神奈川書店回りレポート、続きです。以降はもう少し簡潔に……いきたいところなんですが、次のお店が、これまた楽しいお店だったので、書きたいこと、紹介したいこと、いっぱいあるんだよなあ……。
鶴見に移動して、次はブックポート203鶴見店。鶴見駅からはちょっと離れていて、徒歩でも行けますが、この日は天気が心配だったのと、この後もまだまだ移動が続くということで、タクシーにしてしまいました。車だとすぐですね。
↑幹線道路沿いにあるお店は駐車場完備の、いわゆる郊外型書店です。お店は2階建て。1階は150坪はないぐらいでしょうか。店長の成川真さんに案内していただきながら、話をうかがいました。
↑入り口入ってすぐのフェアコーナー。これがもうなんというかすごい迫力です。ふつうの郊外型書店だと思って足を踏み入れると、いきなり驚かされることになります。ぼくが訪問したこの日は、ツイッター書店員さんたちの間で大変な話題の2作が、これでもかとばかりに大フィーチャー。
↑平台もご覧の通り。上の写真と合わせてご覧いただくとよくわかりますが、前回の記事で紹介した武蔵小杉の中原ブックランドにも通じるところのある、手作り感のあふれるディスプレイが非常に印象的。
成川店長によれば、お店は、「初心者向け」を目指しているとのこと。棚の編集といって、ある本の隣に関連書を並べるようなやり方は、見ていて楽しいし、個人的にもお好きとのことですが、やはり、一点買いの人や、本探しに慣れていない方には探しにくかったりする。同店では、ふつうのお客さんが本を探しやすいようにを最優先に心掛けているそうです。
すると、では当たり前の本が当たり前のところに並んでいるだけでおもしろくない棚になってしまっていないか、なんて思われる方がいるかもしれませんが、そこは、先のフェアコーナーにもありました通り、お客さんの目や足を止めさせる工夫があちこちにこらされていて、当たり前なだけのおもしろみのない並びとは無縁の棚になっています。
↑本を探しやすくするための工夫の1つがこれ。ジャンルの小分類がかなりこまかくふられています。専門書に強い大型店ならともかく、中型以下の規模だと、それなりに在庫の多い店でも、「医療」「経済」「スポーツ」といった、非常に大きなくくりの棚に本が詰め込まれていて、端から見ていかないと探せない、というところもありますが、このお店では、かなりこまかく小分類が区切られています。
↑アウトドア関連書の棚を例に見るとこんな感じ。ジャンルによって什器の雰囲気を変えたりすることもあるそうで、ここでは、写真だとちょっとわかりにくいですが、アウトドアということで、ウッドの感じが出ている台を使ったりしているそうです。什器の関係などでむずかしいようですが、ジャンルの関連書をまとめておくだけでなく、関連雑誌も一緒に並べたいとのこと。
↑レギュラー棚以外にもいろいろ工夫が。これは店長の好きな本の棚。趣味全開で、「ごめんなさい!」とあるのがおかしい(笑)。でも、こういう売り手の顔が見える棚はいいですよね。ほぼ全点に手書きのPOPがついていて、おすすめ度がびしびし伝わってきます。
↑店内の複数箇所で展開されているフェアやエンドの平台もにぎやか。左は文芸書。右はぼくも大好きなサイエンスアイ新書のフェアコーナー。よく知っているつもりのシリーズでしたが、こんなに出ていたのかと、ちょっと驚くほどの物量です。
↑季節柄、怖い本のフェアをやっているお店は多いのですが、ここの怖い本は妙に気合いが入っています。見せ方が実に凝っていて、とてもお店のスタッフが短時間で作ったとは思えない小道具が効いています。は、柱の色、こわいっす……。
郊外型ということで、車・バイクで乗り付けてくるお客さんも多いそうで、車・バイク関係の雑誌は店内中央の目立つところに。近くには、成人雑誌もひとそろい。アダルト系はまったくおかないお店も多いなか、ちゃんとお客さんのことを考えた品揃えや配置に(ある意味)なっています(笑)。
郊外型書店に親子連れ、家族連れがどの程度来るのか、車に乗らないぼくはよくわからないのですが、子ども向けも充実していますよ。
↑居心地のよさそうなキッズコーナー。レジ近くには、小さなおともだちのためのこんな趣向も。写真はとらなかったのですが、レジには、ラムネ(飲むほうのね)も置いてありました。いいなあ、こういうの(笑)。
↑2階にあがる階段のスペースを利用したフェア「妖怪横丁」。小さなおともだちによるかわいい絵に混じって、スタッフや作家さんの手になる絵も混じっていたりします。
2階にあがると上はコミックとラノベコーナー。
↑ご覧の通り、1階同様、2階も、手作り感のあふれるディスプレイがあちこちに。窓際がおすすめ本のコーナーになっています。写真にはありませんが、ラノベもスペースからするとかなり多めになっていて、窓と反対側の壁一面にずらり。
