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中国の脅威とはいかなる脅威か?

中国の脅威とはいかなる脅威か?

<記事原文  寺島先生推薦>

What Kind of Threat Is China?

Book review of "America and the China Threat: From the End of History to the End of Empire" by Prof.

(パオロ・ウリオ(Paolo Urio)教授著『米国と、中国の脅威:歴史の終わりから帝国の終わりまで』書評)

Global Research

2022年1月25日

キム・ピーターソン(Kim Petersen)

<記事翻訳  寺島メソッド翻訳グループ>

2022年2月20日
 


 米国の「残虐的な哲学」が、TikTok上に“曝光”というタイトルの暴露映像で明らかにされている。この映像に登場するのは、ロバート・ダリー(Robert Daly)。2015年に中国大使として北京に駐在していた元外交官だ。現在、ダリーは「中米関係に関するキッシンジャー研究所」の所長を務めている。この映像でダリーは外交辞令などは使わず、米国の外国政策を率直に話している。ダリーはこう言ったのだ。「中国は決して米国のレベルには届かない」と。

 ジュネーブ大学のパオロ・ウリオ(Paolo Urio)名誉教授は、『米国と、中国の脅威。歴史の終わりから、帝国の終わりまで(America and the China Threat: From the End of History to the End of Empire:Clarity Press, 2022)』という著書の中で米国についてこう指摘している。 すなわち、「中国の発展が、米国が作った世界を終わらせる脅威になりつつあることを、米国は理解し始めている。つまり米国が世界において支配的な役割を担ってきた基盤が揺らぎつつあるのだ。これは米国の支配層にとって大きな脅威であることは間違いない。」(p 5)

 バラク・オバマ政権が「アジア基軸戦略」をとった目的は、中国の封じ込めのためだった。 (p 22)

 オバマは2016年の一般教書演説で次のように豪語していた。

 「調査結果が明らかにしていることですが、我が国の世界における地位は私が大統領に選出された時よりも高まっています。すべての国際問題に関して、世界の人々は、中国やロシアを当てにしていません。世界の人々は、我が米国を求めているのです。」

 オバマがこのような傲慢な主張をしたという事実だけとっても、中国の発展に対する米国の不安が感じ取られると主張する評論家たちもいた。

 「中国の台頭に対する米国の対応の裏には、米国には世界を主導してきた米国の力を失うのではという不安がある。具体的には、国際体制の秩序を決定できる唯一の超大国であるという権力が失われるのでは、という不安だ。」(p 232)。ジョー・バイデン大統領はこの恐怖を理解した上で、こう語っている。「私の在任期間にはそんなことは起こさせません。この先、米国は成長し、拡大し続けるのですから。」(p 235)。

 『米国と、中国の脅威』という著書において精査されているのは、中国の脅威というものに妥当性があるのかという点であり、米国は中国の勢力が拡大していることを否定できるかどうかという点だ。この著書は3章に分かれていて、最後に結論の章が設けられている。第1章で、ウリオ氏は米国と中国に関する神話について反駁している。第2章では、これまでの歴史を振り返りながら、米中間のイデオロギーの違いについて詳述している。第3章は、「政策と権力の分割」と題し、米中間の相違について歴史的観点から論じている。そして結論として、以下のような問いを投げかけている。「米国が力を取り戻したとしたなら、その米国はどのような姿になっているだろうか?」と。

 ウリオ氏は、米国資本主義の根本である「自由市場という神話」を解きほぐすことから議論を始めている。スイス人である彼は、アダム・スミスの言を引いている。アダム・スミスが推進していたのは、「生産活動により生み出されたものではない賃貸金(スミスの時代においては、それは土地の賃貸金のことだった)をもとにした経済では回らない市場であった」(p 44)。しかしウリオ氏によると、現在の市場は 一握りの富裕層に富が集中する市場になっている」とのことだ (p 45) 。

 次に、ウリオ氏は民主主義の神話も解体している。ウリオ氏の主張によると、資本主義諸国における主要な課題は、経済と政府機関による干渉にある、とのことだ(p 48)。もちろんお金の影響による問題もある(p 49)。ウリオ氏はこう記している。「西側諸国は香港の抗議運動のことを“中国政府による独裁的な干渉に対して民主主義を熱望的に求める動き”と決めつけている。しかしこの抗議運動の本質はきっと別のところにある」と(p 53)。「本質」とは何だろう? ウリオ氏ははっきりと記していないが、それは民主主義が不足していることではなく、「香港の人々が感じている不平等感」にあるという書き方をしている。

