店頭で中を開いて、思わず、おおと声が出そうになりました。
- 埼玉県立近代美術館監修、大越久子著『小村雪岱 物語る意匠』(東京美術)
版元の内容紹介によれば、《デザイナーの先駆け、小村雪岱の装幀と挿絵を厳選した待望の名品集決定版》で、《大正から昭和初期にかけて、装幀・挿絵・舞台美術の分野で人気を博した小村雪岱は、まさに現代でいう「デザイナー」の先駆的な存在。近年、再評価もめざましい雪岱の貴重な装幀本を撮りおろした写真集、珍しい挿絵や肉筆画を集めた画集として見応えがある》という1冊。美術館や古書目録でしかお目にかかれないような貴重な美麗本の図版がたっぷりと収録されています。
これ、先日、東京堂書店で購入したんですが、冒頭に書きました通り、どれどれという感じで、店頭で手にして、中を開いてみた際、取り上げられている本のあまりの美しさと、そしてそれらの図版を惜しげもなくカラーで次々に見せていく本の造りとに、びっくり、思わず声を上げそうになってしまったほど。
購入後、自宅で、あらためて、落ち着いてページをめくってみましたが、やっぱりすばらしくて、ページをくるたびにため息が出ます。取り上げられている本の、美しさに、豪華さに。これらの本は、書物というより、美術品、工芸品に近い手のかけかたといっていいかもしれません。どれだけ電子化が進んでも、ある種の本は電子の世界には置き換えられない存在として、今後も残っていくと思われますが、ここで紹介されているような本たちは、確実にそのような分類に含まれるものたちであるはずです。電子化などということばが概念をあっさりとはねつけてしまいそうな、ものすごいオーラを放っています。実物が目の前にないのに、印刷ページからでさえそのような感じが漂ってくるのですから、実物を目にしたら、手にしたら、いったいどんな感じがするだろう。そんなふうに思わずにはいられません。
もうずいぶん前になりますが、金沢の泉鏡花記念館を訪ねたことがあります。この本にも取り上げられている、雪岱の作品に彩られた鏡花の初版本を見ることができるのですが、そのときの感激をちょっと思い出したりしました。
オールカラーで、160ページ。これが(税抜で)3000円を切っているとは信じられないような感じです。「本」という「モノ」のもつ力のようなものを実感させてくれる1冊。泉鏡花読みでなくても、小村雪岱の名を知らなくても、楽しめるのではないかと思いますし、本に関わる人なら一度は目にしておいて損はないのではと、そんなふうに思います。
美しい本、装幀・デザインに興味のある人はぜひ。