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「紛争を望んでいるのか?お前がやってみろ!」
フィリピンのドテルテは、アメリカに挑む。
「艦隊を連れてきて、中国との戦争を宣言してみろ!」

‘Want trouble? You first!’ Philippines’ Duterte dares US to bring its fleet & declare war on China

RT Home/World News/ 2019年7月9日

(翻訳:新見明 2019年7月28日)

<記事原文>寺島先生推薦
https://www.rt.com/news/463698-duterte-china-war-usa/

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アメリカ航空母艦ミニッツ© Flickr/US Navy / Seaman Aiyana S. Paschal

「もしワシントンが、フィリピンに中国と戦争させたいのなら、アメリカ軍がやって来て、まず闘うべきだ」とロドリゴ・ドテルテ大統領は非難した。アメリカの同盟国を北京の「餌」として使おうとしているのだと。

「アメリカはいつも、我々を追い詰めて、我々を扇動し・・・、俺を餌にする。フィリピン人はミミズだと思っているのか?」ドテルテは金曜日、レイテ州の演説でそう述べた。メディアが注目したのは日曜日だった。

「じゃあ言おう。あんたが、あんたの飛行機を、あんたの船を南シナ海へ持ってくればいい。あんたが最初に攻撃しなさい。我々は、あんたの後ろで、見ているよ。さあ、やりなさい。闘いましょう」。そして「紛争を望んでいるのですか。よろしい。さあ、やりなさい」と彼は付け加えた。



その発言がなされたのは、マニラの政府が、より強固な中国に対する姿勢を求めるアメリカの要求と、北京の南シナ海における海洋拡大、特にフィリピンが自分のものだと主張する島々のことで、板挟みになっているときだった。

アメリカは、中国が島を増強していることがわかっていた。アメリカ海軍は日本に第7艦隊を配備しているのにと、大統領はコメ加工工場の開設式で、アァンガランの聴衆にそう語った。

「なぜ彼らは第7艦隊をスプラトリー諸島に送らないのか。そして『おい、お前、公海上に人口島を建設することなど考えられない。それは国際法でまさに禁止されている。お前は、我が友人のフィリピンの排他的経済水域内で島を建設していることななるのだぞ』」とドテルテは問うた。「彼らに島をつくらせておいて、いま島はそこにある。全ての銃はそこにあり、全てのミサイルは配備されているのだ。」


Also on rt.com Duterte warns China of ocean grabbing free-for-all amid South China Sea dispute (さらに読む)「ドテルテは、中国に対して、南シナ海の論争の最中に、勝手に海を自分のものにしていると警告する」


先月、フィリピン漁船が中国船と衝突して、沈んだ。22人の乗組員が自力で抜け出さなければならなかった。マニラの軍隊は、それを海の「ひき逃げ」と呼んだ。結局、彼らはベトナム船に全員救助された。ドテルテはその事故を「小さな海難事故」として片づけた。北京に自制を求めたが、事態をエスカレートさせなかった。

「我々は、中国との戦争に決して勝てない」、と大統領は金曜日に説明した。「私は兵士達に、地獄の入り口で闘わずに死ねと命令できない。私はそうできなかった。」

もし彼が20年権力の座に就くことになったら、あらゆる村に「5発の巡航ミサイルと大砲」を配備できるだろう。しかし現実はそうなっていない。ドテルテは中国が「やり過ぎないように」望むと付け加えた。

ドテルテが、アメリカの同盟国に対して厳しい言葉を発したのはこれが最初ではない。5月、彼はアメリカに「親分風」を吹かせすぎる、そして武器取引の約束違反を「尊重しない」と非難した。ワシントンは2016年、フィリピン警察向け2万6千丁のライフル販売を、人道的懸念を表明して中断した。


Also on rt.com ‘US has no honor!’ Duterte slams ‘bossy’ Washington for breach of arms deal
(さらに読む)「アメリカは約束を守らない!」とドテルテは「親分風の」ワシントンを武器取引不履行で非難する。


欧米人権団体によると、ドテルテが就任して麻薬戦争を開始してから、何千人という人々が超法規的に殺されている。アムネスティ・インターナショナルは、人道に対する犯罪としてドテルテに対する調査を求めた。

しかし、月曜日に発表された世論調査は大統領の記録的な人気を示していて、80%が彼の仕事を評価していて、不満を表明しているのは12%だけである。それは2017年の前回の記録より2ポイント高く、今年3月も同様に高い支持率だった。
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ビデオ:マヌエル・セラヤ大統領インタビュー
「クーデターがホンジュラスを地獄に変えた」
アメリカによる政権転覆10周年

Video: ‘The Coup Turned Honduras into Hell’: Interview with President Manuel Zelaya on the 10th Anniversary of Overthrow by the US

マヌエル・セラヤとアニヤ・パランピル

グローバル・リサーチ 2019年7月4日

グレーゾーン 2019年7月1日

(翻訳:新見明 2019年7月24日)

<記事原文>
https://www.globalresearch.ca/coup-turned-honduras-hell-interview-president-manuel-zelaya-10th-anniversary-overthrow-us/5682633



グレーゾーンのアニヤ・パランピルによる、ホンジュラス大統領マヌエル・セラヤの独占インタビュー。彼を倒したアメリカ支援の右翼軍事クーデターの10周年で。

インタビューのテーマは、極端な暴力、麻薬売買、経済不況、移民危機、フアン・オルランド・エルナンデス、ウィキリークス、ベネズエラ、その他。

全インタビューの書き起こしは以下に

***

アニヤ・パランピル:大統領、お越しくださってありがとうございます。あなたが見事にホンジュラス大統領に選ばれましたが、その地位をアメリカ支援のクーデターで追いやられて10年になります。その時以来アメリカは何を成し遂げ、あなたの国をどう変えたのでしょうか。

マヌエル・セラヤ*1:社会契約、それを我々は共和国憲法、国の憲法と呼ぶのですが、その社会契約が壊されたとき、次に来るものは必然的に強者の法(適者生存)です。犯罪、殺人、拷問。いつも反対派に対して強者の側が勝ちます。

それでホンジュラス人民が犠牲になりました。権力を持った側はアメリカの支援があったからです。アメリカはクーデターで大きな利益をえました。そして犯罪の受益者が主要な容疑者であると言われる刑法の原則です。

アメリカはどのように利益を得ているのか。アメリカは、ほとんど完全にホンジュラスを支配しています。米州機構(OAS)を通じて司法を支配しています。アメリカ南方軍を通じて安全保障を支配しています。経済を支配しているのはIMF、世銀、米州開発銀行(IDB)を通してです。

アメリカはホンジュラスの大手メディアを支配しています。大手メディアの意見に大きな影響力を持っています。多くの教会に資金援助しています。教会は北アメリカのNGOから基金を得ています。そしてアメリカはホンジュラスのNGOに資金援助しています。アメリカは国家権力を支配しているのです。

このように、ホンジュラスのような貧しい国の決定にかなり介入してきます。支配者達は保護を受けているので、全てを北アメリカに捧げます。



アニヤ・パランピル:最近の平均的ホンジュラス人への影響はどうでしょう。

マヌエル・セラヤ:貧困は増大しました。人々はさらに貧しくなっています。貧困率は既に住民の70%を超えています。犯罪は増加しました。麻薬取引も増加しました。アメリカ国務省の報告によれば、クーデター後のホンジュラスの麻薬取引はほぼ2倍になりました。さらにその報告は、ホンジュラスは「麻薬取引天国」になったといっています。

対外債務は増加しました。彼らが私を銃口で追い出したとき、対外債務は30億ドルでした。今10年たって、140億ドルになりました。それでこの国は経済成長の欠如、投資の欠如、人権侵害の深刻な問題を抱えています。

では一つだけ証拠を出しましょう。アメリカに向かう[移民]キャラバンは、ホンジュラスからです。アメリカ支援のクーデターが、ホンジュラスを地獄に変えたからです。

アニヤ・パランピル:この状況はどうなんですか。この10年で、何があなたのリブレ党の発展に貢献したのですか。

マヌエル・セラヤ:私達はクーデターに対する反対党です。そしてこの10年間、クーデターを実行した人々が支配してきました。彼らはクーデター派の落とし子です。

アニヤ・パランピル:そしてこのことが、ここでの社会運動を強化することにつながったのですか。

マヌエル・セラヤ:そうですね、社会運動は党派的政治理由では成長しません。それらは電気が民営化され、電気代を支払うことができないから成長したのです。それらは民営化されたのです。そして問題は、それらは私企業のものになっただけではありません。私企業は効率がいいのですが、値段が高いのです。

支配者にとって最も居心地がいいことは、「安全保障は、私達のためにアメリカ南方軍によって管理されるだろう」ということです。「兵士達は私のために国内の安全を守ってくれるだろう。」「そして私企業は私のためにお金をどうにかしてくれるだろう」。だから、支配者は何をするのか。何もしない。ただ儲けを彼の手下に配るだけです。

アニヤ・パランピル:ホアン・オルランド・エルナンデス(JOH)とはどんな人物ですか。そしてなぜ、クーデター後10年の今、街頭で混乱が再燃し、フアン・オルランド・エルナンデスの退陣を要求しているのですか。

マヌエル・セラヤ:彼(JOH)はクーデターの子です。彼は重大なパーソナリティ障害があります。例えば、私は大統領でした。そして私は街頭を歩いていました。そして人々は私を迎え入れてくれました。そして彼らは私に言うのです。「やあ、メル!やあ、大統領!」と。しかし、彼(JOH)は装甲自動車で、ヘリコプターで行くのです。彼(JOH)は大勢の保安要員と共に行動するのです。

私の考えでは、彼は精神障害を抱えているのではないか。彼は大統領である事は、たいしたことだと思っている。そして牧師がやってきて、彼は神に選ばれたと告げる。だからさらに悪くなる。そして彼は現実とかけ離れた人物のように行動し始めるのです。

人々は、飢えのため抗議しているのです。そして政治のためにも抗議していると思うのです。そして彼は、アメリカや右派、保守支配階級が聞きたくなるようなスピーチをアメリカに向かって話すのです。「ホンジュラスでは、テロがある。[ベネズエラ大統領ウゴ・]チャベスの輩が、ホンジュラスにいるのだ。そして彼らは我々に影響を与え、麻薬取引をしているのだ」と。

彼は精神病を病んでいると思う。

アニヤ・パランピル:では、腐敗の告発についてはどうですか。私が今日話したホンジュラス人の何人かは、JOHはホンジュラスで最も裕福な人間の一人だ、と話してくれました。

マヌエル・セラヤ:腐敗は蔓延しています。彼らは社会の保安システムを壊しました。ご覧なさい、不法な政府をどのように維持しているかを。人々を買収するのです。もしそれらが合法なら、彼らは買収する必要はないのです。それらは社会契約の成果なのですから。

しかしクーデターがあるときは、不正行為があります。だから彼らは自分たちが生きながらえるためには、制度を腐敗させる必要があるのです。アメリカがクーデターを支援していることは、独裁者を支援していることになるのです。

アニヤ・パランピル:ホンジュラス人たちはこうも語ってくれました。ほんの少数の家族グループが、産業や特にメディア部門で、国の大部分を支配しているのです。クーデターにおける、またあなたが言う独裁制を維持するためのメディアの役割について話していただけますか。

マヌエル・セラヤ:それが資本主義が機能するやり方なのです。アメリカやフランスやどこでも。資本主義はたった一つの原則に基づいています。つまり、富の蓄積です。それがここで、また世界中で機能しているやり方なのです。

多国籍[企業]の少数エリートが、彼らのために儲けてくれる国の人々と結びついているのです。彼らはビジネスをし、そしてそのビジネスが、彼らのための安全を保障する必要をつくり出すのです。

