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ロシア連邦保安庁は、クロッカス・テロ攻撃の容疑者として米国を特定

<記事原文 寺島先生推薦>
The Russian Federal Security Service Identifies US as a Suspect in Crocus Attack
筆者:ポール・クレイグ・ロバーツ(Paul Craig Roberts)
出典:本人ブログ 2024年3月28日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月30日


以下は、私が昨日投稿した、ギルバート・ドクトローのインタビューの更新版だ。https://www.paulcraigroberts.org/2024/03/27/washington-crossed-a-fatal-red-line-with-the-crocus-attack/

ドクトローは慎重な専門家であり、状況の深刻さを大げさに語ったりはしない。クロッカスのテロ攻撃は、米国に対するプーチンの態度を変えるきっかけになった可能性がある。プーチンはずっと、米国からの挑発に対するロシアの反応において、状況を激化させないよう、慎重な態度を取り続けてきた。プーチンのやり方とは、西側が我にかえって、現実を受け入れるのを待つことだった。私がずっと強く言ってきたとおり、このようなやり方は間違っている。というのも、プーチンが挑発に耐え続ければ、挑発は激しさを増すことになるからだ。モスクワ郊外において、319人のロシア市民の死傷者を出したいま、その挑発は越えてはならない一線を越えてしまったようだ。連邦保安庁長官は、ロシアの報道機関に「米国が容疑者である」という情報を流すことを許可した。プーチンが全ての責任者には罰を与えると公言しているなか、私はドクトローが唱える、「今はキューバ危機に酷似している」という現状認識に同意する。

ありえることは、プーチンが現状を考え直し、クロッカスへのテロ攻撃を使って、政界や報道機関からの求めに応じてなにか手を打つ、ということだ。プーチンはその責任をウクライナに限定し、2年前に使うべきだった規模の武力を行使して、ウクライナを平定し紛争を終結させるための攻撃をおこなうことができる。

プーチンが再び自分に言い聞かせ、あるいはロシア国内の親西側派(まだ存在していればの話だが)により、「最終的には西側は我にかえる」となだめられ、再び行動を起こしそこなえば、西側からの挑発はさらに悪化するだろう。実際、もう一度クロッカスのテロ攻撃のような激震が走ることになれば、第三次世界大戦に繋がるヒューズは光り始めるだろう。

以下がドクトローによる記事だ。

昨日のロシア安全保障庁(FSB)アレクサンドル・ボルトニコフ長官の報道関係者に対する注目すべき声明

ギルバート・ドクトロー
2024年3月27日

https://gilbertdoctorow.com/2024/03/27/

事情をよくご存知ない方々のために、まず説明しよう。FSBというのは、ソ連のよく知られ、深く恐れられていたKGBの後継組織だ。しかし、こんにちのFSBは米国のFBIと比べた方が良いかもしれない。国内のあらゆる種類の犯罪やテロのようなロシア国民に対する危険を取扱っている組織だ。この組織やその長官がニュースで報じられることはほとんどない。

この点において、FSBは、国外においても国内においても、セルゲイ・ナルイシキン対外情報庁長官と比べると、あまり見えない存在である。この政治家は2000年以降5年間、ロシア下院国会院議長をつとめ、大統領府長官も3年務めた経歴をもつ。その二つの仕事をしていた際、ナルイシキンをテレビで見ることは頻繁だった

ボルトニコフはFSBでこの15年つとめてきたが、人前にでることはなかった。しかし、クロッカス・シティ・ホールへの目を見張るような攻撃のせいで、ボルトニコフは舞台の中央に駆り出され、昨日、ボルトニコフはロシアの国営テレビのジャーナリストのパベル・ザルビンとのインタビューをおこない、廊下を通って出て行く途中、他の記者たちからさらに質問を受けた。この即座の質疑応答が後にテレビのニュースで放送された。ボルトニコフが述べなければならなかったことは、尋常ではない内容であり、読者の皆さんも私も今すぐ防空壕を探すべきか否かに直接関わる内容だった。残念ながら、今日の主流報道機関の報道ではこの件をトップニュースとして伝えていない。例えば、フィナンシャル・タイムズ紙は習近平が米国企業界のCEOたちと面会し、関係改善をはかろうとした記事を特集している。興味深い記事だが、我々が第三次世界大戦の瀬戸際に立たされていることと比べれば重要ではない。