 ウリオ氏が後に明らかにしたのは、中国は独裁国家ではない、という事実だ(p 86-92)。さらに、中国政府は国民の要求に基づいて運営されており、国民から広く支持されているとも書いている (p 91) 。

 ウリオ氏は、西側メディアの民主主義の報じ方を一笑に付している(p 57)。ウリオ氏の主張によれば、米国は民主主義国家ではなく、金権国家だとのことだ(p 341)。一方、蔡伟麟(ウェイ・リン・チュア)氏はこう書いている。「中国の政治体制の強さの源は、西側諸国とはちがって、企業の利益に妥協する必要がないからだ」と。(1)。

 ウリオ氏はこう記している。「20世紀の初めから、米国は単独で起こした偉大な(great)戦争で一度も勝利したことがない」と(p 61)。この主張に対して、二つ言いたいことがある。一つ目、戦争に「great」な戦争などない。ウリオ氏が言いたいのは、きっと「大きな戦争」という意味だろう。20世紀、大きな戦争は2度だけ起こった。第1次世界大戦(「大戦争」と呼ぶ人も多い)と、第2次世界大戦だ。これらの大戦には多くの国々が参戦したので、「米国自身の戦争」とは呼べない。米国が独自戦争で勝ったのは数回だ。(例えば、パナマ侵攻や、グレナダ侵攻)。しかし、これらの戦争は、比較的小規模の敵を相手にしたものであり、米国による「弱いものいじめ」のような戦争だった。弱いものいじめをする人は、道徳的な考え方が欠落している。米国が道徳的に問題のある国であるという事実は、米国が植民地主義を奉じるヨーロッパの移民たちが建国した国で、深い人種差別主義に基づく歴史をもっていることからも明らかだ。米国は、タートル・アイランド(訳注:ネイティブ・アメリカンによる北アメリカ大陸の呼称)の原住民たちとの戦争と、原住民との間の協定破りを繰り返して建国された国なのだから(p 207-209)。その後、アフリカの人々を強制的に移動させ、奴隷労働力に充ててきたという歴史もある(p 79-83)。そしてウリオ氏の記述に対して指摘しておきたい2つ目は、ウリオ氏は明言していないし、歴史から忘れ去られることも多い事実でもあるが、ネイティブ・アメリカンの人々も米国では奴隷にされていたという事実だ。(2)。

 米国民が優れていて、無敵であるという神話も、この『米国と、中国の脅威』で打ち砕かれている。米国は常に戦争中の国だ。1776年から2015年までの239年の歴史の中で、229年間(93%)は戦争状態だった(p 66)。その229年という数字に、2016年から2022年までの年数も足さなければならない。ウリオ氏の主張によれば、米国が軍事的に優位であると、特に中国に対してそう考えることは危険だ、とのことだ。「敵国がますます軍事力を増進している中、今の米国の軍事力を過大評価し続ければ、破壊的な状況を招くだろう」 (p 74) 。
 
 中国が起こした最後の戦争は、恥ずべき戦争であり、中途半端に終わってしまったが、1979年にベトナムに侵攻した中越戦争だ。

 もうひとつ粉砕された中国に関する神話は、「中国は政府が主導する資本主義国家である」という主張だ。ウリオ氏の説明によると、他にも理由はあるが、「中国は市場社会主義経済に基づく国家だ」という。中国では、土地は集団資産であり、中国の反自由主義観念の基盤は、人民を第一に考える点にあり、銀行は国家の統制下にある (p 94-95) 。

 農業と工業における中国の飛躍的な発展をきちんと見る人であれば、「中国は異国の技術を猿マネしているだけだ」という神話はただの戯言だということが分かるはずだ。ロバート・テンプル(Robert Temple:米国の作家)氏は中国人が初めて発明したものは多数存在することを、ヨセフ・ニードハム(Joseph Needham)教授の研究に基づいた『中国の智。科学と発見と発明の3000年の歴史(The Genius of China: 3000 Years of Science, Discovery and Invention:1998)』という著書で記している。今日の中国で見られている大改革は、これまでの歴史で培われた創造力のたまものなのだ。