↑コミックには、このように発売日が付箋で示してあります。これは、前回の中原ブックランドでも紹介しましたが、続き物などを買うお客さんが、新しいものかどうか、持っているかどうかなどを迷ったり間違えたりしないための工夫だそうで、このお店では、文庫とコミックに、この日付付箋をつけているそうですよ。
↑1階にもどって、今度は文庫の帯を。前回の中原ブックランドでも、文庫にかけられた独自帯を数種ご紹介しましたが、こちら、ブックポートにもありましたよ、お店で作ってかけた独自帯が。これが実に凝っていて、上の写真を見てくださいな。一見、どれが元帯で、どれがお店でかけたものか、わかりませんよね? もちろん、店頭でよく見れば違いはわかりますが、ぱっと見ただけだと、これが元帯かと思ってしまうぐらい、色やフォントまで雰囲気をよくコピーして作ったもの、よくできたものがいくつもあります。いやはや、これは驚きました。帯の見比べをするだけでもしばらく楽しめそうなぐらい、工夫に満ちた平台になっていますので、文庫の平台をチェックするときは、ぜひ帯に注目してください。
成川店長は、お店の理想は東京ディズニーランドだといいます。お客さんに店内を回遊していただき、楽しんでいただけるような、そんなお店を目指しているのだとか。成川店長、だとしたら、お店はすでに、そのような棚や平台にこらされた工夫の数々を見ながら歩くだけで楽しいお店になっていますよ。
郊外型書店というと、それだけで先入観を持ってしまう方もいるかもしれません。実際、ぼくも、いわゆる郊外型書店で、何度も通いたくなるようなお店にそれほどあたった経験がなかったのですが、印象が変わりましたね。街中にあるか郊外にあるのかという立地じゃないってことですよね、書店は。
↑最後は成川さんにおすすめをうかがい、ご当地本でもあるというこの1冊を選んできました。右は同店と平塚のサクラ書店のコラボフリペ。
駅から徒歩でちょっとあるということで、ぼくのような遠方のものは何かのついでにふらりというわけにはなかなかいかないのが残念ですが、でも、わざわざ行く価値のあるお店ですよ。近隣の方はぜひ、この楽しいお店を回遊しに訪れていただきたいものです。
続いて、丸善ラゾーナ川崎店へ。ここまでご紹介した4店はいずれも初めてのお店でしたが、ここは、開店直後を含め、何度かのぞいたことがあるのですが、ここしばらくはごぶさただったので、久しぶりの訪問です。
このお店は、案内をお願いえきる知り合い書店員さんがいないので、写真は外から撮れる範囲のものということで、少なめです。
↑人の流れの合間をぬって急いで撮ったら、ぼけぼけ……。右は、売り場が碁盤状になっていることがわかるフロアガイド。書籍・雑誌と文具の間を斜めに通路が突っ切っています。
お店は、店名通り、JR川崎駅から直結の商業施設ラゾーナ内にあります。ワンフロアで、かなり大きめ。文具売り場があるのと、通路で斜めに区切られているので広さが読みにくいのですが、500坪以上ありますよね。
固い本からやわらかめの本まで全方位の品揃え。店内のあちこちでミニフェアが展開されていて、棚のエンドの使い方などに、こまかな工夫があって、あっちこっちで足を止められるので、短時間でざっと見るのは、書店好きには酷なお店です。
斜めの通路沿いに、図鑑のコーナーや課題図書など、児童書関連のフェアコーナーなどが並んでいます。そのまま奥に進むと、コミックの新刊台なども。店内、通路の間は決して狭いというわけではないのですが、棚が碁盤目状にずらりと並んでいるため、もしかしたら親子連れ、それこそベビーカーのお客さんだと、混んでるときは入りにくいかもしれない感じなのですが、その点、児童書関係が通路側に集まっているので、中に入らなくても見ることができていい感じ。売り場配置の工夫が感じられますね。
↑フェアと言えば、入り口すぐ脇の、「夏休み書店」が規模・内容ともに見応えありでした。大手の夏文庫のほかに、独自にセレクトされたとおぼしき夏文庫フェアが展開、さらに、ブックカバーほか、夏っぽい小物も一緒に並んでいて、いい感じ。本好きは、この一画だけでもしばらく楽しめそう。
丸善ラゾーナ川崎店と言えば、三省堂書店有楽町店と並んで、いま話題の書店フリペのコラボのパイオニア。
↑フリペコーナーでゲットしてきたフリペたち。三省堂書店海老名店になかったものも並んでいましたよ。書店の独自フリペのほかに、ゲラになっていたり、著者インタビューが掲載されていたりという、文芸書のフリペがいくつもありました。こういうのを何種類もお店で独自に作っているんだとしたらすごいなあ。
というわけで、短時間の滞在ではとても全体をチェックしきれない、見所の多いお店でした。以前に来たときとは、まるで別の店という印象で、その変貌ぶりも個人的にはちょっと驚き。この後で取りあげることになる横浜の数店を含め、今回、書店回りをしたお店のなかでは、川崎は比較的東京から近いこともありますので、近いうちに、再訪してもう少しじっくりチェックしてみたいなと思っています。
……ふう。これで、3分の2を紹介し終えました。あとは横浜の3店を残すのみ。明日以降、なるべく早くアップしたいと思います。