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Sugar 02

 申請書もシラバスも片づかないのに、1時間半トレーニングした。
 金曜の夜のジムは会員でごったがえしている。わたしは一人異質な存在だ。ださいジャージ、腹のでた体型、白い髭をたくわえた老人の風貌・・・なにより鏡がおそろしい。自分がまるみえだ。
 今夜で3回め。これまでは女性コーチと女性の会員に指導してもらった。ジャブ&ストレートのワンツーまでの基本の反復である。若い女性会員など、わたしを小馬鹿にしている感がある。下手糞な爺だと見下しているのだろうな、きっと。

 会員が多いので、コーチを独占することはできない。ひとりシャドーボクシングを始めた。ジャブとストレートを鏡にむかってゆっくりくりだす。しばらくして、店長が男性のコーチを呼び、わたしを指導するよう命じた。51歳の男性だった。自分より年上をジムで指導するのは久しぶりだと言われた。
 やさしいコーチだが、わたしのフォームは良くないそうだ。ジャブ、ストレートの基本を何度もなんどもくりかえす。パンチの打ち方、膝と腰の曲げ方、ガードを下げないで元の位置に戻す方法などをしつこいほど注意された。語り口は穏やかだが、誉められることはほとんどなかった。
 へとへとになりながら、鏡の前のシャドーボクシングで、コーチの手のひらにパンチを打ち続ける。しらぬまに、背面のリングサイドに女性会員が続々集まってきた。店長(女性)までもがそこにいる。
 なんだ、人を肴にだべってんのか。どうせ、オレは下手くそだ。ほっといてくれ・・・と僻みながら鏡をみる。3分間の練習時間が終わってへとへとになり、苦虫をかみつぶして振り向くと、ちょっとした拍手が巻き起こった。「すごい」「綺麗なフォームだ」とみなが言う。んなわけないだろ。ボクシング始めて3回目の爺がまともなパンチを打てるはずはない。男性コーチも特段誉めてくれるわけではない。
 しかし、若い女子たちは、どうやら感嘆の声をあげているようだった。これがおかしなもので、自分では上手いワンツーが打てるようになったとは思えないのである。とくに難しいのは、右ストレートのときの右足と腰の回転だ。良いときは右足と腰の回転でパンチが自動的にでるが、駄目なときは体が前のめりになって手打ちになってしまう。疲れると手打ちばかりになる。だから、背面の女性陣に誉められてもピンと来ないのである。


 それからサンドバックを3回打った。どんな練習も1回は3分間。これがきつい。サンドバック相手に3分間のワンツーは死ぬほど辛い。2回で終わると思ったが、コーチはやさしい顔をして「もう1回」と言う。3度目はへなへなでずっと前のめりになっていた。
 これで練習お仕舞い。帰り際、またしても女性コーチと女性会員から「凄く綺麗なフォームでしたよ」と言われた。自分ではとても信じられないので、アカンベーの顔を以て返答とした次第。

 グルで演技してるんじゃないか。3回目の新人はみんなで誉めて、その気にさせよう。そういう暗黙の了解で、スタッフとなじみの客が芝居を打った??




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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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