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空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

少年少女昭和ミステリ美術館に感涙

本日も残業でよれよれの空犬です。仕事の愚痴は書くまいと、つい先日も決心したばかりなのに、毎回こんなふうに始めてるなあ(苦笑)。さすがに、朝から晩までゲラと格闘の日々が続くとね、さすがにね。20代のころみたいには無理もきかないし。ふう。


こんなときぐらい、ブログの更新はさぼって、せめて、夜、寝るまでのわずかな時間ぐらい、好きな本と音楽とお酒でのんびり過ごせばいいのに、と、我ながら思うんですが、どうしても紹介しておきたい本が出てしまったので、書いておこう。久々の乱歩ニュースでもあります。


  • 森英俊・野村宏平編著『少年少女 昭和ミステリ美術館 表紙でみるジュニア・ミステリの世界』(平凡社)

少年少女ミステリ美術館 表1少年少女ミステリ美術館 表2

乱歩者・探偵者は、書名だけでわくわくせざるを得ない1冊ですが、この表紙、ご覧くださいな。光文社版の「少年探偵 江戸川乱歩全集」の『青銅の魔人』ですよ。絵はもちろん、松野一夫さん。ぼくはポプラ社版全集(絵は柳瀬茂さん)世代で、思い入れもポプラ版にほうにあり、文庫化されたときは大喜びで全巻そろえて、ボックスまでゲットしちゃった話はこの空犬通信にも書いちゃったりしています。光文社版は数冊しか持ってないんですが、光文社版の絵もいいんですよねえ。もうこの表紙だけでのけぞりますよね。


で、くるりとひっくり返して、表4(裏表紙)を見ると、クイーンにルパンにオヨヨ、さらに、おおー! 我が偏愛探偵作家の1人、香山滋の『少年探偵Z9(ゼットナイン)』ではないですか! 香山はレコクターではない空犬がめずらしく蒐集対象としている数少ない作家の1人なんですが、何しろ、本が高くって、ちっとも蒐集が進んでません。これも、古書展・店で見たことあるけど、どっちも万だったから、もちろん未所有。こういうところに出てくるだけで、うれしいなあ。


……とまあ、そんな個人の古本悔しい話はともかく、表紙からしてこのノリですよ。探偵者としては、中を開けるのがうれしいようなこわいような、そんな本ですよね。オールカラーで、昭和の探偵者なら驚喜しそうなシリーズ・作品の書影がぜいたくに紹介されています。まさに、書名に偽りなし、探偵者なら必ず手元に置いておかなければならない、必携必読の1冊だと思いますよ。


ぼくは、本の見た目やたたずまいが気になるほうで、好きな作品は、装丁や造本込みで、まるごと楽しみたいタイプです(関係ないけど、音楽もそうです。だから、いまだにアナログ盤にこだわっていたりするんですが、それはまた別の話)。この空犬通信で何度も書いてきているとおり、乱歩はぼくにとっては、超をいくつつけても足りないぐらいの特別な作家なんですが、作品を読むだけなら、光文社文庫版全集があれば、それでいいんですよね。でも、それだけではやっぱりものたりないのです。乱歩の少年ものは、ぼくにとっては、やはりポプラの、あの表紙と一体になってるんですよね。


そういう、本の中身と、モノの記憶やモノへの思い入れを分離しがたいタイプの本読みにとっては、このような本はまさに宝物となるでしょう。あわてて読むような本ではありませんから、これからしばらく、毎晩、お酒を片手に、ゆっくりゆっくり眺めていきたいと思います。昔読んだ本をなつかしく思い出したり、入手できぬ本への憧れを募らせたりしながら。


例によって、どんな本がどう取りあげられているか、といった、本の内容にはあんまりふれてませんが、中で紹介されている書影のサンプルも含めた、くわしい内容の紹介は、本書の企画・編集にも携わっているという藤原編集室のサイト、〈本棚の中の骸骨〉の、こちらのページで見られますので、値段で迷っている方はぜひチェックしてみてください。


なお、乱歩のことばっかり書いてますが、書名に、そして表4にある通り、世界のも日本のも、「ジュニアミステリ」の範疇に属するものが広く取りあげられていますから、乱歩者以外の方にもいいと思いますよ。


乱歩関連では、この本もありますね。


  • 紀田順一郎『乱歩彷徨 作家の戦中戦後を解読する』(春風社)