 しかし、中国が技術においても、改革においても世界の先頭を走ることに、多くの西側諸国の人々は悔しい思いを抱いている。その顕著な例が、コミュニケーション産業のトップを走る華為(Huawei)が主導している5Gや6Gに対する妨害に現れている。

 中国がもつこの創造性に対して、米国の支配者層は羨望と狼狽の気持ちを持ち始めた。中国が優れていることを示す多くの例の中のひとつに、現在の最高水準の速度を誇る鉄道網がある。その中には、磁気浮上式鉄道最先端のAIやロボットを使った技術、量子コンピューター技術の新開発などがある。中国の発表によると、CEPC(円形電子・陽電子衝突型加速器)の建築を計画しており、その大きさはスイスのCERN(欧州原子核研究機構)の大型ハドロン衝突型加速器の5倍の大きさだという。中国は核融合反応とその技術を使った「人工太陽」の研究を継続している。EAST(全超伝導トカマク型核融合エネルギー実験装置、人工太陽のこと)計画において、華氏1億8500万度の核融合反応を17分以上持続させたとのことだ。宇宙においては、月の裏側への月面車の軟着陸を成功させ、火星においては、一度目の挑戦で、ロケットを火星の軌道に乗せ、着陸し、探査させることができた世界最初の国になった。米国は国際宇宙ステーションに中国を参画させていないので、中国は「天宮」宇宙ステーションを軌道に乗せ、他国にも参入を呼びかけている。

 成長しつつある中国の中流階級が、西側の政治体制を求めようとするだろうか?中国の人々が西側の政治体制の方が優れていると考えて、その方向に向かうのでは?と期待する向きもあるが、その期待の裏側に、西側の人々の奢りがあることは間違いないだろう。中国の国民が高水準の教育を受けていることをもっと信頼すべきだ。中国がこんなに短期間でこんなにも発展し、厳しい貧困を克服し、月に原子力を電源とする研究所を建設しようとしている一方で、 西側諸国の多くの地域では、テントのような家屋や、空腹や、失業や、上がらない給料や、薬物依存などに人々が苦しんでいる。こんな状況なのに、中国国民が、多くの悲惨な状況を生み出している西側の政治体制の方を選ぶだろうか?

 ウリオ氏がさらに反駁しているのは、中国は帝国主義国家になったという考え方についてだ。習国家主席は何度も覇権主義を卑下している。ウリオ氏が明らかにしている通り、西側は自分の姿を他国に投影して見ているだけのようだ (p 114) 。

 米国のイデオロギーが基盤に置いているのは、選民思想であり、自国が例外として許されることであり、「明白な運命(訳注:19世紀に米国が領土拡大を正当化する際に使われた概念)」であり、自国は唯一無二の国であり、自由主義世界のリーダーであるという自負だ(p 120-131)。リーダーとして、米国には物事の是非を決める権利や、自国の都合で他国に介入できる権利を有している。ウリオ氏はこう記している。「このような米国の性癖は、常に、しかも執拗に残っており、可能であれば、いつでも、どこにでも、どんな手段を使っても、他国に介入し、新世界秩序に向けた良い知らせを撒き散らそうとしている」(p 131)

 モンロー主義(訳注:19世紀に米国が欧州諸国に対して提唱した、互いに不干渉であろうという立場)が世界規模で拡がっている。そのため米国は約束を破り、ロシアと国境を接している、旧ソ連内の共和国であったウクライナに軍を送っている。 そこはロシアが超えてはいけない「レッドライン」だとしてきた線だ。米国にはNATO同盟国であるドイツに、ロシアから天然ガスを輸入しないよう要求していることになんの恥じらいも感じていない。 「このような状況も、米国の計画は、世界のリーダーになり、同盟国の利益が何なのかを勝手に決めてしまおうとしているという一例だ」(p 145) 。

 ただし、米国にとっての主たる敵は中国だ (p 150) 。

 ウリオ氏が比較の対象にしているのは、ずっと変わらず同じイデオロギーを抱えている米国の世界観と、世界は変わり続けるものであるという捉え方をする中国の世界観だ。だからこそ中国は、各国との協調を求める世界の潮流に呼応しようとし続けているのだ。1949年から続けられているこの中国の各国との協調を希求する原動力になったのは、中国の状況を加味した中国版マルクス・レーニン主義だ。さらに孔子の教えも現在に合う形に鋳直され、支配者層は、徳を持つことや、人民を大切に扱うことを矜恃すべきことだと捉えている(p 171, 187, 203)。ウリオ氏の記載によると、快適な生活を過ごせている限りは、中国国民は中国共産党とともにあることを結局は選択するだろう、ということだ。(p186)

