先日、仕事の用事で、久しぶりに千葉方面の書店回りをしてきました。まずは松戸へ。新京成で津田沼へ出て、船橋、西船橋、最後は南行徳へ。けっこうな移動距離と店数で、さすがにへとへとになりましたが、見たかったお店を訪ねたり、会いたかった人に会えたりして、収穫大でした。
今回は、仕事の用事での書店回りということで、(最後に登場する1店をのぞき)店内を取材させてもらったわけではないので、大した情報はないのですが、久しぶりのエリアなので、松戸を中心に、回ったお店の様子をごくごく簡単に紹介しておこうと思います。(店内写真はすべてお店の方に断って撮影したものです。写真は12/10の様子で、お店の様子は変わっている場合があります。)。
まずは松戸から。松戸駅周辺には、複数の新刊書店がありますが、最初に訪ねたのは、7月にオープンしたジュンク堂書店松戸伊勢丹店。今回が初訪問です。
↑商業施設内のお店ですので、写真は、エレベータ前からの1枚だけ。
同店は、松戸伊勢丹店、8階にあるワンフロアのお店。560坪は、ジュンク堂書店としてはそれほどのサイズではありませんが、デパート内のワンフロア店舗としては、十分過ぎるサイズです。ちなみに、伊勢丹松戸店の新館6階には、以前は紀伊國屋書店松戸伊勢丹店が入っていましたが、ジュンクオープンの前月、6/30で閉店となっています。
開店から半年弱、そろそろ店内の様子も落ち着いたころだろうということで、池袋から異動になった知り合いに、お店の様子を聞いてみたところ、専門書が十分に置けなくて、ジュンクらしくないお店になっているかも、と話してくれました。いやいや、ジュンク池袋や丸善丸の内と比べればたしかにそうかもしれませんが、ジュンク以外では見たこともないサブジャンルのプレートがずらりと並ぶ専門書の棚を見れば、デパート内のお店としてはもう十分過ぎるほどではないかという印象を受けました。
もちろん、専門書や、デパート内に目立つ年輩客向けの本だけではありません。コミックや学参の量も、いかにもジュンクとしかいいようのない棚の本数・本の点数になっています。後述しますが、この品ぞろえは、中の人にとっては不満のあるものかもしれませんが、周囲の新刊書店にとっては影響がかなり大きいようです。
これまでの書店レポート記事にも何度も書いていますが、新店を訪ねる際には、必ず、そのお店がどんなふうに目に入るか、地元客や初めての訪問客にわかりやすい案内がされているかどうか、を確認するようにしています。
今回、JR松戸駅から伊勢丹へは、行きは線路寄りの道を、帰りは商店街を歩いたのですが、開店から半年経っているせいか、とくに駅や途中の道みちにそれらしい案内が見当たりませんでした。駅にもなかったようです。(見落としている可能性もありますが、書店が目的でやってきた客の目につかなかったのだとしたら、それはそれで問題でしょう。)
↑こちらが伊勢丹の外観。書店の存在を示す垂れ幕や看板の類はありません。また、入り口付近などにも、「本」の案内は出ていないようでした。右は、駅のコンコースからの光景ですが、ブックオフの案内が非常に大きく出ているのがわかるかと思います。これと比べても仕方ないかもしれませんが、あまりにも告知が控え目に過ぎるのではないかなあ、と思いました。
この件を、この後訪問した松戸の他の書店でも聞いてみたところ、開店当初は、駅や電車の車内にも案内がたしか出てたよ、などと教えてくれた方もいらっしゃいました。だとすると、半年ほどで、それらの案内がすべてなくなってしまった、ということでしょうか。
お店の案内というのは、新規オープン時だけに必要なわけではありません。人の流れは当然変わりますし、たまに街を訪れる人だっているわけです。書店は、ふらり客に来てもらうことも重要なわけですから、ふだんそれほど書店の存在を気にしていないような人にも店に来てもらうためには、「本」の看板やそれに類するものがあったほうがいいはずです。たとえば、同じジュンクで、次回のレポートで紹介予定の、大宮高島屋店(旧大宮ロフト店)は、今年の6月に、同じくデパート内にリニューアルオープンしたお店ですが、下の写真にある通り、施設の側面に大きく垂れ幕が出ています。また、この後、ふれる松戸駅西口側にある良文堂もリブロも最近オープンの店ではありませんが、ちゃんと、駅から店名や「本」が目に入るような案内が出ています。
