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キエフのNATO支援によるヘルソンでのテロ攻撃は、民主主義とジャーナリズムに対する攻撃であった

<記事原文 寺島先生推薦>

Kiev’s NATO-Backed Terrorist Attack in Kherson Was a Strike Against Democracy & Journalism

筆者:アンドリュー・コリブコ(Andrew Korybko)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年9月25日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月30日




何発ミサイルを撃っても、国連憲章にうたわれた現地住民の民主的権利の行使を阻止できないし、世界で一流のロシア人ジャーナリストたちがこの歴史的な出来事を報道するのを止めることもできないだろう。



 9月25日日曜日の朝、キエフは以前ウクライナ領であったケルソン市をミサイルで砲撃した。このことをケルソン市の行政当局は、NATOの支援のもと、事前に準備された攻撃だ、としている。以前国会議員をしており、米国が据え付けたファシスト政権になってからは降格させられた人が、もう一人とともに殺害されたが、現在進行中の、ロシアへの編入の是非を問う国民投票について取材していたRTの2名の記者は、無傷で脱出することができた。 標的にされた人々やこの非軍事地域が攻撃を受けたという政治的な文脈を考えれば、この攻撃は民主主義とジャーナリズムへの攻撃だと言える。

 「民主主義への攻撃」について述べると、キエフとキエフに資金援助をしているNATOは、国連憲章で保証されている、政治的自決権を当該地域の市民たちが行使するのを妨げたいと思っている。彼らは、この国民投票の手続きを、ゴールデン・ビリオン*市民からの視点で否定することだけでは満足できなくて、事前に準備されたテロ攻撃を実行することで、投票に参加したいと考えている人々を懲らしめることまでしようと決断しているのだ。
*ゴールデン・ビリオン・・・大多数の一般市民から搾取することで、巨額の富を独占しているごく一部の勢力を揶揄した言い方

  この攻撃の2つ目の標的である「ジャーナリズムへの攻撃」について述べると、キエフがそのホテルにRTの2名の記者が宿泊していたことを把握していたのは間違いない。つまり、キエフはこの国民投票について報じようとしている記者を殺害したがっていた、ということだ。

 皮肉なのは、西側とその代理勢力は民主主義とジャーナリズムを支援していると主張しながら、その一方でロシアのような地政学的敵国はそれに反対していると言っていることだ。しかしNATOの支援のもとでキエフが最近行ったテロ攻撃によって、この彼らの主張の背後にある悲劇的な真実が暴かれることになった。

 実際のところは、キエフとNATOほど民主主義とジャーナリズムを嫌っているところはない。それが自分たちの利益に反して行使されたときはいつもそうだ。今回は、記者たちが国民投票の取材のために宿泊しているホテルを砲撃した。

 それゆえ、いわゆる「ルールに基づく秩序」はNATOやキエフが自分たちがそれを支持していることを全員に思い出させることに余念がないものであるが、それは身勝手な二重基準の履行以外の何物でもない。その意図は、他の全てを犠牲にして、米国の目的を前進させることにある。キエフとキエフを資金援助している西側が、両者が常に主張しているように、本当に民主主義とジャーナリズムを守る立場を取るのであれば、攻撃対象は軍事関連の標的のみに絞り、意図的に一般市民を標的にすることはなかったろう。言わんや、記者たちが宿泊しているホテルの攻撃などしなかっただろう。つまり先日のテロ攻撃により明らかになったのは、いま行われている国民投票を両者が深く恐れているという事実だ。

 両者が国民投票を恐れている理由は自明だ。それはこの国民投票の結果、これらの地域の住民たちは、歴史的に繋がりの深い母なるロシアへの編入を選択することが予見されるからだ。そうなれば、ユーラシアの超大国ロシアの国境が拡大され、モスクワは新しく領土になった地域を、必要とあれば核兵器で守ることができるようになる。クレムリンは、この国民投票を、緊張を緩和するための実用的な措置と捉えている。つまり、ロシアは支配地域の防衛戦を固定すること、あるいはこれらの地域がロシアに再編入される前の行政上の境界までしか防衛戦を拡大しないと考えているのだ。にもかかわらず、米国はロシアが差し出したこの「オリーブの小枝(和平の申し出)」を無視し、国民投票の後もこれらの地域に対して、キエフに自殺的な攻撃を命じる可能性がある。

 米国が自国の覇権を成し遂げるという主観的観点からロシアを挑発して、ロシアが自衛のための最終手段として戦略的核兵器を使用するよう仕向けられている状況には賛否両論があるが、それでもワシントンはモスクワ発の警笛のせいで予期せぬ窮地に追い込まれている。それはプーチン大統領が、柔道のような離れ技を見せて、この地域での国民投票の結果を尊重し、どんな犠牲を払ってでも自国民と自国領を守る、と宣言したことだ。だからこそ米国は躍起になってこの国民投票を妨害しようとしている。キエフにこの地域への新たな攻撃を命じたのはその不都合な筋書きを回避する必死の試みなのである。

 どれだけ多くのミサイルを発射しても、この地域の住民が国連憲章で保証されている民主主義に基づく権利の行使を阻止することはできないし、世界標準の報道力を持つロシアの記者たちを止めることもできないだろう。このテロ攻撃が達成したのは、米国やキエフ自身の信用をさらに低下させたことだけだった。両者が主張している「ルールに基づく秩序」が欺瞞にみちた口先だけのものであることは先にも述べたとおりだ。世界が注目すべきことは、両者は民主主義やジャーナリズムのことなど全く気にもかけていない、という事実だ。さもなくば、日曜日の朝にこんなテロ攻撃は決して起こらなかったはずだろうから。

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ロック歌手のロジャー・ウォーターズまでが、ウクライナの「殺害すべき人物リスト」ミロトウォレッツに掲載された

<記事原文 寺島先生推薦>

Roger Waters added to Ukrainian govt-sponsored hit list

(ロジャー・ウォーターズ、ウクライナ政府が資金提供しているサイトの「殺害すべき人物」リストに追加される)

筆者:デボラ・アームストロング(DEBORAH ARMSTRONG)

出典:グレー・ゾーン

2022年8月25日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月29日




8月20日土曜日に、モスクワで自動車爆弾の爆発で死亡したロシアの政治専門家、ダリア・ドゥギナは、現在、ウクライナのサイトの殺害すべき人物リストに「粛清済み」として表示されている。このサイトは、ウクライナ内務大臣の監視の下に作成されたものだ。

 この記事の初出は、デボラ・L・アームストロングがMedium.comで公開した記事。

編集者注: ミロトウォレッツのIPアドレスを追跡したところ、ベルギーのブリュッセルにあるサーバーまで辿り着ける。 


 ミロトウォレッツ、あるいは「平和の番人」という名称で知られるウクライナの殺害すべき人物リストについての記事については、私はこれまで2度書いた。1度目はインターネット検閲に関するこの記事で、2度目の記事は13歳のウクライナの少女ファイナ・サベンコワがこのリストに載せられたことを取り上げた記事だった。サベンコワは、ドンバスという名で知られているウクライナ東部の一地域での、ロシア語を話す民間人に対するウクライナ当局の血なまぐさい戦争に反対する声を上げていた。


ミロトウォレッツ上の、ファイナ・サベンコワのプロフィールのスクリーンショット
 
 ミロトウォレッは、「ウクライナの敵」と宣告された何千人もの記者や活動家やその他の人々が一覧にされているデータベースだ。これらの人々の個人情報が公表されているが、具体的には、自宅住所や電話番号や銀行口座の番号など、とにかくその人の居場所を簡単に特定するのに役立つ情報だ。この一覧に載せられている人が殺害された場合、一例を挙げるとイタリアのアンドレ・ロッチェリ記者だが、「ЛИКВИДИРОВАН(粛清された)」というウクライナ語が、大きな赤字で画像を横切るように記される。

 そして、8月22日の時点で、8月20日にモスクワでの車爆破事故で亡くなったロシアのダリヤ・ドゥギナさんのサイト上の画像に「粛清済み」と記載されたことも、「ダリヤさんはウクライナの国粋主義者により殺された」というロシア当局による推測を裏付けるものとなった。ロシア当局によると、この国粋主義者は、ダリヤさんが住んでいた建物内に部屋を借り、ダリヤさんが殺害されるまで、彼女の監視を行っていた、という。ダリヤさんが殺された理由は、彼女の父アレクサンドル・ドゥーギンさんにあると考えられている。ドゥーギンさんは「プーチン大統領の頭脳」や「プーチン大統領の精神的な師匠」である、と西側メディアは報じている。ただし実際のところは、これらはただの推測にすぎない。


イタリアのアンドレ・ロッチェリ記者もミロトウォレッツのサイト上で「粛清済み」と記載された。



ロシアの従軍記者のダリヤ・ドゥギナさんも、ミロトウォレッツのサイト上で「粛清済み」と記載された。

 どうやらこの殺害すべき人物リストには、ほとんど誰でも載せられることができるようだ。ヘンリー・キッシンジャーの名前さえリストに載せられている。ロシア嫌いで長年有名だった彼でさえ。キッシンジャーが、中国やロシアとの戦争に向けてぐらついている米国の姿に懸念を公言したことが理由だ。かつてロシアに核爆弾を落とすことまで提案していたキッシンジャーが、今は「ウクライナの敵」だと宣告されている。


ミロトウォレッツ上のキッシンジャーのプロフィール


 本当に非常に多くの人々がこのリストに載せられているので、ウクライナ政権に反対する人たちにとったら、このミロトウォレッツ上のリストに載せられることが名誉のバッジを手にしたようなものになっている。



 映画製作者のイゴーリ・ラパチョナクも、オリバー・ストーンと共同で製作した映画を理由に、ミロトウォレッツから標的にされている。 なぜこんなサイトの運営が許されているのか、というのはいい質問だ。しかしなぜか、このサイトには簡単にアクセスできるし、金を寄付して、「事件」がおこる手助けをすることさえできる。もしあなたがナチスに共感していて、ナチスの見解のもと人を殺すことがウクライナを支持する方法として正当である、と考えるならばの話だが。

 以下はロジャー・ウォーターズのプロフィールだ。


ミロトウォレッツ上のロジャー・ウォーターズのプロフィール

 バンド「ピンク・フロイド」の共同創設者のひとりであるロジャーは、彼の持つ優れた音楽性だけではなく、投獄されているウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジの擁護者としても、帝国主義や戦争の反対者としても知られており、世界中の数百万人の人々から愛されている。

 先日ウォーターズはCNNで、ジョー・バイデンを「戦争犯罪者」と呼び、「ウクライナでの戦争を煽っている」と非難していた。

 ウォーターズはこう語っていた。「この戦争は、基本的にはNATOがロシア国境まで手を伸ばしたことに対する行動と反応です。NATOは拡大しないことを約束していたのです。[ミハイル]・ゴルバチョフが、ソ連は東欧全体から手を引くという交渉を行った時にそんな約束があったのです」

 ウォーターズはさらに、「クリミア半島に住んでいる人々の大多数はロシア人なので、クリミアはロシア領だ」とも語っていた。

 ロックスターであるウォーターズのこのような見方は、親NATO派勢力やその盟友のナチス、さらにはソーシャルメディア上で正義を守る戦士たちの激しい怒りを買った。これらの人々は、大手メディアが「これが今起こっていることだ」と宣告したことを必死に支持し、このような異論に激怒しているのだ。常に異論を発し、戦争に反対する声を上げているウォーターズは、ロックンロールが本物だった頃の古き良き時代のロックスターなら誰でも示した姿を示しているのだ。しかし今その姿は 「ウォーク(差別や社会不正に非常に敏感な、おもにリベラル派の人々)勢力」から、容赦なく攻撃されている。彼らにとっては、自分たちと同じ見方をしない人々は誰でも許せないのだ。






ソーシャルメディア上の正義の戦士たちが救助に駆けつけた!ロジャー・ウォーターズは、彼の持つ異論的立場のせいで、非難を受けている。

 ロシアの「正義のための戦い協会(Foundation to Battle Injustice)」の調査によると、「ウクライナの国粋主義者たちによるウェブサイトに資金援助し、人員を送り込んでいる」と思われる個人や企業や政府組織があきらかになったとのことだ。ミロトウォレッツは、このような情報を得たい人なら誰でも簡単にアクセスできるサイトであるのに、ロシアの人権擁護組織は、フェイスブックなどのソーシャルメディア上の媒体で閉鎖されている。


「正義のための戦い協会」が名前を挙げたミロトウォレッツの背後にいる人々

 調査した人々によると、この殺害すべき人物リストは2014年に創設されたもので、公的機関である「ミロトウォレッツ・センター」という組織が監督しているとのことだ。そしてそのセンター長をつとめているのが、以前ウクライナ特殊部隊に属していたロマン・ザイツェフだ。さらには「人民の後衛」という、ウクライナの政治家で有名人であるジョージ・ツカ率いる組織もそうだ。さらにこのサイトは、ウクライナ保安庁の管理下にあり、このサイトの創設者は、ウクライナ内務大臣の顧問であるアントン・ゲラシチェンコという人物だ。ゲラチシェンコは、このような殺害すべき人物リストを創設したというテロ行為を行ったとして、ロシア連邦政府から容疑をかけられている。


ミロトウォレッツ創設者のアントン・ゲラシチェンコ。画像は「正義のための戦い」協会から

 創設当初、ミロトウォレッツは、いわゆるロシア人「分離主義者たち」(ウクライナ東部に住む人々)の氏名を公表していた。これらの人々は、マイダンのクーデターを支持せず、ロシアとの関係を断つことは経済的に得策ではない、と考えている人々だ。しかし後にこのサイトは、有名人や記者や活動家やさらには子どもたちの個人情報まで晒すようになってきた。

 ミロトウォレッツが悪名を馳せたのは、2015年にウクライナの2名の有名人が殺害された後のことだった。両名の個人情報がこのサイトで晒されていたのだ。作家で記者でもあったオレス・ブジナ(45)さんと、ウクライナ国会副議長だったオレグ・カラシニコフ(52)さんが殺害されたのは、両名の自宅の住所が晒されたほんの数日後のことだった。

 2016年5月、ミロトウォレッツは世界中の4500名以上の記者や報道関係者の個人情報を掲載した。これらの人はドンバス内で活動する許可を得た人々であった。調査員たちによると、ミロトウォレッツの運営者たちが、ドネツク人民共和国の内務省のデータベースに入り込み、外国記者たちの電話番号やメールアドレスや住所を回収していた、という。この記者たちに対して、ミロトウォレットは「テロリストと共謀している」と非難していた。その理由は、記者たちがウクライナの支配下にない地域で、戦争の取材を行っていたからだ。

 記者たちのもとには、脅迫電話や脅迫メールが届くようになり、ソーシャルメディア上でサイバー攻撃や迫害行為を受けることも増えた。しかしウクライナ政府は、ミロトウォレッツのこのような行為は法律違反にはならない、という声明を出した。ミロトウォレッツがウクライナ東部で活動している何千人もの記者たちの個人情報を晒していることに対して、人権団体の「ジャーナリスト保護委員会」は強く非難していたにも拘わらず、だ。

 米国務省が、ウクライナ内務省はこのサイトと関係があると明言し、記者たちの個人情報が公開されている事実を認識していたにもかかわらず、米国政府はなんの対応も見せなかった。 多くのロシアのサイトや、代替ニュースメディアについては、ソーシャルメディアの巨大産業から閉鎖されて、ウクライナでの戦争に関する情報を発信できなくされている。これらのサイトやメディアからの情報が、西側の公式声明とは食い違っているという理由で。

 さらに、ミロトウォレッツに協力し、このサイトに情報を提供している米国企業が存在する。


ミロトウォレッツのネットワークの手順の分析。画像は「正義のための戦い」協会から。

 「正義のための戦い協会」が行ったこのサイトのネットワークの手順の分析によると、このサイトのデータベースには、カリフォルニアのある企業の技術が使われているという。さらにミロトウォレッツのトップページを見れば、「バージニア州ラングレー郡」という文字が見える。 このサイトへの投稿者の名前には、西側諜報機関名のアカウント名が散見される。CIA、 FBI、NATO、MI5、NSA(米国国家安全保障局)、だ。


これらの人たちは本当に一体何者なのだろうか?画像は「正義のための戦い協会」から。

 諜報活動の専門家である米国のアンドリュー・ウェイスバードは、2015年1月にウクライナ政府に協力したことを公表しているが、それは、ミロトウォレッツが記者たちの個人情報を公開し始めるようになった頃のことだ。ウェイスバードはこう語っている。「私は、クレムリンに奉仕する悪人たちの身に災いが降りかかる手助けをしようとしているだけてす。そして私は名目上、軍人ではありません。諜報員と呼べるような任務に就いています」


自称「情報戦の専門家」ジョエル・ハーディング
画像は、「正義のための戦い」協会から


 ドンバスの数年間在住し、米国のコンソーシアム・ニュースに記事を書いているジョージ・エリアソンによると、ジョエル・ハーディングはミロトウォレッツの創設に関わったもう一人の米国人だという。 ハーディングは、自称「情報戦の専門家」であり、彼自身のことばによると、以前米軍の諜報員をしており、NATOの上級顧問もしていたとのことだ。ハーディングはサイバー活動を用いた戦略を開発し、ウクライナの情報網からロシアメディアを追い出した、とエリアソンは述べている。さらにエリアソンによると、ハーディングはウクライナ国民が、ソーシャルメディアやインターネットやテレビ上の、どんなニュースや情報を入手できるかを管理したがっていた、という。

 「正義のための戦い協会」の調査員たちによると、彼らは、ミロトウォレッツにより「ウクライナのサイバー戦士たち」という名で知られているサイバー活動組織に関する情報源や証拠を所持しており、この組織がロシア政府やロシアのニュースサイトにサイバー攻撃を行っていると非難している。被害を受けた組織の中には、ロシア国防省も含まれており、しかも2016年から既にそうだという。そしてこれらのサイトをハッキングすることにより回収された機密情報は、 ウクライナ警察や特殊部隊に送られた、とのことだ。 調査員たちの考えでは、「サイバー戦士たち」はウクライナのメディア専門家であるドミトリー・ゾロツキンの指揮のもとで活動している、という。


ウクライナのメディア専門家ドミトリー・ゾロツキン

 同協会がミロトウォレッツを作ったとしているプログラム製作者組織は、2020年以来定期的に寄付を集め、ウクライナが「情報戦争」に参戦できるよう力を入れている。この組織に参加しているのは、アーテム・カーピンスキー、アンドレイ・バラノビッチ、アレクサンドル・ガルシェンコ、アンドレイ・ペレベジーだ。これらのプログラム製作者たちは、数千ドルしか受け取っていないと言っているが、この組織の暗号通貨に関する取引の数値からは、10万ドル以上の金銭の受領があることが分かる、と同協会の調査員たちは語っている。

 調査員たちによると、クラウドファンディングの形式を取っていると装いながら、ミトロウォレッツは西側の匿名の寄付者から、相当な額の金融支援を受けている、とのことだ。事実上誰でもこのサイトに寄付を行うことが可能だが、このサイトに資金援助をしていると一番考えられるのは、外国在住のウクライナ国粋主義者たちや、西側の諜報機関と繋がりのある人々であり、これらの人々は、国民からの多額の税金を自由に使える立場にある。





デボラ・アームストロング(DEBORAH ARMSTRONG)

 デボラ・アームストロングは現在、ロシアに重点をおいた地政学的な記事を書いている。デボラ女史は、以前米国の地方テレビ局で働いていた経歴があり、その際地区のエミー賞を2度受賞している。1990年代の前半、デボラ女史は末期のソ連に在住し、レニングラードテレビ局で、テレビコンサルタントを務めた。

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西側のロシアと中国への物言い―危険なまでに単細胞

<記事原文 寺島先生推薦>

The West's Dangerously Simple-Minded Narrative About Russia and China

西側のロシアと中国への物言い―危険なまでに単純な思考

筆者:ジェフリー・サックス(JEFFREY D. SACHS)

出典:Commondreams

2022年8月23日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月28日


2022年2月4日、北京で行われた会談でポーズをとるロシアのプーチン大統領(左)と中国の習近平国家主席(写真:時事通信フォト)。(Photo: Alexei Druzhinin/Sputnik/AFP via Getty Images)


 中国とロシアに対する過度な恐怖は、事実操作を通して、西側諸国の国民に売り込まれている。

 核の破局に世界が瀕しているのは、西側の政治指導者たちが、激化する世界紛争の原因について率直な意見を述べていないことが少なからず原因となっている。西側は高貴であり、ロシアと中国は邪悪であるという西側の執拗な物言いは、単純な思考で、極めて危険である。 それは世論を操作しようとするものであり、非常に現実的で差し迫った外交に対処するためのものではない。

ヨーロッパは、NATOの非拡大とミンスク第2協定の実施が、このひどいウクライナ戦争を回避することができたという事実を反省すべきだ。
NATOの非拡大とミンスク第2協定の実施があれば、ウクライナでのこのひどい戦争は避けられたはずだ。

 西側の物言いの本質は、米国の国家安全保障戦略に組み込まれている。米国の核となる考え方は、中国とロシアは「米国の安全と繁栄を侵食しようとする」不倶戴天の敵であるというものである。米国によれば、中国とロシアは「経済の自由度と公平性を低下させ、軍備を増強し、情報やデータを支配して自国社会を抑圧し、影響力を拡大しようと決意している」のである。

 皮肉なことに、1980年以降、アメリカは少なくとも15回、海外で戦争をしている(アフガニスタン、イラク、リビア、パナマ、セルビア、シリア、イエメンなど)。一方、中国は0回。ロシアは旧ソ連邦の国境を越えて1回(シリア)だけである。アメリカは85カ国に軍事基地を持ち、中国は3カ国、ロシアは旧ソ連諸国以外では1カ国(シリア)しか持っていない。

 ジョー・バイデン大統領はこの物言いをさらに前に進め、現代における最大の課題は独裁国家であるこの2国との競争であると宣言した。中国とロシアは「国力を増強、世界に影響力を輸出・拡大、そして今日の課題に対処するより効率的な方法として、自分たちの抑圧的な政策と諸策を正当化している。」 米国の安全保障戦略は、米国大統領のだれ一人構築したことはない。大幅な自律的活動を許された、秘密の壁の向こうで活動している、米国の安全保障機構が構築したものなのである。

 中国とロシアに対する過剰なまでの恐怖は、事実操作を通して西側諸国の国民に売り込まれている。一世代前のジョージ・W・ブッシュ・ジュニアは、アメリカの最大の脅威はイスラム原理主義だという考えを国民に売り込んだ。しかし、アフガニスタンやシリアなどでアメリカの戦争を戦う聖戦士を生み出し、資金を供給し、配備したのがサウジアラビアや他の国々と協力しているCIAだということには触れないままである。

 あるいは、1980年のソ連のアフガニスタン侵攻。これは西側メディアによって、いわれのない背信行為と描かれた。 しかし数年後、私たちはソ連の侵攻の前に、実はCIAがソ連の侵攻を誘発するために行った作戦があったことを知ったのである。シリアに関しても同じような誤報があった。 欧米の報道機関は、2015年に始まったシリアのバッシャール・アル・アサド(Bashar al-Assad)へのプーチンの軍事支援に対する非難で満ちているが、米国が2011年からアル・アサド打倒を支援し、ロシアが到着する何年も前にアサド打倒のための大規模作戦(ティンバー・シカモア)にCIAが資金提供していたことには触れていない。

 また最近では、ナンシー・ペロシ米下院議長が中国の警告にもかかわらず無謀にも台湾に飛んだとき、G7の外相はペロシの挑発を批判しなかったが、G7の閣僚は揃ってペロシの訪台に対する中国の「過剰反応」を厳しく批判した。

 ウクライナ戦争は、ロシア帝国の再興を目指すプーチンのいわれのない攻撃であるというのが、西側の物言いである。 しかし、本当の歴史は、西側がゴルバチョフ大統領に「NATOは東側には拡大しない」と約束したことに始まり、以下4つの波によるNATO勢力拡大があるのだ:
① 1999年に中欧3カ国を組み込み、
② 2004年に黒海やバルト諸国を含む7カ国を組み込み、
③ 2008年にウクライナとグルジアへの勢力拡大に関与し、
④ 2022年に中国を狙うためにアジア太平洋地域の4カ国をNATOに招き入れた。

 また、西側メディアは、①2014年のウクライナの親ロシア派大統領ヴィクトール・ヤヌコヴィッチ(Viktor Yanukovych)政権転覆における米国の役割、②ミンスク第2協定の保証人であるフランスとドイツ政府がウクライナに約束の履行を迫らなかったこと、③戦争に向けたトランプ政権とバイデン政権の間にウクライナに送った米国の膨大な武器、さらには④NATO軍のウクライナへの拡大に関してプーチンとの交渉が米国により拒否されていること、に言及しない。

 もちろん、NATOは、それは純粋に防衛的なものであり、プーチンは何も恐れることはないはずだと言う。 言い換えれば、プーチンは、①アフガニスタンとシリアにおけるCIAの作戦、②1999年のNATOによるセルビア爆撃、③2011年のNATOによるモハンマル・カダフィの打倒、④15年にわたるNATOのアフガニスタン占領、⑤プーチン失脚を求めるバイデンの「失言」(もちろん、まったく失言ではない)、⑥ウクライナにおける米国の戦争目的はロシアの弱体化であると述べたロイド・オースティン(Lloyd Austin)米国防長官の発言、などは無視すればいい、ということだ。

 これらの核にあるものは、中国とロシアを封じ込め、あるいは打ち負かすために世界中に軍事同盟を増強し、世界の覇権国家であり続けようとするアメリカの企てである。これは危険で、妄想的で、時代遅れの考えである。米国は世界人口のわずか4.2%であり、現在では世界のGDPのわずか16%(国際価格で測定)である。 実際、G7のGDPの合計はBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)のそれを下回り、人口はG7が世界のわずか6%であるのに対し、BRICSは41%である。

 世界の支配者になる、という空想的自己宣言をしている国はただ一つ、米国である。米国は、そろそろ真の安全保障の源泉を認識すべきなのだ。それは国内の社会的結束と世界との責任ある協力であり、覇権という幻想なんかではない。このようにその外交政策を見直すことで、米国とその同盟国は、中国やロシアとの戦争を回避し、世界を無数の環境、エネルギー、食糧、社会危機に目を向けさせることを可能にするだろう。

 とりわけ、崖っぷちの危険にある現在、欧州の指導者たちは欧州安全の真の源泉を追求すべきなのだ。それは米国の覇権ではなく、ウクライナを含むすべての欧州諸国の正当な安全保障上の利益を尊重する欧州の安全保障体制であり、黒海へのNATO拡大に抵抗し続けているロシアもまたその一員なのである。欧州は、NATOの非拡大とミンスク第2協定の実施が、ウクライナにおけるこのひどい戦争を回避していたであろうという事実を反省すべきである。現段階では、軍事的なエスカレーションではなく、外交こそが欧州と世界の安全保障への真の道である。





ジェフリー・D・サックスは、コロンビア大学の教授および持続可能な開発センター所長である。そこの地球研究所所長を2002年から2016年まで務めた。また、国連持続可能な開発ソリューション・ネットワークの会長、国連ブロードバンド開発委員会の委員も務める。これまで3人の国連事務総長の顧問を務め、現在はアントニオ・グテーレス事務総長のもとでSDGs支援者(advocate)を務めている。著書に『新しい外交政策―米国の自国例外主義を越えて(A New Foreign Policy: Beyond American Exceptionalism)』 (2020年)がある。その他の著書は以下の通り。『新しいアメリカ経済の構築―賢く、公正で、続けられる(Building the New American Economy: Smart, Fair, and Sustainable)』(2017年)、潘基文氏との共著『持続可能な発展(The Age of Sustainable Development)』(2015年)などがある。
関連記事

キエフからの砲撃の中、住民投票に向かうドンバス市民の生の声

<記事原文 寺島先生推薦>
Kiev’s Bloody Attempts to Disrupt the Referenda
住民投票を妨害するキエフの血なまぐさい企て

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年9月24日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月28日





 南アフリカの国際住民投票・監視員チームからドンバスへの偉大な自由演説。この歴史的な瞬間にドンバスにいるジャーナリストと監視員チーム!




 「私は、この目でウクライナ軍の犠牲者であるドンバス地域の人々の苦しみを見た」とフランス人道協会の会長は言う。フランス、カメルーン、中央アフリカ共和国、ラトビアからの7人の外国人監視員がドネツク人民共和国の投票プロセスを追う中での発言である。




 西側諸国は、ドンバスの2つの共和国とウクライナのロシア支配下の2つの地域の住民投票を非難している。彼らは、民衆の自己決定権に対する政策に長年「二重基準」を適用してきたが、今回の住民投票は非民主的であるとしている。








(上記ツイートの邦訳)

 キエフの別の女性は、ロシアのもとで生活が改善されると思うことについて、より多くの仕事とより良い給料、そして何より平和だと語った

 

(上記ツイートの邦訳)

 「私は職場で投票しました。私たちはロシアのために、私たちはロシアの一部として、私たちは常にロシアとともにあり、いま戦闘が起こっているにもかかわらず、私たちは質問されたことをとてもうれしく思っています。私たちは家に帰りたいのです。

 回りの市民が殺されると胸が悪くなります。私たちを銃撃・砲撃しているのは、かつての同胞ですよ。」



(上記ツイートの邦訳)
 金曜日、キーロフスキーで、砲撃の激しい地域で投票を可能にするため、人々を一軒一軒案内している理由について話す男性。彼は自分自身を身の危険にさらしているが、自発的にそうしており、その努力に対して金銭を受け取っていない。



(上記ツイートの邦訳)
 また、キエフスキーの女性は、ロシアのもとでは仕事が増え、給料も良くなり、そして何よりも平和になると思うと話している。



(上記ツイートの邦訳)
 ドネツクのキエフスキーで、住民が自宅から投票できるように戸別訪問している女性たち。ウクライナの連日の砲撃、前日の砲撃による女性の死亡、そして住民の投票への熱意について語ります。



(上記ツイートの邦訳)
 フランス、カメルーン、カザフスタン、ラトビアの外国人監視員7名がDPR(ドネツク人民共和国)の投票プロセスを視察。フランス人道協会の会長は、「私は爆発の音を聞いた…ザポロジェで...ドンバス地域の人々の苦しみをこの目で見た。ドンバスの人たちはまさにウクライナ武装勢力の犠牲者だ。」



(上記ツイートの邦訳)
 今日、私はゴロフカに行き、被害の大きかった北部の都市の人々が投票するのを見守り、住民投票について話を聞いた。昨日と同じように、彼らは平和を望み、8年以上にわたるウクライナの砲撃に終止符を打ち、ロシアに加盟することを望んでいる。



(上記ツイートの邦訳)
 ドネツクの地元住民が、キエフスキーからキーロフスキーへの運転中に話を聞かせてくれた。そこはウクライナが毎日砲撃を行っている地区だ。

 ドライバーは、ドネツクの状況は戦闘中のマリウポリよりも「酷い」と表現している。いつ、どこに爆弾が落ちるかわからないから、四六時中、身の危険にさらされているようだ。



(上記ツイートの邦訳)
 彼は前日、キエフスキーでウクライナの砲撃に殺された女性が首を切られるのを目撃している。

 しかし、彼は故郷であるドンバスを離れることを拒否している。



(上記ツイートの邦訳)
 ウクライナは民間人への砲撃を続けており、今回は南部のノバヤ・カホフカで行われた。一方、西側諸国は住民投票が「銃口」を突きつけて行われたという説を唱えている。だが、これらの領土に銃を向けている者がいるとすれば、それは文字通りウクライナ自身の軍隊であり、それがほとんどの人がロシアに加わることを望んでいる理由である。



(上記ツイートの邦訳)
 解放された地域の住民投票を支持するために、数千人が参加する大規模な集会が今日、ロシア全土で行われている。多くのロシア人は、DPR、LPR、ケルソン、ザポロジェの各州が連邦の一部となることを決定したことを支持している。



(上記ツイートの邦訳)
 速報:ウクライナのミサイルがRT取材班の滞在していたケルソンのホテルを標的にした。

 RTのムラド・ガズディエフ取材班が滞在していたホテルが、ウクライナのミサイルによって砲撃された。HIMARSによる攻撃と報道されている。

 ソースはこちら RT

「予備データでは ホテルに ロケット弾が2発 発射されたが 1発は除去されている。

 RTのムラド・ガズディエフ取材班は、まだ閉じ込められている人々の救出を手助けしている。
 地元政治家を含む2人が死亡している。」



(上記ツイートの邦訳)
 CNNでは報じられません。モスクワのマネジナヤ広場から。 LPR、DPR、Zaporozhye、Kherson 地域での住民投票を支持する集会が開かれています。

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ウクライナ軍がドネツク中心部をフランス製の砲弾で砲撃、市民6人が死亡。

ドンバス、ザポロージエ、ケルソンの各州でロシア連邦への統合を問う住民投票が開始される。


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米国は内々にロシアに対し核兵器使用を警告していた

  <記事原文 寺島先生推薦>

US privately warned Russia about nuclear weapons – WaPo
Messaging from the White House is intentionally hazy to make the Kremlin uneasy about the worst-case option, the outlet has reported

米国は内々にロシアに対し核兵器使用を警告
ホワイトハウスからのメッセージが意図的に曖昧にされていたのは、クレムリンに最悪の選択肢の恐怖を抱かせるためだった、とポスト紙は報じている。

出典:RT

2022年9月23日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月28日


©  Getty Images / Michael Dunning

 米国は、ロシアがウクライナ紛争で核兵器に訴えた場合、重大な結果を招くと内々にロシアに警告していた、とワシントン・ポスト紙は9月23日木曜日に報じた。同紙が報じた米国当局者によると、バイデン政権は、この問題に関するメッセージを意図的にあいまいにすることを選択した、という。

 ワシントン・ポスト紙の情報源によると、核問題に関するロシア当局とのやり取りはここ数ヶ月続いている、という。米当局者は、誰がメッセージを送ったのか、実際何についてのメッセージだったのかの明言は避けたが、同紙の報道によると、このように曖昧さを残したのは、「戦略的不明瞭」を招くことで、ロシアが核兵器を配備した際の米国側の対応を、ロシアにあれこれと勘ぐらせる意図があるとのことだった。

 さらに同紙は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、外国からの攻撃への対処として、ロシア国民に部分的な軍事動員を求めることを発表し、ロシアの領土保全を守るために必要な「あらゆる手段」駆使すると約束した9月22日水曜日以降、米国がロシア当局と連絡を取っているかどうかは不明である、としている。

 しかし、米国当局者は、ロシアが核攻撃に備えて核兵器を移動させている兆候はないと指摘したと、ワシントンのポスト紙は報じている。

関連記事:バイデン大統領、ロシアにウクライナ核の選択肢を警告

 9月23日木曜日、ロシアのドミトリー・メドベージェフ前大統領は、ロシア当局は領土を守るために、核兵器を使用する可能性があり、ドンバスの二共和国とザポリージャ地域とヘルソン地域がロシアへの編入を決めたならば、これらの国や地域もロシア領土に含まれる、と述べた。

 ワシントンの核警告に関する報告は、先週、ジョー・バイデン米大統領がロシアに対し、ロシアがウクライナで大量破壊兵器を使用すれば、厳しい結果に直面し、世界的な「のけ者」になるだろうと警告した後に発表された。

 しかし、8月中旬、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は、ロシアが隣国で核兵器を使用する可能性があるという主張を「ばかげている」として一蹴し、ウクライナにはそうすることが正当化される標的はないと述べた。

 ロシアの現在の核政策において核兵器の使用が認められているのは、ロシアの領土または生活基盤に対して核の先制攻撃が行われた場合、またはロシア国家の存在が核兵器または通常兵器によって脅かされた場合に限られている。
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ハリコフは落ちたが、本当の戦いはこれから

<記事原文 寺島先生推薦>

The Kharkov Game-Changer
(ハリコフが風向きを変える)

筆者:ペペ・エスコバール(Pepe Escobar)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年9月13日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月27日




 これは生きるか死ぬかの、生存をかけた戦争だ。
 
 心理作戦では戦争には勝てない。ナチスドイツの例を見れば分かる。それでも滑稽なのは、NATO応援団のメディアがハリコフの状況を取り上げて、声を合わせて大声で叫んでいる様だ。メディアは「プーチンに鉄槌が下された」や「ロシア人は窮地に陥った」などと叫んでいる。まさに愚の骨頂だ。

 本当に起こっている事実はこうだ。ロシア軍は占領していたハリコフから、オスコル川の左岸に撤退し、現在はそこに陣を引いている。ハリコフ ー ドネツク ー ルガンスクという防衛線は、安定しているようだ。クラスニー・リマン市は、ウクライナ軍の先鋭に包囲され危険な状態にあるが、致命的な状態ではない。

 誰も、現在版女性ヘルメス(ギリシャ神話の神の使者)と称されるマリア・ザハロワ(ロシア外務省報道官)でさえも、ロシア参謀本部(RGS)が何を計画しているのか、全く掴めていない。この件に関しても、他のすべての件に関してもそうだ。彼らが、「分かっている」と言っているのは、彼らが嘘つきだからだ。

 現状十分納得のできる推測は、スビャトゴルスク ー クラスニー・リマン ― ヤンポル ― ベロゴロフカの防衛線が現在の守備隊で十分長く持ちこたえることができるということだ。持ちこたえられれば、ロシア軍に新戦力が投入され、ウクライナ人をセヴァースキードネッツ川の防衛線まで撤退させることができるだろう。

 なぜ今ハリコフがこんな風になってしまったかについては、本当に大きな騒ぎがあった。ドネツク・ルガルンスク両人民共和国とロシアには、1,000 km の長さの前線を守るのに十分な兵力がなかった。NATOの諜報機関がそれに気づき、そこにつけ込んだのだ。

 これらの地域にはロシア軍は駐留していなかった。駐留していたのはロシア国家親衛隊だけだったが、この親衛隊は、軍事的訓練を施されていなかった。ウクライナ軍は、数で行くと対敵側と約5対1という有利な状況だった。連合軍が陣を引いたのは、包囲されることを避けるためだった。ロシア軍には損失はなかった。というのも、この地域にはロシア軍が駐留していなかったからだ。

 おそらくこんなことが起こるのは、これきりだと思われる。NATOが運営しているウクライナ軍は、ドンバス国内やヘルソン州内やマリウポリ市内のどこかで、今回の再現を成し遂げるのは不可能だろう。これらの地域は強力なロシア正規軍により、全て保護されているからだ。

 ウクライナ軍がハリコフとイジューム付近に留まっているのであれば、大規模なロシア軍による砲撃により粉砕されるであろうことは、十分想定されることだ。軍事専門家のコンスタンチン・シブコフ氏はこう明言している。「ウクライナ軍の戦闘態勢にある諸部隊のほとんどが今(ハリコフ内に)駐留している。我が軍はその諸部隊を外におびき出すことに成功し、組織的に粉砕している」と。

 NATOが集めた傭兵で溢れていて、NATOが動かしているウクライナ軍が、6ヶ月かけて、軍事装置を集め、訓練を施した兵を温存していたのは、まさにこのハリコフを攻撃するときのためだった。その軍事装置や兵たちが今、激しく潰されているのだ。再びしっかりとした装備や兵たちの配置を維持し、同じような行動を起こすことは非常に難しいだろう。

 この先数日は、ハリコフとイジュームが、NATOが進めるより大きな攻撃と繋がるかどうかを見極める時期になろう。 NATOに抑え込まれているEUの雰囲気は、「廃墟の街」に近づいている 。今回の反撃が強く示したのは、NATOが永久にこの戦争に関わろうとしている可能性だ。この仮説を覆す説得力のある要件は少ない。嘘で固められた秘密のベールは、「助言者たち」の存在や、世界中から集められた傭兵を隠すことはできていない。
訳注。Desperation Row「廃墟の街」。ボブ・デュランの楽曲のタイトルから


電源を断つことで、通信網を断つ

 ロシアの特殊作戦(SMO)は本来の概念では、領地を征服する目的はない。今のところは、現在もそうであるし、過去もそうだった。本来の目的は、ウクライナに占領された地域のロシア語話者たちの保護のための、非武装化や非ナチ化だった。

 その概念が微調整されようとしている可能性がある。そのことと、ロシアが国民に部分的な動員をかけようとしている動きとが結び付けられて、複雑で厄介な議論が巻き起こされている。ただし、部分的な国民動員さえ不要で済む可能性がある。というのも今必要なのは、ロシア・両共和国連合軍が後方・防衛線を守れる程度の余力だからだ。攻撃のほうは、チェチェンのカディロフ首長配下の強靭な兵たちが攻撃を続けてくれるだろうからだ。

 イジュームを奪われたことで、ロシア軍が戦略的に重要な拠点を失ったことは否定できない。ここを抑えられなければ、ドンバスの完全な解放は非常に困難になる。

 ただし西側連合体にとれば、その屍が、巨大なまやかしのあぶくの中へ前屈みに進みながら、このささやかな軍事的前進を利用して、大きな陽動作戦に打って出ようとしている。そして、「ウクライナ軍はたった4日でハリコフから全てのロシア人を追い出せた、ロシアは6ヶ月かかってドンバスを解放しようとしているのに、できていないじゃないか」と嬉しそうに眺めている。

