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ボン郷ひとり旅(11)-余話その1

中島本IMG_3660 10月10日到着との知らせあり。国際郵便の傷み激しき・・


BBC講演 フェイスブックup

 1年掛かりで刊行したブータン民話和訳本『アシツォメン-湖のマーメイド』を日本に置き忘れた話をブログに書いたかどうか、忘れてしまいましたが、先日ようやくブータン向けに投函しました(3週間かかるらしい)。その旨、作者のカルマ・ツェリンさんとクンサン・チョデンさんにメールで伝えました。8~9日、ウゲンチョリンのロッジ(旧領主居館)に宿泊した際、話をして、講演原稿も読んでもらいました。すでに3度お目にかかっています。カルマさんと面識はなかったのですが、旅行手配していただいている佛子園ブータン事務所長いの中島さんと懇意の方だとわかり、絵本にメール・アドレスが書いてあったので、思い切ってメールを送りました(講演論文添付)。お二人から、長文の返信をいただきました。カルマさんは、「なぜブータンの非仏教信仰に興味があるのか」という質問もあり、また長文のメールを送りました。すると、ティンプー在住のカルマさんから「デチェンプ寺に昨日参拝したので写真を送ります」という再メールが届きました。デチェンプはゲンイェンというヒマラヤの土着神を祀る国家的な寺院であり、外国人は境内に入れない決まりになっています。おそらく論文を読んで、我々が苦心していると考えられての行動と推察しております。有難い。
 その後、今日になって中島所長から、11日の講演が主催者(BSIマーケット)のフェイスブックにアップされたという連絡がありました。サイトは以下。

https://www.facebook.com/share/p/bDpap4GTkDsT5fVr/?mibextid=WC7FNe

 フェイスブックはやってませんが、携帯番号で簡単にログインできました(パスは結婚記念日+)。下に日本語訳スクショ画面を貼り付けます。英文は以下のようになっています。

🌟Event Recap: Bonism Presentation at Brand Bhutan Store
sharing the highlights of an incredible event held recently at our Brand Bhutan Store, CSI Market! The event featured a captivating presentation on Bonism by a renowned Japanese professor, who has conducted extensive research on the influence of Bonism in Buddhism.
We’d like to extend our heartfelt thanks to all who participated and made the event a success!


フェイスブック デチェンプkarumact 右がデチェンプ寺(カルマさん撮影)

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ブッダ二さん(1)

祝! 52-52

 日々の日課であり生き甲斐ではあるけれども、流石に早朝5時起きはきつい。7時過ぎに目覚めて大慌てでテレビを点けると大騒ぎになっていた。大谷翔平選手の第49号ホームランである。盗塁はすでに二つ増えて51。以後は画面に釘付けとなった。
 夏を迎え、大谷さんは不調だった。8月の打率は中旬まで1割台、月末には2割ちょいまで戻したが、9月になっても無安打の試合が多かった。打率は.315から.287までだだ下がり。こういう低空飛行のなかで、本塁打と盗塁の数を着々と増やしていったのが不思議でならない。それが、昨日(20日)大爆発。6打数6安打 3連続ホームラン 2塁打2本 10打点 2盗塁。ゾーンに入るというレベルではなく、異星人か神仏のなせる技としか表現のしようがない。 

 菅原遺跡の第2論文がようやく初校になった。校正といっても、昔のように紙の原稿に赤を入れるんじゃないですからね。pdfのコメント機能を使います。退任記念講演にあわせて、土塔頂部の再検討を進めており、その結果、新たな知見があったので、修正指示の箇所が多くなった。その仕事の片手間にテレビを覗く。あらゆるニュースとワイドショーが大谷選手の偉業を大々的に報じている。面白かったのは『ゴゴスマ』出演のデーブ大久保のコメント。最終回に登板した野手投手の緩いボールをホームランにするのはとても難しいんだと、細かい技術を早口でまくしたて説明した。まぁ、大谷さんなら打ちますよ。
 あっ、いま52号ホームランを打ったよ。高めのボール球を被せるようにして叩き、バックスクリーンまでもってった。凄まじい!

