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EUよ、我々には問題が生じた。共産主義が崩壊して30年、東欧は自由民主主義に対する信頼を失いつつある。


<記事原文 寺島先生推薦>Brussels, we got a problem! 30 years after collapse of communism, Eastern Europe is losing its faith in Liberal Democracy


RT 論説面 2020年6月27日

ロバート・ブリッジ

Robert Bridge is an American writer and journalist. He is the author of the book, 'Midnight in the American Empire,' How Corporations and Their Political Servants are Destroying the American Dream. @Robert_Bridge

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2020年8月10日

 

 新しい政治体制を始めてから30年、中欧と東欧の国々は今支配者層やメディアや自由民主主義に疑いの声を上げている。これらの国々は以前のようなより権威的な政治体制に戻るのだろうか?

 1991年のソ連崩壊を受けて、以前のワルシャワ条約機構加盟国は自由民主主義という星にむかって歩みを進めた。それは、共産主義であれば手に入らない自由や解放が得られると期待したからだ。そして、間違いなく、多くの人は新しい政治体制からたしかな利益を得た。しかし、二つの全く違う政治体制を体験した中欧と東欧の国々の大多数の国民から見ると、おそらく自由民主主義体制の負の遺産の方が目立つようである。

 グローバル・セックという調査会社が行った世論調査の結果、CEE(中・東欧)10カ国(バルト三国、オーストリア、ポーランド、チェコ共和国、ハンガリー、スロバキア、ブルガリア、ルーマニア)の市民が、それぞれの国の自由民主主義体制をどう感じているかが明らかになった。その結果はかんばしいものではなかった。

 自由民主主義とそれに対する不満
 まずは民主主義体制に対する市民の声を見てみよう。大多数の市民は自由民主主義体制の完全な普通選挙や複数政党制については、肯定的な意見を持っている。一方、それぞれの国で民主主義が機能しているかについて満足しているのはたった40%だった。オーストリア市民(今回の調査の中で唯一元共産主義国家ではない国)が一番高い86%という満足度を示したが、他の国では、残りの国々の結果を見ると、ブルガリアはたったの18%の満足度だった。残り8カ国もすべて5割を切っていた。

 特筆すべきは、この調査が明らかにしていることが、回答者が自由民主主義体制をどう見ているかと、回答者の生活における幸福感とが強く相関した結果がでているということだ。平均すると自由民主主義体制を支持すると答えた回答者のうち83%が自分の生活に満足している、という結果が出ている。この結果からいえることは、資本主義にどっぷりつかり、自由民主主義体制のおかげで利益を得る材料を得ることが出来た人にとっては、彼らが享受している自由民主主義体制がもつ欠点に目をつぶったり、欠点が目に入らないかもしれないということだ。

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 しかし、政党に対する信頼についての質問の結果は、そんなによい結果ではなかった。平均して72%以上の人が自国の政体を信頼しておらず、CEE諸国のほとんどの国々で、伝統的な政党に投票しようという熱意は下がっていることが分かった。国民の態度がそうなっている理由は、それぞれの国によって様々であり、その理由は、ある国においては、EUとの長年の不和が影響しているのかもしれない。

 例を挙げると、ポーランドの「法と正義」党は最近欧州司法裁判所から怒りを買った。それはポーランド政府が、政府に反対する判事を懲戒処分に出来るという「尋常でない権力」を最高裁に与えたことに対してだった。EUの言い分は、このような動きはEUの民主主義路線とは相容れない、とのことだった。ポーランド政府の言い分は、平たく言えば「放っておいてくれ!」だった。

 EUが見せたもうひとつの力技は、欧州議会がハンガリーに制裁を加えたことだ。ハンガリーがNGOやメディアを厳罰に処したことが理由だと報じられている。国家主義政党である右派フィデス党の党首であるハンガリー政府のオルバーン・ヴィクトル首相は、EUのこの措置に対して「せこい報復だ」と吐き捨てた。彼の言い分は、不法移民がハンガリーを経由して西欧に抜けるのを遮ろうとしたことに対する制裁だ、とのことだった。

 この種の小競り合いが頻繁におこることで、親EU派陣営とEU懐疑派陣営の間の摩擦を増やすことになっている。そして、EU諸国はEUの民主主義推進政策に同意することに疑問を持たざるを得なくなっている。というのも、EUのやり方が日に日に民主的でなくなっているように見えるからだ。実際のところ、EUの持つこのような否定的な一面こそが、英国民がEUを離脱することにつながったといえる。



移民危機がさらに不信を煽っている
 強調すべきことは、不法移民がCEE諸国にとっての主要な関心事になっているということだ。そして、今回世論調査が行われた国々の中で、オーストリアだけが最近の移民危機の影響を直接受けているのだが、その結果によると、移民受け入れを拒否し続けている国々よりも、オーストリアの方が移民に対する懸念は少なかった。この世論調査をまとめた執筆者たちは、反移民政策をとっているCEE諸国こそが自国を「より閉鎖的で不寛容な国にしている」と結論づけている。