 そのため、西側諸国での支配的な見方(その見方は専門家が必死に構築したものだが)は、ロシア軍が「鉄槌」を下され、回復は不可能だ、というものになっている。

 ハリコフが落ちたのは時機をえたものだった。冬将軍の到来がすぐそこまで来ているし、ウクライナ問題について論じることに、世間は既に疲弊していた。そこでプロパガンダを操る勢力は、エンジンターボに潤滑油を差せるようなきっかけが必要だったのだ。数十億ドル相当の武器を前線に送り続けるため、だ

 ただしハリコフが落ちたことは、ロシア当局を敵に対してより痛みを伴う手段に出ざるを得ない状況に追い込むことになるかもしれない。ハリコフが落ちたことで、ロシアの数人のキンジャールさんたち(訳注:戦闘機を擬人化した言い方)は、 黒海やカスピ海を後にして、ウクライナ最大のいくつかの火力発電所に名刺を届け(挨拶をし)ようと、ウクライナの北東部や中央部に配置された。(なおウクライナでは、エネルギーの供給基盤のほとんどは南東部にある)。

 ウクライナの半分の地域で、突然電力と水の供給が止まった。電車は不通になった。もしロシア当局が、今すぐにウクライナの全ての変電所を手中に置くと決めたならば、ミサイル数発でウクライナの全てのエネルギー供給網の破壊ができる。電源の断絶に成功すれば、「通信網の断絶」という新しい効果も手に入るというわけだ。

 専門家の分析によると、「110-330 kV規模の変電所が被害を受ければ、復旧することはほぼ不可能になる。(中略)こんなことが少なくとも5箇所の変電所で同時に起こってしまえば、全てが駄目になり、永久に石器時代状態におかれることになる」

 ロシア政府のマラト・バシロフの言い方は、もっと明快だ。「ウクライナは19世紀に逆戻りさせられようとしています。エネルギー体系がなくなれば、ウクライナ軍も存在できなくなるでしょう。電圧将軍が戦地に降りてきて、その後にマロース(ロシアの霜の妖精の名)将軍がついてくる、ということです」

 こうなればついに、「真の戦争」の領域に突入することになるのだろう。プーチン大統領が皮肉ぽく言っていたあの悪名高い「私たちはまだ何一つ始めていない」 という発言の真意が見えてきた、と言える。

 ロシア参謀本部による決定的な反撃が、この数日で繰り出されることになろう。

 繰り返しになるが、ロシアの次の動きが何かについての火のような議論が巻き起こっているのだ。(ロシア参謀本部は、結局のところ何をしてくるか分からない組織なのだ。スターウォーズのヨーダ的存在のパドルシェフ連邦安全保障会議書記は例外だが)。

 ロシア参謀本部は、別の場所で激しい戦略的攻撃を繰り出す手に出るかもしれない。狙いはこの状況を(NATO側から見て)最悪の状況に変えてしまうことだ。あるいは、前線を守るために、より多くの軍を送る手に出るかもしれない。(部分的な国民動員は使わずに)。

 何よりロシア参謀本部は、特殊作戦の規模を拡大する可能性がある。つまり、ウクライナの交通基盤やエネルギー基盤を完全に破壊しようとすることだ。天然ガスに始まり、火力発電所や変電所の抑え込み、原子力発電所の閉鎖まで行う可能性がある。

 そうだ。上に書いた全てを常に組み合わせることもできる。まさにロシア版の「衝撃と畏怖」作戦(訳注:イラク戦争時に米国が取った作戦)だ。経済と社会に前代未聞の破壊状態をもたらすという作戦だ。既にロシア当局はその警告を公的に発している。「我が国は、いつでも、しかも数時間のうちに、あなたがたの社会を石器時代状態に戻すことができます(斜字化は筆者による)。あなたがたの国内の諸都市は暖房はなし、水道は凍結、停電、連絡が取れない状況で冬将軍を迎えることになりますよ」と。


対テロリスト作戦
 「中央決定本部」(たとえばキエフ)に間もなくキンザル・ミサイルが発射されるかに衆目が集まっている。発射されれば、ロシア政府の堪忍袋の緒が切れたということになるだろう。

 シロビキ(ロシアの国防関係者)の堪忍袋の緒が切れていることははっきりしている。しかし我々は、まだ、そこまで行っていない。今のところは。というのも、外交手腕巧みなプーチン大統領にとって、ロシアの天然ガスをヨーロッパに供給するかどうかについての攻防が戦いの中心になっているからだ。もっともそんなことはアメリカの外交政策にとっては些細な子供じみた事柄ではあるが。

 プーチン大統領は、国内からある程度の圧力がかっていることをしっかりと認識している。プーチン大統領は、部分的な国民動員でも拒絶している。この冬に何が起こるかについての見通しをしっかりと見据えた上で、解放された地域での国民投票を実施する意向だ。 その締切は11月4日。 2004年に、10月革命の記念日がこの日に移行された、国家統一記念日だ。ドンバスやルガンスクが国民投票の結果ロシア領となれば、ウクライナによるどんな反撃も、すべてロシア連邦への直接の攻撃となる。それがどういう意味になるのかは、誰もが理解している。

 今や痛みを伴うほど明白な事実は、西側諸国連合が戦争を行っている時、それは多様な側面からの、活発な煽りで、大規模な諜報活動や、人工衛星からの情報や、大量の傭兵たちを投入した戦争なのだが、特殊作戦(SMO)の意味をしっかりと掴んでいないまま、「それに対抗する特殊作戦を起こせばいい」と主張している人々にとっては、幾分嫌な思いを伴う展開が待っているかもしれないということだ。

 したがって、特殊作戦(SMO)の方向性を今すぐ変えた方がいいかもしれない。対テロリスト作戦という方向性に、だ。

 この戦争は生存をかけた戦いだ。生きるか死ぬかの戦いだ。米国の地政学的/経済的目的を一言でまとめれば、ロシアの国家としてのまとまりを破壊し、政権転覆を仕掛け、豊富なロシアの天然資源を搾取してしまうことだ。 ウクライナはただの砲弾の餌食でしかない。倒錯した歴史の再現のようなものだ。具体的にはティムールによる1401年のバグダッド侵略の現代版だ。その際ティムールは、120の塔を建て、そこに虐殺した人々の頭蓋骨をピラミッドのように並べた。

 ハリコフは、ロシア参謀本部が目を覚まし、「鉄槌」を下す契機になるかもしれない。遅かれ早かれ。

 いや、事は急ぐ。手袋が、[心地よいビロードであろうが何であれ]、外す時がきたのだ。

 特殊作戦よ、殻を破れ。真の戦いに入るのだ。

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ジュリアン・アサンジ、米国への身柄引き渡しを不服とする訴えを起こす

<記事原文 寺島先生推薦>

Assange files appeal against US extradition
Lawyers tell a UK court the WikiLeaks co-founder is being “punished for his political opinions”

弁護団:英国法廷はウィキリークス共同設立者であるジュリアン・アサンジを「政治的意見を理由に処罰」している。

出典:RT

2022年8月27日

<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月26日


ジュリアン・アサンジの引き渡しに抗議するデモで、内務省の建物の前でプラカードを掲げるデモ参加者たち(2022年7月1日、ロンドン)。© Niklas HALLE'N / AFP Japan

 ジュリアン・アサンジ(Julian Assange)の弁護団は金曜日(8月27日)、彼の米国への身柄引き渡しを止めるよう上告した。米国に引き渡されれば、最高175年の刑期が彼を待っている。

 ウィキリークスによると、アサンジの弁護団は、米国政府と6月中旬に彼の引き渡しを承認したプリティ・パテル(Priti Patel)英国内務大臣に反論する「完全な上告理由」を、英国高等法院に提出した。

 上告文では、「ジュリアン・アサンジは政治的意見を理由に起訴され、処罰されている」と主張する一方、米国政府は英国司法当局に対し、この事件の「核心的事実を誤って伝えている」と述べている。また、ウィキリークスの共同創設者であるアサンジの引き渡し要請は、米英間の関連条約や国際法に違反していると付け加えている。

 また、この文書には、2021年初頭に英国の裁判所がアサンジの引き渡しに関する判決を下して以来、新たにまとめられた証拠も含まれていると言われている。


関連記事:Julian Assange appeals extradition to US―WSJ

 彼の妻、ステラ・アサンジ(Stella Assange):「私の夫に対する米国の起訴が犯罪的虐待であることを証明する圧倒的な証拠が出てきた」と述べ、上告審で夫が公開法廷の前で米国に対して主張する機会を与えられるかどうかは、今後高裁が決定することになると付け加えた。

 6月上旬、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、アサンジの弁護士団が、米国への身柄引き渡しを争うために、法的措置の期限が切れる前日に、2つの訴えを起こしたと報じた。しかし、上告の正確な内容は不明であった。

 アサンジは2012年以来事実上の監禁状態にあるが、それは、性的暴行の容疑をかけられ、スウェーデンに送還されることを回避するために、ロンドンのエクアドル大使館に亡命を求めてからのことだ。(性的暴行については訴えはその後取り下げられている)。エクアドルは2019年にアサンジの亡命資格を取り消し、英国警察は彼を大使館から、警備体制が最大級のベルマーシュ刑務所に移送した。それ以来彼はここを動いていない。

 英国の裁判所は当初、非人道的な扱いを受ける恐れがあるとして、アサンジを米国に引き渡すことを拒否していた。その後、ワシントンは、ジャーナリストであるアサンジの権利は尊重されると英国の裁判官を何とか説得できた。その結果、英国のプリティ・パテル内務大臣は、6月中旬にアサンジの米国への引き渡しに軽率な承認を与えた。

 アサンジは、2010年にウィキリークスがイラク戦争とアフガニスタン戦争で米軍が犯したとされる戦争犯罪を描写した機密文書を公開したときから、アメリカの標的になっている。それ以来、彼は国防総省のコンピュータをハッキングした陰謀で告発され、機密資料の公開をめぐって米国の1917年スパイ活動法により起訴されている。
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キエフ政権の「暗殺という爆弾」が、西側に死をもたらす

<記事原文 寺島先生推薦>
An Assassin’s Bomb and the Death of the West

筆者 クリストファー・ブラック(Christopher Black)

出典:NewEasterOutlook

2022年8月23日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月26日



 2018年9月に私がエッセイを書いたのは、ドネツク共和国の指導者であるアレクサンドル・ザハルチェンコの残忍な殺人についてであった。これはNATOの支援を受けたキエフの工作員らによるもので、彼は同年8月31日にキエフの爆弾で殺害されたのだ。この事件は、ミンスク協定の死(終焉)を告げたものだったし、だからまた、ナチスとNATOの軛(くびき)からウクライナを解放するためには、ロシアの特別軍事作戦が避けられないものであることを告げるものだった。

 そのエッセイはグーグルから削除されてしまったが、彼が殺された理由は私たちにはよく分かる。2022年8月20日、ロシアの知識人アレクサンドル・ドゥーギンの娘ダリヤ・ドゥーギンが、モスクワ近郊で、キエフの別の爆弾で殺害された理由と同じだ。父親が講演したイベントに同行した後のことだった。報道で知る限り、父親は直前になって別の車で帰ることを選択しこの攻撃から生き延びた。娘はイベント会場まで乗ってきた車で帰宅したのだった。

 ロシア連邦保安庁FBSは殺人犯をナターリヤ・ヴォフクと特定した。彼女はキエフ国家警備隊に所属しおり、ナチス・アゾフ大隊に所属していると私は理解しているが、アゾフ大隊の主要部隊はマリウポリでロシア軍が街を解放したときに壊滅されたのであった。彼女は、偽の身分証明書とドネツクの偽ナンバープレートを使ってロシアに入国することができ、偽装のために娘も同行していたが、ドゥーギン殺害後すぐにエストニアに逃げ、ウクライナのナンバープレートで入国した。前もってエストニアと協定を結んで、その代償を支払うことになっているのは間違いないだろう。女殺人犯、つまりキエフとNATOの関与に対する証拠は、反論の余地がないように思われる。

 この殺人はいくつかのことを暴露している。
 第一に、この殺人は、キエフ政権のナチス志向と不道徳性を確認するものである。
 第二に、この殺人は、キエフとNATOがキエフ軍の継続的な敗北に絶望していることであり、キエフが卑劣な道を選び、キエフに反対意見を述べる者を殺害していることを確認するものである。しかし、これについては、全く驚くにはあたらない。なぜなら2014年にNATO(実はCIA)が裏で画策したウクライナでのクーデター以降、キエフが人々を殺害しているのだから。それも大規模に殺害しているのだから。
 最後に、この殺人は、西側諸国の結合体の偽善を、さらにもう一度、確認することになる。例えば、露英の二重スパイだったイギリスのスクリパル、あるいはプーチン批判で有名なロシアのナワリヌイをロシアが殺害を目論んだと主張したとき、そしてナワリヌイが毒殺されていないことが明らかとなり、また、スクリパルに関するイギリスの主張も同様に偽物であることが明らかとなったとき、そんなときも、西側諸国は正義と復讐の天使を気取っていたのだった。
 しかし、彼らはそれらの主張を口実にロシアに経済戦争を仕掛け、あらゆる種類の嘘泣きの「ワニの涙」と道徳や法律に関する偽りの姿勢で、すべての西側メディアを使って、反ロシア憎悪プロパガンダの津波を発生させたのである。
訳注:
 2018年3月4日、元ロシア軍将校で英国諜報機関の二重スパイであるセルゲイ・スクリパルと彼の娘のユリア・スクリパルがイギリスのソールズベリー市で毒殺(未遂)された。英国の情報筋と化学兵器禁止機関によると、それはノビチョク神経ガスによるものだった。写真



アレクセイ・ナワリヌイは、ロシアの弁護士、政治活動家。2009年以降、ドミートリー・メドヴェージェフ、ウラジーミル・プーチンへの批判などから国内のメディアで注目を集めた。写真


 ところで、スクリパル父娘は今どこにいるのだろう? 生きているのか死んでいるのか? 二人は、英米の暗殺部隊によって殺害され、死んでいる可能性が高い。
 2003年に、リチャード・ケリー博士は、米英がイラクの化学兵器について虚偽の主張をしたという報道のなかで、自分が果たした役割について英国議会委員会で証言したのだが、そのときにケリー博士に起きたことと全く同じである。ケリー博士は委員会証言の直後に殺害され、英国政府は「自殺」だと主張した。それを信じる者はほとんどいない。

 もし、多くの人が疑っているように、ロシアが珍しい毒物(ノビチョク神経ガス)を使ってスクリパル父娘の命を狙ったという英国の主張が捏造で、ロシアに対する経済・政治戦争を激化させる口実としてこのドラマ全体が演出されたとしたら、スクリパル父娘の二人は興味深い物語を語ることになる。この数年、二人の消息は全く分からない。ロシア政府も家族同様に面会を求め続けているが、スクリパル父娘は姿を消したままだ。ジャーナリストのジョン・ヘルマーがこの問題に関する一連の報道で詳述しているように、二人は英国でおこなわれているこの事件の継続的な調査にも姿を見せず、また英国政府は二人を誰とも会わせないし、話もさせないままである。つまり、彼らは監禁されているか、最悪の場合は、ケリー博士のように殺害されている可能性もある。

 しかし、西側の工作員(ウクライナ人殺人犯ナターリヤ・ヴォフク)が、ロシアでロシア人(ダリヤ・ドゥーギン)を殺害した場合、西側ではどのような反応があるだろうか?西側諸国政府はまだこの犯罪を非難しておらず、この殺人への支援と共謀を示している。西側メディアの報道は、多かれ少なかれ、殺人を正当化するかのように、アレクサンドル・ドゥーギンがプーチン大統領の重要な顧問であると主張している。彼がそうであるかどうかは、私が言える立場にはないし、どちらであっても関係ないことだ。しかし、これが西側諸国の路線であり、メディアもまたこの殺人に加担していることになるのである。これが彼ら西側諸国の道徳観である。プーチン大統領の友人なら、あるいは友人とおぼしき人なら、殺してもいいのである。ロシア人なら殺してもいいのである。もちろん、西側諸国の首都ではプーチン大統領自身の首を取るという声も聞かれる。

 では、この殺人の目的は何なのだろうか。私には、アレクサンドル・ドゥーギンの暗殺未遂と、ロシア連邦保安庁FSBによれば標的であった可能性のあるドゥーギンの娘の殺害には、二つの目的があったように思える。ひとつは、ロシア政府、特にプーチン大統領にメッセージを送り、そのメッセージが何であるかは明確であること、そしてふたつめは、8月22日のロシアの国旗記念日を台無しにすることである。アレクサンドル・ドゥーギンもその娘も、その思想と言行によって西側諸国から「制裁」を受けたことを私たちは記憶している。それが、彼らに予定されていた運命への第一歩だった。これが西側の真の「価値観」であり、殺人に至るまで言論と思想を弾圧することが公然と容認され、提唱されているのである。ロシアは、この問題を国連の安全保障理事会で提起するつもりである。

 ヨーロッパはロシア人にたいする一種のポグロム(民族大虐殺)に向かっていて、ロシア人の居住や訪問さえも禁止している。ウクライナでは、ロシア軍とドンバス共和国軍によるキエフ・NATO政権の敗北に直面し、アメリカとそのNATOの凶悪犯たちは絶望的になってしまい、ロシアにたいする経済戦争の結果として、自国民を貧困と悲惨に陥れようとしているほどである。

 ロシアを潰すことは、この戦争を推進しているグローバリストのエリートにとって、自国民の生活や福祉よりも重要なことなのだ。彼らはもはや合理的な判断を下すことができない。彼らは戦争の論理に陥っており、文字通りどんな犠牲を払ってでもロシアとの戦争を追求することを決意している。その代償は大きいものとなろう。なぜなら、ロシアは目的が明確であり、歴史における自らの立場・役割を確信しており、経済的・軍事的にいかなる敵をも克服する能力に自信を持っており、ウクライナの現場でそれを証明しているからである。かつてロシアがシリアで証明したとおりである。

 軍事戦略の古典『戦争論』を書いたクラウゼヴィッツは、「戦争は暴力の脈動であり、強さが可変であり、したがって爆発してエネルギーを放出する速度も可変である」とし、次のように述べている。
「戦争が何らかの政治的目的から生じていることを我々が念頭に置くならば、その存在の大義名分が戦争遂行上の最高の考慮事項であり続けるのは当然である」

 ウクライナ戦争、対ロシア戦争の大義名分は、経済的・精神的・文化的に結合した西側の衰退であり、その衰退は加速している。それは誰の目にも明らかなものである。かつて私が知っていた、あるいは知っていると思っていた西側は死んだ。啓蒙主義・理性・道徳の西側、その衰退を19世紀後半から他の人々は語ってきた。社会の観察者や哲学者は、エリートの不道徳に支配された一般市民の生活に起こっていることを何度も何度も語ってきたのだ。彼らは市民の生活のことなど気にもかけず、国家を支配し、市民を自分たちの金儲けの手段としか見てこなかったのだ、と。

 私たちは、ウクライナでの戦争に、英米独の政治的目的の表出を見る。それは、ロシアを自分たちの意志に従わせるという願望である。彼らは第一次世界大戦で失敗し、イギリスとヨーロッパの大部分を破産させ、ファシズムの台頭を招いた。この試みは第2次世界大戦で再び失敗し、世界に破滅的な結果をもたらした。ロシアを破壊する彼らの3度目の試みも、彼らがそれに固執したとしても、同様の結果に終わるだろう。

 1990年代の暗黒時代から立ち直ったロシア国家は、再び力と決意を固め、誰の指示にも服従することにも拒否している。中国や他の多くの同盟国とともに、ロシアは、19世紀から現在に至るまで西側の植民地主義や残虐行為の犠牲になってきたすべての人々に対して、国際法と威厳への復帰、国家の主権、文化の尊重、独自の民主主義の形態、西側グローバル資本による支配に代わるものを世界に提供しているのである。

 西側の植民地支配による秩序は、ついに粉砕されつつある。私たちが殺人と混乱を止めたいのなら、西側の植民地支配は粉砕されなければならない。暗殺者の爆弾はダリヤ・ドゥーギンを殺しただけでなく、西側の死をも告げているのだから。


クリストファー・ブラックはトロントを拠点とする国際刑事弁護士である。戦争犯罪に関する数々の著名な事件で知られ、最近、小説『Beneath the Clouds』を出版した。国際法、政治、世界の出来事に関するエッセイを、特にオンラインマガジン「New Eastern Outlook」に執筆している。
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NATOの言説に異議を唱えるものは「情報テロリスト」と見なされる

<記事原文 寺島先生推薦>
Journalists Who Challenge NATO Narratives Are Now ‘Information Terrorists’

NATOの言説に異議を唱えるものは「情報テロリスト」と見なされる。

筆者:ヴァネッサ・ビーリー(Vanessa Beeley)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年8月22日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月25日


Google Plus 2019に集結するナチ

 先日、ウクライナの国家安全保障・防衛会議において、米国国務省主催の「偽情報への対抗」に関する円卓会議が開催された。

 「情報テロリストたちは、戦争犯罪人として法の適用を受けることになることを知るべきだ」 とアンドレイ・シャポヴァロフ(Andrii Shapovalov)。

 記者発表によると - 「NGO、マスメディア、国際的な専門家」がこの円卓会議の議論に参加した。代表者たちは、ウクライナや海外で使用されている「偽情報の手法」について議論した。議題となったのはサイバーセキュリティの文脈における偽情報とデマ」の法的・国家的防止だ。

 ウクライナ偽情報対策センター代表のアンドレイ・シャポヴァロフは、「偽情報を意図的に流す者は情報テロリストである」と強調した。シャポヴァロフは、こうしたテロリストを取り締まるための法改正を提言した。これは、第2次世界大戦前のナチス・ドイツのメディアやラジオの情報チャンネルに対する弾圧を彷彿とさせるものだ。シャポヴァロフは、「情報テロリストたちは、戦争犯罪人として法の適用を受けることになることを知るべきだ」と断定したのだ。

 ウクライナにおけるNATOの代理戦争に対する国民の支持を維持するためには、反対意見の圧殺が不可欠であることは言うまでもない。ロシアのメディアは、西側が支配するインターネット圏からすでに一掃されている。悪名高いミロトフォレッツ(Myrotvorets)のようなウクライナの「殺害リスト」には、勇気あるカナダの独立ジャーナリスト、エバ・バートレットや、はっきりとした物言いをするピンクフロイドの共同創設者ロジャー・ウォーターズがすでに含まれている。

 バートレットはまた、元英国保守党議員のルイーズ・メンシュ(Louise Mensch)がツイッターに個人情報を流したことで、ドネツクにいることをウクライナの特殊部隊に知られてしまったのだ。数日後、バートレットを含む複数のジャーナリストが宿泊していたドネツクのホテルが攻撃されたが、これは偶然の一致だろうか?

 ドイツ人ジャーナリストのアリーナ・リップ( Alina Lipp)は、ウクライナのナチス軍がドネツクとルガンスクの市民に対して日々行っている残虐行為を報道したことで、ドイツ政府から事実上の制裁を受け、起訴すると脅されている。リップはニュースサイトのStalkerzoneにこう語った:

 「ドイツ政府は私の銀行口座を閉鎖しました。そして、父の口座も閉鎖されました。1ヶ月前、私の口座から1,600ユーロのお金が消えているのに気づきました。ドイツで何かが起こっているのだと思いました。数日前、検察庁から通知があり、ロシアの特殊作戦を支援したことで刑事事件として立件されたとの通知を受けました。ドイツでは、特殊作戦は犯罪とみなされ、私も犯罪者ということです。3年の禁固刑か巨額の罰金が待ち受けています。」

 英国人ジャーナリストのグラハム・フィリップス( Graham Philips)は、いかなる調査もなく、フィリップスに「回答する権利」が与えられることもなく、英国政権によって違法に制裁を加えられた。この彼の人権侵害に関するほとんどの主流メディアの報道は、フィリップスを「最も突出した親クレムリンのオンライン陰謀論者の一人」と表現している。NATOと連携しているメディアは、異議を唱える声の人間性を奪い、信用を落とすために、おなじみの中傷を展開するのである。

 フィリップスは、他の多くの標的とされているジャーナリストと同様に、2014年にワシントンのビクトリア・ヌーランド(Victoria Nuland)が仕組んだクーデター以来、NATO代理人のウクライナ・ナチスと超民族主義勢力による残忍な民族浄化の脅威にさらされているドンバスに住んでいる。

 これらのジャーナリストたちは、8年間も恐ろしい戦争犯罪、拷問、拘留、迫害を受けながら、西側から無視されてきたロシア語を話すウクライナ人の声を発信している。このため、彼らは今、「情報テロリスト」に指定されようとしている。NATO加盟国によって認可されたテロリズムを暴露しているからである。

 英国では、Molfar Globalのような組織が生まれている。この組織が操る「オークの書」プロジェクトは、200人のボランティアと称する者を雇って、「ロシア(オーク)の戦争犯罪者」を特定し、法的な「殺害リスト」を作成させる、というものだ。「オーク」という用語も、もうひとつの非人道的なやり方だ。ロシアの市民と軍人を空想上のSFの怪物に変換することで、ロシア人であることやロシア語を話すことを理由に彼らを黙らせ、罰するために取られた措置を西側諸国民に柔軟に受け止めさせようというのだ。この組織はウェブサイトのホームページでこう言っている:

  「ロシア人占領者はすべて特定され、法律に従って罰せられなければならない。戦争犯罪や人道に対する罪には時効がない。それが、我々がすべてのロシア人占領者を見つけ出し、彼らが正義から逃れるのを防ぐことを目標にする理由なのだ。」

 誰がリストに載せるべき人間を決定するのか? 誰が彼らの運命を決定するのか? どんな正義があるのか? ウクライナのような腐敗が染み付いた国では、反体制派や野党や政府に反対するメディアの処刑や失踪が日常茶飯事だ。「オークのヒットリスト」に載っている人たちに対して取られた措置の責任は誰が取るのだろうか? これは、アメリカの「ルールに基づくグローバル・ガバナンス」の傘下にある無法な正義だ。従うか死ぬかの二者択一である新たに提出されたこの法律によって、あなたの死や国家による暗殺が合法的なものになるのだ。

訳注:グローバル・ガバナンス・・世界で起こる多様な問題に対して、一国では解決できない問題を、その地域や国境を越えて解決する、政治的相互作用のこと

 円卓会議の主催者は、国家安全保障サービスアカデミー、米国国務省/国防総省出資の民間研究開発基金(CRDF Global Urkaine)、国際情報アカデミー、米国国務省系ナショナルサイバーセキュリティクラスターである。

 米国と英国が支配する情報機関の触手は、それぞれの政権の①抑圧的な国内政策と②他国との永久戦争を目的とする外交政策、に対する反撃を絞めつけようと、ますます深く社会に広がっている。私たちは皆、攻撃を受けている。この連鎖を断ち切り、反撃を開始しなければ、ジュリアン・アサンジと同じ運命に直面することになるのだ。

 帝国主義戦争、人種差別、ナチズム、テロリズム、暴力的過激主義、健康のグローバル独裁権力、技術者至上主義、他人を食い物にする階級エリート主義、そして医薬品に支配された優生学に反対すれば、私たちは「テロリスト」となる。私たちは皆、「テロリスト」なのだ。
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流出した文書は暴露する――ウクライナはロシアを不安定化し、NATOをモスクワとの全面戦争に引き込むことを企んだ

<記事原文 寺島先生推薦>

Leaked Documents Expose Ukrainian Attempts to Destabilize Russia and Draw NATO into a Full-Scale War with Moscow

筆者:オルガ・スハレフスカヤ(Olga Sukharevskaya)

出典:Internationalist 360°

2022年9月16日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月26日




キエフの特務機関が巧妙に練り上げた策略の数々は、ウクライナの長年にわたる攻撃的な戦略を暴露する

 最良の防御は最良の攻撃である。国際関係における最も古い原則の1つである。

 そして、ウクライナの文書(現在、メディアの要請があれば閲覧できる)が示すとおり、モスクワには、ウクライナに攻勢をかけたときから、明らかに自衛すべき重大なものがあった。過去8年間、キエフ政権の軍隊と特殊部隊は、数々の作戦を準備してロシアの国際関係や国内平和そのものを損ねることを目的としてきたからだ。

 今年6月、「ベレギニ」と名乗るハッカー・テレグラム・チャンネルが、ウクライナ軍特殊作戦部隊SSOの情報・心理作戦部の行動計画を公開した。それによると、このSSOの任務は、外国の住民との連携、スパイネットワークの構築、特殊部隊や軍事組織への潜入によるスパイ活動、ウクライナ政府(他国を含む)に脅威を与える人物の暗殺、さらにはクーデターや政権転覆の準備などである。

Фундук, Заслон, Болотная площадь...
ベレギニ 2022年06月09日
(ロシア語による漏洩文章)












 
 このウクライナ軍特殊作戦部隊SSO計画は2017年に作成されたものである。これはウクライナのスパイが作成した多くの類似した秘密文書の一つで、公開されたのはそのひとつだけだった。しかし、こうした計画の存在と、ウクライナの実際の政治的・軍事的措置とは驚くほど一致する。このことは、遅くとも、ウクライナで欧米の支援を受けたクーデターが起きた2014年には、キエフ政権がすでに反ロシア活動を活発におこなっていたことを示唆している。


不安を煽動する者たち

 2017年からのウクライナ計画を調べると、まず目を引くのは、ロシア社会の分裂を狙ったさまざまな作戦である。

 「ザスロン(障壁)」作戦では、ドンバスの兵士や民兵の家族、そしてロシア軍関係者に影響・衝撃を与える計画が描かれている。この作戦の主な目的は、ロシアとドンバス2カ国(暗号名「イースタン=東側」)の軍隊を封鎖し、脱走と辞職を促すことである。

 ウクライナにたいする敵対行為(つまり紛争)が発生した場合、「ボロトナヤ広場」作戦への移行が計画されていた。これは、ロシアの軍事的・政治的指導者にたいする国民の不信感を煽り、「東側」大統領とその側近の政策にたいする反対意見を煽って、大規模な抗議行動を起こさせる、というものである。

 この計画の真偽は、ウクライナの実際の行動で確認することができる。クリミアがロシアに再統一された後でさえも、クリミアにはキエフ政権に味方するロシア人が見受けられた。

 特筆すべきは、2018年にケメロヴォのショッピングセンター「ウィンターチェリー」で起きた火災で300人が死亡したとする偽ニュースで、これがウクライナ発だったことである。これに劣らず参考になるのがウクライナの特殊部隊の話である。その部隊員は、「年金大量虐殺(失われた年金)」に抗議するようロシア人に呼びかけたものの、自分のウクライナのIPアドレスを変更し忘れたのだった。


目的:士気を低下させる

 ロシア国内のウクライナ同調者の数は、今年に入って増えたとは考えにくい。社会学的研究によれば、市民のロシア政府への支持は高まる一方だ。夏の初めには、ロシア人の72%が軍事作戦を支持し、プーチン大統領の支持率も上昇し、82%で安定している。

 しかし、ウクライナが対露攻撃への支持を集めることに失敗したとしても、それはウクライナが何もやらなかったということではない。例えば、ウクライナの特殊作戦部隊の司令部は、2022年1月から「スムタ(大動乱)」プロジェクトを実施している。このプロジェクト文書には、ロシアのメディアやソーシャルネットワークに掲載された情報を載せた詳細な報告書が含まれている。その情報はロシアの不安定化、国民の不満の誘発、当局の信用失墜を目的としたものだった。
訳注:スムタ(大動乱・動乱時代) は、ロシアの歴史で、1598年のリューリク朝フョードル1世の死去から1613年のロマノフ朝創設までの時代を指す。1601年から1603年にかけて、ロシアは、当時の人口の3分の1に相当する200万人が死ぬというロシア大飢饉に見舞われた。また、1610年から1613年にかけてはツァーリ不在の空位時期に陥った。

 ウクライナに対する敵対行為(すなわち、ロシアの特別軍事作戦Z)の勃発後、「ステップ(大草原)の風」作戦が発動された。ウクライナ軍特殊作戦部隊SSOの文書にあるように、その任務は敵の戦意を喪失させること、そしてロシア軍とDPRおよびLPR(ドネツク&ルガンスク人民共和国)戦闘員との間に緊張を作り出すことである。ロシア国立研究大学経済高等学院のオレグ・マトヴェイチェフ教授によれば、「実際、ウクライナの学生が(ロシア語インターネットで)管理しているアカウントは約8万件あるが、彼らは地元の人間、すなわちペンザ、クルガン、チタ、ハバロフスクの『普通の住民』のふりをしていた」。

 また、ロシア兵の親族は電話詐欺に脅かされている。愛する息子がウクライナで死んだという電話があったり、「捕虜になったから解放してくれ」と金銭を要求するのである。オンブズマン(行政監察官)のタチアナ・モスカルコワが報告したように、ロシア兵の親族は、捕虜になったロシア兵が虐待される様子を映したビデオも受け取っている。また、ウクライナの特殊部隊は、テレグラム・チャンネルをいくつか作り、ロシア軍の犠牲者や捕虜に関するデータ(検証不能)を公開している。ただ、そのオンブズマンはまた、当官には家族からは捕虜に関する訴えが100件以上も寄せられており、そのうち約半数が実際に確認されているとも言っている。


弾道ミサイルという「優(やさ)しい雫(しずく)」作戦

 「優(やさ)しい雫(しずく)」作戦は特筆に価する。ウクライナ支配下にない地域の住民を対象としたものである。その任務は「ロシア占領地の住民のあいだに親ウクライナ感情を形成し、『東側』すなわち占領当局ロシアへの抗議運動を奨励すること」である。

 しかし、この計画の実行に成功した例はない。その最大の理由は、ドンバス地域のウクライナへの再統合にたいする、キエフ政権とドンバス共和国の考え方やアプローチの違いにある。2021年3月、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は「クリミア自治共和国とセヴァストポリ市というロシアによる一時占領地域の、脱占領と再統合に関する戦略」を承認する法令に署名した。158段落からなるこの文書には、キエフ当局がウクライナから去った地域の住民をどのように扱おうとしているのか、というヒントが書かれている。

 この文書は、「ロシアによる占領行政に加担した、あるいは協力した」人物を、政府や公務員のいかなる地位にもつけない、と提案している。この提案では2014年の住民投票委員会のメンバーから、ドンバス地区政府の学校や病院に勤務する教師や医師までの、非常に広範囲の人々が対象になっている。また、「脱占領」には次のようなことまで含まれている。クリミアのロシアへの返還を問う住民投票以前にウクライナ警察がおこなった刑事事件の時効を延長すること、ウクライナ治安局の権限内の刑事事件を追及することも、である。

 この法律用語を素人語に訳すと、こうなる。この作戦は、2014年2月にクリミアで活動したすべての職員、クリミアのロシアへの統合を支持する大規模集会への参加者、内戦中にDPRやLPRを支援した住民などに対して意図的な迫害を実行することである。

 この文書によると、クリミアやドンバスの住民にウクライナの大学で学ぶ機会を与える一方で、キエフ政権はクリミア半島で取得した学歴証明書を一切認めない。このような条件によって、クリミアやドンバスの住民がウクライナに戻りたくなるかというと、それは純粋にそうなってほしいという効果を狙ったものに過ぎない。

 ウクライナ軍特殊作戦部隊SSOがクリミアやドンバス住民の親ウクライナ感情を醸成する計画を今後も実施するつもりかどうかは不明だが、ロシアの特別軍事作戦Zの開始後、ウクライナ側がこれらの地域の都市への攻撃を急激に増やしたことは確かである。この「優(やさ)しい雫(しずく)」は今のところ、MLRS多連装ロケット弾とトーチカU(自走式戦術)弾道ミサイルという形でしかこの地域には降り注いでいない。


満州(中国北西部)の丘で

 ウクライナ軍特殊作戦部隊SSOは、外交分野でもいくつかの特殊作戦を実施している。その1つが「カスピ海」作戦である。その目的は、ロシア連邦と特定の「子鹿(ご機嫌取り)=カスピ海地域の国々と思われる」の間に不和の種をまき、それを深めることである。この作戦は、「『子鹿』が『東側(=ドンバス地域、クリミア、ロシア)』との交流を拒否する行動」につながれば成功であるとされている。


カスピ海~満州の俯瞰図

 一般に、ロシアとその仲間との関係を混乱させようとするウクライナの画策と、いかなる国同士の対話においても生じる自然な困難とのあいだの、線引きがどこにあるのかを評価することは難しい。とはいえ注目に値するのは、今年1月にカザフスタンで起きた暴動で、少なくともデモ参加者の行動の一部がウクライナと連携していたことである。カザフスタンの反対派がウクライナに亡命していたことが判明したのである。

 「満州の丘」作戦は、ウクライナの東側の諸国とロシアとの外交関係を悪化させることを目的としている。このウクライナ特務機関の計画は、東側の隣国(カザフスタン、ウズベクスタン、キルギスタンなどの「スタン」諸国)が潜在的な脅威であるとモスクワに信じ込ませ、それによってこの地域にロシアが軍駐留の度合いを高めるよう挑発するためのものであった。

 2021年7月に採択された「ウクライナ外交活動戦略」の内容を分析すると、キエフ政権の積極的・攻撃的な性格を見て取ることができる。キエフの外交行動は防御的な性格ではないのである。例えば、「ロシアの侵略にたいして長年にわたって対抗してきたことで得た経験」をNATO諸国やバルト海・黒海地域に提供することである。あるいは、近隣諸国におけるロシアのカッコつき「偽情報」対策、「ベラルーシの人々」への支援、ロシア自体のカッコつき「民主化」、そして「幅広い国際的な連合に基づいてロシア連邦への圧力と抑止力」を強化するためである。ちなみにこれは、ウクライナ軍特殊作戦部隊SSOの「理性の声」という計画にも盛り込まれている。

 二国間関係では、ウクライナは貿易・産業協力・文化交流の発展に力を注ぐべきであるが、そこにおいてさえ、ウクライナ外務省は「ロシア連邦の侵略に対抗するために、アフリカや中東の国々からの支援を確保すること」を任務としているのである。


エピローグ

 ウクライナにたいする敵対行為(ロシアの特別軍事作戦Z)の勃発以来、キエフ政権はロシアの行動を、カッコつき「国際社会」にたいして「巨大なロシア軍に勝てない小国にたいする大国の攻撃」であると示そうとしてきた。「なぜなら、ウクライナにはロシア連邦にも他国にも侵略的意図はなかったのだから」と。
 しかし、この発言は「ウクライナの軍事安全保障戦略」によって反論されている。例えば、この文書では次のように宣言しているのである。「キエフはロシア連邦との戦争に突入するかもしれない。ロシアがベラルーシ共和国を政治的影響圏にとどめようとする場合には」と。

 また、ウクライナのNATO加盟という目標も明確に示されている。もちろん、ウクライナは主権国家として、どのような国際機関にも加盟する権利がある。しかし、問題はキエフ政権が次のように考えていることである。
 ウクライナがNATO加盟を果たす目標は、米国主導のブロックを対ロシア戦争に突入させることである、と。
 このことは、ウクライナ大統領顧問のアレクセイ・アレストヴィッチが、「防衛者ヨーロッパ 2021」演習の目的を説明する中で次のように述べていることからも、確認できるだろう。「バルト海から黒海までの海域で、我々が軍事訓練は――遠回しの言い方をしてはいけない――ロシアとの武力衝突、ロシアとの戦争をどう実行するか、その方法を練り上げているのである」と。

 とはいえ、2017年当時、ウクライナ軍特殊作戦部隊SSOは「理性の声」計画を作った。その中に含まれていた守るべき課題は、「事態の平和的解決を交渉する用意があると認める声明」を西側諸国から出させることであった。実際、西側諸国はこのアイデアを拒否することはなかった。
 しかし、ともかく敵対関係(ウクライナ紛争)が勃発後は、和平交渉を拒否し、ロシアとの戦争を好んだのはキエフ政権であった。ウクライナのゼレンスキー大統領はパリ和平交渉の場でもこの政策路線を繰り返し、ロシアと交渉する条件はまだ「成熟していない」と強調し、「もっと強い立場」に立ちたいと望んだのだった。


オルガ・スカレフスカヤは、元ウクライナの外交官である。
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ロシアは、エネルギー供給線を妨害しようとしたウクライナによる工作を阻止したと主張

<記事原文 寺島先生推薦>
Russia claims it foiled Ukrainian plot to sabotage energy link

FSB reported that it blocked a Ukrainian intelligence operation

(ロシアは、エネルギー供給線を妨害しようとしたウクライナによる工作を阻止したと主張

ロシア連邦保安庁[FSB]は、ウクライナによる諜報活動を阻止したと報告)

出典:RT

2022年9月22日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月25日


FSB発表の動画からのスクリーンショット

 ウクライナの工作員が、トルコとヨーロッパへのエネルギー輸出に関わるロシアのインフラを妨害しようとした、とロシアの国内治安機関のFSBが9月22日木曜日に報告した。

 FSBは、標的に仕掛ける意図で2機の強力な即席爆発装置を取り出そうとしていた40 代後半のロシア人を逮捕したと発表した。

 この男性は、ウクライナの治安機関である SBU(ウクライナ保安庁) の工作員であるとされたが、彼はウクライナを訪問した際に採用されたとのことだ。さらに声明によると、妨害工作員とされるこの容疑者は、ウクライナ当局からの命令に基づいて行動していたという。

 FSBは、この容疑者が武器の隠し場所から爆発物を取り出し、その後逮捕された様子を映した動画を公開した。

 容疑者が所持していた物品には、「SBUの指示者とのやり取りの記録を含む通信手段、IED(即席爆発装置)の組み立て方と送金に関する指示書、爆撃計画場所の座標が記された文書」が含まれていたとFSBは述べている。

 (動画は原文サイトからご覧ください。訳者)

 他に4人がこの陰謀に物的支援を提供していた、と同局は主張している。彼らは全員ロシア国籍で、拘留されているという。
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「おはようございます。こちら、ドネツク!」― 現地からの報告

<記事原文 寺島先生推薦>

Good Morning Donetsk…! – INTERNAIONALIST 360° (wordpress.com)
グッドモーニング・ドネツク!