 52個めの盗塁もあっさり・・・ 1日経って、52-52になっちゃった。打率3割間近。低空飛行終了のようです。しかし、ドジャースは投手陣崩壊。プレーオフで先発投手が足りるのか。わたしゃ、コペックかグラテロルを先発に回して、大谷さんが肝心の試合ではクローザーででてくるような気がしてしかたない。そういう風景になるならば、ドジャースはWSを制覇するだろう。でないならば、今年も途中で敗退するんじゃないかな? 





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ボン郷ひとり旅(10)-第11次ブータン調査

 13日(金)、予定どおり帰国しました。国際線の航路より、関空からの陸路の方が厳しいよね。帰宅後、2日間不調でした(ドジャースも)。昨夜からなんとか出張復命書に取り組んで、今回は「用務の概要」を別紙にしたので、ここに転載してまとめに代えます。2012年以来のひとり旅でしたが、科研最終年度にふさわしい実り多き成果のある旅で非常に満足しています。


2024年 9月3日~13日 ブータン出張 用務の概要

【月日】 9月3日(火)  【時間】17:00~  【場所】 関空
19:45 関空よりmm091便離陸。台風で航路変更につき、予定時刻より遅れ、25:20(タイ:日本時間-2h)バンコクのスワンナプーム空港着陸。入国手続きなど。

【月日】 9月4日(水)  【時間】05:00~19:00  【場所】 バンコク~パロ~プナカ
05:00 KB153便スワンナブーム空港離陸。07:00(ブータン:日本時間-3h)パロ空港着陸。専用車で一路プナカへ。14:30、ロベサ・ホテルにチェックイン。チメラカン周辺散策後、ルーカン(蛇の家)を調査中、雨上がりのぬかるみの山道で転び、小型ポラロイド故障。17:30 昨年の日本遺産《三朝》フォーラムに参加したサムテン・ドルジさん(当時岡山大留学生、現ワンデュポダン県高校地理教師)と面会し、情報交換。ワンデュポダンではラダ寺のアプ・ラダップが重要な非仏教神霊(土地神)であることを知り、今回の調査候補に追加することを決めた。

【月日】 9月5日(木)  【時間】09:00~17:00  【場所】 プナカ~ワンデュポダン
09:00 ワンデュポダン地区クンサリンのセワガン寺訪問。昨年まで3年続けて調査したポプジカのクブン寺は、ブータンに唯一残るユンドゥン・ボン(永遠のボン=仏教化著しい白ボン)の寺院とされるが、そのギョンカン(神間)に祀られる女神シッパイゲルモは、冬になるとセワガン寺に居を移すと聞いていた。セワガンでは、シッパイゲルモをシミゲルモと呼ぶ。シミゲルモの偶像はギョンカン内陣に祀られ、その横に緑色に厨子に納めたタラ菩薩像を納める。外陣左側(外側)の壁には主神の用心棒となるカタップ(赤・青一対の武勇神)を配する。内陣に近い側の赤鬼をレセップ、遠い側の青鬼をセウチェムと呼ぶ。 14:00 クンサリン村に移動。ドルジ家の仏間脇にある土地神アゲ・マサの厨子を調査。アゲ・マサは仏教の尊格でも、ボン神でもない。クンサリンを中心とする比較的狭いエリアの土地神とされる。ギョンカンはないが、仏壇片脇の厨子にアゲ・マサの経典を五巻納める。金粉で書いた経典だという。アゲ・マサ本神はチベットに行ってしまったので、金の経典をアゲ・マサの代わりにしている。満月の日、周辺から礼拝者がやってきて灯明を灯す。仏教の尊格よりアゲ・マサが重要な信仰対象になっている。