商業施設の上層階にある店が、足元の人の流れから切り離され、なかなか認知してもらえない、上に上がってきてもらえない、という話は、あちこちで耳にします。もう少し、本屋さんが上にあるよ、というアピールをしなくていいのだろうかと、そんなことが気になる訪問でした。
伊勢丹と同じ、松戸駅の西口側には、路面店の辰正堂書店がありましたが、2012年12月に閉店になっています。ほかにTSUTAYAがありますが、書籍の扱いのないお店のようです。すぐそば、TSUTAYAの向かいあたりにはブックオフもあります。
駅ビル、アトレの中には、くまざわ書店松戸店が入っています。くまざわ書店ではおなじみのアクリル什器を多用した店内は、明るくてきらきらした感じ、アトレの客層にきっちりと合わせた店作りがなされています。この日、松戸周辺の各店で、売れ行きやジュンクの影響などの話をうかがったのですが、どの店もなかなか厳しい状況にあるなか、ジュンク出店後に売上げを落としていないのはくまざわ書店だけらしい、といった話もあるお店では聞きました。たまたまなのかもしれませんが、店内で応対いただいた店員さんも、お店のイメージそのままに大変に感じがよくて、平日午後の時間帯にこれだけ店内がにぎわっているのもなるほどという感じだなあ、などと思わされました。
東口側に移動します。松戸の駅前書店と言えば、良文堂書店ですね。
↑松戸駅の改札階、コンコースを東口側に抜けると、ご覧の通り、斜め前に大きく良文堂書店の案内が出ています。左奥には、イトーヨーカドーが入っているプラーレ松戸にリブロの看板が見えます。写真右は、同じ場所から右横を向いたところで、奥の建物には、ブックオフスーパーバザールの案内が見えます。また、看板は写っていませんが、アニメイトも、このビルの下に入っています。こうして見ると、松戸駅周辺、広義の本の店の充実はなかなかのものですね。
圧倒的な品ぞろえのジュンク堂書店、明るくて華やかなくまざわ書店の後で見ると、良文堂書店の「町の本屋さん感」は突出していて、お店の雰囲気といい、本の並べ方といい、規模といい、なんだかとても安心させられます。駅前や商店街にこういうお店があるだけで、うれしくなりますよね。
千葉会他で何度かお目にかかっているTさんがお店にいらっしゃったので、ごあいさつ、しばしおしゃべり(と言っても、こちらが一方的に覚えているだけで、先方はほとんど覚えていらっしゃらないようでしたが……(←よくある;苦笑))。
↑良文堂で買った本。『コウノトリの舞うまでに ガン・ツル・コウノトリに見る野田の自然史』(崙書房)。千葉県流山市にある出版社の本。駅前書店で、こういう地元本(しかも、野鳥本)が平積みになっているのに出会えると、なんだかうれしいものです。文庫も購入。久しぶりの訪問だったので、カバーもかけてもらいました。
イトーヨーカドーなどが入っている商業施設「プラーレ松戸」の5階に入っている、リブロ松戸店へ。
店頭のクリスマスフェアのディスプレイがとてもにぎやかで楽しい感じで、館内を歩く人の目を引いていたのですが、レジにしか店員さんがいなくて、撮影をお願いできなかったのが残念。
新京成線で津田沼へ移動。津田沼も新刊書店がたくさんあって、短時間で回れる街ではないのですが、今回は、仕事の用事だったので、BOOKS昭和堂、丸善津田沼店、くまざわ書店津田沼店の3店のみを訪問してきました。
↑丸善津田沼店では、フリペを入手。いつ行っても足を思わず止めたくなる仕かけや陳列があちこちにあって、さらりと通り過ぎることができないお店です。入り口、レジ近くでは、「「死」よこんにちは。」なる気になるタイトルのフェアが展開中でした。
津田沼の3店は、いずれも特徴がはっきりしていいて、いいですね。これらがみな駅から徒歩ですぐのところにあり、このほかにもさらに芳林堂書店やTSUTAYAやブックエースや(ちょっと離れますが)未来屋書店まであります。利用者には選択肢がいろいろあってぜいたくな環境ですが、お店にとっては競争が大変でしょう。
船橋、西船橋を経由して、南行徳へ。長い書店回りの最後は、先月11月に開店1周年を迎えた(おめでとうございます!)山下書店南行徳店に寄ってきました。駅前の小さなお店だけど、店内にいる時間がとても幸せに感じられるお店です。前回の訪問が昨年の12月ですから、ちょうど1年ぶりの訪問となりました。
前回のレポートでも、お店の様子をくわしく紹介していますが、1周年ですし、個人的に大好きな書店員さんのいるお店でもありますし、1年であちこちがいろいろ変わっていたこともありますから、店内の様子を少し紹介したいと思います。
↑にぎやかな文芸・人文棚前の平台。
