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「思い出の摩尼」トークセッションの記録(4)


景勝地トライアングル

 浜田 それでは、これから摩尼山のことをどうすればいいのかとイメージできるようなお話を聞きたいと思います。浅川先生にお伺いしたいのですが、今日、午前中にトレッキングがおこなわれました。これはまさに、この信仰の山、摩尼山の全体を知る格好の取り組みのように思えますけれども、たしか以前、先生に摩尼山を中核とする景勝地トライアングルの構想をお聞きしたことがありますが、これは一体どんなお考えなのでしょうか。
 浅川 摩尼山の周辺には景勝地が集中しています。鳥取砂丘(山陰海岸国立公園)と樗谿・久松山・太閤ヶ平(国史跡)が突出した大観光地ですね。それから、あまり皆さんご存じないかもしれませんが、福部の坂谷神社は叢林が県指定天然記念物になっています。坂谷神社の立地する立岩山は巨巌(磐座)が露出しています。その岩陰に小さな本殿を構えています。その周辺の叢林(照葉樹林)は見事なものです。学生を連れていくと、みな「もののけの森」だと言って驚嘆する。それぐらい鬱蒼とした神秘的な森があるのです。鳥取砂丘、樗谿・久松山・太閤ヶ平、立岩山坂谷神社で構成される3角形のエリアをわたしは「景勝地トライアングル」と命名しました。摩尼山は3つの景勝地のほぼ中心に位置する。3点をつなぐトレイル(遊歩道)で言えば、中継点にあたります。
 午前の第Ⅰ部トレッキングはとても人気がありました。じつに54名の応募があり、この天候にもかかわらず43名の参加がありました。トレック愛好者は着実に増えています。健康増進にもよいし、歴史や自然を肌で学ぶことができます。先ほど宗元さんがおっしゃった「心の置きどころ」とも関係しているのかもしれませんね。日常から離れ自然にいやされたいのです。いま紹介した3つの景勝地エリアを摩尼山を経由してトレイル(遊歩道)でつなぐのです。山歩きで景観域全体の活性化を図ろうと見越しての構想です。
 樗谿・久松山・太閤ヶ平から摩尼山までは中国自然歩道がすでに整備されています。摩尼山から坂谷神社までも歩いていけます。問題は、摩尼山と砂丘の連絡路がないことなんですね。ここに遊歩道を通したい。山頂立岩から下りていくのでもいいですし、景色のよい展望台あたりからラッキョウ畑めざして歩いていくのでもいい。摩尼山と砂丘をつなぐミニトレイルを通したいと願っています。
 浜田 本当におもしろそうな構想ですね。摩尼山だけではなくて広い範囲を対象に、いろんなものを見て歩くことで、さらに鳥取の歴史に対する理解も深まってくるのではないかなと思う次第です。
 棚橋 私、結構山が好きで、久松山とか大山とか、いろんな山に登ってきました。東京でも高尾山に登ったりしています。このあいだも浅川先生と一緒に摩尼山に登らせていただいたんです。立岩からの眺めがすごく綺麗だったのですが、今日も皆さん行かれたのですかね。少し灌木を伐採すると、もっと眺めがよくなるのではないか、なんて思いました。久松山からは海が一望できるのですよね。鳥取の城下町も見える。摩尼山の眺望も、そんなふうになればいいのに、と思うのです。それから、先ほど先生が言われたように、摩尼山から砂丘まで歩く道ができれば本当にいいですね。いまは若い女性も山歩きが好きな方がすごく多いので、いい観光地になるのではないでしょうか。
 浜田 今のお話を聞いて、まずはできることから行動を起こすことが大事だと感じました。浅川先生、たとえばこの構想にあるルートで地図やパンフレットみたいな資料はすでにあるのでしょうか。
 浅川 学生がルートマップを作ってくれまして、版を重ねています。これまでは無料で配布してきたのですが、在庫僅少で増し刷り代金を確保するためにも、今日は有料(100円)にさせていただきました。あまり売れなかったですが、私どももたんなる奉仕活動をしているわけではなくて、活動費が必要なのです。ご理解いただければ幸いです。学生たちは山道の距離を巻尺で測ったんですよ。自治体か国交省が知りませんが、公費で制作したサインボードが山道に立っています。しかし、残念ながら、距離が滅茶苦茶でして、これをなんとか修正しないといけないと思い、巻尺で正確に距離を測り、廃材でサインボードを作って、ルートマップも自主制作しました。「奥の院」は上がるのが難しくはありませんが、道に迷いやすいもので、こうしたサインボードやルートマップが山歩きする皆さんの大きな手助けになると思います。


