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行基の長岡院-菅原遺跡訪問記

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 5月22日(金)に奈良市疋田(ひさた)町の菅原遺跡に係わる報道が各紙いっせいにあった。どうやら『行基年譜』(1175)にいうところの長岡院の可能性が高く、しかも遺跡の中心に建つ建物が円形を呈するという。大規模宅地造成の事前調査で発見されたため現地説明会はなしということであり、急ぎ関係機関に連絡をとり、24日に奈良市文化財課のご案内で視察が叶った。ここに概要をレポートする。なお、菅原遺跡に係る基礎情報は、調査主体である元興寺文化財研究所のHPに公開されている遺跡解説資料「菅原遺跡-平城京西方の円堂遺構-」による。



菅原遺跡遺構図_page-0001web 遺構図(遺跡解説資料)


菅原遺跡の風景
 菅原遺跡は平城京西京極(西四坊大路)の外側にある。平城宮朱雀門が南面する二条大路の西の延長線と西三坊大路の交わるところに喜光寺(菅原寺)があり、その西北約1kmの丘陵の頂部に菅原遺跡が所在する。喜光寺の本堂は東大寺大僧正の行基(668-749)が大仏殿の試作モデルとして造営したものとされ、この寺で行基は生涯を終えた。丘陵上の遺跡から東南方向に菅原寺の境内をまるごと俯瞰でき、東の遠方には若草山麓の大仏殿を遥拝できる。行基にとってみれば、絶好の場所である。


0524菅原遺跡(行基廟)00回廊01 回廊


遺構と年代観
 中央の円形建物は東側と北側東半を回廊(単廊)、北側西半と西側を掘立柱塀で囲まれている(南側は不詳)。区画の規模は推定ながら南北38.5m×東西(内法)36.4mを測る。南北回廊の中央には横長の東西棟(伝法堂のような講堂か)が対称に存在した可能性がある。回廊・東西棟ともに掘立柱だが、聖徳太子を供養する法隆寺東院の配置を彷彿とさせる。供養堂(廟)と推定される所以である。この聖域の入口と目されるのは東側掘立柱列(塀)のほぼ中央にある長い柱間部分である。この柱間の西側には雨落溝を伴い、円形建物からこの門の方位を見通すと大仏殿が視界に納まる。南側区画の近くにも雨落溝があり、瓦が大量に出土し、奈良時代中期(745~757年)の軒平瓦を含む。私見ながら、この南側の雨落溝は柱列からやや離れており、幅がかなりひろいので、溝状の廃棄土坑かもしれない。北側回廊の柱穴からは8世紀中ごろの土師器坏も出土している。
 円形建物跡は同心円を呈する2列の遺構からなる。外側では16基の掘立柱掘形、内側には基壇地覆の抜取穴が環状に並ぶ。掘立柱列の直径は約14.5m、基壇のそれは約9mを測る。出土遺物から遺構の設置年代は8世紀中期、廃絶は9世紀前半とされる。


菅原スマホDSC_0340web円堂跡
↑円形建物跡  ↓基壇地覆抜取り
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2021 いい加減に学ぶ中国語講座(2)

瘋堂斜巷 〈瘋堂斜巷〉


百度百科「澳門」翻訳(2)
https://baike.baidu.com/item/%E6%BE%B3%E9%97%A8/24335

 みなさん、こんにちは。4年の遊民です。今回も金巴克さん(大学院生)とともに百度百科「澳門」の翻訳に取り組みました。僕自身中国語の翻訳が久しぶりなので中々苦戦しておりますが、うまく翻訳できるよう頑張りたいと思います。

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ポルトガルの占領と返還(概要)

1.原文
 1553年,葡萄牙人取得澳门的居住权,1887年12月1日,葡萄牙正式通过外交文书的手续占领澳门。1999年12月20日中华人民共和国中央人民政府恢复对澳门行使主权。几百年东西方文化的碰撞,使得澳门成为一个风貌独特的城市,留下了大量的历史文化遗迹。澳门历史城区于2005年7月15日正式成为联合国世界文化遗产。