ボルトニコフはプーチンの側近中の側近である。 彼もプーチンもナリシキンもほぼ同年齢だ。 ボルトニコフは72歳で、数歳年上である。

特に印象的だったのは、彼の冷静さと慎重さ、慎重に言葉を選びながら、捜査の方向性を透明性をもって示し、「何があっても動じない」淡々とした態度だった。

記者たちは皆、テロ攻撃の背後に誰がいるのかという疑問を投げかけていた。ボルトニコフは記者たち、それと私たちにこう答えた。「イスラム過激派によるテロ行為の背後にいるのは、米、英、ウクライナです」と。

ボルトニコフは、予備的な調査結果では、虐殺の実行犯4人は車でウクライナとの国境に向かい、国境の向こう側にはその実行犯を待っている人々がいたことがわかった、と述べた。彼は非常に冷静に、外国勢力の関与は明らかにされつつあると述べ、今は純粋な感情から何も言わないが、発表する前に事実がしっかりと収集されるのを待つ、と説明した。

そうとはいえ、ボルトニコフがテロ行為の操り手である可能性が高い国として、米、英、ウクライナを挙げたことは、まったく報じる価値のある事実だった。ノルド・ストリーム・パイプライン爆破事件は、過去50年間で世界的に重要な民間インフラに対する最も重大な攻撃であったが、ロシア政府高官はどの国も直接には非難しなかった。仄めかしはあったが、昨日ボルトニコフから聞いたような直接的な非難はなかった。

いっぽう、ボルトニコフの報道関係者らとの雑談とはまったく別に、クロッカス・シティ・ホールでのテロ攻撃に関する多くの新情報が昨日、ロシア国営テレビのニュース分析番組『60分』に掲載された。特に、2月末日と3月初めの数日間、4人の犯人のうち2人がイスタンブールにいたことがわかった。うち一人がモスクワの空港への出発と到着した模様がビデオに収められた。彼らがどのホテルに宿泊したかは知らされ、イスタンブールで1人が撮影した自撮り写真などがスクリーンに映し出された。トルコで誰と会ったのかはまだ明らかになっていない。ただしどの時機だったのか、という点が非常に重要だ。というのも、ロシア暦の聖なる日である3月8日(国際女性デー)にテロ攻撃を実行するためにモスクワに戻ったという指摘があったからだ。もし彼らがその日にテロを行なっていたら、1週間後のロシア大統領選挙に壊滅的な影響を及ぼしていただろう。

しかし、テレビ番組『60分』によれば、3月8日のロシアの国家安全保障体制がテロ作戦を成功させるには厳しすぎると判断され、米国はこの作戦の中止を決定した、という。

なお、これはヴィクトリア・ヌーランドが国務省に辞表を提出した時期(3月5日)とほぼ同じである。この2つの事象に因果関係がある可能性は、米国の「反体制派」コミュニティーにいる私の仲間たちが注目するに値するものであることは間違いない。

いずれにせよ、ウラジーミル・ソロヴィョフのトークショー『イブニング』で後日語られた話によると、ウクライナ側がロシア大統領選の1週間後にテロ攻撃を決行したため、意義がほとんど失われたという内容だった。そしてそれは、米当局の反対を押し切ってのことだった、という。

