米国が中国の人権侵害問題議案を国連に提出したが、これは天に唾する行為
<記事原文 寺島先生推薦>
US-led human rights resolution against China could backfire
Washington’s resolution against China at the UN’s rights body is bound to be embarrassing
(米国が主導した対中国の人権問題に関する議案提出は逆効果になるだろう。
米当局は国連の人権団体に中国に対する議案を提出したが、この行為は恥でしかない。)
筆者:ブラッドリー・ブランケンシップ(Bradley Blankenship)
ブラッドリー・ブランケンシップは、米国の記者で、コラム執筆者で、政治専門家。中国CGTVで、他社との共同コラムに執筆中で、中国国営メディアの新華社を含む国際的なニュースメディアでフリーの記者活動を行っている。
出典:RT
2022年10月4日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年10月21日
© AP Photo/Cliff Owen
米国は9月26日、国連人権理事会(以後UNHRC)に中国が新疆ウイグル自治区で人権侵害行為を行ったとされる件に関して、話し合いを持つよう求めた。ワシントン当局によるこの要求は、先日国連が、中国領内で人権侵害行為に当たる犯罪行為が行なわれている可能性を警告したことを受けてのことだった。
米国が提出したこの議案には、英国、カナダ、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェーも支持していた。UNHRC加盟47ヶ国が、今週この決議の是非に投票を行うことになっているが、西側諸国は、この議案はおそらく否決される、と見ている。この議案が通過すれば、2月に開かれる次回のUNHRCの会合で議題として議論されることになるからだ。実際のところ、UNHRCの第51回会合で、パキスタンが、68ヶ国の代表として、共同声明を提出しているが、その声明によると、人権問題に関しては、西側諸国が二重基準を使っていることを非難し、新疆や香港やチベットに関する問題は、中国の内政問題である、と強調していた。
現在の同理事会の加盟国の顔ぶれからすると、中国が西側よりも多く支持を集めそうだ、とひと目でわかる。さらにこの中には、先述の共同声明に参加している諸国が16ヶ国ある。したがって、米国の議案が否決される可能性は極めて高い。 さらに特筆すべきは、米国当局の反応が非常に柔和な点だ。それは、「話し合い」を持つ以上の議案が成し遂げられる可能性が全くないことを、米国当局がわかっているからだろう。
訳者より:筆者の予見通り、この議案は10日6日に否決されている。
関連記事: UN report accuses China of ‘crimes against humanity’
この議案が通らないことが、米国にとっては既にじゅうぶん恥ずかしいことで、世界の勢力関係が津波のように動いている様を表すできごとなのであるが、実は、この事実がかすんで見えるくらい恥ずかしい事象がある。それは、人権に関する議論を始めてしまうことは、アンクルサム(米国の別称)にとってよい前兆ではないことだ。
新疆に関して中国に向けられているいつもの非難の声を検討してみよう。国連の報告書には、「強制労働」や「強制連行」などの人権侵害の事例が起こっていることが懸念される、と記載されている。ただしこんな人権侵害は、米国でよく目にするものだ。
「宗教や、文化や、言語のアイデンティティや表現」に対する人権侵害のことから話を始めると、米国は、人類史上最悪のジェノサイド(民族大虐殺)を行った国なので、口をつぐんでおいた方がよさそうだ。ただし念頭においておくべきことは、米国当局が先住民たちに対して行ったジェノサイドと、先住民たちのアイデンティティに対する抑圧行為は、現在も進行中だ、という点だ。
一例をあげると、広く報じられたネイティブアメリカンのダレル・ハウスさんに関する事件だ。ハウスさんは、自分の民族が先祖代々保有している土地で、祈りを捧げていたとき、連邦政府の関係者により、銃口をつきつけられたのだ。もちろん、このときの公園管理事務所の職員は事件について、「今は調査中です」と語っている。しかし、このような事例は常に起こっている。実際、ネイティブアメリカンの人々は、彼らの宗教上の行為に関して、何度も何度も、憲法上の議論の対象となっている。