2.中国の簡体字を日本語の漢字に変換
 参照サイト「楽訳中国語翻訳」http://www.jcdic.com/chinese_convert/

 1553年,葡萄牙人取得澳門的居住,1887年12月1日,葡萄牙正式通遂外交文書的手続占領澳門。1999年12月20日中華人民共和国中央人民政府恢復対澳門行使主権。幾百年東西方文化的碰撞(衝突),使得澳門成為一個風貌独特的城市,留下了大量的歴史文化遺跡。澳門歴史城区于2005年7月15日正式成為連合国世界文化遺産。


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紅毛の梅酒

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行基の廟か

 最近、User YBBというアカウントメールが2通届いており、迷惑メールの類だろうと思いこんでいたのだが、その正体が有名な考古学者であることに気付いた。週末のメールには、以下のような短いメッセージが記してあった。

  今日の朝刊、
  奈良市菅原遺跡=行基の長岡院候補地で
  多宝塔状遺構がでました。
  円形に並ぶ側柱列と地覆の石の抜き取り。


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 これは大変な発見だ・・・ということで、ただちにネットで検索したところ、記事が溢れている。以下は毎日新聞の報道。 https://mainichi.jp/articles/20210520/k00/00m/040/202000c

 宝塔/多宝塔の起源は私個人としても研究室としても重要な課題であり、急ぎ発掘主体であるところの二つの組織に電話連絡したところ、あれよあれよというまに現場視察の日程が決まり、明日(24日月曜日)、昔の知人の案内で総勢4名が菅原遺跡を訪問させていただくことになった。現地説明会を敢えて開催しない現場であり、視察の報告をどの程度やっていいものか、今は分からないが、またなにがしらの記事を書くつもりです。


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2021 いい加減に学ぶ中国講座(1)

澳門照片3 マカオ地図


百度百科「澳門」翻訳(1)
https://baike.baidu.com/item/%E6%BE%B3%E9%97%A8/24335

 みなさん、はじめまして。今年度から大学院修士課程に進学したテイと申します。中国の広東省深圳市出身で、マカオ都市大学で4年間学び、2年前に来日しました。昨年は神戸芸工大の研究生をしていました。この春からASALABでマカオ歴史地区の景観保全について研究しようと考えています。今は日本語を向上させるため、遊民さんのサポートを受けながら、百度百科「澳門」の項の和訳に取り組んでおります。これから二年間よろしくお願いいたします。(金巴克)


マカオの地理(概要)

1.原文
 澳门(葡语Macau、英语Macao),简称“澳”,全称中华人民共和国澳门特别行政区,位于中国南部,地处 珠江三角洲。北与广东省珠海市拱北相接,西与广东省珠海市的湾仔 和横琴相望,东与香港特别行政区、广东省深圳市隔海相望。相距60公里,南临南海。澳门由澳门半岛和氹仔、路环二岛组成,陆地面积32.9平方公里,总人口67.96万人(截至2019年四季度)。

2.中国語の簡体字を日本語の漢字に変換
参照サイト「楽訳中国語翻訳」 http://www.jcdic.com/chinese_convert/

 澳門(葡語Macau、英語Macao),簡称“澳”,全称中華人民共和国澳門特別行政区,位于中国南部,地処珠江三角洲。北与広東省珠海市拱北相接,西与広東省珠海市的湾仔和横琴相望,東与香港特別行政区、広東省深圳市隔海相望。相距60公里,南臨南海。澳門由澳門半島和氹仔、路環二島組成 ,陸地面積32.9平方公里,総人口67.96万人(截至2019年四季度)。