筆者:マニシュ・ライ(Manish Rai)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年9月8日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月25日



ウクライナの大砲に包囲された街、ドネツクの日常を記すアレハンドロ・カーク記者。



 テレビの朝の番組のように「おはよう、ドネツク」と言うのは、ここに残っている数少ない外国人特派員の間のジョークだ。例えば、「おはよう、こんにちは、大砲の音を聞いておやすみ」といった感じだ。
 
 ドネツクの市街地はドンバスで最もウクライナの大砲に悩まされている場所の一つである。ドーンという音とともに、目覚めて、床に就く。ドーンという音とともに、コーヒーやビールを飲んだり、公園や美しい人工湖を散歩したりする。どれもこれもソ連時代に作られたものだ。私がこの文章を書いているのも、このドーンという音を聞きながらだ。いつ何時、この音が自分の頭の上に降ってくるかわからない。

 そのドーンの一つ一つに、家が、ビルが、市場が破壊され、人々が負傷し、あるいは殺されているのだ。いつも民間人。これは2014年以降、街の周辺部全体で毎日起きていることで、今では街の中心部も含まれる。そこには、国家機関や多くの学校、大学、病院、ショッピングモール、ホテルがある。

 平均して毎日約300発の砲弾、ロケット弾、ミサイルがドネツクとその周辺に放たれる。テレグラムのアカウントでは、各攻撃が数分以内に報告され、目的地、発射源、口径、結果が特定される。

 ウクライナの砲撃は正確だ。周辺部では毎日建物を破壊しているが、中心部ではめったに起こらない。ただ、2つの学校と中央行政庁舎は破壊された。

 砲弾はいつも想定された目標の近くに落ちてくる。劇場、主要ホテル、国会議事堂、レストランやカフェ、政府庁舎といった建物の近くだ。窓ガラスが割れ、通行人は多くはないが、ひとりかふたりは怪我したり殺されたりしている。これは「われわれは好きな時に好きな場所を攻撃できる」という彼らのメッセージが続いているということだ。

 ウクライナが最も好むターゲットは、水、電気、通信といった基本的なサービスである。これは民間人に対する罰だ。軍事標的を攻撃することはめったにない。もしそうなら、ロシア軍とドネツク民兵が発射元を突き止め、破壊することが容易になる。発射元の多くは、アヴディエフカやマリーインカなど、近隣の都市部の人口密集地である。そこは人間の盾として使えるからだ。

 一方、ドネツクでは、住宅や学校に砲台や戦闘拠点はない。実際、それらはどこにもなく、かりに砲撃が聞こえたとしても、それは主にトラックに搭載されたグラッド多連装ロケットランチャーからなのだが、それは周辺の農村部から聞こえてくる。

 砲撃は西から来ることを誰もが知っている。それゆえ、車は建物の東側に停めるのが望ましい。また、そちら側を歩いた方が安全である。あるロシア人ジャーナリストによると、サンクトペテルブルグ(レニングラード)には、大祖国戦争*当時から、ドイツ軍の砲撃方向と反対側が最も安全だという街頭表示が残っているそうだ。

*第二次大戦のうち、ソ連がナチス・ドイツおよびその同盟国と戦った1941年6月22日から1945年5月9日までの戦い。旧ソ連やロシア連邦が使う用語。西側では「独ソ戦」「東部戦線」と呼ばれる。

 9月2日午後7時頃、市街地の真ん中に5発の砲弾が落ちた。 その音はすさまじかったので、報道するためにどこへ行けばいいのか分かった。たった2ブロック歩いたところで、国会議事堂の前で老婆が死んでいるのを見つかる。傍らでその娘が絶望している。ドネツクは「バラの街」を自負しているが、そのバラ園に挟まれた大通りに2つのクレーターがあった。

 私は素速く「現場報告」をし、破壊の様子と覆いを掛けられた犠牲者の遺体の画像を添えて、テレグラムでチャンネルに送信する。

 さらに2ブロック歩くと、並木道で整備されたプーシキン大通りに出る。そこにはレストランやカフェが立ち並んでいる。劇場周辺にはさらに2つのクレーターがある。5回目の着弾は、高いビルの屋上だった。救急隊が到着する。軍の専門家も。トロリー線の修理がすぐ始まる。私は喜んで(そんなことができるなら、であるが)二人の女の子を見ている。彼女たちは20mほど離れたレストランのベランダでタバコを吸いながらくつろいでいる。

 もうひとつの「現場報告」。 劇場の割れたガラスの映像、あちこちに散らばる破片の映像。テレビ局へ別の記事を送り、とりあえずその日は終わり。

 近くの「ハッピーライフ」というジャーナリストに人気のあるレストランに行き、ビールを飲んであれこれ話をする。大通りに面したテラス席だ。かなり混んでいる。兵士が何人か彼女や奥さんを連れていて、おしゃべりしたり、笑ったりしている。

 人生は続く、こういう人はへこたれないと思うのだが、我慢の限界の兆しが見えている。

 なぜ、ロシアはさっさと終わらせないのか?

 私たちは、ドネツクおよびルガンスク人民共和国の半孤立地域や放置された地域を定期的に訪れている。これらの地域は、解放されたばかりの小さなコミュニティで、まだ組織的・体系的な人道支援が届いていない。

 何も持たず、どこにも行けない人たちに、ロシア人ジャーナリストのニキータ・トレチャコフがそのためだけに購入したウアズ(”ブハンカ”)バン*でささやかな食料と水の援助を行っている。
  
*ウアズはロシア製のワゴン車。愛称「ブハンカ」。「パンの一塊」の意。)

 この援助は、彼が経営する通信社「レグナム」の利用者からの個人的な寄付によって賄われている。このプロジェクトは3カ月前から始まり、これまでに18回、地雷のある地域や絶え間ない攻撃を受けた地域を移動している。

 私たちはそこで出会った民兵に案内してもらうことがほとんどだ。なぜなら、彼らはそこの地形を熟知しているので、ウクライナ人が残した地雷の場所を避けることができるからだ。この兵士たちは、しばしば自分の車に乗っている。

 その道中で、私たちはジャーナリストとしての仕事をする。一般市民と話をするのだ。ただ、役人とはほとんど話をしない。市民たちは、ロシア兵や民兵が食糧や水を分けてくれるからここで生き延びられていると言う。このたったひとつの事実が、いくつも繰り返されて、ナチスの大隊やウクライナ軍の行動との際だった違いを示す。

 彼らの心中には感謝の気持ちがあるが、また悲しみもある。多くのものを失った彼らは、生活の再建に気が急いているからだ。彼らには何度も何度もわいてくる疑問がある。それは「どうしてロシアはさっさと終わらせないのか」という疑問だ。

 これと同じ問いがさらに緊急性を帯びているのは、1980年代にソ連が建設したヨーロッパ最大の原子力発電所があるザポリージャ地域だ。ここの原発は、この3週間、ウクライナの攻撃が止まず、それどころか奇襲による奪還の試みすらあるからだ。

 この件について、キエフを非難するためにロシア軍がロシア軍自身を爆撃して殺している、というウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領の主張は、どこでも笑いものになっている。

 この紛争の規模は、あなたがそう望むなら、小さいと言える。ロシアが投入している職業軍人の数はわずか15万人で、彼らは数的にはるかに多数の相手の部隊をゆっくりと打ち破っているからだ。モスクワはまだその巨大な軍事力を行使していないのだ。

 その規模を測るには、1943年8月から9月に遡るのが役立つだろう。このとき、ザポロージエの同じ地域で、前進するソ連軍と後退するナチス・ドイツ軍によるドニエプル川をめぐる戦いがあったのだが、戦線は1,300kmに及んだ。そして400万人の兵士が参加し、1カ月足らずの戦闘で約40万人が犠牲になった。

 ルガンスク人民共和国のペルボマイスク(「メーデー」の意)の住民が私に「キエフのラダ(国会)と銀行に4発のミサイルを撃ち込めば、これですべてが終わる」と言ったのは、住宅地に対する異常な攻撃(NATOのHIMARSロケット)が一撃で9階建のビルを破壊した後であった。

 ドネツク軍のエドゥアルド・バズリン報道官は、新型の155ミリ榴弾砲とHimarsマルチロケット弾には、戦術的な解決策がない問題であることを認めている。機動性が高く、遠くから発射され、位置を特定するのが非常に困難だからだ。そのため、攻撃対象は弾薬庫や軍事基地に集中するのだと彼は言う。

 ドネツク人民共和国の政府代表デニス・プシーリンにとって、NATOの新兵器がウクライナの手に渡るという難問で、共和国の安全地帯を少なくとも国境から70キロ、あるいは130キロまで拡大する必要性が生じている。そうなると、その安全地帯のラインは、キエフに近くなる。

 モスクワは、すべてが計画通りに進んでおり、交渉または武力によって、ウクライナの非ナチ化、非軍事化、中立化というすべての目的が達成されると断言している。 ロシアにとって、これは限定的な「特別軍事作戦」であり、予備兵力を動員してウクライナ全土を正面から攻撃するような全面戦争ではないのだ。

 そういった状況なので、この作戦の過程で、ロシア国防省は国際軍事演習や安全保障・防衛に関する国際会議を開催し、現在も極東で中国など数カ国が参加する広範囲な統合演習を行っているのである。

 ウクライナの砲撃が明らかに手抜きである理由は、彼らがただ、ロシアの進攻を阻止に成功して領土を奪還し、戦略的主導権を握っているという印象をメディアに植え付けることを狙っていることにあるのは間違いない。

 この数日、ロシア国防省のドンバスとザポロジエの視察に参加するために現地入りした欧米のジャーナリストたちもそう確信したようである。

 しかし戦場では、彼らの反攻作戦―湖を越えて行った原子力発電所への二度の奇襲攻撃―は失敗している。アルゼンチンのラファエル・グロッシが委員長を務める国際原子力機関(IAEA)の調査委員会の訪問と同時に行われた襲撃のことだ。

 ウクライナはソ連から強力な産業と高度な技術・科学を受け継いだが、現在は30年にわたる放置、略奪、汚職、脱工業化によって貧困化が進んでいる。それは、現在ロシアが支配している地域を旅するとよくわかる。

 この国は、賃金や給料の支払い、そして戦争を維持するために、完全に西側諸国に依存している。この6ヵ月間で、ロシアの年間軍事予算全体に匹敵する支援を、彼らからの融資や販売の形で受けているのだ。

 しかし、砲撃の惨禍の下で暮らす一般市民にとって、地政学的な配慮は今日、何の重要性もない。ドネツク共産党のボリス・リトビノフ第一書記は、ロシアは攻撃の力を強め、その戦略を意思決定の場であるキエフに向けるべきだという意見である。

 リトビノフにとって、ウクライナはその存在を正当化できない国家であり、一刻も早く解体されなければならないものなのだ。ドンバスにいる人たちは、彼に同意する人が多い。
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国民投票を前に、ザポリージャ州で爆発により数人が負傷。ウクライナが関与か?

<記事原文 寺島先生推薦>
Several injured by blast in Zaporozhye Region ahead of referendum – official

(国民投票を前に、ザポリージャ州で爆発により数人が負傷 - 公式

メリトポリ市当局によると、ロシアが支配するウクライナの都市での爆発は中央市場の近くで発生したという)

出典:RT

2022年9月22日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月25日



ザポリージャ州メリトポリ市街の様子、ビデオからの静止画 ©  RT / RT

 地元当局者によると、9月22日木曜日の朝、ロシアが支配するウクライナのザポリージャ地域の事実上の首都であるメリトポリ市内で爆発があり、3人が負傷したとのことだ。

 爆発は市の中央市場の近くで発生した、とウラジミール・ロゴフ地方行政長官は通信社のRIAノヴォースチに一時的な報告をもとにして語った。被害者は致命傷を負っているわけではないが、病院での治療が必要なほどの重傷である、との説明だった。負傷者は後に、6人に増えたことがわかった。

 ロゴフ長官は、ウクライナ当局が事件の背後にいると非難した。ウクライナからの離脱とロシアへの加盟を希望するかどうかを問うことになる国民投票の前に、この地域の住民を恐怖に陥れようとする試みだと同長官は述べた。

 メリトポリ市は、ロシアの支配下にあるウクライナのザポリージャ地方の一部であり、事実上の首都としての役割を果たしている。一方、ザポリージャ市は北西部にあり、キエフ軍の支配下にある。


 関連記事:ウクライナは「ロシア問題」を力ずくで解決すると誓う

 9月20日火曜日、同地域のロシアとの連合当局は、ウクライナを正式に離脱し、ロシアに同地域をロシア領として認可するよう依頼するかどうかを問う国民投票を行うことを発表した。ドンバス内の二共和国と、ロシアの支配下にあるケルソン地方は、9月23日から27日にかけて、同様の国民投票を行うことを決定している。

 ウクライナ当局は、このような国民投票を「偽物である」と非難し、投票に参加しようとする人々は処刑の対象とする、と脅している。

 ウクライナ当局には、ウクライナ領内のロシアの支配下にある地域で、標的だとした複数の一般市民を暗殺した記録がある。その理由は、その人々がロシアの協力者だったから、ということだった。 ヴォロデミール・ゼレンスキー大統領顧問のひとりであるミハイル・ポドリャクが先週語ったところによると、 このような人々は、「軍からの標的として完全に相当する対象」であり、これらの人々を殺害することは、犯罪行為にもテロ行為にもならない、としていた。

 今週、ゼレンスキー大統領府のアンドリー・イェルマーク長官は、「ウクライナにはロシアの問題を解決する意向がある」が、その方法が可能なのは「力のみである」と主張している。
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ドンバス他がロシア領になれば何が変わるか

<記事原文 寺島先生推薦>
Donbass referendums will change security reality – Moscow

(ドンバスの国民投票は安全保障の現実を変える – ロシア当局からの発表

ドンバス国民がロシアの支配下に入ることを決めたならば、ロシアはドンバスが攻撃を受けた際は、自国が受けた攻撃として対応する)

出典:RT

2022年9月23日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月25日


©  Global Look Press / コムソモルスカヤ・プラウダ

 クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、ロシアへの加盟に関する国民投票の後にドンバス、ヘルソン地域、ザポリージャ地域への攻撃が行われたならば、その攻撃はロシア領内への攻撃として扱うことを確認した。その投票は、ドンバスの二共和国とウクライナ南部の 2 つの地域で9月23日金曜日に開始された。

 この地域がロシア領内として扱われるかどうかについてのメディアの質問に対し、ペスコフ報道官は「全くその通りです」と答えた。同報道官はさらに、これらの地域がロシアに編入されればすぐに、ロシア憲法がこれらの地域で発効する、と述べた。

 ロシアの元大統領のドミトリー・メドベージェフ国家安全保障会議副議長は、ロシアはその領土を守るために「利用可能なあらゆる手段」を取ることを躊躇しないだろうと警告した。「ロシア領土への侵入は犯罪です」とメドベージェフ副議長は今週初めに語った。更に同副議長は、ドンバスがロシアに加われば、「この結果生じる世界における地政学上の変容は、元には戻せなくなるでしょう」と述べた。

 米国は、欧州や他の地域の同盟諸国(ドイツも含む)と足並みを揃え、9月23日金曜日に開始された国民投票の結果を認めないことをすでに表明している。NATO のイェンス・ストルテンベルグ事務総長も、この国民投票のことを「偽物の国民投票だ」とツイッターで呟いている。なおこに国民投票は9月23日から27日まで行われる予定だ。


 関連記事:クレムリン、ウクライナとの交渉に前向き

 米当局は最近、ウクライナを「強化」するために、ウクライナ当局へのさらなる援助を約束した。これは、ロシアが部分的な国民動員を発表したことを受けてのことだ。9月21日水曜日、セルゲイ・ショイグ国防相は、動員がかけられるのは約30万人で、任務は予備兵であるとし、この数はロシアで動員できる総数のうちのわずか1パーセント強である、と述べた。

 同国防相は、増兵が必要な理由について、ウクライナ軍とロシア支配地域との 間の1,000km に及ぶ連絡線を管理するために必要である、と説明した。

 2022年2月、ロシアはドンバス共和国を独立国家として認め、ウクライナに、西側の軍事同盟に決して参加しない中立国であることを正式に宣言するよう要求した。 

 ロシアは、ドネツクとルガンスク両地域に、ウクライナ国家内の特別な地位を与えるとしたミンスク合意をウクライナ当局が実施しなかったことを理由に、2月24日にウクライナに軍隊を派遣した。ドイツとフランスが仲介したこの合意は、2014 年に初めて調印された。ウクライナのピョートル・ポロシェンコ前大統領は、ウクライナ側の主な目的は停戦を利用して時間を稼ぎ、「強力な軍隊を作る」ことだと認めている。ウクライナ当局は、ロシアの攻勢は全く言われのないものだ、と主張している。
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ロシア編入の国民投票を支持するデモに多数のロシア市民が参加

<記事原文 寺島先生推薦>

Russians gather to show support for referendums (VIDEO)

The first results of the five-day vote are expected by Wednesday

(ロシアの人々が国民投票を支持するデモに参加

5日間かけて行われる投票の最初の結果は、来週の水曜日の9月28日に出される予定:動画記事)
(掲載の動画は原文サイトからご覧ください。訳者)

 出典:RT

2022年9月23日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月25日
 
 ドンバス共和国とウクライナ南部でロシアの支配下にある地域が、正式にロシアに加わるかどうかを決定する国民投票を支持するデモに、ロシア中で市民が集まった。

 モスクワでは、何千人もの人々がクレムリン近くに集まり、ロシア国旗や、ロシア国内の諸地域の旗や、様々な政党の旗を掲けていた。

 俳優や流行歌手などの有名人も「私たちは自国民を見捨てない」という催しに顔を出していた。

 主催者である全ロシア人民戦線(ONF)は、この集会は「すべてのロシア人の願望を反映したものですし、モスクワ市民たちが、解放された地域の住民に対して支持を表明することにも繋がりました」と語っている。同様の催しが他の都市でも開催された。
 
 ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国 (DPR と LPR)、およびロシアの支配地域であるウクライナのザポリージャ地域とヘルソン地域は、9月23日金曜日にロシアへの加盟に関する5日間の投票を開始した。これらの地域の住民の多くはロシア語話者であり、これらの地域はロシアと歴史的なつながりがある。 



ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国 (DPR、LPR)、およびロシアが支配するウクライナのザポリージャ地域とヘルソン地域のロシアへの加盟に関する国民投票を支持する集会で巨大なロシア国旗を掲げている市民たち© Sputnik / アレクサンドル・クリャジェフ

 ウクライナ、米国、および EU は、この国民投票を「偽物」であるとして拒否し、この国民投票の結果を無視すると明言している。 

関連記事:ドンバス共和国、ザポリージャ、ヘルソン地域がロシアへの加盟に関する国民投票を開始

 DPR と LPR は、2014 年のキエフでのクーデターの直後にウクライナから分離した。ロシア当局は今年2月に両国を独立国家として承認した。ロシア当局が、隣国のウクライナで軍事作戦を開始した後、ヘルソン地域とザポリージャ地域の大部分がロシア軍の支配下に落ちた。
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クリミア、その苦難の歴史―ソ連からウクライナへの贈り物となり、ロシア連邦に戻るまで

<記事原文 寺島先生推薦>
How Crimea became part of Russia and why it was gifted to Ukraine — RT Russia & Former Soviet Union
クリミアはどのような経過でロシアの一部になったのか、なぜウクライナに贈与されたのか

Jewish enclave, home of a deported nation, a present for the Ukrainians: The difficult history of Russian Crimea
ユダヤ人の飛び地、国外追放された民族の故郷、ウクライナ人へのプレゼント。ロシア領クリミアの苦難の歴史

筆者:オルガ・スハレフスカヤ(Olga Sukharevskaya)

ウクライナ出身、モスクワ在住の元外交官、法学者、著述家

出典:RT

2022年2月19日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月24日


© Dan Kitwood / Getty Images

 クリミアがロシア連邦に戻った日から、この3月で8年になる。その日はクリミアがウクライナの一部としての60年の歴史に幕を下ろした日だ。振り返ってみると、その歴史は1954年2月19日ではなく、それより少し前に始まっていた。


ウクライナは、クリミアとどんな関係があるのか

 クリミア半島がロシア帝国の一部となったのは、ロシアとトルコの戦争が繰り返された後である。1771年、半島でトルコ軍を破ったワシリー・ドルゴルーキー公のおかげで、クリミアのハーン、サヒブ2世ジライはオスマン帝国からの独立を果たした。ハーンはサンクトペテルブルクと、同盟と相互援助に関する協定を結んだ。そして1774年、オスマン帝国はキュチュック・カイナルカ条約を締結してクリミアの領有権を完全に破棄し、ロシアに譲り渡した。

 9年後、ジライの改革はクリミア・タタール人を怒らせ、彼は退位に追い込まれた。血みどろの権力闘争を防ぐため、ロシアは半島に軍隊を派遣せざるを得なくなった。この地域の貴族は、エカテリーナ2世に忠誠を誓い、ロシア貴族と同等の権利を得て、ロシア帝国が崩壊するまで存在し、新しく作られたタウリダ地方の運営にも参加した。そして1791年、オスマン帝国が再び敗北した結果、ジャシー条約を締結し、その条約によってクリミアはロシアにのみ帰属することになった。ジャシー条約もキュチュック・カイナルカ条約も国際的に認められており、有効な協定と考えられている。

 1917年の革命により、ロシア帝国は崩壊し、ウクライナ領内には多くの擬似独立国家が誕生した。キエフを中心とするウクライナ人民共和国、ハリコフを中心とするウクライナ人民ソビエト共和国、当初はハリコフだけだったが後にはルガンスクが中心となるドネツク-リヴォイ・ログ・ソビエト共和国、オデッサ・ソビエト共和国、クリミアと北黒海地域のタウリダ・ソビエト社会主義共和国であった。しかし、ウクライナ中央評議会がオーストリア・ハンガリー帝国とドイツのカイザーと個別に協定を結んだため、これまでゲルマン両国に属していなかったウクライナとクリミアの全領土がオーストリア・ドイツ軍に占領された。


関連記事:プーチン大統領は、2014年のクリミアでの動きの背景にある考え方を明らかにした。

 ウクライナの民族主義者たちは、この占領期に関連する地図を多数作成した。彼らは当時クリミア・タタール人が主に住んでいたクリミア半島に加え、ボロネジやカスピ海までのロシアの土地、さらにはポーランドの広大な地域やモルドバのかなりの部分も領有していると主張した。ただ、これらの地図では、クリミア半島の北側だけが「ウクライナ」として描かれているものもあれば、半島全体が描かれているものもある。

 ロシア内戦後、クリミア半島はロシア連邦の一部となり、ソビエト社会主義自治共和国であると宣言された。クリミア・タタール人とカライート人はこの地域の先住民族とされ、クリミア・タタール語とロシア語が公用語となった。同時に、1897年1926年の半島(セヴァストポリ含む)の人口の民族構成は以下の通りであった。ロシア人33.11%、42.65%、ウクライナ人11.84%、10.95%、クリミア・タタール人35.55%、25.34%であった。


「新しいイスラエル」なのか?

 第一次世界大戦は、多くの民族に苦難をもたらしたが、戦争で被害を受けた人々を支援するための組織も誕生した。その一つが、ロシアで「ジョイント」と呼ばれるアメリカのユダヤ人合同配給委員会(JDC)である。
 
 この組織は、クリミアやクリミア問題とどのような関係があるのだろうか。直接的に繋がっている、と言える。1923年、すでにヴォルガ地方、ベラルーシ、ウクライナの飢餓被害者を支援していた「ジョイント」の指導者が、第一次世界大戦や内戦で被害を受けたソ連在住の数十万人のユダヤ人を農民にする計画をロシア連邦当局に持ち込んだ。ソ連政府は、自国に相当数のユダヤ人がいたので、この計画を支持し、アグロジョイント社(アメリカ・ユダヤ人共同農業会社)を設立した。また、当局は「ユダヤ人労働者が土地に定住するための委員会」(コズメット)を設立し、ウクライナやクリミアの土地を新規就農者に無償で配布した。

 このプロジェクトは、何もないところから生まれたわけではない。アグロジョイント社がクリミアで活動する以前から、1922年から1924年にかけて、半島には4つの農業コミューンが出現していた。しかし、アグロジョイントが支援した移民の大部分(86%)は、1925年から29年にかけてクリミアに向かった。それは、共産党で最も影響力のあるユダヤ人部会(Yevsektsiya)が、ソ連の黒海地域にクリミアを中心とするオデッサからアブハジアまでのユダヤ民族自治区、さらには共和国を作る計画を推進し始めていたからだ。いくつかの説によれば、クリミアを中心に、オデッサからアブハジアまでの黒海地域に、50万から70万人のユダヤ人農民を移住させる計画だった。そして、1934年に極東にユダヤ人自治区が出現したにもかかわらず、クリミアに住む1万4千のユダヤ人農民家庭は、アグロジョイント組織の活動が禁止される1938年まで援助を受け続けたのである。


再定住計画の破綻


 クリミアにユダヤ人農場を作る計画が失敗し、アメリカユダヤ共同農業公社の活動が禁止されたのには、多くの理由がある。たしかに、その計画はクリミアとウクライナ南部のユダヤ人農業企業に農業機械、家畜、インフラ設備などを供給するために、クレジットや融資資金を除けば1600万ドルを費やした。しかし、この支援のかなりの部分が無償でなかったことに留意する必要がある。1932年の不作で多くの農家が融資と利子の支払いに苦しみ、それが飢饉を招くことになったのだ。

 実は、この大量移住計画は失敗していた。1939年までに、計画された50万人のユダヤ人移民のうち、クリミアに定住したのはわずか47,740人であった。そのうち、農業に従事したのはわずか1万8,065人で、残りは大都市に向かった。クリミアにはユダヤ人入植者が働く集団農場が合計86ヶ所あったが、耕地面積は半島の10%程度しかなかった。

 ソ連指導部は、多民族国家であるクリミアで、一つの民族にしか援助が行われないことに強い危機感を持った。クリミア・タタール人は、自分たちがかつて所有していた土地に、ユダヤ人だけの地域(フライドルフとラリンドルフ)を作るために資金が配分されたことに反発した。その結果、権利を奪われたタタール人は、ユダヤ人入植者を乗せた列車が半島に入るのを阻止し、すでにあるユダヤ人農場に害を与えるためにあらゆる手を尽くした。


関連記事:武力によるクリミア奪還は「不可能」―ウクライナ

 しかも、アグロジョイント社は、合法的な活動だけでなく、ソ連の法律に直接違反するような活動も行っていた。それは、地下組織の支援である。1936年7月23日、ジョイント社のロシア支社長ジョセフ・ローゼンは、ロンドンからニューヨークへ報告した。「ソ連への移住に関する我々の交渉は、現在手詰まり状態である。主な理由は、我々が連れてきたドイツ出身のユダヤ人医師がゲシュタポ*との協力した廉(かど)で告発されたからだ」。この事実が、ソ連での企業活動を停止させる理由となった。
*ナチス・ドイツの秘密国家警察

 クリミア・タタール人は、ユダヤ人入植者に土地を強制的に移譲させられたことで、ナチスに積極的に協力し、ホロコーストに積極的にも参加するようになった。1942年4月26日には、ナチスはクリミアの「ユダヤ人一掃」を宣言した。クリミアの人口の約65%がユダヤ人だったが、避難できなかった人たちのほとんどが殺された。そしてクリミア・タタール人の方は、クリミア半島が赤軍によって解放された後、中央アジアに追放された。


法外な贈り物

 1944年にクリミア・タタール人が追放されたのは、スターリンがフランクリン・D・ルーズベルトに、クリミアをユダヤ人移民のために解放すると約束したからだとする説がある。後にユーゴスラビア副大統領となるミロバン・ジラスの回想録によると、この約束は、アメリカ大統領がレンドリース供給*計画を継続する条件として、また第二戦線**創設の見返りとして要求したものであったことがわかる。その真偽のほどはともかく、半島がナチスから解放される前から、ユダヤ反ファシスト委員会の指導部がソ連人民委員会副委員長のモロトフに「クリミアに関する覚書」を送り、同様のクリミアへのユダヤ人移民構想を提案していたのは興味深いことである。
*アメリカがイギリス、ソ連、その他の連合国に対して1941年から1945年にかけて食糧、石油、資材を供給する政策
**第2次大戦で、ドイツの攻撃で苦境に立ったソ連の要求により、テヘラン会談の決定を経て、1944年ノルマンディー上陸作戦後形成された西部戦線をいう。

 1945年のヤルタ*会談の参加者は、クリミアが戦争でどのような被害を受けたかを直接に目にする機会があった。隣国のウクライナ・ソビエト社会主義共和国の住民を含め、ソ連全体がその復興に参加したのである。そして、ウクライナ人であり、当時ウクライナ共産党の党首であったフルシチョフが、この半島のウクライナへの譲渡を思いついたのである。フルシチョフのスタッフの1人の回想録によると、1944年、彼はこう記している。「私はモスクワにいたときに “ウクライナは破滅していて、誰もがそこから撤退しつつある。しかし、ウクライナにクリミアを与えれば......” と言った」。 しかし、そのときはフルシチョフの提案は受け入れられなかった。クリミアがウクライナに譲渡されるのは、彼がソ連のトップになるまで待たねばならず、それが首相としての最初の行動の1つとなった。
*クリミア半島南端に位置する都市。黒海に臨む。


お別れの記者会見で、握りこぶしを振りながら怒りの言葉を述べるソ連首相、ニキータ・フルシチョフ。© Bettmann / Getty Images

 クリミア半島の「困難な経済状況」が譲渡の理由に挙げられることが多い。しかしクリミア経済全体は、ナチスから解放されて10年も経たないうちに、戦前の水準に達し、産業発展もそれを凌駕するほどになっていた。しかし、1954年2月19日、タラソフ最高会議常任委員長は、ソ連最高会議常任委員会の会議で、この措置の正当性を説明した。「クリミア地方のウクライナ共和国への譲渡は、偉大なソビエト連邦の人民の友好と、ウクライナとロシアの人民の友愛関係を強化し、わが党と政府がその発展に常に大きな関心を寄せてきたソビエト・ウクライナの繁栄を促進するだろう」と。この譲渡は、ウクライナが自発的にムスコヴィッツ王国に加盟してから300年目の記念日に合わせて行われたものだった。


ソ連における法的ニヒリズムとその帰結

 クリミアのウクライナへの譲渡の合法性については、ソ連崩壊以前から疑問視されていた。実は、1937年のソ連憲法によると、共和国の国境を変更する権利は、ソ連最高会議常任委員会にも、最高会議にもなかったのである。憲法上、領土を変更するためには、住民投票を実施し、住民の意見を聞く必要があった。もちろん、半島で住民投票が行われたことはなかった。

 1990年11月、クリミア地方人民代議員会は、半島の自治共和国としての地位を回復するかどうかの住民投票を実施することを決定した。住民投票の結果、93.26%が賛成票を投じた。こうしてクリミアは、当時ゴルバチョフが準備していた新連邦条約の条件交渉に参加することになった。次にクリミアの議員たちは、ゴルバチョフに半島のウクライナへの不法移譲を中止するよう訴えるつもりだったが、その前にソ連が崩壊してしまった。その後、ロシア連邦議会は1992年5月21日、1954年2月5日の「クリミア地方のロシア連邦からウクライナ・ソビエト社会主義共和国への移管について」と題するロシア連邦最高会議常任委員会の決定を、「ロシア連邦憲法(基本法)および立法手続きに違反する」として、法的効力を持たないことを確認する決議を採択した。


関連記事:ロシアはクリミアを救ったことについての考えを説明

 ソ連憲法がまだ有効であり、クリミアの自治を含むウクライナ憲法がまだなかったため、クリミア最高評議会はクリミア共和国の独立宣言を独自に採択したのである。1992年8月2日にその運命を決める住民投票が計画されたが、ウクライナ中央当局は国民投票の実施を認めようとはしなかった。

 1994年、ウクライナ自治共和国であったクリミアは、ロシアとの統一を支持する大統領を選出し、議会もロシアとの統一を支持する議員が大半を占めるようになった。これに対し、ウクライナ指導部はクリミア憲法、「クリミア国家主権法」、クリミア大統領ポストを一方的に廃止し、クリミア議会で多数を占めていた政党をすべて禁止した。住民の意思に反して、クリミアはウクライナになったのである。


追放された被害者への異様な気遣い

 クリミア・タタール人は、ソ連時代に自分たちの歴史的な故郷への帰還を始めていた。現メジャーリス(クリミア・タタール人の代表機関)議長のレファト・チュバロフ氏は、1968年に両親とともに半島に戻り、1970年代はクリミアで勉強や仕事をした。他の多くのクリミア・タタール人(赤軍として戦ったこの民族のメンバーとその家族は強制送還を免れていた)も同様であった。しかし、帰国者が急増したのは、彼らの強制退去が違法であったことが正式に認められた後(1980年代後半)である。


© Getty Images / 画像の出典元

 ウクライナ自治共和国の誕生後、ウクライナ国家は直ちにクリミア・タタール人の擁護者を宣言し、住宅建設用地を割り当てた。しかし、クリミア共和国土地資源委員会によると、2001年から2005年にかけて、タタール人100世帯に147.7区画の土地が割り当てられたにもかかわらず(他の住民は49.9区画)、大多数の一般クリミア・タタール人は何も受け取っていなかった。土地の分配は「メジャーリス」が行ったが、この組織はウクライナで未登録で、「人権活動家」ムスタファ・ジェミレフが率いていた。2013年、アイペトリ高原でレストランを経営するクリミア・タタール人の起業家たちは、筆者にこう訴えた。「私たちはウクライナ当局による迫害から逃れるために毎年1万2000ドルをジェミレフの側近に送金し、それから当局の役人にも個人的に賄賂を払わなければならない」。

 ウクライナのクリミア・タタール人への支援は奇妙に見える。ウクライナはいまだにウクライナ語以外の言語を公用語と認めていないからだ。しかし、クリミア半島がロシアに再加盟した直後、クリミア自治共和国ではクリミア・タタール語とウクライナ語が国語となり、クリミア・タタール語もロシア連邦全体で公用語となった(ウクライナ語は当時すでにその地位を獲得していた)。同じように、半島がロシアに統一された後、プーチン大統領は自ら「クリミア・タタール人のメジャーリス」に対して、ロシア法に基づく登録によってクリミアでの活動を継続することを提案したが、その指導者はこれを拒否した。

***

 クリミア・ロシア関係の歴史は、多くの急展開を見せたが、その複雑な状況のすべてをこの記事で詳細に分析することは不可能である。その最後が、2014年に半島がロシアの管轄下に戻ったことである。そしてこの帰順は、半島とその住民の運命に関する過去の非合法な決定の多くを是正したが、それは同時に、非常に曖昧な状況下で行われた。しかし、これは別の話の主題である。
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ワクチン接種をためらったおかげで、ハイチはCovid-19の症例数や死者数が、西半球で最も少ない数で済んだ

<記事原文 寺島先生推薦>
Vaccine Hesitancy in Haiti Has Led to the Lowest COVID-19 Cases and Death Rates in the Western Hemisphere

(ワクチン接種をためらったおかげで、ハイチはCovid-19の症例数や死者数が、西半球で最も少ない数で済んだ)

著者;ティモシー・アレクサンダー・グズマン (Timothy Alexander Guzman)

出典:Global Research

2022年8月13日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月27日



(この記事の初出は、2022年7月18日)

 西側諸国の政府や、西側の国際組織によると、カリブ海の最貧困国には問題があるという。その国とはハイチだ。ハイチは西側から来るものについては何も信じない国だ。メディアによるプロパガンダも、人体実験的な予防注射も、さらには「Covid-19ワクチン」として知られているものについても、だ。

 ハイチ国民は、西側を救世主だとは思っていない。医療や安全保障の話になれば、ハイチ国民は自国政府さえ信頼していない。それは、これまでのハイチ政権のほとんどが、米国やフランスから命を受けた政権だったからだ。ハイチ国民が熱狂的に支持した大統領は、米国が支援するクーデターにより2004年に排除されたジャン=ベルトラン・アリスティド(Jean Bertrand Aristide)大統領だ。しかしCovid-19とCovid-19の試用的予防注射に関して、ハイチからいいニュースが届いている、と世界保健機関が以下のように伝えている。

 「2020年1月3日から 2022年7月13日の午後5時16分(中央ヨーロッパ夏時間)までの間で、ハイチにおけるCovid-19の症例数は3万1980件で、死者は837名であることが、WHOに報告された。なおワクチンについては、2022年7月8日の時点で、これまで34万8769本が接種されている」

 驚くことではないが、1100万人以上の人口を持つハイチ国民のワクチン接種率が低い理由は、ハイチ国民の大多数が、試用的な予防注射を接種したがらないからだ。

  www.codastory.com というURLから検索できる、コーダ(coda)という名のリベラル系のサイトは、2021年8月13日に、「ハイチ国民がワクチン接種を戸惑う理由」という題名のプロパガンダ的記事を出している。著者はエリカ・ヘラースタイン(Erica Hellerstein)であり、ハイチ国民がCovid-19ワクチンを拒否する理由を説明する記事なのだが、彼らの論理からすると、その理由は、ハイチ国民が ロシアから偽情報や陰謀論を聞かされているから、というものだった。

 「フェイスブックは、ロシアを拠点とする広範な反ワクチン偽情報拡散組織を今週発見した。火曜日(2021年8月10日)にフェイスブックが、65件のフェイスブックのアカウントと243件のインスタグラムのアカウントを削除したと発表した。理由は、反ワクチン情報を流していたからだ、とのことだった。フェイスブック社の調査者たちは、この組織が英国のマーケット会社のファゼ(Fazze)社と関係があり、ロシアから操作されたものであることを突き止めた。この組織(フェイスブックからは“偽情報洗浄組織”と呼ばれている)が主に標的にしているのは、ラテン・アメリカ諸国やインドや米国の人々であり、MediumやRedditやChange.orgなどのサイトに掲載されたと見せかけた偽の記事や署名を使い、フェイスブックやインスタグラムの偽名アカウントを使って拡散していた、とのことだ。これらの陰謀論のうちの一つをあげると、この組織はしばしば映画「猿の惑星」から引用した画像を利用して、アストラゼネカ製予防接種を打った人はチンパンジーになってしまうという情報を拡散していた。これはロシアが国家的プロパガンダとしてよく使う手法だ。」

 Codastory.comというサイトの所有者は、コーダ・メディア(Coda Media)という会社であり、この会社は、もともとは米国の大手メディアで働いていた人々により運営されている。具体的には、元BBC特派員で、この会社の社長であるナタリア・アンテラバ(Natalia Antelava)や、ウォール・ストリート・ジャーナル誌の元記者であるイラン・グリーンバーグ(Ilan Greenberg)だ。そのイラン・グリーンバーグがこのニュースサイトの出版者であり、編集長なのだから、すでにその時点で、このサイトがロシアに対して偏見を持っていることがわかるはずだ。

 ヘラースタインは、ジャン・クロード・ルイス(Jean-Claude Louis)について言及していたが、ルイスは、Covid-19ワクチンに関わる医療分野で活動していた関係者と話をした人物だ。ヘラースタインによると、その関係者がルイスにこう告げたという。「私は決してワクチンは打ちません。どんなものが入っているかわかったものじゃないのですから」と。ジャン・クロード・ルイスはパノス協会のとりまとめ役で、この協会は「メディアリテラシーと偽情報の検出に関して、記者たちと若者たちを教育するハイチのNPO法人」だとされている。パノス協会はNPO法人で、もともとは英国に拠点を置く組織だが、今は世界規模で活動している。ルイスが、Covid-19の試用的な予防注射の効用と安全性に関して西側のプロパガンダの手に落ちているのは明らかだ。

 ルイスはオンライン上や対面での噂話で流されるワクチン神話に厳しい注意を払ってきた。そしてルイスは、ハイチ国内の医療界でそのような神話がどれほど浸透しているのかを気にしている。ルイスは、「問題は、ワクチンに関する偽の噂話が多くはびこっていることです。ハイチの人々はワクチンを打つことを非常にためらっています」とも語っていた。

