無常の茶室
茶室解体前夜
12月18日(水)、廃材でつくる茶室「盃彩亭」の撤去工事がおこなわれた。前日、趙雲くんとデミグラスさんに茶室をみせた。二人は「住まいと建築の歴史」講義で、この茶室の建設と修復について学んでいるが、実際に視るのは初めてのことだという。二人は、この建物に接する最後の学生になった。
目的は翌日の解体にそなえて記録の写真を撮影すること。なにか問題があれば、工務店に知らせなければならない。また、スタジオにある茶棚・茶道具も搬出してもらう必要もあり、そのサイズを知らせるための写真も必要であった。学生2名は素直に茶室に驚いたようだ。
廃材でつくる茶室、いざ解体!
翌18日午前9時、裏の駐車場に集合。池田住研の面々はすでに待機中。直ちにクラブハウスに車を移動して裏山の敷地へ。あらかじめ注意事項を少しだけお知らせした。まず、摩尼寺の発掘調査で出土した五輪塔の破片群(茶室裏側に集めてある)には接触しないこと。蹴ったり踏んだりしたら罰当たりになる。次に、茶室の内外には、浅川がアジア諸国から買い集めた仏像・仏具が数か所飾ってあるので、それらはあらかじめ丁寧に取り外してから建物を撤去すること。
工事は迅速に進んだ。着手後1時間もせぬうちに屋根は崩された。わたしはいったんそこで現場を離れ、学生2名とともに年越し蕎麦を食べにいった。もちろん蕎麦切り「たかや」である。季節限定のキノコ蕎麦を一杯たいらげた後、「そばがき」を学生と共有した。二人は初めての食体験だが、そばがきを美味しいと言ってくれた。そうして大学に戻ると、廊下で某学部長とすれ違い、ちょっと部屋で話をしようということになった。黄粉が相談に来たらしい。・・・あぁぁ、と憂鬱になったところで、電話が連続して鳴った。まず工務店の社長、次に男子学生。茶室の現場で木部の解体がほぼ終わったので、みてほしいとのこと。急ぎ裏山に上がり、基本方針を決めたが、念のため事務室の職員を呼んで問題がないか確認した。それで行こう、ということになった。
茶棚と模型の搬出
そこから、作業班は二手に分かれた。わたしと学生はスタジオに移動し、茶棚の搬出を見届けた。茶棚そのものは岡垣・今城夫妻の作品である。茶棚の上にのせていたのは、旧加藤家住宅の模型(安田制作)。安田には悪いが、もう壊してしまおうと思っていた。ところが、池田住研の若手2名は、それを保存して持ち返ると私に提案した。この二人の若手大工は加藤家住宅の修復を経験していない。しかし、池田住研が初めて手掛けた文化財建造物修復が加藤家であり、その記念碑になる加藤家住宅の模型を保存しようと提案したことに驚きを禁じえなかった。池田住研には申し訳ないが、茶棚のほか、スタジオと演習室にあった多くの要らない家具類等も持ち出していただいた。ずいぶん片付いた。思いの外、感慨深いこともなく、ミニマリストに一歩でも近づきたいという夢にむけて大きく前進する一日となった。
すべて搬出された。
1217記念撮影。いつでも1名足りない。趙雲は漬物石をゲットした。
《関係サイト》
廃材でつくる茶室-撤去解体(予報)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2942.html
無常の茶室
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2955.html
《連載情報》 わびさび-茶室の心と技
第02回 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-435.html
第14回 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-525.html