景勝地トライアングル 浜田 それでは、これから摩尼山のことをどうすればいいのかとイメージできるようなお話を聞きたいと思います。浅川先生にお伺いしたいのですが、今日、午前中にトレッキングがおこなわれました。これはまさに、この信仰の山、摩尼山の全体を知る格好の取り組みのように思えますけれども、たしか以前、先生に摩尼山を中核とする景勝地トライアングルの構想をお聞きしたことがありますが、これは一体どんなお考えなのでしょうか。
浅川 摩尼山の周辺には景勝地が集中しています。鳥取砂丘(山陰海岸国立公園)と樗谿・久松山・太閤ヶ平(国史跡)が突出した大観光地ですね。それから、あまり皆さんご存じないかもしれませんが、福部の坂谷神社は叢林が県指定天然記念物になっています。坂谷神社の立地する立岩山は巨巌(磐座)が露出しています。その岩陰に小さな本殿を構えています。その周辺の叢林(照葉樹林)は見事なものです。学生を連れていくと、みな「もののけの森」だと言って驚嘆する。それぐらい鬱蒼とした神秘的な森があるのです。鳥取砂丘、樗谿・久松山・太閤ヶ平、立岩山坂谷神社で構成される3角形のエリアをわたしは「景勝地トライアングル」と命名しました。摩尼山は3つの景勝地のほぼ中心に位置する。3点をつなぐトレイル(遊歩道)で言えば、中継点にあたります。
午前の第Ⅰ部トレッキングはとても人気がありました。じつに54名の応募があり、この天候にもかかわらず43名の参加がありました。トレック愛好者は着実に増えています。健康増進にもよいし、歴史や自然を肌で学ぶことができます。先ほど宗元さんがおっしゃった「心の置きどころ」とも関係しているのかもしれませんね。日常から離れ自然にいやされたいのです。いま紹介した3つの景勝地エリアを摩尼山を経由してトレイル(遊歩道)でつなぐのです。山歩きで景観域全体の活性化を図ろうと見越しての構想です。
樗谿・久松山・太閤ヶ平から摩尼山までは中国自然歩道がすでに整備されています。摩尼山から坂谷神社までも歩いていけます。問題は、摩尼山と砂丘の連絡路がないことなんですね。ここに遊歩道を通したい。山頂立岩から下りていくのでもいいですし、景色のよい展望台あたりからラッキョウ畑めざして歩いていくのでもいい。摩尼山と砂丘をつなぐミニトレイルを通したいと願っています。
浜田 本当におもしろそうな構想ですね。摩尼山だけではなくて広い範囲を対象に、いろんなものを見て歩くことで、さらに鳥取の歴史に対する理解も深まってくるのではないかなと思う次第です。
棚橋 私、結構山が好きで、久松山とか大山とか、いろんな山に登ってきました。東京でも高尾山に登ったりしています。このあいだも浅川先生と一緒に摩尼山に登らせていただいたんです。立岩からの眺めがすごく綺麗だったのですが、今日も皆さん行かれたのですかね。少し灌木を伐採すると、もっと眺めがよくなるのではないか、なんて思いました。久松山からは海が一望できるのですよね。鳥取の城下町も見える。摩尼山の眺望も、そんなふうになればいいのに、と思うのです。それから、先ほど先生が言われたように、摩尼山から砂丘まで歩く道ができれば本当にいいですね。いまは若い女性も山歩きが好きな方がすごく多いので、いい観光地になるのではないでしょうか。
浜田 今のお話を聞いて、まずはできることから行動を起こすことが大事だと感じました。浅川先生、たとえばこの構想にあるルートで地図やパンフレットみたいな資料はすでにあるのでしょうか。
浅川 学生がルートマップを作ってくれまして、版を重ねています。これまでは無料で配布してきたのですが、在庫僅少で増し刷り代金を確保するためにも、今日は有料(100円)にさせていただきました。あまり売れなかったですが、私どももたんなる奉仕活動をしているわけではなくて、活動費が必要なのです。ご理解いただければ幸いです。学生たちは山道の距離を巻尺で測ったんですよ。自治体か国交省が知りませんが、公費で制作したサインボードが山道に立っています。しかし、残念ながら、距離が滅茶苦茶でして、これをなんとか修正しないといけないと思い、巻尺で正確に距離を測り、廃材でサインボードを作って、ルートマップも自主制作しました。「奥の院」は上がるのが難しくはありませんが、道に迷いやすいもので、こうしたサインボードやルートマップが山歩きする皆さんの大きな手助けになると思います。
続きを読む