時折、読者からなぜ私がウラジーミル・ソロヴィヨフのような人物のトークショーに注目するのかと質問されることがある。こうした懐疑的な人たちの目に入っていない事実は、ソロヴィヨフがた番組に招くのは、大衆を楽しませることができる無責任な学者やジャーナリストだけでなく、ロシアの権力中枢に近く、外交・内政の遂行に影響力を行使する非常にまじめな政治家たち、特に国家院の委員長やその他の重要人物も含まれている、という事実である。

独立国家共同体(旧ソ連)関係委員会の委員の一人から話を聞いたのは昨夜の番組でのことだった。ロシア国境地帯のベルゴロドで、近隣のハリコフ(ウクライナ)から市民へのテロ攻撃が後を絶たないことについて、彼はハリコフを壊滅させる時だ、と言った。ちなみに、ハリコフはキエフに次いでウクライナで2番目に人口の多い都市である。

概して、パネリストたちや司会のソロヴィヨフ自身の雰囲気は、今や決定的な変化を遂げている。つまり、ウクライナは敵国であり、一刻も早く消滅させたほうがいい、というものだ。昨夜は、キエフの大統領官邸と、首都にあるすべての軍事施設や政府中枢をミサイル攻撃で破壊する必要性が語られた。

過去2年間、私たちが繰り返し観察してきた状況は、プーチン大統領が、第三次世界大戦を引き起こしかねない行動に抵抗し、節度と自制の代弁者として振る舞う姿だった。しかし、ロシア連邦保安庁(FSB)長官がこの20年で最大のテロ攻撃の計画者として米国と英国を名指ししたことで、そのような状況は明らかに終わりを告げようとしている。

©Gilbert Doctorow, 2024
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フランスは「戦争の準備」をし、欧州の安全保障構造を脅かしている

<記事原文 寺島先生推薦>
France ‘Prepares for War’ and Threatens European Security Architecture
筆者:ルーカス・レイロズ(Lucas Leiroz)
出典:Strategic Culture Foundation  2024年3月22日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月30日


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マクロン大統領が「欧州の指導者」になろうとして失敗したことで、大陸を全面戦争に導く可能性がある、とルーカス・レイロズ氏は書いている。

フランスは軍事化とロシアとの緊張激化に向けた措置を講じ続けている。ウクライナ領土にフランス軍を派兵するか否かが議論される中、パリの高官たちは「戦争の準備」とされるものについて物議を醸す発言をしており、多くの専門家はフランスとロシアの関係は取り返しのつかない瀬戸際に近づいている、と考えている。このような状況は、明らかにヨーロッパ大陸と全世界に壊滅的な結果をもたらす可能性を生んでいる。

フランス軍のピエール・シル司令官は最近の声明で、フランス軍は戦闘準備が整っており、必要であればいつでも戦争に参加できる、と述べた。彼は今日のフランスが深刻な脅威にさらされていると考えている。この意味で、この国はパリに危険をもたらす国家に対して戦争をする準備をしなければならない、というのだ。

同時に、政府の公式発表はロシア連邦に対してますます攻撃的なものになり続けている。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、ウクライナ紛争への自国の介入を強化する計画を進めており、戦場へフランス軍が直接介入する仮説を排除するとの明言を避け続けている。実際には、フランスはロシアとの直接戦争に確実につながる計画を進めているだけであり、フランスがNATOに加盟している点を考慮すると、これは明らかに世界情勢が多大なる危険に直面していることを意味する。

さらに先日、ロシア諜報機関は、約2000人のフランス兵士が動員され、いつでもウクライナに派遣される準備が出来ているという情報を入手した。これらのフランス兵は、ロシア軍が陣地を強化すると西側諸国が懸念しているオデッサや北部国境などの重要地域に配備されている、と考えられている。フランス政府はロシアの報告書に記載された情報を否定しているが、「必要であれば」ウクライナへの派兵に公的に意欲を示しており、それが緊張が依然として高い理由である。