「プライバシーの権利と移動の自由」の話に移っても、米国が常にこれらの権利を阻害している姿を目にする。国家安全保障局(NSA)の内部告発者であるエドワード・スノーデンが明らかにした漏洩文書からわかったことだが、米国は世界規模で世界最大のスパイ活動網をはりめぐらせ、当人の同意を得ぬまま、自国民の大量の個人情報を収集している。
関連記事:China rebukes US as ‘world’s biggest human rights violator’
移動の自由に関して言えば、人権問題が専門のスティーブン・ドンジガー弁護士の事例が、特筆される。ドンジガー弁護士は、巨大石油会社シェブロン社が、エクアドル国土を汚染しているとして、エクアドル国民たちの弁護を引き受けた裁判で勝訴した。その後、シェブロン社はその判決を不服とし、1セントの賠償金も払わないまま、連邦政府に圧力をかけ、ゆすり行為をおこなったとでっち上げて、ドンジガー弁護士を裁判にかけた。ドンジガー弁護士は、2年以上もの間、自宅軟禁状態に置かれていた。
「生殖に関する権利」について、米国中で大きく報じられているが、これは最高裁がロー対ウェイド判決を棄却したことをうけてのことだ。この判決は、女性が中絶する権利を憲法上認めたものだった。現在女性の権利は、全国規模で深刻な危機に置かれている。というのも、諸州が、中絶を禁止する刑罰法規を設置し始めたからだ。
「雇用と労働問題」について考えるのも興味深い。というのも、よく知られている通り、昨年の時点で、米国のフルタイム労働の最低賃金の7ドル25セントでは、米国のどこでも家賃をはらえなくなっている事実があるからだ。職場環境も極端に健全ではないことは、Covid-19が、米国でこれだけ蔓延した事実からもよくわかる。何よりも現在進行中の危機は、健全な労働環境の確保問題であり、連邦政府は、労働者たちの安全を確保する働きかけをしようとしている雇用者たちからの声に答えることが求められている。
もちろん、囚人たちよりも搾取されている人々は存在しない。というのも、米国は未だに懲罰という形の奴隷労働を、憲法で認めているからだ。アメリカ自由人権協会(ACLU)が6月に出した報告によると、米国内の投獄労働者たちの平均給与は時給13セントから52セントだ、という。そして、これらの囚人労働により、年間110億ドル以上相当の商品生産や業務をまかなっている、という。
関連記事: China, India and Brazil abstain in vote on US resolution, Russia vetoes
もちろん、こんな給与は最低賃金を遙かに下回る賃金だ。さらに国家は、そのなけなしの給与の8割分まで、部屋代や食事代や裁判費用や損害賠償などの手数料を取ることができるようになっている。さらに皮肉なことに、そのお金は、刑務所の維持費や建設費にも回されているという。調査に回答したほぼ7割の受刑者は、生活必需品すら買うことができない、と答えており、いまいましいことに、76%の回答者が、「労働をしなければ、独房に監禁されるなど追加の懲罰が加えられたり、刑期を短縮する機会を拒否されたり、家族との面会ができなくさせられたりする」と答えている。
「家族の別離と報復問題」については、多くの人々がご存知の、不正入国者拘留所の「檻の中の子どもたち」の話がある。 米国は、国境で移民の家族を引き離ている。さらに米国のネットメディアのイーターセプトの記事によると、米国の連邦政府の工作員たちが、移民受入派の活動家に対する報復について、少なくとも議論は行っていた、という。
「強制連行」の件については、米国政府はキューバ島内にあるグアンタナモ湾で運営している有名な軍事基地のことが、ピッタリ当てはまる。ここでは2002年以来、780名の囚人が収容されてきたが、その多くは正式な刑事訴訟の手続きを踏んでいない。この地で行われている虐待行為には、精神的虐待や、収容者の家族に害を与えることを脅しに使うことも含まれていて、このような行為は確実に「脅迫、恫喝、報復行為」に相当する。
つまり国連の報告書が指摘している全ての人権侵害行為を米国は行っている、ということだ。この事実から分かることは、米国がUNHRCで人権問題に関する話し合いを始めようと決めれば、西側が人権問題についてどれだけ偽善者なのかがハッキリする、ということだ。ほんの少しの努力があれば、中国やほかの国々により、アンクル・サムが道徳に対して持っている優越感など粉々に砕かれてしまうことが、わかるだろう。
