史」などに混じって「女性史」「反戦」などのプレートも見えます。とくに「女性史」は店主のこだわりなのか、(ぼくにはこの分野の品ぞろえを云々する知識がないのが残念ですが)多くの本が並んでいました。


レジ脇の棚にはアナキズム関係がずらり。店の規模を考えると、けっこうな数になっています。こちらも、ぼくの知識ではどのようなものなのかはわからないのですが、よほどのコレクションなのでしょう、「散逸すると困るので、現時点では非売、どうしてもという方は相談を」という主旨の貼り紙がされていました。


コミックはわずかにありましたが、作家・作品を選んで並べたもののようで、最近の作品など新古書的な在庫はなく、ざっと見たところアダルトもなしでした。


新古書店とはまったく違う品ぞろえの、古き良き時代の古本屋さんという感じながら、ちゃんと新しいところにも目配りがきいていて、さらに、一般的な古本を求めるお客さん向けの本もカバーしています(実際、ぼくが店内滞在中に、親子連れのお客さんがきていて、男の子が自分で選んだらしい、ふつうの子どもの本を買ってもらっていました)


旅先でこういう古本屋さんに出会えると、実にうれしくなりますね。おすすめのお店です。


1802 水曜文庫 本好き通信

↑水曜文庫のフリペ「本好き通信」。発行店の記載はありませんが、店頭に置いてありましたので、同店の発行ということでいいのだろうと思われます。創刊二十六号。「第一号を発行してから、足かけ四年目に突入」と冒頭にありますので、隔月くらいのペースで発行されているものでしょうか。


1802 水曜文庫 イベントチラシ

↑水曜文庫で来月開催されるイベントの案内チラシ。「講座:本をつくること 第二回 小規模出版社のしごと」。見れば、講師はぼくもお会いしたことのある、東京・八王子にある出版社、堀之内出版の編集者、小林えみさんではないですか。旅先で知り合いの編集者の名前に出会うのは、それも古書店のイベントチラシで見かけるのは、めったにないことなので、それだけでちょっとうれしくなったりもしました。


  • 栄豊堂書店古書部

水曜文庫と同じ商店街沿いにある古本屋さん。水曜文庫の場所を調べているときに、たまたま地図で見つけました。


1802 栄豊堂書店

こちらも昔ながらのたたずまい。水曜文庫が大当たりだったから、期待して足を踏み入れたのですが……うーん、これはなあ、という感じ。年季物の、興味深い本も並んではいるのですが、いったい何年動いていないんだろう……というようなコンディションの本ばかりに見え、手が伸びませんでした。



1802 ブルーブックカフェ

ブックカフェがあるよ、と教えてもらったのですが、この日は貸し切りのため、利用できず。Blue Noteが運営するブックカフェなんですね。サイトを見ても本の扱いがどうなっているのかがわからず、中も見られなかったのでなんとも言えませんが、入り口から見るかぎりでは、ふつうのカフェ、それもちょっとおしゃれっぽいカフェで、ブックカフェっぽい雰囲気ではないような印象を受けました。中はどうなのかなあ。ちょっと気になります。ちなみに、自由が丘にもあるようです。



旅先にまんだらけがあると必ず寄ってしまいます。まんらだらけ、というと、まんがのお店という印象をお持ちの方も多いかと思いますが、当方のような特撮をはじめとする昭和のサブカルが好きな身にとっては最高のお店だったりするんですよね。


サブカル系のグッズやおもちゃなどはもちろんのこと、古本、それもまんが以外の文芸・SF・探偵・芸術・雑誌などなどの品ぞろえも本格的だったりするのですよ。いつか、これまでに訪れた全国のまんだらけについても紹介記事をまとめたいと思っているくらい、好きなんですよね。まんだらけ。


残念ながら静岡にはまんだらけはないんですが、まんだらけ的な存在としては駿河屋があります。戸田書店の真ん前だったので、寄ってみました。


1802 駿河屋 入り口1802 駿河屋 入り口 逆側

さすがは、ホビーの街、静岡のお店、しかも本店です。古本もCD・DVDも、(特撮やアニメの)おもちゃもけっこうな在庫量でしたよ。時間と体力(半日の書店回りの最後のお店でした)があまりなかったので、古本は断念し、おもちゃに専念(「古本、断念かよ!」の突っ込みは聞こえなかったことにして)


はずかしいから詳細は秘しますが、何もこんなところで見つからなくてもいいのに!という超合金とか(←秘してない)をまんだらけ価格より微妙に安い値段で見つけてしまったので、買ってしまった……。旅先から超合金(しかも複数……)を持ち帰る男。持ち物検査がなくてよかったです。



最後に1店だけ、本屋以外のお店も。百町森の近くにある中古レコード屋さんです。


1802 グッドタイミン 入り口1802 グッドタイミン 看板1802 グッドタイミン 外観

お店はマンションの1室で、ロック・ポピュラー・ジャズなどのアナログがずらりと並んでいます。「輸入 廃盤 貴重盤レコード専門」をうたうだけあり、当方のような雑本ならぬ雑レコード好みにはやや敷居が高い感じ。ただ、敷居が高いといっても、入りにくいような雰囲気のお店ではなく、お店の人もとても感じがよかったんです。ただ、すぐに買いたくなるような盤、買えるような盤には出会えず。


このお店にかぎったことではないのですが、東京の中古レコード市場、とくにディスクユニオンの相場に慣れてしまった目には、地方の中古レコードはどうしても高く感じてしまうことがあります。ここが本とレコードの大きな違いなのかなあ、などと思います(個人的な意見です)


本の場合は、WEBのショップやオークションの存在で、全国的に値段が平準化された感じがあり、地方だからといって、ものすごい掘り出しがあるわけでは必ずしもありませんが、一方で、地方だからといって高い、ということもあまりないように感じます(自分のそんなに多くはない経験だけによる私見です)


今回の例でいうと、水曜文庫は、気になった本はすでに所有しているものも含め、いくつか値段を確かめてみましたが、いずれも値段がこなれていて、東京の古本相場に慣れた目にはむしろ安くうつりました。その本の相場や価値をわかったうえで、あえて安めにつけている、という感じのする値付けに見えました。


静岡本屋巡り、お店の紹介は以上ですが、次回は、買った本の報告ほか、静岡の本屋さんをこれから訪問する方の参考情報などをまとめたいと思います。


コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する