 ウリオ氏は米国は衰退に向かっていると捉えているが、その理由は、米国政府が国家や国民の福祉よりも資本家たちを優先しているからだとしている (p 243)。軍産複合体のための国家支出は膨大で(p 244)、他の社会的分野に回されるべき支出が抑え込まれている (p 247)。このような状況こそ、中国との比較における最も大きな差異だ。

 核武装もしており、手強い中国を軍国主義国家であると捉えることは、まともな専門家にとっては問題外であることは間違いない。従って反中プロパガンダは、選び抜かれた限られた論点に絞られている。米国がその矛先に特に選んでいる対象が、チベット新疆香港だ。これらの地域に関する西側のプロパガンダ、偽情報、煽りにより、西側にとって都合の良い情報が拡散されている。北米大陸では、先住民族を虐殺し、財産を奪うことで、支配の基盤を確立し、ハワイでは、ハワイの先住民族の財産を奪い、グアムやサイパンは、米国が(スペインに)戦争を吹っ掛けた結果、委託統治領にした。そんな歴史からすれば、米国が他国を批判することなど、穏健な見方からしてもとんでもないことだと言える。

 習国家主席の統治下で、「チャイニーズ・ドリーム」という目標が達成されつつある。「チャイニーズ・ドリーム」達成のためのひとつの課題に経済の正常化がある。経済成長という点に関しては、中国は非常に成功しているのだが、『米国と、中国の脅威』が詳述している通り、都市部と地方との格差や、地域による格差の是正や、富裕層と貧困層の間の格差の是正はまだ解決途中の課題だ。(中国のジニ係数(所得格差を表す数値)の値は高い)。 ウリオ氏はこうまとめている。「なかなか手強い格差は残ってはいるが、最終的には、中国が全ての社会階層の生活を向上させ、それに伴って満足のいく、社会の団結と、安定と、統一と、調和の水準を達成するだろう。」(p 287)

 中国にとっても、その他の国々にとっても、残っている課題のひとつは、世界貿易において公平な条件を確立して、現状のドルによる支配を打破することだ。ウリオ氏は、中国や他の国々が、この状況を打破しつつある状況を記している。中国は各国といくつかの経済協定を結んでいるが、その中には上海協力機構  (SCO)、BRICS、そして2022年1月1日に発効した「地域的な包括的経済連携(RCEP)」がある。このRCEPは、アジア太平洋諸国間の「自由」貿易の同意協定であり、加盟国は、オーストラリア、ブルネイ、カンボジア、中国、インドネシア、日本、韓国、ラオス、フィリピン、シンガポール、ミャンマー、マレーシア、タイ、ベトナムだ。このRECPが、米ドルの覇権を脅かす存在になるのではという指摘を行っている人々もいる。


 この著書の終盤近くで、中国の政策の中枢である一帯一路構想(BRI)が、議論のまな板に載せられている。一帯一路構想は、壮大で、素晴らしい構想だ。ユーラシア大陸の陸路と、アフリカに繋がる海路を結ぶこの構想により、世界が一帯となる。これは拡大し続ける計画であり、経済発展を活性化し、各国の成長可能性を参加国が共有でき、 他の国々の利益を享受し合える。こんな大規模な計画に取り残されたいと思っている国などあるだろうか?米国が一帯一路構想に反対しているのは、中国主導の計画だからだ。 一帯一路構想が的を得ている点は、この計画が米軍による中国包囲網の大半を取り囲んでいるところだ。ウリオ氏はこう書いている。「一帯一路構想の何より一番重要な点は、これが地政学的に重要であるという点だ。一帯一路構想が完全に実現すれば、中国はかつて有していた世界的な権力を再度保持できることになる。そうなれば‘米国が作った‘米国の一極支配による世界は終焉するだろう」(p 337) 。

 バイデン政権も、バイデン以前の各政権も分かっていない事実は、他国を引きつけることができるのは軍事力ではなく、経済力であるという事実だ。 (p 349)。中国が希求しているのは、他国と両得になる 関係であり、他国の主権を尊重し、他国の内政には干渉しないという姿勢だ(p 351)。