【月日】 9月6日(金)  【時間】09:00~17:00  【場所】 プナカ~トンサ
09:00 プナカ発、16:20 トンサ地区の山間僻地ランテルのジャンビ村に到着。ボンをいまだに信じるモンパ族の集落。モンパ族は仏教伝来以前からこの地にいた先住民的集団で、独特の言語と衣服(イラクサ編み)を残す。村のツォパ(村長第二代行)を務めるソナムさん宅に投宿。ソナムさんは在家信者ゴムチェン。夕食を挟む時間にヒアリング。ジャンビの主神はジョードルシン、元はボン神だったが、今は土地神に変容している。無形、偶像なし、祭場なし。当番制により民家の中で祭礼を行う。ソナム家で一泊。


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ボン郷ひとり旅(9)-第11次ブータン調査

0912パロ02民家レストラン02集合 0912パロ02民家レストラン01


47-48 ロクジェゲ!

 9月12日。いまパロ空港でフリーWi-Fiに接続しました。かなり不安定です。朝から荷物の整理をしていて、大谷選手の第47号ホームランを知りました。盗塁も決めたから、これで47-48か。
 パロの市街地を経由して、郊外農家のレストランへ。47-48を祝して赤米ビールで乾杯!
 市街地の土産物で、また冬虫夏草を買いました。高いが、歳をとると、どうにも健康のことが気になってね。昨年以来、これで4回めの冬虫夏草です。民家のソファで横になり、そのまま寝落ちして、ガイドに呼ばれても気づきませんでした。今日は午後4時のKB152便でバンコクに向かいます。また、空港内でトランジット。ホテルには泊まりません。台風が少し心配です。
・・・・・と、ここまで書いてWi-Fiがつながらなくなった。ゲート前に移動。

 今回のガイド、タシ・プンツォさんは身の回り全体のケアが素晴らしかった。私をホテルの部屋に送り届けて終わりというのではなく、部屋の中での荷物整理やパソコンのセットも必ずやってくれたし、泥道・階段でふらつく私を運転手のウゲンさんとともに支えてくれた(昨年は杖をもってきたが、今年はなし)。なにより、「先生と調査し、講演を聴いたおかげで、ブータンのユンドゥン・ボン(白ボン)と民俗ボン(黒ボン)の違い、そしてまた、ボンと土地神の違いがよく分かりました」という最後の一言が非常に嬉しかった。ブータンの歴史文化に詳しいツアーガイドにとっても、土地神の鎮座するギョンカンについては神秘的な謎であり、しかしながら、それはブータン文化のソウルであるという想いを強くした。

 ロクジェゲ(また会いましょう)


0912ダミサホテル01 0912パロ01ブータンメイド01 ティンプーのダミサホテル、パロの土産物店ブータンメイド


 午後8時過ぎ、バンコク着陸。4階のチェックインカウンターを確認したが、まだ開いていないので、3階のタイ・レストランにしけこんで、ひさびさのトムヤンクン・ヌードルに舌鼓し、Wi-Fiを確保。ゼロコークをおかわりしながら2時間ばかり仕事をした。さて、そろそろ動くか。

 *バンコク空港内のフリーWi-Fiのうち、以下はパスなしでアクセス出来ることが後で分かった。1時間ごとに更新する必要あり。
.@Airport Free Wi-Fi by NT


《連載情報》ボン郷ひとり旅
(1)旧友再会 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2900.html
(2)セワガン/アゲマサ http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2901.html
(3)ジャンビ(モンパ族) http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2902.html
(4)ジャンビ寺/タシディンカ http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2903.html
(5)ペムラカン http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2904.html
(6)ウゲンチョリン寺 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2905.html
(7)ラダップ http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2906.html
(8)講演会 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2907.html
(9)ロクジェゲ http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2908.html
(10)用務の概要 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2909.html
(11)講演フェイスブック http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2911.html