 浜田 本当にこういうマップがあると、未知の山道を歩いてみようかなという気持ちになりますよね。ルートマップの増し刷り、バージョンアップを楽しみにしております。さて、三徳山に登られたことがある方もたくさんいらっしゃるでしょうが、三徳山でも時折登山事故が発生しています。たくさんの人が集まる観光地なのですが、もとは厳しい修行の場、信仰の山ですので、険しい道も少なくありません。その際に安全対策が必要になるでしょうが、どうした配慮が必要でしょうか。
 浅川 今年になってちょっとした景観変化がありました。危険な岩盤にロープとかスチール製パイプの手すりができているのです。昨年まではなかったのですが、最近できて、今日のトレッキングは足下は悪かったので、とても助かりました。岩盤や山道はつるつる滑ります。こういう手すりのたぐいがないと、けが人が出るかもしれません。ただ、摩尼山は史跡・名勝とか国立公園を目指そうとしている霊山ですから、サインボードとか手すりのデザインや色合いには十分配慮しなければなりません。だから、安全を確保しつつデザインを工夫する。自然や文化財に調和しないといけません。手すりなんてどうでもいいというわけではなくて、真剣にデザインに取り組まないと。
 浜田 そうですね。安全に歩けないと楽しめないわけですけれども、摩尼山の魅力を本当に体感するためには、すばらしい景観の本質を守っていく必要がある。景観を損ねない工夫が必要だと思います。

摩尼山グルメ

 浜田 先ほどお聞きした構想のように、広いエリアを歩くとなると、半日~1日がかりなわけですが、この構想を実現して本当に楽しんでいくためには、もっと必要なことがあるのかなと思います。形のあるものないものを問いませんけれども、トレッキング愛好者の視点でこんなサービスがあれば有意義だなということがあれば、柵橋さん、お話しいただけませんでしょうか。
 棚橋 このあいだ浅川先生と登らせていただいたとき、午前10時半ぐらいに門前をスタートして、立岩に着いたのがちょうどお昼ぐらいだったと思います。2時間弱ぐらいかかってお腹がぺこぺこになりました。お弁当が美味しかったですね。
 浅川 そうですね。
 棚橋 すごく美味しいお弁当をいただいたのですが、そんなふうにお腹がぺこぺこなので、門前に下りてきたときに何か食べ物があったらいいなと思いました。若者にとっては、しっかりした精進料理だと何となく敷居が高いような気がしてしまいます。今日みたいな精進弁当が毎日売ってあるといいのに。精進弁当(お茶付1000円)はお昼に食べられた方も多いと思いますが、とても美味しかったですね。こういうお茶つきのお弁当がいつでもあったらいいなと思います。
 浜田 たしかに歩けばおなかがすきますので、ゴール地点に何かおいしいものが待っていたら楽しみですよね。
 棚橋 私、東京で高尾山によく登ります。高尾さんには出店とかいろいろありまして、私が一番楽しみにしているのは「天狗焼き」です。黒豆がたくさん入った焼き菓子です。すっごく美味しくて、山に登らなくても、それだけ買いに行こうと思ったこともあります。そういう目玉商品が摩尼山にもあったらいいなと思うのですが、いかがでしょうか。
 浜田 なるほど。聞いているだけでお腹がすいてきました。今日実際にトレッキングに参加された方でご意見のある方はいらっしませんか。こんなものがあったら美味しそうだとか、楽しみだとか。
 会場発言 精進料理もいいですが、最近は精進料理といっても魚が少々まじっていたりするでしょ。何か動物系を混ぜてもいいなという気がします。
 棚橋 動物系って、アユの塩焼きとか?
 浅川 老舗の料理屋さんが提供する健康的な和食だけではなくて、たとえばハンバーグランチが食べられるようなカフェ&レストランなんかがあってもいいじゃないか、というご提案ではないですか。
 会場発言 そういうことです。
 浅川 私も新規参入の店舗が必要だろうと思っています。
 棚橋 食べ歩きとかできたらすごくいいですよね。伊勢神宮門前のお陰横丁ですか。あんな感じでにぎわったら最高ですね。小一時間~二時間過ごせるようなカフェとかあったらいいなと思います。 【続】


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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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