音楽は好きですが、ライヴを映像で観ることにあまりこだわりがなくて、音楽DVDについてはさほど熱心にチェックしているわけではないのですが、先日、新宿タワーでこれを目にしたときは、即買いせざるを得ませんでした。
- ブラッフォード『ロック・ゴーズ・トゥ・カレッジ』
ビル・ブラッフォードのソロ・プロジェクト/バンドであるブラッフォードの1979年のライヴ映像。何がすごいって、そのメンバーです。ドラムはもちろんビル・ブラッフォード、ベースにジェフ・バーリン、キーボードにデイヴ・スチュワート、そして、なんとなんと、ギターはアラン・ホールズワースなのです! ホールズワースがブラッフォードに在籍していたのはごく短期間で、ライヴ音源すら公式リリースはないというのに、まさか映像作品が残っているとは! しかもそれが今頃出てくるとは! まさにファンなら感涙必至、文字通りの「発掘」映像作品です。
演奏されているのは、『フィールズ・グッド・トゥ・ミー』『ワン・オブ・ア・カインド』からの8曲。
ライヴでこれら複雑な曲を淡々とこなす4人のみな若いこと。それぞれにださださな田舎の英国青年的なルックス(ジェフ・バーリンはアメリカ人だけど)からは想像もできないものすごい音楽が溢れ出しまくっています。演奏は言うまでもなくすばらしいのですが、やはり特筆すべきはアランのギターでしょう。以下、ちょっとギター者にしかわからぬようなことを書きますが、お許しください。
アランがこのライヴで弾いているのははナチュラルフィニッシュ、2ハム、シンクロナイズドトレモロのストラトタイプのギター。やはりアランにはストラトシェイプのギターがよく似合います。アンプがマーシャルのせいか、音が後年のソロ作品で聴かれるような伸びやかなトーンではなく、ややくすんだ音色なのと、ミックスのせいなのかなんなのか、ギターの音がややオフ気味なのがファンとしてはちょっと物足りないところですが、東京ライヴの映像もDVD化されていない今、動くアラン、しかもシンタックスではなくギターを弾くアランを観られるだけでも幸せだと言うべきでしょう。ソロ名義作のように終始弾きまくりとはいかないものの、存分に聴かせ、そして見せてくれます。手元もけっこうアップになりますから、ソロになったらギターキッズのみなさんはまばたき不可能です。
途中でギターをSGに持ち替えます。『Velvet Darkness』のジャケでSGを手にしている姿を目にしているとは言え、アランといえばストラトシェイプのギターというイメージが強く、実際に弾いているところを目にするととても新鮮な感じがします。ジャケ写のものと同じかどうかわかりませんが、ビクスビー付きのモデルでした。アーミングによるこまかなビブラートを多用するのがアラン流。ビクスビータイプのものはシンクロナイズドに比べるとチューニングがかなり不安定なのですが、SGでこんなにアームを使ってチューニングはだいじょうぶかなあと見ていて心配になるほど、ストラトとまったく同じようにアームを多用していました。
個人的には、もう少し収録時間が長く(全部で40分ほど)、さらにボーカル曲抜きで全曲インストだとなおよかったのですが(余談ですが、アルバムでも歌っているアネット・ピーコックがライヴにも出てくるんですが、すごく苦手なタイプなんです)、上にも書いたように、アランのギタープレイを観られるだけでも価値ある1本であることはまちがいありません。ギター者はDVDショップにレッツゴー、店頭から消える前に即入手することを強くおすすめします。
なお、カタカナのタイトルになっていますが、輸入DVDに日本語の帯とライナーノーツがついたものになっています。
◆今日のBGM◆
- U.K.『U.K.』
ブラッフォードとホールズワースと言えば、これ。日本盤には「憂国の四士」なんて、ちょっと気取った格好いい邦題がついてましたね。