READ MORE:Action Alert: NYT Claims US Opposed Honduran Coup It Actually Supported
(さらに読む)「抜け目ない行動:ニューヨーク・タイムズの主張:アメリカはホンジュラスのクーデターに反対したが、実際はアメリカが支援していた。」


彼らは競争を許容しない。私は、ウゴ・チャベスのベネズエラから、石油を輸入しました。そして彼らは自分たちの合意を維持しなければならないと主張したのです。だから彼らはベネズエラを受け入れなかった。それがクーデターの背後にある動機の一つでした。

アニヤ・パランピル:そして当時のアメリカ大使チャールズ・フォードがあなたに話していたと思うのです。「あなたが、これをすることは許されない」と。まるで彼が外国大使として、こうする権利があるかのように話していました。

マヌエル・セラヤ:アメリカは忠告する。もしあなた方が従わないなら、報復手段によって応える、と。アメリカ大統領ジョージ・W・ブッシュはそう私に言った。ジョン・ネグロポンテは私にそう言った。フォード米大使は私にそう言った。そして他の政府役人も。

ブッシュが私にこう言った。「あなたはウゴ・チャベスと関係を持つことはできない」と。ブッシュの国務副長官ジョン・ネグロポンテも私にこう話した。「もしあなたがALBA(ボリバル同盟)*2に署名するなら、アメリカと問題が生じることになる」と。

だが、私はALBAに署名した。そして私は、もし機会があるなら、もう一度署名するだろう。なぜなら、それはホンジュラスの発展に役立つからだ。

私はブラジルから支援が必要だった。ベネズエラからも、アメリカからも、ヨーロッパからも支援が必要だった。我々はアメリカだけに頼るわけにはいかない。アメリカは、自分の利益しか考えないからだ。アメリカは一つの国にすぎない。

アニヤ・パランピル:ウィキリークスの意義についてコメントをいただきたい。あなたの国の歴史において、もちろんその地域においても。エクアドル政府の助力の面で、ジュリアン・アサンジに現在起こっていることをどう思われますか。

マヌエル・セラヤ:ジュリアン・アサンジは、今日、明日、そして永遠に、世界の自由の象徴です。彼は将来、偉大な予言者のような人になるでしょう。当時彼らは、ずっと抑圧されていました。そして後に彼らはシンボルとなりました。ジュリアン・アサンジもそうなるでしょう。

ジュリアン・アサンジは秘密のない、開かれた世界、自由な世界を宣言したのです。もちろん彼は今日の[権力]側に影響を及ぼしました。しかし将来、私や他の世代も、アサンジの例に倣うでしょう。

アニヤ・パランピル:フォード大使の話に戻りましょう。彼がここの大使館の仕事を終えた後、彼はアメリカ南方軍(SOUTHCOM)の仕事につきました。軍隊です。米軍があなたに起こったことに対してどのように中立であり得るか、またあなたが追放された後、国内での米軍の存在がどのように増大してきたかについて話していただけますか。

マヌエル・セラヤ:[ホンジュラスの]兵士は、スクールオブアメリカ*3で訓練されています。全ての訓練はアメリカと共に行われます。兵士達にとって彼らの人生の目標はアメリカ海兵隊のようになることであり、アメリカの兵士のようになることなのです。
  
そしてここでアメリカは軍隊と警察を支配している。彼らは、アメリカがさせたいことをしている。彼らは占領軍なのです。

アニヤ・パランピル:私はこの地域、特にニカラグアについて少し話したい。彼(ダニエル・オルテガ)が去年直面したアメリカ支援のクーデターの試みについてどう思われますか。今月で、ニカラグア政府がアメリカ支援の体制転覆作戦を打ち破ってから1年になると思うのですが。

マヌエル・セラヤ:私が[クーデターの後]戻るとき、私はホンジュラスへ帰る試みを何度かしました。ワシントンからホンジュラスへ戻るとき、私は着陸できませんでした。軍隊が私を阻止したからです。だから私はニカラグア国境のラス・マノスから戻らなくてはなりませんでした。その時、私は密かにブラジル大使館に入りました。2年後、私はドミニカ共和国からニカラグアへ、ニカラグアからホンジュラスへ戻ったのです。


                                 (訳者挿入地図)
[
ニカラグア大統領]ダニエル・オルテガを倒そうとするアメリカとの関連で、以前1980年代にも既に同様のことが行われました。アメリカはニカラグアと闘うためにここホンジュラスのコントラを武装させました。その時以来、私はいつもニカラグア人と闘おうとするここホンジュラスのアメリカ占領に抗議しました。そして人々は[今日]、オルテガ政府に賛成投票をしたのです。彼は選挙で選ばれました。

今、アメリカは彼を倒すことはできていません。今、彼は強固です。今、オルテガは多くの人民の支持があります。そして彼らが過去にホンジュラスから支援したようには、オルテガを倒すことができると私は思いません。

アニヤ・パランピル:あなたは、あなたのリブレ党とサンディニスタ運動*4はどう関連していますか。そしてサンディニスタ運動からどんな教訓を得ましたか。

マヌエル・セラヤ:それらは二つの異なった歴史的局面です。サンディニズモは、軍隊の下士官から発展し、20世紀初頭に山にこもった。そして彼は、サンディニスタ国民解放戦線(FSLN)と呼ばれる反帝国主義勢力の党を創設した。この党は闘いに勝利し、ソモサ独裁政権を倒した。そして今は民主的に組織されて、権力を維持している。

我々(ホンジュラスのリブレ党)は、武力闘争から出てきた党ではない。我々は戦争から出てきた党ではない。我々は革命的で、民主的な、しかも平和的な運動から生まれたのです。クーデターに反対して。そしてクーデターを支援する人々に反対して。アメリカはクーデターを支援した。

アニヤ・パランピル:私はあなたの個人的は政治的進化についてお伺いしたい。どうしてかというと、あなたが選挙で選ばれたとき、あなたは中道左派的運動をする党の一員と考えられていたが、今は社会主義について語っておられる。何故あなたは変わったのか、そして今、あなたは自分をどのように位置づけますか。

マヌエル・セラヤ:実際は中道右派です。(中道左派ではない)。それは進化です。なぜなら右派は終わったからだ。彼らは武器を持ち、クーデターをし、汚職や詐欺をし続けている。

人類の未来は社会主義であらねばならない。あなたは社会的存在です。アリストテレスは、我々は理性的な存在だといっています。人間は理性的な動物です。しかし現在、人間は全般的に社会的な存在であると思います。社会なしには男も女も生きながらえることができません。我々が考え、感じることは全て、我々の社会環境と関連しています。

だから人類はどこへ向かって歩んでいくべきなのか。個人主義へか、利己主義へか。個人的利害へか、または社会的利害へか。人類は、社会的利害へ向かって歩んでいかなければなりません。

人類の未来は社会主義者です。我々は1万年か、それ以上戦い続けなければならないかもしれない。しかし将来、もし人類が社会的に進歩しなかったら、我々は洞窟で生きることになるかもしれません。適者生存の法則に従って。人間は発展し、進歩して、社会的になっているのです。

私は進歩的政治哲学の中で育ちました。しかし今、私は新しい政治に進化しました。最初リベラルで、親社会主義でしたが、今は民主社会主義者です。

アニヤ・パランピル:あなたは、「ピンクの潮」*5、特にベネズエラのウゴ・チャベスの政府からどのような影響を受けましたか。


Image result for Manuel Zelaya + hugo chavez
画像:マヌエル・セラヤ+ウゴ・チャベス

マヌエル・セラヤ:そですね、まずどのようにして兵士のチャベスが、社会主義者になったかを問わなければならないでしょう。もしあなたがこの説明を見つけるなら、どうやって地主の私が、資本主義者から社会主義者になったかを説明できるでしょう。それは精神の高まりです。それは人間への確信です。

資本主義は、非常に野蛮です。資本主義は人類の未来ではありません。もし資本主義が人類の未来であるなら、人類は破壊されます。人類は打ち負かされます。資本主義は失敗する運命にあるのです。地球も同様です。

人類の未来は社会的でなければなりません。簡単です。お金ではないのです。商業ではないのです。人類を導くのは単に経済活動ではないのです。いや、それらは社会に従属するべきなのです。

私企業が存在するのはいいでしょう。私的イニシアティブがあるのもいいでしょう。資本がある事もいいでしょう。しかし資本が世界を指図することはよくないのです。いや、資本を導くのは世界であるべきなのです。これは逆転させた世界です。

私が、国の最高の政府の地位に就いたとき、ホンジュラスのような小さな国でさえ、その時私は学びました。資本を扱うには、資本を人民主権に従属させるほかないのです。資本は存在し続けるでしょうが、それは人民の主権に基づく計画に従属させるべきなのです。

人民の声は神の声です。それを信じなければいけません。

アニヤ・パランピル:クーデター当時、チャベスのように、あなたの国で 憲法制定会議のプロセスを追求していました。ここでの国家の特性を変えるために。なぜそれが、ここのオリガルヒやアメリカ政府を脅かしているとお考えですか。

マヌエル・セラヤ:問題はうまく公式化されていない。トーマス・ジェファーソンを知っているでしょう。ジョージ・ワシントンを知っているでしょう。彼らはアメリカ合衆国を、憲法と共につくり出した。

どうしてチャベスのことを言及するのか。チャベスは21世紀の人です。ジェファーソンとワシントンは1776年の人です。アメリカ独立戦争は反帝国主義、反大英帝国との闘いだった。彼らは憲法制定議会をつくり出した。そしてアメリカには憲法があります。憲法制定議会を発明したのはチャベスではないのです。それはジェファーソンとワシントンです。だからなぜ国家が形成される方法を恐れる必要があるのでしょうか。

社会的協定が破られたとき、貧困があり、多くの飢餓があり、多くの人が困っていて、大多数が経済的、社会的状況に我慢できないとき、憲法の対話に戻らなければならない。これは社会の基本事項だ。

アメリカの中ではクーデターはない。いや、そこの大統領たちは、いつ何時殺されるかもしれない状況に備えなければならない。ここではクーデターがある。そしてこれらのラテンアメリカの国々では、170回クーデターがあった。そしてそれらの大部分はアメリカによって支援されていた。

そして契約が破られたときどうしますか。憲法制定議会から始めるのです。

アニヤ・パランピル:あなたがクーデターに直面しているとき、マドゥーロはベネズエラの外務大臣でした。そしてあなたは当時彼と緊密に連携していました。彼をどう思いましたか。ニコラス・マドゥーロの印象はどうでしたか。そして今ベネズエラで起こっていることをどう思われますか。

マヌエル・セラヤ:二つのことがあります。一つはチャベスは私を救出しなかった。チャベスはホンジュラスのような極右の国に見向きもしなかったでしょう。ホンジュラスはアメリカによってほとんど支配されていましたから。そして今は嘗てよりさらにひどいです。そして私は、中道右派である大統領でしたが、チャベスは一度も私を救出しなかった。

私はチャベスに手をさしのべた。私はそれをはっきりさせなければいけない。チャベスは一度もホンジュラスに興味を示さなかった。これはアメリカのオットー・ライッヒ、ロバート・キャメロン、ロジャー・ノリエガのような右翼活動家の発明だ。私はチャベスにここに来て私達を助けるように納得させなければならない。石油やALBA同盟やペトロカリブ*6などで。

*6ペトロカリブ
   英語から翻訳-ペトロカリブは、優先支払いの条件で石油を購入するための、
   多くのカリブ海諸国とベネズエラの石油同盟です。同盟は2005年6月29日
   にベネズエラのプエルトラクルスで始まりました。 2013年、ペトロカリブは、
   石油を超えて経済協力を促進するために、アメリカのボリバル同盟との
   連携に合意した。 ウィキペディア(英語)


