開かないスーツケース 8月27日(水)、第3次ブータン調査先発隊出国の日を迎えました。関西国際空港からバンコク国際空港まで約6時間のフライトです。午後8時すぎ、バンコク着。この夜は、空港に隣接するエアポートホテルの3人部屋で一泊し、明朝6時50分のドック・エアーでインド・アッサム地方のグワハチに向かいます。いま思い返すと、今回の調査で、このホテルが最もグレードの高い、快適なホテルだった気がします。
ホテルのバーで一服し、早朝の出発に向けて部屋に戻り、床に就こうとしたのですが、私のスーツケースが開きません。スーツケースの鍵が微動だにしないのです。教授に相談して、とりあえずフロントで相談にのってもらうことにしました。関空で一度開いたのですが、フロントでも手持ちの鍵では一向に開くことはありませんでした。
フロントはまもなく技術者を呼び寄せました。「鍵が壊れてもいいなら開けてやる」と言うので、「とりあえず慎重に開けてください」と答えると、その技術者は、似たような鍵を使って、簡単にロックを解除していました。その喜びも束の間、スーツケースの中身が全然違うことに気づきました。そうか、スーツケースを取り違えたんだ。スーツケースは同じメーカーのもので、セキュリティーシールの貼り具合もよく似ている。私は完全に自分のものと勘違いして、ホテルまで持ってきてしまっていたのです。
すでに深夜を迎えていましたが、空港に戻るしかありません。幸いホテルのリムジンは24時間動いています。会長はすでにステテコ姿になって眠りに落ちようとしていましたが、教授と二人、空港に向かいました。空港ではロストバゲージのカウンターを経て、空港内の駐在所を訪ねました。そのとき、教授はこう言われました。
He took a suitcase and brought it to the hotel, but this is not his suitcase.
カウンター越しにすわっていた警官全員の目付きが変わりました。おそらく、すでになんらかの情報を入っていたものと思われます。私が持ち帰ってしまったスーツケースの持ち主は手荷物受取の時点で、自分のスーツケースがないと気づき、警察署に被害届を提出しており、持主と直接連絡が取ることができました。持ち主は日本人の男性で、電話で話すと、スクンビット通りのコンドミニアム(自宅)までスーツケースをもってきてほしいと言います。しかし、遺失物担当の係官は「自分たちが届けるから心配しないで」と言ってくれました。タイ人優しすぎる。(最終日にある事件があったので今はそう思っていない・・・)
私のスーツケースとはいうと空港内遺失物保管所に届けられ、その日のうちに無事に帰ってきました。一時はあきらめかけましたが、即日戻ってきたので、不幸中の幸いです。というものの、以上の全ての対応は教授がしていただき、私は何もしてない。あぁ情けない・・・ホテルに着いたのは日付が変わって現地時間AM0:30。ほんとに教授には頭が上がりません。初日から忙しない夜になってしまいました。幸先の悪い旅のスタートです。
←アッサムの茶畑
アッサム経由ブータン入境 床について2時間ばかりすると、ステテコ姿の会長に起こされ、午前4時のリムジンにのって空港に戻りました。日付は28日に変わっています。ドゥック・エアーは午前6時50にバンコク国際空港を出発し、1時間半のフライトの後、インド・アッサム地方のグワハチ空港に着陸しました。こんな秘境に日本人が居ないと思いきや、我々3人の他、20銘近いの日本人ツアー旅行者もいます。聞けば、タシガンまで陸路で移動し、東ブータンの寺院を見てまわるそうです。今思えば、このツアーに同行していれば、さまざまな苦行を強いられることもなかったかもしれません。
入国審査を経てラゲッジを受け取り、空港路路ロビーにでたのですが、迎えの人はみあたりません。ツアー旅行者は現地ガイドに出迎えられ、速やかに空港を離れ移動していくのだが、我々の現地ガイドがどこを見ても見当たらない。誰も出迎えに来ていないのではないかと、最悪のシナリオを想定しながら、教授と会長が奔走する。約30分ほどして空港の出口の外れにいるガイド2名を発見した。向こうから手をふって「出てこい」というサインを送っている。ブータン人は空港の中に入れないのだそうだ。アッサムとブータンは以前に紛争があり、ブータン人がアッサムにいるのも危険だと聞いた。ブータンの車もアッサムには入れないから、インド旅行社の車がチャーターされていた。
この空港から目的地のタシガン付近まで陸路で6~7時間の移動と予定表にはある。それでもなかなかハードなスケジュールではあるけれども、実際の道のりはあるかに遠かった。問題はインド車である。どうみても4~5人乗りの普通車なのだが、日本人3名+ドライバーに加えて荷物を積み込むと満杯になった。ブータンのガイド2名は躊躇うことなく、スーツケースに紛れてトランクに背面乗りで坐り、窮屈そうにしている。日本では間違いなく、違法運転です。これが現地のおもてなし精神かと思うと先が思いやられる。それは紛れもなく苦行の始まりだった。
←国境の町サムドラジョンカル
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