興味深いことに、ウクライナのドミトリー・クレバ外務大臣は、ロシアはフランスの計画を誤解している、と述べた。同大臣によれば、マクロン大統領の本当の意図は、紛争に直接参加することではなく、「必要に応じて」キエフ軍を地上で訓練できるよう、ウクライナ国内にフランス人の教官を配置することだけだ、という。戦況が激化していることとウクライナが兵站面に問題があることから考えると、このような措置が西側諸国による現在の協力体制とキエフ軍の訓練を継続する最善の方法である、と考える向きもある。

しかし、念頭に置いておくべきことは、マクロン大統領が軍事教官の派遣の計画だけを提案しているわけでは全くない、という事実だ。実際、大統領は声明の中で、戦争への直接介入の可能性を排除していないと述べ、フランス当局が将来的にウクライナ前線で戦うために軍隊を派遣する可能性があることを明らかにした。さらに、たとえマクロン大統領が言い間違えて、その意図が軍事訓練兵の派遣だけだったとしても、フランスが実際にロシアと戦争をすることになるという事実は変わらない。

ウクライナ領内の西側軍は、現在もそして今後もロシア軍から狙われて当然の標的だ。それ以上に、ロシア政府はこれらの敵がウクライナ犯罪の背後にいる真の戦略家であることを理解しているため、西側軍は優先される標的である。ウクライナではすでに西側兵士数名が死亡しており、その中には傭兵として活動していた者もいれば、指導者や意思決定者として活動していた者もいる。しかし、今のところ西側の軍隊が公に駐留されたことはなく、そのおかげでなんとか両者間の緊張においては理性的な抑制が保たれている。

NATO加盟国が、たとえ単なる軍を指導する目的であっても、ウクライナに正規兵を派遣し始めた瞬間から、危機は非常に深刻な、おそらくは取り返しのつかない段階にまで激化するだろう。ウクライナに西側軍が正式に駐留すれば、NATOとロシアの関係において後戻りできない点となり、第三次世界大戦が勃発し、その結果は壊滅的なものになる可能性がある。

この過程において、フランスとヨーロッパが単純に「見捨てられる」という危険性もある。これまでのところ、NATOの主導国である米国は直接の介入には関心を示していない。米国政府にとって最も有益な展開は、米軍を公的に関与させずに、ロシアを「疲弊させる」消耗戦に代理諸国を関与させることである。そういう意味では、フランスがロシアと開戦した場合、フランス当局とそのヨーロッパの同盟諸国に対して、米国が直接支援しない可能性は非常に高い。結局のところ、同盟国が他の国家に対して敵対行為を開始した場合でも、NATOの集団防衛義務は適用されない、ということだ。

実際、マクロン大統領は完全に危険かつ無責任な行動をとっている。ヨーロッパ国民の間で「リーダーシップ」を獲得しようとする利己的な試みの中で、フランス大統領は大陸全体を前例のない安全保障危機に導いている。
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西側の諸国民は目隠しをされたまま戦場へ向かっている

<記事原文 寺島先生推薦>
Western Peoples Are Going Into Battle Blindfolded!
筆者:ヒューゴ・ディオニシオ(Hugo Dionísio)
出典:Strategic Culture Foundation  2024年3月23日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月30日


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NATOによる全面的「反選挙運動」が功を奏さなかったのであれば、威嚇やロシア国民に恐怖や疑念、困惑を広めようという戦略もうまくいかなかった、ということだ。

先日のロシアの大統領選は、「報道」の概念や西側の諸国民が情報を入手する権利に対する侵略行為がまったく新しい段階に入ったことを示す機会となった。未だに「報道」機関であるという仮面をかぶっている主流報道機関という独占企業が、今頃になってやっと最悪の状態に陥ったと考える人間がいれば、の話だが・・・。この選挙は過去最悪のものとして知られる恐れがある。

3日間おこなわれたこの選挙までの数日、数週間は、今後起こることの準備運動となった。L’imitation de Napoléon(ナポレオンもどき)マクロンが指揮棒を手にし、ズボンをはいた将軍のように、彼のフランスが軍事的行動としてウクライナに軍を送る、とロシアを脅し始めた。脅しだけに飽き足らず、マクロンはそもそも制限や超えてはいけない線など存在しない、とまで述べた。