ヘラースタインはこう語った。

 「私がルイスに近づいたのは、ラテン・アメリカ諸国の中のワクチン接種率を示すデータベースを目にしたことを受けてのことでした。1位はウルグアイで、人口の75%近い人々が少なくとも1度はワクチンを接種しています。そのずっと下にハイチがあり、国民のたったの0.14%しか、Covid-19ワクチンを接種していません」

 さらにヘラースタインは、ハイチがCOVAX計画(Covid-19ワクチンを各国に平等に分配することを目的とする計画)を通して米国や国連からCovid-19ワクチンを受け取ったラテン・アメリカやカリブ海沿岸諸国で最後の国だったという事実に触れた。

 「ハイチは世界で最後の国の一つになりました。そしてラテン・アメリカやカリブ海沿岸諸国の中では最後でした。そうです。予防接種の分配においてです。実際、ハイチは先月までまったく受け取っていませんでした。それから7月14日になって、国連が支援しているCOVAX計画を通じて、米国から50万本のワクチンが、ハイチに届きました。ワクチンが到着したのは、ハイチのジョブネル・モイーズ(Jovenel Moïse)大統領が、白昼堂々自宅で暗殺された1週間後のことでした。この事件はハイチの政界を危機に陥れるものでした」

 ヘラースタインの評価によると、ハイチが政治的な激動の中で、ワクチン分配を始めたことは、「明るい兆し」 であるということだが、統計結果はヘラースタインを悩ませるものだった。

 「ワクチン接種の実施は、激動のハイチにおいて「明るい兆し」であると歓迎されていました。しかしある別の統計結果から私は目を離せませんでした。ユニセフとハイチ大学が6月に行った調査によると、ワクチンを打つことに興味がある成人はたったの22%だ、とのことでした。ワクチン接種に対する世界の人々の態度を調べた2月の調査と比べると、ブラジルでは成人の88%、中国やメキシコでは成人の85%、スペインとイタリアでは成人の80% がCovid-19ワクチンを接種する意思があると答えていました。調査に参加した世界各国の中で最もワクチン受容率が低いロシアでさえも、成人の42%が、ワクチンが普及すればワクチンを接種すると答えていました。これはハイチの数字の2倍の数です」

 記事で真実が明らかにされたことはほとんどないが、国連の平和維持軍がコレラをハイチに持ち込み、その流行のせいで少なくとも1万人近いハイチ国民が命を落としている。

 ハイチ国民が国際機関に信頼をおかない理由は、十分うなずけるものだ。最終的に、専門家たちは国連の平和維持軍がコレラをハイチに持ち込んだという結論を出している。そして少なくとも1万人がコレラのせいでなくなった。ただし国連は長年ずっとそのことを激しく否定していた。

 国連や国連を支援する西側に対する不信感が、ハイチ国民にとっての大きな問題なのだ。国連の平和維持軍がコレラをもたらしたという事件が、まだ多くのハイチ国民の中に深く残っているので、COVAX計画を通じて世界のワクチン接種を推し進めている国連に対する不信感が拭えていないのだ。ハイチと米国の人権提唱団体の共同組織である「ハイチにおける正義と民主主義」協会の創設者であるブライアン・コンカノン(Brian Concannon)が、私にこんな話をしてくれた。「基本的に、公共医療に関する呼び掛けについては、国際組織は全ての信頼を失ってしまっています。コレラのことで嘘をついたからです」と。さらにコンカノンは言葉を続けた。「ハイチ国民は国連を信頼していませんし、自国政府も信頼していません。(ワクチン接種の)呼びかけを誰がしているかの問題なのです」

 2021年4月7日、ハイチは世界保健機関からのアストラゼネカ製の75万6千本のワクチンの寄付を受け取ることを拒絶したが、これもCOVAX計画を通じたものだったことを、スペインのEFE社が信頼のおける情報源からの情報として報じた。
 
 「この情報源によると、ハイチ政府がアストラゼネカ製ワクチンを拒んだのは、アストラゼネカ製ワクチンは、“インドのセラム協会”の承認の元で製造されたもので、“このワクチンに対しては世界から不安の声が上がっている”ため、ハイチ国民が“受け入れないだろう”、と政府が考えてのことだった」

 興味深い後日談がある。「ハイチ当局は、世界保健機関に他社の研究室製のワクチンをハイチに送るよう依頼した。具体的にはジョンソン&ジョンソン社の研究室製のワクチンも含まれていた。ジョンソン&ジョンソン社のワクチンは、必要な接種回数が1回だけで、しかも摂氏2~8度で保管できるものだ。しかし、世界保健機関は、ハイチからの要求を飲まなかった。それはジョンソン&ジョンソン社製ワクチンは接種が1度だけで済んでしまうからだ。 とはいえ、ジョンソン&ジョンソン社製ワクチンも、ファイザー社やモデルナ社製の試用的予防接種と同じくらい危険なワクチンなので、ハイチ当局がジョンソン&ジョンソン社製を求めたのは、1度の接種ですむという考え方のほうが、国民に対する説得力が増す、と考えたからだろう。長期間に渡って複数回接種しなくてもいいからだ。おそらく、 “永久に接種を受け続けさせられる“ことを、国民に押し付けたくなかったのだろう。国民は既にCovid-19やその他の病気に対して、西側が製造するワクチンには懐疑的であったからだ」

 西側でもどこでも、ハイチやCovid-19に対するハイチ国民の反応を悪くいう人がいるかもしれない。しかし確かなことがひとつある。それは、Covid-19やその他の新しい病気に関わる、西側諸国の政府や、世界保健機関や米国疾病予防管理センター(CDC)など西側と何らかの関係がある組織は、ワクチンやマスク着用を推奨しているが、その結果、死者や負傷者を増やすことになっているということだ。

 ハイチでの事例が証明している事実は、アンソニー・ファウチのものであれ、世界規模のものであれ、「医療当局」が推奨していることはすべて、信頼できないものであり、連中が推奨していることはすべて眉に唾をつけて聞くべきだ、という事実だ。

 以下の新出動画は、米国の大手メディアによる典型的なプロパガンダではあるが、この動画を見れば、ハイチ国民のCovid-19に対する態度について新しい観点が得られるだろう。

(動画は原文サイトからご覧下さい。訳者)
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「なぜ共和制である我が国がエリザベス女王追悼のため半旗を掲げないといけないのか」フランスの多数の市長からの声 

<記事原文 寺島先生推薦>
French mayors refuse to lower flags for Queen
France should not “make preference” for a foreign monarch, one official declared


(フランスの市長たちが女王のために半旗を掲げる司令を拒否
ある市長は、フランスは外国の君主のために「敬意を示す」べきではないと発言)

出典:RT

2022年9月13日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月23日


フランスのパリのエリゼ宮殿の上に掲げられたフランス国旗の半旗。2022年9月9日撮影 ©  AFP / Christian Hartmann
 
 フランスの多くの市長が、半旗を掲げることで英国女王エリザベス2世に弔意を示す意向はないと発表している。理由は、君主制の考え方は、フランスの共和制とは相いれないため、ということだ。

 9月8日(木)のエリザベス女王の死去に伴い、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、英国で君主の座に史上最長在位したエリザベス女王に敬意を払った最初の国家元首のうちの一人だった。同大統領はエリザベス女王を「心の女王」と呼び、エリゼ宮殿はその翌日半旗を掲げ、エリザベット・ボルヌ首相は、次の月曜日(9月19日)に予定されている女王の葬儀の際には、市役所などの公共施設もそれに従うように、という指令を出した。
 
 フランスの左翼市長たちの間では、その指令は不人気のようだ。「このような要請は私には信じられないことに思えます」と、フランス社会党所属のヤン・ガルート(Yann Galut)ブルジョ市長は語った。「英国の友人たちの悲しみには敬意を払いますが、市の施設でフランス国旗[の半旗]を掲げるつもりはありません」
 
 「我が国は共和制国家です。それなのに、なぜ外国の君主のために哀悼の意を示さなければいけないのでしょうか?」とガルート市長はフランス3テレビの取材で語っている。
 

関連記事: Free speech campaigners defend anti-monarchy protests
 
 「私はこの指示には従いません」と、左翼政党である「服従しないフランス(La France Insoumise)」党所属のパトリック・プロイジー(Patrick Proisy)ファチェスートゥメスニル市長は語った。「他の国の国家元首が亡くなった時も、同じことをしてきましたか?共和制である我が国が一国の君主であり、とある宗教の教会長である人物に敬意を払っていいのでしょうか?」
 
 さらにプロイジー市長は言葉を続けた。「学校で半旗を掲げることで論理性が保てるでしょうか?学校には、“自由・平等・友愛”という文字が刻まれています。”君主制“ということばほど、”平等“という考え方からかけ離れている概念はありません」
 
 パリ郊外のジュヌヴィリエ市の共産党所属パトリス・ルクレール(Patrice Lecler)市長も、この指令を無視すると宣言したと、タイムズ紙は報じている。

 反旗を翻しているこれらの市長たちが、指令に従わないことで、何らかの罰を受けるかどうかは不明だが、フランス市長協会のフィリップ・ローラン(Philippe Laurent)副会長は、停職処分を受ける可能性があると警告している。しかし「服従しないフランス(La France Insoumise)」党所属のハドリアン・クルーエ(Hadrien Clouet)国会議員が、「そういう事態にはならないだろう、それは、フランスには国旗を降ろすべき状況を規定する法律がないからだ」と述べたことを、テレグラフ紙は報じている。
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米国政府はCovidの出現に加担しているかもしれない、とロシア

<記事原文 寺島先生推薦>
US government may be complicit in emergence of Covid – Russia
Moscow is assessing the possibility that a Washington DC agency played a part in the creation of Covid-19
モスクワは、ワシントンDCの機関がCovid-19創作に一役買った可能性を考えている。

出典:RT 

2022年8月4日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月21日 


© Igor Golovniov / SOPA Images / LightRocket via Getty Images

 ロシア国防省は、Covid-19ウイルス創作に米国国際開発庁(USAID)が関与した可能性について調査していると発表した。

 ロシアの放射線・化学・生物防衛軍のトップであるイーゴリ・キリロフ(Igor Kirillov)中将は、木曜日(8月4日)の記者会見で、ウクライナにある米国の支援を受けた生物研究所が、ウクライナ国民に対して疑わしい研究や臨床試験を行っており、「血液や血清などの生物試料16000個以上がウクライナ領土から米国や欧州諸国に輸出された」と主張した。

 彼はさらに続けて、アメリカ下院情報委員会のメンバーであるジェイソン・クロウ(Jason Crow)が、アメリカ人のDNAサンプルが標的型生物兵器の製造に使われる可能性があると警告したため、ロシア国防省がCovidパンデミックの起源を「見直す」ことになったと説明した。

 「米国政府が攻撃目標を絞った生物兵器の研究に関心を持っていることを考慮すると、このような発言は、新型コロナウイルスのパンデミックの原因や、Covid-19病原体の出現と拡散に米軍の生物学者が果たした役割について、あらためて検討する必要に迫られる」とキリロフは述べた。


関連記事: Covid-19 may have originated in US biolab – Lancet chair

 ロシアは今、USAIDがCovid-19ウイルスの出現に直接関与したのではないかと疑っている、その理由はコロンビア大学のジェフリー・サックス教授がランセット誌に発表した論文に注目したからだ、とキリロフは述べた。この論文は、Covid-19ウイルスがアメリカのバイオテクノロジー分野の最新の成果を利用して研究所で作られた可能性が高いことを示唆している。
 
 キリロフは、USAIDが2009年から「Predict」と呼ばれるプログラムに資金を提供し、新型コロナウイルスの研究を行っており、その病原体に感染した野生のコウモリを捕獲していたこと、このプロジェクトの請負業者の1つメタビオタ社がウクライナ領内での軍事用生物研究で有名だったことを指摘した。

 2019年、USAIDは「Predict」プログラムを停止し、同時にジョンズ・ホプキンス健康安全保障センターは、これまで知られていなかったコロナウイルスの拡散の研究を始めた。

 「COVID-19開発シナリオの実施とUSAIDによる2019年のPredictプログラムの緊急的終了は、COVID-19パンデミックの意図的な性質とその発生への米国の関与を示唆している」とキリロフは述べた。


関連記事: US should pay compensation if Covid-19 claim confirmed – Russia

 また、最近のサル痘ウイルスの出現や、米国が敵に対して生物製剤を使用してきたとされる歴史から、国防総省が関心を寄せる病原体が、何らかの理由で最終的にパンデミックになるという「明確な傾向」をモスクワは観察している、と付け加えた。

 米国は、ウクライナの生物実験所を軍事研究に利用したことを繰り返し否定しており、「46の平和的なウクライナの研究所、保健施設、疾病診断サイト」は、ヒトと動物の健康のために生物学的安全、セキュリティ、疾病監視を改善するキエフを支援するために利用されたと主張している。

 Covid-19ウイルスの正確な起源について、まだ決定的な証明はされていない。しかし、世界保健機関(WHO)は2021年2月の段階で、動物(おそらくコウモリ)からヒトに感染した可能性が非常に高いと述べていた。
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Covidは終わった。今こそ批判的思考力を取り戻そう

<記事原文 寺島先生推薦>
After Covid, we must embrace critical thinking again
Blind submission to authority has to stop, now that we are coming to the end of the pandemic
権威への盲目的な服従は止めなければならない。パンデミックの終わりに近づいている今こそ。

筆者:メモリー・ジョエル(Memoree Joelle)   
    立憲保守派の著述家。ロサンジェルス在住。

出典:RT
 
2022年2月23日
 
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月25日


© AFP / NOAH SEELAM
 

 私は大学1年生の時に学んだ最も貴重な教訓を決して忘れないだろう。その教訓を私に教えてくれたのは、ソ連から亡命してきた文学教授だった。「歴史上すべての専制的な政権には、重要な特質があった。それは、すべての知識を統制下に置くことだ。このことが彼らの成功には不可欠だったのだ。というのも、人々が手に入れることのできる情報を統制下におけないとしたら、人々を効果的に支配することはできないからだ」。その教授は何度も私に思い起こさせてくれた。「情報の自由の権利を手放せば、すべての自由はなくなってしまう。すべてをなくしてしまうのだ」と。その先の4年間の大学時代、この教訓は私の心から離れなかった。幸運なことに、私はその教訓を広げてくれるような素晴らしい数名の教授に出会うことができた。彼らが私に自由を確保する術を教えてくれたのだ。つまり自由になるためには、まずは考える方法をみにつけないといけない、ということだ。
 
 自由を手に入れ、守るためには様々な方法があるが、考え方がわからない限りは、自由が奪われた時点で気づくこともできない。私の教授が教えてくれた通り、「人間が自由になり、自由であり続けるために一人一人が認識しておかなければならないことは、その人が自分自身の考え方ができる能力と、すべての問題に関して批判的に思考できる能力を、個人として有していること」なのだ。真実であるか否かを気にせずに暗記した情報を吐き出せる能力では対応できない、ということだ。


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 自由主義国家においては、市民は公共の情報を入手し、知識を共有し、考え方を交流し、率直に議論を交わすことができる。これらのことこそ決定的な要素なのだ。というのも、主流言説とは食い違う考えを提起できるということは、哲学から物理学まで、すべての学問において、創造性や発明や前進の基盤となるからだ。人々が、迫害を恐れることなく、既存知識に疑問を呈し、新しい考え方を提起することが自由に行われている社会は繁栄する傾向にある。このような自由がなければ、パソコンも新興企業もこの世に生まれなかっただろう。医療や技術の進歩もなかっただろう。私たちは、専制的な国家に奉仕する従順な人材にすぎなかっただろう。例えば北朝鮮の人々と同じように。彼の国では、独立系メディアは禁止されていて、国民は一党支配、一人の将軍の支配のもとに置かれている。北朝鮮は、停滞と闇が終わることなく続く国である。本当にそうだ。
 
 米国においては、情報の自由や言論の自由は、長年当たり前のこととして保証されてきたが、次第にその自由はなくなりつつある。その責めを負うのは、ほかでもない私たち自身だ。もう何年も、私たち目をあけたまま眠っていて、「劣化している」としかいえない状況に急激に落ち込んでいる。

 こんなことになったのは、疑問に答えるときにグーグルに頼るようになってからだ。さらには、ネットフリックスを見ることに「どはまり」する気晴らしが、流行るようになってからだ。以前は人気だった「人間観察」に変わって、私たちは頭を低くしてスクリーン上の画面を凝視し、無意識のうちにいろいろなアプリをいったりきたりしている。我が国は、「受動的消費者」の国になってしまった。こうなればプロパガンダやマインドコントロールを使った国民操作など簡単にできてしまう。だから権力を手にしようとする人々が、頭角を現そうとするときに、人々を支配する機会を逃さまいとする様子を目にしても、驚くようなことではないのだろう。


関連記事: Slowly we are learning more about the level of risk Covid vaccines present
 
 Covid期に人々が権威に対して手放しに従っている姿を目にし、私は大きな衝撃を受けた。そして私が多くの人々に気づいてほしかったことは、主流言説に疑問をはさむ権利をなくすことは危険であり、すべての自由が奪われる方向に滑り落ちていくのでは、ということだった。この2年間私が恐怖心を持って見てきたことは、かつては進歩的であると見なされ、言論の自由やインターネット上の自由を擁護していた人々が、異論の声を塞ぎ、SNS上から排除し、上からの情報抑制を強化することを求めていた姿だった。これらの人々が、お題目やプロパガンダ的なかけ声を唱え始め、「科学に従え!」と命じてきたのだ。彼らは科学を聖書扱いしていた。本当の科学とは、真の知識をずっと追い求めることのはずなのに。
 
 そんな「科学」など存在するわけがなく、科学とは従う対象ではなく、研究する対象だ。もちろん、科学的に結論に達した真実というものは存在する。例えば、重力の存在などがそうだ。しかし本当の科学というものは、懐疑主義を軽んじることを許さないものだ。たとえそれが非常に広く受け入れられている学説だとしても、だ。実際、何かに疑問を持ったり、つついてみたり、別の見方を探そうとしなくなった時点で、それは科学ではなくなる。恐怖や「排除されること」や政府からブラックリスト入りされることを恐れることなしに、疑問を持つことができないのであれば、それは明らかに科学ではない。そんな「科学」は、権威主義の片割れに過ぎない。だからといって常識となっている事実が間違っているとは言っていない。常識に到達する方法が問題なのだ。
 
 Covid-19に関わる強制措置を頭に置いてみよう。我が国の政府が、DDTと呼ばれる毒物を子供たちに振りかけさせたことがあった。そのときは、「こんな行為は危険だ」と考えれば、右翼の陰謀論者扱いを受けた。そのような誤解を解くには、「科学的に」疑問を持つことが必要だった。同様に、パンデミック期に実施されたロックダウン措置は、死者を減らすことにおいてほとんど効果がない、あるいは全く効果がなく(ジョンス・ホプキンス大学の研究による)、ただ社会や社会全体や経済に大きな損害を与えた(特に若年層には)だけだったことが明らかになっている。ロックダウン措置を終わらせ、その措置はおかしいと公言できるようになるには、公式見解に異論を唱えることを厭わない人々の努力が必要だったのだ。まずはこの先何が起こるのかについてどう考えればいいかを知るべきだったのだ。人から言われたことを受動的に受け入れて、何も手を出さないのではなく。


関連記事: Why we shouldn’t panic over the Covid Deltacron alert
 

 2020年のフォーブス誌の記事を私は決して忘れないだろう。その記事が私たちに警告していたのは、「独りよがりの研究を決してしないこと」だった。そんなことは専門家に任せるべきだ、というものだった。自分より詳しい人の方が詳しいのだから、というものだった。わかっていただきたいのは、「医学の学位や科学研究の長年にわたる経歴などどうでもいい」ということではないということだ。あるいは、「だれでも自称医師になれる」ということでもない。そうではなく私が言いたいことは、誰にでも研究に従事する権利があるということなのだ。疑問を尋ね、自分の進むべき道を決定する権利があるということなのだ。自分自身の身体のことならなおさらのことだ。自分の身体は個人の所有物だから、それを守る一番いい方法は、自分の身体を自由にし、もっと疑問をもつことだ。
 
 西側世界の多くの地域においては、まだ私たちには自由が残されている(もちろんそれを守るためにはより強く闘う必要はあるが)。その自由を使って、人間として進化し続けなければならない。そのためには、批判的に考えること、他者や自己について疑問を持つこと、そして人々と議論をもつことが肝要だ。知的好奇心を進捗させる努力を怠ってはいけないし、自称「専門家」が唱える教義に簡単にすがってはいけない。自分たちの代わりに、テック産業界や諸製薬会社の代表取締役たちや政治家(党は問わない)たちに考えさせたり、世論を持っていいのは誰で持ってはいけないのは誰かを決めさせたり、どんな情報なら読んでもいいのかを決めさせたりしてはいけない。それを許せば、私の恩師の教授が言った通りになる。「すべてが失われる」
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第2のブチャ、イジューム―― ウクライナは砲撃で死亡した民間人と自国兵士の墓を利用して、ロシアが大虐殺をしたというカードを切った。

<記事原文 寺島先生推薦>

Bucha 2.0 in Izyum – Ukraine uses civilians killed by shelling and the graves of its soldiers to play the massacre card

著者:クリステル・ネアン(Christelle Néant)

出典:ドンバス・インサイダー(Donbass Insider)

2022年9月16日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月20日



 ウクライナ軍(UAF)によるハリコフ近郊のイジューム奪還の後、当然のことながら、ウクライナはブチャのリメイクをおこない、砲撃で死亡した民間人の墓と戦闘中に死亡した兵士の墓を使って、それをロシア軍による民間人虐殺に見せかけようと試みている。

 イジュームの虐殺がブチャの虐殺のリメイク版だとすれば、ブチャの虐殺はそれ自体がティミショアラの虐殺のリメイク版であった。ブチャの遺体の解剖後、イギリスのマスコミは、ブチャの集団墓地で見つかった数十人の市民は、処刑されたのではなく、砲撃で殺されたと発表した。
訳注:1989 年 12 月、ティミショアラでは、後にルーマニア革命となる一連の大規模な街頭抗議行動が起きた。12 月 20 日、そこで流血が始まってから 3 日後、ティミショアラはルーマニアで共産主義から解放された最初の都市であると宣言された(ウィキペディア)。つまり、ソ連圏に仕掛けられた最初のカラー革命だったのだ。

 正確には、砲弾の中に入っていた金属製のダーツで殺されたのだ。当然のことながら、イギリスのメディアはこれがロシアの砲弾だと言っているが、私は、この目で、悪名高い米国製金属ダーツが2014年からドンバスでウクライナ軍によって使用されていることを確認している!(私はザイツェボで金属ダーツをいくつか見つけた。ザイツェボは、紛争当初からウクライナ軍によって毎日砲撃されている町だ。)

 しかも、その件についてはすでに4年前に私たちが取材したボストーク大隊の将校たちから聞いて知っていた。2014年のドンバス戦争中にスラビャンスクでアンドレア・ロッチェリ(イタリア人写真記者)が殺害された件についてインタビューしたときのことだ。



 ロシアは、ウクライナよりはるかに優れた武器を持っているので、相手軍に最大限のダメージを与えようとして、こんな金属製ダーツを使う必要はない。しかしウクライナ軍は使っているのだ。(英国の私の「同僚」の情報によれば、ウクライナも122mm砲弾を保有しているということだ。つまり、それを保有しているのはロシアだけではないのだ。)。明らかに、ブチャで死んだ市民の多くは、ウクライナの砲撃によって殺されたのだ!

 そして、ロシア軍が処刑したという証拠を示す人々に、私は思い出してほしいのだ。私がブチャに関する2番目の記事で既に明示したこと、すなわち、町を「掃討した」ウクライナ軍がロシアの協力者とみなされる人々を処刑したことを。

(テレグラム上の動画)
https://t.me/donbassinsider/6711?single

 そういう同じ方法を彼らはハリコフ地域で再び使っているのだ。それを隠すこともせずに。

(訳者:以下は上のテレグラムの投稿の邦訳)

 クピャンスクでは、ロシア軍に協力したとして、2人の民間人が頭を撃ち抜かれた。

 絶対に間違いなく、米国を筆頭とする卑劣な西側の社会全体は、この事件を決して取り上げないだろう。彼らは、「平和で小さなウクライナ」という幻想を台無しにしたくないからだ。しかし、そろそろ何が起きているのか、彼らの目を開かせてやらねばならない。このクズどもは、残念ながら、ハーグ国際刑事裁判所に行くことはないだろうし、こんなふうにも言えるだろうか、最上級の法廷であっても彼らを苦しめることすらないだろう。

 平和的な非武装の人間を殺すのは、完全に不名誉なことである。

(テレグラムの邦訳はここまで)

(テレグラム上の動画)
https://t.me/intelslava/36995

(訳者:以下は上のテレグラムの投稿の邦訳)

 ウクライナのネオナチは、ハリコフ地域の最近占領された地域で、民間人の誘拐を開始した。彼らが確認したのは、数十人の「協力者」が標的となっていることであった。
(テレグラムの邦訳はここまで)

 ゼレンスキーの顧問であるアレクセイ・アレストヴィッチは、ロシアに協力する人々に対して、死刑や投獄があると明確に脅している。脅されている中には単なる学校の教師もいる。

(動画→この動画については原文サイトからご覧下さい。訳者)

 テレグラム上のウクライナ人集団らは、「ロシア協力者」のミロトウォレツ式の個人データまで公開しているので、ロシア協力者は追跡し捕らえられる危険性もある。そして、このような人々がウクライナ人に殺害された場合、間違いなく、その処刑はロシア人のせいにされる。

 ウクライナはまた大虐殺というカードを使うこともできる。ロシアがイジュームを制圧する戦闘で、死んだ多くのウクライナ兵士の死体を、ウクライナ軍は撤退する際に放置したのである。ロシア兵は遺体を放置して腐らせるのではなく、尊厳を持って集団または個人の墓に埋葬した。その墓の上には、ラジオ・スヴォボダの写真に見られるように、「ВСУ」(ウクライナ軍)の文字が入った十字架が立てられている。そのうちの1つには、関係する兵士の名前入りの写真もある。




「ВСУ」(ウクライナ軍)の文字が入った十字架の墓


兵士の名前入りの写真がある墓

 ラジオ・スヴォボダの記事の中では、ウクライナの兵士や民間人の墓について、「無名の墓に埋葬されている」と語っている。ただし、写真で見ると、いくつかの墓には銘板があり(下の写真の赤丸)、花で飾られているものもあり、町の住民の墓であることがわかる。そして、まだその町には家族がいるのだ。






花で飾られた墓も見える

 さらに、もしロシア軍が本当にイジュームで大規模に民間人を処刑したのなら、なぜわざわざ十字架や適切な葬儀の儀式で個別に埋葬したりするだろうか。

 ウクライナの民間人や兵士が、可能な限り個別の墓に埋葬され、十字架とその人の名前、あるいは兵士であることを示す表示があったという事実は、ロシア軍がイジュームを奪取する戦闘の後に見つけた死者に対して人道的であったことを示すものだ。

 ラジオ・スヴォボダの別の記事で、ウクライナ政府関係者オレグ・コテンコは、いくつかの墓には死亡した日付が書かれており、それは都市への激しい砲撃があった時期に対応していると言っている。

 「いくつかの墓には死亡した日付が書かれており、当時イジュームでは激しい砲撃があったことがわかる。家屋やアパート、路上で死んだ人はここに埋葬された」とコテンコは言った。

 ブチャと同様、埋葬された市民の多くが戦闘中に砲撃で死亡したことは明らかだ。大量処刑とは無縁だ。

 この地域のロシア支配下での民間人の暮らしぶりを知るには、パトリック・ランカスターのレポートを参照してほしい。



 最初のインタビューに答えている男性は、被害を受けた建物の70%はウクライナの砲撃によるもので、ロシアの砲撃によるものは30%に過ぎないと明言している。もう一人は、ロシア兵が榴散弾に当たった男性をどのように救ったかを語っている。病院にいる何人かの男性は、ウクライナ軍がどのように民間人居住区を砲撃して、家を破壊したり住民を負傷させたかを語っている。

 イジュームの「大虐殺」に話を戻すと、何もなかった地下室を撮影して拷問室の話を作り出そうとする哀れな試みは、すぐに見逃してやろう。床には床仕上げ材のリノリウムが敷かれていて、万が一に備えて血を拭き取るのに便利だということを除けば(そう、エコ+プロパガンダもここまで落ちたか)、この地下室がどこにあるのか知る由もないし、何の痕跡もないのである。

(テレグラム上の動画

 この森に埋葬されているウクライナ兵の遺体の数(400以上の墓のうち、兵士の遺体数はかろうじて20~25しかなかった)については、数カ月前にこの町をロシアが制圧するための戦闘の激しさからすれば、説得力がない。特に、ウクライナ軍による兵士の死体の遺棄は、ドンバス紛争が始まって以来、恒常的におこなわれてきたことである。DPRとLPR(ドネツクとルガンスク人民共和国)は、定期的にウクライナに兵士の死体があることを公的に発表し、やっとのことで、ウクライナ軍が死体を回収しに来るようにしなければならなかったのである。

 また、ロシアのテレグラム番組「ザピスキー・ベタナナ」の7月の投稿によると、約500体の兵士の遺体がウクライナ軍によってイジューム市近郊(森とは別)に遺棄され、それをロシア軍が埋葬してやらなければならなかったという。同チャンネルによると、ロシア軍司令部はウクライナ軍司令部に何度も連絡を取り、葬儀チームを送って死者を収容するよう要請していたにもかかわらず、である。

 この葬儀チームの安全を保証するために人道的回廊まで計画されたのだが、ウクライナ軍司令部はこれに応じず、死んだウクライナ兵はロシア兵によって埋葬されたのだった。

 このことはロシア人ジャーナリストのアンドレイ・メドベージェフ氏によって確認されている。彼は、イジューム近郊でウクライナ軍(UAF)によって野に捨て置かれたウクライナ兵の死体回収と埋葬現場を撮影した。2022年5月に撮影された2つ目のビデオの最後には、ラジオ・スヴォボダの写真にあるような場所が映っている。

(テレグラム上の動画)
https://t.me/MedvedevVesti/11277?single

 これらの要素を考慮すると、イジュームの森に埋葬されたウクライナ兵の数は、ウクライナ当局が出した数字より確実に多いことが明らかになる。ウクライナ当局は、これらの兵士や砲撃で死亡した民間人を「ロシアに処刑された民間人」に「変換」している。大虐殺を叫ぶための非常に実用的な手法だ。

 原文のフランス語から英語への翻訳は、ドンバスインサイダーのVz.yan。

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迫り来るエネルギー危機の中、プラハで7万人規模の反政府・反NATO・反EUのデモ。

<記事原文 寺島先生推薦>

Winter is coming: Prague’s 70,000-strong protest shows what’s in store for Europe
The recent demonstration saw Czechs rally against NATO and the EU amid a looming energy crisis

(冬が近づく。プラハで行われた7万人規模のデモは、この先欧州で起こることの先鞭をつけた。
チェコで最近起こったNATOとEUに反対するデモは、迫り来るエネルギー危機が引き金だ。)

筆者:ブラッドリー・ブランケンシップ(Bradley Blankenship)

出典:RT

2022年9月6日



Bradley Blankenship is an American journalist, columnist and political commentator. He has a syndicated column at CGTN and is a freelance reporter for international news agencies including Xinhua News Agency. 

@BradBlank_

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月20日


チェコのプラハのヴァーツラフ広場での反政府デモに集まった数千人の人々。2022年9月3日土曜日撮影。 ©  AP Photo/Petr David Josek


 9月3日(土曜日)、約7万人の人々が、プラハのヴァーツラフ広場に集まり、政府の退陣を要求した。それは、現在進行中のエネルギー危機に対する政府の対応が失敗であることに対する意思表示だった。さらに抗議者たちは明らかに、西側の2つの代表的な組織に対しても反対の意を表明していた。それは、以前東側に属していたチェコが、現在加盟している欧州連合と北大西洋条約機構(NATO)という2組織だ。

 市民民主党(ODS)のペトル・フィアラ(Petr Fiala)首相に、何が問題なのかを問うたなら、彼はただこう答えるだろう。この何万人もの人々はただの世間知らずの親露の輩(やから)たちだ、と。 実際にフィアラ首相が言った言葉を紹介すると、「ヴァーツラフ広場での抗議運動は、親露派が力づくで起こしたものであって、過激派に近い勢力によるものであり、チェコの国益とは反するものです」というものだった。批判を受けたあとも、同首相はその立場を9月5日の月曜日にも再度繰り返し、この抗議運動を組織した人々を「ロシアの第5列」呼ばわりした。

 さらに踏み込んで、「これらの抗議運動者たちはワルシャワ条約機構に再加盟したがっていて、共産主義時代に戻りたいと思っている」とまで考える政治専門家たちもいた。チェコ共和国でしばらくの間暮らした経験のある私から言わせてもらえば、こんな考え方は全くバカげている。 おおむねチェコ国民は西側になりたがっている。自国が、開かれた自由な社会であって欲しいと思っていて、チェコスロバキア共和国時代の洞穴の中で暮らすような生活には反対している。

 さらにこの国で編まれた歴史書のせいで、最もリベラルなチェコ国民でさえも、ロシアに反感を持たざるをえない状況になっており、ロシア人に対してさえも同じ気持ちを抱いている。つまり私の意見では、西側が意図的にチェコを完全に変えてしまったことが、今のチェコ国民の嫌露意識の醸成に関連づけられる、ということだ。チェコの政権が西側寄りになればなるほど、チェコ国民の嫌露感情が高まる、ということだ。


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 だからこそ、こんなにも多くの人々が、ロシア国家を支持するための集会に自分の時間を割いて馳せ参じるということは、全く考えにくいのだ。そうではなく、7万人もの人々を9月3日月曜日の路上デモに動員させた要因は、生活費が高騰し、実質賃金は降下しているのに、政府が外交政策に拘って、状況をさらに悪化させているという事実なのだ。そう考える方が非常に論理的で、陰謀論など入り込む隙はない。

 実はチェコの労働組合の指導者たちは、この月曜日と同じ場所で、同じ問題について、10月8日にもデモを行うことを求めている。チェコの首相は、ロシア人がチェコの労働運動を扇動しているなどと本気で考えているのだろうか?ロシアに対する嫌悪感が蔓延しているチェコ社会で、そんなことはありえないように思える。

 繰り返しになるが、結局はたった一つの結論に至るのだ。政権の支配者層にとっては奇妙なことだと思われるかもしれないが、人々が示している心配は、感情から来るものなのだ。生活がどんどん苦しくなり、チェコ国民はウクライナ政権の言いなりになって、極貧で不安定な暮らしは送りたくない。これは純粋に自分の身を守りたいという気持ちからくる心配だ。仕組まれた「価値観」や理想の話では全くない。


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 プラハで起こったことは、この先他の西側諸国でも起こるであろうことが少し見えただけにすぎない。他の西側諸国がこの先も同じ道程を辿るならばの話だが。そうであれば、きっとそうなる。既に欧州大陸のあちこちで、社会不安の兆候が見て取れる。その理由は、生活費、特にエネルギー価格の高騰のためである。公的な暦では、夏の終わりさえまだ到来していないのに。

 9月1日を事実上の秋の開始日であるとするなら、その数日後にプラハで7万人規模のデモが起こったということだ。問題は、寒い季節が到来し、暖房費が高騰したときどんな状況になっているか、だ。いったいどれだけの人々が路上デモに繰り出せば、フィアラ首相のような人たちが、真の問題を認識することで、社会不安の動きをロシアによる陰謀だと決めつけるのを止めるのだろうか?