 2022年1月10日、楽玉成(らく・ぎょくせい)中国外交部筆頭副部長は、人民大学主催の会議でこう語っている。

 「14億の中国国民の皆さんがいい生活が送れるようにし、もっと良い暮らしがしたいという皆さんの熱い願いを満足させること。これが中国共産党の目標です。知っておかないといけない事実ですが、今でも10億人の国民が一度も飛行機に乗ったことがありませんし、2億以上の家庭にはトイレがありません。国民の大学の学位以上の取得率は、米国の25%に対して、たったの4%です。このような現状こそ、私たちが奮闘して取り組むべき重要な課題なのです。GDPの値が素晴らしいことよりも、私たちが価値を置くべきなのは、イデオロギーであり、統治能力であり、 「追いつき追い越せ」のスローガンのもと世界への貢献度の向上であり、  もっと前進しようという奮闘であり、人々の期待や、時代の流れに寄り添うことなのです。    

  このような態度のどこに脅威が感じられるというのだろう?『米国と、中国の脅威』は、表からも、裏側からも、米中間の違いを明らかにしている。この著書を読めば、米帝国が中国の強力な前進に不安を抱いていることを感じ取ることができるだろう。さらに米国が中国の台頭を受け入れようとしていないことも分かるだろう。ほとんどの人々にはそのような現状が既成事実として映っているのだ。米国は、中国の前進にケチをつけることも、中国と協調することもどちらも可能だ。ただしどの道、中国は発展し続けるのだ。

*

Kim Petersen is a former co-editor of the Dissident Voice newsletter. He can be emailed at: kimohp at gmail.com. Twitter: @kimpetersen. He is a regular contributor to Global Research.

 

Notes

 

1.  Wei Ling Chua, author of Democracy: What the West Can Learn from China (review: location 1692.

 

2.  See Andrés Reséndez, The Other Slavery: The Uncovered Story of Indian Enslavement in America (2016).

 

 

ウイグル問題。米国はどの面下げて、イスラム教徒の人権について中国に説教を垂れることができるというのか!


<記事原文 寺島先生推薦>
The Uyghur Issue: How Can the U.S. Dare Lecturing China About the Rights of the Muslims?

グローバル・リサーチ
2020年11月5日

アンドレ・ヴルチェク
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2020年11月25日



 この記事は故アンドレ・ヴルチェクによるもので、初出は2019年である。


 2019年、私は「ウイグル問題」についての長い分析記事を書いた。この分析は間もなく書籍として出版されるだろう。

 以前からずっと、私が世界に向けて警告してきたのは、西側諸国、特に米国が、新疆地方や新疆地方の外にいるウイグル族の人たちを過激化させることに手を貸していたことだ。

 それだけではない。私ははっきりとウイグル族の過激派組織が、インドネシアなどの国を経由してトルコに移動したことを突き止めた。その後彼らは、激しい戦闘が行われているシリアのイドリブなどの地域に送り込まれているのだ。私は以前イドリブで働いていた。その時は、シリアの司令官たちと共に働いていた。そこで私は、シリア国内で難民になってしまった人たちと長時間、話をした。彼らはウイグル族過激派による大量虐殺行為の被害者たちだった。

 ウイグル族の大多数はイスラム教徒だ。ウイグル族は独自の長い歴史をもつ固有の文化を持っている。そして言うまでも無いことだが、ほとんどのウイグル族の人たちは素晴らしい人たちだ。中国北西部が彼らの居住地区だ。

 「ウイグル問題」は、新疆ウルムチが一帯一路構想において重要な位置に置かれているからこそ起こっている。一帯一路構想は、将来に非常に明るい希望がもてる国際的な構想であり、世界のすべての大陸の何十億もの人々を結びつけることを想定している。一帯一路構想は生活基盤の整備だけはなく文化的な取り組みでもある。この構想のおかげで、何億もの人々が貧困や未開発な状態から抜け出せる日も近くなるだろう。


 米国政府は、中国が人類にとってずっと明るい未来を築く先頭に立つことを恐れているのだ。その理由は、中国が成功すれば、西側の帝国主義や新植民地主義が終焉を迎える可能性が出てくるからだ。中国は、いまだに苦しんでいる何十もの国々が、真の自由や独立を獲得するよう導こうとしているのだ。