フランスが軍を送るのは、ロシア軍がキエフやオデッサ(この二つの都市の間にある地域のことは「口にして」いただろうか?)方面に進軍しようとしたときだけである、と明言した後マクロンはブレーキをかけ、いくつかの防衛戦を後退させた。それは私も含め多くの人たちが考えたことだ。事実は、マクロンはモルドバとの合意文書に署名した。これはウラジミール・プーチン大統領率いる行政府に対する明らかな挑発だ。そして、マクロンはドイツやポーランドの取り巻き連中と会い、この攻勢における協力体制を固めたのだ。

誰かが裏から手を回し、小物ナポレオンが臆病な様子を見せるショルツに激怒しているという情報を報道機関に流したに違いない。具体的には、ドイツ本場本物ソーセージのやり方でタウルスミサイルを送ることに抵抗していることについてだ。そんなことをすれば、キエフ政権はドンバスやクルスク、ベルゴロドで一般市民を殺し続けることになる。ロシア軍人を殺すことについては、これまでになく難しくなっている。

私にはこのl’enfant terrible(手に負えない子ども)についての騒ぎの狙いは、何より選挙を目前に控えたウラジミール・プーチン大統領に向けられたものだと思える。それと同時に、ロシア国民がどれほど自分たちの指導者を支持するかの決意を試そうとしている、とも言える。要は、私の見方になるが、ロシアの人々に彼らの大統領(プーチン)の動きを強調することで事態はエスカレーションするぞ、と脅すことにあった。同時にウクライナにNATOが介入するかどうかは、ひとえに、この官僚的で卑屈な軍隊であるNATO軍が両陣営対決の唯一の責任ある脅威と考える存在、つまりウラジミール・プーチンにかかっている、とも言っている。ロシア国民に対して潜在意識に働きかける(サブリミナルな)脅しをかけていた、ということだ。「独裁君主」で「暴君」で「独裁者」を選んでしまえば、ロシアとヨーロッパ、つまりNATOとの直接戦争がおこる危険が生じるぞ、と。

独占報道機関が出す唯一の疑問は、マクロンがこんなことをするのは、自身の欧州議会選挙にむけた宣伝活動のためではないか、ということだが、実は、ウクライナに軍を送る可能性の是非を問う指標はすでに示されている。BFMテレビがおこなった世論調査によると、フランス国民の57%が、この件に関してマクロンは間違っていると答えた、という。

フランス国民がその可能性を否決したのならば、マクロンがこのような決定を下した理由が国内選挙にあると考えるのには意味がない、ということだ。そしてこの点において、私はマクロンが「この決定は選挙に向けた動きとは全く無関係だ」と自己弁護していることに同意する。「国内では」という意味で! 言い換えれば、このL’imitation de Napoléon(ナポレオンもどき)は、部分的にウソをついていたのだ。その選挙工作は、ロシアの大統領選挙に介入しようという動きに関するものだったのだ。つまり、ロシアが西側でやっていると非難されている動きみたいなものだ。

この騒ぎに先だって、ナワリヌイ事件が奇術師の見世物のように展開されていたが、その狙いはウラジミール・プーチン大統領に反対する勢力が実際の力よりも強大であるという幻想をみせるためだった。その結果生じた状況から、ナワリヌイの死が見世物のひとつだったことを考えると、私はこの腐敗した人種差別主義者のナワリヌイにある種の自由主義的な姿を見ていた人々に、「ナワリヌイは無駄死にだった」という事実を伝えることはつらい。実際、これはマンガのような事例の一種だった。奇術師が自分の奇術を成功させるために、助手を殺してしまうという筋書きだ。悲しいことだ。

