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空犬通信

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継続は力なり、か……120周年の河出にエールを

古いカッパブックスに、田所太郎『出版の先駆者』という本がある。講談社、中央公論、新潮社、文藝春秋、岩波書店、小学館といった、まさに書名通りの版元を取り上げてコンパクトにまとめた、手軽に読める出版史の好著で、時折思い出したように手に取る1冊だ。


出版の先駆者

この本の中で取り上げられている版元の1つ、河出書房新社が今年創業120周年を迎えたことを、7月に開催された東京国際ブックフェアで配布されていた小冊子で知った。


河出書房新社120周年


この冊子にまとめられた社史を通読すると、必ずしも順風満帆とは言えない120年だったようだ。1886年、明治19年の出発時の名前は成美堂書店、その後2度の社名変更、さらには倒産経験も経て、現在の新社を名乗ってからは約50年になる。


小冊子の巻末には、「創業120周年記念出版」ということで、今年から来年にかけて刊行される予定の単行本、全集の刊行リストが掲載されている。Webでも見られるので興味のある方はぜひ。リストのうち、単行本では新芥川賞作家、伊藤たかみの『ドライブイン蒲生』がすでに刊行されているし、いかにも河出らしいシリーズ『シュルレアリスムと画家叢書 骰子の7の目』全六巻も増補新版として刊行中だ。


文学全集、数々の文芸書、後発だがユニークなセレクションの河出文庫……河出は、漫画や雑誌に頼らずに、かたい本で勝負してきた出版社で、個人的にも好きな出版社の1つ。これからもがんばってほしいものだ。


先日、Dual Dictionaryの件を本日記で取り上げた三省堂も先のカッパブックスに『出版の先駆者』として取り上げられている社の1つだが、今年で創業125周年。こちらは河出のような記念出版刊行リストのようなものはないようだが、先の『大辞林』も記念出版の一環のようで、名入れの無料サービスを行っている。


先日、新聞などのメディアで「ノンタン30周年」が取り上げられていた偕成社も今年で70周年だそうだ。100年超の老舗には及ばないが、老舗の多くが総合出版か教育関係であることを考えると、これだけの年月、児童書専門、それも福音館書店のような定期刊行物を持たずにがんばってきたというのは特筆に値することだと思う。


ところで、ぼくは偕成社の社史を読んだことがあるのだが、探偵者ならもうご存じだろう、この社の戦前から戦後、昭和30年代ぐらいまでの出版目録には、海野十三や横溝正史ほか、その手の古い探偵小説が好きな者なら、目をむくような驚きの書目がたくさん並んでいて、とても平常心では見られぬようなものになっている。ぼくも一二冊持っているが、いずれもすごい古書価がついている。いま、手元にあるので、いちばん古いのはホームズものを海野が翻案した『まだらの紐』で昭和21年。時代が時代だけに紙なんてぺらぺらの、典型的な仙花紙。雑本好きのぼくとしてはめずらしく、けっこうな値段を出しました。ああ、偕成社に資料室のような部屋があるならばぜひ入ってみたいなあ。


まだらの紐

◆今日のBGM◆

  • ジミー・クリフ『ザ・ハーダー・ゼイ・カム』

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