二つ目に、ニコラス・マドゥーロ、そう彼は根っからの社会主義者だ。彼は労働者で、労働者階級出身だ。資本から搾取されてきた階級の出身だ。労働力を売る階級の出身だ。そして資本家が喜ぶような権利を拒否する。彼はチャベスのような社会主義者だ。

そしてさらに、チャベスによって始められたボリバル革命は社会主義的確信をもってニコラス[・マドゥーロ]に受け継がれた。そして彼は偉大な能力と、感受性と、良心を持って指導している。

彼らは、それをあなた方にわからせたくない。しかしニコラス[・マドゥーロ]は大きな国際的威信のあるラテンアメリカの指導者なのです。

アニヤ・パランピル:私達はクーデターから10年がたちました。一歩一歩他の進歩的な政府が摘み取られ、アメリカの手先に戻っています。我々がいつか進歩的政府がラテンアメリカに戻ってくる日を見る希望はどうやったら訪れるのでしょうか。

マヌエル・セラヤ:どの帝国も永遠ではありません。永遠の神のみが例外です。アメリカは第二次世界大戦の終結以来、世界の多くを支配しました。しかしそれは深刻な矛盾を抱えています。かなり大きな貧困層を抱えた国なのです。国内的に深刻な矛盾を抱えているのです。

そしていつか近いうちに、北アメリカの支配階級は、世界で生き残るためには、軍事費を減らし、医療や健康保険や教育やよりよい生活を人民に与えなければならないでしょう。いつか彼らは世界の兵隊であること、つまり世界の警察である事が、彼らか考えるほど多くの利益をもたらさないことがわかるようになるでしょう。

そしてある日彼らは、軍事独裁より民主的国家のほうがいいことがわかるようになるだろう。彼らが変わるとき、それは遅すぎないことを願おう。

世界は拍手するだろう。そして一方彼らが我々の国にファシストや、独裁者を据え付ける帝国主義的秩序を植え付けている。私達の川や海や森や大地や労働者階級から搾取する超国家企業を据え付けている。その時彼らは彼らは非難され、それは私達の国には適さない行いだと言われるだろう。

私は北アメリカの人々に反対する理由は何もない。まして北アメリカの社会に反対する理由もない。私はリンカーンやケネディやジェファーソンやワシントンを称える。彼らはアメリカを代表してきた。しかし私が非難するのは、我々のような小さな国対する帝国主義的行いである。

民主主義を強化するのではなく、アメリカは軍事独裁を強化している。そしてそれが我々の国を貧困にして、移民がアメリカに移動しているのです。そして移民がアメリカに移動すると、彼らは不平をこぼし始める。

*

アニヤ・パランピルは、ワシントンDCを拠点とするジャーナリストである。彼女は以前デイリー・プログレッシブ・アフタヌーンニュース番組の「RTアメリカへの質問」でホストを務めたこともある。彼女は数々のドキュメンタリーをつくり、報道した。その中には朝鮮半島やパレスチナからの現場報告もある。

The original source of this article is The Grayzone
Copyright © Manuel Zelaya and Anya Parampil, The Grayzone, 2019

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[訳注1:エマヌエル・セラヤ]
2009年にクーデターで国外に追われたホンジュラスのセラヤ大統領が本国に帰還した時のインタビューです。ホンジュラスは1980年代、レーガン政権によるニカラグアのサンディニスタ政権転覆計画の拠点となり、中米ではコスタリカとならんで対米関係を重視する国とされていました。セラヤ大統領も就任当時は前体制を踏襲していましたが、2007年の原油高騰をきっかけにそれまでの親米路線を転換し、2008年、ベネズエラ主導の石油価格協定ペトロカリベ(Petrocaribe)と米州ボリバル代替構想(ALBA)に加盟すると発表 しました。

ホンジュラスは世界でも最貧国の1つで、国連の2011年度人間開発指数も179カ国・地域中121位、 外務省の資料によると一日1ドル以下で暮らす人口割合は14.9% となっています。セラヤ大統領は2008年に最低賃金を引き上げ、国内の富裕層との対立を深めていました。セラヤはこのインタビューの中で、当時の駐ホンジュラス米大使ロレンスの前任者チャールズ・フォードがクーデターの中心人物だとしています。米国務省が関与していた可能性は高いとみられています。(桜井まり子)
   Democracy Now Japan より http://democracynow.jp/video/20110531-4
   (ここでセラヤのインタビュー映像も見られる)


[訳注2:米州ボリバル同盟(ALBA)] 後藤政子

2004年にベネズエラとキューバの合意により成立したラテンアメリカの地域協力機構。アメリカ主導の米州自由貿易圏(FTAA)構想がラテンアメリカ諸国の経済社会状況の悪化や多国籍企業による経済支配を招いているとして、ボリバル思想に基づき、公正と平等を原則とした地域の協力と連帯により持続的経済社会発展を目指す。(中略)

単に経済統合だけではなく、貧困問題解決や下層大衆の復権、加盟国間の経済的社会的格差の是正も目的としている。加盟国はベネズエラのほか、キューバ、ボリビア、ニカラグア、ドミニカ、エクアドル、セントビンセント・グレナディーン、アンティグア・バーブーダ。ホンジュラスはセラヤ政権時代に加盟したが、ロボ現政権下の10年1月に国会において脱退を決定した。09年10月には域内の決済通貨として米ドルに代えて域内通貨スクレ(sucre)を創設することが決定され、10年1月末から使用が始まった。
https://imidas.jp/genre/detail/D-117-0020.html


[訳注3:スクールオブアメリカ、西半球安全保障協力研究所(旧「アメリカ陸軍米州学校」)]
1946年、在パナマのアメリカ南方軍本部内にSOAとして置かれる。親米ゲリラに拷問技術・尋問法などの教育を施し、西半球すなわち中央アメリカ、南アメリカで親米軍事政権・独裁政権と、「反米」左翼政権の転覆を支援した。“修了者”たちは「反米」運動・レジスタンス運動の有力指導者の暗殺に関わったとされ、SOAも“School of Assassin”(暗殺学校)と蔑まれた。ただし、卒業後に反米路線に転じた者もいる。

2001年1月、ラテンアメリカ諸国の軍幹部に訓練を施す名目で、ジョージア州フォート・ベニングに移転、機関名も改められた。(中略) なお、「研究所」と改称しただけで、その存在目的はSOA当時と全く変わっていないとされている。   (ウィキペディアより)


[訳注4:サンディニスタ運動]

ニカラグアの革命運動の呼称。正式名称はサンディニスタ民族解放戦線(FSLN)で,1934年に暗殺された革命家サンディーノA.C.Sandinoにちなむ。キューバ革命の影響を受け,1961年カルロス・フォンセカ(1976年暗殺)の指導のもとに独裁的支配を続けてきたソモサ体制に反対して起こった。国境地帯や山岳部でのゲリラ活動を主としていたが,1974年ごろには反ソモサの動きが広まった。1978年ホアキン・チャモロの暗殺を契機に支持基盤が広がってソモサ体制を揺るがし,大規模な軍事攻撃やゼネストで1979年7月A.ソモサを亡命に追い込み,民族再建政府を樹立。革命政府は土地改革,識字運動,ソモサ家の財産没収などの政策を実行。1980年代に入るとアメリカが経済援助を停止し,反革命派(コントラ)を支援し,経済封鎖を続けた。1984年総選挙でD.オルテガが大統領に就任,非同盟,混合経済などをうたった新憲法が発布される。1988年コスタリカ大統領アリアスの和平提案が中米5ヵ国の大統領によって調印されたが,完全には実行されず,長引く戦闘の重圧と経済疲弊の中で行われた1990年の総選挙で反サンディニスタ側のチャモロ女史が勝利。
(コトバンクより) https://kotobank.jp/word/%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%8B%E3%82%B9%E3%82%BF%E9%81%8B%E5%8B%95-838791


オルテガ政権の復活
 1990年の総選挙ではサンディニスタは多数を取れず政権を失うことになった。その後、中道・保守政権が三期続いたが、汚職が広がり、格差が拡大して再び左派政権への期待が強まり、2006年11月の大統領選挙でダニエル=オルテガが16年ぶりに大統領に復帰した。アメリカはここでも選挙に干渉し、オルテガが当選すれば経済援助を停止すると脅したが、国民は内戦中にアメリカの経済封鎖に耐えた経験からその脅しに屈しなかった。<伊藤千尋『反米大陸』2007 集英社新書 p.25-26>
 オルテガ大統領は、ラテンアメリカ諸国で反米姿勢を明確にしているキューバのカストロ、ベネズエラのチャベス、エクアドルのコレア、ボリビアのモラレスなどと協力態勢を組んでいる。
(世界史の窓より) https://www.y-history.net/appendix/wh1703-079_1.html


[訳注5:ピンクタイド]
「ピンクの潮流」、又は「左傾化」という言葉は、現代の21世紀の政治分析でメディアなどで使用され、ラテンアメリカの民主主義における左翼政権への転換の波を表している。新自由主義から離脱したこの経済モデルの変化は、より進歩的な経済政策への動きを表しており、数十年にわたって不平等が続いたラテンアメリカの民主化の潮流である。
                    ウィキペディア(英語版より翻訳)


[訳注6:ペトロカリブ] フラッシュ217  2014年12月26日

ベネズエラの援助力低下で危惧されるカリブ海諸国の財政破綻
内多 允     (一財)国際貿易投資研究所 客員研究員

ベネズエラでは1999年2月に就任したチャベス大統領が、国内政治と外交関係にわたって、過去の歴代政権と大きく異なる政策を展開した。その政策の特徴は社会主義体制の構築と、米国が主導する市場経済体制に批判的な各国との関係強化であった。ベネズエラが反米的な立場の各国との連携を強化する手段として、石油収入を活用した。チャベス大統領は国内の石油資源を独占している国営石油会社(PDVSA)が輸出から得た外貨収入を、反米的な立場をとる諸国への経済支援に投入した。チャベス大統領のこのような外交姿勢は中南米で2000年代に顕著になった米国を除外した地域統合の推進にも影響を与えた。米国流のネオリベラリズムでは貧困や経済格差の解決に、貢献しないという批判の高まりも米国への批判を高めた。チャベスの外交も、米国を外した中南米の統合推進を重視した。

その具体例として、Petrocribe(以下、英語発音のペトロカリブと表記)を本稿で取り上げる。ペトロカリブはベネズエラの石油(原油と石油製品)をカリブ諸国に優遇的な価格で供給する石油協力機構の名称である。これらの機構を利用してベネズエラはカリブ地域(一部は中米諸国も含む)との関係を強化した。

しかし、近年はベネズエラが反米同盟のネットワークを構築する上で、活用してきた石油収入が減少していることによって、その外交戦略の前途が危惧されている。原油の国際相場の下落が、ベネズエラ経済の停滞に拍車をかけている。ベネズエラ原油の平均価格(1バレル当たり)は2012年平均103.42ドルが、2014年(12月1日―19日平均)には51.26ドルに50%も低下した(表1)。

このような状況を反映してカリブ諸国が依存度を高めているベネズエラからの低金利融資による外貨供給の打ち切りも取り沙汰されている。ベネズエラの経済援助の断絶が、カリブ諸国の財政破綻を招きかねない事態を国際金融界も警戒している。
http://www.iti.or.jp/flash217.htm
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アメリカが軍事力を増強するとき、
イランは地域外交で指導性を発揮する