紛争や騒乱の脅威も嘘ではないと思わせようと、ロシアの大統領選挙が始まる1週間前から、報道機関による工作が展開された。「自由ロシア軍(FRL)」や「シビル大隊(SB)」という名称の仮想組織が国境を越えロシア国内の2つの村を占領した、という軍事的な動きもあることを含ませて。その後、旗を掲げた多くの写真や動画が公開され、キエフ政権が無関係だと主張する傭兵の大部分が虐殺され、戦闘車両が破壊されたことが確認された。私がカミカゼ作戦と呼んでいるものは何日も続き、この軍事宣伝作戦で1000人以上の兵士が失われた。

ロシアの選挙におけるNATOの広報戦略として特徴づけられたものは、最も致命的で、最も破滅的で、失敗した政治的プロパガンダ作戦として知られることになるだろう。主要人物や「活動家たち」はほぼ皆死んでしまった! この投票率と得票率でプーチンが選挙に勝ったのだから、CIAがあとどれだけのナワリヌイとカミカゼ大隊をしつらえないといけないか、見当もつかない。完全に遅ればせながら、ニューヨーク・タイムズ紙は私たちがずっと前から知っていたことを確認する記事を出した。「すでにウクライナの村々が人手不足になっており、リンゼー・グラハム米国会議員がゼレンスキーに、前線に最も若い兵たちを送る時だと伝えた」という記事だ!

しかし、私たちが向き合わねばならない問題がひとつある。それは、ウラジミール・プーチンに対して(反)選挙運動をおこなうことは本当に危険である、という事実だ。本当に恐ろしいことだ。相当数の宣伝活動家がCIAやキエフ政権の手で死んでいるからだ。となれば、それは何のための運動なのだろうか? 結局、投票率は記録的な高さとなり、ロシア大統領は過去最高の結果を得ることになった。

NATOの「反選挙活動」が功を奏さなかったのならば、脅しや、怖さと疑念と困惑をロシア国民の間に広めようという戦略も失敗した、ということだ。逆効果だった、とさえ言える。ロシア国民は、市民権や責任、勇気と抵抗についての教訓を示してくれた。自国の市民たちが今回のロシア国民のような振る舞いを見せるのであれば、どんな国のどんな市民でも、自分の国に誇りをもてることだろう。投票の方向性に関係なく、こんな風な動きに結集した諸国民であれば、間違いなく自分たちの未来を自分たちの手に掴むことができるだろう。

つまり、この動きは反教育的なサーカスに過ぎなかったのだ。この3日間、今回のロシアの選挙に関してはあることないことが目白押しに語られた。129カ国から1125人の独立選挙監視員がロシアに派遣されていたのに、テレビでは「この選挙は国際的な監視員たちから監視されていない」と報じられていた。まるで西側諸国の選挙では監視がおこなわれていて、さらにすでにネオ・ファシズムへ滑り落ちようとしている西側が、他国に民主主義のお手本を示せる立場にあるかのように。例えばキエフ政権のようにファシストやナチス政権を支持する勢力や、バルト諸国のように外国人を嫌悪する勢力であれば、民主主義の手本になれる資格などまったく失っているといえる。

弾圧に対する非難が殺到し、「ロシアでは投票は強制されている」という主張までされた。最後には、投票者の77%が「(被害者が犯人に対する同情心をもつと言われる)ストックホルム症候群」に陥った、という話を正しいと思わねばならなくなった。これらの投票者は「警告」にも関わらず、プーチンに「はい」と言いたくなってしまった、と。選挙前の数日間、その「警告」は西側諸国の大使館から雨のように流されており、ロシアでテロがおこなわれる可能性があると自国民たちに警告され、群衆を避けるよう助言がおこなわれていた。まるで「もしテロ攻撃があったとしても、それは自分たちがやったのではない」と言いたいかのように。

ナワリヌイの亡霊が再浮上した。この人物をどれだけつかい回せば気が済むのだろう! ナワリヌイは「正午」という作戦により今回の選挙を動揺させることを約束していた。ロイター通信は、投票に並ぶ長蛇の列の写真を撮って、ロシア「反体制派」による平和的な抗議活動と報じた。

