戸川安宣さんから新刊を贈っていただきました。
- 戸川安宣『ぼくのミステリ・コンパス』(龜鳴屋)
版元の内容紹介を引きます。《「1978–1992。当時のミステリーの行方を指し示す、戸川安宣の名物コラム集。13年にわたって朝日新聞に連載されたミステリ時評コラムを全収録》。
カバーなし、表紙と背は箔押し。105×165ミリで、手にしっくりくるサイズです。ご覧の通り、すてきな造本で、手にするだけでうれしくなります。
613部限定で、ぼくの手元のものは163となっていました。いしいひさいちさんによる戸川さんのイラストをあしらった検印紙代わりのようなものが奥付に貼付されています。当時、朝日新聞連載コラム「コンパス」を担当した記者、草薙聡志さんが稿を寄せています。解説として本文巻末に収録せずに栞として別紙の挟み込みにするなど、本作り全体に遊び心が感じられますね。
自分が関わった本でなんですが、戸川さんには姉妹編みたいなタイトルのこちらもあります。『ぼくのミステリ・クロニクル』(国書刊行会)。こちらの『クロニクル』には、『コンパス』の内容に関連するエピソードや『コンパス』で取り上げられている作家や作品がたくさん出てきます。併せ読みすることで読書の楽しみも増すことかと。ぜひこちらも一緒に。
今回の『コンパス』の版元、龜鳴屋(「かめなくや」と読みます)は、ユニークなセレクトの本を凝った造本で送り出している金沢の出版社。同じく戸川さんが関わったものでミステリ関連の本としては、『マンドレークの声 杉みき子のミステリ世界』がありますね。西村賢太の読者なら、『稚児殺し 倉田啓明譎作集』や、『藤澤清造貧困小説集』の出版元としてその名を知っている人もいるかもしれません。
ふつうの新刊書店でふつうに目にする機会はあまりないかもしれませんが、作家・作品のセレクトといい、造本といい、本好きの興味を引きそうな本をいろいろ出している出版社ですので、今回の戸川さんの本で初めてその名を知ったという方は、同社のサイトをのぞいてみてはいかがでしょうか。