明日はクリスマスイブですね。イブを含むこの3連休、書店員のみなさんは、きっとギフトラッピングでてんてこまいでしょうね。ほんと、おつかれさまです。
本好きのみなさんは、この季節、家族や友人や恋人に本を贈ったりするんでしょうか。ふだんから本の話を書いたり話したりばっかりしているせいで、おそらく、プレゼントなんてしなくても本をたくさん買ったり読んだりしているのだろう、下手にプレゼントなんかしたら重なってしまうに違いない……そんなふうに思われているからでしょうか、本をもらう機会は昔からあんまりありません。でも、いいんです。本はもらうよりあげるほうが好きなんです。昔から、本をあげるのは大好きなんですよね。
そんな、本をあげるのが好きな身には、クリスマスは最高の機会の1つ。家族持ちなので、クリスマスと言えば、やはり我が子へのプレゼント。誕生日と並んで、1年の最大の関心事の1つです。娘の好みや欲しいものについて、ふだんの会話からヒントを収集しつつ、早くから、今年は何をあげようかと、あれこれ考えながら過ごします。
ところで、クリスマスと言えば、この季節、毎年読み返している本があります。その本のことを、夏葉社の新刊『冬の本』の、「吉っ読」参加店の特典として配布している「ブックトラック」増刊に寄せた文章に書きましたので、以下に引用します。
毎月が十二月であってほしい
十二月生まれなので、誕生日とクリスマスという、子どもにとっての二大イベントがいっぺんにやってくる十二月は、子どものころから一年でいちばん好きな月だ。毎月十二月だったらいいのになと、小学生のころなど、本気で思っていたものだ。今も少し、思う。
さすがにこの年になると、十二月になったからといって、子どものころのようなわくわく感を感じることはなくなってしまったが、子を持つようになって気づいたことがある。クリスマスプレゼントは、もらうのもいいが、あげる側になるのも楽しいものだということ。今年はどんな工夫を凝らそうか、何をあげようか……子どもの喜ぶ顔を見たくて、そんなことをあれこれ考えるのが、こんなに楽しいことだとは思わなかった。
そんな、にわかサンタ気分を味わうことになる十二月に、毎年、必ず読み返している本がある。トールキンの『サンタ・クロースからの手紙』だ。自分の子どもたちに向けて、トールキンがサンタになりきって書き続けた絵入りの楽しい手紙。それをまとめた絵本である。ふるえながら書いたような独特の手書き文字や、お世辞にもうまいとは言えない、しかし味のあるへたうまのイラストもすばらしいし、サンタの助手をつとめる北極熊など脇のキャラもいい。
サンタになりかわって子どもに手紙を送る……簡単なことのように思えるが、出来合のカードを買ってきて、サインしておしまい、ならともかく、この分量この内容の手紙を送り続けるのは並大抵のことではない。子どもが幼いときに数年続けるだけだとしても、子どもたちを楽しませようという本物の気持ちと強い意志がないとできないことなのに、トールキンはそれを二十年の長きにわたって続けたのだ。驚くほかない。書いたトールキンもすごいし、それを受け入れ続けた子どもたちもすごいと思う。
『サンタ・クロースからの手紙』を読み返しながら、さて、今年のクリスマスはどうしよう、と考える。絵入りは無理かもしれないけれど、ちょっと長めの、物語仕立ての手紙を娘に書いてみるのもいいなあ、などと思ったりする。
毎年、そのようなことを考えている気がするが、まあ、気のせいだろう。
数日前のこと、仕事中に、娘から電話がかかってきました。「パパ、あのね、前に欲しいって話した『○○○』だけど、あれ、サンタさんに頼んだから、パパ、買わなくていいからね」。
娘はまだ小学生で、サンタさんの存在を信じていたりするものですから、こういうリクエストになっちゃうのですが、サンタ=パパとしては大変です。というのも、このときの娘のリクエスト本、品切れのコミックだったんです。
こんなブログを書いているぐらいで、しかも本業は出版関係者ですから、本を探すのは得意なほうです。でも、やっぱりジャンルによっては、得意不得意があります。今回のリクエストは、当方に縁の薄い少女もののコミック。超のつく人気作や有名作品ならまだ探しやすいのですが、そういう作品ではありません。しかも、品切れになったのも割に最近で、中途半端な古さ。つまり、すごく探しにくい作品なのです。猶予は1週間。パパサンタにはかなり厳しい注文です。この1週間は、古書店のマンガコーナーと、ブックオフのコミック棚、そればっかり見てた気がします(苦笑)。
クリスマスには、毎年、本はプレゼントしています。もちろん、ふだんは市販の本からよりすぐりのものを選んでプレゼントしているのですが、毎年同じやり方だとつまらない。というわけで、今年は、いくつか用意したクリスマスのプレゼントの1つに、自作の本を入れてみました。
娘と動物(わが家にいるぬいぐるみたち)を主人公にした、オリジナルのストーリーです。それを自分で書いて、書籍用紙にプリンタで刷って、自分で製本しました。表紙は仮フランス装で、スピンもついています。本業のそれとは違って、文字通り「ゼロ」からの本作りは大変だったけど、でも、本を手作りするのは、とても楽しい作業でした。
親からのプレゼント、それも、手作りの品を喜んでくれるなんて、今だけのことでしょう。毎年、プレゼントを用意しながら、今年が最後かもなあ、と、そんなことを思ったりしています。
明日の晩は、多くのお父さんたち同様、ぼくもサンタ役をつとめます。去年のクリスマスはどんなだったかなと、昨年娘がサンタさんに書いた手紙を読み返してみました(娘は、毎年、サンタさんに、手紙とプレゼントを用意しているのです。もちろん、それをパパが持っているのは内緒です)。その手紙には、プレゼントへのお礼のことばなどとともに、帰り道、寒いから気をつけてくださいね、などと、帰路を気遣うことばが書いてありました。昨年のクリスマス以来何度も読んでいる手紙なのに、あらためて読み返すと、思わず涙が出ます。帰り道も何も、サンタ=パパは、すぐ隣の部屋に帰るだけなんだけどね……。オリジナル本を作るのは、けっこう大変だったけど、でも、このような手紙を読むと、苦労して作ってよかったなと、そんなふうに思えました。
ちなみに、娘がサンタさんにリクエストした、品切れコミック、なんとか無事に入手できました。きれいにクリーニングして、かわいいカバーをかけて、包装紙にくるんであります。明日、枕元に届けます。きっと、またサンタさんへの手紙が用意されていると思うのですが、今からそれを読むのがとても、とても、楽しみです。
クリスマス、たくさんの子どもたちが、すてきな本を手にすることができますように。