 それ故、米国政府は介入することを決めたのだ。その目的は今の世界の現状と米国による世界支配を守るためだ。

 第1段階: あらゆる手段を駆使して中国に対して敵意を抱かせ、挑発し、悪く言うこと。具体的には、香港や台湾や南シナ海やこれまで述べてきた「ウイグル問題」についてだ。

 第2段階: 憲法上認められた少数民族であるウイグル族を「反乱軍」に、もっとも正確にはテロリストに転向させる。

 NATO加盟国であるトルコが米国に助け船を出した。ウイグル族は家族とともに空路イスタンブールに輸送される。彼らは、トルコのパスポートを持っていた。そしてイスタンブールは中東のハブ空港だ。それからウイグル族の人たちがもっていたパスポートはイスタンブールで没収された。その後、多くのウイグル族は軍人として採用され、訓練を受け、戦争で疲弊している国シリアに送られた。より小規模な集団はインドネシアなどにとどまり、ジハード(聖戦士)の幹部と合流した。シリアのテロリスト集団がほぼ完全に敗北を喫する状況になってからは、アフガニスタンに移動したウイグル族の人たちもいた。アフガニスタンも、私がかつて働き、取材した国だ。

 言うまでもないことだが、アフガニスタンは、距離は短いが中国と国境を接している重要な国だ。

 なぜこんな複雑な作戦をしないといけないのだろうか?答えは簡単だ。NATO・米国・西側諸国が望んでいるのは、頑強で十分に訓練を積んだウイグル族の聖戦士たちが最終的にもともとの居住地である新疆に戻ることなのだ。そして、その新疆で、聖戦士たちが「独立」を求めて戦闘を始めることにより、一帯一路構想を妨害することなのだ。

US Trade War with China: Desperate Move to Save Western Empire


  こうして中国は痛手を受ける。そして最も力強い世界構想である(一帯一路構想)が阻止されることになるかもしれない。

 当然ながら中国政府は警告を発している。明らかにわかっていることは、西側諸国は巧妙な罠を仕掛けているということだ。

 その1。何もしなければ、中国は自国領土内で、非常に危険なテロリストによる危機に直面せざるをえなくなる。(ソ連がアフガニスタンに巻き込まれて、西側諸国により訓練され、資金を与えられ、支えられていたムジャーヒディーンにより致命的な被害をうけたことを覚えておられるだろうか?) 西側諸国にはイスラム教徒を使って策を練ってきた長い歴史がある。

 その2。中国が自国を守ろうと動けば、西側メディアや政治家たちから攻撃を受けるだろう。まさにこの状況が、いま起こっている状況だ。

 すべては周到に準備されていたのだ。

 2019年9月12日、サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙はこんな記事を載せた。

 「米国上院議会でウイグル人権政策法が可決され、新疆の収容所を理由に、中国当局に対する制裁措置が求められた。
 その法律はさらに、新疆にある米国企業が、商品やサービスを米国内へ輸出することをトランプ政権に禁止させることを求めている。そこには100万人以上のウイグル族の人たちが居住しているのに、だ。

 中国政府はこの動きを「中国の内政問題に対する大きな干渉である」と捉えている」

 新疆事案に介入するためのと「人権問題」が、偽善と脅しで他国を揺るがそうという一例であることは、言うまでもないことだ。

 忘れないでおこう。米国はイスラム教徒たちに対して酷い扱いをしてきたことを。イスラム教徒に米国に入国することさえ認めなかった。たまたま或る国々に住んでいるという理由だけで。米国は意図的にパキスタンやアフガニスタンなどに住んでいるイスラム教徒に爆撃を加えた。市民の命を奪うことなどお構いなく。米国はイスラム教徒を虐げてきた。それは、米国内だけではなく、イスラム教徒の本国においてもだ。

 率直に言わせてもらえば、中国国内でウイグル族に反乱を起こさせることにより、米国政府はウイグル族自身にも害を与えることになっているのだ。さらには中国北西部に住む全ての人たちにも実害を与えている。これは間違いというだけでは済まされない。米国は人類に対する罪を犯しているのだ。


 中国は多民族国家であり多文化国家でもある。イスラム文化は中華人民共和国のアイデンティティの一部だ。そのことに疑念を持つ人には、西安に行ってもらいたい。西安は中国の3つの古都のうちの一つだ。