ボン郷ひとり旅(8)-第11次ブータン調査

0911講演09 0911講演00看板


Lecture at Bhutan Brand Centre in Thimphu

 昨日午後ティンプーのホテルに投宿してから、ずっと講演パワポの調整に取り組んだ。ホテルの部屋の机が低すぎて疲れるので、今日の午前はレストランのテーブルで作業した。テーブルの高さ一つで仕事のしやすさが全然変わる。英文の圧縮、今回調査内容の追加など、できることはやったつもりである。
 午後5時過ぎ、会場のブータン・ブランド・センター入り。ただちに準備に取りかかる。スクリーンではなく、大型テレビを使ってのパワポ講演になるが、私のパソコンとの接続がうまくいかず、会場側のパソコンを使わせていただいた。定刻の6時を過ぎたが、聴講の予約をしている20名のうち7名がいないので、少々待つ。ブータン時間である。講演は6時15分スタート。


0911講演02 0911講演07


 演題と構成は以下の通り。

Some Heritages of Bon or non-Buddhism behind Buddhism
     - From the secluded regions of Bhutan

1. What is Bon ?
2. Folk world of Bhutan
3. Kubun;A temple that combines Bon and Buddhism in Popjika valley
4. Bemji: the Hidden Village of the Bon people
5. The guardian deities of the basin and the Himalayas
6. Conclusion: Inversion of Superiority and Inferiority

〈Serialized Information〉 Preparation for Thimphu Lecture on September 11
(1) http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2895.html
(2) http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2896.html
(3) http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2897.html
(4) http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2898.html

 スライドの総数は25枚。18枚(45分)でいったんブレイク。ここでオヤツ・タイム。餃子(モモ)とバター茶(スージャ)が全員にふるまわれた。10分後再開。土地神の信仰は仏教より根深く、チュンドゥ神(ハ)やムクツェン神(トンサ)にはとくにその傾向が強いが、祭場に着目すると、中心にあるのはあくまで仏堂・仏壇であり、土地神は排除された場所に祭られる。そういう優位と劣位の逆転があるのだという私の結論を述べた。


0911講演05ケザン01 0911講演08カルマ


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ボン郷ひとり旅(7)-第11次ブータン調査

0910ワンデュポダン城01外観01 0910ワンデュポダン城03ゲルポゴンカン扉01


ワンデュポダン城のギョンカン

 9月10日(火)、チメラカンに近いプナカのホテルからワンデュポダン城をめざした。ワンデュポダン城はガワン・ナムゲルの造営という。ブータンは明日からツェチュ祭である。前日にあたる今日は、チャムジュ(chamju)という祭が催される。駐車場は車で溢れ、ゾン(城)へ向かう参拝者が後を絶たない。警察の監視が厳しい門堂をくぐり、前方の広い中庭に出ると、すでに仮面舞踊が始まっており、観衆で賑わっていた。わたしたちは、その隙間をぬって奥の小さな中庭に向かう。その中庭の奥に、小ぶりの楼閣ウチが建っている。この楼閣にギョンカン(神間)を含むらしい。果たして、1階の正面側に Gyelpo Gyoemkhang のサインボード(↑右)を発見した。ガイドが中に入ったが、誰もいない。


0910ワンデュポダン城01外観02奥の中庭02ギョンカン楼? 0910ワンデュポダン城01外観02奥の中庭01


 裏側にまわっていくと、今度は2階上にギョンカンがあるという指示板をみつけたので、きつい階段を上がっていった。途中から髑髏の板絵があり、ギョンカンに近づいたことを暗示させる。最上階にギョンカンがある。普段は開けていない。この日は祭なので、特別に参拝可能にしている。ラッキーだった。しかし、撮影は許されない。この部屋の管理者は若年僧キンレイ・ワンチュク君、祭なので近くの寺で修行中の友人、キンレイ・ドルジ君が遊びに来ていた。