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競雀

ドローンの帰還

 全面オンライン授業のあいだ、BSでエンゼルスのゲームをよくみていました。大谷翔平くんは凄まじいアスリートであり、毎日わくわく画面を凝視していたのですが、10号ホームランを打ったあたりから、あきらかに調子を落としていました。日々打率は下がり、三振が多くなっていったの。メディアの報道とは裏腹にオータニサンは疲労を蓄積し、冴えない顔をしている。前監督は当番日の前後二日は彼に休養を与えていましたが、今は出ずっぱりです。これまで全試合に出場したエンゼルスの選手はオータニサンだけなのです。画面をみて「また三振か・・・」と落胆することが増えていきました。ホームランが出るのは、きまって外出しているときでした。
 今週から対面講義再開。いそいそしていて、さぁでかけようというときに大谷くんの打順になりました。視るしかない。視れば凡打か三振か・・・あひょーぉぉぉぉ、特大の3ランだって(13号)。高めのボール球ではないかな。というわけで、久しぶりに大谷くんのホームランをライブで視てしまった。大学に着くと、墜落したドローンが70日ぶりに戻っていて、いやはや3月から続く黒い霧が晴れてきた模様です。

mリーグファイナル最終日の予想

 さて、本日はmリーグファイナルの最終日であります。今夜7時から最後の2試合がおこなわれる。昨日は驚きました。首位アベマズの親分、多井が連投して4位、3位に沈み、僅差で2位のサクラナイツ(沢崎・堀)も3位、4位に轟沈。EX風林火山の勝又が2連勝して首位に立ったのです。これは予想外の大展開ですわね。以下が正式な順位とポイントです。

1位 EX風林火山 164.3pt
2位 KADOKAWAサクラナイツ 162.8pt
3位 渋谷ABEMAS 147.4pt
4位 赤坂ドリブンズ -86.8pt

 さきほどゼミ生に宣言しました。優勝チームをブログで予言する、と。
 優勝はサクラナイツじゃないでしょうかね。本命のアベマズは二連敗の多井を使いにくい。アベマズは松本2試合か、松本1試合多井1試合でしょう。最終戦の多井というのは、昨年のファイナル最終日を思い起こさせますね。優勝のイメージがわかない。一方、サクラナイツには内川が残っている。今年の内川は強い。昨年度、黒沢にスッタンを振り込んだころの内川ではなく、連続連帯記録中じゃなかったけ? 多井とは対照的に、ここは内川の2試合投入で全然良い。運命を任せるべきだ。
 絶好調の風林火山はファイナルで滝沢2勝、勝又4勝だけれども、そろそろ運が平均化してくるころであり、3・4位に沈む可能性も十分あるでしょう。内川の連帯(1・2位)もしくは1・3位でサクラナイツが僅差の優勝をもぎとるよう私には未来がみえる。
 さて、酒と肴を買いに行くべ。


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書評(2)-空海は東大寺の別当でもあった

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バーボンな梅酒

 5月15日(土)、山陰中央新報(16)~(17)面の「読書」欄に『能海寛と宇内一統宗教』が取り上げられました。評者は愛媛と奈良を毎週往復されている著名な考古学者にして、山寺(真言宗)の住職さんです。前半は能海のこと、後半は東大寺頭塔のことに触れられています。空海が東大寺の別当だったことを記していませんでしたね、拙著では。弘仁元年(810)、勅命により若き空海は東大寺の別当に任じられているのです。しかも、頭塔を造営した実忠は80歳の高齢ながらまだ東大寺にいた。良弁の弟子の実忠です。二人とも別当職を務めていた。こんな大事なことを書いていなかった。恥ずかしい限りです。ちなみに、甲賀寺で大仏鋳造に着手したころ、良弁は資材調達のため石山寺を開山している。石山寺も華厳宗から真言宗に転派している。密教つながりとしかいいようがありません。ありがたいご指摘をいただきました。掲載に尽力いただいたM部長及びジェクトのYカメラマン先輩および公爵OBに感謝にも感謝申し上げます。


