中国の「ゼロコロナ措置」は、中国に向けて仕掛けられた経済戦争なのか?
<記事原文 寺島先生推薦>
“Economic Warfare” Directed against China? The Shanghai “Covid Zero Tolerance Mandate” Extends its Grip to Major Industrial Cities
中国に対する「経済戦争」が仕掛けられているのか?
上海の「ゼロコロナ強制措置」は、中国の主要諸都市に広められている
出典:グローバル・リサーチ
2022年12月3日
著者:ミシェル・チョスドフスキー博士(Prof Michel Chossudovsky)
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年12月8日
この記事の初出は、2022年7月12日
著者による更新
経済や社会に密かに仕掛けられた戦争なのか?
以下の記事の初出は、2022年7月12日で、「ゼロコロナ」ロックダウンと、それが経済と社会に影響を与えた点に焦点を当てた記事だった。
2022年4月に上海で始められた「ゼロコロナ計画」は、中国各地の主要な諸都市に広められてきた。
社会を抑え込むこの措置は、各地の大都市で既に採用されている。人々は高層ビルの中のアパートに閉じ込められている。
中国のこのゼロコロナ措置により、「労働力の閉じ込め」や「職場の麻痺」が促進された。もちろん、交通網の麻痺、学校や大学や文化活動やスポーツの大会などの閉鎖もそうだった。
ゼロコロナ措置に基づくロックダウンが、中国各地で採用されているが、この措置は「似非(エセ)科学」に基づいたものだ。
この措置は事実上、「経済戦争」の一環だと言える。中国のこの措置は、2020年3月11日にとられたCovid-19に対する「ロックダウン措置」とほとんど同じ考えをもとにしている。そのロックダウンは、 WHOの肝いりで、国連加盟190カ国以上が採用したものだ。
このゼロコロナ措置のせいで、中国社会は大損害を被った。さらに、中国経済は弱体化した。
この措置のせいで、国内の供給網に混乱が生じ、上向きだった中国の商品輸出経済も停滞した。
中国の国家衛生健康委員会は、(2022年7月11日)に、主要な都市部に封鎖措置を課したが、その措置を正当化する根拠となった中国本土における数値は、以下の通りだった。
・7月10日の新規Covid感染者は352名
・うち症状がある新規感染が46件
・無症状の新規感染が306件
国内人口14億5000万人のうちの46件(7月10日時点)いう新規症例者数では、中国の主要都市部を閉鎖することを正当化できないだろう。
信頼できないPCR検査や関連検査器具を使った最新の数値は以下の通りだ。
WHOによる11月28日の数値。
人口14億5000万人以上のうち、いわゆる確認された症例数が1万9130件。
ゼロコロナ措置を採用する後ろ盾となる科学的根拠は何ら存在しない。 こんな根拠で社会を抑圧する措置を何百万もの人々に科すべきではない。このような抑圧的な措置を正当化するような、健康上の懸念は存在しない。
WHOが発表した、「確認された症例」の数は少なく、(WHOやCDCが確認した)SARS-Cov2ウイルスは、「危険なウイルス」ではない。
3月から始められた、経済と社会を弱体化させる措置(以下の記事を参照)は、上海だけではなく、いくつかの主要産業都市にまで広められている。具体的には、南方の広州や深圳(しんせい)といった中国の世界市場への主要輸出拠点にまでだ。
野村証券の調べによると、中国のGDPの2割以上が、現在ロックダウン措置下に置かれているという。
2022年11月24日、上海の株式市場は暴落した。
私たちは、世界規模の経済や社会の弱体化の複雑な過程と向き合っている。この過程の裏側にいるのは誰だろう?