0910ワンデュポダン城04最上階ゴンカン02ティンレイ 0910ワンデュポダン城04最上階ゴンカン01ポラ


 ここのギョンカンは仏堂級の広さがある。2本柱タイプ。本尊は、レゲン・ジャロドンツェン。ガルーダの顔をしている。イシゲンポの生まれ変わり。ボンの神ではない。仏教側の神が悟りを開いて、人間的な姿になり、土地神になった。ブータン全土の守護神で、ブンタン、ハ、パロ、ティンプーなどにも祭場がある。本尊の左側に黒い髑髏の厨子があり、ワンデュポダンの土地神ラダップの偶像を収めるが、誰にもみせない。ラダップは、城に近いラダ寺のギョンカンの本尊とする。
 2012年、火災でワンデュポダン城は全焼した。ギョンカンも偶像もすべて焼けた。コロナ禍の中、再建された


0910ワンデュポダン城02chamju祭02 0910ワンデュポダン城02chamju祭01
チャムジュ祭の舞踊


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ボン郷ひとり旅(6)-第11次ブータン調査

0909ウゲンチョリン10朝食02美女2名01 0909ウゲンチョリン10朝食02美女2名02


46-46 蕎麦三昧の朝

 古い領主居館ナグツァンの一室で豪華な夜を過ごした(懸念されたWi-Fiもレストランのそれに接続)。こんな経験をしたのは2019年に宿泊したパロのガンテホテル以来である。朝はまた蕎麦三昧の食事で至福。蕎麦粉のパン、蕎麦花の蜂蜜、蕎麦粉のパンケーキ(クレ)にヨーグルト。ジャムも数種類。ウゲンチョリンの朝を過ごしながら、私は竹所のカールさんを思い出していた。古民家を活用したライフスタイルに、オーガニックな食事。カール・ベンクス夫妻とクンサン・チョデン夫妻には多くの共通点がある。シンガポールからやってきた日本人女性は、「ブータンにきてから食べたものの中でここが一番美味しい」という。全く同感であり、私も Best food in Bhutan という感想をスタッフに伝えた。


0909ウゲンチョリン10朝食01蕎麦01パン01 0909ウゲンチョリン10朝食01蕎麦02ソバ畑
蕎麦パンに蕎麦花の蜂蜜をつけて


 9月9日(月)、大谷翔平が46号の特大ホームランを打ったという情報が飛び込んできて、気分は高揚していた。ロス在住の中国系アメリカ人が食堂にいて、46-46の状況を告げると、彼女も喜んだ。エンゼルスよりドジャースが好きだという。大谷選手について、私見を述べておくと、記録やMVPに拘らず、ともかく健康でいてほしい。健康でいれば、記録は自ずとついてくる。より健康であるためには、定期的な休養が必要だと思う。休む方が成績は上がるだろう。


0909ウゲンチョリン02寺01 0909ウゲンチョリン02寺03梯子01


ウゲンチョリン寺のギョンカン

 村の在家信者(ゴムツェン)、ンガワン・ジャンペルさんの案内でウゲンチョリンラカンの2階仏堂へ。

1) 二本柱タイプの仏堂
2)正面右側の壁、中央にギョンカンの扉。ラシャレンゴ(Rasha Lengo)の仮面を懸ける。
3) ギョンカン内陣: いちばん奥の中央に土地神ゲンボ・マニ(Gyembo Mani)を祀り、その前中央にチャナドルジ(金剛薩埵?)、両脇にカタップ2体置く。
4) ゲンボはボンの神ではなく、タン渓谷の土地神。
5) ゲンボの祭は年1回、5月。司祭はゴムチェン。仏教のお経を唱える。飲食あり。直会は外で。
6) 年中毎日、朝と夕方、寺に来る。掃除、お祈りなど。遠方からの礼拝者は供物をもってきても仏堂まで。供物はゴムチェンがギョンカンにもってはいる。
7) 仏とゲンボーの両方を大事にしている。しかし、仏堂には入れても、ギョンカンには入れない。
8) 家でもゲンボーのお祈りをする。トルマをつくる。
9) クンサンは、イシゲンポが土地神だと言ったが、神の本体はゲンボ・マニであって、グル八変化のように、ゲンボ・マニは姿を変え、イシゲンポにもペルデンラモにもなる。イシゲンポはペリン村の寺で祭っている。