As US ramps up military force, Iran shows leadership with regional diplomacy

フィニアン・カニンガム

フィニアン・カニンガムは、受賞ジャーナリストで、国際関係について専門に書いてきた。

RT Home/Op-ed/ 2019年5月28日
(翻訳:新見明 2019年7月18日)
<記事原文>
https://www.rt.com/op-ed/460447-iran-diplomacy-us-tensions/


米航空母艦エブラハム・リンカーンの飛行甲板© U.S. Navy/Handout via REUTERS
ギャレット・ラバージ:イラン外相モハンマド・ジャバード・ザリーフは、イラク外相モハメド・アリ・アルハキムと握手する© REUTERS/Khalid Al-Mousily

現在のペルシャ湾での米・イランの膠着状態を書くとき、未来の学者はこう書くかもしれない。近隣諸国への責任ある外交によって、全面戦争から救ったのは、テヘランだったと。

今週いつもの無価値なアメリカの動揺を見た。つまり、米軍は中東にさらなる軍事力を配備して、すでに7万人に達したのだ。

トランプ大統領は、さらに戦闘機や戦艦やミサイルの大隊を派遣した。かれはそれを、イランの脅威に対する「防衛」のためだという。彼はまたサウジアラビアに「緊急事態」と称して、70億ドルの武器売買のサインを済ませた。テヘランは最近の米軍増強を「高度に危険な事態だ」と非難した。

同時にそれと対照的に、イランの外交官は地域を回り、あらゆる国に相互安全保障を継続することを呼びかけた。イラン外相モハンマド・ジャバード・ザリーフはイラク訪問中、全ペルシャ湾岸諸国に反侵略条約を結ぶように促した。それより以前に、ザリーフはパキスタンにメッセージを送った。一方、イラン副外相アバース・アラーグチーは今週クエートを訪問し、同様の協約を申し出た。


(更に読む)Also on rt.com Washington sanctions threaten Middle East security – Iranian Deputy FM

「ワシントンの制裁は、中東の安全を脅かす----- イラン副外相」


イランからの外交交渉の開始は、分岐点となり得る。かつて、イランと2国間関係を持った国々は、スンニ派、シーア派のゆがめられた宗派対立を脇に置き、地域の平和構築に協力できるのか。

もしそれらが危機に対応できるなら、その連帯は、中東におけるワシントンの支配に打撃を与えるだろう。底ではアメリカがイランを近隣諸国と切り離そうと、並々ならぬ根拠のないイランやシーア派代理勢力が「侵略」したという主張を根拠なく繰り返している。つまり、本質的には分割し統治施与の戦術なのだ。

新しい地域協力の兆候は週末のザリーフのイラク訪問の間に見られた。イラク首相アデル・アブドル・マハディはきっぱりと言った。イラクは米軍の威嚇を前にしても、イランと共にある。先週バグダッドは警告した。米軍が、イラン攻撃で我が領土を使うことを許さないと。

イラクの指導者はこうも強調した。ワシントンのイラン制裁はイラク経済にも損害を与えた。さらに、二つの近隣諸国の経済的発展は、欠くことのできないものであり、バグダットをテヘランから引き離そうとする米国の圧力によっては止めることはできないと。

イラクはシーア派イスラム教を信仰していることで、イランと密接な関係がある。しかし文化的・政治的結びつきは宗教より更に大きいものである。2014年にもどって、イランはイラクを助け、アルカイダ・テログループからの国家的安全保障の脅威を和らげた。これらの民兵は、イラクの比較的回復された安全保障状態にとって欠くべからざるものとなった。他の国々も、イランがどのようにイラクを混乱から救ったかに気付いている。その混乱とは、2003年からアメリカの侵略と10年にわたる国の支配がもたらした混乱である。

Pakistan offers to be mediator between US and Iran as threat of large-scale conflict flares up
(さらに読む)
「大規模な紛争の脅威が高まるとき、パキスタンはアメリカとイランの仲介者を申し出る」


イランは、近隣諸国と千年にわたる歴史的絆がある。スンニ・シーアの宗派対立は7世紀イスラムの初期に戻る。しかし分離が血なまぐさい暴力を伴った、有害な宗派対立になったのは比較的最近になってからである。多くのイスラム教徒にとって、宗派対立は嘆かわしく、非難されるべきことである。形式的にスンニ派とシーア派があるにもかかわらず、全てのイスラム教徒は兄弟、姉妹である。中東オブザーバー紙はこう指摘する。有害な宗派対立は、1979年のイラン革命に続いてエスカレートした。米軍がワシントンの傀儡独裁者シャーとともに、イランを追放されたときだ。イラン革命を逆転させる方法として、ワシントンとサウジアラビアのスンニ強行派政権が、シーア派イスラム教徒への緊張と反感を扇動したのだ。サウジ支配者が庇護するイスラム教ワッハーブ派は、他のスンニ派と異なり、シーア派を殺すべき邪宗として中傷している。それが部分的には、なぜアメリカがイランに対するプロパガンダ戦争において、サウジ独裁者を有効な道具として見ているかという理由である。

しかし、イランを「テロ支援国家」として悪魔化するアメリカ主導の絶えざるプロパガンダにもかかわらず、地域関係は修復が聞かないほど毒されてはいない。たとえば、イランはクエートやオマーンやカタールとかなり良好な関係を維持してきた。イランの商業や家族的なつながりはペルシャ湾社会を長く調和させてきた。ところがサウジアラビアは著しい例外として、原理主義支配者や彼らのワッハーブ派の信仰は、イランをネメシス(天敵)と見ている。

カタールに対するサウジ主導の湾岸諸国による封鎖は、2017年に始まり、有効性がなく衰えているにもかかわらず、継続しているが、それはサウジアラビア独裁君主による「ドーハはイランに近すぎる」という主張のためである。トランプ政権は最初、イランに敵対する反射的神経でカタールに向けたサウジ主導の敵対行為を全面支援した。しかし、ホワイトハウスは、それ以来、静かに湾岸諸国の関係改善を支持してきた。それはサウジ主導のカタール封鎖の経済的影響が、多くの分裂を引き起こし、逆効果であることがわかってきたからである。

それが、どのようにイランに対するアメリカとサウジの暴走が、地域経済や地域関係を阻害し、地域の実際の利益になっていないという典型的な例である。

(さらに読む)FM Zarif arrives in India as US-Iran tensions flare up in Gulf FM Zarif arrives in India as US-Iran tensions flare up in Gulf
「アメリカイランの緊張が湾岸で高まるとき、ザリーフ外相はインドに到着する」


古代の歴史的知恵のある中東地域は、何世紀にもわたる共通のイスラム遺産があるのだから、わからなければいけない。企まれたスンニ派・シーア派分裂にもとづくこの何十年もの宗派紛争が乗り越えられなければならないことを。それは、利己的、地政学的理由で焚きつけられているのだ。その地域の国々は、もうわからなくてはいけない。不安定化のペテン師は千年の穏やかな影響を及ぼしてきたイランではなく、ワシントンであることを。

ワシントンが中東に与えてきた荒廃とトラウマは、そこでは誰でもわかることだ。ワシントンの不法な戦争や侵略から宗派対立を燃え上がらせ、政権転覆の手先としてテロリスト宗派を支援支援してきたのだ。ワシントンが、パレスチナ人の権利を卑劣にも抑圧していることは、何十年もの軍事支援と欺瞞的な政治的拝跪で不法占拠をするイスラエルを支援してきたことから言うまでもない。

シリアは、他宗教、多文化国家であるが、アメリカとその共謀する宗派によってほとんど破壊されてきた。切迫した運命からシリアを救うために介入したのは、ロシアと共にイランであった。イランは同様の任務をイラクで達成した。

だから今、イランの、スンニ派、シーア派にこだわらず、全ての国による地域協力と連帯の呼びかけが、アメリカとの現在の危険な膠着状態から抜け出すきっかけとなるかもしれない。もし、かなりの国々が、今週出現したイラク・イラン反戦基軸に加わるなら、その時アメリカの紛争を引き起こす野望は決定的に阻止されるかもしれない。

イラクとイランは1980年代に戦争をしたが、それは主に、イラン革命を打ち破ろうとするアメリカの陰謀によって引き起こされた。しかし今、二つの国は中東における新たな連帯の可能性を示している。

さらに宗派的提携によるのではなく、近隣の共通利害による新たな地域連帯が、長く中東を傷つけてきた有害なアメリカの介入から離脱できる可能性を秘めている。
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アメリカがイランとの戦争をするのに好都合な「タンカー攻撃」

Convenient “Tanker Attacks” as US Seeks War with Iran

トニー・カタルッチ

グローバルリサーチ 2019年6月13日

ニュー・イースタン・アウトルック
(翻訳:新見明 2019年7月13日)
<記事原文>
https://www.globalresearch.ca/convenient-tanker-attacks-as-us-seeks-war-with-iran/5680510


– Brookings Institution, “Which Path to Persia?” 2009

    「・・・、もしアメリカが攻撃前に、空爆を正当化するためにイランの挑発
    を非難できたらさらに好都合だろう。イランの行動が、明らかに非道で
あればあるほど、致命的であればあるほど、そして正当な理由がない
    ほど、アメリカにとっては好都合だ。もちろん世界の他の国々が、世界
    を破滅に導くこのたなくらみを認めかったら、アメリカはイランをそのよう
    な挑発に駆り立てることはきわめて難しいことだろう。」(強調あり)
      ブルッキングス研究所「ペルシャへはどちらの道を?」2009年

アメリカが一方的にいわゆる核合意から離脱してから、二度目のホルムズ海峡近くの石油タンカー「攻撃」とされるものを、欧米の報道はイランと結びつけようとしていた。

ロンドン・ガーディアンの「2隻のタンカーがオマーン湾で攻撃される」という記事では、次のように主張されている。

    2隻のタンカーが、オマーン湾で攻撃されたとされている。乗組員は
    避難した。1ヶ月前、同様の事件として4隻のタンカーがその地域で
    攻撃された。

その記事はまた主張した。

    アメリカが、テヘランに「最大限の経済的圧力」を加えて、湾岸の緊張
    は、この数週間沸点に近づいていた。それはテヘランに2015年核合意
    交渉を再開させるための圧力だが、アメリカは去年、自分の方から離
    脱したのだ。

    イランは繰り返し、その事件にはまったく関与していないし、いかなる代
    理勢力にも湾岸の船やサウジの石油施設を攻撃する指示を出していな
    いと述べた。

ガーディアンが認めたところでは、5月の攻撃のUAEによる調査では、「精巧な魚雷」が使用されていたが、イランが犯人であることを示すには不十分であるとのことだった。

その記事はまた、ジョン・ボルトン米国家安全保障アドバイザーが、何の証拠もなしに、イランが「ほぼ確実にかかわっている」と主張している、と書いている。

全てがあまりにも好都合だ

ホルムズ海峡近くの石油タンカー「攻撃」のニュースは、アメリカによってイランが非難され、イラン経済に圧力を掛け、さらにはイランの政権を転覆しようとするワシントンが、さらなる追加制裁をするのにあまりにも好都合である。

アメリカは最近、イラン石油を買う諸国の猶予期間を終わらせたばかりだ。日本、韓国、トルコ、中国、インドなどの国々は、イラン石油を輸入し続ければ、アメリカの制裁に直面することになる。

時を同じくして、今週「攻撃された」船の一つが「日本向けの積み荷」を運んでいたと、ガーディアンは報道した。

また好都合なことに、アメリカはイラン革命防衛隊(IRGC)をテロ指定したすぐ後に、イランのせいにされるこの一連の挑発が起こってくれたのだ。

2019年5月のAPの記事「トランプ大統領は湾岸で破壊された石油タンカーで、イランに警告を与える」の中で、次のように主張している。

    中東に停泊していた4隻の石油タンカーは、湾岸当局によれば、破壊
    活動によって損傷を受けたということだ。しかし、火曜日のAP通信によ
    る衛星画像では、船体に大きな損傷は見られなかった。

