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空犬通信

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今さらなぜ!?……突然訪れたマイ“松本零士”ブーム

先日読み終わった、『はい、こちら国立も天文台』(新潮文庫)は、やや小言爺的愚痴っぽいノリであるのをのぞけば、なかなかに楽しい読み物でした。本文を読み終えて、ふと解説の名前を見ると松本零士


前から読みたいなあと思っていた、天文入門の古典、荒木駿馬の『復刻版 大宇宙の旅』(恒星社厚生閣)。書店で見つけられず、ネットで注文したのが届いたので見ると、帯の絵と文は松本零士。絵はメーテルと鉄郎で、コピーにはこうあります。
《この本に巡り合えなかったら/確実に自分の歩む道は/違ったものに/なっていただろう。》
大宇宙を舞台にした数々の名作で子どもたちを熱狂させまくり、彼らの目を夜空に向けさせた、SF少年にとっては神様のような人がこの絶賛ぶり。かつて松本漫画を読みまくった元小学生としては見逃すわけにはいきません。



後者はまだ途中ですが、なるほど、しっかりした内容のものは時の経過に耐えうるものであることがよくわかる1冊です。50年以上前の本(初版は1950年)、それもフィクションならともかく、宇宙論の本が今なおおもしろく読めるというのは、ある意味驚異的なこと。本作りに関わるものとして、このような本が残せたらどんなにか幸運なことだろうと、思わずにはいられません。


そういえば、最近、梅図かずおや大城のぼるらの古典漫画をばんばん復刻している小学館クリエイティブから、松本作品も復刻されていますね。たまたまいただいたりしたので、最近の漫画は読まないぼくも、かつて慣れ親しんだ巨匠たちの初期作品なら、というので、先頃読んだばかりです。


  • 松本零士(松本あきら)『宇宙作戦第一号』(小学館クリエイティブ)
  • 松本零士(松本あきら)『緑の天使』(小学館クリエイティブ)


旭太郎・大城のぼるの『火星探険 復刻版』(小学館クリエイティブ)の帯、それに付録にも松本零士の名前が見えます。



というわけで、漫画から離れて久しく(小学生の時の知識でストップしています)、ふだんは漫画にはまったく縁のない読書生活だというのに、なぜかこのところ妙に松本零士づいているのです。すると、急に小学生の頃に読みまくった一連の松本SF漫画がむしょうに読みたくなってきます。早速、漫画古書店やネットを物色、とりあえず、ぼくがなつかしいと思える作品いくつかをゲット(こういうときに大人買いできる身分なのはうれしい)、一気読みしてしまいました。


  • 『宇宙戦艦ヤマト』全3巻(秋田書店)
  • 『宇宙海賊キャプテンハーロック』全5巻(秋田書店)
  • 『クイーン・エメラルダス』全4巻(講談社)
  • 『完全復刻版 惑星ロボ ダンガードA』全2巻(秋田書店)

松本零士作品

最初の3シリーズは、アニメ/映画にもなった説明不要の人気作品ですね。いずれもなつかしく読み返したのですが、ハーロックとエメラルダスって、未完なんですよね。ハーロックのほうはまだしも、エメラルダスのほうは、なぜ放浪の旅を続けているのかも、トチローとの関係が具体的にどうなのかも、海野弘とこの後どうなるのかも、さっぱりわからぬまま、どうにも落ち着かぬ幕切れです。ネットで調べればそれなりに情報は得られるのでしょうが、本で読んでいない物語の情報を、本でないところから、本読みが得るというのもしゃくなもので、そのままです。やれやれ。


この3つに比べると、『ダンガードA』は知らない人もいるかもしれませんね。松本作品としては異色のロボットもので、わたくし空犬は『冒険王』に連載されていたときにリアルタイムで読んでいたのです(年齢がバレますね)。松本氏と言えば、やはり船と飛行機。折からのロボットアニメブームに合わせて手掛けたもののようですが、やはりご本人のやる気もなかったのでしょう。原作では、最終話の見開きページまでロボットが登場しないという、ありえないロボットものになっています(アニメ版はさすがにテレビ局やスポンサーとの関係で早々にロボットが出てきてましたが)。でも、男性主人公の成長物語が核になっている点や、脇役にどこかで見たようなメンツがそろっている点、敵キャラが強烈な選民思想の持ち主である点など、異色作品とはいえ、全体に松本色は濃厚です。ファンに愛される作品ではないのでしょうが、なつかしさもあって、けっこう楽しめました。