0909ウゲンチョリン02寺05記念撮影01クンサン 0909ウゲンチョリン02寺02案内人ンガワンジャンペイ01



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ボン郷ひとり旅(5)-第11次ブータン調査

0908ペム寺02蛇の家ルンブカルモ02祠01 0908ペム寺02蛇の家ルンブカルモ01ポラ01
↑ストゥーパ型のルンブガルモ@ペマラカン(ブンタン)


ノルガン村のペムラカン

 9月8日朝、トンサのノルブ凛花リゾートを出発。09:50、ヨトゥン峠で久々の雉打ち。その後、ブンタン地区に入り、チュメの土産物店で賢そうな女性を発見。教育省の助成で英国に留学中。3週間の夏休みで帰省しているところ。4年間の留学後は教育省で働くことになるという。帰国子女と毎年こういう出会いがあるね。


0908ペム寺03本堂01外観01 0908ペム寺01案内人01ポラ


 ブンタン市街で昼食後、ペムラカンを探す。クルジェラカンとジャンバラカンの間にあるボン教寺院ということだが、グーグルの地図でも位置が分からない。果たして、道を間違い、泥だらけのぬかるみを今日も歩いて疲れた。
 13:40 ようやくノルガン村のペムラカン着。本堂正面方向にクルジェラカンあり。二人の女性からヒアリング(母娘ではない)。
①ノルガン村のボン教徒は毎日ここに来る。
②ジャンバラカンやクルジェラカンも満月の日に参拝。ここでは仏教もボンも両方信仰されているが、身近なのはボンの方。願いごとは同じ。
③本堂は2本柱、狭い内陣の奥中央に釈迦、右にシャブドゥン、左にペマジュネ(グル)、左の脇壁にチェレンジ(千寿観音系?)
これらの仏を祭る祭も2月、6月、8月にある
④内陣の右壁に沿って黒い厨子を置く。これがギョンカン。扉にペルデンラモ、下に龍(ドゥク)を描く。土地神はNep lha sherpo 
⑤毎月満月の日、祭礼がある。村人の多くが集まるが、来ない人もいる。トルマをつくり、牛乳で料理をつくる。屋外イトスギの前で祈り、食べる。
⑥司祭は仏教ラマ(引退したラマも)の場合も、村人の場合もある。
⑦金で書いたボンの経典がギョンカンの中にある。みせられない。このお経を読むのを一度も聴いたことがない。
閉めたまま。ギョンカンの中にあるだけ。
⑧このお寺を建てる前、ここには湖があった。ルーカンが2か所ある。方言で、ルンブカルモ。一つは祠、一つは石。
⑨寺は村の所有。国のものではない。国王は来たことがない。


0908ペム寺03本堂02二本はしら01 0908ペム寺03本堂02二本はしら02
↑二本柱の本堂
0908ペム寺04ボンの祭を行う糸杉01 0908ペム寺02蛇の家ルンブカルモ03石01
↑(左)イトスギの周りでボンの祭礼を行う  (右)石のルンブカルモ〔蛇の家〕 


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ボン郷ひとり旅(4)-第11次ブータン調査

0907ジャンビ寺012本柱01 0907ジャンビ寺02外観0


ジャンビラカンの赤鬼と青鬼

 9月7日、ソナム家をあとにして、ジャンビ寺へ。ラマ無住。普段は満月の日にしか開けないが、同行したソナムさんが近所の管理人、ナカリさんを呼んできて本堂を開けてもらった。撮影自由。2本柱タイプの平面。仏壇のグル八変化像はトンサからもってきたもの。林道のない時代だから、運ぶのが大変だったろう・・・とは思うけど、この寺が村の中心施設という感じがしない(あまり仏教を重視していない印象)
 本堂の2本柱に赤鬼・青鬼の仮面をかける。村では、この仮面をゲムツォリンと呼ぶ。普通、こうした仮面は秘奥の間ギョンカンの入口の左右に置くのが一般的。一般的には、左側の赤鬼(男)はイシゲンポ、右側のパルデン・ラモと呼ぶ。