2隻のタンカーはサウジ船籍で、1隻の船はUAE船籍で、もう一つはノルウェー船籍とされる。記事はまた主張している。

    ワシントンのアメリカ当局は、何の証拠も示さず、APに語った。米軍の
    最初の評価は、イランもしくはその同盟者が爆発物を使用して、船体に
    穴を開けたのだと。

そして、

    アメリカは既に、「イランとその代理勢力」が、その地域で海上交通を
    狙っていると船に警告してきた。アメリカは、テヘランからの脅威とされ、
    未だ特定されない脅威に対抗するために、航空母艦やB-52爆撃機を
    ペルシャ湾に派遣した。

これに続く最近のさらなる事件は、その地域で米軍の増強を続けるために、さらにアメリカによって利用されるだろう。そしてイランに圧力をかけ、全世界をイランとの戦争に向けて動かすことになる。

アメリカは、イランとその同盟軍に対する進行中の代理戦争を支援するために、既に中東に勢力を配備し、テヘランとの通常戦争を準備している。

これらのこと全ては、ワシントン支援勢力は決定的に敗北したシリアにおける代理戦争の数年後に、アメリカとイランのさらなる直接対決に向かうことになる。

それは又、10年前から行われ、どの大統領も実行してきたイランに関する長期的アメリカ外交政策の継続でもある。

ワシントンの長期計画

制裁の継続と猶予期間の消滅は、ワシントンの包括的共同作業計画(JCPOA)、又は「イラン核合意」からの一方的離脱の一部である。この合意は2015年に調印され、2018年にアメリカが離脱した。

その決定はバラク・オバマ元大統領とドナルド・トランプ現大統領の政治姿勢の違いとして描かれているが、実際は、計画の提案、調印、それからアメリカによる離脱は、長く追求されてきたイランとの戦争を正当化する手段として、2009年から詳細に計画されてきたことだ。

「ペルシャへの道:イランに向けたアメリカの戦略の選択肢」という2009年の論文で、企業支援のブルッキングス研究所は、アメリカ主導のイラン軍事侵略の陰謀を最初に認めている。

    ・・・イランに対するどのような軍事作戦も、世界ではきわめて不人気
    で、適切な国際的文脈、つまり作戦が必要とする兵站支援を確保し、
    その反動を最小限化することが求められだろう。

それからその論文は、どのようにアメリカが世界に対して平和構築者として現れるか、そして「きわめてよい取り引き」をイランが裏切ったか、だから米軍がしぶしぶ行動したという言い訳としてどのように描くかを展開している。

    国際的非難を最小化し、支持を最大化する最良の方法は(たとえ不承
    不承であろうと、秘密裏にであろうと)、イラン人が、素晴らしい提案を与
    えてもらったのに、拒否したという認識が広まったときにのみ攻撃するこ
    とだ。つまりその提案は、とても素晴らしく、一つの体制のみが核兵器を
    得て、それらを間違った理由で取得することを決めたのだが、それを拒
    否したのだ。これらの状況下で、アメリカ(もしくはイスラエル)は、その
    作戦を悲しみに浸り、怒りではなく、少なくとも国際社会のいくつかが、
    イランはとてもいい取り引きを「自ら拒否したのだ」と結論するだろう
    と考えている。

そして2009年以降ずっと、これは正にアメリカが成し遂げようとしてきたことだ。

まず2015年のオバマ大統領の核合意調印からトランプ大統領の離脱の試みまでが、イランは合意を遵守しなかったという、ねつ造された主張に基づいていた。

2009年の政策論文はまた、イランを戦争に駆り立てることを論じて、次のように主張した(強調あり)。

    挑発によって、(イラン)侵略の国際的かつ国内の政治的必要条件は
    緩和されるだろう。そしてイランの挑発がひどければひどいほど(そして
    アメリカがイランを刺激するのが少なければ少ないほど)、これらの非
    難は減少するだろう。かなり恐ろしい挑発がないと、これらの必要条件
    を満たすことは難しいだろう。

直接言及しなかったが、イランを戦争に駆り立てるワシントンの方法は、明らかにアメリカが単に「イランの挑発」自体をねつ造することだろう。

アメリカがベトナムでトンキン湾事件に続いてしたように、または、イラクが「大量破壊兵器」をもっているとアメリカがねつ造したように、ワシントンは挑発を挑発するだけでなく、それ自体を実行してきた経歴がある。しかしブルッキングズ論文でさえ認めているが、イランがワシントンの罠に引っかかることはありそうもないと、次のように述べている。

    ・・・確かに、もしワシントンがそのような挑発を追求するなら、テヘランが
    そうせざるを得ないように、さらなる行動をとるだろう(このことについて、
    あまりにも明白である事が、挑発を無効化するかもしれないが)。しかし、
    挑発的動きをするかどうかは、イラン次第で、イランは過去に何度もそれ
    らの挑発にうんざりしてるので、アメリカは、いつイランが挑発してくるか、
    決してわからないだろう。

5月のUAE沖での石油タンカー破壊とされるものや、今度は今月のさらなる「攻撃」は、一連の計画された挑発の始まりであり得る。それは、最近IRGCをテロリストリストに加えて更にてこ入れすることを狙ったものだ。そしてアメリカ自体がイラン合意から離脱した後、制裁の再開して、さらなる経済的圧力を増大させることであった。

戦争への共同作業

アメリカはイランをさらに追い詰めるために、「イランの破壊」という5月の主張にてこ入れしようとした。ワシントンが望むのは、戦争か、あるいは少なくとも差し迫った戦争への脅威が、有害な経済制裁と共に、イラン内部の政治的・武力反乱を支援して、イランの政治的秩序を分断し、破壊をする共同作業をつくり出すということだ。

より広い地域的文脈でアメリカは、特にイラクでイランの影響が増していて、軍事的にはシリアで、イランやロシアが永続的・実質的足場を築き政治的敗北を経験してきた。

その後退にもかかわらず、ワシントンのテヘランに対する計画が成功するかどうかは、未だ政治的、経済的刺激を与えるアメリカの能力にかかっている。それはイランを孤立化させるために、同盟国や敵も同様に恐怖を伴って効果的に行われる。

これが成功するかどうかは疑問が残る。代理戦争とともに何十年にもわたるアメリカの制裁が、秘密裏であれ、公然とであれ、侵略はイランを粘り強いものにし、その地域でかつてよりさらに影響力をもつようになった。しかしその地域のイラン分断、破壊の種をまくワシントンの能力は、過小評価されるべきではない。

中東における米軍の圧力の意図的な増強やイランをねらった経済制裁は、アメリカの政策立案者が、イランを分断し、傷つけようとしていることを示してる。それは地政学的ねらいが達成されるまで、又は、新しい国際秩序が、中東でつくり出されるまで続くだろう。そして世界経済を通じて、イランに対する体制転覆がなされるまで続くだろう。

トニー・カタルッチはバンコクを基盤にする地政学研究者であり、著述家である。特にオン・ライン雑誌「New Eastern Outlook」に書いている。彼はグローバル・リサーチの常連寄稿者でもある。

(更に読む)「アメリカはイランを脅す。「政策の見直し」計画と新体制が権力に就くまでの取り引き」


この記事の出典はNew Eastern Outlookである。
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トランプー金(キム)会談:
大統領が平壌に向けて20歩北朝鮮に入ったことは、
劇的で歴史的な出来事である。しかし「どこまで行けるのか?」

The Trump-Kim Meeting: Mr. President, Your 20 Steps into North Korea Toward Pyongyang Were Dramatic and Historical. But, “How Far Are You Going”?

ジョセフ・H・チャン

グローバル・リサーチ 2019年7月3日

(翻訳:新見明 2019年7月14日)

<記事原文>
https://www.globalresearch.ca/mr-president-your-20-steps-north-korea-pyongyang-dramatic-historical-how-far-you-going/5682553



6月30日非武装地帯でのトランプ・金(キム)会談は世界をあっと言わせた。それは劇的であった。それは歴史的であった。それは長い間待った朝鮮半島の平和と、悲惨な冷戦の最後の最前線がなくなる一縷の希望を与えた。

不幸にも、アメリカのメディアやシンクタンクや政治グループやその他は、ことの重大性を十分に認識できていないようだ。

私は二つのことを問う。何が二人の世界的指導者が会談を持つようにさせたのか。そして何が会談の成果だったのかという問いである。

会談の目的はトランプと金では異なっている。私達は、金正恩がこの前の2月ハノイサミット会談の失敗で、どれほど屈辱を受けたか、どれほど怒ったか思い出さなければならない。彼は中国を縦断する何週間もかかる辛い旅で、どれほど真剣に彼が核危機を解決しようとしていたか、世界に示めそうとしたことを思い出さなければならない。

しかし彼はトランプに裏切られた。ハノイ会談は、彼の威厳やプライドや彼の指導性を確実に傷つけた。彼は自国の人民の前で顔をつぶされたのだ。

ハノイ会談以来、金は彼の指導性をなんとか回復しなければならなかった。そして核問題の実際の解決や、同時に飢餓や経済発展の問題の解決を見つけなければならなかった。

彼はいくつかの方策を講じた。

まず、彼は交渉チームを安全保障チームから外交チームに代え、外務第一副大臣に指導させた。

2番目に、これは重要だが、金はワシントンを信用しなくなったことだ。彼のトランプに対する不信、特に彼の安全保障アドバイザーのジョン・ボルトンとマイク・ポンペオに対する不信が深まったことだ。

3番目に、金は終わることのない制裁から逃れる希望を捨てたのかもしれないことだ。習近平やプーチンとの会談を通して、金はトランプの制裁にもかかわらず経済的協力関係の保障を得た可能性がある。言い換えれば、金は制裁からの救済は必ずしも最優先事項ではないと結論したかもしれない。このことが金をより強い交渉の立場に立たせたかもしれない。

4番目に、金はトランプとの会談の間、体制保障と国家安全保障に焦点を当てることに決めたのかもしれない。体制保障は連絡事務所の設置、最終的には大使館を設立を通してなされる。

トランプにとって体制保障や安全の保障は、国連がかかわっている制裁の緩和より容易であるようだ。

もし安全保障と同様に制裁や体制保障に関する私の仮定が正しければ、金は重荷を背負うことなく非武装地帯に来たかもしれない。彼は低いレベルの希望を抱いてきたのかもしれない。それゆえ彼は会談の結果に比較的容易に満足できたのだろう。実際トランプとの53分間の会談の後、金はかなり楽しそうに見えた。

5番目に、重要なことはトランプを招待したのは金ではなかったということだ。トランプが金を招待したのだ。この事実だけでも、金の尊厳や彼の指導性やハノイでつぶされた「顔」の回復に大いに貢献している。

つまり金正恩に関する限り、非武装地帯でも会談はかなり成果があったようだ。

トランプに関しては、いくつかの要因が彼に会談のイニシアチブをとらせたようだ。

最初に、ハノイ会談以来、トランプは金との会談の希望を諦めていなかった。多くの場面で彼は金との良好な関係を自慢していた。

2番目に、彼は北朝鮮問題をイラン問題とは違って考えているようだ。トランプはイランに対してずっと好戦的な接近をしている。なぜならイランは中東地域を支配することができ、一方、北朝鮮は東アジア地域を支配する能力はないからである。だからトランプは平壌に向けてより寛大であることができる。