 人々が社会の大義のために自分の利益を犠牲にすることはほぼないという事実は、既に目にしてきた。いや、利益どころか、不便だという理由だけでも人々は自分を犠牲にしない。それはこれまでの COVID-19のパンデミック時に明らかになったことだ。コロナウイルスが明らかにしたことは、そんな理想論など、抗議集会に参加している西側諸国の人々には全く無意味だということだった。人間というものは、あまりに個人主義者で頑固な生き物だ。社会の大義という理由では十分でないことが明白になったのだ。

 そう考えれば、EU諸国の市民たちがヴォロデミール・ゼレンスキーや彼の政権の犠牲となって、喜んで貧困に陥るなどと本気で考える人などいるのだろうか?まったくありえないことだ。今の外交政策を続ける限り、今年の欧州の冬は、寒く厳しいものになるだろう。プラハで起こったことは、パリ、ロンドン、ベルリン、マドリードなど、欧州各地に広まっていくことだろう。
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ウクライナへの武器支援により、ドイツは自国用武器が枯渇

<記事原文 寺島先生推薦>

Germany warns of ‘absolute deficit’ in weapons stocks
Country may have to reorientate manufacturing, chief diplomat suggests
(ドイツは武器の在庫が「枯渇している」と警告。
ドイツは武器製造の方向性の転換が必要になる可能性を外相が示唆。 )

出典:RT

2022年8月25日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月19日


装甲兵員輸送車の前に立つドイツ兵© AFP / Axel Heimken


 ドイツの武器の在庫量が少なくなる中、ドイツの防衛産業はウクライナに特化した武器の製造をすべきだ、とアナレーナ・ベアボック(Annalena Baerbock)ドイツ外相は語った。

 8月24日(水)のドイツの公共放送局であるZDF放送局とのインタビューの中で、同外相はキエフ当局がロシアとの戦争に勝利できるかについて問われた。

 「それは分かりません」と同外相は答えたが、ベルリン当局は、ウクライナを救うためには「可能なことならなんでもする所存です」と約束した。しかしベアボック外相は、ドイツがキエフ当局に武器を供給することがますます困難になっていることは認識していた。それはドイツが、自国用の装備の不足に苦しんでいるからだ。
 
 「残念なことですが、今は我が国の武器の在庫が完全に不足した状況にあります」と緑の党所属の同外相は語った。

 従ってドイツの防衛産業は、「ウクライナに特化した武器を製造すべき」であり、ドイツの兵器庫にある武器を供給すべきではない、とした。


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 ベアボック外相によると、ウォロデミル・ゼレンスキー政権が更なる武器を求めていることは理解できるが、ベルリン当局は将来のことも頭に入れるべきだ、とのことだった。そしてドイツはウクライナでの戦争が2023年も継続されることを見越しておくべきだ、とも警告した。

 ドイツのIris-T短距離空対空ミサイルがここ数週間のうちにキエフ当局に送られ、この先今年の終わりまでに、さらなる武器が送り込まれる見込みであるため、「ウクライナはこれらの武器を使って自衛に耐えうるでしょう」と同外相は述べた。

 6か月前から、ロシア軍によるウクライナでの軍事作戦が開始されて以来、ドイツのオラフ・シュルツ(Olaf Scholz)首相は、ウクライナと約束していた武器を送ることに後ろ向きであることに対して批判を浴びてきた。

 ベルリン当局がこれまで供与してきたのは、大砲や肩から発射するロケット弾や対空自走砲だが、ウクライナ当局が要求している、より洗練された対空システムや砲兵レーダー装置の供与には踏み切っていない。


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 先週シュルツ首相は、ベルリン当局はキエフ当局に対して、「多くの武器」を供与しており、この先も供与し続けることを再確認していた。しかし同首相は、「ウクライナでの戦争が激化しないこと」こそ、最も求めていることだ、と強調した。

 8月23日(月)、ドイツ国防相は声明を出し、自国用に必要な在庫量を削減することなく、ウクライナ当局に供与できる武器の量が「限界に達した」とした。2月24日にロシアがウクライナに軍を進めたのは、ウクライナがミンスク合意を受け入れず、ウクライナ国内において、ドネツクとルガンスクの特別自治を了承しなかったためだとしていた。ドイツとフランスが仲介に入ったこのミンスク合意は2014年に初めて署名された。ウクライナのピョートル・プロシェンコ元大統領は、キエフ当局の主な目的は、休戦を利用して、時間を稼ぎ、「強力な軍事力を用意すること」だったという事実を認めている。

 2022年2月、クレムリン政権は、ドンバス人民共和国を独立国家として承認し、ウクライナに対して、自国が中立国であり、西側軍事同盟には加入しないと宣言するよう要求した。いっぽうキエフ当局は、ロシアによる攻撃は全くいわれのないものであると主張している。

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「新型コロナの起源」の隠蔽について。ランセット誌Covid-19対策委員会委員長ジェフリー・サックス教授の主張

<記事原文 寺島先生推薦>
Prof. Jeffrey Sachs on the Covid Origins Cover-Up

出典:Ron Unz

2022年8月29日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月19日


コロンビア大学ジェフリー・サックス教授

  コロンビア大学のジェフリー・サックス教授は米国学術界の重鎮であり、既に30年も前からニューヨーク・タイムズ紙は、同教授の専門分野における世界の第一人者の一人であるとして、サックス教授を賞賛していた。現在サックス教授は、コロンビア大学の「持続可能な開発センター」のセンター長を務め、何年もの間、公共政策の問題について、多数の記事やコラムを幅広く発表している。

 そのような背景をもつ同教授であるので、医学雑誌の先頭を走るランセット誌が、サックス教授をコロナ対策委員会委員長に任命し、2020年の初頭から世界を壊滅的状況に追いやり、100万人以上の米国民の命を奪ったこの病気の大流行の全てを調査する任務を与えたことは全く驚くことではなかった。しかしここ数ヶ月のことだが、サックス教授が米政権やメディアの支配者層に反旗を翻し、この病気の起源についての自身の思いを、勇気を持って公言し始めている。

 5月にサックス教授は著名な学術誌であるPNASジャーナル(米国科学アカデミー紀要)に主要な共著論文を発表し、その中で新型コロナウイルスが生物工学によって作られ、自然由来ではなく研究室で作られたものであることを強く示す証拠を提示した。そしてサックス教授は新型コロナウイルスの真の起源について独立機関による調査が必要であると主張した。

 以下の記事を参照

独立機関によるSARS-CoV-2ウイルスの起源を調査を求める
ネイル・L・ハリソン&ジェフリー・D.サックス。PNAS誌。2022年5月19日。2800語。


 その翌月、サックス教授はスペインで開かれたシンクタンクの小さな集まりにおいて、もっと率直な発言をしていたし、7月初旬のサックス教授の発言の動画は広く拡散され、1万1000件以上のリツイートを呼び、視聴回数は100万回以上に登った。



 コロナ対策委員会委員長として、サックス教授はこの問題に関して最も信頼のおける人物であるが、サックス教授のこの物議を醸すような主張を、ほとんど全ての西側メディアは無視した。常に醜聞を流すことで知られている英国のデイリー・メール紙のみが禁を破り、サックス教授の発言を取り上げた。

以下の記事を参照
 
Covidは米国内の研究室から漏洩したのであり、パンデミックの起源を隠蔽したとされたあの悪名高い中国内の施設からではない、と米国の最前線の教授が主張したが、“ 習近平の喧伝家だ”として非難を浴びている」コナー・ボイド著。デイリー・メール紙。2022年7月4日。1500語。

 西側以外の国々はサックス教授からの情報にしっかり注目し、ロシアの高い地位にある将軍の一人は、最近の国防省の記者会見において、サックス教授の発言を、権威ある発言として取り上げていた。

 ほとんど全ての西側メディアの記者たちは目を逸らし続けているが、サックス教授は現在進行中のCovidに関する隠蔽についての自身の考えを広めようとする取り組みを強めており、米国メディアのカレント・アフェアのオンラインマガジンでの取材でも、かなり大胆な発言を行っている。

 以下の記事を参照
 なぜランセット誌のCOVID-19対策委員会委員長は、米国政府がこのパンデミックの真実に迫ることに妨害をしていると考えているのか
ジェフリー・サックス著。カレント・アフェア。2022年8月2日。4300語。


 サックス教授のインタビュー記事の内容を、私が長年親しくしている著名な研究者に伝えたところ、驚いていた。

 「すごい記事だ。サックスがとても大胆な発言をしてるからだけじゃない。彼はこの問題に関して熟知しているからだ」

 他の著名な研究者も同様の反応を見せた。

 「とんでもない凄いインタビュー記事のひとつだ。間違いない」

 直近では、サックス教授はポド・キャストの人気番組で、ロバート・F.ケネディ、ジュニア氏とCovidについて1時間議論を交わした。ロバート・F.ケネディ、ジュニア氏も、かつて支配者層の中枢近くにいたが、今は支配者層に反旗を翻している人物だ。サックス教授は、自身が委員長の職責を果たしていた間に遭遇した巨大な不正について語り、このウイルスの真の性質と起源についての大きな隠蔽がおこなわれているという結論に至った、と語った。

(訳者:両者の対談の模様はこちらから)

 この両者のインタビューを耳にした人はすべて、非常に感銘を受けたようで、Covidの起源についての議論について最先端で研究しているある人物は、私がこのインタビューのことを伝えたところ、以下のようなコメントを送ってくれた。

「このインタビューでサックスが言っていることは非常に興味深い。はっきりしているし、力強いし、ユーモアもあり、何より説得力がある。それはサックスがこの問題を公式説明とは違う面から見た議論から始めているからだ。現在サックスが有している知見の深さに興味がひかれるし、サックスはファウチが生物兵器防御のポートフォリオを入手したところからさかのぼって、この隠蔽を追跡している」

 サックス教授は他の分野においても政治的な勇気を示している。具体的には、ウクライナでの戦争や中国と我が国の関係について、ほぼ画一化されている世論に対して強く異論を唱えているのだ。

以下の記事を参照。
ウクライナはネオコンがもたらした一番新しい災害だ
ジェフリー・サックス著。コンソーシアム・ニュース。2022年7月1日。1300語。

ロシアと中国に対する西側からの危険で愚かな言説
ジェフリー・サックス著。コモン・ドリームズ。2022年8月23日。1000語。


 米国の支配者層でこんなにも高い地位にいる人物が、重要な問題に関して支配者層が押し出している公式説明に対して、こんなにも鋭く楯突くことは本当に稀なことだ。前述の通り、このような政治的に危険な離反者に対するメディアからの典型的な反応は、ブラックリスト入りにするか、無視するかだ。

以下の記事を参照
米国のプラウダ:小人たちにより沈黙させられる巨人たち」ロン・ウンズ著。ザ・UNレビュー・2021年11月22日。12200語。


 しかし今はインターネットのおかげで、これらのメディアの門番たちを出し抜くこともたまに起こる。それは、物事の裏側を見たいという人々の要求が十分強くなるという条件のもとで起こる事象だ。

 シカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授は、我が国で最も優れた政治学者の一人であるにもかかわらず、ウクライナでずっと燻っていた紛争に関する同教授の視点は、公の議論からは排除されてきた。ミアシャイマー教授によるこの件に関する最新のいくつかの講義は、ユーチューブ上で閲覧可能だったが、ほとんど注目されなかった。

 しかし、ウクライナでの戦争が勃発した後は、これらの講義動画のひとつが世界規模で空前の数の聴衆を引きつけることになり、 視聴回数は2700万回を超え、インターネット史上、学術関連動画の最高視聴回数を記録する可能性も十分出てきた。 同教授による他の複数の講義動画も1000万から1500万回の視聴回数になっている。



 このような世界からの大きな反応が直接の契機となって、我が国で最も主要なメディアのひとつが、この件を取り上げざるをえなくなった。ほどなくエコノミスト誌は、ウクライナ問題についてミアシャイマー教授に客員記者としてコラムを書くよう依頼した。さらには完全に支配者層よりのフォーリン・アフェア誌も、長いページを割いて、公式説明とは相容れないウクライナでの戦争に関するミアシャイマー教授の長文のエッセイを掲載した。

 以下の記事を参照。
ウクライナでの火遊び。壊滅的に事態を急変させることが過小評価されている危険性
ジョン・ミアシャイマー著。フォーリン・アフェア誌。2022年8月17日。3200語


 大手メディアは、Covid問題に関するサックス教授の重要な視点をほぼ完全に無視しているが、このようなボイコット的行為も、最終的には打破される可能性がある。その条件は、サックス教授があちこちで注目を浴び続けることだ。多くの代替系のポドキャストやサイトは、効果的なチャンネルを駆使して、公式説明とは食い違うこのような考えを広めようとしているからだ。当該の問題に関して、サックス教授のように強い信頼性を有する人物からの主張であれば、尚更広めようとするだろう。

 サックス教授の視点について私が把握している情報は、サックス教授が公言している内容からだけの情報であり、サックス教授は、Covidは生物兵器による攻撃として意図的に漏洩されたのではという仮説は全く主張していない。私はこの2年以上の間、ずっとその仮説を提唱し続けてきたのだが。しかし私が非常に興味深く感じたのは、同教授が幅広い内容を網羅している長い講義の中で、中国を名指しで非難する発言を全く行っていないことだ。中国がウイルスを発生させたなどとは主張していないし、武漢研究所のことさえ一度も触れていない。武漢研究所は、Covidを漏洩した研究所だと言われている研究所だ。

 その代わりにサックス教授が鋭く焦点化して取り上げているのは、遺伝子操作によりCovidに似たコロナウイルスを製造する目的で、米国が生物工学に力を入れてきた点であり、米国政府の意を受けた科学者たちが、人為的に作られたものであるというCovidが持つ明らかな性質を隠蔽しようと躍起になっていた事実であった。さらにサックス教授は、生物兵器製作には膨大な資金が投入された取り組みであったことも指摘し、これらの計画は、かつては軍が直接指揮していたが、20年~30年前にアンソニー・ファウチ指揮下のNIH(国立衛生研究所)に移管されたことにも触れていた。さらにサックス教授は、ピーター・ダザックが率いている、国防総省が資金提供をしていて、明らかに諜報機関の息がかかっているエコ・ヘルス協会についても言及していた。この協会は武漢研究所など世界各地の生物研究所と協働していた過去がある。

 サックス教授は、支配者層において最大級の名声を手にしている公人であり、その彼が私が提唱しているような爆弾仮説を仄めかすだけでも、とんでもない信頼失墜行為を犯すことになるといえる。 まだもっとずっと強固な証拠が日の目を見るところまでには至っていないからだ。さらにサックス教授が現在担っている非常に重要な役割とは、 自身の持つ名声を利用して、Covidウイルスが生物工学によって作られたものであるという性質を有していることや、メディアや科学界がその真実を隠蔽しようとしていることに人々の目を向けさせることであるので、これ以上挑発的な議論を吹っかけることは、サックス教授の将来にとって致命的な行為になりかねない。

 しかしCovid対策委員会委員長として、サックス教授はこれらの件全てに関する内部関係者の地位に居続けているし、サックス教授が示してくれている情報は、私が行ってきた分析と全く矛盾しないことが分かる。ここ数年の間、私はその分析を一連の記事で紹介してきた。これらの全ての情報は、このサイトや、電子書籍や、アマゾンから入手できるぺーパーバックでも読むことができる。なお私のインタビュー映像は、ランブル上で視聴回数100万回を優に越えている。

 以下の記事を参照

Covid/生物兵器 シリーズ」
ロン・ウンズ著。The Unz Review。2020年4月~2021年12月。60,000語
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ホームレスという呼び名を変えたとて、ロサンゼルス郡の野宿者の現状は悪化の一途

<記事原文 寺島先生推薦>

City tries to cancel use of the term ‘homeless’
Public officials in Los Angeles have called for instead using such labels as “people living outside”
(地方行政当局は、“ホームレス”という呼び方を排除しようとしている。
ロサンゼルス郡行政当局は、代わりに“屋外で居住する人々”という名称を使うように要求。)

出典:RT

2022年8月25日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月19日


ロサンゼルスのドヤ街で、寝床用のダンボールを準備しているホームレスの男性。2019年9月撮影© Getty Images / Mario Tama

 米国で最も人口の多い郡であるロサンゼルス郡は、ホームレス問題を解決する暗号を未だ解読できていないが、ロサンゼルス地方行政当局はこの危機の名称を変えるという方法を思いついたようだ。そう。「ホームレス」という呼び名を排除することだ。

 ロサンゼルスホームレスサービス局(LAHSA) がツイッターで呼びかけたのは、「ホームレス」や「ホームレスの人々」という呼び名は、より「包摂的な」表現に置き換えるべきで、「屋外で居住する人々」や、「家を持っていない人々」などに変える必要があるということだった。この考え方は、ホームレスに纏わる「負の汚名」を排除し、「住処の有無に関わらず人間の人格を重んじる」ためだ、と同局はツイートしていた。

 「私たちの郡内の、家を持たない同胞の人々も人間ですし、その考えを言葉にも反映させるべきです」ともLAHSAは訴えていた。「時代遅れで、他人行儀で、人格を否定するような言葉遣いはやめませんか。人間中心の表現に変えましょう」 とも。

 このような表現に変える考え方の根本のひとつは、「個人の個性をしっかりと認識するためです」と同局は訴えているが、はっきりとしないのは、どうすれば「家を持たない人々」が、「ホームレスの人々」よりも個性が持てるか、という点だ。

 「私は敬意を持って路上生活者の方々に声をかけています」と、映画製作者のグレン・ダンツワイラー(Glen Dunzweiler )さんはツイートした。「路上生活者の方々は遠回しな言い方を嫌います。目を見て話してくれること、尊厳を持った応対をしてくれることが、彼らが好むことです。言葉のサラダで着飾っても、喜ぶのは、家がある人々だけでしょう」


 ホームレスという呼び名で呼ばれようが、呼ばれまいが、ロサンゼルス郡は小さな都市なら満杯になるほどの路上生活者を抱えている。同郡のホームレス人口は 2020年の初旬で6万6436人で、前年より13%増加した。それ以降、LAHSAはホームレス人口を数えるのを中止している。


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 LAHSAは、新しい数値を5月か6月までに発表する予定だったが、その発表は9月まで 延期された。ホームレス人口についての新しい数値はさらに大きな増加が見込まれている。というのも、家賃の高騰やその他のインフレが進行しているため、路上生活をせざるを得ない人々が増えているからだ。

 報道によると、ロサンゼルス郡のホームレス人口は、全米の2割を占めおり、1日平均5名の野宿者が亡くなっているという。大きなテント村の建設が、都市部の通り沿いや公共の公園内に広がっている。市当局は、次の住処を提供することなしに強制的に野営地を排除し、住民たちを立ち退かせることでずっと批判を受け続けている。また今月(8月)初旬、ロサンゼルス市議会は、学校やディケア施設仮500フィート以内にホームレスの人々のためのキャンプ地を設置することを禁じた。

 LAHSAの推定では、地方行政当局や州政府や連邦政府は、 年間8億ドルをホームレス事業に割いているとのことだ。今年の初旬にLAHSAの局長を退いたハイジ・マーストン(Heidi Marston)さんは、ロサンゼルス郡で1日平均205人のホームレスが住処を見つけているが、逆に1日平均225人が新たに家を失っているという状況を嘆いている。彼女はこう語っている。「ホームレス危機を作り出したのは私たちの社会です。しっかりとした意思を持たない限り、この危機を無くすことはできません」
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イジュームは第2のブチャだ―「ウクライナの新たな偽旗作戦」としての戦争犯罪、西側の心理作戦

<記事原文 寺島先生推薦>
Izyum is Bucha 2.0: New Ukrainian False Flag War Crimes and Western PSYOP

著者:ニコラ・チンクィーニ(Nicolas Cinquini)

出典:Internationalist 360°

2022年9月16日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月19日



 ウクライナ当局はロシアへの協力者の告訴と拘束を命じ、民間チャンネルはただ民間人の殺害を膨らませて報道している。ウクライナは2022年9月15日、イジューム付近の集団墓地で440体を発見したと偽っている。

イジュームはウクライナ東部ハリコフ州の市で、ハリコフの約138キロ南東、そしてドネツ川両岸に位置しており、ドンバス地域の玄関口といわれる。2021年1月1日時点の人口は45,884人。



 ロシア軍は3月、ウクライナ北東部のイジュームを占領した。イジュームは、ドンバスのウクライナ軍陣地の北翼に向かって、ロシア軍が進軍していた途上にある町だ。

 9月7日、ウクライナ軍がハリコフ周辺での攻勢を開始した。現地の戦力バランスは4対1(ウ軍対露軍)であり、ウクライナ軍よりも高度な火器を持っているにもかかわらず、そこでの殲滅戦を避け、オスコル川まで後退した。しかしロシア軍の砲兵と空軍はウクライナの集中部隊と隊列を攻撃した。ウクライナは1万2000人の軍人を死傷者として失ったようだが、ロシアの死傷者はわずかであった。

 9 月 10 日の朝、あるいはそれ以前に、ロシア軍守備隊と多くの民間人はウクライナの報復を恐れてイジュームを離れた。イジュームは9 月 11 日夕方にウクライナ軍が占領した。この町では戦闘はおこなわれなかった。

 この軍事的な状況は、キエフの北西郊外からのもうひとつの撤退であったブチャを思い出させる。

 3月30日、ロシア軍はブチャから撤退した。そこをウクライナ軍が31日に占領した。ウクライナ国家警察の特殊部隊は、この地域の一掃作戦を開始し、ウクライナ軍を妨害した人々やロシア軍の協力者たちを排除した。

 4月2日(それ以前ということはない)、ウクライナ当局は、人々の遺体を突然路上で発見し、集団墓地があると偽った。そして、その遺体は、ロシア軍が殺したにちがいないとした。まともな犯罪捜査はおこなわれなかった。死んだ市民の中には、ロシアの白腕章をつけていた者や、ロシアの食糧配給書を持っていた者もいた。ウクライナの民族主義者たちは、こうした行為を反逆の証拠とみなしている。

 4月11日、フランスの調査官がやってきて、死体の法医学的調査を開始した。それらの死体は、ロシアの残虐行為の犠牲者としてウクライナが提出したものだった。しかし、予想に反して、フランス憲兵「ジャンダルム」が証明したのは、その死体となった人たちは、ロシア軍の撤退前に、ウクライナ軍の砲撃の犠牲になっていた人たちだった、ということだった。

 こうした事実にもかかわらず、ブチャにおけるロシアの残虐行為という物語は、いまだにほとんどの西側メディアではカテキズム(キリスト教における教理問答のこと。つまり自明の事実を指す)扱いをされている。



 一方、ウクライナの法律は、これまでは法的空白であったロシア同調者に対する次のような法令を出した。たとえば15年の懲役刑は、ロシアの食糧配給を受けて食べたりするような協力者に対する罰則とされた。また、政府は、ロシア語のカリキュラムを実施した教師を告訴すると発表している。おっと、大事なことを書き忘れていた。民間のソーシャルネットワーク・チャンネルは、ロシア軍やルガンスク軍への協力者の個人情報を、さまざまな口実を駆使してインターネット上に晒(さら)す行為をおこなっている。



(上の画像は、サイトからのスクリーンショット)

 9月13日、ロシアの占領が解除されたイジューム地域について、ウォロディミル・ゼレンスキーはソーシャルネットワークにこう書いた。

  [.......]占領軍と破壊工作グループの残党が発見され、ロシアへの協力者が拘束され、完全な治安が回復されつつある。[...]

 ロシアへの協力者の追跡が正式に開始された。

 西側メディアは9月15日から16日の夜、ゼレンスキーの新しい声明を急いで放送した。

 [.......]そして最後に。ハリコフ州イジュームで集団墓地が発見された。そこでは、必要な手続的措置がすでに開始されている。明日にはより多くの情報――明確で検証された情報――が得られるはずである。明日はイジュームにウクライナ軍および国際ジャーナリストが入る。我々は、何が本当に起こっているのか、ロシアの占領が何をもたらしたのかを世界に知ってもらいたい。ブチャ、マリウポリ、そして残念ながらイジューム......ロシアはいたるところに死を残している。ロシアはその責任を負わなければならない。世界はロシアにこの戦争の本当の責任を取らせなければならない。我々はこのためにあらゆることをおこなうつもりだ[...]。

 イジューム解放の4日後に集団墓地とされる場所が発見され、すぐにジャーナリストが招集された。

 9月15日、物語に最初の認知的不協和が生じた。その日は、ウクライナ人ジャーナリストたちが写真をソーシャルネットワークで共有した日だったが、集団墓地の写真ではなく、ふつうの墓地の写真だったのだ。


(Denis Kazanskyi)

 9月16日になると、西側メディアから発せられる、二流の物語・プロパガンダ・偽情報の勢いが、またもや増してしまった。それは特に英国メディアからのもので、一例を上げると、お馴染みのデイリー・テレグラフからのものだった。


(上の画像は、サイトからのスクリーンショット)

 しかし、最初の映像を普通に分析すればすぐに分かることは、ウクライナ兵の墓に敬意を表して多くの十字架が立てられていたことだ。つまり、ロシア軍がそこを占領したとき、ウクライナ軍の戦闘員の死骸を仲間が放ったらかして腐らせたままにしておいたのを、ロシア軍の予備将校たちが(敬意を表して)埋めたうえで、そこに十字架を立てたのだろう。このNATOの長期にわたる戦争は、ウクライナ軍にとってまさに大虐殺であることは、私たちにはすでに分かっていたのだ。

 いずれにせよ、何百もの不明な死体は統計上の数字に過ぎない。元刑事捜査官として、私は調査結果を知りたいと思う。被害者の身元確認、各部隊が行動した日付と地図、それぞれの死因の特定についてである。急ぐのだ。立派な探偵なら、最初の48時間以内にこれらの基本的な調査を遂行するのは当然のことである。

 イジュームは第2のブチャだ――ウクライナは砲撃で死亡した民間人と自国兵士の墓を利用して、ロシアが大虐殺をしたというカードを切った。
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ロンドン市長、この冬の危機について警告

<記事原文 寺島先生推薦>

London's mayor sounds alarm over winter crisis

The UK government needs to step in and make sure people are able to meet their basic needs, Sadiq Khan says.
英国政府は一歩足を踏み込み、国民が確実に基本的ニーズを満たすことができるようにしなければならない、とロンドン市長サディク・カーンは語る。

出典:RT

2022年8月20日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月19日


A customer shops at a supermarket in east London. © AFP / Tolga Akmen

 サディク・カーン(Sadiq Khan)ロンドン市長は土曜日(8月20日)、政府が介入しなければ、英国の何百万人もの人々がこの冬、食卓に食べ物を並べられず、家を暖めることができない状況に陥る可能性があると述べた。

 「こんなことは初めてだ」とカーンはツイッターで、エネルギー価格の高騰と10%を超える記録的なインフレに言及し、書いている。

 「何百万人もの人々が、暖房か食事かの選択ではなく、どちらも手に入らないという悲劇的な冬に直面している」と彼は警告している。

 「こんな事態を引き起こしてはならない」と市長は主張し、「人々が基本的なニーズを満たせるように英国政府は介入する必要がある」と付け加えた。

 彼はこの投稿に、エネルギーコンサルタント会社Auxilioneのデータを添え、英国のエネルギー料金が10月に80%上昇し、平均で年間3,600ポンド(約4,292ドル)を超える可能性があると予測している。ちなみに、エネルギー業界の規制機関であるOfgemが2021年10月に設定した上限は、年間1,400ポンドとなっている。


 カーンは金曜日にも、ロンドンのある地区のフードバンクに物資を配布している倉庫を訪問した際に、同じ問題について話している。

 彼は、ロンドン行政府は苦境にあるロンドン市民への支援に「きちんと取り組んでいる」と断言したが、「このコスト上昇が減速する兆しはない」として、政府にもっと努力するように呼びかけた。

 「この生活費の危機が国難になるのを防ぐために、大臣たちは今すぐ行動を起こさなければならない」と市長は述べた。

 欧州でのCovid-19の大流行による経済的困難は、ウクライナ紛争をめぐる欧米のモスクワへの制裁措置と、それに伴うロシアのEUへの天然ガス供給の減少によってさらに悪化している。

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 英国は燃料を直接ロシアに依存しているわけではないが、世界市場の価格高騰で大きな打撃を受けている。
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欧州:ガス欠、氷点下の気温、薪の買い占め。この冬はどこまでひどいことになるのだろうか?

<記事原文 寺島先生推薦>

Gas shortages, freezing temperature, firewood hoarding: Just how bad could things get this winter?
Skyrocketing energy prices have prompted some Europeans to stockpile basic forms of heating and buy stoves to keep warm.
(ガス欠、氷点下の気温、薪の買い占め。この冬はどこまでひどいことになるのだろうか?
エネルギー価格の高騰により、ヨーロッパでは基本的な暖房器具を整えたり、薪ストーブを購入する人も出てきている。)

出典:RT

2022年8月20日

著者:アナスタシア・サフロノーバ(Anastasia Safronova)  RT編集者

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月18日


© Getty Images / vitranc

 ヨーロッパでは、天然ガスの価格が今年に入ってから4倍になっている。冬を前にして、エネルギー価格の高騰を予想し、消費者は代替の(古い)暖房手段である薪を選択し始めている。薪ストーブはもちろんのこと、可燃物に対する旺盛な需要が西側各国で確認されている。

 半数近くの家庭がガスで暖を取っているドイツでは、人々はより確実なエネルギー源に目を向けつつある。薪販売業者は地元メディアに、「需要に対応するのがやっと」と語っている。また、ドイツでは薪の盗難も増えている。

 隣のオランダでは、顧客がこれまでより早く木材を購入するようになった、と薪販売業界の経営者たちが指摘している。ベルギーでは、木材生産者たちが需要の対応に四苦八苦している。価格も上昇している。薪の価格はこの地域全体で上昇している。


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 デンマークでは、地元のある薪ストーブメーカーがメディアに語ったところによると、COVIDの流行が始まってから自社製品の需要は増加し、2019年には240万クローネだった収益が、今年は1600万クローネ(200万ユーロ)以上に達する見通しだそうだ。とてつもない数字だ。

 ロシアの化石燃料を段階的に排除するというEUの決定を支持せず、今年の夏にはモスクワと新たなガス購入に合意したハンガリーでさえ、厳しい冬への備えを進めている。同国は薪の輸出禁止を発表し、伐採の制限を一部緩和した。この件に関して、世界自然保護基金ハンガリーはこの問題への懸念を表明し、こう宣言している:

「このような判断は、わが国では何十年も前例がない。」

 実は、エネルギー危機の原因は、ウクライナ紛争だけではない。2021年にはすでに価格の上昇に関する意見が表明されていた。

 アテネ経済ビジネス大学社会経済環境持続性研究所の所長で、欧州環境資源経済学会会長のフィービー・クンドゥーリ(Phoebe Koundouri)教授は、「世界中で大量のLNGが買われたのは、COVIDによるサプライチェーンの中断、非常に寒い冬、非常に暑い夏、そして中国のエネルギー危機が原因です」と述べている。


© Getty Images / Westend61

 ウクライナ紛争が起きた時、ロシアに対する制裁措置とそれに対するモスクワの対応で、価格は一気に上昇した。
 「この地政学的危機の影響を受けている何百万人もの人々にとって意味のある解決策を見つけるために、欧州はNATO、ロシア、ウクライナの間で交渉役を務め、中国も議論に加える必要があります」と、クンドゥーリ教授は述べた。


「環境にやさしい」薪利用

 EUでは、エネルギー源として薪を燃やすことは何も新しいことではない。過去10年間は、EUの環境目標を達成するための最良の方法のひとつとさえ考えられていた。2009年、EUは「再生可能エネルギー指令(Renewable Energy Directive(RED)」の第一版を発表した。この指令は、EU域内で再生可能エネルギーの利用を義務付けるものである。

 この指令によると、再生可能エネルギー源とは、「再生可能な非化石エネルギー源(風力、太陽光、地熱、波力、潮力、水力、バイオマス、埋め立て地ガス*、下水処理場ガス、バイオガス)を指す」とされている。バイオマスとは、「農業(植物性、動物性物質を含む)、林業、関連産業からの製品、廃棄物、残渣、および産業廃棄物、都市廃棄物の分解可能な部分」を意味する。
埋め立て地ガス*・・・埋め立てに用いられた廃棄物に含まれる有機物が分解することによって発生するガス(英辞郎)


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 この文書では、薪を燃やすことが望ましいエネルギー源のひとつであると指摘されており、その後、多くの環境保護論者がこの点について議論している。

 活動団体「自然資源防衛協議会」が2019年に発表したデータによると、ヨーロッパ諸国は電力や熱源として木材を燃やすための補助金に年間70億ドル費やしているそうだ。また、2017年の時点で、「評価対象となったEU加盟国全15カ国において、2017年に支払われたバイオマスエネルギー補助金の半分以上がドイツとイギリスであった」ことも判明している。

 EUは最大の木質ペレット*市場で、2021年には2310万トン(MMT)を消費し、その記録は今年破られる見込だ。これは、米国農務省海外農務局グローバル農業情報ネットワークが発表した報告書によるものだ。
木質ペレット*・・・丸太、樹皮、枝葉や製材時に発生する端材などを一たん顆粒状に破砕し、それを小粒の棒状に圧縮成型した固形燃料。 木質バイオマスの一種。ペレットストーブ、ペレットボイラー、バイオマス発電、吸収式冷凍機などの燃料として用いられる。(ウイキペディア)

 「2022年のEUの需要は、バイオマスボイラー設置の支援制度や化石燃料の価格高騰に後押しされたドイツ、フランスを中心とした住宅市場の拡大に基づき、さらに2430万トンまで拡大すると予測される。EUの木質ペレット需要は過去10年間、国内生産を大幅に上回っており、主にロシア、米国、ベラルーシ、そしてウクライナからの輸入を増加させる結果となっている。」



© Getty Images / Dominika Zarzycka

 ウクライナ紛争勃発後、EUはロシアとベラルーシからの木材輸入を禁止し、ウクライナからの輸出もウクライナでの戦争が理由で途絶えた。一方、そのギャップを埋めているのがアメリカであるとアナリストたちは指摘する。過去10年間に着実に上昇してきた同国の輸出量は、「過去最高の740万トン以上の米国産木質ペレットが海外で販売された昨年を上回っている。保険料と輸送費の平均価格は、昨年の1トン140ドル前後から、170ドル近くまで上昇している」と、Wall Street Journalは海外農務局の資料を引用して報じている。


政策の再考

 現在、ドイツなどでは、薪ストーブを暖房に使う場合、補助金が出るようになっている。しかし、オランダ政府は薪ストーブに冷淡である。今年、都市部の暖房や温室でのバイオマス利用に対する補助金を廃止することを決定した。


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 英国では、同国最大の再生可能エネルギー発電所であるドラックス(Drax)をめぐる騒動が続いている。2021年、同発電所は森林バイオマスを燃やすことで8億9300万ポンド(10億ドル)の政府補助金を受け取っていた。つい最近、、ビジネス・エネルギー省長官のクワシ・クワルテン(Kwasi Kwarteng)が、国会議員の私的な会合で、ドラックス発電所で燃やす木材を輸入することは「持続可能ではない」し「何の意味もない」と述べた、と報じている。ドラックスで使用される木質ペレットのほとんどは、米国とカナダからのものである。「ルイジアナ州から調達しても意味がない・・・持続可能ではないし、地球の裏側からペレットを輸送する意味が私にはさっぱりわからない」とクワルテンは付け加えた。

 今年、欧州議会の環境委員会は、改正された再生可能エネルギー指令の下で「持続可能なバイオマス」とみなされるものを定義する新しい規則を採決した。そこで、一次木質バイオマス(基本的に未加工の木材)は再生可能エネルギー源とみなされず、奨励金の対象にもならないことが決定された。環境保護の観点からも、木材を燃やすというのは、はっきり言って疑問符がつく施策である。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のデータによると、単位エネルギー当たりの木材のCO2含有量は石炭に匹敵し、ガスよりもはるかに多い。


© Getty Images / Klaus-Dietmar Gabbert

 「全体にはっきりさせなければならないのは--少なくとも私の立場ははっきりしているが--EUは、木材の燃焼を含むバイオマス利用は大規模に行えないという事実を、すべての政策に明確に示すべきだ、ということです」とクンドゥーリ教授は言う。生物多様性の危機は、気候変動そのものよりも大きな脅威であると彼女は説明する。「生物多様性の危機は、生態系サービスの崩壊によって引き起こされます。生態系サービスの堅牢性と継続性は、生態系が豊かな生物多様性を持ち、豊かな食物供給連鎖を持続させる能力に基づいています」。 EUが電力を木材燃焼に依存することを見直すのは正しいステップであることは明らかだが、この地域はその見直し政策をより速く進める必要がある、とクンドゥーリ教授は指摘している。


危機に直面して

 「EUは、環境の質を向上させるために、多くの資金を投入し、人材や知的資源など他の多くの努力を行ってきました。今回の危機は、このような環境に関する成果の多くを間違いなく変えてしまうでしょう」とセルビアのミトロビッツァ国際ビジネスカレッジのアレクサンダル・ジキッチ(Aleksandar Djikic)教授は語っている。

 そしてそれは、今まさに私たちが目にしていることでもあるのだ:7月、欧州議会は、天然ガスや原子力発電所を気候変動にやさしい投資先とする提案を支持し、新たな環境論議を巻き起こした。


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 「2030年までにCO2排出量を55%削減し、2050年までに気候変動に影響を与えない社会を実現するというグリーン・ディールを私たち欧州人は掲げています。気候変動から目を背けないという明確な使命感を持ち、その使命感を諸政策や投資利益に振り向ける時、その過渡期ではある種の危機に直面することが予想されるのです。気候変動との戦いは、大きな変革です。健康や福祉の分野、教育分野、地域社会や都市の建設方法、土地や水の利用方法など、これほど大きな変革はかつてなかったことです」とクンドゥーリ教授は説明する。

 彼女にとって、現在の状況は環境問題への課題を放棄する理由にはならない。「予期せぬ出来事に直面した場合、2つのことが起こります。ひとつは、危機から身を守るために何をし、何をしなかったかに気づくことです。ヨーロッパは自然エネルギーにもっと早く投資する必要があったのです。もうひとつの気づきは、『よし、私は気づきが遅かった。今は現実を受け入れて、どうしても石炭と原子力を使わなければならないのだ。しかし石炭と原子力は使うにしても短期間であり、天然ガスや石炭そして原子力への新たな投資はもう行わない、自然エネルギーへの投資はどんどん進めるべきだ、ということを忘れているわけではない』という点です。」


© Getty Images / Andia

 ジキッチ教授によると、EUはこれから多く後戻りのステップを踏まなければならないだろうとのことだ。それに、EUの貧しい国々が森林破壊にさらされることも予想されるという。

「私の考えでは、EUは事前の準備なしに、この "冒険"に突入してしまった」とジキッチ教授は述べている。

 では、戦略的な目標はさておく:エネルギー価格の上昇に直面し、ただ冬に暖かく過ごしたいと願う一般市民はどうだろうか?「国民は国の政治に左右されるから、あまりたいしたことはできない。もし政治家が腰を据えて考え、解決策を見出そうとすれば、それは国民にとって良いことだろう。そうでなければ、エネルギー危機は日常生活に影響を及ぼすだろう。各国政府はもう一度、国民のために何ができるかを考え直さなければならない」とジキッチ教授は言う。

 対話こそが、解決への唯一の道である、というのがクンドゥーリ教授の結論だ。「政治家の責任として、この問題をどう解決していくかを真剣に考えなければならない。それが人類としての勝利を手にする唯一の道だ。もし、私たちが互いに相手に不利益を為すことに気を取られ続けるのであれば、最終的にこれでよかったという解決にたどり着く可能性はない」。
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ウクライナは「今すぐ交渉したほうがいい」米退役将官―キエフとNATOは、兵站の不足から戦略を変更せざるを得なくなる可能性がある、とマーク・T・キミット氏はWSJの論説で警告した。

<記事原文 寺島先生推薦>
Better for Ukraine to‘negotiate now’– retired US general
Logistical shortfalls could force Kiev and NATO to change strategy, Mark T. Kimmitt warns in an op-ed for the WSJ

出典:RT

2022年9月4日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月15日



マリウポリのアゾフスタル製鉄所で破壊されたアカツヤ自走砲

 ウクライナで紛争を維持することはNATOにとってますます難しくなっており、キエフ政権はモスクワとの交渉を考えなければならないと、退役米陸軍准将のマーク・T・キミット氏は、ウォール・ストリート・ジャーナル紙への寄稿で述べた。以下がその詳報である。

 先月、ワシントンがキエフ政権におこなった最新の軍事支援パッケージには「古く、高度でない」システムが含まれているが、そのことは「戦場での武器の消耗率が生産を上回り、ウクライナに提供された在庫がほぼ枯渇してしまったことを示しているかもしれない」と、キミット氏は9月1日(木)の記事で指摘している。

 NATO諸国の「最先端兵器システムの在庫減少」に対処することは、ウクライナとロシアの紛争が長期化することを意味する可能性が高い。このようなシナリオは、西側諸国における「ウクライナを支援している国からの圧力の増大、持続的なインフレ、暖房用ガスの減少、民衆の支持の低下」をもたらす可能性があると、同氏は書いている。

 2008年から2009年にかけて国務次官補(政治・軍事担当)を務めたキミット氏は、現在6カ月に及ぶ紛争の解決を加速させるための4つの方法を提案した。


関連記事:ドイツの与党がウクライナの「和平イニシアチブ」を呼びかけ

 第1の選択肢は、NATOの備蓄を「もっと深く掘って減らす」ことであり、加盟国が自国の防衛の必要性からこれまで差し控えてきた武器をキエフに送ることだと、退役将官は示唆した。「クラクフ*で寝かせておくよりもヘルソン**で武器を使ったほうがマシ」だから、EU諸国はこれを喜んでおこなうかもしれない、と彼は付け加えた。
*ポーランド南部の都市。NATOの軍事基地がある   **ウクライナ南部の都市

 第2の選択肢として、米国とヨーロッパの同盟国は、ゼレンスキー政権が要求する武器の生産量を増やしてみることもできる、とキミット氏は言う。しかし、そうした動きが現地の状況に直ちに影響を与えることはないだろう、とも。

 第3の選択肢は、ATACMミサイル、F-16ジェット機、パトリオットなど、より長距離のシステムをウクライナに提供し、「交戦規則を緩和し、クリミアや場合によってはロシア領内の標的を攻撃することで紛争を激化させる」ことだと、彼は書いている。しかし、このようなエスカレーションは間違いなく「モスクワからの反撃」に直面し、紛争がヨーロッパに波及する危険性が生じるとこの退役将官は警告している。

 最終的に利用可能な解決策としての選択肢は、キミット氏によれば、ウクライナが「領土の譲歩なしに(あるいは譲歩して)暫定的な外交的解決を推し進めること」だという。



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 ウクライナ大統領ゼレンスキーには現時点では、「交渉する動機はほとんどない」が、「西側からの補給の減少が、単に戦場での作戦に影響を与えるだけでなく、外部からの支援の減少というメッセージをウクライナの人々に送ることになり、軍隊に悲惨な影響を及ぼすことを認識しなければならない」とキミット氏は主張する。

 「外交的解決に乗り出すのは不愉快だし、敗北主義者と見られるかもしれない。しかし、現在の泥沼から抜け出す可能性がほとんどない以上、交渉は後回しにするより今やった方がいいかもしれない」と退役将官キミット氏は述べた。

 ウクライナ・ロシアの両者は3月下旬のイスタンブールでの会談以来、交渉のテーブルに着いていない。当初は和平プロセスの見通しについて楽観視していたモスクワも、その後、キエフ政権がトルコで達成した和平プロセスにおけるすべての進展を後退させたと非難し、ウクライナの交渉担当者に対する信頼をすべて失ったと述べた。ロシア政府関係者は、協議が再開されれば、モスクワの要求はより広範なものになると警告した。
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ジャーナリストが、暗殺リスト「ミロトウォレッツ」のサイトをテロ組織に分類し閉鎖を要求

<記事原文 寺島先生推薦>
Journalists Demand the Mirotvorets Site Be Classified a Terrorist Organization and Shut Down

著者:クリステル・ネアン

出典: インターナショナリスト360°

2022年9月10日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月14日



 2022年9月6日、「弾圧反対財団」が主催する会議がモスクワで開催された。会議の名称は、「情報ゲシュタポ:ウクライナの民族主義ウェブサイト『ミロトウォレッツ』のリストは表現の自由を抑圧し、ジャーナリストを弾圧するために使用されている」

 私はこの会議に、西側諸国数カ国の同僚とともに参加した。その国は、ドイツ、アメリカ、フィンランド、オランダ、カナダ、イギリス。

 出席したジャーナリスト全員が、「ミロトウォレッツ」の存在そのものを非難し、ジャーナリストを脅すことによって黙らせようとしてもうまくいかないと強調した。全員が、自分たちに対する暗殺予告にかかわらず、自分たちの仕事を続けることを確認した。

 「ミロトウォレッツ」のサイトには、ジャーナリストの個人情報、パスポートの写し、住所、親族の情報、車の情報(私の場合、前の車の車体番号や旧登録番号など、すべてのデータが掲載されている)などが公開されていることを忘れてはいけない。これらの情報はすべて、「ミロトウォレッツ」のリストに載っているジャーナリストを追跡することを可能にするもので、このサイトに情報を提供したのは(ウクライナの、あるいは西側の)秘密情報機関だけだと思われる。

 弾圧反対財団のミラ・テラダ代表は、「ミロトウォレッツ」のサイトに掲載されている欧米のジャーナリスト数の内訳を発表した。それによると、「ミロトウォレッツ」に掲載されている341人のジャーナリストのうち83人は、ロシア、ウクライナ、DPR(ドネツク人民共和国)、LPR(ルガンスク人民共和国)以外のジャーナリストである。また欧米のジャーナリストも、驚くべき数(80名)が掲載されている。

 また、オレス・ブジナ、アンドレア・ロッチェルリ、ゼムフィラ・スレイマノヴァ、アンドレイ・ステニン、イゴール・コルネリウク、アントン・ヴォロシン、最近ではダリア・ドゥギナなど、「ミロトウォレッツ」サイトによってデータが公開された後に殺されたジャーナリストが何人もいることをテラダ代表は思い起こさせた。

 このような個人情報の収集と公開は、ジャーナリストの名誉、尊厳、個人情報、生命の保護に関するすべての国際的な法的基準に対する凶悪な違反であるとし、「ロシア人に対する弾圧と闘う財団」の代表は、ロシア連邦保安庁FSBのトップであるアレクサンドル・ボルトニコフに手紙を送り、「ミロトウォレッツ」をテロ組織と指定するように要請した。

