蕎麦の道(1) ご無沙汰しております、4年の月市です。現在私はブータンの蕎麦食文化をテーマに卒論に取り組んでいます。蕎麦に関する基礎知識を学ぶため、中国のオンライン百科事典「百度百科」の蕎麦に関連するページの翻訳を進めています(wikipedia日本語版よりも内容が詳しい)。今回は冒頭の部分と第一章「栽培の歴史」、第二章「形態的特徴」の部分を紹介させていただきます。長い翻訳となったので、先生に細かく目を通していただくことはできませんでしたが、素訳をアップします。皆様のご指導をお願いするしだいです。
百度百科 荞麦 (植物名称)
https://baike.baidu.com/item/%E8%8D%9E%E9%BA%A6/889827#3①訳文:蕎麦(植物名)
ソバ(学名:
Fagopyrum esculentum Moench.)、別名:浄腸草、烏麦、三角麦
タデ科(
Polygonaceae)ソバ属
(Fagopyrum)
成熟期間は75日、北方では二期作が可能、一年生植物(一年生草本)である。茎は直立し、高さ30〜90 cm、上部の茎は緑または赤色で、縦方向にエッジ(線)がはしっている。茎は無毛または片方のエッジに沿って縦方向に乳頭状突起を持つ。葉は三角形または卵型の三角形で、長さ2.5~7㎝、幅2~5㎝で、尖った先端とハート型の基部を持ち、葉の両面の葉脈に沿って乳頭状突起を持つ。蕎麦は涼しくて湿気の多い気候を好み、高温、干ばつ、強風に耐えることができない。また霜にも弱く、日光を好む。栽培にはやや多めの水を必要とする。
中文名:蕎麦
別名:浄腸草、烏麦、三角麦
ラテン語名(学名):
Fagopyrum esculentum Moench.界:植物界
門:被子植物門(
Angiospermae)
綱:双子葉植物綱(
Dicotyledoneae)
亜綱:古生花被植物亜綱(
Archichlamydeae)
目:ナデシコ目(
Caryophyllales)
科:タデ科(
Polygonaceae)
亜科:タデ亜科(
Polygonoideae)
連:ソバ連(
Fagopyreae)
属:ソバ属(
Fagopyrum)
種:ソバ(
Fagopyrum esculentum)
栽培の歴史 ソバの起源について、日本の植物学者、星川清親
(おそらく『栽培植物の起原と伝播』 1987 )は、日本で栽培されたソバは8世紀に中国から朝鮮半島を経由して日本に伝わったと考えている
【訳注1)考古学的には弥生前期まで遡ることが分かっている】。原産地は北東アジアのバイカル湖に近い中国の東北地方であり、具体的な伝播経路は、唐代に北から南伝して中国の内地に入ったと考えられている。宋代には中国南部で広く栽培されていた。(中国南部から)インドシナにも伝播し、8世紀に至ると朝鮮半島を経由して日本に伝わった。また、8世紀には中国からインドにも伝わり、とりわけインド北部では、非常に広い地域でソバが栽培されるようになる。その後13〜14世紀に、ソバはシベリア、ロシア南部、またはトルコからヨーロッパに拡散した。17世紀にはベルギー、フランス、イタリア、イギリスに持ち込まれた。1625年にはオランダの入植者がハドソン川を経由してアメリカに、そして後にカナダと南アメリカにソバをもたらした。
中国の学者、たとえば『中国農業地理』の著者、韓茂莉は、ソバの起源に係るバビロフとジュコフスキーの見解に基づき、ソバの物的痕跡が中国で発掘されたが、考古学の世界でソバの起源が中国にあると結論づけるには物的証拠が少なすぎると述べている。しかし、ソバの拡散の中心が北方にあるのは確実であり、その拡散の経路は「黄河流域から淮河流域に至り、さらに、人口の移動に伴って栽培地は領土外に拡大した」という。また、林汝法主編『苦蕎挙要』では、主に西南中国の「苦蕎」