中国が、商品生産にける主要な役割を主導しているという点(世界のすべての主要な地域に多くの商品を輸出している)からすれば、中国における危機は、欧州や北米に対して大きな影響を与えることは避けられないだろう。ましてや、南の発展途上国の国々はいうまでもない。今展開されていることは、意図的な世界経済の崩壊だ。
ミシェル・チョスフドスキー、2022年8月23日、2022年11月29日
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2022年の3月下旬から4月上旬にかけて、中国政府は上海に対して、ゼロコロナロックダウン強制措置を命じた。上海は人口2600万人の港湾都市である。
これは、上海市当局が発表した公式説明によるものであり、この件に関して中国共産党も、拒否していないのだが、こんな極端な措置は、嘲笑を呼ぶ類いのものだ。
Covid-19に対する新たな「ゼロ・トレランス(許容を許さない態度)」措置が出されたわけだが、まず言っておくべきことは、この病気は存在しない偽りの病気だということだ。そしてこの措置はすべての上海市民に課されたのだが、3月28日[2022年]に、まず手始めに黄浦江(こうほこう)の東岸地域で開始され、4月1日に残りの地域でも開始された。
おそらくすべての市民がCovid-19の検査を受けさせられることになると推測される。報道によれば、Covid-19の新規症例者数は2万6087件であり、うち症状があるのはたったの914件だという(エマニュエル・パストリッチ氏の記事からの引用はここまで)。
「上海の労働力の封じ込めは、“ゼロコロナ強制措置”という政策のもとで実行された。中国各地から、少なくとも3万8千人の医療従事者が派遣され、上海の救助に当たった… これは、オミクロン株に対抗するものである…」 (Global Timesの記事)
オミクロンという言葉は、バズワード(それらしく聞こえるが、意味が曖昧な言葉)だ。オミクロンと、その亜種であるBA.5もそうだ。
中国の医療行政当局はこう断言している。「核酸検査(PCR検査のこと)が、この戦略の中心となる」と。梁萬年博士が代表を務めるCovid-19対策専門委員会が、中国の国家健康衛生委員会の肝いりで立ち上げられた。「コロナゼロ強制措置」は、「オミクロン株を打破しようとする中国」政策の一環であるが、その根拠には、当てにならないPCR検査が利用されている。このPCR検査では、季節性のインフルエンザとCovid-19の区別さえできない。さらにこの検査は、2021年12月31日に、米国のCDCにより、全く当てにならず、効果の望めない検査法であると分類されている。
ジョージ・高福博士が果たした役割
明らかに、中国の医療行政当局は、ファウチやゲイツが唱えていた「エセ科学」的ロックダウン措置を、臆面もなく追随したのだ。
中国の疾病管理予防センター(CCDC)の代表はジョージ・高福博士だ。彼は、アンソニー・ファウチなどの同僚だ。
高博士は、2019年10月のイベント201に参加していた。このイベントは、コロナウイルスの世界的流行をコンピューター上で演習するものだった。そしてこの演習から3ヶ月もしない2019年12月、武漢で「本物の」2019年新型コロナウイルスの流行が始まったのだ。
最初から、高博士は中国のCovid-19が実際のものよりも恐ろしいものに見せることにおいて、中心的な役割を果たしていた。高博士の動きは、米国のCDC、ファウチのNIAID(国立アレルギー感染症研究所)、ゲイツ財団、WHO、ジョンホプキンス大学などと足並みをそろえていた。
ジョージ・高福博士は、オックスフォード大学出だ。数年間、同博士は巨大製薬業界とつながりのある、ウエルカム・トラスト財団の特別研究員をしていた。高福博士は、アンソニー・ファウチの仕事仲間であり、「長年の友人」だ。
中国の疾病管理予防センター所長のジョージ・F・高博士は、2020年3月28日に、アンソニー・ファウチからEメールを受け取っている。[米国でロックダウン措置がとられた数日後のことだ]。
流行対策への批判にさらされてたファウチに、高博士は再び救いの手を伸ばしていた。
「(偽ニュースだといいのですが)いくつかのニュースを目にしました。あなたを攻撃する人もいるようですね。こんな不合理な状況に置かれているあなたが、無事であることを祈ります」と高博士は2020年4月8日にメールを送っていた。
その3日後、ファウチは返信し、長年の友人の「優しい気遣い」に対して感謝をのべた。
「この世には、おかしな人もいますが、すべて順調です」とファウチはメールに書いた、と新聞は報じている。
アンソニー・ファウチ博士は、「ダブル・スピーク(二枚舌)」だ
最初から、ファウチは常に(変種や亜種も含めて)SARS-CoV-2がすぐに手を打たなければならないような危険なものであると主張し続けていた。しかし、ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン(以下NEJM)に掲載された、同博士の査読済み論文にはこう書かれていた。
「Covid-19の大まかな臨床的帰結は、症状の重い季節性インフルエンザ(その致死率は約0.1%)や流行性インフルエンザ(1957年や1968年に流行した型に似たもの)と似て非なるものに過ぎない可能性がある…」 (こちらの論文を参照。「Covid-19 —未調査の疾病への対応」、NEJM)
時期にご注意あれ。この論文記事がNEJM誌に掲載されたのは、2020年3月26日のことで、国連加盟193カ国がCovid-19の世界的流行に対して世界規模でロックダウン措置をとった2020年3月11日からたった2週間しかたっていない時期だった。
ファウチ博士によるNEJM誌の査読済みの分析(この分析はメディアではほとんど取り上げられていない)は、同博士がテレビで熱く語った内容とは全く異なっている。
2020年3月28日(同博士の査読済み論文が発表された二日後)、ファウチはこう語っていた。「Covidは20万人の米国民の命を奪う可能性がある」と。
中国も加担しているのか?