10月中旬刊行予定、というのを新刊案内で見かけたので、毎日のように書店をのぞいているんですが、まだ出ていないのかな。これも刊行が楽しみな1冊です。紀田さんと言えば、今月の新刊として、こんな本も出ています。


  • 紀田順一郎『幻想怪奇譚の世界 』(松籟社)

2008年度日本推理作家協会賞を受賞した同社刊の『幻想と怪奇の時代』の続編的な1冊のようです。こちらにも、乱歩を取り上げた文章がありますから、乱歩者はチェックをお忘れなく。海野や虫太郎、久作らにふれた文章もありますから、乱歩者というより探偵者のみなさんはチェックを、と書いたほうがいいかもしれませんね。


あと、乱歩関連のニュース、そして、乱歩と言えばこの人の、正史関連のニュースもまとめて紹介しておきましょう。




読売のほうは、芦屋市谷崎潤一郎記念館(兵庫県芦屋市伊勢町)で開催中の特別展示「妖しの世界への誘い」の紹介記事。


どんな展示かというと、《ミステリーを通じて交流していた谷崎、江戸川乱歩、横溝正史を紹介するという異色の企画》とのこと。おお、なんだかおもしろそうではないですか。


乱歩・正史読みなら、二人にとって、谷崎が特別な作家であったことは説明するまでもないでしょう。この3人を組み合わせた特別展というのは目のつけどころとしてもいいですよね。3人にまつわる展示品も100点にのぼるというから、見応えもありそう。これは見に行きたいけど、さすがにこの忙しいときに芦屋ではなあ(泣)。


会期は12/25まで。関西の乱歩者のみなさんは、ぜひ空犬の代わりにチェックしてきていただければと思います。関東にも巡回してこないかなあ……。


一方の朝日のほうは、横溝が没後30年を迎えたこと、それに合わせて、ゆかりの地、岡山県倉敷市真備町で記念イベントが始まることを紹介した記事。


正史と同地の関わりについて、《神戸生まれの横溝は1945年、一家で真備町へ疎開。同町で過ごした3年余りで、金田一を初登場させた「本陣殺人事件」のほか、「獄門島」などを執筆。「八つ墓村」の着想もこの地で得た》といったあたりは、正史読みにはまあ基本情報のようなものですよね。で、どんなイベントか、というと。


《「巡(めぐる)・金田一耕助の小径(こみち)」と名付けたイベントでは、22日に全国の横溝ファン数十人が金田一のコスプレ姿で集合。「本陣」で金田一が聞き込みをしたたばこ屋などのコースをたどる。町民約40人が小説の登場人物に扮し、雰囲気を盛り上げる。》コスプレ大会かあ(苦笑)。


《金田一の出身地は小説では東北だが、倉敷市や商工会でつくるイベントの実行委員会は「生み出された真備町こそが生誕の地」。来年1月までの期間中に、シリーズの登場人物3人の像を街角に順次建て、お披露目していくという。22日に1人目を除幕するが、「いったいだれか推理して」とファンに呼びかけている。》ということなので、ここは正史読みのみなさんはぜひ「推理」してみてはいかが。


《11月26日には推理作家の有栖川有栖さんらが横溝について語る討論会も。真備ふるさと歴史館(倉敷市真備町岡田)では期間中、「八つ墓村」などの横溝直筆の草稿や原稿を展示。近くにある旧横溝宅とともに無料で見学できる。》


ああ、これもぜひ行きたいけど、岡山じゃあなあ。ふだんならともかく、こんなに仕事が詰まっているときに、大阪だの岡山だので、こんなイベントがあるんだからなあ。うれしいような、悲しいような、です。


コメント

相変わらずC国です。

空犬さん、お久しぶりです。後輩のTです。私は相変わらずC国D連市にいます。一週間置き位にダメ元で「お気に入り」の中の貴サイトをクリックしておりましたが、本日、奇跡的に繋がりました!またいつ見られなくなるかもわかりませんので、慌ててコメントする次第です。久しぶりの訪問でしたが、相変わらずのハイクオリティな内容に、瞠目しております。これから、過去の記事も少しずつ読ませていただきます(読めるうちに....)。

  • 2011/10/25(火) 13:14:41 |
  • URL |
  • tksknic #-
  • [ 編集 ]

近くて遠い

tksknic くん>
おお、久しぶりだなあ。どういう経緯で閲覧できたのか
よくわからないが、とりあえず、よかったよかったw。

  • 2011/10/25(火) 23:34:06 |
  • URL |
  • 空犬 #-
  • [ 編集 ]

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