【訳注2)原生種に近い苦い味の蕎麦か?】の特徴、物的資源と育種、及びその栽培技術を紹介している。この書では「苦蕎の起源は雲南滇西の中山盆地にあるのかもしれない」としている。
関連する理論(的論考)だけでなく、ソバの考古学的遺物も増えている。陝西省の楊家湾漢墓から2000年以上前のソバ種子が発掘されたのに続き、陝西省咸陽市馬泉と甘粛省武威市磨嘴子では前漢と後漢のソバの痕跡がみつかった。2006年には、北京市房山区丁家窪村で春秋時代のソバの痕跡が発掘された。2010年には、内モンゴル自治区通遼市巴彦塔拉(バヤンタラ)鎮で遼代のソバ痕跡がみつかった。(なかでも)ソバの起源に関する最新の研究進展(として注目されるの)は、2006年に小珠山貝塚遺跡の中の呉家村遺跡で発掘中に、多数のソバの種子みつかったことである。呉家村遺跡は、約5500年前の紅山文化
【訳注3)中国東北地方の新石器文化】の遺跡である。2010年、金英熙と賈笑冰は「遼寧(省)長海県広鹿島小珠山貝塚遺跡の発掘と収穫」という新聞報道で次のように指摘した。「ソバの起源と伝播に関する学術的見解は以下のとおり。すなわち、ソバは中国の東北地方に起源し、その後徐々に西へ拡散した。この伝播のあり方は、稲作の起源・伝播にとてもよく似ている。遼寧(省)大連(市)広鹿島小珠山貝塚遺跡の発掘調査以前、ソバの起源に係る地域はほかにもあり、重要な証拠となる遺物を伴っていた。ただ東北中国においてのみ、ソバの考古学的証拠を欠いていたのだが、このたびの発掘調査により、小珠山貝塚遺跡で多数のソバ種子が出土し、ソバの起源に関する問題について新たな視点をもたらした。
国内外のソバ研究の理論的分析によると、多くの学者はソバの起源は中国にあって、甘蕎(甘いソバ)の起源は北方中国、苦蕎(苦い蕎麦)の起源は西南中国にあると考えている。しかしながら、発掘された最新のソバ種子の分析からみれば、ソバの起源地はおそらく北東中国にあるのであろう。
形態的特徴 一年生植物(一年生草本)。茎は直立、高さ30〜90 cm、上部の茎は緑または赤色で、縦方向にエッジ(線)がはしっている。茎は無毛または片方のエッジに沿って縦方向に乳頭状突起を持つ。
葉は三角形または卵型の三角形で、長さ2.5~7㎝、幅2~5㎝で、尖った先端と芯型の基部を持ち、葉の両面の葉脈に沿って乳頭状突起を持つ。下葉(草木の下の方にある葉)には長い葉柄があり、上部の葉は小さくてほぼ茎が無い。葉鞘は膜質で、短い円筒形をしており、長さは約5㎜、先端が斜めになっていて、縁毛(ふちなどにある毛)がなく、破裂して脱落しやすい。
花序は総状花序または散房花序、頂生または腋生、花柄の片側に小さな突起を持つ。苞片は卵形、長さ約2.5mm、緑色、フチは膜質、各苞に3~5の花をつける。花柄は苞片より長く、節はない。花被は5つに深く裂けており、白色または薄赤である。花被片は楕円形をしており、長さ3〜4 mm、雄蕊(おしべ)は8つあり、花被より短い。葯は薄赤色、花柱は3つあり、柱頭は頭状である。痩果は卵形、3つの鋭い角を持ち、先端に行くにしたがって先が細くなっている。長さ5〜6 mm、暗褐色で光沢は無い。痩果は宿存萼(花被)より長い。花期は5~9月、果期(盛果期?収穫期?)は6~10月である。 (月市)
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