アンソニー・ファウチは、高福博士の相談相手だ。だから中国でも同じような政策が採られているのだ。
中国のゼロコロナ強制措置は、(「似非科学」を根拠に行われた)2020年3月11日のロックダウン措置の「コピペ」だ。そのロックダウン措置は、アンソニー・ファウチやビル・ゲイツなどの手により、(世界経済フォーラムとの綿密な相談を重ねた)WHOの肝入りで行われた。
中国のゼロコロナ強制措置は、恐怖を扇る計画に繋がるものだ。
上海のロックダウンが経済に与える悪影響
2022年7月10日、中国の医療行政当局は、いくつかの主要都市部に「ゼロコロナ強制措置」を導入するよう指導すると発表した。そしてそれは、「感染力の強い異種であるオミクロンBA.5株」に対抗するためのもだとされた。
多くの産業都市において、労働力が封じ込まれたため、経済や社会における混乱が生じ、経済活動が劇的に低迷した。以下は、ロイター通信の記事だ。
[変異種である]BA.5系の菌株が、多くの国々で急速に拡散しており、陝西(せんせい)省の西安や遼寧省の大連でも検出されている、という,… この株の症例者が中国で初めて見つかったのは、ウガンダからの航空便で来た患者で、5月13日のことだった、と中国疾病予防管理センターは発表していた。そして、この症例者から中国国内で感染した例は、この月にはなかった、とのことだった。
このウガンダからの「患者」は、中国のに戻ってすぐにPCR検査を受けたのだろうか?変異種や亜種は、どんな状況下にあっても、このPCR検査で検出できない。(もっとも、もともとのSARS-CoV-2ウイルスも、このPCR検査では検出できないのだが )。
鼻に綿棒を挿入するやり方で行われるPCR検査に基づいて、遺伝子配列を検出することに焦点をおいた中国のCCDCの研究は、間違った結論を導くものだ。
多くの都市部が、まさに閉鎖されている。こんな措置をとる根拠となる科学的な合理性も、公共医療上の合理性も存在しない:
「河南省の中心部である秦陽市は、日曜日(7月10日)から70万人の住民に対してほぼ完全にロックダウン措置が採られている。各家庭で一名のみが、食料品店に行くために、二日おきでの外出が認められている。」
河南省の別の市である武岡市の当局は、同市の29万人の住民が、Covidの検査に出て行く以外、今後3日間、家を出てはいけないという指示を出した。
中国北西部の甘粛省蘭州市内の4地域と、南部海南省の儋州(だんしゅう)市と海口市では、数日間の一時閉鎖措置が取られていて、併せて600万人に影響が出ている。
人口630万の南部江西省南昌市では、日曜日(7月10日)に、いくつかの娯楽施設が閉鎖された。ただし、その閉鎖期間は明らかにされなかった。
北西部青海省では、月曜日(7月11日)西寧市で大規模な検査計画が始められた。それは、日曜日(7月10日)に、一名の感染者が出たからだった。
南部の主要都市である広州市内のいくつかの主要部でも、月曜日(7月11日)、大規模な検査が開始された。
中国の国家健康衛生委員会が、2022年7月11日時点での中国本土の感染状況を以下のように発表している。
§ 7月10日に確認されたCovidの新規国内感染者総数は352件
§ 症状のある新規症例数が46件
§ 無症状の症例数が306件
人口14億5千万のうち、症状のある症例数がたった46件しか出ていない状況では、中国の主要都市部を閉鎖することは正当化できない。
§ こんな決定は、馬鹿げたものだといって、ほぼ間違いではない。
§ 科学的根拠はない。
§ 何か隠された企みでもあるのだろうか?
§ 中国共産党は、だんまりを決め込んでいるのか?