 西安はかつてのシルクロード(古代の一帯一路ともいえるだろう)の始点である。今日まで、西安は、自らの市が持つイスラム文化の素晴らしい街並みに誇りを持ち続けている。さらに素晴らしいイスラム文化の料理や音楽に対しても、だ。毎年、何千万人もの中国人観光客が西安を訪れ、イスラム文化の遺産を理解し、文化を楽しんでいる。西安は愛され慈しまれている。それは、西安市が持つ活気溢れるイスラム教徒としての自我意識に負うところが大きい。

 バカバカしくて話にもならないのは、中国が「反イスラム」であるという主張だ。中国も(ロシアも)イスラム教に対しては西側諸国よりもずっと寛容だ。歴史的に見ても、今の時代においても、だ。

 同様にバカげているのは中国が新疆に「強制収容所」を建設中だという主張だ。

 中国の主張はハッキリしている。中国は、西側諸国が「強制収容所」だとしている施設は「再教育センター」であると言っている。そのセンターでは「受講者」が中国語や労働技術を学び、「テロリストや宗教的な過激派組織」の被害者になることをくい止めている。インドネシアのイスラム教徒集団の指導者たちが、これらの新疆「収容所」についての情報を持っていた。彼らが私の同僚に語ったところによると、これらの施設で時間を過ごした人々は、収容所ではなく自宅で寝泊まりできているそうだ。

 グアンタナモ湾収容所とは全く訳が違う。率直な感想を言わせてもらえば。

 「世界の裁判官」を自称する米国には、何百もの厳重警備の刑務所が点在する。よく知られている事実だが、無実の人々を牢獄に入れることは、米国では大きなビジネスになるのだ。(民営化された刑務所もある)。そして、そんなことはすでに何十年もの間行われているのだ。何百万人もの人々が、無実の罪で拘留されている。(人口一人あたりで )世界一囚人が多い国の一つである米国が、どの面下げて他国に正義について訓示を垂れることができるというのか?こんなことは、謎としか言えない。

 これらの作戦の真の目的は何だろうか?

 答えは簡単に見つかる。世界に対する影響力を他国と共有したがっていない米国の頑なさだ。米国は自国よりずっと人道的な国(例えば中国)とそのような影響力を共有したくないのだ。中国は競争を望んでいない。中国の考え方の基盤は壮大な意思と善意に基づいているからだ。

 米国が破滅的な外交政策を取れば取るほど、米国は他国を「殺人者」呼ばわりすることが多くなる

 米国の手筈は単純なものだ。まず米国はある地域で激しい紛争を起こさせる。被害を受けた国がその紛争を収めようと「火消し」に取り掛かると、その国が「人権侵害だ」と糾弾され、制裁措置を受ける。

 こんなことはすべてやめないといけない。近いうちのある時点で。米国政府のこの政策のせいで何百万人もの人々が苦しみを味わされている。



この記事の初出はチャイナ・デイリー紙に掲載された短縮版。

Andre Vltchek is a philosopher, novelist, filmmaker and investigative journalist. He has covered wars and conflicts in dozens of countries. Five of his latest books are “China Belt and Road Initiative: Connecting Countries, Saving Millions of Lives”, “China with John B. Cobb, Jr., Revolutionary Optimism, Western Nihilism, a revolutionary novel “Aurora” and a bestselling work of political non-fiction: “Exposing Lies Of The Empire”. View his other books here. Watch Rwanda Gambit, his groundbreaking documentary about Rwanda and DRCongo and his film/dialogue with Noam Chomsky “On Western Terrorism”. Vltchek presently resides in East Asia and the Middle East, and continues to work around the world. He can be reached through his website and his Twitter. His Patreon He is a frequent contributor to Global Research

太平洋に新しい米軍基地!?激しさを増す米中冷戦


<記事原文 寺島先生推薦>
New American military base in Pacific would show how US-China cold war is heating up fast

RT 論説面

 英国の作家であり、東アジアを中心とした政治・国際関係のアナリストであるトム・フォウディによる記事。

2020年10月21日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2020年11月20日 


 パラオという小さな国は、その領土に軍事基地を建設するようにアメリカに促している。この要請は、太平洋が戦略的に重要になっており、各国がワシントンまたは北京のいずれと連携するかの決断が迫られている現象の一例を示している。

 西太平洋の群島であるパラオという国のことを聞いたことがある人は、西側にはほとんどいないであろう。パラオは、パプアニューギニアやフィリピンの近くに位置し、人口はわずか17,000人で、平均的な小さな町よりも少ない。