US-led human rights resolution against China could backfire
Washington’s resolution against China at the UN’s rights body is bound to be embarrassing
(米国が主導した対中国の人権問題に関する議案提出は逆効果になるだろう。
米当局は国連の人権団体に中国に対する議案を提出したが、この行為は恥でしかない。)
筆者:ブラッドリー・ブランケンシップ(Bradley Blankenship)
ブラッドリー・ブランケンシップは、米国の記者で、コラム執筆者で、政治専門家。中国CGTVで、他社との共同コラムに執筆中で、中国国営メディアの新華社を含む国際的なニュースメディアでフリーの記者活動を行っている。
出典:RT
2022年10月4日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年10月21日
© AP Photo/Cliff Owen
米国は9月26日、国連人権理事会(以後UNHRC)に中国が新疆ウイグル自治区で人権侵害行為を行ったとされる件に関して、話し合いを持つよう求めた。ワシントン当局によるこの要求は、先日国連が、中国領内で人権侵害行為に当たる犯罪行為が行なわれている可能性を警告したことを受けてのことだった。
米国が提出したこの議案には、英国、カナダ、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェーも支持していた。UNHRC加盟47ヶ国が、今週この決議の是非に投票を行うことになっているが、西側諸国は、この議案はおそらく否決される、と見ている。この議案が通過すれば、2月に開かれる次回のUNHRCの会合で議題として議論されることになるからだ。実際のところ、UNHRCの第51回会合で、パキスタンが、68ヶ国の代表として、共同声明を提出しているが、その声明によると、人権問題に関しては、西側諸国が二重基準を使っていることを非難し、新疆や香港やチベットに関する問題は、中国の内政問題である、と強調していた。
現在の同理事会の加盟国の顔ぶれからすると、中国が西側よりも多く支持を集めそうだ、とひと目でわかる。さらにこの中には、先述の共同声明に参加している諸国が16ヶ国ある。したがって、米国の議案が否決される可能性は極めて高い。 さらに特筆すべきは、米国当局の反応が非常に柔和な点だ。それは、「話し合い」を持つ以上の議案が成し遂げられる可能性が全くないことを、米国当局がわかっているからだろう。
訳者より:筆者の予見通り、この議案は10日6日に否決されている。
関連記事: UN report accuses China of ‘crimes against humanity’
この議案が通らないことが、米国にとっては既にじゅうぶん恥ずかしいことで、世界の勢力関係が津波のように動いている様を表すできごとなのであるが、実は、この事実がかすんで見えるくらい恥ずかしい事象がある。それは、人権に関する議論を始めてしまうことは、アンクルサム(米国の別称)にとってよい前兆ではないことだ。
新疆に関して中国に向けられているいつもの非難の声を検討してみよう。国連の報告書には、「強制労働」や「強制連行」などの人権侵害の事例が起こっていることが懸念される、と記載されている。ただしこんな人権侵害は、米国でよく目にするものだ。
「宗教や、文化や、言語のアイデンティティや表現」に対する人権侵害のことから話を始めると、米国は、人類史上最悪のジェノサイド(民族大虐殺)を行った国なので、口をつぐんでおいた方がよさそうだ。ただし念頭においておくべきことは、米国当局が先住民たちに対して行ったジェノサイドと、先住民たちのアイデンティティに対する抑圧行為は、現在も進行中だ、という点だ。
一例をあげると、広く報じられたネイティブアメリカンのダレル・ハウスさんに関する事件だ。ハウスさんは、自分の民族が先祖代々保有している土地で、祈りを捧げていたとき、連邦政府の関係者により、銃口をつきつけられたのだ。もちろん、このときの公園管理事務所の職員は事件について、「今は調査中です」と語っている。しかし、このような事例は常に起こっている。実際、ネイティブアメリカンの人々は、彼らの宗教上の行為に関して、何度も何度も、憲法上の議論の対象となっている。