↑お店の規模や立地を考えれば、この種の本は、それほど多くは置けないはずなんですが、ご覧の通り、厳選された「本の本」が並び、『本屋図鑑』はなんと面陳になっています。
↑実用棚エンドの平台には、犬猫関連本が並んでいます。その隣には、コーヒー関連のムックや雑誌特集が集められ、イラスト付きPOPのほか、コーヒーカップなどで飾られています。写真でわかるでしょうか、コーヒーカップは中身が入っているかのような工夫がされ、手描きのラベルには「YAMASHITA COFFEE」と入っています(笑)。この同じ列には、コーンビーフを使ったレシピ本を並べた一角があり、そこもディスプレイに工夫がされていておもしろかったのですが、写真を取り損ねてしまいました。
↑昨年の訪問時もクリスマス向けのディスプレイが工夫されていましたが、今回はこのような感じで、先頃なくなったやなせたかしさん追悼の意味もあるのか、アンパンマン関係が真ん中の目立つところに。
↑文庫棚エンドの平台で展開中のフェア「永遠の零戦」。棚側面の飾り付けは写真ではわかりにくいかもしれませんが、手作り感にあふれていて、目を引きます。零戦がらみの本が続けて出たこともあり、関連フェア自体は、あちこちで目にしますし、実際、この日回ったお店でもいくつも目にしていますが、この規模のお店で、ここまで手をかけて展開している例はそんなにはないはずで、この日見た類似フェアのなかで、いちばん印象的なものになっていました。
本を魅力的に見せる工夫を惜しまない店員さんがいる店は、たとえ、お店が小さくても、本の数がそんなに多くなくても、楽しい時間を過ごせるものだなあと、そんなことに気づかせてくれるお店です。こういうお店が駅前にあって、毎日立ち寄れるなんて、近隣の本好きのみなさんがうらやましくなります。
ところで。書店回り当日の朝、たまたまこんな記事を目にしました。「iOS版「Yahoo!地図」が中身一新、歩きスマホ対策を実装、片手操作性の改善も 最新すぎる情報表示、「新しい島」やリニモ計画線まで」(12/9 INTERNET Watch)。
記事によれば、《文字入力不要で情報を検索できるようにすることでも、片手操作性の改善を図っている。まず、地図を検索する際に「住所から探す」機能により、ディレクトリを辿って都道府県や市区町村などをタップしていくことで地図を検索・表示できるようになった。また、店舗などを検索する際に、ジャンルをタップするだけで付近の店舗を探せる「ジャンル検索」機能を拡充した。「カフェ」「レストラン」「書店」「銀行」「コンビニ」「ラーメン」「ホテル」など16ジャンル用意されている》とあります。
おお、ジャンルに「書店」も入っているではありませんか。しかも。《地図データについては、地下街のマップも詳細な出口案内とともに掲載。また、「地図が新しい」ことも、Yahoo!地図のこだわりだという。地図会社から提供を受けている地図データに加えて、ヤフーが独自に調査・編集している最新情報も表示。例えば、オープン予定の大型ショッピングモールや開通予定の高速道路も、予定日とともに地図上に掲載している。最近では、小笠原諸島・西之島付近で噴火によってできた「新しい島」もいち早く掲載。さらには、開通はかなり先になる東京・名古屋間のリニア計画線のルートも、小さい縮尺の地図では点線でざっくりと表示される》などと、情報の鮮度に関して自信のあることがうかがわれる紹介の仕方になっています。
これは書店回りに利用しない手はありませんよね。松戸は町自体が久しぶりの訪問ですので、とくに役立ちそうです。早速、書店回りに活用してみました。で、以下が、松戸駅周辺で、「書店」を選んでみた状態です(12/10時点の情報です)。
ご覧の通り、松戸駅西口の辰正堂書店がまだ表示されていますし、伊勢丹も、紀伊國屋書店のままになっています。伊勢丹のほうは、紀伊國屋書店が6月閉店、ジュンクオープンが7月で、まだ半年にもなりませんからまだいいとしても、辰正堂書店は閉店からまもなく1年ですからね。もちろん、こまかな店舗の状況をすべて最新のものにしておくのが困難なのはわかります。でも、《「地図が新しい」ことも、Yahoo!地図のこだわりだという》のを目にしていただけに、ちょっとがっかりもしてしまいました。こういうデータって、どのようなデータベースが元になっているんでしょうね。また、どのような頻度で更新されるものなんでしょうか。書店の開店閉店情報をウォッチしている者として、とても気になりました。