「何千人もが!」とロイター通信は報じた。まるで1億人以上の有権者が存在する国で、その数千人が何かの代表となっているかのような報じ方だった。ヨーロッパ各地の大使館では、外交官の追放などのボイコット作戦にもかかわらず、行列はまるで投票への意志とは切り離されたものであるかのように感じられ、多くの場合、メディアでそう報じられた。

キエフ政権により投票箱には液体がかけられ、一般市民が爆撃され、投票所で破壊行為がおこなわれた。これら全てのことは西側民主主義社会の通信社と呼ばれる組織の客観的な分析からは見過ごされてきた。確かなことがひとつある。ロシア国民が今回の選挙を支持したのは、自身のアイデンティティを肯定し、自分たちの利益に反して継続される敵からの侵略に対する戦いと攻撃に向かう真の行為を求めるものであるとしても、注意深くものごとを見られなくなっている西側の諸国民にはその声が聞こえなかったのだ。それでも、西側の諸国民はその攻撃の効果を感じとることになるだろう。

情報独占媒体の「ニュース」報道と同様、西側の諸国民は生活のさまざまな分野において、ロシア国民が繰り出す攻撃の効果に苦しむことになるだろう。具体的には、

① 財源が公共事業から軍事産業に回されることで生活状況が悪化していること、
② 西側の支配者層が流すたった一つの真実と相容れない情報は検閲されるという工作が強められること、
③ 自分たちの権利が抑圧されること、
④ ネオ・ファシズムの促進に拍車がかかっていること、
⑤ 帝国主義のもとでの統治を唯一可能にする枠組みとして、ロシア国民に対する憎しみや外国人嫌悪を持たされていること、
⑥ 西側の諸国民の真の懸念から目をそらせるような陽動作戦が促進されていること、

つまり、平和や食べ物、教育、健康、住居の問題だ。

ロシア国民は西側の侵略から勝利を収め、NATOのサブリミナル攻勢に対して反響の大きい反撃を加えた。いっぽう、西側の諸国民は、現実に目覚めなければ、自分たちが感じている攻撃がどこから来ているのかさえ特定できないような状況に陥るだろう!

もしこの真実に対する攻撃について私が述べたことのすべてを証明するものがあるとすれば、それは西側の諸国民は目隠しをされたまま、戦場に放り込まれることになる!ということだ。
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ヌーランド(米国務次官)―ブダノフ(ウクライナ情報局長官)―タジク(実行犯アフガン系タジク人)―クロッカス(モスクワ近郊の爆破事件「クロッカス・シティ・ホール」)の繋がり

<記事原文 寺島先生推薦>
The Nuland – Budanov – Tajik – Crocus connection
筆者:ぺぺ・エスコバル(Pepe Escobar)
出典:Strategic Culture Foundation 2024年3月26日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月28日


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ロシア国民は、クレムリンに完全な委任状を出したのだから、ロシア政府は残忍で最大限の罰を与えることができる。どんな犠牲を払っても、どこでそれをおこなうのかも任されているのだ。

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クロッカスのテロ攻撃に繋がる可能性のある出来事の鎖を解(ほど)くことから始めよう。その答えほど爆発的なものはなかろう。モスクワの諜報機関は慎重に、これはFSB(ロシア連邦保安庁)が最優先に捜査している事例のひとつであることを明言している。

2023年12月4日。マーク・ミリー元米国統合参謀本部議長が、退官のたったの3ヶ月後、CIAの代弁者であるワシントン・ポスト紙にこう語った。「真夜中に自分の喉もとが切られるかもしれないと心配しないで眠れるロシア国民はいなくなるはずだ。ロシアに戻って、前線の裏でできる取り組みを作り出せ」と。