 ただし、その大きさによってその重要性を見失わないことだ。たしかにこれらの島々は、現代政治の世界に無関係に見えるかもしれない。しかし、パラオは実際には、米国と中国の冷戦という、世界で新たに発生している地政学的闘争の1つのまさに中心に位置している。

 ワシントンと北京の間に緊張が高まる中、パラオは戦略上、この上なく重要な場所に位置している。太平洋全体はすでに両国間の軍事チェスゲームの舞台となっていて、米国は中国の周辺を取り囲み、北京は自国の裏庭で米軍との軍事的な対等を目指している。

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 しかし、パラオはすでに台湾の忠実な外交パートナーという立場を選んでいる。パラオ以外では、この地域で台湾を支持する国は縮小している。そして今、パラオはその領土内に軍事基地を作るようワシントンに促している。

 第二次世界大戦後、太平洋の広い範囲はアメリカ支配の領域であったことは議論の余地がない。アメリカのこの地域への参入は19世紀に始まり、ワシントンは何年にもわたって、ハワイ、グアム、アメリカ領サモア、フィリピン、北マリアナ諸島、マーシャル諸島など、この地域の多くの部分を完全に併合してきた。

 第二次世界大戦の勃発や日本との対立で、アメリカがとった「アイランド・ホッピング」戦略は、この地域に広大な戦略的軍事の足跡を残した。そして、世界的な大国としてその支配を強化した。

 しかし、力のバランスは変化してきている。世界的な大国としての中国の台頭と海軍の近代化に加えて、南シナ海での影響力の高まりにより、北京は太平洋でより大きな影響力を発揮してきている。しかし、その目標は、米国との覇権をめぐって戦うことではなく、アメリカが、中国を取り囲もうという狙いを明らかに見せている中、アメリカの動きを掴むことで安全確保しようとしているだけだ。

 アメリカは北京を「脅威」と呼んでいるが、実際には、一連のアメリカ海軍基地やその同盟国でとり囲まれているのは、中国である。ワシントンは、「自由で開かれたインド太平洋」戦略の一環として、継続してこの地域内での海軍力の強化を目指してきた。

 では、パラオはどういう立ち位置であろうか。太平洋の島々の一つとして、それは最終的にチェス盤の一部である。しかし、パラオはすでにその立場を決めている。台湾に残っている数少ない同盟国の1つとしての立場である。パラオは、中国との正式な外交関係は持っていない。

 これは、アメリカとの同盟のために、太平洋の多くの島国が伝統的にとってきた措置である。しかし、中国の経済力が成長するにつれてこの措置は近年変化している。北京は、台北が匹敵することができない投資を約束することによって、親台湾の太平洋諸国に同盟関係を変えさせることに、ますます成功している。昨年、キリバス共和国とhttps://www.theguardian.com/world/2019/dec/08/when-china-came-calling-inside-the-solomon-islands-switchは「一つの中国」政策を受け入れ、北京を選択した。

 米国とその同盟国は、パラオが同じことを行うのではないかと恐れている。特にパラオの規模では、経済を発展させる独自の資源をほとんど持っていないからだ。しかし、パラオは台北に忠実でありつづけ、香港や新疆ウイグル自治区等のような問題について、国連で反中国決議に賛成票を投じてきた。

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 現在、パラオは米軍を招聘することでその重要性を定着させることを目指しており、これにより自国の影響力を高め、他国からの支援が強化されるであろう。アメリカがその地域の軍事化に集中的に焦点を合わせているときに、そのような申し出を断る論理的な理由はない。

 もちろん、これは中国がゲームに負けたという意味ではない。トンガ、サモア、バヌアツなどの他の太平洋の島々は、すべて北京の一帯一路の一部であり、中国がその地域に基地を建設することを検討しているという推測がずっとある。

 パラオが中国に反対しているからといって、太平洋の他の島国がそうするというのではない。これらの島国は、70年間のアメリカやオーストラリアの支配に対抗するのに、北京を活用して喜んでいるようである。

 本質的に、太平洋にまたがる巨大ゲームは過熱しており、これらの小さな国々の忠誠を求めて、両大国は小競り合いを続けるだろう。この中で、パラオは好機を見出し、他の国々もきっとあとに続くであろう。


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