 ラッセル・ベントレーは、「ミロトウォレッツ」というマフィアの構造はウクライナのファシスト政権と呼応しており、ドンバスで活動する独立系ジャーナリストを現実の脅威にさらしている、と述べた。彼は、自分たちのような「視点を共有し、道徳的・思想的な考慮によってのみ導かれるジャーナリスト」は、第四帝国に対抗し、21世紀のナチスに対抗して闘っていると確信している。
訳注:第四帝国とは、ナチス政権下のドイツをいう第三帝国の次に来るものという意味でネオナチの台頭をいう語。

 カナダ人ジャーナリストのエバ・バートレットは、母国カナダがウクライナのネオナチを積極的に支援し資金を提供しており、ウクライナ兵の訓練や研修に10億ドル以上を費やしていることを付け加えた。また、カナダ政府にはナチスの協力者の直系の子孫(クリスティア・フリーランド副首相)が座っており、その出自を誇りに思っていると指摘した。バートレットは帰国したら自分の身に何が待っているのか想像もつかないが、カナダのジャーナリストたちは、ミロトウォレッツの活動にまったく無関心だという。カナダは、ウクライナが民主主義国家だと長年主張してきたし、ウクライナのメディアの自由が完全に欠如していることに常に目をつぶっているのである。

カナダ政権とナチスの関係については、当ブログの以下の2記事を参照

自称「事実検証者たち」を事実検証する--ウクライナにはなぜナチスが多いのか?(事実検証シリーズ・http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-890.html

カナダのトルドー首相など、ナチ協力者である権威主義者が、ロシアを非難している。
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-825.html

 英国人ジャーナリストのジョン・ミラーは、ルガンスク出身の若い作家、ファイナ・サベェンコバがウクライナのサイトのリストに含まれていることを報じたことを理由に、自分が「ミロトウォレッツ」の「暗殺リスト」に加えられた。ロシア支配地域にいるジャーナリストはミロトウォレッツに載っていてもあまり危険がない、というジョン・ミラーの主張に対して、私は反論した。ダリア・ドゥギナがロシアで暗殺されたこと、DPRやLPR、モスクワに住むジャーナリストも、ウクライナや西側諸国(現在多くのウクライナ人が避難している)にいるジャーナリストと同じくらい命の危険があることを思い出したからだ。

 こうした危険性を十分承知した上で、オランダ人ジャーナリストのソニア・バン・デン・エンデは、ジャーナリストは細心の注意を払う必要があると強調した。なぜなら、彼女によれば、ミロトウォレッツはCIA、NATO、米国の支援を受けて作られたものだからだ。祖国の外交政策について、オランダの戦場記者である彼女はこう述べた。「祖国オランダはロシアに対して宣戦布告なき戦争をおこなっており、ネオナチを批判する者はオランダ国家の敵なのです。このため、私が祖国に戻るのは今や危険なのです」と。

 ドンバスで起きている事実を報道したために、ドイツで3年の禁固刑に処せられるという脅迫を受けたドイツ人ジャーナリスト、アリーナ・リップも同様である。このジャーナリストによれば、弾圧は彼女の両親にも及んでいる。ダリア・ドゥギナへのテロ攻撃を受けて、アリーナは今、自分の安全にもっと注意を払うようになった。

 UMV-Lehti(フィンランドのメディア)の代表兼編集長であるヤヌス・プットコネンは、ミロトウォレッツの創設を西側情報機関と関連づけ、外国のメディアと政治家の無策を非難した。彼らこそ、重大な人権侵害とこのサイトの活動に何年も関係してきた人物を無視してきたのだ。彼にとっては、「ミロトウォレッツ」は閉鎖されなければならない。このような手法が世界の他の国々に癌のように広がるのを防ぐためにである。彼はまた、このサイトを「新しいゲシュタポ」とも呼んだ。
訳注:ゲシュタポとは、ヒトラーのナチ党政権を支えた、秘密国家警察のこと。 反ナチス、反ヒトラーの活動を厳しく取り締まった。ナチス=ドイツのヒトラー権力を支える、警察組織で、秘密国家警察 Geheime Staatspolizei の略称。

 私は、この呼び名に賛成である。しかも、私は以前から、ミロトウォレッツを「デジタル・ゲシュタポ」、あるいは「ゲシュタポ2.0」と呼んできたからだ。先の講演で述べたように、もしナチスドイツの時代にインターネットがあったら、間違いなくミロトウォレッツに似たようなサイトを発明していただろう。

 出席したジャーナリスト全員が共同書簡で国連に訴え、国連がミロトウォレッツの活動を非難する決議を採択するよう求めた。この決議が、この組織に対する国際調査の基礎となる。もしロシア連邦保安庁が弾圧反対財団の要求に応じれば、ロシアは即座にこのテロ・サイトに対して、全国的に調査し、対策を講じることになろう。「ミロトウォレッツ」が享受している免罪符に終止符を打つべき時が来たのだ。ウクライナとドンバスで起きていることについて真実を語ったがために、人々が命を落とす前に。
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ハリコフ攻撃2.0 ― 「今日の勝利」という新聞の大見出しは、明日の敗北を早めている

<記事原文 寺島先生推薦>

Kharkov Offensive 2.0: Winning Headlines Today, Hastening Defeat for Tomorrow

出典:ジオルタワールド(thealtworld)

筆者:ブライアン・バーレティック(Brian Berletic)

2022年9月10日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月14日



2022年9月10日のウクライナにおけるロシア軍の作戦に関する最新情報

- ウクライナは、ハリコフ地方を中心に攻勢を続けている。しかしそれは、ウクライナのヘルソン攻防戦が人命と装備に多大な犠牲を払って失敗した後のことである。

- ウクライナのハリコフでの戦術的な利益は、また、人命と装備に大きな犠牲を払っており、ウクライナ軍は最終的には開始時よりも弱い立場に置かれることになるだろう。

- ロシアの撤退は戦術的なものであり、新聞の大見出しよりも、長期的な勝利に焦点を合わせている。

- ロシアは、これまでウクライナの急襲に直面しても、人員と装備を何度も温存し、その後、戦線を再編成し、自分たちの思いどおりに反撃してきた。

- 戦力の相関関係はロシアに有利な状態が続いている。



参考文献:
ガーディアン紙:ロシアはハリコフに増援を送り、ウクライナの反撃を撃退する。

ビデオ「ザ・デュラン」: ハリコフ、パルミラ、「特別軍事作戦」の力。

ブライアン・ジョセフ・トーマス・バーレティックは、元米国海兵隊の独立系地政学研究者で、バンコクを拠点に「トニー・カタルッチ」などのペンネームで執筆している。
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IAEAの報告:ザポリージャ原発に52回もの「不可思議な爆撃」、だが犯人は名指しせず

<記事原文 寺島先生推薦>
IAEA Report on Zaporozhye NPP Mentions “Mysterious Shelling” 52 Times, Doesn’t Name Culprits

出典:INTERNATIONALIST 360° 

2022年9月6日

筆者:イリャ・ツカノフ(Ilya Tsukanov)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月13日


 
先週、国連の核エネルギー監視機関は強力な専門家団を大規模原子力発電所に派遣した。モスクワ当局がキエフ当局を非難しているのは、武力を用いてこの視察団の妨害を行ったこと(なお、結果は失敗に終わった)と、追撃砲・ドローン・大砲による攻撃や砲撃を繰り返す「核テロ」行為を行っていることだ。

 国際原子力機関(IAEA)は、このウクライナの核施設の安全についての待ちに待たれた報告書をついに発表した。52ページにわたる文書を要約すれば、先週に行われた専門家団によるザポリージャ原子力発電所への視察と、今年初旬に行われたチェルノブイリ原子力発電所への視察から得られた「核施設の安全性と保安性の予備調査結果」と言えるが、ウクライナ国内の他の原子力発電所についての調査結果の続報も含まれている。

 この報告書は、核施設の安全性について「7つの柱」を建てている。具体的には、核施設の物理的完全性を維持する必要性、安全性や保安性の機能の常時継続、原発職員たちの安全性と保安性の遂行義務、緊急時に備えての外部からの送電網の確保、物流網や輸送供給網の確保、放射能濃度の監視、そして「当局との伝達機能の確保」である。


不可解な砲撃
 この報告書の中身は、ウクライナ寄りの立場で記載されており、ウクライナ国内の核施設、特にザポリージャ原発において懸念されている「物理的完全性」について論じている。また、「ウクライナからの報告」を引用し、ザポリージャ原発にロシアが軍の設備を設置していることに触れ、原発の上空でロシアが巡航ミサイルを飛ばしていることで危険が増していると記述している。

この報告書には、ザポリージャ原発に52回の砲撃が行われたと記載されているが、だれがその砲撃の責任者なのかについては明記していない。(ウクライナと西側のメディアの以前の報道によれば、この爆撃はロシア軍によるものだとしていた。3月以来同施設を管理下に置くロシア軍自身が原発を砲撃したという主張だ。いっぽうロシアは、砲撃はウクライナ軍によるものだと非難している)。
   
 さらにこの報告書は、これらの砲撃の衝撃により「安全性を確保するための構造や体制、構成要素に影響が出るのをIAEAが「懸念」していることを表明している。また、先週の土曜日(9月2日)の査察から帰国したラファエル・グロッシーIAEA事務局長の発言を引用して「これまでの行為により核の緊急事態は生じていないが、核の安全性や保安性は常に脅威にさらされている。その理由は(特に放射能貯蔵施設や冷却施設における)非常に重要な安全性保護機能が打撃を受ける可能性があるからだ」とも述べている。



(以下は上のツイートの和訳)
ザポリージャ州住民は、IAEAに2万筆の署名付きの書簡を送り、ザポリージャ原発を砲撃したのはゼレンスキー政権であることを訴えている。
西側メディアは―当然のことながら!―この書簡のことについてはひと言も触れていない。映像を見せてもだめだろうな。「自由な報道」は嘘を吐き続けることしかやらないんだ。


 IAEAはザポリージャ原発の物理的安全性の維持を確実にするため、以下のことを推奨している。

「IAEAは、原発設置地域や近隣地域への砲撃を即時停止し、同原発や関連施設にこれ以上の被害がでるのを避けることを推奨する。その目的は、操業に関わっている職員の安全と、安全で安定した操業を確保するために原発の物理的完全性を維持することにある。これを実現するには、すべての関係組織が核の安全とザポリージャ原発付近の保護区域の安全確保に合意する必要がある」。

 同報告書はさらに、ロスアトム(ロシアの国営原子力企業)の専門家たちがザポリージャ原発に配置されていることについても触れており、IAEA は、これらの専門家たちが入ることにより、「意思決定が行われる際に、指揮系統や当局からの指令により通常の操業が阻害され、意思疎通に摩擦が生じる可能性がある」ことを懸念している、との記載もある。この報告書は少なくとも、同原発が正規の管理と職員によって問題なく操業されていることを認めているが、職員が砲撃事件や人員不足による不安や圧力に晒されているとも述べている。(ただここでも、誰による砲撃なのかについては明らかにされていない。)



 さらにこの報告書には、4月にIAEAが行った旧チェルノブイリ原発への視察での発見についても記載されている。その記載には、春の間に職員たちは「精神的にも肉体的にも非常にきつい状況」に置かれていて、それは特に、ロシア軍の支配下に置かれ、外部電力が喪失した後に緊急のディーゼル発電機からの電力に依存するようになってからだ、と書いてある。ただしこの文書では、同原発の電力源を攻撃したのは誰かについては明らかにされていない。ロシア軍によれば、その攻撃を行ったのはウクライナ軍だとのことだ。ロシア軍は3月末に旧チェルノブイリ原発から軍を引き上げたが、それは状況を沈静化するためだった。

 IAEAの報告書は「非常に厳しい現状にもかかわらず、IAEAはウクライナでの保障措置の実施を継続した」と自画自賛して締めくくられている。

ザポリージャ原発はヨーロッパで最大の原発で、通常時は、ウクライナ国内の原子力発電所から産出される電気の約半分を賄っていて、ウクライナの年間電気生産の20パーセントを占めている。ロシア軍は3月以降、同原発施設とその6基の原子炉を支配下に置いている。そしてモスクワ政府と地元当局は、ウクライナ軍がこの5ヵ月半にわたって原発を攻撃し、核による大惨事が差し迫っているとウクライナ軍を繰り返し非難している。

 ザポリージャ原発は1980年代にソ連により建設されたが、2014年にユーロマイダンのクーデター以降、緊急核停止措置が数回出されている。2014年には、技術的な欠陥が理由で原子炉の一基が停止し、2014年から翌2015年の初旬にかけて、ウクライナ国内中での計画停電を余儀なくされた。2020年、ウクライナの原子力産業従事者たちは原子力産業界における現状に警告を発した。それは「新たなチェルノブイリ原発事故」が起こる危険性を訴えるものだった。その警告では、その要因として、安全性の基準が緩いこと、資金が決定的に枯渇していること、無能な運営、米国製の核燃料棒に変えたことを挙げている。
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ザポリージャ原発で最後の1基が停止される―ロシアが管理する施設の6番目の原子炉の「冷温停止」が9月11日(日)早朝に実施された。

<記事原文 寺島先生推薦>
Last power unit switched off at Zaporozhye nuclear plant
The ‘cold shutdown’ of the sixth reactor at the Russia-controlled facility was performed early on Sunday

出典:RT 

2022年09月11日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年09月13日


ザポリージャ原子力発電所の原子炉

 ロシアが管理するザポリージャ原子力発電所で、最後まで稼働していた電源装置が9月11日(日)未明に停止された、と地元当局とウクライナの事業者は述べた。

 6番目の原子炉は「午前3時45分に停止した。今は発電していない」と、ザポリージャ州政府のウラジミール・ロゴフ氏はロシア国有通信社RIAノーボスチに対して語った。

 停止を決定したのは、ウクライナによる原発への砲撃が続き、送電線が損傷したためであるという。攻撃のために、原子炉とタービンが常に変化するモードで動作することを余儀なくされ、事故の危険性が生じたからだ、と同当局者は説明した。

 ロゴフ氏によると、同基はすでに数日前から最小限の能力で稼働していたという。

 ウクライナの国営企業エネルゴアトム社も、最後の1基のいわゆる「冷温停止」を確認し、ザポリージャの施設が完全に停止したことを明らかにした。

 ヨーロッパ最大のザポリージャ原子力発電所は3月からロシア軍が制圧しているが、現在もウクライナ人スタッフが運営している。


関連記事:ウクライナは電力供給を自ら断ち切ったと非難されている

 ザポリージャ原子力発電所の停止にもかかわらず、近隣の町エネルゴダール市へのエネルギー供給は通常通りおこなわれていると、地元当局は断言した。

 原子力発電所とエネルゴダール市はここ数週間、ミサイルや砲撃による攻撃を繰り返し受けており、ロシアはこれをキエフ軍によるものと非難している。また、ウクライナの破壊工作部隊による発電所奪還の試みが数回失敗したことも報告している。

 モスクワは、このような攻撃が続くと、1986年のチェルノブイリ事故をしのぐ原子力災害を引き起こし、ヨーロッパの多くの国々に影響を及ぼすと警告してきた。

 ウクライナの主張では、ロシアが発電所を軍事基地化し、キエフ政権に責任を負わせるために施設を自分で砲撃しているとしている。

 国際原子力機関(IAEA)は、9月上旬に査察団を派遣し、原発へのすべての攻撃を「直ちに停止せよ」と要求したものの、攻撃者の特定は差し控えていた。
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ロシア軍、部分的撤退を説明ウクライナの攻勢が続く中、ロシア軍はハリコフ地方の複数の集落から撤退した。

<記事原文 寺島先生推薦>
Russian military explains partial withdrawal
Russian units have left multiple settlements in the Kharkov region amid a Ukrainian offensive

出典:RT

2022年9月10日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月13日


訳注:
 今回のロシア軍の「撤退」はマクレガー氏によれば、オデッサを占拠するという大規模な攻勢をかけるための予備的な「成形作戦“shaping operations"」であるという。下記翻訳を参照。

「ウクライナは反撃に失敗した」 元ペンタゴン顧問ダグラス・マクレガー大佐は、ロシア軍が間もなくウクライナ南部の港湾都市オデッサを占領する可能性があると見ている。
 
 そのうちの一部を転載すると・・・
<国防総省の元職員マクレガー氏は、前線の現状についてコメントを求められた際、ロシア軍人の大半は8月の攻撃再開に向けて休息を与えられ、「再整備、再編成」されていると述べた。
 その兆候はすでに「特にウクライナ南部」に現れているという。そして、ロシア軍が重要な港湾都市オデッサを占領し、ウクライナは「内陸国」になると予言した。
 「ウクライナは反撃の糸口をつかめずにいる。だから、ウクライナがこれを止められるという根拠はあまりない」と元ペンタゴン顧問マクレガー氏は主張した。さらに、ウクライナ東部のハリコフ以南でのロシア軍の活動は、後に大規模な攻勢をかけるための予備的な「成形作戦“shaping operations"」のように見えるという。>




ハリコフ地方で移動中のロシア軍車両

 ロシア国防省は、ウクライナのハリコフ地方全域の複数の場所からの部隊の撤退を確認した。キエフ政権が同地域で攻勢をかけている中での展開となった。

 ロシア軍は9月10日(土)の声明で、「特別軍事作戦の目標を達成するため、バラクレア市とイジュム市の地域の部隊の再編成が決定された。ドネツク方面への取り組みを強化するためである」と述べた。

 この地域に駐留していた部隊は、過去3日間、ドネツク人民共和国の領土に「再配置」されたと、同省は主張している。作戦の間、ロシア軍は「敵の部隊の実際行動を模倣した多くの撹乱・威嚇行動」をおこなったと付け加えたが、この作戦に関する更なる詳細については明らかにしなかった。

 「ロシア軍への被害」を防ぐため、ロシア軍はこの地域のウクライナ軍に「強力な」大砲・ミサイル・航空機による攻撃を加えており、過去3日間で100以上の装甲車や大砲を破壊し、「2000人以上のウクライナ人と外国人戦闘員」を排除したと、同省は述べている。
 
 この撤退は、8日(木)にハリコフ地方で開始された大規模なウクライナ軍による攻撃の中でおこなわれた。このウ軍の攻撃は、他の地域すなわちロシアが支配するウクライナ南部の都市ヘルソン市付近にウ軍が進軍する取り組みの後に行われたものだった。
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「平和の構築者」―このウクライナのサイトには数十万人が暗殺対象者としてリストアップされている。中には米国人の名前もある。

<記事原文 寺島先生推薦>

'Peacemaker' of death: This Ukrainian website threatens hundreds of thousands with extrajudicial killings — some are Americans
暗殺対象になる「平和の構築者」―このウクライナのサイトに載ると超法規的な殺害の危険に晒される。その数は数十万人にのぼり、中には米国人の名前も出ている。

筆者:オルガ・スクハレフスカヤ (元ウクライナ外交官)

出典:INTERNATIONAL360°

2022年8月26日

<記事飜訳 寺島メソッド飜訳グループ>

2022年9月13日


https://cdni.russiatoday.com/files/2022.08/xxl/630754ed85f54026e0639cdb.jpg


 「ウクライナの敵」のリストを作成する「ミロトウォレッツ(Mirotvorets)」は、8年間も罪を問われることなく活動してきた。

 この8年間、一般には知られていないウクライナの活動家たちが、「人民の敵」のリストを堂々と作成してきた。何十万人もの人々が、裁判を受けることなく犯罪者とされてきたのだ。

 その中には、ロシア市民だけでなく、ウクライナの野党議員やブロガー、ヨーロッパの政治家、米国市民も含まれている。少なくとも、このリストに加えられることは、ウクライナでの生活を困難にする烙印を押されたことであり、投獄や、場合によっては殺されることも正当化される。この殺害されることもあるという実例が先週末にダリア・ドゥギナさんに起こった。彼女は世界的に有名なロシアの哲学者アレクサンドル・ドゥーギン氏の娘で、その名前が父とともにそのリストに載っていた。

 ロシアの放送局RTは、超法規的処刑の助けを借りて自国に「平和」をもたらそうとするウェブサイト「ミロトウォレッツ」(「平和の構築者」)の背後にあるもの、そして国際社会からの非難にもかかわらずウクライナ当局がこれに対して何もしなかった理由について次のように説明している。


「ミロトウォレッツ」とは?

 ウクライナの「ミロトウォレッツ」のウェブサイトのメインページには、この放送局は「ウクライナの国家安全保障、平和、人道、国際法に対する犯罪の兆候を研究するセンター」であると書かれている。また、学者、ジャーナリスト、その他の専門家のグループによって設立されたという記述もある。しかし、彼らの名前は誰も知らないし、この放送局自体もウクライナで正式に登録されたことは一度もない。

 にもかかわらず、この団体は2014年8月から9年間も活動を続けている。そして、自らを「独立した非国営メディア」と位置づけているが、その創設にはやはり政府関係者が関与している。実際、このウェブサイトは、ウクライナ内務大臣の元顧問であるアントン・ゲラシチェンコ(下の写真)の主導で出現した。



 「ミロトウォレッツ」の活動は、つまるところ、サイト管理者が何らかの形でウクライナ国家を脅かすと考える人物の個人情報を公開することである。

 同サイトの管理者は、同国の法執行機関に対して、掲載された人物の個人情報や活動内容に注意するよう求めている。しかし、街頭の過激派が「ミロトウォレッツ」のリストを参考にすることもある。

 そして、自宅の住所やその他の個人情報を暴露された不運な人物が死亡するたびに、そのサイトは更新される。その死亡者の名前はラスベガスのカジノを思わせる明るい点滅文字でが表示され、その写真は「粛清」という無慈悲な表示で抹消される。

 例えば、現在の「ミロトウォレッツ」のウェブページのデザインは、ロシア人ジャーナリストのダリヤ・ドゥギナの場合は以下のような画面になっている。彼女は、先述したように、先週末に自分の車の中で無残にも殺された哲学者アレクサンドロの娘である。
ロシア連邦保安庁(FSB)からの非難にもかかわらず、ウクライナはその殺人への関与を否定している。しかし、「ミロトウォレッツ」では、ドゥギナの死は、短く非人間的なコメントに加えて、次のような陰謀論が添えられている。「種族間の意見の不一致のためにファシスト・ロシアの特殊機関(ママ)によって粛正された」。

https://


誰が、どのように「ミロトウォレッツ」のリストに載せられるのか?

 サイトの管理者によると、「ミロトウォレッツ・センターが継続的な学術研究のために用いる情報は、印刷物やソーシャルネットワークに投稿された公開資料、ウェブ出版物、個人のウェブページ、専門のフォーラムやブログ、そしてラジオやテレビ放送から取得している」ということだ。

 しかし、それはそう単純な話ではない。同センター編集部によると、このサイトは2017年に顔認識システム「IDentigraF」を立ち上げており、その設置には40カ国の献金者からの資金提供を受けている。また、このデータベースには、「ウクライナとその国民に対して犯罪を犯した人物」の画像が200万枚以上登録されている、ということだ。

 また、2016年までは、ウクライナ内務省やウクライナ治安局(SBU)だけでなく、その他の国内の法執行機関も「ミロトウォレッツ」の賛同者に名を連ねていた。それゆえ、「煉獄」*―住所、電話番号を含む個人情報や書類などが公開されるサイトの1区画―に行き着いた人々の個人情報はソーシャルネットワークや新聞からだけ入手したのではないと結論づけざるを得ない。
*カトリック教で、死者の霊魂が天国に入る前に、火によってその罪を浄化するとされる場所。天国と地獄との間にあるという。ダンテが「神曲」の中で描写した。



 2019年時点で、最新の「ミロトウォレッツ」のレポートが発表されたとき、同サイトには「3万人以上のロシアの戦争犯罪者」、「7万人以上のテロリスト、過激派、傭兵、侵略者ロシアが支配する違法な武装組織や私兵のメンバー」、「約4万人のウクライナの国境に対する明白な侵害者」、「4万4000人以上の祖国への裏切り者」、「6000人以上の反ウクライナ宣伝家」などのデータが掲載されていた。

 5年間で合計20万人近くが「犯罪者」と宣告されている。

 しかし、この数字は完全とは言い難い。というのも、同サイトは日々、個人情報の収集を続けているからだ。最近では、ウクライナ非武装化のためのロシアの特別軍事作戦の参加者や、ロシアの政治家もリストに加えられている。ただし、キエフの公式政府を支持する同サイトの作成者によれば、その程度は十分ではないという。


推定による有罪

 「ミロトウォレッツ」の制作者は、同センターは「ウクライナの現行法、およびわが国が批准した国際的な法律行為に厳格に従って活動を展開している」と主張している。 その例として、彼らはウクライナ憲法第17条に言及し、国民に国の主権と領土の一体性を守ることを義務付けているとしている。

 また、「ミロトウォレッツ」は、その活動を法的に正当化するために、情報、テロ、プライバシーに関する法律や、1981年に採択された「個人データの自動処理に関する個人の保護に関する条約」にも言及している。しかし、上記の法律の中で引用されている条文は、「国家の安全を守る 」ことに重点を置いているものなので、彼らが自分たちの都合に合わせて選んだと言える。

 法的に言えば、「ミロトウォレッツ」のやり方は極めて議論の余地がある。まず、司法の基本原則の1つは推定無罪であり、これは特に欧州評議会の「人権及び基本的自由の保護に関する条約」にも反映されている。


欧州宮殿。欧州評議会があるEU機関の敷地。© Andia / Universal Images Group via Getty Images

 「ミロトウォレッツ」がデータを収集する犯罪には、「ウクライナの主権と領土の一体性に対する侵害」、「祖国に対する裏切り者」、「過激派やテロリストを助ける」、「戦争プロパガンダ」の流布、「民族憎悪、ファシズム、反ユダヤ主義の扇動」などがあり、ウクライナの刑法に含まれているものである。しかし、こうした行為で有罪にできるのは裁判所だけであり、「ミロトウォレッツ」にはそうした権限はない。

 「ミロトウォレッツ」は「犯罪」を犯した人を非難するだけでなく、「反ウクライナ・プロパガンダ」の作成や、「反ウクライナ・プロパガンダのイベントへの参加」など、より曖昧な犯罪もリストに入れている。またリストには、「ウクライナのロシア正教会の影響力を持つ代理人」という項目まである。しかし、こうした分野は、表現、良心、宗教、思想、集会、結社の自由に関する「欧州人権条約」の9条から11条で規制されている。したがって、「ミロトウォレッツ・センター」の管理者は、本質的に、自分たちに都合の悪い意見や信念を持つ人々から、表現の権利を奪おうとしていると考えられる。

 また、同サイトの「センターとのやり取り・協力について」には、「犯罪者」とその親族の個人情報を報告するためのサンプルがあり、住所、電話番号、写真、SNSのプロフィールへのリンク、彼らの「犯罪」(つまり「過激派」「テロリスト」という分類)の欄がある。つまり、これらすべての項目が裁判や捜査なしで報告できるようになっている。

 公開された「犯罪者」は、その妻、子供、両親とともに、自分たちが「煉獄」にいることさえ知らない。ましてや、自己弁護や証人への反対尋問、告発者への反論の機会も与えられていない。


高貴な一族のスキャンダル

 「ミロトウォレッツ」がクリミアやドンバスに住むウクライナ人、ウクライナの野党政治家やジャーナリスト、ロシアの住民や役人に関する情報の公開にとどまっている限り、この悪質な組織は「文明世界」では気づかれずに済んだ。しかし2016年、そのスキャンダルが勃発した。「ミロトウォレッツ」が「テロ組織(つまり、ドネツクおよびルガンスク人民共和国)に協力した」として多数のメディアの職員の情報を公開したからである。その対象は、BBC、ロイター、アルジャジーラ、AFP、ルモンド、ガーディアン、ルフィガロ、フランス24、エルムンド、CBSニュース、CNN、スカイニュース、デイリーテレグラフ、タイムズ、チェコ・テレビ、ラジオ・フランス、チャンネル9オーストラリア、AP通信、日本のテレビ局、デイリー・メール、ディ・ヴェルト、ワシントンポスト、ニューヨークタイムズ、さらには、ヒューマン・ライツ・ウォッチをはじめとする多くの団体の代表者にも及んだ。

 米国務省のエリザベス・トルドー報道官(下の写真)は当時、米国は 「戦闘地域にいるジャーナリストのデータベースをハッキングし、個人情報を公開したことに非常に懸念を抱いている」 と指摘した。


エリザベス・トルドー © Henning Kaiser / picture alliance via Getty Images

 OSCE(欧州安全保障協力機構)の「メディアの自由」担当代表であるドゥニャ・ミヤトヴィッチは、「ジャーナリストが発言や執筆のために脅迫されることは、断じて容認できない。政府はジャーナリストの安全を確保するためにあらゆる手段を講じるべきです。ジャーナリストに対するネット上の脅迫が相次ぎ、状況を悪化させています」と述べている。

 ジャーナリストや人権擁護者に加えて、政治家も「ミロトウォレッツ」のデータベースに登録されている。同サイトは、クリミアを訪問したドイツ連邦議会議員の情報を公開しており、そのリストには、エフゲニー・シュミット、ライナー・バルザー、グナール・リンドマン、ハロルド・ラッチ、ニック・フォーゲル、ヘルムート・ザイフェン、ブレイクス・クリスチャンといった名前が含まれている。

 10人の米国市民とフランスの俳優サミー・ナセリも同じ「犯罪」で「煉獄」に追いやられた。このサイトによると、ギリシャの「ウクライナの敵」には、元エネルギー大臣パナヨティス・ラファザニス、漫画家スタティス・スタヴロプロス、元空軍中将パブロス・クリストウ、「ロシアのアテネ」編集者‎パベル・オノイコ‎‎が含まれている。ギリシャのアレクシス・チプラス前首相もクリミアを訪問したが、ペトロ・ポロシェンコへの支持を表明したため、データベースから削除された。「ミロトウォレッツ」のリストには、一流の政治家も名を連ねている。ドイツのシュローダー元首相、クロアチアのゾラン・ミラノビッチ大統領、ハンガリーのヴィクトール・オルバン首相、米国の権威ある外交官ヘンリー・キッシンジャーも最近追加された。

 「ミロトウォレッツ」のリストに載ることは、一般市民やジャーナリストだけでなく、政治家に向けられた脅迫の正当な理由として使われてきた。悪名高く、最近罷免された駐ドイツ・ウクライナ大使のアンドレイ・メルニク氏(下の写真)は「議員になろうとする数人の無責任な旅は、彼らにとって非常に、非常に残念な法的結果をもたらすことがある」「私たちの警告がまだ真剣に受け止められていないのは残念なことです。さて、どうなることやら」と書いている。一方、国連のウクライナ人権監視団副団長のベンジャミン・モロー氏は、この問題は純粋に法的なものから実利的なものへと移行しつつあると強調し、一部の銀行は「ミロトウォレッツ」のデータベースに含まれる人物への融資を拒否していると述べた。


アンドリー・メルニク © Christoph Soeder / POOL / AFP

 野党政治家のオレグ・カラシニコフとジャーナリストのオレシア・ブジナが、「ミロトウォレッツ」のデータベースに住所が掲載された後に殺害された騒動は、広く知られているところである。もちろん、「後」という言葉が「原因」を意味するわけではないが、この悪名高いセンターの作成者たちは、それに悪乗りした。この殺人事件についてのコメントで、彼らはこう書いている。「代理人404は再び頭角を現した。本日の戦闘任務の成功により、短期休暇を付与する」 と書かれている。


「ミロトウォレッツ」の閉鎖

 このウェブサイトは閉鎖せよという要求が繰り返しなされてきた。2018年、ドイツはゲルハルト・シュローダーのデータベースへの掲載に抗議するジャーナリストや人権活動家たちの大合唱に参加した。閣議決定には「ドイツ連邦共和国政府はミロトウォレッツを断固非難し、ウクライナ政府および当局がその削除に協力するよう要求する」とある。

 2021年2月、欧州議会は次のような決議を採択した。「EP(欧州議会)は、ウクライナでは脅迫、ヘイトスピーチ、政治的圧力が政治的目的のために広く利用されて政治情勢が悪化していることを遺憾に思っている。ウクライナ当局が過激派や憎悪に満ちたグループおよび「ミロトウォレッツ」のようなウェブサイトの活動を強く非難し、禁止するよう要請する。そういった活動は社会に緊張をもたらし、ジャーナリスト、政治家、少数民族のメンバーを含む数百人の個人データを悪用することになるからだ」。

 しかし、これまでのところ、「ミロトウォレッツ」の閉鎖を求める声は、実際には、ジャーナリスト、人権擁護者、そして国会議員の合唱にとどまっている。彼らはウクライナに関して法的拘束力のある決定権を持っていない。欧州評議会や欧州委員会が、キエフがEU連合協定を履行するために満たすべき要件として提示したリストの中にもこの問題は含まれていない。また、ウクライナの改革実行のための欧米からの支援の配分は「ミロトウォレッツ」の閉鎖を条件としていない。また、プライバシーと推定無罪を尊重するようキエフ当局に圧力をかける措置もとられていない。


2022年6月16日、ウクライナのキエフで、ドイツのオラフ・ショルツ首相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、イタリアのマリオ・ドラギ首相、ルーマニアのクラウス・ヴェルネル・イオハニス大統領と会談するヴォロディミル・ゼレンスキー大統領。© Ukrainian Presidency / Handout / Anadolu Agency via Getty Images

 欧米当局が見て見ぬふりをしているため、ウクライナ政府はこの言語道断なサイトの活動に目をつむって、国際人権擁護団体の要求をさまざまな口実で退けることができた。例えば、国連の閉鎖要求に対して、ウクライナ議会の元議長であるドミトリー・ラズムコフは「議会にはメディアを閉鎖する権限はない」と発言している。

 とはいえ、ウクライナ当局が特定のメディアを閉鎖しようとするときには、躊躇なくそうする。例えば、国家安全保障・防衛会議はゼレンスキーにメディアを閉鎖する権限を与えている。例えば、野党系テレビ局「112 Ukraine」、「NewsOne」、「ZIK」、その後「First Independent」、「UKRLIVE」、さらに「Strana」というオンライン出版物などが閉鎖されている。

 「ミロトウォレッツ」のサイトは今日もなお、新しいデータで継続的に更新されている。

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刀を抜く:日本は中国に対決する準備をしているのか?

<記事原文 寺島先生推薦>
Drawing the sword: Is Japan getting ready to move against China?

Relations with Beijing are crucial for regional trade, but is Tokyo ready to put it all on the line over Taiwan and Washington’s favor?

(刀を抜く:日本は中国に対決する準備をしているのか?

北京との関係は地域貿易にとって極めて重要だが、東京は、台湾やワシントンに味方して、すべてを賭ける準備をしているのだろうか? )

出典:RT

筆者:ティムール・フォメンコ(Timur Fomenko)  政治評論家

2022年8月24日

<記事飜訳 寺島メソッド飜訳グループ>

2022年9月12日


ファイル写真: 2016年5月20日、日本の古屋圭司衆議院議員、台湾の蔡英文総統。©ウィキペディア

 最近の報道によると、日本政府は中国に向けた1000発以上の弾道ミサイルの配置を検討しており、この動きは東京と北京の間の緊張を大きくエスカレートさせることになるという。

 地域の安定に対する脅威や日本国憲法が課す制限を考えると、これが実現するかどうかは不明だが、この時点で、日中間の地政学的対決が新たな現実となっていることは否定しようがないだろう。

 日中両国は経済的には大きく統合されていても、心の底では宿敵であり、両国の地政学的な野望は全面的な衝突の危機を深めているのである。

 中国の台頭は、かつてアジアで支配的だった日本の地位を脅かし、特に係争中の領土は、北京が奪還に成功すれば、東京に対して戦略的に王手をかけることになる。東シナ海や釣魚島・尖閣諸島の問題もそうだが、最大かつ最も緊急な火種は、実は最近話題の台湾島である。

 日本は今、台湾の自治権の継続が台湾の生存に不可欠であることを公にしている。なぜか?台湾が中国本土と統一されれば、北京が日本の南西部周辺の海洋支配を獲得することになるからだ。

 その結果、日本は台湾に対する支援の賭け金を増やしている。今回の一連の議員訪台の前後にも、日本からも国会議員団が訪台している。先日暗殺された安倍晋三は、現在の日本の修正主義的な外交政策の立役者であり、台湾の限りない支持者であり、自らも台湾を訪問する予定であった。


関連記事:もはや除け者ではないのか?ロシアと中国が北朝鮮を「正常化」し、米国にアジアの頭痛の種を残す可能性がある。

 同様に、かつて日本の植民地支配下にあり、中国から併合された台湾も、親日感情を大きく高めている。安倍首相が殺害された後、同国が示した国民の弔意の大きさは、それを如実に物語っている。

 そして、日本国憲法の制約はあるが、中国が台湾を侵略した場合、日本が実際に軍事的に台湾を防衛するのではないかという憶測が広がっている。

 1976年の日中国交回復の主要条件であった「一つの中国」政策にもかかわらず、日本が台湾を失うわけにはいかないことは明らかだ。

 このため、東京は時間との戦いになっている。防衛費を増やし、中国の軍事力の増大に対抗するために、現行の平和志向の憲法に抜け穴を見つけようとしているのだ。

 そうすることで、中国を封じ込めようと協調している他の「クワッド」グループ[日米豪印]メンバーから、特に米国とオーストラリアからの支援を得ることができる。
 インドもまた、重要なパートナーである。ニューデリーは、係争中の国境をめぐる中国との緊張を悪化させないために、台湾問題から距離を置いているが、それでも日本を、北京を視野に入れた長期的な戦略パートナーとして見ている。

 日本はまた、韓国をこのゲームに引き込もうとしており、この動きは米国によって後押しされている。右派の尹錫悅(ユン・ソギュル)新大統領は、北朝鮮問題では日本との協力に前向きだが、対中超タカ派姿勢を見せるという期待は実際には霧散し、前任者[文在寅]の慎重姿勢を引き継いでいる。ナンシー・ペロシの悪名高い台湾訪問の後、韓国大統領はペロシとの面会を避けたが、日本はペロシの訪問を全面的に歓迎した。


関連記事:ペロシ訪中は中国への警鐘となる。米国に宥和的では決してうまくいかない

 日本は間違いなく、アジアでナンバーワンの、そして最も米国支援に前向きな国である。

 しかし、それにもかかわらず、北京とは隣国であり、重要な貿易・投資パートナーである関係を揺るがすことには限界がある。歴史的な敵対関係にもかかわらず、両者のビジネス上の結びつきは非常に深い。中国経済への攻撃は、日本にとっても大きな痛手となる。特に自動車、電子機器、その他の消費財の輸出に関しては、日本も中国市場を失うわけにはいかない。

 中国政府は、気まぐれに反日感情を煽り、大規模なボイコットや財産の破壊にまで発展させることがある。しかし、このような抗議行動は、2012年に尖閣諸島をめぐって発生したのが最後である。

 このように、日本はアメリカの後ろ盾がありながらも、ある意味、微妙な立場にあることを思い知らされる。中国の経済力はとうに日本を凌駕し、軍事力の拡張はとどまるところを知らない。

 中国の民族主義コメンテーターである胡志人(元『環球時報』編集長)は、「日本が1000発のミサイルを中国に向けるなら、中国は5000発を打ち返し、日本国内の米軍基地を標的にするだろう」と断言した。

 しかし、それでも中日関係は友好的であるべきだと言う。このような経路で敵対することを、何が何でも中国が選択するわけがない。

 ここで疑問が生じる。日本は台湾を守りながら、中国を全体としてかわすことができるのか。一筋縄ではいかないからこそ、日中関係は一方で、長年のライバル意識と歴史的怨恨の間で、そして他方で、抑制と相互依存の間で揺れ動き続けるのだろう。


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記者たちが目撃したウクライナ軍の妨害行為、ザポリージャ原発を急襲したが失敗

<記事原文 寺島先生推薦>
Journalists Witnessed Ukrainian Saboteurs’ Failed Storming of Zaporozhye NPP

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年9月4日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月12日



 ラファエロ・グロッシー事務局長が率いる国連のIAEA(国際原子力機関)の査察団が9月1日、ザポリージャ原子力発電所に到着し、現地を視察した。この原発はロシアによるウクライナでの特殊軍事作戦が始まった最初の月から、ロシア軍の統制下に入っている。

 ロシア国防省(MoD)の発表によると、9月1日にウクライナの町エネルゴダルに到着した記者たちが、ウクライナの妨害工作員がザポリージャ原子力発電所(ZNPP)の襲撃に失敗したのを目撃したという。 国防省は日曜日(9月4日)の声明で、記者たちは防空壕に隠れながら、ウクライナの大砲による原子力発電所の領域とエネルゴダールの住宅地に対する大規模な砲撃を、自らの目で確認したと述べている。


 その声明によると、ロシア側は、国際原子力機関(IAEA)事務局の要請により「60名を超える記者が安全に原発施設へ到着できるよう、その安全に万全を尽くした」という。 記者たちは、フランス、米国、中国、デンマーク、日本、ドイツ、トルコ、カタール、アラブ首長国連邦、韓国、ベトナムなどから来ていた。

