このコピーにピンとくる方は30代以上の世代でしょうか。なつかしい角川文庫の映画化作品にからめたコピーですね。なんの作品のときのものかは忘れましたが。
その角川文庫/映画で、一大ブームをまきおこしたのは横溝正史の一連の作品。なかでも、『犬神家の一族』は、原作も映画も、『八つ墓村』や『悪魔が来たりて笛を吹く』などと並ぶ、横溝もの代表作の1つであり、もっとも有名な作品の1つでしょう。そのリメイクがまもなく公開になりますね。
- 『犬神家の一族』(監督:市川崑)
- 横溝正史『犬神家の一族』(角川文庫)
今回のリメイクは、監督市川崑・主演石坂浩二のコンビが変わらない、というのがミソ。ならば、デジタルリマスター版でいいじゃん、などという意見もあるようですが、まあ、リメイクでもう一度話題になって旧作を知らないファンが観る機会ができる、というのならばそれはそれでいいかなあ、と思います。それにしても、珠世が松嶋菜々子っていうのはどうもなあ……。
リメイクではないですが、原作ファンとして気になる映画では、こんなのもあります。
- 『スキャナー・ダークリー』(監督:リチャード・リンクレイター)
- フィリップ・K・ディック『スキャナー・ダークリー』(ハヤカワ文庫SF)
ディック・ファンとしてはとっても気になる映画化なんですが、監督がリチャード・リンクレイターってのが個人的にはやや微妙なところ。ブラック兄貴の『スクール・オブ・ロック』は大好きだけど、『恋人までの距離(ディスタンス)』なんてのも撮ってたりするしなあ。実写をアニメにしたという手法的なことで話題になった『ウェイキング・ライフ』もあんまりノレなかったし。
今回はこのウェイキング・ライフ』と同じパターンだというから、なんとなく不安。実際に俳優に演技をさせてそれを加工したらしいんだけど、なら実写でいいじゃん、などと思ってしまうのです。でも、原作は大好きなので、やっぱり観に行くしかないでしょうなあ、ファンとしては。
さて、その原作ですが、最新の翻訳は浅倉久志訳のハヤカワ文庫版。映画と同じ題名になっています。その前には、山形浩生訳の創元SF文庫版(題名は『暗闇のスキャナー』)があり、こちらも訳者あとがきを含め力作でしたが、今回の新版刊行は映画化にともなう版権移動のためだとハヤカワ版解説にありました。浅倉氏の訳もいいと思いますが、訳者あとがきで、その浅倉氏本人が山形訳を大絶賛していますので、興味のある向きは読み比べてみるのもいいでしょう。なお、そのさらに前には飯田隆昭訳のサンリオSF文庫題名は『暗闇のスキャナー』がありますが、これは無視するのがいいと思います。
『犬神家』は12/16から、『スキャナー』は12/9から公開です。「読んでから見るか、見てから読むか」……まだ公開まで少しありますから、みなさんも迷ってみてはいかが。
◆今日のBGM◆
- OST『スクール・オブ・ロック』