0907ジャンビ寺012本柱02ゲンツォリン赤01 0907ジャンビ寺012本柱02ゲンツォリン青01 0907ジャンビ寺012本柱02ゲンツォリン02ポラ 0907ジャンビ寺012本柱02ゲンツォリン03youtube


キプルンセンの棲む山

 その後、ジャンビ小学校のグラウンドから、キプルンセン(ムクツェンの別名)の棲む山を撮影した。ベンジ村の祭場から遥拝したムクツェンの山の頂とよく似ていた。もちろん別の山であるが。


0907ジャンビ小学校から望むムクツェンの山 0907ジャンビ小学校から望むムクツェンの山ポラ



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ボン郷ひとり旅(3)-第11次ブータン調査

0906ランテル峠を越えて昼食01 0906ランテル峠を越えて昼食02


ジャンビ村-モンパ族のボン教徒集落

 朝9時過ぎ、プナカのロベサホテルを出て、午後4時20分、ようやくトンサ地区ランテルの秘境、ジャンビ村に到着。ボンをいまだに信じるモンパ族の集落である。モンパ族とは、古くから(仏教伝来以前から)この地にいた集団で、言語はゾンカとも、ブンタンカとも異なる。トンサ方面の幹道から集落に至る林道(舗装なし)が開削されたのは3年前のこと、以前は歩いて通うしかなかった。鳥取で譬えるなら、板井原が智頭から2時間ぐらい離れた感じ。ベンジのようにチベットから落ちのびたわけではなく、元からここに居たという点が重要。
 村のツォパを務めるソナムさん宅に投宿。村長の次がマンミ、その次がツォパ。村長代理のような仕事。写真を撮るというと、早速ゴーに着替えたが、ブータン人の服とは違う。独特な礼装であり、地位の高いお金持ちの礼服だとか。ボンと関係あるかも? 彼は在家信者ゴムチェンである。


0906ジャンビ村ソナム礼装 0906ジャンビ村ソナム礼装02


 ボンの儀式は民家の当番制でおこなう。寺ではない。民家が会場となる。ボンの神(男)は、ジョードルシン(Jodorshing)という。仏教導入後にボン神から土地神に変わった。どこにいるのか分からない無形の存在。
 ベンジのムクツェンは、ジャンビではキプルンセンという。小学校から、キプルンセンの棲む高台がみえる。下流に行くと、また名前が変わる。グル八変化のようなものだ。
 深夜、ソナムさんの弟ドフさんが訪ねてきて1泊。トンサでラマをしている。仏僧だが、ボンに敬意をもっている。「子どものころからボンの慣習のなかで育ってきたから、ボンも大事。仏教もボンも大事」だとのこと。一般村民はあきらかにボンを篤く信仰している。


0906ジャンビ村ソナム食事01 夕餉



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ボン郷ひとり旅(2)-第11次ブータン調査

0905セワガン寺03仏堂01 0905セワガン寺01外観01 仏堂と外観


 9月5日(金)、深夜からの大雨で大地は湿り、何回も足下を掬われ、何回も転んだり、水田に落ちたり。寺や民家に至る道は、道ではなく畦であり、左手に水田、右手に灌漑用水路。常時、2~3人に補助されて歩いたが、2ヶ所の往復で疲れた。しかし、収穫は大きい。以下、箇条書きでまとめる。

セワガン寺のシミゲルモ

 ポプジカに残る唯一のユンドゥンボン寺院、クブン寺の祭神(女神)シッパイゲルモは夏にクブンを住まいとするが、冬がクンサリンのセワガン(Sewagang)寺に移る。対応してくれたのは、タオチューという管理人とその奥さん。ラマは居ないが、夫婦の孫のシゲが出家(5歳)で修行中。寺の儀式などを取り仕切る。