いやあ、それにしてもなつかしいなあ、白い背に鳥のマークの、この秋田書店のサンデーコミックス(涙)。エメラルダス以外の3作がこのシリーズです。小学生時代のぼくにとって、漫画といえば秋田書店と小学館でしたが、なかでも手塚の『バンパイヤ』『どろろ』『海のトリトン』、石森の『サイボーグ009』、一連の松本作品を含むこの秋田書店のサンデーコミックスは特別な存在でした。今は過去の名作旧作は文庫や愛蔵版になって役目を終えた、ってことなんでしょうか。このシリーズ、新刊コミックス棚には見あたりませんね。


ところで、こういうセレクションが出てくるような世代なら、当然『銀河鉄道999』が入っていてしかるべきでは、と思われた方もいるでしょう。もちろん、この作品もアニメや劇場版をリアルタイムで観ていてなつかしいのですが、出てくる乗り物が「鉄道」だという点に今の気分的にのれなかったせいか、なんとなく今回は手が伸びませんでした。


松本作品といえば、やっぱり船と飛行機、ですよね。特に、丸く計器類の窓がぽこぽことあいた周囲の壁、座標のグリッドが縦横に走る大型スクリーンが正面や足元に据えられた、宇宙船のコクピットや基地の司令室の独特の雰囲気は、ファンならずとも、原作かアニメに少しでもふれたことがあれば、すぐに思い浮かべることができるのではないでしょうか。(リアルかどうかはともかく)ああいうメカニックな感じが大好きだったので、(そういう要素が皆無なわけではないが、他の作品に比べるとやや薄められた)999はその点でやや物足りなく感じていた、ということなんでしょう。



とまあ、例によって長くなりました。いま漫画読みのみなさんの間で「松本零士」という名前がどういう扱いなのかさっぱりわかりませんが、久しぶりの漫画読書はなかなか幸せなひと時であったことを報告しておきます。



◆今日のBGM◆

  • ゴダイゴ『ゴダイゴ・ブレイテスト・ベスト』

今日の気分はまさにこれ。上に999ははずしたと書きましたが、ゴダイゴが歌った劇場版の主題歌は今聴いてもいい曲で、数ある我が世代のアニソンのなかでも大変なつかしい曲の1つです。タケカワユキヒデの歌は当時も今もふにゃふにゃに聞こえますが、演奏はすごくしっかりしています。バンドでコピーをしたことがあるのですが、けっこう手強かったのを思い出します。


コメント

確かに松本零士露出多いですね。食い付きどころが違うかもだけどヤマト、ハーロックなんて大作がそれぞれ全3巻、5巻だなんて意外。今時のドラマ性ない漫画がやたら巻数が多いのと対照的で。いやコナンを非難してないですよ。ハーロックはニヒルで仕事ができるいい男的なキャラが当時新鮮だった。秋田書店ではマカロニほうれん荘も忘れないで。

  • 2006/11/27(月) 18:42:27 |
  • URL |
  • ヒラール #-
  • [ 編集 ]

マカロニ

ヒラールさん>
訪問&コメント、サンキュウです(コメントがダブりになっていたようなので、重複分は整理させてもらいました)。

>大作がそれぞれ全3巻、5巻だなんて意外
アニメとか映画を観てから原作を読んだ人は、まるでダイジェスト版を読んでいるような気になるかも。なにしろ、ヤマトのファーストシリーズなんて、漫画でいうとたったの1巻(!)ですから。

>秋田書店ではマカロニほうれん荘も忘れないで。
ああ、まさか、こんなコメントが寄せられるなんて! もちろん! 忘れるも何も、空犬にとってのオールタイムベスト的作品ですよ、これ!

秋田書店の少年チャンピオン・コミックス全9巻(マカロニ2はあえてはずしたい)は、宝物的に大事にしている数少ない漫画の1つです。ナンセンスなギャグの乱れ打ちはもちろん、全体に流れるロックなノリも大好き。作者のロック好きが随所に顔を出す、連載時の扉ページは、愛蔵版や文庫版ではなぜか割愛されているので、やはりファンなら、この作品は元のコミックス版で読まなければならないのです。

  • 2006/11/27(月) 22:48:54 |
  • URL |
  • 空犬 #-
  • [ 編集 ]

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  • 2007/11/08(木) 10:32:08 |
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