 皮肉にもこんな結論を出すということが、今多くの東欧諸国で行き渡っている政治に対する冷めた態度の説明になってしまうのだ。世論調査をまとめた執筆者たちが見ようとしていないのは、移民政策は各国で自由に決定すべきかどうかという根本的な問題だ。そんなこともなしに、「不寛容な国」だと決めつけているところに問題がある。結局のところ、すべてのCEE諸国がオーストリアのように移民の流入に対応できるような受け入れ体制をもっているわけではない、ということだ。

 もうひとつ考えるべきなのは、今見るべきなのはスウェーデンにおける移民政策だけだ、ということだ。例を挙げると、スウェーデンには、いわゆる「立ち入り禁止区域」となっている移民者の居住地が散在する。規制なしに移民を受け入れるとこのような高い代償をはらうことになってしまうのだ。このような何百万人もの移民者を自由にうけいれた失敗例から学ばずに、結局は移民者を地域に同化させることがほとんどできないままになっているEUの失政が、自由民主主義体制に対する猜疑心をあおることになっているのだ。

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メディアによる操作
 世論調査で報道分野も激しく批判されていることは別に驚くようなことではない。世論調査が行われた国々の中で、ラトビアだけが、大手メディアを信頼していると答えた回答者が主流派だった。他国では、回答者たちは、国家や少数の支配者層がニュースや情報を裏で操作していることを指摘していた。総合的に考えると、メディアに対する信頼の欠如のため、多くの人々は、ニュースや情報を得るために「代替メディア」を探すことを強いられていることが分かった。現状を把握するため、いわゆる「陰謀論」に手を伸ばす人もいるようだ。

 この世論調査は新型コロナウイルス流行蔓延中に行われたため、調査の結果、もう一つの頭が痛くなる現状が明らかになったとも言える。それは、回答者の半数以上が「身の安全を守るという名の下に自由を犠牲にする」ことを肯定していることだ。 これはゆゆしき問題である。というのも、今も昔も、自由民主主義の肝心要は、自由や自己表現の尊重であるからだ。しかし今日、自分の身の安全を気にする人がとても多くなっていて、自由民主主義は自分の身の安全の妨げになる、と考える人が多くなっているようだ。

 西側諸国の政府が、中欧や東欧で広まっている雰囲気を懸念しているのには、もっともな理由がある。それは、西側の大多数の資本主義諸国も、自国でも同様の厳しい問題に苦しめられているからだ。英国がEUから離脱しようとしているのも、米国が人種間の対立を鎮圧しようとしているのも、西側諸国が手に負えない状況に陥っている現れなのかもしれない。

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 当然の事ながら、このような社会の雰囲気は「自由民主主義」とういう名の政治体制に傷をつける。そして西側諸国の中には、自国の問題を解決する際、今までよりも非民主的な政治手法を試さざるを得なくなる国々も出てくるかもしれない。考えて見てほしい。例えば、今米国で起こっている抗議活動のせいでいくつかの都市では警察を解体しようとしているところも実際出てきている。避けられないことだが、このような思いもつかないような実験は、きっと最終的には失敗する。そして、政府は状況を打破するために、おそらく軍や戒厳令を使うことになるだろう。無法地帯で苦しんでいる市民たち、(実際もう既に ワシントン州シアトル市ではそのようになっているのだが)、 人々は諸手を挙げてこんな強行的な解決方法を歓迎するだろう。市民の安全と平和を守る手段であるならばなんでもよくなるだろうから。

 今月(7月)、元ロシア大使のマイケル・マックフォール氏はワシントン・ポスト紙でこう書いた。「西側諸国が政治体制上の一番の敵国であると目している中国が、独裁的で政府主導の政治体制で発展を遂げ、いまや世界のトップに立とうとしているが、中国のやり方が、自由民主主義とは違う選択肢になっている」、と。多くの西側諸国が困難な課題に直面している中で、 中国のような政治体制に急激に変革しようという国々が出てくるように思われるのだ。もちろん、そのような変革が行われいような努力は払われるであろうが。

 結論として、自由民主主義は本当に市民の利益に奉仕するものであり、特権階級として知られる一部の人たちに奉仕するものではないという信念があるならCEE諸国の市民たちはきっと安全でいられる。しかし、この自由民主主義政治体制は、社会のピラミッドの頂上を跨いで座っている人たちだけにしか奉仕しないことが、ますますはっきりしてきている。例を挙げると、何百万人もの難民たちがヨーロッパ大陸に流入することで、利益を得るのは誰だろう?ブリュッセルのEU本部が、離れたところから直接手を下さない方法で、各国への支配力を強める政治体制で得をするのは誰だろう?ただのうわべだけの変革ではない本当の変革が、現在自由民主主義政治体制を管理している西側機構におこらない限り、この後の未来に起こることは世論調査の結果が変わることではない。大規模な抗議活動が街中で発生する、そんな未来だろう。

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