0905セワガン寺02ゴンカン01 0905セワガン寺02ゴンカン02カタップ01


 〈1〉 クブンの女神シッパイゲルモは、セワガンではシミゲルモ(Semi Gelmo)と呼ぶ。旧暦の9月から半年セワガンに居る。
 〈2〉 14世紀にセンデン・デワが開山した。当初からドゥク派と両立していた。
 〈3〉 本堂など建物もその時期にできた。木材は何度も差し替えているが、一部の版築壁は古いものだ。
 〈4〉 仏堂(6本柱縦長タイプ)の奥にギョンカンがある。ギョンカンでボンの儀式(祈り)は毎日おこなわれる。仏堂でのドゥク派仏教の儀式は年に8回。3年に1回、ボンの大祭が催される。庭でダンスも踊る。
 〈5〉 寺の歴史について、第69代大僧正チャプチェ(ジェケンポ)の文献に記録がある。先代のチャプチェ(現在のチャプチェは第70代)
 〈6〉 シミゲルモを信仰する人は多くいる。周辺だけではなく遠くから礼拝にくる。シミゲルモの方が仏より重要な信仰対象。近所にはシゲという名の人が多い。シゲはシミゲルモの略称(八地区にはチュンドゥという名の人が多い)
 〈7〉 病気とか不吉なことが多いと、家の仏間にラマを呼んで法要するが、その前の日には必ずセワガン寺ギョンカンのシミゲルモにお祈りする。家の仏間で読経するときも、心のなかにはシミゲルモを思い浮かべる。
 〈8〉 ギョンカン内陣の奥、左側にシミゲルモの像を確認。右側の厨子の中にタラ菩薩を隠す。
 〈9〉 内陣から前をみて左脇の壁に赤・青2体のカタップを置く。内陣に近い方(左)が赤鬼Resep、遠い方(右)が青鬼Sewchem。


0905セワガン寺02ゴンカン02カタップ02 0905セワガン寺04所在証明(小学校)


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ボン郷ひとり旅(1)-第11次ブータン調査

0904マツタケ01


再会-ドーハのウゲンさん

 9月3日(火)夜7:45のピーチmm091便で関空T2から飛びたった。 台風10号は過ぎ去ったが、台湾方面に新たな台風が発生しており、航路を大幅に変えた結果、到着は予定の1時間半ばかり遅れ、4日(水)00:30(日本時間02:30)の到着になった。LCC便なので、いったんタイの入国審査を受け、荷物をとって、そこから4階の出国カウンターでブータン王立航空のチェックインをしなければならない。
 KBのカウンターに行くも手続きは午前2時からとのことで、フロアのカフェで休む。ラテとパン。まもなく、チェックインが始まり、以後は順調、D8Bゲートは誰もおらず、椅子を3つばかり占領して横になる。まもなく、韓国出張帰りのブ7ータン女子2名がやってきて軽く挨拶。朝5時の飛行機は7時(日本時間10:00)にはパロ空港に着陸した。ガイドは昨年最初の2日、八地区の案内をしてくれたタシさん。チュンドゥ寺の大祭で、かのウゲン・チョデンさんに出会った際の案内係である。ウゲンさんは、もちろんカタールに帰っていて、今年は帰って来ないという。しかし、ご覧のとおり、スマホで再会してしまった。いきなりでどぎまぎするばかり。来年は帰省するというが、私の方が定年なので、高騰した旅費を考えるとまた来られる保証がない。残念。


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 今回の一人旅はまたいろいろチョンボがあり、昨年翻訳したブータン絵本を家においてきてしまった。で、READブータンの訪問は意味がなくなり、専用車はパロからプナカのロベサホテルに直行。
 昼前にはホテルに着いて、ウェルカムドリンクを飲みながら、ウゲンさんと話をしたのだが、ともかく疲れていて早く体を休めたかった。ロベサホテルは風景の素晴らしく綺麗なところである。ロッジのテラスに出れば、かつて谷さん、藤井さん、岡垣くんたちを魅了した棚田の風景がひろがる。チメラカンも遠望できる。


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プロフィール

魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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