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 5月15日は記念すべき一日でしてね。きっともうお忘れの方が多いでしょうが、1993年5月15日にJリーグが開幕したんです。あの日も土曜日だったかな、ヴェルディとマリノスの開幕試合があった。マリノスの逆転勝利でしたね。アルゼンチンのディアスが決勝点をあげた。しかしながら、翌日のアントラーズの衝撃がすさまじかった。あの日のジーコは無双でした。で、余計なことですが、息子の誕生日でもありましてね。母親は長州力チャンネルで宣伝している赤い缶の「金麦 ザ・ラガー」をプレゼントにしようというが、わたしは黒ビールがいいのではないか、などと会話するも、奈良には戻れんからね・・・
 帰れないから、というわけではないのだけれど、鳥取で梅酒を漬けたの。毎年、奈良の庭で採れる木瓜や唐梅の実を小さな瓶に納めてウォッカかホワイトリカーに漬け、半年後の正月のお屠蘇にしてたんですが、昨年はあまり飲まずにあまっているジム・ビームアップルで漬けたら、これがまぁ得も言われぬ美味に仕上がりましてね。今年は小梅を一袋買いこんできて1本まるまる使って漬けたのよ(ちょうどカリン酒がなくなったばかりのタイミング)。ちょっとバーボンが足らんよね。もう1本買い足すか。半分は鳥取で追加し、残りの半分は奈良の庭の唐梅を漬けるのさ。
 なにがいいかというとね、氷砂糖が要らない。アップル・バーボンは林檎とシナモンに加えて、たっぷり糖分(蜂蜜?)も入っている。これがストレートやロックだと甘すぎるのだけれども、梅で中和されると絶妙の甘さに変わるんです。食前酒には最適です。あぁ待ち遠しい、正月までに飲んじまうでしょう、たぶん。


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実績報告(2)-科学研究費

研究題目: ブータン仏教の調伏と黒壁の瞑想洞穴-ポン教神霊の浄化と祭場-
2018年度~2021年度基盤研究(C)
課題番号 18K04543  機関番号 25101

 研究実績の概要:  コロナ禍のため海外渡航が叶わなくなり、日本国内での文献研究を余儀なくされた。主に、これまで漠然と捉えていたボン教に対する理解を深めるべく、日本語・中国語・英語の文献を読み込んでいった。ブータンの場合、仏教以前から浸透していた非仏教系の信仰をおしなべてボン教系と理解しがちだが、ボンとボン以外の土着信仰を識別すべきであり、これまでの研究成果を修正する必要に迫られている。
 ボンは西チベットのカイラス山周辺で紀元前から存在した自然崇拝的な宗教だが、7~8世紀の仏教受容期からしばらくはニンマ派(古派)仏教と相互影響しあう段階があり、11世紀以降の諸派林立・群雄割拠時代には仏教諸派の覇権争いにボン教も加わる。結果として、ボン教は仏教四大宗派との争いに敗れ、チベット本拠地では弾圧されて東遷せざるをえなくなり、拠点を四川高原のギャロン地区に移す。その際の移動経路と終点の周辺に著しく仏教化した「白ボン」の寺院が少なからず姿をとどめている。
 一方、ブータンでは、中世期にあって、隠された古いボン教経典を探し出すテルトンの称号をもつボンポ(高僧)は活躍したが、ボン教の拠点的な寺院は存在しなかった。2019年夏に調査したポプジカのクブン寺は、縁起が7世紀にまで遡る。表向きドゥク派の仏教寺院を装いながら、2階奥にある二室をボン教の偶像を隠し祀る秘奥の部屋としており、現本堂の前には石積壁の前身遺構も残っている。ここがブータンに残る唯一のボン教寺院であり、中国側の「白ボン」以前の段階、すなわちニンマ派(後期密教)とボン教が融合した「黒ボン」の名残を残す寺院であると認識し直した。このほかリモートで社会福祉法人「佛子園」ブータン事務所と情報交換し、日本の平家落人集落のようなボン教徒の隠れ里(ボンジ)がわずかながら存在することが分かってきている。今後の重要なフィールドになると考えられる。経費の多くは繰り越しとなった。  


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現代に生き方のヒントを-書評(1)

210308能海書評(日本海新聞)_page-0001web 210308能海書評(日本海新聞)_page-0001sam 右の写真をクリックすると拡大して書評をよむことができます。