§ 中国の指導者層内で分断が起こっているのか?
西側メディアも中国メディアも、この件に関しては完全に沈黙を保っている。
中国の国家健康衛生委員会と中国のCCDCが課したこのような措置が与える影響により、中国の供給網は危機に陥るだろう。「ゼロコロナ」対策により、上海の金融業界や上向きだった中国の輸出経済も不安定化している。さらに、国内の輸送業や国内の商品供給網も不安定化させられている。
中国が推し進めているQRコード
ゼロコロナ強制措置のせいで、社会には大混乱が生じ、何百万もの人々を苦しめている。具体的な措置のひとつに、常時PCR検査の受検を必要とする、特定のQRコードを使わせる措置がある。そのQRコードは、緑・黄・赤の三色でできていて、社会抑制装置として使用されている。
ワシントンに本拠地を置く戦略国際問題研究所(CSIS)は、このQRコードを賞賛している:
「或る地域で大成功すれば、他の国々でも採用される可能性があります。オンライン上でできる「健康規約」体系(健康码)が、急速に発展しています」
この革新的なアプリは、個人の移動や人との接触の記録や生体数値(体温など)を、各自のスマートフォンを使って、直接追跡できるものです。」 (強調は筆者)。
世界経済に対する影響
2022年の4月中旬(上海でロックダウン措置がとられていたのと同時期)、中国元 (CNY)が、米ドル(USD)に対して突然安くなった。
それは、上海港(およびそれ以外の主要港湾都市)を出入りする商品取引の量が減り、それに伴い、「中国製」商品が行き渡らなくなる状況が、世界中で避けられなくなっているからだ。
「中国製」の商品は、小売業の根幹をなすものであり、事実上ほとんどすべての分野の主要商品において、家計消費を支えるのに不可欠だ。「中国製」商品は、衣服、履き物、金属製品、電子機器、玩具、宝石、家屋内の様々な部品類、食物、TV、携帯電話など多岐にわたっている。米国の消費者に「中国製」があるか聞いてみればいい。きりのない数になるだろう。
中国からの輸入品は、何兆ドルにもなるもうけ口だ。中国からの輸入品は、米国においてとてつもない利益と富を生み出す源となる。というのも、消費者が購入する商品は、中国の低賃金経済のもとで生み出されているので、小売り段階で、工場渡し価格の10倍以上で売られることがしばしばあるからだ。
卸売りや小売り段階での商品貿易が、世界的に危機に置かれている。世界のすべての主要地域に与える可能性がある影響は、計り知れない。生活必需品が世界規模で品薄になっている状況が、インフレ圧力と一体となっている。
このような経済不況が進む中で、国民国家としての中国がもつ力にも影響が出てきている。いうまでもないが、「一帯一路」構想にもその傾向が見られている。
ワシントン当局が掲げている「アジアへの中心軸移動」政策も含めた、この現状の危機の中で、重大な地政学的影響が生じている。そしてその影響により、中米間の対立の激化が進んでいる。
中国は資本主義国家
ほとんどの分析家や歴史家が理解できていないことは、1980年初旬から、中国は完全な資本主義国家に生まれ変わっている、という事実だ。強力な米国のビジネス上の利益がある。具体的には、巨大製薬産業、主要なハイテク諸企業、銀行業界などだ。これらの勢力が中国国内に深く根を下ろしている。
米国は、中国の業界上層部内、研究組織、科学者、医師たちの中に、信頼できる同胞を有している。これらの同胞は「親米」の傾向がある。
1980年代の初期から、中国科学院や中国各地(北京、大連、広州)の商業大学 は、米国のアイビー・リーグ諸大学と連携を取っている。その多くは、相互乗り入れMBA(経営学修士)取得過程を有している。例えば、上海の复旦大学は、MIT(マサチューセッツ工科大学)と提携しており、中国内にMITのキャンパスがある。MITは、北京大学などとも提携を結んでいる。
ほかにも、清華大学ジャーナリズム・コミュニケーション学院の大学院には、ブルームバーグ財団やウォール街のいくつかの銀行が出資している。中国の億万長者たち(Forbes List 2022, Forbes New Billionairesを参照) を含めた、強力な中国諸業界(中でも顕著なのは製薬業界だ)の利益受給者が、中国共産党指導者層の最上位に名を連ねている。
つまり、言うまでもないことだが、中国共産党内部には、深い分断が存在している、ということだ。