造園学会に参加して(Ⅱ)
フォーラム「山陰海岸ジオパークのマネジメントを探る」
大阪府立大学中百舌鳥キャンパスは広大で、環境大学のキャンパスとの規模の差に驚いた。至る所に、さまざまなモニュメントが置かれていた。キャンパス内をある程度見てまわり、案内板に従い集合場のB3棟に向かった。B3棟の入口の前にN教授が待っておられた。コメンテーターの方々を出迎えたのち、ミニフォーラムの打ち合わせにも同席させていただき、そのままフォーラムに参加した。
フォーラムでは基調講演がまずあり、その後、コメンテーターの方々とのディスカッションをおこなった。基調講演の内容は山陰海岸ジオパークとジオツーリズムについてだ。世界遺産とジオパークの違いとして、世界遺産は条約に基づき、保全・保護を重要視するのに対して、ジオパークは保全と活用(地域振興)を重要視する。ジオパークでは世界遺産のように場所が重要なのではなく、ジオツーリズムなどの地域の人々の活動が重要視される。ジオパークは大地に親しみ、大地の成り立ちを知り、人間と地球のこれからの関係を考える「ジオツーリズム」を楽しむ場所であり、地質や地形の見どころとする自然公園である。
山陰海岸ジオパークのメインテーマは日本海形成に伴う多様な地形・地質・風土と人びとの暮らしなど文化的に重点を置く。山陰海岸ジオパークの特徴として日本海の形成にかかわる地質の多様性、日本海沿岸の海岸地形の多様性(岩石海岸と砂浜海岸)、地球科学史上貴重な発見(松山逆磁極期の発見)、火成活動の影響を受けた豊富な温泉資源、地形・地質の中で生じた動植物の多様性、多様な自然を背景とした地域の歴史・文化・暮らしなどが挙げられる。山陰海岸ジオパークのエリアは鳥取県から京都府までの海岸沿い110㎞もある。
山陰海岸での人間の活動を見てみると、日本海に面した山陰海岸の地理的条件と自然環境を活用し、古くから大陸交易、日本海を利用した物流の拠点として活用・認識され統治されてきた経緯がある。近世以降では、日本における物流の拠点が太平洋側に移り、日本国内の物流拠点としての位置づけは薄らいだが、自然資源としての水産物、景観、降雪、温泉など活用した観光拠点としての位置づけが大きい。
ジオパークに係わる活動として、以下の視点が必要となる。
・地域の地史や地質現象がよくわかる地質遺産を多数含み、考古学的・生態学的・文化的な価値のある場所も含む保全。
・地方自治体および公的機関・地域社会や民間団体によるしっかりした運営組織と運営・財政計画をもつ。
・ジオツーリズムなどを通じて、地域の持続可能な社会的・経済的発展を育成する。
・博物館、自然観察路、ガイド付きツアーなどにより、地球科学や環境問題に関する教育・普及活動を行う。
・地域の伝統と法に基づき地質遺産を確実に保全する。