山葵菜漬には弁天娘

 日本海新聞5月8日(土)9面の「読書」欄に新刊書『能海寛と宇内一統宗教』の書評が掲載されました。村井良太著『市川房枝』ほか3冊が横並びで取り上げられており、そのど真ん中を『能海寛と宇内一統宗教』が占めております、ぐふふ。プロレスのメインエベンターの心境でありまして、なにより新聞社の学芸部には感謝しなければなりません。このほか、評者(執筆者)をはじめ、掲載に尽力していただいた方々に深く御礼申し上げます。ありがとうございました。
 評者は、かつて環境大学の助教だった研究者です。今は岐阜大学の准教授で、専攻は建築論と近代・西洋建築史。KT大学では建築学科の後輩にあたります。年度初めの忙しい時期であるにも拘わらず、見事な新刊紹介に仕上げてくれました。わずか800字前後で本書の要点をみごとにまとめている。たいしたものです。学生諸君に見倣ってほしい。
 お礼の品は弁天娘にしようかな、と思っているところです。先日は同い年の男鰥夫さんがなんと秋田から手作りの山葵菜漬けを送ってくださったので、弁天娘をお返ししたところ、非常に評判が良かった。わたし自身、弁天娘が大好きですが、あれにはまると癖になって、また肥満が激化するので、自分は控えます。代わりに、酒好きのみなさんに呑んでいただきましょう。
 じつは、この秋田の方にも考古学・古代史系の学術雑誌で新刊紹介をお願いしており、すでに執筆済みなんですが、これから編集委員会で審議があるそうです。それにパスすれば秋ごろの掲載になるとのこと。そういえば、アマゾンのレビューも増えてきており、大谷翔平のホームランに追いつきそうな勢いです。大谷くん、よくテレビで視てますが、最近不調なので、ちょっと心配・・・

 さてさて、今週からゼミなどの実習・演習が学内で再開され、来週からはおもな講義も再開講の運びとなりました。昨年度前期の苦しかったオンライン講義の準備がトラウマになっている身としては有り難い限りですが、全国知事会が全国緊急事態宣言の検討に入るほど感染状況は悪化しており、身を引き締めて臨まなければなりませんね。

麺場力皇(2)

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ちゃんこ風豚骨ラーメン

 力皇猛という元レスラーをご存じであろうか。最近になって、この人物が「戦後初となる奈良県出身の幕内力士」であることを知った。四股名は力桜。二所ノ関一門の同期に貴乃花、鳴門部屋の後輩に稀勢の里がいる。若手力士の育成には定評のある鳴戸親方(元横綱・隆の里)の指導の下、前頭四枚目まで上り詰めたが、親方の厳しい力士管理に反発して、1997年に角界を去る。二年後、全日本プロレスに入門した。四天王プロレス真っ盛りの時代である。教育係は小橋建太。2005年には、その小橋を破ってプロレスリング・ノアのGHCヘビー級王座を獲得し、3度防衛した。このほか数々の戴冠を果たしたものの、重度の頚椎ヘルニアのため2012年に引退した。力皇もまた四天王プロレス末期の犠牲者なのかもしれない。


力皇DSC_0273 稀勢の里のサイン(左)、壁一面に、ノアの小橋、秋山、NMB48のアイドルらのサインがひしめく。


 引退した力皇は、故郷に帰ってラーメン店を開業する。「麺場力皇」を検索してみると、たいそうな人気であり、コロナ禍のなかではあるけれども、このたび訪れることにした。昨日のトップ写真でごらんいただいたように、コロナ対策として店内を厳重に管理しており、なかなか中には入れない。門前に長い行列ができている。行列に加わっていると、女性がメニューをもってきてくれた。コロナ対策のため、「つけ麺、餃子」はなしとしている(在店時間を短くするためメニューを限定している)。力皇ラーメンは、豚骨醤油のどろどろスープが極太麺に絡んでおり、キャベツ、玉ねぎ、チャーシュー、鶏つくねをトッピングしている。並の量で大盛りの感がある。力士時代のちゃんこで得意とした鶏つくね(黒コショウが効いている)は絶品であり、全体として見栄えが良いとはいえないが、豪快なちゃんこラーメンといったところか。
 ご存じのとおり、普段は蕎麦屋めぐりを趣味としており、健康管理の問題もあるので、ラーメンは極力食べないようにしているのだが、四天王プロレスの実践体験者が奈良に居ることを知って、なんとしても訪ねたいと思い、家族で訪れた。みな「行ってよかった」「美味しかった」という感想であり、私自身も大いに満足した。どうか皆さんも機会があれば訪ねてみてください。