READ MORE:US-North Korea Summit: Hold the Cheers. Inter-Korean Summit to Precede Trump-Kim Meeting?(さらに読む)「米・北朝鮮サミット:トランプ・金会談に先立つ南北朝鮮サミット」


3番目に、核のない北朝鮮はアメリカと親しくなる。そしてそれは中国の抑止政策の一部でもある。

4番目に、北朝鮮は、その地域に残された最後の真に経済的フロンティアであるかもしれない。そしてアメリカは十分な利益を見込んでその経済発展に参加できる。

5番目に、韓国の文在寅大統領の仲介のおかげで、北朝鮮とアメリカのエリートグループの相互不信は、ある程度払拭された。

6番目に、非武装地帯でのサミットは、2回目の民主党大統領選挙討論の大きな衝撃を緩和する絶妙のタイミングであった。非武装地帯のサミットは、完全に民主党討論のメディア報道を侵食した。それ故サミットはトランプにとって重要な政治的勝利であった。

だから、トランプも金もサミット会談を実現する十分な理由があったのだ。

さて、私は「何故サミットの達成したものは何か?」という問いをしている。私達はいくつかの肯定的な可能性を見てもよい。

まず、サミットは直ちに組織されたことを証明した。サミットは最小限のコストで、しかも何度も行えることを証明した。

さらに、二人の指導者の秘密会談は、もともと5分の計画だったが、53分も行われた。金もトランプも双方が会談に満足しているようだ。韓国の核危機の専門家は次の会談の可能性をほのめかしている。

5番目に、金は寧(によん)辺(びよん)の核施設の解体をミサイル発射台解体とともに約束しただろう。そのかわり、金は体制保障と平和解決を求めただろう。制裁の解除はより低い優先順位となっていただろう。

2番目に、トランプは、アメリカによる相応の見返りとして、段階的非核化からなる「小さな取り引き」を容認したかもしれない。つまりボルトンの大きな取り引きは放棄されたことになる。ちなみにボルトンは、非武装地帯の会談が行われていたときモンゴルにいた。これはトランプ戦略の転換を意味する。

3番目に、会談が具体的成果を生み出さなかったことは本当だ。会談は具体的成果を生み出すために組織されたのではないから、当然だ。会談が価値があったのは、それが核対話の膠着状態を打ち破り、対話継続の相互の意思を確認できたことだ。

この点で、会談は成功であった。新しい交渉チームが2・3週間して結成されるだろう。アメリカチームは、マイク・ポンペオ国務長官の下、ステーブン・ビーガンによって行われるだろう。北朝鮮チームは崔(チェ)善(ソン)姫(ヒ)によって率いられる。彼女は李容浩(リヨンホ)外務大臣の下で第二外務副大臣である。

4番目に、会談で両指導者はボトムアップを支えられたトップダウン方法を強めることに同意した可能性がある。ハノイ会談の失敗は、トップとボトムの間のコミュニケーションと調整の欠如のためであったようだ。これからは、トップが交渉チームの仕事をさらに綿密にチェックするようだ。

私の文章を閉じる前に、メディアや政治家、そして顧問団の反応について2・3付け加えたい。これらの人々はほとんど、会談について非常に否定的である。民主党大統領指名候補バーニー・サンダース上院議員や教皇フランシスコを除いて。

彼らの否定的な会談の受け止め方は、二つの主要な非難に基づいている。つまり北朝鮮の存在は信頼できず、独裁国家であるというものだ。

以前、グローバル・リサーチの私の論文で指摘したように、二つの国のどちらが信頼が置けないか不確かである。私達は1994年の米朝枠組合意がアメリカとその同盟国によって破られたことを思い出すべきだ。実際もしアメリカとその同盟国が合意を尊重していれば、北朝鮮はそもそも核兵器を決して開発しなかっただろう。

独裁に関して、アメリカが世界中の数え切れない恐ろしい独裁者を支援してきたことを歴史が物語っている。韓国では、アメリカは朴正煕将軍と全斗煥将軍の無慈悲な独裁政治を支援してきた。アメリカが独裁者達と取り引きしないという主張は、全くの偽善である。

全斗煥将軍の政府は、1980年5月18日何百人という無実の光州市民を戦車とヘリコプターで殺害した。しかしアメリカは全斗煥政権の犯罪者を支持したのだ。

まとめとして、非武装地帯のサミットは行われたことを私は喜ぶ。FFVD(最終的で完全に検証された非核化)は可能だ。しかし、ワシントンは「大きな取り引き」モデルを捨てて、制裁解除や他の補償に見合った段階的非核化を受け入れるべきだ。それが最終的にFFVD(最終的で完全に検証された非核化)や朝鮮半島の永続的な平和につながる。しかしFFVDは北朝鮮の自衛能力を保障するべきだ。

しかし、非核化の試みを成功させるためには、トランプはワシントンのオリガルヒ(少数独裁政治)によって続けられている北朝鮮の悪魔化の罠から自らを解放しなければならない。オリガルヒは朝鮮半島の緊張の現状を、韓国に更に兵器が売れるように永続したがっているからだ。

*

ジョセフ・H・チャン教授は、モントリオ-ル、ケベック大学の統合とグローバリゼイション研究センター(CEIM)の、東アジア観測所(OAE)の共同所長である。彼はグローバリゼイション研究センターの準研究員でもある。
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トランプはイランの核を非難するが、一方、
サウジは原爆を獲得しようとする危機

Trump accuses Iran over nukes, all the while risking Saudi regime acquiring the bomb

RT Home/Op-ed/ 2019年6月13日

(翻訳:新見明 2019年7月7日)

<記事原文>
https://www.rt.com/op-ed/461797-saudi-iran-nuclear-weapons/

フィニアン・カニンガムは受賞ジャーナリストで、国際問題を専門に執筆している。


© Getty Images / Richard Newstead

トランプ政権は、サウジアラビアに機密核技術を与える無謀な道を歩もうとしているようだ。それは、この悪名高い体制が大量破壊兵器を手に入れることにつながる。

これは、トランプ大統領が、テヘランは密かに核兵器を開発しようとしていると、イランの軍事的脅威を激しく非難しているときにだ。

この二枚舌には唖然とさせられる。トランプ政権は、核拡散を阻止する中東の警察官のふりをしている。ところが実際は、核兵器競争を焚きつけ、戦争の危機を高めているのだ。

明らかにサウジアラビアは、石油の将来が戦略的挑戦を受けたとき、民間エネルギーや水需要を調節するために、原発建設の野心を持っていることは明かである。アメリカとロシア、韓国を含む他の数カ国は、これら数十億ドルもする原発建設の契約を争っている。 

トランプ政権は機密技術をサウジに与えるため、原子力会社に許可を与えるように推し進めていることがいま明らかになっている。警戒すべきは、ホワイトハウスが秘密裏にそれを行っていることである。それは国家安全保障規定に基づく議会の監督を無視するものである。


さらなる懸念の元は、トランプ政権がサウジに核兵器技術のノウハウを与えているらしいことだ。彼らは、市民のエネルギー利用が核兵器計画とは厳密に区別されているという主張を押し通している。気がかりなことは、トランプ政権が、その曖昧性を気に掛けていないように思えることだ。アメリカ政府はサウジの核技術承認を推し進めている。

サウジアラビアの血気にはやるモハメド・ビン・サルマン王子(MbS)は去年アメリカメディアに語った。「もし」イランがそうすることになったら、我が国は核兵器獲得競争に参加するだろう。MbSが、トランプ政権やイランを宿敵と考えるイスラエルに近いとするなら、テヘランが秘密裏に核兵器計画を推し進めていると、サウジの支配者たちがすでに考えていると想定される。

イランは、核兵器製造の訴えを絶えず否定してきた。イランが、核兵器への応用を禁止する2015年国際核合意を遵守していることは、IAEAの一ダース以上の国連調査報告からも証明されている。

<
Also on rt.com If Iran wanted nukes 'America couldn't do anything about it' – Ayatollah Khamenei
(さらに読む)たとえイランが核を望んでも、アメリカは何も言う資格がない


しかし、それでもイスラエルやトランプ政権は、絶えずイランが核開発をしていると主張するのを止めなかった。代わりにそれは、サウジの支配者が原子爆弾を製造する決定をしたことを意味している。

他にもいくつか、核兵器競争が中東の道を阻害することを恐れる理由がある。

トランプのホワイトハウスは、サウジアラビアのおびただしい人権侵害批判にもかかわらず、機密核技術をサウジアラビアに与えることを可能にしている。その人権侵害の記録は絶えず悪名高くひどいものである。トランプ政権では、新たな深みに陥っている。

恐ろしいサウジのイエメン空爆や市民の死者数のために、アメリカ議会は武器販売を禁止するように促した。しかし、ちょうど先月、トランプはその制限を迂回して、数十万ドルの兵器販売を宣言した。それはイランからの地域安全保障の脅威から、「非常事態」のためと称して行われた。

さらにいらだたしい報告は、ジャマル・カショギが去年10月イスタンブールのサウジ領事館で残忍に殺害された数週間か数ヶ月後、ホワイトハウスが核技術移転を承認したことである。それは、アメリカのCIAも、MbS王子が殺害にかかわっているという結論しているにもかかわらずだ。

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Also on rt.com CIA says MBS ordered Khashoggi hit, but don’t expect Saudi-US relations to change – John Kiriakou
(さらに読む)CIAは言う。MbSがカショギ殺害を命令した。しかし、サウジ・アメリカ関係が変わることを期待してはいけない。---- ジョン・キリアコウ


もしこれらの痛ましい懸念のいずれも、トランプ政権のサウジ体制への甘やかしを止めることがないのなら、サウジは、核兵器を含めてしたいことは何でもできる白紙手形をもっていると考えられる。

トランプ大統領が原子爆弾をサウジに持たせることは、もちろん、不法行為に満ちあふれている。それは、原発の核兵器転用を禁止している1970年の核不拡散条約の全面的違反である。

またアメリカの法律の問題もある。トランプ政権は、サウジとの怪しい取引で議会に不意打ちを食らわせているようだ。それは、大統領が議員に国際的核協力の情報を知らせるように命令する原子力法に違反している。

しかしトランプが核拡散や武器管理を軽率に扱ったことは、別段驚くべきことではない。トランプ政権は、去年一方的にイラン核合意を破棄した。そして1987年にロシアとの中距離核兵器禁止条約から撤退した。ロシア大統領プーチンは、先週述べた。「トランプ政権はまた第二の主要な兵器制限条約を考えているようだ。新しいSTARTだって。もう崩壊しているのに。」

だからトランプが、世界規模で、核兵器を取り除こうと表明しても、武器競争を刺激することにまったく無関心である事を、あらゆる指標は示唆している。

サウジアラビアは核兵器を取得しつつあることに、アメリカの両党の議員が根拠ある警告を発している。最近の報告では、サウジは中国から技術移転され、弾道弾ミサイル能力を増強した。もしそれが確立されたら、次のステップはこれらのミサイルに核弾頭をつけることである。トランプ政権は、サウジがそれを達成する道を切り開いているようだ。


Also on rt.com Saudi arms sales may be at center of the next showdown between Trump and Congress
(さらに読む)サウジの武器売買は、トランプと議会の次の山場となるかもしれない。


トランプ大統領のサウジ王朝へのどうしようもない叩頭は、彼が大統領職を終えた後を見据えて、中東におけるトランプ・ファミリーの商業帝国を拡大しようとしているのではないかという疑念をもたらした。

