しばらく前に店頭で見かけて以来ずっと気になっていたんですが、やっぱり買ってしまいました。
- L・P・デイヴィス『虚構の男』(国書刊行会)
《知られざる傑作、埋もれた異色作を幻想怪奇・ホラー・ミステリ・SF・自伝・エンターテインメント等ジャンル問わず年代問わず、本邦初訳作品を中心に紹介する新海外文学シリーズ》だという、国書刊行会の〈ドーキー・アーカイヴ〉。
過去にも何度かふれたことがありますが、ぼくは「幻想怪奇・ホラー・ミステリ・SF」などのジャンルミックス系シリーズの代表選手の1つといっていい早川書房の『異色作家短篇集』旧版全18巻を愛してやまない、へんてこ小説好きなので、こういうシリーズの刊行はほんとにうれしいです。
シリーズは全10冊。版元のシリーズ紹介サイトには、まだ初回配本の既刊2冊しかあがっていませんが、既刊の巻末にあげられた書目には、シャーリイ・ジャクスンやロバート・エイクマンら、その手の小説好きに喜ばれそうな名前のほか、聞いたことのない名前、本邦初紹介の名前も並んでいて、これからの刊行がとても楽しみ。これは、10冊、全部読みたいなあ。
この国書刊行会の新シリーズ〈ドーキー・アーカイヴ〉、内容見本がつくられていますが、これがまたいいんですよね。前文「創刊にあたって」は、版元の意気込みがうかがえる、国書刊行会らしい格調高いものになっていて、これを読むだけでちょっとうれしくなりますし、続く、選者のお二人若島正さんと横山茂雄さんの刊行記念対談もシリーズ収録作家・作品に関するうんちくが満載でおもしろい。
内容見本、ぼくは購入した本に挟み込まれていたのを入手したんですが、単独で店頭配布もされているようです。海外文学読みはぜひ入手されるといいと思いますよ。サイトからダウンロードもできるようです。こちら。
さて、今回購入したL・P・デイヴィス『虚構の男』は、初回配本2冊のうちの1冊。版元の内容紹介には《唖然とする展開、開いた口がふさがらなくなるラスト……早すぎたジャンルミックス作家L・P・デイヴィスによるストーリー紹介厳禁のサプライズ連打小説》とあります。早速読んでみましたが、いやはや、まさにこの通りの作品でした(笑)。
この作品自体は本邦初訳とのことですが、この名前、どこかで見たことあるなあ……と思ったら、この作品の作家でした。
- L・P・デービス『四次元世界の秘密 少年少女世界SF文学全集6』(あかね書房)
これ、ぼくの前後の世代の読者にはなつかしく思い出す人も多いのではないでしょうか。あかね書房の『少年少女世界SF文学全集』の1冊です。以前にも書いたことがありますが、子どものころ大好きだったシリーズなんですよ。これでSFに目覚めたといってもいいぐらい、影響を受けています。
子どものころはさすがに上製本で20巻もあるシリーズを所有できるわけもなく、当時は学校の図書室か児童館で読んでいたもので(ロバート・シルヴァーバーグの『生きていた火星人』だけ、なぜか所有していました)、上の写真の本は、後に古本屋で買い直したもの(実はまだ買いそろえている途中で、手元に全巻そろっていないのがちょっとくやしかったりするのですが、それはまた別の話)。今回、期せずして子どものころに出会っていた作家と、久しぶりに再会したような格好になったわけで、ちょっとうれしくなりました。
ところで、国書刊行会の新シリーズ〈ドーキー・アーカイヴ〉の名称ですが、海外文学読みのなかには、フラン・オブライエンの同名の小説(集英社の『世界の文学5 イギリス4』に「ドーキー古文書」のタイトルで収録されていますね)を思い起こす方もいるでしょう。内容見本掲載の若島正さんと横山茂雄さんの刊行記念対談を読んでいたら、この作品のことはもちろん、同名の米出版社のことにもふれられていました。
《ドーキー・アーカイヴというのは勿論フラン・オブライエンの小説のタイトルだけど、そういう名前の出版社もあるんだよね》。《若島 アメリカの小出版社で、それこそどこも出さない小説を引き受ける前衛出版社です。そこからシリーズ名を拝借したという》。最初にシリーズ名を目にしたとき、この版元と何か関係あるのかなあ、と思っていたんですが、そちらが名称の元になったんですね。なるほど。
さらに、その先を読んでいたら、米ドーキー・アーカイヴから出たデイヴィッド・マークソンの前衛小説『ウィトゲンシュタインの愛人』のことが出てきてびっくりしました。というのも、同社の刊行物で唯一、ぼくが所有しているのがこの本だったからです。この作品については、《以前日本のある出版社の人が検討してやはり躊躇して、結局出ませんでした》とも(苦笑)。邦訳が出たらうれしいなあ。
↑これが、手元にある『ウィトゲンシュタインの愛人』の原書(David Markson『Wittgenstein's Mistress』Dalkey Archive、1999)。先に、この版元の本で、唯一の所有本としましたが、本棚を探したら、同じ作者、同じ版元の『Reader's Block』『The Last Novel』も出てきました。
……すみません、シリーズの紹介から大幅に脱線してしまいました。へんてこ海外文学好きが喜びそうな、国書刊行会の新シリーズ、〈ドーキー・アーカイヴ〉。なんだかおもしろそうな感じが濃厚なので、海外文学読みのみなさんは、まずは内容見本だけでもチェックしてみてください。