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↑濃厚味噌全部のせ(チャーシュー3枚、鶏つくね2個、煮たまご1個)


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麺場力皇(1)

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最強の格闘技という幻想

 プロレス全盛期だったあの頃、全日本派か新日本派かと問われれば、プロレス動画維新軍団実況の若パヤシ氏と同様、わたしは圧倒的な新日派であった。いま思い起こすと恥ずかしい限りだが、猪木の術中にまんまと嵌まった愚か者の一人である。GWの暇にまかせて動画を見返してみるに、とりわけ鶴龍から四天王の時代にあっては、全日~ノア系に断然分がある。にも係わらず、どうしてあれほど多くの国民は新日系に魅せられたのだろうか。一つは「異種格闘技」というジャンルに胸躍らせていたからであろうと思う。柔道、マーシャルアーツ、ボクシング、空手などの格闘家と猪木の戦いに(まさかアングルがあるとは思いもよらず)心を奪われ、新日のプロレスこそ最強の格闘技だと信じて疑わなかった。異種格闘技の路線は、その後、新日から枝分かれしたUWFやリングスなどに受け継がれて、最終的にはプライドで開花し、大晦日の恒例イベントにまで出世して紅白歌合戦の視聴率を奪いとるほどの勢いがあった。しかしながら、今となっては、UWFもリングスも、果てはプライドの一部においてまでブック(勝敗の結果)とアングル(筋書き)の存在したことが複数のレスラー等の証言で明らかになっている。
 アングルありのお芝居系プロレスの代表格がジャイアント馬場であった。海外のエースと戦う馬場の動きはスローモーションのように鈍く、愛弟子のジャンボ鶴田も欽ちゃんに似た愛嬌のある顔をしているから、大げさな雄叫びをする割には凄みがなく、そもそも余計なアピールをする暇があるなら次の技を出せ、と思ったものである。とりわけ晩年の馬場は、団体の経営者としては苦労していただろうが、プロレスラーとしては前座に回り、激しい戦いを回避していた。。そのツケはメインエベンターを務める若手のレスラーにまわってきた。鶴田亡き後の四天王プロレスを支えた三沢、小橋、川田、田上、秋山、高山らの死闘を見返すと言葉が出なくなる。もういいだろう、そこまでしなくても・・・と思うほどの過酷さがそこにはあった。


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四天王の時代

 もちろん四天王プロレスにもブックとアングルは存在したのだけれども、極限まで戦いを放棄することは許されなかった。馬場と猪木の時代にあっては、トップレスラーが得意技を出した段階で事実上試合は終わる。バックドロップや各種のスープレックス、あるいは卍固めなどのフィニッシュホールドは返すことを禁じられた大技である。さして効いていない場合でも、跳ね返してはいけない。大技がでれば、フォールかギブアップで試合は終わった。負けブックを呑まされる側は愉快ではないけれども、試合を早々に終わらせることで、体のダメージは少なくなる。こうしたエンタメ系の試合運びは楽であり、競技者としての寿命を削ることはない。
 しかしながら新日の場合、「異種格闘技」の伝統もあり、猪木は総合格闘技への傾斜を強め、新日を暗黒の時代へと導いていく。多くの選手がプライド等の試合に担ぎ出されては惨敗を重ね、「プロレス(あるいは新日)は弱い、やはり八百長ばかりだったんだ」という印象がはびこるだけでなく、プロレスをやりたい選手たちと格闘技指向の猪木の間に大きな溝が生まれ、団体は分裂し、興業の集客を著しく減らしていった。
 一方、総合格闘技と無縁の全日本は、四天王プロレスと呼ばれた過激なストロング・スタイルを演じ、集客に成功していた。四天王プロレスの場合、かつての決め技は繋ぎ技に過ぎなくなって、返されるのが当たり前になる。おまけにUWFの影響からか打撃系の技も多様なかたちでプロレスに吸収されていく。プロレスは「受け」の格闘技である。相手の打撃や得意技をすべて受ける。それを耐えに耐えて自分の得意技をフル稼働し、フォールを取りに行くのだが、どれだけ攻めても相手は降参しない。結果、どちらが勝つにせよ、対戦する双方に凄まじいダメージが残ってしまう。