 さらにロシア国防省の声明によると、ウクライナ、米国、そして英国の特別に選ばれ、訓練を受けた「ジャーナリスト?」たちは、60名を超える各国からの記者団に対してザポリージャ原子力発電所(ZNPP)をウクライナ当局の管理下に置くことについて記者会見をすることになっていた。それも、ウクライナ政権とウクライナ政権を支援する西側が、IAEAの代表団がいる面前でZNPP奪取作戦をいろいろ準備する真只中でのことだ。

 さらに同省は、9月1日にザポリージャ原発に向かっていたIAEAの車列に、ウクライナと西側の記者たちが乗った車を許可なく入り込ませようとする動きがあったことも伝え、これらはウクライナ当局による挑発行為だとした。

 「ウクライナ当局が挑発行為を行おうとする動きがありました。 これは、IAEAの事務局や国連の安全保障理事会の同意のもとでIAEAの査察団が決めた行程を妨害しようとするものです。同意に基づく詳細な文書に従って、ザポリージャ州内でロシアが管理下に置く領域への移動は、ロシア国防省が事前に国連安全保障理事会に提出した詳案に基づいて実行されることになっていました」と同省は強調した。

 この声明が出されたのは、ロシア国防省が、ウクライナ軍(AFU)の2隊の妨害組織を撃退した、と発表したあとのことだ。その妨害組織は今週(9月第1週)始めに、ザポリージャ原発付近3キロ(1.8マイル)のところに上陸していた。ザポリージャ原発は、エネルゴダール市近郊のドニエプル川の左岸の土手に位置するが、原発設置台数とエネルギー出力において、ヨーロッパ最大の原発である。


 ウクライナでのロシアによる特殊軍事作戦が行われている間、この原発とその周辺地域はロシア軍の統制下にある。ロシア国防省によると、エネルゴダール市と周辺諸村落とザポリージャ原発は、ウクライナ軍からの激しい砲撃の標的にされ続けている、とのことだ。 いっぽうウクライナ当局は、その砲撃の責任はロシア側にあると非難している。ザポリージャ原発周辺の現状は、当地域で原発事故が起こる可能性があるとして、国際社会から懸念の声が上がっている。

 2月24日、ロシアはウクライナの「非武装化」と「非ナチ化」を求めて特殊軍事作戦を開始した。これは、ドンバス人民共和国からの要請に応えて、ウクライナ軍の攻撃から防衛を求めたものだった。
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キエフ政権に疑問を呈する者を対象としたウクライナの公開「暗殺リスト」を、西側メディアは無視。「ミロトウォレッツ」は、独立系メディアやロシアのメディアではトレンドの話題だが、国際的な主流報道機関ではそうではない

<記事原文 寺島先生推薦>
Western media continues to ignore Ukraine's public 'kill list' aimed at those who question the Kiev regime
The Mirotvorets list is an issue trending in independent and Russian media, but not in the mainstream international press

出典:RT

2022年9月10日


筆者:エヴァ・バートレット:カナダの独立系ジャーナリスト。中東の紛争地帯、特にシリアとパレスチナに長年取材に訪れ、そこに4年近く住んでいる。

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月11日



 今週、多くの国際的なジャーナリストとロシアのジャーナリストがモスクワに集まり、さらにオンラインでも参加し、いまや悪名高くなったウクライナのミロトウォレッツという「暗殺リスト」について議論した。議論に参加したジャーナリストの多くは、自らがそのリストに含まれている人たちだ。

   訳注:「ミロトウォレッツ」とはウクライナ語で「平和実現者」という意味がある

 真面目に受け取らない人もいるが、8月20日に起きたダリヤ・ドゥギナの恐ろしい自動車爆弾殺人事件と、その後、その事件がミロトウォレッツの登録に「清算」と記されたことで、リストの背後にいる人々が、実際にリストに載せられた人の死を望んでいることがかなり明白になった。

 同じことが、ロシアのフォトジャーナリストのアンドレイ・ステーニンや、イタリア人のアンドレア・ロッチェルリなど、暗殺リストに載せられ、その後、殺された多くの人たちにも起こった。



暗殺リストに載せられて感じたこと

 パネルを招集した「不正と闘う財団」のミラ・テラダ代表は、サイトに入力された数千人の名前のうち341人がジャーナリストで、衝撃的なことに327人が未成年者であると指摘した。

 「未成年者の個人情報を公開することは犯罪です。小児性愛者や人身売買をやっている人たちのメニューのようなものです」

 テラダ代表は、キエフ政権やリストの背後にいる人々を怒らせた子どもたち、ジャーナリスト、活動家、政治家、そして一般のウクライナ人を心配しているが、彼女自身がデータベースに追加されたことで、自分も警戒しなければならなくなってきたという。

  7月21日におこなわれた「ミロトウォレッツ」に登録された子どもたちについての記者会見から1時間半後、ミラ・テラダ代表は自分自身が登録されていることに気がついた。「このことが私の人生を変えました。24時間365日、警戒しなければならないのです」と彼女は言った。

 クリステル・ネアン記者はフランス人で、この6年半、ドンバスで取材してきたのだが、パネルが始まる前に、このサイトの情報の一部は一般には公開されておらず、パスワードでロックされていると話してくれた。

 ネアン記者は何年も前から死の脅迫を受けていると言ったが、それが自分にどのような影響を与えたかを話してくれた。「車を使うたびに、車の下に爆弾が仕掛けられていないかチェックします。一緒に住んでいる人や好きな人との写真は公開しません。常に用心していなければならないのです」

 「私はテロリストでも犯罪者でもない、ただの特派員です。このリストは閉鎖されなければならないし、関係者はすべて責任を負わなければなりません」

 ドイツ人のトーマス・レーパー記者は、西側メディアが見て見ぬふりをしたがることを正しく指摘した。「彼らはこれを報道することはできるのに、何も言わないのです」

 また、ドイツ政府が沈黙していることを指摘した。記者会見で質問されたとしてもである。

 「国家には国民を守る義務があるが、ドイツ人がこの暗殺リストに載っていること、ドイツ人が1人殺されたことを非難するドイツ政府の発言を聞いたことがありません」

 実際、ドイツ人ジャーナリストを保護するどころか、政府は彼らを迫害している。たとえばアリーナ・リップ記者がそうである。ドンバスからの彼女の報道を理由にドイツ政府が刑事告発に踏み切った後、彼女と母親の銀行口座は閉鎖されてしまったのである。


関連記事:死の「ピースメーカー」。このウクライナのウェブサイトは、超法規的処刑の脅威を与える - この中には米国人も含まれている

 ロシア人のヴェロニカ・ネイデノヴァ記者は、クリミア出身でドイツ在住だが、彼女も1月にこの暗殺リストに追加された。ルガンスク人民共和国出身の13歳のファイナ・サヴェンコヴァを含む子どもたちが暗殺リストに含まれていることを提起したからだった。

 「私の記事が掲載されたその日に、私は暗殺リストに加えられたのです。しかし、こんなことで私を止めることはできません。私はその後も多くの記事を書いています」

 彼女はさらなる非常に現実的な脅威を強調した。つまり、ウクライナからドイツにやってきた難民のうち、誰が単なる難民で、誰がウクライナの民族主義的な過激思想を持っているのかを知ることができないからである。ミロトウォレッツに住所を載せられているネイデノヴァ記者にとって、これは非常に現実的な恐怖である。

 オランダ人のソーニャ・ヴァン・デン・エンデ記者も同様に、帰国を恐れている。「私は今、オランダで『国家の敵』のレッテルを貼られています。戻ることができないのです。帰国するのはとても危険なのです」

 ヤヌス・プトコネン記者は、2015年からドンバスに住んでいるフィンランド人だが、この暗殺リスクがいかに世界的に広がっているかを指摘した。

 「ミロトウォレッツの暗殺リストが止められないために、世界中の人々が、ウクライナ・ナチズムという国家テロの犠牲になる危険にさらされています。これはISISのテロに匹敵するものです」

 しかし、何よりも、それはウクライナ国内のウクライナ人を脅かしている、と英国人のジョニー・ミラー記者は強調した。

 「もしあなたがジャーナリスト、ブロガー、政治家、ウクライナの市民で、ウクライナの過激派を批判すれば、あるいはウクライナ政府の政策を批判すれば、ほとんどの場合、あなたはその暗殺リストに載ることになるのです。そして、深刻な死の恐怖にさらされることになるのです」

 ミラー記者は、ウクライナ西部を取材した経験もあるので、もう一つの重要なポイントを指摘した。

 「ウクライナには、ロシアとの平和的な交渉を進めようとする人がたくさんいます。しかし、ウクライナ社会で誰かが立ち上がってこの路線を推し進めようとすれば、彼らはその暗殺リストに入れられる可能性が高いのです。ミロトウォレッツは、まさに今のウクライナの過激派の象徴なのです」


関連記事:ウクライナ国営サイトがゴルバチョフの「清算」を祝う

 私(バートレット)自身が2019年から暗殺リストに載せられている、と地元の人が教えてくれた。クリミアに行って、DPRドネツク人民共和国から報道した後のことだ。ドネツクは市民がウクライナの砲撃によって恐怖にさらされ、家々が「通りごとに」破壊されている地域で、そこから報道した後のことだ。


加担するメディア

 諸般の事情で、私は2020年2月以降、母国カナダには行っておらず、現時点では、戻ったらどんな運命が待っているのかわからない。

 オタワ政権は、ドンバスの市民に対する戦争も含めて、キエフ政権を無条件に支持しており、2月にロシアの軍事作戦が始まる何年も前から、ウクライナに資金と武器を送って教唆してきた。

 また、カナダは2014年以来、ネオナチ・アゾフの戦闘員など、ウクライナ軍の訓練に10億ドル近くを費やしてきた。


 しかし、それに加えて、カナダ政府はミロトウォレッツについては熟知している。国営のカナダ放送(CBC)は7月、ミロトウォレッツから得たと思われる私の情報を使って、私に対する中傷記事を掲載したが、暗殺リストそのものについては触れてはいない。


 CBCが暗殺リストの私に関する項目を知っていたことを、どうして私が知っていると思うのかというと、CBCのプロデューサーが私にインタビューのメールを送ってきて(私は承諾しなかった)、私が4月にモスクワで開かれたウクライナの戦争犯罪に関するパネルに参加したことに言及したからだ。ただし、実際に参加したのは4月ではなく、3月11日だった。が、私が参加したのが4月だとする唯一の情報源は、ご存知の通りミロトウォレッツだけだったのだ。

 もちろん、CBCはミロトウォレッツを非難したり、閉鎖するよう求めたりすることはなかった(それについては、カナダの独立系メディアが以前に私にインタビューをしたし、そのメディアはその後CBCにも問い合わせをしたのだが)。その代わりに、CBCはドンバスにおけるウクライナの戦争犯罪に関する私の複数の報道を取り上げて、私をロシアの宣伝屋として中傷する手段として利用しようとしたのだった。

 そして今、CBCは私の名前をカナダ人に知らしめたのである。他の方法では私のことを知らなかったかもしれないカナダのウクライナ民族主義者たちや、ウクライナに戦いに行き、過激化し洗脳され、私のようなジャーナリストに対してアゾフ式の犯罪を犯しかねないカナダ人に。なぜなら私は反対側から報道してきたからなのだ。

 ジャーナリストは自分たちが標的にされることを恐れる理由はすでに十分にある。その一例が、8月4日にキエフ軍がおこなった、私を含む複数のジャーナリストが滞在していたドネツクのホテルへの爆破事件だ。ホテルとジャーナリストが標的だったという決定的な証拠はないが、上記のようなことを考えると、その可能性があることは間違いないだろう。


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テロリストのデータベース

 パネルディスカッションの後、ネアン記者と再び話をした。ネアン記者は、何年も前からミロトウォレッツのことを国際機関に訴えてきたという。

 「OSCE(欧州安全保障協力機構)やアムネスティなどにも手紙を出しました。しかし、子どもたちがこの暗殺リストに載っていることが分かっても、誰も反応してくれませんでした」。彼女が受け取ったのは、「受け取りました」との確認メールだけだった。

 パネルディスカッション後の質疑応答で、会場のアメリカ人男性から、ロシアも自前の「ヒットフォース(攻撃部隊)」を持って、ウクライナ側に同じようなことをすればいい、という提案があった。

 これに対し、ジョニー・ミラー氏はこう指摘した。

 「この暗殺リストについて、ここ英国の人々に話すと、最初に返ってくる言葉のひとつがこれです。

 『ロシアにも同じようなリストがあるはずだ』と。だから私は彼らに説明しなければならないのです。いいえ、ロシアはジャーナリストや子どもの、名前と自宅の住所を記した暗殺リストをインターネット上で公開して暗殺を促進してはいません。それが文明的な政府と過激派や野蛮な政府との違いなのです、と」

 ミラ・テラダ代表によると、彼女の財団は、集めた文書と証拠をロシアの連邦保安局に転送し、同局にミロトウォレッツをテロ組織として認定するよう求めている。


 アメリカ海兵隊員で国連兵器査察官だったスコット・リッター氏も同様に、ミロトウォレッツを「テロの道具」であり、「ジャーナリストの要求に従って、アメリカ政府は撤去するべきだ」と述べている。

 皮肉なものだ。キエフ政権による現実のテロリズム下で暮らす民間人の苦しみに、私たちが人々の目を向けさせ強調するためにおこなっている活動を理由に、私たちはテロリストとしてリストアップされているのである。
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「死亡はCovid-19ロックダウンが原因だった」と指摘する研究結果:パンデミックの最初の2年間、制限的な措置が数万人の死亡を招いたと研究者は主張している

<記事原文 寺島先生推薦>
Study points to deaths caused by Covid-19 lockdowns
During the first two years of the pandemic restrictive measures led to tens of thousands of fatalities, researchers claim

出典:RT

2022年06月13日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月11日


写真 2020年5月、カリフォルニア州のCovid-19ロックダウンに抗議するサンディエゴのデモ隊の様子。

 米国ではCovid-19のパンデミック時に17万人近くの過剰死亡を記録した。「この過剰死亡はウイルスそのものが原因ではなかった。政府が施行したロックダウンの中で、肥満や薬物乱用、その他の殺人者が急増したためだ」とする、新しい研究が発表された。

 この数字は全米経済研究所(NBER)が今月に発表した報告書で明らかにされたものである。実際の数字はもっと高い可能性があると研究は指摘している。この推定値には、ウイルスで死亡したとされているが必ずしもウイルスが原因ではない7万2000人が含まれていないからだ。

 報告書は、過剰死亡は「政策選択のまちがいによる巻き添え被害」であった可能性を示唆している。NBER(全米経済研究所)は、ロックダウンが引きおこした「銃による暴力の増加、薬物やアルコールの使用、喫煙、監禁中の体重増加」などの要因を指摘している。


関連記事:Covidの終焉後、私たちは再び批判的思考を受け入れなければならない

 「我々は、特に、公共または民間のCovid政策がそれらを悪化させたかどうかを判断するために、コロナウイルス以外の理由で健康を害した結果については、厳密に精査されていないことが注目される」と研究の著者は述べている。彼らは、過剰死を公的政策ではなく、個人の選択のせいにする論者がいるかもしれないが、「これは、この急増する死亡数を無視したり、これらの死亡の検証を後回しにする言い訳にはならない」とも付け加えている。

 NBERによると、薬物とアルコールによる死因は、それぞれ13%と28%上昇し、合わせて年間2万4000人が過剰死基準を超えているという。循環器系疾患による死亡は年間3万2000人超過し、基準を4%上回ったと推定される。糖尿病や肥満による死亡は予想より10%高く、毎年平均1万5000人追加されたと推定される。

 各国政府がCovidの症例と死亡を注意深く監視していても、ウイルスとは別の健康上の結果に何が起こっているかについてのデータはほとんど提供されていないと、NBERは述べている。「公的あるいは私的なCovid政策が、それ以前の健康問題を悪化させているかどうかを検証しようという好奇心はほとんどなかった」と著者らは言い、パンデミックの間に被った健康被害に関する彼らの発見は、「重要かつ歴史的」なものだと付け加えている。

 Covid-19による死亡は、圧倒的に高齢者に影響するが、パンデミック中のCovid以外の死亡は、すべての年齢層で急増したことがNBERの調べでわかった。実際、パンデミックの間、すべての原因による死亡は、高齢者よりも若年層でより急激に増加した。


関連記事:ロックダウンはCovid-19による死亡を抑制する上で事実上無意味であるとの研究報告がなされた。


 「薬物中毒、銃乱射事件、体重増加、がん検診に関するその他のデータは、歴史的な、しかし、ほとんど認識されていない健康上の緊急事態を示唆している」と著者たちは述べている。

 Covid以外の過剰死の一人当たりの割合は、EU諸国内では全て同程度であった。例外はスウェーデンで、Covid以外の死亡は過剰死基準より低下している。NBERは、「このような違いの一部は、死亡をCovidと指定するために使用する基準に起因すると思われる。しかし、スウェーデンの結果は、ロックダウンを強制せず、国民の通常のライフスタイルの崩壊を最小限に抑えてきたことに関連している」と述べている。

 今年初めに発表されたジョンズホプキンス大学の研究では、ウイルスによる死亡は、ロックダウンがあったとしてもほとんど防げなかったと示唆されている。「このメタ分析では、ロックダウンは公衆衛生にほとんど影響を与えないが、ロックダウンが採用された場所では莫大な経済的、社会的コストを課している」とこの研究の著者たちは述べている。「したがってロックダウン政策は根拠がなく、パンデミックにたいする手段としては拒否されるべきだ。

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ジョー・ローガン、パンデミックの「教訓」を明かすスポティファイのトップポッドキャスターが、次の中間選挙でアメリカ人に「共和党に投票しろ」とアドバイス

<記事原文 寺島先生推薦>
Joe Rogan reveals ‘lesson’ of pandemic
The top Spotify podcaster advised Americans to ‘vote Republican’ in the upcoming midterm elections


出典:RT

2022年8月29日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月11日



 Covid-19の閉鎖期間中に、仕事、お金、ビジネスを失ったアメリカ人は、次の中間選挙で共和党に投票すべきだと、音楽配信サービスSpotify「スポティファイ」のポッドキャスト司会者、ジョー・ローガンは土曜日(8月27日)の番組で、ゲストの(グリーンベイ・パッカーズGreen Bay Packers)のクォーターバック、アーロン・ロジャーズに語った。

訳注:
ジョー・ローガン(Joe Rogan):アメリカのコメディアン、総合格闘技のコメンテーター、ポッドキャスト(Podcast)の司会者。
ポッドキャスト(Podcast):インターネットからコンピューターまたはiPodなどの携帯音楽プレイヤーにダウンロードして(取り込んで)聴くことができる音声ファイル(を提供しているインターネットラジオ番組)
スポティファイ(Spotify):スウェーデンの企業スポティファイ・テクノロジーによって運営されている音楽配信サービス。2021年7月時点で、3億6500万人のユーザーを抱えており、音楽配信サービスとしては世界最大手。
クォーターバック(quarterback【略】QB ; q.b.) アメリカンフットボールのポジションの一つ。攻撃の司令塔。


 公式発表はまだないとしても、パンデミックが終わった今、少なくとも保健当局は、過去2年間を特徴付けたPCRテストの義務付けと絶え間ないPCRテストから撤退したこと。これを暗に示して、ローガンは、「人々はいくつかの重大な誤りがあったことを認識し、もう同じことを繰り返さないだろう」と結論した。

 「この撤退は、皆が得ることのできる最善の方法だ。しかし、廃業を余儀なくされ、シャッターを下ろされ、何十年もかけて築いたものをすべて失った人々への補償については......皆はただ怒るだけで、何も得られないだろう」と彼は言った。


関連記事:Covid-19のロックダウンによる死亡を指摘する研究

 このような人たちに何を伝えるかとロジャースに問われたローガンは、笑いながら「共和党に投票しろ」と答えた。スポーツコメンテーターであるローガンは、昨年に党籍を変更した人の3分の2が共和党になるという有権者層の「政治的変化」を説明した。

 彼は、この最近のAP通信の記事を引用し、この傾向が米国のすべての地域に影響を与えていることを明らかにした。そして、この「政治的変化」」が、下院で過半数を占める民主党の脅威となっているだろうと指摘した。

 ローガンは、フロリダ州知事の決意を称賛した。ロン・デサンティスが、大多数の住民のために「ロックダウン」からフロリダを開放し続け、大衆の「自由」を守ると同時に、高齢者や弱者をウイルスから守ったからだと言う。

 企業を閉鎖しマスクとワクチンを義務付けることを拒否したため、ロックダウン派のアメリカ人から「デス(死神)サンティス」として悪魔化されたこの共和党の政治家デサンティスは、共和党内の多くの人から愛され、パンデミック期の人気を利用して大統領選への出馬を考えていると噂されており、ローガンも以前この考えへの支持を表明している。

 パンデミックの間、この物議を醸したポッドキャスト司会者は、その巨大なネットの武器を使って、ウイルス学者ロバート・マローンや心臓学者ピーター・マッカロのようなCovid-19「異端者」の研究に注意を促した。その結果、批判を浴びた。これらの学者はロックダウンの正説に反するとして主要メディアで定期的に批判されていたからだ。

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 またローガンは、Covid-19にかかったとき、イベルメクチン(WHOの必須医薬品リストに掲載されている抗寄生虫薬だが、ウイルスに対する治療薬としては承認されていない)を服用したことも、同様に無責任だと非難された。CNNキャスターからは、「馬用駆虫薬」を食べていると非難された。イベルメクチンは獣医が使う薬だとされていたからだ。
訳註:しかし彼はこのイベルメクチンのおかげでコロナウイルスを撃退することができた。
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ロックダウンはCovid-19の死亡を抑制するのに事実上無意味であるとの研究報告:メタ分析によると、パンデミックの第一波では、社会的距離を置くことを義務付けることは効果的でなかったことが示唆される

<記事原文 寺島先生推薦>
Lockdowns virtually useless in curbing Covid-19 deaths, study claims
A meta-analysis suggested mandating social distancing was ineffective during the first wave of the pandemic

出典:RT 

2022年2月2日 14:39

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月11日


写真 ニュージーランド、オークランドでのロックダウン中の閉店した店。©Adam Bradley / SOPA Images / LightRocket via Getty Images

訳注:メタ分析とは,「分析の分析」を意味し,統計的分析のなされた複数の研究を収集し,いろいろな角度からそれらを統合したり比較したりする分析研究法

 強制的に社会的距離を取らせるという措置は、Covid-19の蔓延を撃退するために必要だと国民に喧伝されたが、この病気の第一波における死亡率に大きな影響を与えなかったという、新しい研究が発表された。つまり政策立案者は、人々が合理的に、責任を持って行動することを信じて、何の義務も負わさずに予防策を講じることができたはずだったのである。

 この驚くべき結論は、24の科学論文のメタ分析研究の後に出された。ジョンズ・ホプキンス応用経済・グローバルヘルス・企業研究所の共同ディレクターであるスティーブ・H・ハンケ教授率いる研究チームによって述べられたものである。

 研究チームは、ロックダウン(国内外の移動の自由、事業活動、集会などに対する政府の強制的な政策)がCovid-19による死亡を防ぐという経験則があるかどうかを確かめようとした。論文によれば、その答えは「ノー」であった。

 「ヨーロッパとアメリカでのロックダウンは平均して0.2%しかCovid-19の死亡率を下げなかった」と書いている。より制限の多い「外出禁止令」については、同じ指標で平均2.9%であった。

 学校封鎖や国境閉鎖のような特定の措置に関する研究は、やや結論が出ず、賛成する「広範な証拠」はなかった。企業の強制的な閉鎖は、おそらくバーやレストランの閉鎖を余儀なくされるため、死亡率に有益であったかもしれない。



関連記事:ジョンソンはロックダウン期間に6回のパーティに参加 - 報告

 また、マスクの義務化には大きなプラス効果があるという証拠もいくつかあった。しかし、マスクの義務化に関する研究のうち、メタ分析に適格な研究は2件しかなく、そのうちの1つは従業員の強制的な顔のカバーの効果を調べただけであり、研究者はマスク強制の効果についての確信が持てなかったという。

 「全体として、我々は結論付けた。ロックダウンは、パンデミック時の死亡率を減少させる効果的な方法ではないと。少なくともCovid-19パンデミックの第一波の時には死亡率を減少させなかった」と研究者は述べている。

 この評価は、世界保健機関のチームが2006年に1918年のインフルエンザ・パンデミックへの公的対応について述べた内容や、他のいくつかの類似の研究と一致している。インドネシア大学のナディア・ジョハンナが2020年に実施した別のメタ分析研究は、この研究と対照的で、ハンケらは、基礎資料の選択方法が異なることに起因するとしている。

 研究者たちは、ロックダウンがうまくいかない理由を説明しようとはしていないと強調しながらも、いくつかの可能な要因を示唆した。第一に、人々は政府の命令とは無関係に危険な状況に反応し、感染率が急増すれば予防措置をとり、感染率が下がれば規則を無視するということである。

 医薬品以外の介入方法には、手洗いやスーパーマーケットでの距離の取り方など、そもそも義務化が難しいものもある。また、場合によっては、ロックダウンは意図しない負の結果をもたらすかもしれない。比較的安全な公共の場から人々を追放し、無症状で感染しているかもしれない家族とずっと家で過ごすことを強いるのは、その一例であると研究者は述べている。

 「パンデミックの初期段階で、ワクチンや新しい治療法が登場する前に、社会は2つの方法で対応することができる:強制的な行動の変化または自発的な行動の変化である。私たちの研究では、強制的な行動の変化(ロックダウン)による有意なプラスの効果を実証することができなかった。このことから、自発的な行動変化の役割に焦点を当てる必要がある」。

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ウクライナ、自ら電力供給を切断と非難される。「この決定はキエフ政権が一方的に決定したもの」と地方政府が発表

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine accused of cutting itself off from power supply
The decision was taken unilaterally by Kiev, the regional administration says

出典:RT

2022年9月10日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 

2022年9月11日


ザポリージャ原子力発電所の様子。© Sputnik / Konstantin Mihalchevskiy


 ウクライナは、ロシアが管理するザポリージャ原子力発電所から供給されるエネルギーを一方的に遮断したと、地方政府が発表した。

 「この発電所からゼレンスキー政権が支配する地域への電力供給は停止された」と、9月10日(土)ザポリージャ州政府のウラジミール・ロゴフ氏は発表した。

 「ウクライナが一方的にエネルギーの流れを止めた」とロゴフ氏は明言し、キエフの支配下にある地域に供給する発電能力は十分に残っているにもかかわらず、「彼らは意図的に電力の供給を控えているのだ」と述べた。

 ロゴフ氏によると、同原発は欧州最大のものであり、現在はザポリージャ州とヘルソン州(今はロシアが制圧している)にのみエネルギーを供給しているという。

 モスクワの軍事作戦が始まった直後の3月にロシア軍が管理下に置いた原子力発電所とその近くの都市エネルゴダルは、ここ数週間、繰り返しミサイルや砲撃を受けている。

 モスクワは、繰り返される攻撃についてキエフ政権を非難し、ヨーロッパの多くの国に影響を与える災害を引き起こす可能性があると警告している。また、これまで何度もおこなわれたウクライナの破壊部隊による発電所奪還の試みは、その都度、撃退されているとも述べている。

 ウクライナ当局は、「ロシアが発電所を軍事基地化し、キエフ政権に責任を負わせるためにロシアが発電所を自分で砲撃している」と主張している。


関連記事:原子力発電所の状況は「不安定」―国連

 ロゴフ氏によると、同施設の6基の原発のうち、現在、同発電所で稼働しているのは1基だけだという。「キエフ政権は、意図的にこの発電所を使えなくしようとしている。それがウクライナ経済にとって特に有害であるにもかかわらずだ」と彼は付け加えた。

 国際原子力機関(IAEA)は、9月上旬に査察団を同発電所に派遣し、9月6日(火)に同発電所の安全状況について報告書を発表した。IAEAは、同施設に対するすべての攻撃を「直ちに停止」するよう要求し、同施設内またはその周辺でのいかなる軍事活動も停止するよう呼びかけた。しかし、砲撃の責任者を特定しなかった。
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「今日(8/4)ウクライナは、多くの記者が滞在していたホテルを砲撃」 エバ・バートレットによる現地からの報告。

<記事原文 寺島先生推薦>

Today, Ukraine bombed a Donetsk hotel full of journalists – here’s what it felt like to be there

Another attack from Kiev has hit central Donetsk, targeting a funeral and a hotel where numerous reporters stay and work

(今日、ウクライナは多くの記者が滞在していたホテルを砲撃。現地からの報告

多くの記者が滞在し活動していたホテルを標的に、キエフ当局がドネツクの中心地に更なる攻撃を加えた)

出典:RT

2022年8月4日

筆者:エバ・バートレット(Eva Bartlett) 


エバ・バートレットはカナダ出身の独立系記者。取材活動のため中東の戦闘地域、特にシリアやパレスチナ(両地ではほぼ4年間滞在)で何年も過ごした体験がある。


<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月12日


© Eva Bartlett

 今日(8月4日木曜日)の午前10時13分、ウクライナはドネツクの中心地への砲撃を開始しました。10分の間に5回の強力な砲撃が行われました。その最後の砲撃では、私が使っていたホテルの一階のガラスが吹き飛ばされましたが、ホテルの居間(記者たちが現地取材に赴く前や戻ってきてから集まる場所としてよく使用されていました)や、ロビーも吹き飛ばされました。私がそのロビーを通り過ぎたのは、砲撃の約一分前でした。5回目の砲撃の際にロビーにいたカメラマンの助手は、 砲撃の衝動のせいで脳しんとうを起こしました。

 ホテルの外を歩いていた一人の女性が亡くなりました。亡くなった方は少なくとも他に4名いて、うち1人は子どもでした。ドネツクのテレグラムのチャンネルは、地元の人々が撮影した動画であふれています。亡くなった人、負傷者、被害者、そして悲しみにむせぶ人々の動画です。そのような動画の中には見るのが辛いテレグラム上の投稿(過激な内容のため閲覧注意と書かれています)もあります。この動画には、ホテルから2ブロック離れた通りで、殺害された妻と孫の惨たらしい死体を見てショックを受けている男性の姿が映されています。

 私がこの記事を書いている時点では、負傷者の総数はまだわかっていません。最初の推定では少なくとも10名とされていますが、その中には2名の救急隊員も含まれていました。医師1名と救急救命士1名です。

 ニュースを見る人には、今日起こった大虐殺の動画や画像は、閲覧注意と書かれていたり、見るかどうかの選択肢が与えられた上で提供されています。それはこれまでウクライナがドンバスで8年間行ってきた戦争での画像や動画と同じです。しかしここ現地にいる人々は、警告や見るかどうかの選択肢を与えられないまま、愛する人や、見知らぬ人のバラバラにされた残骸を直視しなければならないのです。このような惨状を目にすることは不快なことですが、世界の人々に見せる必要があります。世界にはドンバスで起こっていることの真実を知り、ドンバス在住の人々の声を知らせようとする人々がいる限りはそうしないといけません。ドンバス在住の人々は、ウクライナ軍により殺され、恐怖にさらされているのに、西側の企業メディアはそんな犯罪行為から目を逸らしたり、目をつぶったりしているのです。


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時系列による砲撃の記録

 砲撃が開始されたとき、私は自分の部屋で前日に撮った映像の編集作業をしていました。ドネツク地方での別の砲撃後の映像の編集作業です。ほとんどの西側メディアが報じていないので、ご存知ないでしょうが、ここでは爆発は日常的に起こっています。ですから私は、砲撃の騒音がいつもより大きいことと、車からの警告音が鳴り響いたこと以外はあまり気になりませんでした。

 その7分後、もうひとつの爆発が起きましたが、それは前のものよりもずっと大きな音がし、ずっと近くで起こったものでした。窓から見ると、煙が北側に向かって上がっていました。それはおそらく200メートル先でした。爆発したのはオペラハウスのすぐ近くのようでしたが、そこでは、昨日戦死したドネツク人民共和国(DPR)のオルガ・カチュラ(Olga Kachura)大佐の葬儀が開始されようとしていました。

 その1分後、また別の大きな音がする砲撃があり、私は部屋を出ました。私の部屋は爆弾が飛んでくる方向を向いていたからです。幸運にも、被害は窓が割れるだけで済みました。

 下の階では、ホテルにいた記者やホテルの外で取材に出かける準備をしていた記者たちが、一時的に廊下内の避難場所に身を置き、状況が悪化した時にいつでも地下室に逃げられるよう準備していました。

 ある記者は撮影に行く準備をしていたとき最後の砲撃があった地点から約10メートル離れたところにいました。「奴らは葬儀を狙っていたと思うよ。それと記者たちもね」とその記者は話し、さらに、脚を失くした女性を外で見たが、おそらくその女性はもう亡くなってしまっただろう、とも言っていました。

 ウクライナ軍はカチュラ大佐の葬儀だけを標的にしようとしていたと考える人もいるかもしれません。そうすることでDPR軍やDPR軍を支持する市民たちに警告を発する目的だったと。それだけでも非道な行為ですが、記者たちが滞在していたホテルも、ただ「巻き込まれただけ」だとは思えません。

 というのも、ウクライナは常に、メディア関係者を迫害し、検閲を加え、投獄し、虐待し、標的にしているからです。そうするために、私たちを「殺害すべき人物リスト」にリストアップすることまでしています。

 ウクライナ軍は、街の中心地に位置し、WiFi環境も安定して整っているので、このホテルにたくさんの記者たちが滞在しているのを把握しています。多くの記者がホテルの外でライブ配信をすることも頻繁にあります。さらにここに滞在している記者たちは、ドネツク近辺の他の都市に滞在している記者たちと同様に、ウクライナ側が国際的に使用が禁じられている「蝶型」対人地雷という卑劣な地雷をドネツクに投下していることを大きく報じています。その地雷が投下されたのは、ほんの前のことです。ごく最近です。今日も行われています。これもウクライナ側が犯している戦争犯罪のうちのひとつです。これらの地雷は人間の手足を吹き飛ばすために作られたもので、ウクライナは繰り返しこの地雷を搭載したロケットを発射し、意図的にドネツク市内やその他のドンバス人民共和国内の一般市民の居住地に投下しています。

参考記事

Ukraine bans dissident journalist – media

 今日ドネツクの中心部で爆発があった後で救急隊が現場に駆けつけたので、しばらくの間状況は落ち着き、記者たちはこの砲撃による被害や死者の取材に出かけました。私が前述した女性は、血の海の中で横たわり、吹き飛ばされた窓に掛けられていたと思われるカーテンが被せられていました。

 しかし、落ち着いた状況は長くは続きませんでした。ウクライナはすぐに砲撃を再開しました。さらに4発の砲撃を受けて、外に出ていた記者たちはホテル内に駆け戻りました。「よくあることだ。一箇所を攻撃したら同じ箇所を二度攻撃するんだ。それが今も起こっているんだよ」と私の近くにいたセルビア人記者は語っていました。地元の緊急隊本部長は私に「ウクライナ軍は2回じゃなく、3回同じ箇所を攻撃することもある」と話しました。

 ウクライナが今日の攻撃で使用したのは、NATO基準の155ミリ口径の武器だと言われています。それが本当であれば、ウクライナが西側が供給した武器を使って、ドネツク人民共和国及びルガンスク人民共和国の市民たちを殺害し、負傷させた、もうひとつの新たな事例になります。

 記者たちがたくさん滞在していたホテルを砲撃することで、ウクライナ当局がウクライナによる戦争犯罪を報じている記者たちの活動を遮りたいと考えているのであれば、それは無駄なことです。 ほとんどの記者たちにとって、現地でそのような活動に従事している理由は、現地の人たちの生命を真剣に気遣っているからです。自分たちのほうで戦争の原因を作っておいて、戦争の被害を受けた人々に嘘の涙を流している西側陣営とは違うのです。
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ウ軍によるザポリジャー原発への攻撃に関する国連安保理でのロシア常駐代表の声明



<記事原文 寺島先生推薦>

UNSC: Russia Comments on IAEA Nuclear Plant Report
Statement by Permanent Representative V.A. Nebenzi at the UN Security Council meeting on the attacks by the Ukrainian armed forces on the Zaporizhzhia NPP
( 国連安全保障理事会:ロシアがIAEAの原発視察報告に意見表明
ウクライナ軍によるザポリジャー原子力発電所への攻撃に関する、国連安全保障理事会での、V.A.ネベンジ常駐代表の声明 )

出典:Internationalist 360°

2022年9月6日



<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月10日

議長、ロシアの国連常駐代表ネベンジです。

 グテーレス国連事務総長とグロッシIAEA事務局長によるウクライナ報告に感謝します。

 グロッシ事務局長がザポリージャ原子力発電所への査察遂行を決定したことに感謝し称賛します。これはIAEA主導の責任ある、かつ勇気ある行動であり、原子力分野におけるIAEAの世界的な役割を確認するものです。

 今回の訪問により、事務局長とその一団がザポリージャ原子力発電所の状況をご自身の目で確かめ、あなたが策定した安全原則を私たちが厳格に遵守していることを確認できたことを嬉しく思います。
 9月2日、ウイーンでの概況説明会の報告でお聞きしたように、発電所職員と発電所を警備するロシア軍との間に確立された協力関係により、発電所がおおむね正常に運転されており、安全に対する「内部」の脅威がないことをご自身の目で確認されたことは極めて重要なことでした。ウクライナ軍による砲撃と破壊工作が唯一の脅威であることを、知ることができたはずだからです。

 上記の概況説明では、ザポリージャ原発の物理的な安全性とその完全性がIAEAの最大の関心事であり、8月の砲撃によりそれを脅かす危険が高まっているという結論でした。私たちの確認も、これと全く同じです。

 ただ、つい数時間前に出た、今年4月から9月までのウクライナにおけるIAEA保障措置の実施状況に関する貴殿の報告書では、砲撃の発生源を直接特定できていないことは遺憾であります。
 国際的規制機関の長としての立場は理解できますが、現状では、物事をきちんと具体的な固有名詞を使って呼ぶことが極めて重要です。
 もしこの文書が、ザポリージャ原発を訪問した結果だけに焦点を当てたものであれば、貴殿の結論はより明確で曖昧さのないものになったかもしれません。
 この文書については、もう少し検討する時間が必要なので、詳細は割愛させていただきます。ただ、ザポリージャ原子力発電所を訪問した際、ロシア軍のどのような軍事装備を見たのか、明らかにしていただきたいのです。

 私たちは、キエフ政権の無謀な行動を黙って見ているわけにはいきません。先月、私たちはこの件に関して2度にわたって国連安全保障理事会を招集しました。
 私たちは西側諸国の同僚に「分かってもらおう」としました。この砲撃がヨーロッパ最大の原子力発電所による大惨事、すなわち核爆発による現実的な脅威をもたらす可能性を説明し、西側諸国の代表団に欧州大陸の住民に起こりうる結果について考え、キエフにいる彼らの被後見人を「包囲」するようお願いしたのです。
 しかし、残念ながら、私たちの呼びかけは聞き入れられず、西側トップの暗黙の了解のもとで、キエフ政権は原子力発電所への砲撃を継続しました。彼らは今日もそれを続けています。これについては後で詳しく説明します。

 私たちは、IAEAの指導者が原子力発電所に常駐することを決定したことを歓迎いたします。ザポリージャ原子力発電所に2名の査察官が常駐することで、IAEAはリアルタイムで状況を独自に評価することができるようになったからです。私たちは、査察官2名の仕事に可能な限りの支援を提供する用意があります。

 私たちは、ウクライナの原子力施設の核・物理的な安全性を確保するためのIAEAの取り組みを、当初から一貫して支持してきたことを強調したいと存じます。
 ロシア側は、IAEA事務局長R.グロッシ氏と彼の査察団が安全にザポリージャ原子力施設に到着し、作業を終えてウィーンに戻ることができるよう、あらゆる手段を講じてきました。
 この事実は、国連事務総長の公式代表も指摘し、「ロシア連邦は、ザポリージャ原子力発電所を訪問したIAEA査察団の安全を確保するために必要なあらゆることをおこなった」と強調しておられました。
 国連事務総長からは先述のような好意的評価をいただきましたが、IAEAとしては、ロシア側との交流、特に査察団の十分な安全性の確保という点でどの程度満足しているのか、IAEA事務局長の評価も伺いたいと存じます。

 残念ながら、私たちが懸念していた通り、ウクライナ側はIAEAのザポリージャ原発訪問を自分たちのプロパガンダには利用できないと判断し、あらゆる手段で訪問を妨害してきました。
 IAEAのザポリージャ原発訪問の当日、9月1日に、ウクライナ軍は、午前5時から原発とエネルゴダール市に対して大規模な砲撃を開始しました。
 IAEAチームがすでに原発へ向かっている最後の瞬間まで、彼らはザポリージャ原子力発電所への砲撃を続けたのです。
 ウクライナ砲は、ザポリージャ原子力発電所の領域、IAEA査察団とロシア専門家の会合場所、すなわちヴァシリエフカ集落付近、およびエネルゴダールへの移動ルートに対しても砲撃をおこないました。
 ザポリージャ原子力発電所の第1発電所から400メートルの距離で4発の砲弾が爆発しました。ウクライナ軍(AFU)の行動は、このように、IAEAの査察官の生命と安全を直接的に脅かしたのです。

