終了直前の、こんなタイミングでの紹介で申し訳ないですが、あさって、7/4までです。
- 「『角砂糖の日』増刷記念 山尾悠子の世界」(LIBRAIRIE6)
山尾悠子さんの歌集『角砂糖の日』3刷の刊行(新刊の刊行ではなく、増刷記念、それも3刷というのがおもしろいですね)を記念して開催されている同展。会場のLIBRAIRIE6の案内によれば、《山尾悠子の自筆短歌カードと関連書籍を展示するほか、『角砂糖の日』(LIBRAIRIE6発行)の挿画を担当した合田佐和子/まりの・るうにい/山下陽子の作品もあわせて展示いたします》というもの。
会場には、『角砂糖の日』の収録短歌を、作者が1点ずつポストカード大の紙に直筆で書いた「自筆短歌カード」が展示されています。上の内容紹介にもある通り、同書の装画関連作品(販売もあり)や、山尾悠子の著作の一部も展示されています。現在でも入手可能な『山尾悠子作品集成』以降の、最近のものはもちろんですが、すでに品切れになっている過去作品のうち、『仮面物語』(徳間書店)、『夢の棲む街/遠近法』(三一書房)の現物が展示されているのが目を引きます(販売はなしで、展示のみ)。
とくに、著者の初にして唯一の長編である前者は、著者が文庫化も復刊も辞退している作品だとされていますから、こういうかたちで展示がされる機会自体、めずらしいかも。(とくに前者は)古書でもめったに見かけない本なので、眺めることしかできませんが、ファンには実物を目にするいい機会かもしれません。
『角砂糖の日』がどんな本かは、ファンには説明不要でしょうが、念のため、簡単にふれておくと、深夜叢書社から1982年に刊行された著者の(現時点では)唯一の歌集。歌集ですし、版元が版元ですから、部数も少なかったのでしょう。深夜叢書社版は古書でもなかなか見かけませんし、たまに見かけてもけっこうな値段がついていることが多い本で、熱心な山尾悠子読者にも、これだけは持っていない読んでいない見たことがないという人は決して少なくなかったろうと思います。そんなファン泣かせの本だったわけですが、2016年にLIBRARIE6から新装版が刊行されました。
- 山尾悠子『角砂糖の日』(LIBRARIE6)
全面的に装いも新たにし、「小鳥たち」が新たに収録されるなど、ぜいたくな造りで生まれ変わっています。マニアの間では話題になりましたが、こちらもあっという間に売り切れてしまったようで、当方のように、気づくタイミングが遅れた読者は再び悔しい思いをすることになったのでした。
で、今回、3刷が刊行され、(少なくともしばらくは)ふつうに買えるようになったというわけです。ただ、これまでの経緯を思えば、安心はできませんから、ファンはできるだけ早く入手しておくのがいいでしょう。
この新装版、写真でもわかりますが、造本もすばらしく、手にするだけでうれしくなるような存在感のある1冊になっています。元版、旧版にどうしてもこだわりたい人以外は、ぜひこの新装版、復刊版をおすすめしたいと思います。
展示会場では販売もされています。会場で購入すると、限定特典として「山尾悠子の短歌栞」がもらえますよ。
今回の会場のLIBRAIRIE6、ぼくは初めての訪問だったんですが、名称が「LIBRAIRIE6 /シス書店」となっている通り、ギャラリーに小さな書店スペースが併設されたかっこうのスペースです。レジ脇にある書店スペースはごくごく小さなもので、本も厳選されたものがわずかに並ぶだけですが、山尾悠子ファンが反応しそうな幻想系の作家や幻想系の美術家の名前がずらりと並んでいます。
この「『角砂糖の日』増刷記念 山尾悠子の世界」、7/4までですので、山尾悠子ファンは、急いで駆けつけてください。わざわざ行く価値のある展示ですよ。
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