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パティオで考える

奇跡の集落

 5月1日(土)、たまたまBSで「カールさんとティーナさんの古民家村だより」を視た。二回目の再放送らしい。新潟の限界集落「竹所」にドイツ人の建築家が移住して古民家を再生し、その後、移住者が増え続けて集落は活性化していく、という筋書きのドキュメンタリー番組である。最初は舐めていた。なにせ「古民家終活の時代」を声高に主張している立場でもあり、そんな上手くいくわけない、という諦めのような偏見を以て番組を視聴していたのだが、途中から、これは違う、と思い直し、急ぎ録画ボタンをおす。
 茅葺き民家の限界集落がその雰囲気を守りながら、ところどころにドイツのカントリーハウスのようなカラフルな木造住宅に生まれ変わっている。指定文化財のようにごりごりの保存では決してなく、竹田のホテルENのように、和風の趣にこだわりすぎてもいない。カールさんの場合、自分の住まいは茅葺きを残しているが、売りさばいた他の民家はブレース(筋交)を加えればハーフティンバーにみえるほどの変貌ぶりで、洋化・近代化の手法を誇示しつつ、内部には古民家の材を多く残している。
 まったくもう「古民家終活の時代」の真反対のことを実践しつつある。少々恥ずかしくなり、おおいに羨ましくなった。ただし、カールさんの手法は、わたしが提案している「安寧な終活」と重なりあうところがないでもない。各所で撤去される民家の主要部材を再利用して、新たな「民家」を設計・建設しているからだ。まぁ、しかし、口だけではなく、実践しないとね。こういう人物があらわれないと、限界集落はなにも変わりませんからね。新潟県十日町市周辺の方々はラッキーとしかいいようがない。
 よくよく考えてみると、わたしは木造建築士と二級建築士の資格をもっていて、カールさんのような仕事ができないわけじゃない。CADも使えぬ爺が戯言ほざいている、とあざ笑われそうだが、カールさんが古民家内のドラフターで作図する映像も流れた。CADがなければ仕事ができない、という考えを消し去ればよいわけだな・・・


 

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風のパティオ

ボノスDSC_0256 雀がみえないね


二軒のパン屋さんで

 四月晦日、大学に近い馴染みのパン屋さんに入ると、いきなりマダムから「大丈夫?」と問われた。ぽかんとして、にわかに「・・・陰性でしたから、私は大丈夫」と返したところ、今度は「言いたくないんだけどね、あの騒動の後、このあたりのお店、結構閉めたんですよ」と続く。他の店でも似たような話を聞いた。そう返して(お門違いながら)軽く頭を下げた。驚いたのは感染源に関する情報である。A紙を読んだり、常連客に教えられたのだという。本当か嘘か知らないけれど、私が知らないことまで詳しく知っている。思いのほか風聞になっているのは間違いないようです。


ボノスDSC_0251


 翌日(五月元旦)、ボノスまでブランチに出かけた。風が強い。パティオの席はアンブレラが閉じられ、椅子のシートが取り払われている。日差しは明るかったので、風を避けて、コリド-の席を使うことにした。小鳥があらわれないね、と呟いてパンと珈琲が終わった直後、雀が二羽、コリドーの肩石まで降りてきた。餌をくれ、とせがんでいるのだろう。持ち帰りのパンを千切って投げると激しい奪いあいになった。残された一羽のためにもうひと千切り投げた。雀は素早くそれを銜えて飛び去った。自分で秘かにたいらげている、というよりも、子雀のためのテイクアウトなんじゃないかな。駐車場で車に乗ろうとすると、雀が戻ってきて塀の上で羽を休めた。急ぎ写真を撮ったが、対象が小さすぎて訳わからなくなってしまった(いちばん上の写真)。


ボノスDSC_0252 コリドーの肩石に雀



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プロフィール

魯班13世

Author:魯班13世
--
魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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