問題は、本棚、であります。
本棚が、8割ぐらいの稼働率で、買った本を追加する余裕があり、しかも、定期的な入れ替えがきちんとできていて、満杯になることなく、常に余裕のある状態で使えていたら、見た目的にも使い勝手的にも大変いいのになあ。ところが現実はそのような理想から激しく解離した状態にあります。本棚は常時過密状態で、本の動きはありません。というか、本を動かせない。満杯どころかあふれて入らない本たちが本棚の前の床に山積みになっていて、本棚の下のほうの段の使い勝手を著しく下げているだけでなく、大量のほこりの保管庫となって室内の衛生環境を劣化させています。やれやれ。
この駄ブログをのぞきにきてくださるような本好きのみなさんは、おそらく同じような悩みを抱えておられるか、もしくはそういう悩ましい状態になくても、少なくとも共感だけはしてくださるだろうと思うのですが、どうでしょうか。
そんなわけで、この連休、丸一日を割いて、本棚の整理をしました。といっても、通勤時の山の手線のような乗車率180%の車両が、120%ぐらいになったかな、程度の話。本棚に収まりきらない本の山は、見た目的にはほとんど変化がありません。全体として見ると(とくに、当事者以外の目で見ると)事態はまったく改善されていないように見えてしまうという、達成感よりも徒労感のほうが大きい悲劇的な事態に(泣)。ことほどさように、本棚問題は悩ましい、のです。
好きな作家・作品・シリーズ・ジャンルの本たちは、早々に本棚に位置を与えられています。それらは、すでに長い時を経て、ふるいにかけられて残ってきたものなので、少々のことがあっても動かそうという気にならないものばかり。そういうもので本棚が埋まっている以上、多少整理の手を入れたところで、状況に何ら劇的な変化が生まれるはずもないんですよね。
達成感が得られなかっただけではありません。高い段にある本の出し入れのため、踏み台を上ったり降りたりし、さらに、出した本を仕分けたりほこりをはらったりするのに、床にかがみこんで作業をしていたものだから、情けないことに、翌日、激しい筋肉痛……(泣)。トイレを常時ガマンしている人みたいなへんてこな歩き方になってしまい、かがんだり座ったり移動したりするたびに、あー、とか、うー、とか言うものだから、かわいそうな動物を見るような、あわれみにあきれを適度に加えたような微妙なまなざしを家族からは浴び続けています。時間がたって少しましにはなったものの、本稿執筆時点ではまだ筋肉痛の影響下にあるという、情けないにもほどがある事態になっております。嗚呼。
さて。残す本と処分する本の仕分けをするのに、本をぱらぱらとやっていたら、中にはさみこんであった書店のしおりがたくさん出てきました。ぼくは、以前にも書いたことがありますが、本を読むときは、本に何もついていない、はさまっていない状態で読むのが好きで、カバー・帯ははずします。中にいろいろと挟まっていないほうがいいから、文庫に関しては、新刊案内、しおり、読者葉書など、挟み込まれているものはすべて処分してしまいます。単行本の帯ははずして、後ろ見返しにはさんでおきますが、文庫や新書の帯は捨ててしまいます。帯や、本の間に挟み込まれているものは、後々、貴重な資料になったりすることが多いこと、ときには古書価を左右することもあることはもちろんわかっているのですが、ぼくにはコレクション趣味はありませんし、古書価云々が問題になるような本にも無縁なので、そこはわりにざっくりと処分してしまっています。
ただ、例外はあって、好きで集めている一部の作家・作品・シリーズ・ジャンルに関しては、新刊案内(光文社文庫の乱歩全集についている全集の案内など)、しおり(角川文庫の横溝作品にはさまっていた映画化作品のスチールがのっているしおりなど)、帯(同じく、映画のスチールがのっているものやデザイン的に優れているもの、解説やあとがきにはないコメントが載っているものなど)はとっておくこともあります。ただ、それはあくまで例外。
そういうわけで、本を買うと入れてくれる書店のしおりもあまり手元に残りません。買った本を最初に読むときに活用することはありますが、本をとっておく際には、捨ててしまうことが多いからです。
それでも、整理すると、こんなに出てくるんだから、気づかずにそのままにしてあったものも多いんですね。というわけで、今回整理本のなかから出てきたしおりの一部をご紹介。なお、書店しおりはコレクションしている人もいると思いますが、たまたま手元の本から出てきた、というだけで、さしてめずらしいものでも、貴重なものでもありませんので、あまり期待せずにご覧ください。
まずは、神保町の本屋さんのしおりから。
↑すずらん通り沿い、東京堂書店向いの冨山房ビルの1階にあった冨山房書店のしおり。なつかしく思い出す本好きもいるでしょう。同店は、ブックカバー(書皮)もなかなか洒落たデザインでよかったんですが、残念ながらそちらは手元にはありません。
↑東京堂書店。左がいちばん古いのかな。猫のイラストのが少し前のもので、裏にはふくろう店の名も。右端のが現在のものですね。
↑現在使われているデザインも、表に神田神保町店の店名が入ったものと、裏に先日閉店になってしまったアトレヴィ東中野店の店名とイラストが入ったものの2種がありました。現在は裏がブランクのものですね。
↑書泉グランデ&ブックマート。書泉は、かつては、しおりや袋(ビニール)のデザインをどんどん入れ替えて、新しいものにしていくので、それを楽しみにしていた同店の利用者も多かったといいます。現在は書泉だけでなく、よその書店もみな、薄手の紙のものが多いのですが、左端のは、厚手のしっかりした質感のある紙が使われています。その隣のものは、いつごろのものかわかりませんが、裏面の店舗一覧に、西葛西の店があがっていたり、URLにi-modeのものがあがっていたりするのが時代を感じさせます。右3種は比較的最近のものですね。
↑三省堂書店。三省堂書店も、時期によって、バリエーションがありますね。これはいつの頃のかよくわかりませんが、裏面がメッセージノートになっています。
神保町以外のものも。
↑これはリブロのもので、たむらしげるさんのイラストが使われています。裏を見ると、知カード」の案内になっています。「知カード」はぼくは知らなかったんですが、調べると90年代に発行されていたプリペイドカードの1種で、Wikiには《大手書店で図書カードと同様に書籍等の購入に使えた》とありました。
↑こちらは、以前に記事で紹介したこともありますね。紀伊國屋書店グランフロント大阪店オープン時に配布されていたしおり。裏面は広告。
↑こちらは銀座の教文館のもの。ひも付きのしおりはときどき見かけますが、岩波ブックセンターなどもそうですね。
ほかにも、買ったときのレシート、新聞広告・書評などの切り抜き、電車の切符、展覧会の半券など、いろいろ出てきました。本の整理をしていると、思わぬものに出会えて、けっこう楽しかったりもするのですが、とはいえ、仕分けの作業はやっぱりつらくて、我が家から送り出されていく子たちが詰まった段ボールを見ながら、毎晩、泣き暮れています(苦笑)。
(追記)上で紹介したものにかぎらず、入手した書皮や書店しおりのうち、とくに地方のお店のものなど、関東近郊では手に入りにくいものはめずらしいものは、西荻窪のbeco cafeに預かってもらい、同店で開催しているトークイベントの際に配ったりしています。ご興味のある方はぜひ同店でのイベントの際にチェックをお忘れなく。