熊本で訪ねてきた本屋さんのレポート、続きです。今回は古書店を紹介します。
明治10年創業の老舗古書店。たたずまいといい、品ぞろえといい、まさに昔ながらの古書店という感じ。こういうお店が街の中心からすぐのところにあり、今なおがんばれているのがすごい。熊本の本屋事情の厚みを感じさせますね。
こういうところでたくさん買い物ができればいいんですが、新刊書店でたくさん買い物をするのが今回の熊本訪問の主目的だったものですから、古書店での買い物は控え目に。目当てのものがなくて本は買えなかったんですが、熊本・九州の野鳥の本について質問してみたら、自然科学・生物の本が並ぶ棚を一緒に見ながら丁寧に応対してくれました。
↑舒文堂河島書店の向かいには、中古レコード店、ウッドストックがありましたが、シャッターがおりていました。聞けば、水道町のほうに移転したんだそうです。
先のは明治創業ですが、老舗ということならばこちらも負けていません。天野屋書店は大正5年創業ですから、こちらも創業100年超ですね。
1階には一般的な古書が並んでいますが、ちょっと時間がなくて見ることができなかった2階には、書画や限定本などの本格的な古書が並んでいるそうです。
↑入り口脇には、創業100年にあたっての店主のことばが貼り出されていました。
この2軒の古書店が徒歩で1、2分ほどの距離にあるということ自体すごいことですが、さらに新しい古書店が加わりました。
この10月にオープンしたばかりのお店です。写真でも、その雰囲気がわかるかと思いますが、中央線沿線にあってもおかしくないような店舗デザインと品ぞろえです。古本好きが街でこんな古本屋さんに出会ったら、きっとうれしくなることでしょう。
店内には、よく選ばれた文芸書、児童書などが並んでいます。おもしろいのは、アナログレコードが店内の中央にけっこうな量、並んでいること。レコードを扱っている古書店や古道具店など自体はめずらしくありませんが、セレクトにも一貫したものが感じられますし、値段も安すぎず高すぎずで、あきらかに中古レコードの感覚がわかっている人の目になるものだとわかります。ツイッターのプロフィールに《東京の中古レコード店タイムと古書音羽館に永らくお世話になり》とあるのを見て、なるほど、と合点がいきました。
まだ棚には空きも目立ちますが、レジで会計をする際に話しかけたら、まだ出せていない本がたくさんあるのだとか。今でもすてきなお店になっていると思いますが、これで棚が充実してきたら、もっともっとおもしろいお店になりそうです。
こうして見ると、上通並木坂というのはすごい通りですね。創業100年超の古書店が2軒に、さらに新しい古書店まで。次に紹介するお店も徒歩ですぐのところにあるお店です。
熊本城のそばにある店は、ご覧の通り、ちょっと変わったかたちの建物です。ぼくが訪問したのは1階の書店スペースだけですが、2階はイベントスペースになっているそうです。
なんというか、お店を実際に見ていない人にはちょっと説明のしづらい店で、実際に店のサイトにも、《ただの本屋さんというには少し変わっていて、雑貨なども置いています。開店時間は不定なので、サイトとTwitterで毎日お知らせしています。あの坂口恭平もアルバイトのひとりで、とにかく店には色々な人たちが集います》と、わかるようなわからないような説明があがっています(笑)。
店内には雑多な古書が並んでいます。ひと昔前の、ちょっと気になる児童書や目を引く雑貨が並んでいるかと思うと、新古書店でしか見かけなさそうな、いわゆる本好きっぽい人の多くがスルーしそうな文庫や新書の微妙な古本が並んでいたり……こだわりがあるのかないのか、にわかに判断がつかないような棚に(少なくとも当方には)見えました。そういう、ザのつく古書店っぽくないところに惹かれる人が多いということなのかもしれません。
営業は日曜日と祝日のみで、時間も14時から19時と変則的なので、とくに遠くから訪問される方は気をつけたほうがいいでしょう。
ポアンカレ書店で、《日本一長い駅名「南阿蘇水の生まれる里白水高原」の駅舎に週末だけ現れる古本屋》だというひなた文庫のショップカードを入手しました。
これまで紹介してきたのは、みな熊本市内のお店ばかり。同じ熊本の本屋さん、とはいえ、こちらは阿蘇郡南阿蘇村のお店ですから、さすがに当方のような短時間滞在の身がふらりと行ける場所ではありません。噂を聞くと、そしてサイトの写真を見ると、ぜひ訪ねてみたいなあという気持ちにはさせられるのですが、さて行ける機会があるかどうか……。
以上が、今回の熊本旅行で訪ねた本屋さんです(といいつつ、実際には訪ねていないお店も交えて紹介してしまいましたが)。喜久屋書店熊本店やリブロのように、前回の熊本訪問から今回の間に閉店になってしまった店もありますが、既存のお店がリニューアルで生まれ変わっていたり、新しいセレクトショップや古書店ができていたりと、熊本の本屋事情の充実ぶり自体は変わっていないか、むしろ増しているのではとも感じられ、安心したり、うれしくなったりしました。
ただ、地震の影響でまだ再開できていないお店もありますし、再開かなわず閉店になってしまったお店もありますから、手放しで喜べるわけではないでしょう。それでも、あれだけの地震を経た街の本屋さんが、みな元気に営業しているのを実際に目にすることができたのは、個人的に大きな収穫でした。
被災地の書店を応援するすべがエリア外の一本好きにあるとしたら、それは実際に訪ねること、たくさん買い物をすること、そしてお店の様子を他のエリアの本好き本屋好きに伝えることではないか、そんなふうに思い、今回熊本を訪ねました。現地に足を運んでみて、本当によかったなと、あらためて思っています。
次の記事では現地で買ってきたたくさんの本を紹介したいと思います。