 しかし、キエフ政権はそれだけにとどまりませんでした。IAEAの査察団が原発に到着する直前に、原発を武力で占拠しようというとんでもない挑発に出たのです。
 9月1日朝6時、ウクライナ軍はザポリージャ原発を占拠するため、カホフスキー人造湖からザポリージャ原発方面に破壊工作部隊を送り込んだのです。
 つまり、ゼレンスキー政権は、西側諸国から武器をゆすり取るために必要な「ウクライナ軍(AFU)の成功」という印象を与えるために、原発周辺で活発な戦闘行為をおこなったわけです。これは原発の完全性に重大な損害を与える可能性がありました。
 万が一、作戦が成功し、原子力発電所がキエフ当局の支配下に入った場合、IAEAのグロッシ代表と査察団の専門家は、ウクライナの妨害工作部隊の「人間の盾」になるところだったわけです。

 だがしかし、ロシア軍とロシア国家警備隊(ロスグバルディヤ部隊)の効果的な行動と、地元住民の警戒により、こうした挑発行為は阻止されました。
 その結果、ロシア連邦代表とIAEAチームとの会談は予定より4時間も遅れて、結局、会談がおこなわれたのは正午になってからでした。
 それはともかく、このようなウクライナの砲火の中で、文字どおり勇気をもって活動したIAEA代表の勇気をたたえたいと思います。

 そこで、グロッシIAEA事務局長にお聞きしたいのですが、ウクライナ軍が妨害工作員を上陸させ、ザポロージャ原子力発電所を武力で占拠しようとしたことで、ミッションの作業にどのような影響があったのでしょうか。
 原子力発電所の物理的な安全や原子力庁の職員の安全が脅かされている状況で、ウクライナ側のこうした行動について、ご意見を伺うことはできるでしょうか。

 また、グレーテス国連事務総長にも同様の質問をしたいと思います。国連安全保障局の職員はIAEAミッションの一員であり、原子力発電所の安全確保に直接関与していました。国連安全保障局の職員は、状況を把握し、発電所のリスクを生むすべての行動を意識することになっていました。
 ウクライナ側の行動によってあなた方のミッションが被ったリスクについて、国連安全保障局の職員はどのように語っていますか。

議長、

 キエフ政権はIAEAがザポロージャ原子力発電所ZNPPを訪問した結果に対して失望を隠す必要さえないと考えていました。
 ゼレンスキー氏の顧問であるM.ポドヤク氏は、「これらの仲介ミッションはすべて、極めて非効率的で、極めて卑怯、極めてプロらしくないように見える」と述べています。
 彼が言うには、IAEAは極端な状況で仕事をする覚悟は全くなく、それについては、国連も同様だということです。ウクライナ人の担当者は、国際機関は「すでに入口で信用されていない」と言っているのです。
 ポドヤック氏は、さらに、IAEAのミッションが2時間で大規模な検査をおこなえたかどうかも疑問視していると述べています。

 どうしようもない怒りにかられてでしょうか、キエフ政権は極めて危険な計画を断念しないことに決定しました。キエフ政権は、IAEAの代表が原子力発電所に滞在しているにもかかわらず、9月2日に再び原子力発電所の占拠を試みましたが、幸いロシア軍がそれを阻止いたしました。

 それ以降も、キエフ政権は連日のように原発を攻撃し続けています。
 9月3日、ウクライナ軍は吊り下げ弾薬を搭載した8台の無人航空機を使用しました。 幸いにもロシア軍の行動により、原子力発電所ステーションに接近するウクライナ軍の無人機はブロックされ、その後、原子力発電所ステーションのセキュリティ周辺から1.5km以上離れた無人地帯で、その爆弾を強制的に投下させました。
 9月4日、さらにまたウクライナ軍は無人航空機による攻撃をおこないました。ロシア軍人の行動の結果、ウクライナの無人機は制御不能となり、ザポリージャ原子力発電所の領域から1キロ離れた場所に墜落しました。

 9月5日、ウクライナ軍はザポリージャ原子力発電所に対し、新たに3発の砲撃をおこない、うち1発が燃料集合体を保管する特別棟1号の屋根と固体放射性廃棄物の貯蔵施設を直撃しました。

 ロシア国防省によると、ザポリージャ原子力発電所ZNPPとエネルゴダールへの砲撃は、カホフカ貯水池の対岸、主にウクライナ軍(AFU)の支配下にあるニコポリ、マルガネツ、マリブカの各集落からおこなわれたとのことです。ウクライナ側の攻撃により、ザポリージャ原子力発電所の7本の送電線のうち5本が損傷しました。

 私たちは、国連安全保障理事会の理事国および国連の指導者に対し、発電所の従業員だけでなく、国際的な職員(IAEA職員)にも向けられたキエフ政権のこれらの挑発行為を強く非難することを求めます。

 エネルゴダール市の住民もまた、ウクライナ軍にとって「生きた標的」であることに変わりはありません。今日だけで5回の砲撃がありました。
 IAEA事務局長、私たちは、エネルゴダール市民がキエフ政権の挑発を止めるための集団アピールをあなたに手渡したことを知っています。この話はメディアで広く取り上げられたからです。あなたはメディアに対して、「最善を尽くす」と述べられました。ですから、私たちもこのテーマについて詳しくお話を伺いたいと思っています。エネルゴダールの住民との対話から、どのような感想をお持ちになったでしょうか。

 ザポリージャ原子力発電所の安全な運転を確保するために、私たちはあらゆる努力を続けています。原子力発電所の運転は、ロシアの専門家の支援を受けながら、正規の技術者によって確保されています。
 今のところ、原発の放射線状況は正常です。しかし、キエフ政権の挑発行為が続く場合、誰ひとり、より深刻な結果から免れることはできません。
 この責任は、キエフ政権とその西側後援者、そして他のすべての安全保障理事会の理事国にあります。なぜなら、彼らはいまだに物事を適切な名前で呼び、国際平和と安全に対する真の脅威である原子力発電所に対する無謀な行動をやめるよう、キエフ政権に要求する勇気を見いだせずにいるからです。

 私たちは、今日、安全保障理事会の理事国が、起こりうる放射能の大惨事を防ぐために、勇気をもって行動してくださることを信じています。

ご清聴ありがとうございました。
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西側はエネルギー危機の責任転嫁を、プーチンと制裁措置に反対する指導者たちに向けている


<記事原文 寺島先生推薦>

Putin first, populists next – who else will Western leaders blame for an energy crisis caused by NATO's geopolitical ambitions?

Western officials gear up to label as ‘extremism’ any protest against their self-destructive policies

(最初はプーチンで、次はポピュリスト[大衆迎合主義者])。NATOの地政学的野望のせいで引き起こされたエネルギー危機を、西側各国の指導者たちは他に誰のせいにするのだろうか?

西側諸国の当局は、自己破滅させる政策に反対するものはすべて「過激派」と決めつけるのに躍起だ。)

出典:RT 2022年8月17日

筆者:レイチェル・マースデン(Rachel Marsden)

Rachel Marsden is a columnist, political strategist, and host of independently produced talk-shows in French and English.

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月10日

燃料価格の高騰に対する抗議運動で発煙筒を炊くトラック運転手たち。スペインのマドリードにて © AP / Manu Fernandez

 ウクライナ紛争が開始されたとき、西側諸国の政府はロシア当局に対して連帯して戦うと宣言し、ロシアから輸出される化石燃料から、よりグリーンなエネルギーへの移行を加速させると誓っていた。この考えはクレムリン当局から利益を奪うことで、その結果ロシアのウクライナでの軍事作戦の資金を枯渇させようとする狙いがあった。それで西側諸国政府は、自国への安価なエネルギー供給源を完全な焦土作戦にかけたのだ。つまりそれは、欧州最大の国ロシアからの天然ガスのことだ。その天然ガスの輸入に制裁措置を課したのだ。

 「言うは易し、行うは難し」ということわざの正しさがはっきりわかるまで、そう時間はかからなかった。すぐに、西側諸国の政府は国民に「自分の任を果たす」よう公に要求し始めた。具体的には、日々の娯楽を抑え、生活の質を落とすことだ。一例をあげれば、シャワーにかける時間を短くすることなどだ。そうすることがまるで、代表的な産業界が既にエネルギーの供給不足や生産不足に警告を発している状況の改善に繋がるかのような要求だ。 

 次に西側諸国の政府が行ったのは、以前は非グリーンエネルギーだから廃絶すべきだと決めたエネルギーへの回帰を見せたことだ。 フランスが核燃料に固執していることをドイツが非難していたのはつい数ヶ月前のことだった。しかし今ドイツ当局は、フランス当局と足並みを揃えて、核燃料をエネルギー源に戻す方向に舵を取る可能性も見せている。さらにドイツは石炭工場の再稼働にも着手している。

 当初西側諸国は、少なくともノルウェーの水力発電に依拠できるのでは、との見通しを持っていた。しかし今年は乾燥した猛暑の夏を迎えたせいでそれも危うくなっている。ノルウェー当局が水力発電の輸出の削減を検討しているからだ。英国からの液化天然ガスも輸入できなくなる可能性が出てきた。供給元である米国やカタール原産の天然ガスの成分内に、毒物や、さらには放射能物質までもが検出されたからだ。

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 この先到来する真の問題の気配が既にはっきり見えている。冬季における暖房利用の急増によるエネルギーの困窮は、今の状況を大きく越えるものになるだろう。英国の調査会社コーンウォール・インサイト社は、英国での計画停電の実施や、エネルギーが枯渇する危険性を警告している。一般的な家庭のエネルギー支出は、年4千ポンド(4860米ドル)の水準に達しており、さらに高騰すると見られている。イングランド銀行はインフレにより不景気が起こることを警告しており、ドイツではインフレは、1990年の東西ドイツ統合後の最高水準に達している。スペインやイタリアなどの国々では、公共施設や商業施設における冷暖房使用に制限をかけている。 EUが発した全ての加盟国でエネルギー使用を15%抑える措置が発効されたばかりだが、このことも各国の納税者に対して国が果たすべき業務を削減していることの現れだ。 フランスのガブリエス町では、そのことを地域の水泳プールを閉鎖した言い訳に使っていた。今年の夏は記録的猛暑に苛まれている中でのことだ。その際同町当局は、小学校内の食堂での高価なオーガニック食の維持と、プール開設のどちらを取るかという議論を持ち出していた。

 さて、こんなことになっているのは誰のせいなのだろうか?答えは明白だ。西側諸国の政府が自分で自国のエネルギー源を切断しているのだ。その目的は、ウクライナを衛星国家にするという地政学的なものだ。
それなのに西側諸国の政府はその責めを直接ロシアに押し付けているのだ。それが西側諸国の言い分であり、そのことに躍起になっているのだ。英国のデイリー・メール紙は、グラフを示して、プーチンが天然ガスの供給を止めていると報じた。 「プーチンが、天然ガスの輸出を渋っているせいでヨーロッパは不況に陥り、供給難のまま冬をむかえることになる」という見出しを米国のCNBC紙が出した 。米国のジョー・バイデン大統領はこの状況を「プーチンが食料とガスにかけた税金だ」と決めつけた。しかし実際のところは、こんな状況を招いたのは西側諸国の政府自身だ。政府が自国民にそんな税金をかけたのだ。しかもその目的は「ウクライナのため」だ。

 ただし問題なのは、そんな話を真に受ける国民がどんどん少数になっているという点だ。米国の調査会社のラスムッセン社が最近行った米国のでの世論調査の結果によると、今の経済危機の原因がプーチンのせいだと考えているのは回答者の11%で、バイデン自身の政策に原因があると考えているのは回答者の52%だった。

 そして今、新しいスケープゴートが用意され始めている兆候が見える。そのスケープゴートとは、ポピュリストだ。「ポピュリストや過激派が、反政府勢力に自分たちの嗜好の影響を及ぼしている様子が見て取れます」とドイツ内務省のブリッタ・ベイラージ・ハーマン(Britta Beylage-Haarmann)報道官がドイツ・ヴェレ紙に答えている。さらに「ドイツ国内の過激派活動家たちや過激派団体の勢力が増長する可能性があります。止めるためには、それを許さない社会における危機管理が必要です」とも述べた。

 これは由々しき事態だ。というのも西側諸国の政府が各国のやりすぎの政策に反対する一般の人々と、「過激派」との線引きを、自分たちにとって都合のいい解釈で行っているからだ。一般の人々はただ、親ウクライナに傾き過ぎている政策のせいでエネルギーの供給が困窮していることを訴えているだけなのに。逆に政府の政策の方がますます過激化しているのに。西側諸国の政府には、一致団結して自分たちの計画に反対の声を上げる人々を批判し、一般の人々からの反論をロシアの息がかかったものだとして片付けてきた過去がある。そして今西側諸国の政府は、社会や経済や産業界に害を与える誤った政策に固執したせいで生じた困窮に苦しむ中、自分たちに対する反論は不当であると主張することに躍起になっている。

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 フランス政府は、フランスの野党党首が国会で、停電になる可能性について発言したことを無視しただけではなく、攻撃をも加えた。そしてその理由は、その女性党首が「ポピュリストだから」というだけだった。「ヨーロッパが停電になることが危惧されます。その主な理由はロシアからの天然ガス輸入が止まるからです。こんな制裁措置に意味はありません。こんなことをしても、ヨーロッパを苦しめることにしかなっていませんし、フランス国民もそれに巻き込まれてしまっています」とフランス国民連合党のマリーヌ・ル・ペン党首は語った。さらに「間違った見方を大量に注入されているので、それを実感できていないのです。実際に起こっていることは、我が国の政府が大袈裟に言っていることとは逆で、ロシア経済は崩壊しているわけでは全くありません。破産する瀬戸際に立たされているわけではありません」とも語った。フランスのエネルギー転換省アニエス・パニエ・ルナシェ長官はル・ペンの発言は、「非常に危険で」あり、「無責任だ」と語り、一般的なフランス国民の考えとも近い、ル・ペン党首が示したもっともな懸念を、とんでもないものであるかのように決めつけていた。

 西側陣営におけるポピュリストと呼ばれる指導者には、メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領や、ハンガリーのヴィクトル・オルバーン首相や、セルビアのアレクサンダル・ヴチッチ大統領などがいるが、彼らはロシアに対する制裁には反対の意志を明示している。その制裁は、西側諸国の国民たちにとって本質的には害であることを理解してのことだ。

 市民の利益のために声を上げる勇気を見せたこれらの指導者たちが、ポピュリストであるという理由だけで、彼らが示している懸念が無視されたり、阻害されるというのは間違っている。というのもこれらの指導者たちの懸念は、大多数の市民たちの声にならない思いから出たものだからだ。 西側諸国の支配者層は懸案中の課題の責任転嫁に躍起になっている。その責任は完全に身から出た錆であるのに。その責めをプーチンや自国民に押し付けようとしているのだ。
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アメリカが供給するHIMARS(High Mobility Artillery Rocket System高機動ロケット砲システム)は効果的な武器だが、ウクライナに勝利をもたらすことはない

<記事原文 寺島先生推薦>
The myth of the HIMARS 'game changer': American-supplied rocket system is effective, but it won't bring victory to Ukraine

The rocket system is a deadly tool – but it’s not the tonic Ukraine and its supporters claim it to be

このロケットシステムは相手に致命傷を与える道具だが、ウクライナやその支援国が言っているようにウクライナの意気を上げるものにはならない。

RT 2022年7月31日

スコット・リッター(Scott Ritter)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年9月10日

Scott Ritter is a former US Marine Corps intelligence officer and author of 'Disarmament in the Time of Perestroika: Arms Control and the End of the Soviet Union.' He served in the Soviet Union as an inspector implementing the INF Treaty, in General Schwarzkopf’s staff during the Gulf War, and from 1991-1998 as a UN weapons inspector.

@RealScottRitter@ScottRitter



© Getty Images / Dondi Tawatao

 ドナルド・トランプ前米国大統領がツイッターから追放される前にわかっていたことだが、ツイートとは常に存在するものだ。

 「HIMARSがウクライナに到着した。米国の同僚であり友人であるロイド・J・オースティン三世国防長官が、これらの強力なツールを提供してくれたことに感謝する!ロシア軍にとって夏は暑いだろう。そして彼らの何人かにとっては最後の夏となる。」

 ウクライナの国防大臣アレクセイ・レズニコフ(Aleksey Reznikov)は6月23日、こうつぶやいた。彼は7月4日にもツイートし、アメリカ国民に「独立記念日おめでとう」と伝えると同時に、ウクライナの大義に対する継続的な支援に感謝した。レズニコフは、HIMARSが果たしている役割を強調し、この武器を「最前線でのゲームチェンジャー」と呼んだ。

 米国製M-142高機動砲ロケットシステム(HIMARS)の到着を発表してから数週間経つが、この新兵器の配備に伴うウクライナ側とロシア側双方からの誇大された発表を見ても、キエフが「ゲームを変える」技術を所有しているというウクライナ国防大臣の主張の裏付けにはなっていないようだ。

 戦争の厳しい現実は、どんな近代的な兵器システムも、効果的に使用されれば、相手に死傷者を与えることが可能だということだ。

 イゴール・ストレルコフ(Igor Strelkov)は、ロシアの民族主義者イゴール・ヴセヴォロドヴィチ・ギルキン( Igor Vsevolodovich Girkin)という偽名を使って、過去にFSB(国家保安局)やドネツク人民共和国の民兵組織で雇われていたことがある。彼のテレグラムチャンネルで、彼は新兵器配置後の破壊行為の一部を報告している。

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Ukraine threatened with ‘crushing blow’

 「この5日から7日の間に、10以上の大砲や弾薬の倉庫、いくつかの油槽所、約12の司令部、そしてほぼ同数の人員が、我が国の近郊と後方の拠点に攻撃を受けた。また、防空・砲兵陣地も数カ所やられた。人員と設備に大きな損失が発生した。」と彼は7月10日に書いている。

 ロシアのテレビチャンネル「Vesti VGTRK」の軍事ジャーナリストで特派員のアレクサンドル・スラドコフ(Alexander Sladkov)は、ストレルコフの情報を裏付けるかのように、自身のテレグラムチャンネルで次のように投稿している。「ウクライナのミサイルと大砲が我々の作戦決定センターをすでに何度も攻撃している。結果も出ている。このセンターは大きくはないが、重要だ。」

 ストレルコフとスラドコフの両氏は、両氏が(正しく)捉えていた、ウクライナ側とその米国・NATO支持者による攻撃が大規模に激化している現状に対するロシアの反応に否定的であった。

 米国とNATOが採用しているHIMARS砲台は、通常9基の発射台と数十台の支援車両で構成されている。米国は現在までに、ウクライナに8~12基のHIMARSを提供したとされ、その操縦には、米国陸軍が提供したドイツのグラーフェンヴェーア(Grafenwoehr)での3週間のトレーニングコースで特別な訓練を受けたウクライナの砲兵が配置されている。

 米国を拠点とするシンクタンクInstitute of Warによると、「ウクライナ軍は間接火器と米国提供のHIMARSシステムを用いて、ロシアの占領地の奥深くにあるロシアの軍事施設を狙うようになっている 」という。その結論:「西側が提供するHIMARSでロシアの重要な軍事施設を狙うウクライナ軍の能力の向上は、西側の軍事援助がいかにウクライナに新しく必要な軍事能力を提供しているかを示している」 。

 西側諸国が出資するプロパガンダ機関、キエフ・インディペンデント紙は、「7月7日までに、ロシアは主要な弾薬庫のほとんどと、占領下のドンバスにある多くの小規模な弾薬庫を失った。特筆すべきは、境界から50~80キロも離れたロシア支配地域内にまで入り込み、多くの重要な目標の破壊に成功したことだ」と報じている

 モスクワ出身でワシントンポスト紙に寄稿している軍事アナリストのマックス・ブート(Max Boot)は、HIMARSの性能に感動し、「この戦争を早く終結させるために、60基のHIMARSをウクライナに送れ」と自信たっぷりに論説を発表している。

 8台のHIMARSがロシア自慢の戦争マシンを屈服させたのなら、ウクライナが60基のHIMARSを持ったらどうなるか、ちょっと想像してみてほしい。待てよ、その疑問には答えがある。ウクライナ国防大臣レズニコフはサンデー・タイムズ紙のインタビューで、ゼレンスキーが「ウクライナ軍に、同国の経済にとって不可欠な沿岸部の占領地域を奪還するよう命じた」と明かしたのだ。

 ウクライナはロシアとの戦争に勝ちつつあるようだ。

Read more 

US-supplied HIMARS kill three civilians in Donbass-authorities

 もちろん、そんなことはない。全く違う。   
 HIMARSがウクライナ東部の戦場での物語を覆すことができる「超兵器」であるという考え方は、簡単に言えば、まったくナンセンスである。

 ロシアはこの3ヶ月の間に、ウクライナ軍を打ち負かすための戦争技術を完成させた。アメリカの有名な戦闘機パイロットから軍事理論家に転身したジョン・ボイド(John Boyd)は、軍事作戦に関わる行動段階を表す「ウーダ・ループ」(OODA-Loop。Observe:観察, Orient:判断, Decide:決定, Act:実行)と呼ばれる概念を作り出した。このウーダループを相手より効率的に使いこなすことができれば、「相手の意思決定サイクルの中に入り、敵の動きを手に取るように掴む」ことができ、敵を純粋に後手後手モードに押しやり、優位に立った側が勝利を収めることができる、というものである。

 ロシアはウクライナでの軍事作戦の間、相手国それぞれの「意思決定サイクルの内側」に入り、経済的、政治的、軍事的にこの紛争を支配してきた。

 HIMARSがこの現実を変えることはない。

 ロシア軍は、成功した軍事組織ならどれでもそうだが、高度に適応的である。それは現代の戦場で生き残るための必須事項だ。ウクライナ紛争は、近代に経験したことのないものであり、ロシア軍の指導者は、ドクトリンで定義された作戦理論を、ウクライナ東部戦線の厳しい現実に適応させる必要がある。約20万人のロシア軍が70万人以上のウクライナ防衛軍に対し、死傷率もロシアが有利な状態で、その意思を押し付けることができるという事実は、ロシアがOODAループを優位に活用している現実を証明している。

 結局のところ、HIMARSやその他のいわゆる「西側先進兵器」は、ロシア軍に組織的に敗北してきた同じ人間たちが振り回す道具に過ぎないのだ。ウクライナが4基、8基、12基...あるいは60基のHIMARSを採用しようが、これは変わらないだろう。

 まず何よりも、HIMARSの生存率が重要な要素。ロシアは西側が提供する兵器を破壊することを得意としているからだ。HIMARSの設置面積は大きく、発射装置で使用する弾薬を運ぶために何十台ものトラックが必要。車両は燃料を必要とし、弾薬は発射装置と同様に保護倉庫が必要である。このような大きな足跡は、有能な諜報機関ならどこでも発見できる印となる。実際、皮肉なことに、ウクライナで運用されるHIMARSの数が増えれば増えるほど、ロシアに探知されて阻止(つまり破壊)される可能性が高くなるのだ。

 これまでにモスクワは、ウクライナに最初に送られた4基のHIMARSのうち2基を破壊したと主張している(この主張についてはウクライナと米国が激しく否定)。同時にまた、HIMARS弾薬を保管していたいくつかの倉庫を破壊したと主張している。重要なのは、ロシアは軍事的な舞台で受動的な役者ではないということだ。HIMARSの配備は秘密ではなかったし、ロシアには戦場にHIMARSが登場することに対処する準備の時間が十分にあった。HIMARSは、適切に使用されれば、標的に死と破壊を与えられる必殺武器だ。キエフによると、このシステムはロシアの司令部に対する最近の攻撃で使用され、上級将校が死亡したとのこと(クレムリンはこの結果を確認していない)。

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Stocks of Western-supplied missiles destroyed in Ukraine-Moscow

 親ロシア派の軍事アナリストによれば、HIMARSの効果は、ウクライナ軍が長距離多連装ロケットシステムを数回に分けて一斉射撃する戦術によって高まったという。これにより、ロシアの地対空ミサイルが(ウクライナ側が)意図した標的の上空で交戦するようになる。その後ウクライナ軍は、HIMARSロケットを発射し、圧倒されたロシアの防空網を突き破ることができるのだ。

 しかし、ロシア軍の適応力は高い。それほど時間をかけずに、HIMARSの問題に対する適切な戦術的回答が開発され、採用されるだろう。一方、ロシア軍の活動はドンバス全域で衰えることなく続いており、ロシア政府は対立するウクライナ陣営を壊滅させるほどの支配を続けている。

 アレクセイ・レズニコフには申し訳ないが、HIMARSで事態を変えることはできない。
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米国民の過半数は、FBIをバイデン大統領のゲシュタポと考えている


<記事原文 寺島先生推薦>
Most Americans see FBI as ‘Biden’s Gestapo’ – poll

A new survey suggests declining public support for the bureau following the raid on Donald Trump's Florida home

(米国民のほとんどは、FBIを「バイデン大統領のゲシュタポ(秘密警察)」と見ている。世論調査の結果から。

新しい世論調査の結果から、フロリダにあるドナルド・トランプ邸での家宅捜査事件を受けて、国民のFBIに対する支持が低下していることが判明。)

出典:RT 2022年8月20日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月8日



ワシントンの連邦捜査局(FBI)本部。2022年8月13日撮影。 ©  AP / Jose Luis Magana

 新しい世論調査において、回答者の過半数が、FBIをジョー・バイデン大統領の「個人的なゲシュタポ」と見ていることが判明した。これは、連邦捜査局によるドナルド・トランプ前大統領への捜査に対する国民の捉え方が、ますます分極化していることを示すものだ。

 8月18日(木)にラスムセン社が発表した世論調査の結果から、FBIに対する米国民の見方は大きく分かれていることが明らかになった。回答者の44%は、フロリダにあるトランプ邸の家宅捜索により、FBIに対する信頼を失ったと答えていた。ただし回答者の29%もが、この家宅捜査によりFBIへの信頼感が強まったと答えている。なお回答者の23%が、「信頼感は変わらない」と答えている。

 トランプ氏の元顧問のロジャー・ストーンによる「FBIの上にいる悪徳政治家たちが、FBIをジョー・バイデン大統領の私的なゲシュタポのように使っている」との発言に対する見方については、 過半数(53%)が賛同し、うち34%は「強く」賛同すると回答した。53%というのは、昨年12月の46%という数字から増加している。ただしより最近の調査結果では、36%がストーンによるこの決めつけには同意していない。この結果は支持政党層により分かれ、「ゲシュタポ」と捉えることについての賛同者は、回答者のうち共和党支持層の76%、民主党支持層では37%であった。

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Purported purpose of Trump FBI raid revealed

 当局の発表と、差し押さえされなかった所有物の明細書から分かったことは、FBIが8月8日にフロリダのトランプ邸で行った家宅捜査の焦点は、ホワイト・ハウスから持ち出されたとされる機密文書の捜査におかれていたということだ。(なお、その機密文書の中には核兵器に関する最重要機密文書も含まれていたとされている)。さらにFBIは、トランプ邸から11種類の証拠物資を回収しようとしていたとのことだ。この捜査で何が見つかったのかについては不明のままだが、最近匿名の情報源からNBCが報じたところによると、FBIは押収した書類の精査に時間がかかっているとのことだ。

 トランプ氏の言い分によれば、政治的意図のもとで家宅捜査を行ったとしてFBIを非難しており、FBIはトランプ氏のパスポートや法律関連の特殊な文書を、押収すべきものではないと分かった上で「盗んだ」と主張していた。ただし、パスポートはその後返却済みのようである。トランプ前大統領の弁護士は、トランプ邸での所有物捜査の場に立ち会うことを許されず、さらにFBIは捜査中のトランプ邸内の監視カメラの作動も認めなかったと語っている。 
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ウクライナから出荷される穀物は誰のものか? アメリカの遺伝子組み換えアグリビジネス大手がウクライナの農地を掌握へ


<記事原文>
Whose Grain Is Being Shipped from Ukraine? America’s GMO Agribusiness Giants to Take Control of Ukraine Farmland

投稿元:グローバルリサーチ

投稿日: 2022年8月21日

著者:F・ウィリアム・エングダール

<記事飜訳 寺島メソッド飜訳グループ>

9月8日


 アフリカやその他の地域の飢餓危機を緩和するために、ウクライナの穀物を安全に輸送することを求めるここ数週間の大きな人道的騒動は、何段階にも渡って欺瞞的である。

 問題なのは、穀物が栽培されている土地を誰が所有しているのか、そしてその穀物が実際に違法な遺伝子組み換えの特許取得済みトウモロコシやその他の穀物であるかどうかということである。腐敗したゼレンスキー政権は、世界で最も生産性の高い「黒土」の農地を密かに支配してきた西側大手GMOアグリビジネス企業と静かに取引してきた。

2014年のCIAによるクーデター

 2014年2月、アメリカ政府が支援するクーデターにより、ウクライナの選出されたヤヌコービッチ大統領は命からがらロシアに逃亡することを余儀なくされた。2013年12月、ヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領は、数カ月にわたる議論の末、ウクライナの国債を150億ドルで買い取り、ロシアの輸入ガスの費用を33%引き下げるという約束で、ロシアの「ユーラシア経済連合」に加盟すると発表していた

 ロシアからの提案への対案は、EUへの準加盟というケチくさいものであった。そしてその対案は、ウクライナの貴重な農地を民営化し、遺伝子組み換え作物の栽培を許可し、厳しい年金削減と社会的緊縮を課すという非情なIMFと世界銀行の一連の融資をウクライナが受け入れることと結びついていた。IMFから170億ドルの融資を受ける見返りに、ウクライナは個人所得税を66%も引き上げ、天然ガス代も50%増しにしなければならない。また労働者は年金を受け取るために10年長く働かなければならない。その目的は、ウクライナを外国からの投資に開放することだった。グローバル企業の利益のために、IMFが経済をレイプするのはいつものことだ。

 米国とIMFは、米国が選んだ首相アルセニー・ヤツェニュク(ヤヌコビッチに対してCIAが支援した「マイダン抗議行動」のリーダー)のクーデター後の政府に対する要求の主要条項は、ウクライナの豊かな農地を外国のアグリビジネス大手、とりわけモンサントやデュポンなどの遺伝子組み換え大手に最終的に開放することであった。ヤツェニュク内閣のうち、財務相と経済相を含む主要な3人は外国人であり、アメリカ国務省のビクトリア・ヌーランドと当時のジョー・バイデン副大統領によってキエフに指示されたものである。ワシントンが課したIMFの融資条件は、ウクライナが遺伝子組み換え作物の禁止を撤回し、モンサントのような民間企業が遺伝子組み換え種子を植え、モンサントのラウンドアップを畑に散布できるようにすることであった。

 1991年にウクライナがソビエト連邦からの独立を宣言して以来、ウクライナの貴重な「黒い大地」の土地管理を維持することは、国政において最も議論を呼んだ問題の一つであった。最近の世論調査では、ウクライナ人の79%が外国の乗っ取りから土地を守ることを望んでいる。ウクライナはロシア南部と同様、貴重な黒土(チェルノゼム)を有している。黒土は腐植質に富み、生産性が高く、人工肥料をほとんど必要としない土壌である。

2001年モラトリアム

 2001年のウクライナの法律は、大企業や外国人投資家への農地の個人売買をモラトリアム(一時停止)にするものであった。このモラトリアムは、腐敗したウクライナのオリガルヒによる買い占めや、豊かな農地の外国アグリビジネスへの貸し出しを食い止めるためのものであったが、その頃までには、モンサント社や他の西側アグリビジネスがウクライナに大きく進出していた。

 1991年にウクライナがソ連から離脱したとき、ソ連の集団農場で働いていた農民たちは、それぞれ小さな区画を与えられた。飢えた外国のアグリビジネスへの売却を防ぐために、2001年にモラトリアムが決議された。700万人のウクライナ人農民が小区画を所有し、その総面積は7900万エーカーに及ぶ。残りの2,500万エーカーは国有地である。そして遺伝子組み換え作物の栽培は違法である。

 モラトリアムにもかかわらず、モンサント社、デュポン社、カーギル社など欧米の遺伝子組み換え作物業者は、密かに、そして違法に、ウクライナの黒い大地に彼らの特許取得済み遺伝子組み換え種子を撒きはじめた。小地主たちはウクライナの大物オリガルヒに土地を貸し、オリガルヒはモンサント社などと秘密協定を結び、遺伝子組み換えのトウモロコシや大豆を植え始めた。今は削除された米国農務省の報告書によると、2016年末までにウクライナの大豆の約80%、トウモロコシの10%が遺伝子組み換え種子から違法に栽培されていた。ゼレンスキーの2021年法では、この遺伝子組み換えへの門戸開放が大幅に拡大された。

コメディアンの登場

 2019年5月、悪名高いウクライナの腐敗したオリガルヒ(新興財閥)、イゴール・コロモイスキーの子飼いのウクライナ人テレビコメディアン、ヴォロディミル・ゼレンスキーが、「政府の腐敗に対する悲劇の民衆反乱で大統領に選ばれた」とされている。しかし、ゼレンスキーの2019年の最初の行動のひとつは、2001年の土地モラトリアムを覆そうとすることだった。農民と市民は、ゼレンスキーが提案した変更を阻止するために、2020年を通じて大規模な抗議活動を展開した。

 最終的に、コロナ・ロックダウン規制を利用して市民抗議活動を禁止し、2021年5月、ゼレンスキーは、農地市場の「鍵 」となる、土地を規制緩和する法案第2194号に署名した。彼は正しかった。農民の反対を静めるための卑劣な行動として、ゼレンスキーは新法により、最初の数年間はウクライナ国民だけが貴重な農地を売買することができると主張した。しかし、モンサント社(現在はバイエル社の傘下)やデュポン社(現在はコルテバ社)などの外資系企業や、ウクライナに3年以上進出している企業も目的の土地を購入できるという大きな抜け穴には触れなかったのだ。

 2021年の法律では、悪名高い腐敗した市町村政府にも所有権が与えられ、彼らは土地の使用目的を変更することができるようになった。2024年1月以降は、企業だけでなくウクライナ国民も最大1万ヘクタールの土地を購入できるようになる。そして2021年4月の土地市場法の改正、「土地関係の分野における管理システムの改善と規制緩和に関するウクライナの土地法令とその他の立法行為の改正」は、外国のアグリビジネスが豊かなウクライナの黒土を支配するための巨大な抜け穴をもう一つ開いたのである。この改正は、土地の用途を農地から商業地に変更することで、外国人への土地売却の禁止を回避する。そうすれば、外国人を含む誰にでも売ることができ、農地として再利用することができる。ゼレンスキーはこの法案に署名し、土地所有権の変更について国民投票を実施するという選挙公約を反故にした。

 ウクライナの優良農地を手に入れようとするアメリカの遺伝子組み換えアグリビジネスの利害に疑問があるのなら、アメリカ・ウクライナビジネス評議会の現在の理事会を見ればわかるだろう。その中には、世界最大の民間穀物・アグリビジネス企業であるカーギル社も含まれている。特許を取得した遺伝子組み換え種子と致死性の農薬であるラウンドアップを所有するモンサント/バイエル社も含まれている。デュポン社とダウ・ケミカルズ社の巨大な遺伝子組み換え作物の融合企業であるコルテバ社も含まれる。穀物カルテルの巨人であるバンジ(Bunge)社とルイス・ドレフュス社(Louis Dreyfus)も含まれる。大手農機具メーカー、ジョン・ディア社も含まれる

 ゼレンスキーが選挙公約を破った背景には、こうした強力なアグリビジネス企業がいたとされる。

 バイエル/モンサント、コーテバ、カーギルの3社は、ウクライナの黒土の優良農地1670万ヘクタールをすでに支配しており、IMFと世界銀行から事実上の賄賂を受け取り、ゼレンスキー政権は屈服して売り渡したのである。その結果は、つい最近までヨーロッパの穀倉地帯だったところが、将来、非常に悪化してしまうだろう。「ウクライナは今、遺伝子組み換えカルテル企業によってこじ開けられ、2016年に遺伝子組み換え作物を禁止したロシアだけが、遺伝子組み換えのない世界の主要穀物供給国として残されている。EUは、遺伝子組み換え作物のための長く確立された重要な承認プロセスを覆し、遺伝子組み換えの乗っ取り防止の水門を開く新しい法律に取り組んでいる」と伝えられている。

*

F. エングドール:プリンストン大学で政治学の学位を取得し、石油と地政学に関するベストセラー作家である。

グローバリゼーション研究センターの研究員。

特集画像はNEOより
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ウクライナ、ロシア語についての新たな禁止令を発令


<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine issues new ban on Russian language
Kiev has removed a range of courses from the national school curriculum
キエフは、国定教育課程から一連のコースを削除した

投稿先:RT

2022年08月16日

<記事飜訳 寺島メソッド飜訳グループ>

2022年09月04日


© ピエール・クロム / ゲッティ イメージズ

 ロシア語とロシア文学の科目は、もはやウクライナで教えられることがなくなることが、8月16日(火)に教育省のウェブサイト上で更新された教育課程から明らかになった。

 除外された科目の中には、「ロシア語と外国文学」、「5-9年生のためのロシア語での指導による一般教育コースのロシア語」、および「10-11年生のためのウクライナ語またはロシア語による指導」があった。

 ほとんどすべてのロシア語とベラルーシ語の本は学校カリキュラムから除外されるが、同省は、ニコライ・ゴーゴリやミハイル・ブルガーコフなど、ロシア語で書かれているが、「その人生と仕事がウクライナと密接に関連していた」著者によるいくつかの作品は許可する、と指摘している。

 更新された教育課程によると、ウクライナの学校での外国文学という科目は、ジャン・ド・ラ・フォンテーヌ、O・ヘンリー、アンナ・ガヴァルダ、ジョセフ・ロスなどの作家の作品に焦点を当てている。

 同省はまた、「新しい歴史学の発展を考慮に入れるために」ウクライナの学校の歴史の科目の学習内容を更新する、と発表した。具体的には、6年生から11年生までの「ウクライナと世界史」の科目内容を更新し、キエフとモスクワの間で進行中の軍事紛争を含める予定だ。

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ウクライナの都市はロシア語を禁止

 先月、ウクライナ当局は「ウクライナ語を国家言語として確実に機能させる」という法律の新段階をとして、ロシア語を話すことに対する罰金を導入した。この法律は、政府機関、教育、科学、メディアなどの機関で働く者に適用される。

 「国民は社会生活のあらゆる面でウクライナ語を使用しなければならない」と、ウクライナ語保護委員のタラス・クレメンは説明し、違反者を地元の法執行機関に報告するよう人々に求めた。

 ウクライナではロシア語を母語とする地域がたくさんあり、特にウクライナの東部と南部の多くの都市ではロシア語が優勢である。しかし、キエフは、ほとんどの分野でロシア語の使用を禁止する措置を講じている。

 モスクワは、ロシア語に対する弾圧に何年も前から懸念を表明してきた。昨年9月、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、「ウクライナにおけるロシア語に対する差別は、大惨事の様相を呈している」と述べた。
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ロシア兵たちがウクライナで毒性の強い化学薬品を浴びて入院


<記事原文 寺島先生推薦>

Russian soldiers in Ukraine hospitalized with severe chemical poisoning – Moscow

Traces of the toxin Botulinum toxin Type B have been discovered, the Defense Ministry says

(ロシア兵たちがウクライナで強い毒性の化学薬品を浴び入院したとロシア当局が報道。

ロシア国防省は、ボツリヌス毒素B型の痕跡が検出されたと発表。)

出典:RT 2022年8月20日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月5日


焼かれた毒物含有弾薬の収集箇所となっている屋外貯蔵所© Sputnik / Ilya Pitalev

 ウクライナでの軍事作戦に従事していたロシア兵数名が、強力な毒性の化学薬品を浴びて入院した、と8月20日(土)、ロシア国防省が発表した。

 被害を受けた兵士たちの検体から「人為起源の有機毒物」であるボツリヌス毒素B型の痕跡が検出された、と同省は述べ、ウクライナ当局を「化学テロ行為を行った」として非難した。

 ロシア兵たちが、「深刻な毒を受けた兆候を見せたため入院した」のは、7月31日にザポリージャ地方のバシリフカ村付近に駐留した後のことだった、と同省は述べている。

「ゼレンスキー政権がロシア兵たちや一般市民に対する毒物を使ったテロ攻撃を承認している」のは、ドンバスなどの地域での敗北が続いているからだ、と同省は主張した。

 ロシア当局は、当該兵士たちの臨床検査の結果を化学兵器禁止機関 (OPCW) に送付する予定だ。

 ボツリヌス毒素は、しばしば「奇跡の毒物」と呼ばれており、最も毒性の強い生物化学物質のひとつとして科学界で知られている毒物だ。ボツリヌス菌によって産生され、アセチルコリン神経伝達物質の放出を阻害し、筋肉の麻痺を引き起こす効果がある。

 ボツリヌス毒素 A 型は、ここ数十年間、薬用としては少量で使用されてきたが、それは特に筋肉の過緊張を和らげる治療薬としてだ。美容分野では、ボトックスという短縮名でも知られている。

READ MORE: Russia warns of Ukrainian false-flag chemical attack

 ただしボツリヌス毒素は、生産や分配が容易にできるため、生物兵器として使用される危険があり、その毒性による致死率も高い薬品だ。回復するには、長期間に渡る集中治療しか手立てがない。
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