「プライバシーの権利と移動の自由」の話に移っても、米国が常にこれらの権利を阻害している姿を目にする。国家安全保障局(NSA)の内部告発者であるエドワード・スノーデンが明らかにした漏洩文書からわかったことだが、米国は世界規模で世界最大のスパイ活動網をはりめぐらせ、当人の同意を得ぬまま、自国民の大量の個人情報を収集している。
関連記事:China rebukes US as ‘world’s biggest human rights violator’
移動の自由に関して言えば、人権問題が専門のスティーブン・ドンジガー弁護士の事例が、特筆される。ドンジガー弁護士は、巨大石油会社シェブロン社が、エクアドル国土を汚染しているとして、エクアドル国民たちの弁護を引き受けた裁判で勝訴した。その後、シェブロン社はその判決を不服とし、1セントの賠償金も払わないまま、連邦政府に圧力をかけ、ゆすり行為をおこなったとでっち上げて、ドンジガー弁護士を裁判にかけた。ドンジガー弁護士は、2年以上もの間、自宅軟禁状態に置かれていた。
「生殖に関する権利」について、米国中で大きく報じられているが、これは最高裁がロー対ウェイド判決を棄却したことをうけてのことだ。この判決は、女性が中絶する権利を憲法上認めたものだった。現在女性の権利は、全国規模で深刻な危機に置かれている。というのも、諸州が、中絶を禁止する刑罰法規を設置し始めたからだ。
「雇用と労働問題」について考えるのも興味深い。というのも、よく知られている通り、昨年の時点で、米国のフルタイム労働の最低賃金の7ドル25セントでは、米国のどこでも家賃をはらえなくなっている事実があるからだ。職場環境も極端に健全ではないことは、Covid-19が、米国でこれだけ蔓延した事実からもよくわかる。何よりも現在進行中の危機は、健全な労働環境の確保問題であり、連邦政府は、労働者たちの安全を確保する働きかけをしようとしている雇用者たちからの声に答えることが求められている。
もちろん、囚人たちよりも搾取されている人々は存在しない。というのも、米国は未だに懲罰という形の奴隷労働を、憲法で認めているからだ。アメリカ自由人権協会(ACLU)が6月に出した報告によると、米国内の投獄労働者たちの平均給与は時給13セントから52セントだ、という。そして、これらの囚人労働により、年間110億ドル以上相当の商品生産や業務をまかなっている、という。
関連記事: China, India and Brazil abstain in vote on US resolution, Russia vetoes
もちろん、こんな給与は最低賃金を遙かに下回る賃金だ。さらに国家は、そのなけなしの給与の8割分まで、部屋代や食事代や裁判費用や損害賠償などの手数料を取ることができるようになっている。さらに皮肉なことに、そのお金は、刑務所の維持費や建設費にも回されているという。調査に回答したほぼ7割の受刑者は、生活必需品すら買うことができない、と答えており、いまいましいことに、76%の回答者が、「労働をしなければ、独房に監禁されるなど追加の懲罰が加えられたり、刑期を短縮する機会を拒否されたり、家族との面会ができなくさせられたりする」と答えている。
「家族の別離と報復問題」については、多くの人々がご存知の、不正入国者拘留所の「檻の中の子どもたち」の話がある。 米国は、国境で移民の家族を引き離ている。さらに米国のネットメディアのイーターセプトの記事によると、米国の連邦政府の工作員たちが、移民受入派の活動家に対する報復について、少なくとも議論は行っていた、という。
「強制連行」の件については、米国政府はキューバ島内にあるグアンタナモ湾で運営している有名な軍事基地のことが、ピッタリ当てはまる。ここでは2002年以来、780名の囚人が収容されてきたが、その多くは正式な刑事訴訟の手続きを踏んでいない。この地で行われている虐待行為には、精神的虐待や、収容者の家族に害を与えることを脅しに使うことも含まれていて、このような行為は確実に「脅迫、恫喝、報復行為」に相当する。
つまり国連の報告書が指摘している全ての人権侵害行為を米国は行っている、ということだ。この事実から分かることは、米国がUNHRCで人権問題に関する話し合いを始めようと決めれば、西側が人権問題についてどれだけ偽善者なのかがハッキリする、ということだ。ほんの少しの努力があれば、中国やほかの国々により、アンクル・サムが道徳に対して持っている優越感など粉々に砕かれてしまうことが、わかるだろう。
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