他にも二つの動機の可能性がある。トランプと彼の義理の息子ジャレッド・クシュナーは、イスラエル・パレスティナ紛争をまとめた「世紀の取り引き」で歴史に残りたがっている。過大評価されて、待つこと久しい「取り引き」は、パレスティナ人権の汚い売り渡しとみられている。広いアラブ世界で受け入れられるために、トランプとクシュナーは、サウジに承認の印を与えることが必要だ。それがトランプのホワイトハウスが、サウジに「大きな原爆賞」をせがむ一つの要素になり得る。

もう一つの動機は、トランプが、サウジとシーア派イランへの骨肉の憎しみを、「究極の圧力道具」として使うことである。もしイラン人が、ワッハービ実力者が核兵器を獲得するとわかれば、トランプは、それがイランを交渉のテーブルに引き出し、戦略的譲歩をさせると計算しているかもしれない。トランプがずっと推し進めてきたように。

ここで再び、イランは別の道を行くかもしれない。核兵器の長期的拒否をやめるかもしれない。そしてサウジ体制からの実存的脅威を避けるために原爆を作るしか選択肢がないと決意するかもしれない。

いずれにしろ、それはすべてトランプのホワイトハウスが、地域の平和と安全保障のためだというのを嘲笑するものだ。この政権は犯罪的に破滅的な戦争の可能性を煽っている。
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イスラエルによる「リバティ-号攻撃」(1967年)
の真相とそこから学ぶべき教訓

Israel’s Attack on The USS Liberty: An Act of War, A False Flag, A Gross Betrayal
What We Should Have Learned from the Attack on USS Liberty


クレイグ・マッキー 

グローバル・リサーチ(2019年6月9日)

(翻訳:寺島メソッド翻訳グループ 2019年7月6日)

<記事原文>
https://www.globalresearch.ca/what-we-should-have-learned-israels-attack-uss-liberty/5680016



これは大半のアメリカ人が、実際は大半の世界中の人が、一度も耳にしたことがない最大の虚偽のひとつだ。 そしてこの虚偽は、アメリカとアメリカの「一番親密な同盟国」のひとつであるイスラエルとの間のほんとうの関係はどうなのか、について多くのことを暴露している。

これはれっきとした戦争行為だった。 偽旗作戦攻撃あり、大量処刑あり、戦争犯罪あり、おぞましい裏切り行為あり、さらには今日まで続く欺瞞とプロパンダ作戦の始まりでもあった。

50年前に遡る。 イスラエルはアメリカの情報収集艦リバティ-号に驚くべき野蛮な攻撃を仕掛けた。 リバティ-号はシナイ半島とガザ沿岸の公海上を航行していた。 この50年、アメリカとイスラエルの両政府は、主要メディアも同様だが、醜悪で見え見えの隠蔽工作を行い、この出来事はたんに「悲劇的な事故」で、「相手を取り違えた」ケースにあたるという嘘を支持してきた。 

しかし、生存者たちはそれが事故なんかではないことを知っている。

1967年6月8日の午後、空には雲ひとつなかった。 ほぼ2時間に亘り、イスラエル軍はあらゆる手立てを講じ、リバティ-号を撃沈させ、294人の乗員(うち3名は民間人)を皆殺しにしようとした。 この作戦は成功しなかった。 しかし攻撃終了時には34名の乗員が死亡し、171名から174名(情報源によって差がある)の負傷者が出た。 イスラエル機は、午前6時にはリバティ-号を、確実にアメリカ船と認識していた。 その8時間後攻撃が始まった。

リバティ-号は大きなアメリカの旗(生存した乗員全員が確認している)と船体には非戦闘艦であることを示すはっきりとした標識があった。 このリバティ-号が攻撃されたのは、イスラエルがエジプト、ヨルダン、そしてシリアへ仕掛けた「六日戦争」の4日目である。 米国防総省のスパイ船であるリバティ-号は、ありとあらゆる最新式監視機器を装備しているので、この海域でそれ以外の船と見られることはなかった。

リバティ-号の任務は地中海へ航行し、アラブ・イスラエル紛争に関する情報をモニターすることだった(ただし、その正確な使命が何であったかは今も極秘)。 午後2時、高速で飛行する複数のジェット戦闘機から発射されたロケット弾がリバティ-号に命中した。 悪夢は始まったばかりだった。 

複数のロケット弾、機銃射撃、そしてナパーム弾までリバティ-号に撃ち込まれた。 8名の船員がこの最初の攻撃で死亡した。 リバティ-号は第六艦隊に救援の連絡を取ることができなかった。 緊急事態用周波数は妨害されていたし、通信機器はひどく破損したか、完全に破壊されていたからだ。 しかし、少し時間を置いて、一人の勇敢な乗員が命の危険を冒し、応急処置を行った。 その結果、SOSが同じ海域にいた米軍艦サラトガ号とアメリカ号に発信された。

飛行機が即座に派遣され、リバティ-号の救援に向かった。 パイロットはその時点で、リバティ-号を攻撃した飛行機と船を破壊してもよい、との許可を得ていた。 しかし、現場に到着することもできていないのに、帰還せよとの新たな命令が下された。 イスラエル機によるリバティ-号への攻撃は継続中だったにもかかわらず。 

飛行機による攻撃が約35分続いた後、3隻のイスラエル艦が現場に到着し、魚雷を撃ち始めた。 一つがリバティ-号に命中。 新たに26名の乗員が死亡。 約40フィート(120センチ)の穴が船体に空いた。 加えて、機銃掃射が消火活動をしていた乗員と負傷者をストレッチャーに載せて運んでいた救助隊員に向けられた。 イスラエル艦からは、瀕死の重傷を負った乗員を救助すべく水面に下ろされた救命ゴムボートにまで、銃弾が撃ち込まれた。 船を離れよ、との命令は撤回せざるをえなかった。

2005年、「リバティ-号退役軍人協会」は一つのレポートを陸軍大臣に送った。 「報告:1967年6月8日にアメリカ軍人に対して犯された戦争犯罪について」がその表題だ。 このレポートを読めば、リバティ-号が沈没する前に、なぜ攻撃が終結したのかの経緯がわかる。

「第六艦隊が派遣した救援機に交戦規定を送信した直後、イスラエルの魚雷艇は突如攻撃を打ち切り、リバティ-号が救援を必要としているかどうかを問い合わせるメッセージを転送した。 同時に、イスラエルの海軍将校が在テルアビブアメリカ大使館付き海軍武官に、イスラエル軍が誤ってアメリカ海軍の船を攻撃したことを告知し、謝罪した。 この海軍武官は合衆国第六艦隊に通知。 救援機は攻撃現場に到着する前に帰還を指示された。」P.8

大半のアメリカ人は、同盟国であるイスラエルが同じ同盟国のアメリカに対して今回行った戦争行為について、完全に蚊帳の外に置かれている。 アメリカのメディアがこの事件についてほぼ完璧に口を閉ざしていることが主な理由だ。 階級の高い軍人やエリート官僚がいろいろ発言をしているのに、それは実質的にどこからも注目されない。 研究者のアリソン・ウィアが「If Americans Knew」というネットサイトに記事を一本載せている。 「メディアの沈黙」についてだが、一読に値する。 ちなみにアリソンはパレスチナとイスラエルの歴史について幅広い著作がある。 

「理由はどうあれ、アメリカのニュースメディアが良心に目覚め、イスラエルについて真っ当な報道をしない限り、(中東という)世界で最も不安定な、悲劇的な、そして破滅的な結果にもなり得る紛争地域の一つについてアメリカ人が得る情報は、これまでと同様、どうしようもないほど誤ったものであるだろう。」

2015年2月からのWashington’s Blog上の記事は、自分達がアメリカの船を攻撃していることをイスラエルは十分すぎるほど知っていたという証拠をまとめ上げている。

「最近機密解除されたイスラエルの攻撃隊と地上管制との無線交信記録に依れば、イスラエル機のパイロットは船がアメリカ船であることを最低3回確認し、本当に攻撃していいか地上管制に聞いている。 地上管制は、『そうだ、その船を攻撃せよ』と答えている。」

また、この記事に依れば、イスラエルがこうした攻撃を行った目的は、エジプトがやったことと見せかけ、できればアメリカをこの戦争に引きずり込もうとする一連の流れがあった。 

一般のメディアはこのテーマについて報道していないが、ひとつ例外がある。 それは2007年のボルチモア・サンの記事だ。 それは攻撃しているのがアメリカの船であることをイスラエル機が知るにいたった経過と、それを機密解除された政府文書で確認していった経過をかなり詳細に論じている。 

「(この機密解除文書を読むと)米国家安全保障局が、攻撃したイスラエル機のパイロットの交信をなぜ一度も傍受しなかったのか、についての疑問が強まる。 この交信記録に目を通した記憶のある人によれば、自分達がアメリカ海軍の艦船を攻撃していることをイスラエル機のパイロットが分かっていることを示す交信記録である。 

「この文書が同時に言外に語っているのは、アメリカ政府はこの事件を、重大な欠陥を含んだ駆け足的調査(この調査に参加した人の中にも、そんな調査だった、と現在言っている人がいる)をもって終結させた、ということだ。 アメリカ政府としてはどうしてもイスラエルの評判を守りたかったし、同盟関係を維持したかったのだ。

ワシントンで改ざんされた調査結果

1967年、イスラエルの米艦リバティ号への攻撃

米海軍査問会議が、リバティ-号事件直後招集されたが、事件査定のために与えられた時間はたった1週間だった。 37年間 この査問会議の上級法律顧問だったウォード・ボストンJr大佐はこの事件と性急な調査についての自分の気持ちを他へ漏らさなかった。 しかし、政府の隠蔽を支持するジェイ・クリストル著『リバティ-号事件』が書かれると、ボストンはどうしても発言しなければ、と感じた。

ボストン大佐が暴露したのは、ジョン・S・マケイン提督(前大統領候補ジョン・マケインの父)は、欧州におけるアメリカ海軍総司令官だったにも関わらず、彼と査問会議議長だったアイザック・C・キッドの、リバティ-号攻撃に関与した人物の尋問のためにイスラエルに行くことを許可して欲しい要請を拒絶したことだった。 負傷して審問に出席できないリバティ-号乗員の尋問ができないか、という要請も拒絶された。  

2004年1月の声明においてボストンはいくつかの信じがたい告発をしている。 その中には、査問会議の最終報告がワシントンで変更された点も含まれている。 イスラエルを免責するためだ。 

「証拠ははっきりしていました。 キッド提督と私の信念は確固たるものでした。 34名のアメリカ水兵を殺害し、他172名を負傷させた「リバティ-号事件」は意図的にアメリカ船を沈没させ、乗員全員を殺害するたくらみがあったのです。

攻撃を遂行したイスラエル人パイロットも、攻撃を命令した上官もリバティ-号がアメリカの船であることを十分知っていたことに私は何の疑いも持っていません。 

私の怒りが収まらないのは、イスラエルを擁護しようとして、この攻撃は「誤認」によるものだ、などと言う輩がこのアメリカにいることです。 

キッド提督が私に言いました。 ワシントンに戻るとホワイトハウスと国防総省から派遣された文官と同席し、査問会議の調査結果の一部を書き換えるよう命令を受けた、とのことです。

キッド提督は、リバティ-号攻撃に関するすべてのことに「蓋をする」よう命令を受けた、とも言いました。 私たちはこの事件に関して口にすることは絶対に許されませんでした。 また、他の関係者全員にも二度とそのことを口にできない、という警告をしなければなりませんでした。

2004年の私の声明が正しいことを疑う理由を私は持っていません。 一般に公開した査問会議の記録は、私が間違いないと確認し、ワシントンに送付したものと同じではないことを私は知っているからです。」

ボストンの結論:

「政府の隠蔽工作を支持する著作を発行したジェイ・クリストルや他の連中が提示しているデマ情報とは反対に、アメリカ人が真実を知ることは重要です。 はっきりしているのはイスラエルに責任があって、意図的にアメリカ船を攻撃し、アメリカ人の船員を殺害しました。 残された同僚の船員はこういったとんでもない結論を押しつけられて何年も生きてきたのです」

忘れてならないのは、この件を実際に非難している何人かの著名人がいることである。 たとえば、国務長官のディーン・ラスクとトーマス・H・モーラーだ。 モーラーはリバティ-号攻撃の直後、統合参謀本部議長に指名されている。 

1967年6月10日の外交文書で、ラスクはイスラエル大使に書簡を送っている:

イスラエルの魚雷艇が引き続き攻撃を行ったのは、イスラエル軍がリバティ-号の所属を確認、あるいは当然確認したであろう直後と言ってもいいタイミングでした。 これが同じく重大な人命無視であることははっきりしています。 ….リバティ-号は平和的な任務に就いていました。 魚雷艇にいかなる脅威を示すこともありませんでした。 戦闘能力を与える武器を何一つ積んでいなかったこともはっきりしています。 そのことは魚雷攻撃をする前に、視覚的に、近距離で精査することはできましたし、そうすべきだったでしょう」

モーラーは2004年に亡くなったが、1997年に次の声明を公表している:

「イスラエルはリバティ-号がアメリカの船であることを熟知していました。 何と言っても、リバティ-号に掲げられたアメリカの国旗と標識は、同艦の上空を8回飛行したイスラエル機には完全にはっきりと見えていたのです。 その飛行を約8時間以上も継続した後、攻撃が行われました。 これは確信を持って言えますが、イスラエルは進行中の『六日戦争』の当事国や潜在的当事国からの無線通信をリバティ-号が傍受できることを知っており、今回のことは戦争開始から4日目に起きています。 そのイスラエルはゴラン高原をシリアから強奪する準備をしていました。 ジョンソン大統領がそのような動きに反対していたことは知られていました。 私の考えではイスラエルにはわかっていたのです。 もしアメリカが事前に彼らの計画を知っていれば、テルアビブとワシントンの間の交渉が、途轍もないものになることを。

「モーシェ・ダヤン将軍が次のように結論づけたというは私の確信です。 イスラエルの計画をワシントンに気づかれないためには、この情報を真っ先に入手するリバティ-号を破壊することだ、と。 結果的に卑劣で残虐な攻撃となり、34名のアメリカ人水夫が死亡し、171名が瀕死の重傷を負いました。 背筋が凍り、血の気が引いてしまうのは、イスラエルが秘密裏に34名ものアメリカ人を殺害することができたことであることは言うまでもありません。 国民がどんな抗議の声を上げようとアメリカ政府はその沈静化に協力するだろう、という自信がイスラエルにはあったのです。」

故意の殺人

モーラーは、生前、「イスラエルによるリバティ-号攻撃、攻撃中に派遣された軍救援機の呼び戻し、そしてそれに続くアメリカ政府の隠蔽工作」を調査する「独立査問会議」に参加していた。 その日の出来事を精査するために立ち上げた学識経験者から成る会議だ。 他のメンバーとしてはレイモンド・G・デイビス将軍、メルリン・ステアリング海軍少将、そしてジェイムズ・エイキンズ大使(元在サウジアラビア米大使)がいた。

最も衝撃的な会議の調査結果:

①  イスラエルの攻撃は米国船を破壊し、乗組員全員を殺害する意図的な攻撃だったという有力な証拠がある。

②  リバティ-号攻撃でイスラエルはアメリカ軍人を殺害し、アメリカに対する戦争行為を行ったことになる。 

③ イスラエルとの摩擦を恐れ、ホワイトハウスは米海軍がリバティ-号防衛に向かうのを意図的に止めた。 リバティ-号が攻撃されている最中、第六艦隊が軍事的支援に向かうのを呼び戻したのだ。 

④ リバティ-号がほぼ完全な破壊から救われたのは、同艦の大佐ウィリアム・マゴナーグル(衛生隊員)と彼の配下の勇敢な隊員たちの英雄的な奮闘のお陰だが、生き残った隊員達は、後に、もし真実を暴露すれば「軍法会議、刑務所行きあるいはそれ以上のことを覚悟しろ」との脅しを受けた。 そしてわが国の政府は彼らを見捨てたのだ。 

⑤ アメリカにおけるイスラエルの強力な支持者達の影響力で、ホワイトハウスは意図的にこの攻撃の事実をアメリカ国民の前から隠蔽した。 

⑥ アメリカで活動する親イスラエルロビーの継続する圧力で、この攻撃だけが議会による徹底調査のない海軍の重大事故となっている。 今日に至るまで、生存乗組員は公式の場で、この攻撃について公の場で証言することは許されていない。

⑦ アメリカ海軍の歴史の中で前例のない政府サイドの隠蔽工作となっている。 そういった隠蔽工作があることは、海軍少将(退役)で元海軍法務総監のメルリン・ステアリング、そして海軍大佐(退役)で1967年に立ち上げられた査問会議の主席法律顧問だったウォード・ボストンの声明で現在裏付けされている。 

⑧ イスラエルの攻撃とその後のホワイトハウスの隠蔽工作についての真実は、今日に至るまで、公式には、アメリカ国民には隠されたままである。 それはアメリカという国の名誉を損ねることになる。

⑨ 国民が選出した役人や政治家がアメリカの利益よりも外国の利益を進んで優先させたりする時、わが国の安全に対する危機はいつも存在する。 両国の利益が合致しないが、イスラエルの利益に反対できないときは特にそうだ。 

前述した「リバティ-号退役軍人協会」のレポートは一連の出来事を生存者の観点からまとめている。 とても説得力のある内容となっている。 その結論:

「アメリカ政府がイスラエルのリバティ-号攻撃について完全な調査をしなかったことは、結果的に、生存者をたいへん傷つけることになった。 そして全ての乗組員の家族も同様である。

同様に軽視できないのは、この不作為が結果的にアメリカ合衆国の名誉に消しがたい染みをつけてしまったことである。 アメリカの軍務に服する男女に、自分達の幸福よりは外国の利益が常に優先されるというシグナルを送ってしまったことになる。 この不作為について考えられる唯一の理由は、イスラエルの利益をアメリカの軍人、従業員、そして退役軍人のそれより優先するという政治的な決定があったからだ。」(P.32)

このレポートにはまた、リバティ-号に乗務していた退役軍人達が、イスラエルとその支持者達から悪意のある攻撃を受けていた様子が書かれている。 20ページには、その攻撃の犠牲者達が今日に至るまで不当な扱いを受けている様子の記述がある。 

「イスラエルの意向を受けたPRキャンペーンの結果、リバティ-号の生存者達は、攻撃が意図的なものだったと言明していること、彼らが正義を求める動きをしていることに対して中傷の対象となっている。 「ネオナチ」、「反イスラエル」、あるいは「陰謀理論信奉者」などというレッテルが張られている。 彼らが望んでいるのはリバティ-号と自分達に向けられた攻撃の嘘偽りのない、オープンな調査に他ならないのに。」

生存者と死亡した乗組員の家族には金銭的な補償が支払われた。 しかし、攻撃に参加したイスラエル軍兵士は誰一人処分されていない。 

The Jewish Virtual Library[ユダヤの真の解放]というウェブサイトが、イスラエルは事前に周到な計画を立てこの攻撃を遂行したという、高まる疑問をまとめた論文を掲載している。 この論文には証拠についての相当公明正大な評価が書かれていると思うが、こんな記述も出てくる:

「浮かび上がってくる図柄は犯罪に関わるものでは全くない。 いわんや刑事過失なんかでもない。 アメリカとイスラエルの双方において、①情報伝達がうまくいかなかったこと、②人為的なミス、③不運な巡り合わせ、そして④装備の故障、などが連動したということだ。 戦争のどさくさの中ではよくあることだが、悲劇的で愚かしい誤謬の類いだ。

イスラエルの「リバティ-号攻撃」への査問法廷は、政府サイドの隠蔽の域を超えていなかった。 その結論は、リバティ-号は所属を示す旗をまったく掲げていなかった、というものだ。 しかし、リバティ-号に乗船していた乗員は全員、「最初5×8フィートの旗を掲げていたが、攻撃で、それは破損され、二番目に大きな旗と差し替えられた」と証言している。 査問法廷のもう一つの結論は、どこかの戦艦がシナイ半島のイスラエル陣地を砲撃していたことが混乱と一連の誤りに繫がった、というものだ。 

私たちは何を学んだか?

この論文をお読みの多くの方々は、「リバティ-号事件」が何を意味するか、うすうすお分かりになっただろうと思う。 これが恐らく「リバティー号事件」の全容なのだが、それに目を通され、①地政学について、②偽旗作戦について、③どのように権力が嘘とプロパガンダの霧の中でいかに行使されるかについて、ご理解を深められたことと思う。 イスラエルとシオニズムの歴史、そして、パレスチナ人に対して過去70年間どんなことがなされてきたか、についてもご存知かもしれない。

しかし、こういったことが心底お分かりになる人は、それだけで極少数派の人間ということになる。 大半の人はここで述べた野蛮極まりない行為を耳にすることはまったくない。 だから、それが意味することにも皆目見当がつかない。 それにも関わらず、「リバティー号事件」から私たち全員が学ぶべき、軽視できない教訓がいくつかある。(読者の方はきっとさらに多くの教訓を提示していただけると思う)
  
①  イスラエルは、「シオニズム運動」の課題を前進させるためであれば、同盟国を、アメリカでさえ攻撃することができる。 「9/11」ついては、どうしてもこの観点から考えざるを得ない。

②  イスラエルは嘘をつき、偽りの大義名分の下、アメリカを戦争に引きずり込む。 またイスラエルはエジプトの
ような第三国に対して、やってもいない残虐行為を非難するのに何の疑念も抱かない。 
③  イスラエルがアメリカの権力サークルに十分な力を発揮するので、アメリカ政府はイスラエルを困らせないよう気を遣い、自国民を守ることは二の次になる。 

④  アメリカのメディアは、アメリカに対する戦争行為の隠蔽を進んで行い、イスラエルを指弾することはしない。

⑤  イスラエルがリバティ-号生存者達に向ける攻撃は、各国政府と主流メディアが「陰謀論者」を無視するやり    口と同じだ。 

⑥  イスラエルはまた、「リバティ-号事件」で犠牲になったり、事情説明を求め続けるアメリカ軍人に対して、「反イスラム」や「ネオナチ」のカードを切る。 

⑦  半世紀が経過してもなお、アメリカ政府はこの嘘を守り続け、生存者への迫害はそのままにして置く。

⑧ イスラエルは、絶えざる威嚇の下で自分達が犠牲になった国であり、国民だというイメージを育て上げている。  しかし、今回の驚愕すべき出来事が真に明らかにしているのは、イスラエルは人であれ、国であれ、たとえ「友人」と考えられる人でも、自分達の政治的目的に邪魔であれば脅迫する、ということだ。

一部の観測筋の主張に依れば、「リバティ-号攻撃」は偽旗作戦であり、エジプトを巻き込み、後ろ向きのアメリカを戦争に引きずり込む意図があった。 確かなことは、イスラエルのリバティ-号を撃沈し、乗員全員を殺害する腹積もりを前提にすれば、この考えは成立する。 別の観測筋の見方だが、イスラエルが恐れていたのは、リバティ-号のことについてあれこれ調査されると、イスラエルがヨルダン、あるいはシリアとの敵対行動を始める計画を持っていることがアメリカ人にわかってしまうことだ。 そのことはリンドン・ジョンソンが強く諫めていた。 恐らく二つ観測筋はそれぞれ真実を突いている。
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