2024年1月4日。ABCニュースとのインタビューにおいて、ウクライナの「諜報長」キリーノ・ブダノフが見取り図を提示した。それは、ロシア国内の「もっともっと奥深く」を攻撃するためのものだった。

1月31日。ビクトリア・ヌーランドがキエフを訪問し、ブダノフと面会。そのとき、真夜中のだれもいない街中で派手な記者会見を開き、プーチンに「えげつない贈り物」を送ることを約束。これは、非対称戦争を繰り出そうという暗号だ。

2月22日。ヌーランドが戦略国際問題研究所(CSIS)の催しに登場し、「えげつない贈り物」と非対称戦争について念押し。この行為は、ブダノフに汚い作戦を開始してもよいという決定的な暗号を送ったものとして解釈されたと思われる。

2月25日。ニューヨーク タイムズ紙は、CIAのウクライナ支所についての記事を発行。ただし、その件についてはロシアの諜報機関がつかんでいない情報は何もない。

それから3月5日までは静寂。そして3月5日。残忍な影絵芝居が功を奏したようだ。極秘の筋書きだ。ヌーランドがCIAやウクライナのGUR(ウクライナ国防相:ブダノフ)とともに、汚い作戦の計画を立てた主要人物だ。ライバル関係にあるディープスティト内の分派がその件を掴み、なんとかしてヌーランドを「おわらせよう」と画策。というのも、ロシアの諜報機関が点を線に結び付けることは必然だと思われたからだ。

それでもヌーランドは、事実上「引退」はしていない。彼女は依然として国務次官(政治担当)をつとめており、最近でもG7関連の会議のためにローマに出現。理論上、彼女の新しい仕事は(ヒラリー・クリントンのはからいにより)コロンビア大学にあるようなのだが。

大規模な「えげつない贈り物」の準備は、秘密裏に完全に感知されないなか、すでに整っている。この作戦を中止することはありえない。

3月5日。小物のブリンケン国務長官は、公式にヌーランドの「引退」を表明。

3月7日。4名のテロ奇襲部隊のうち少なくとも1名のタジク人が、クロッカスのコンサートホールを訪れ、自身の写真を撮影。

3月7-8日。米国大使館と英国大使館が同時に、モスクワでテロ攻撃がある可能性を発表。モスクワ駐留の自国民に対して、この先の2日間は「コンサート」などの催しへの参加を避けるよう連絡。

3月9日。非常に人気の高いロシアの愛国的な歌手であるシャーマンがクロッカスでコンサート。おそらくこの日が「えげつない贈り物」実行日として慎重に選ばれた日だったようだ。というのも、この日は3月15日から17日におこなわれる大統領選のほんの数日前だから。しかし、クロッカスでは大規模な警備体制がしかれていたため、作戦は延期。

3月22日。クロッカス・シティ・ホールへのテロ攻撃。

ISIS-K。とんでもなく厄介な組織

ブダノフとのつながりはその手口で裏付けられる。今回の手口は、ウクライナの諜報部がおこなったダリア・ドゥギナやウラジミール・タタルスキーに対する暗殺行為とよく似ていたからだ。具体的には、何日間にも及ぶ詳しい偵察があったことだ。何週間も準備をし、攻撃をおこない、そして国境まで一目散に逃げる、という手口だ。

そうなるとタジクとのつながりも見えてくる。

大量殺人実行者と化したゴロツキ連中がでっち上げた話は穴だらけのようだ。これらの連中はテレグラム上のイスラム教説教師の話を聞いたという。彼ら4人は、後からたったの50万ルーブル(約80万円)をもらえることになっていた。コンサートホールで無差別に人を殺害する行為に対してである。その報酬の半分はテレグラム上で送られており、武器倉庫の場所を知らされ、そこでAK-12錠や手りゅう弾を受け取ったという。

動画を見ると、犯人らはプロのようにマシンガンを操り、射撃は正確で、短距離からの射撃か一発で仕留め、とにかく全く混乱した姿も見せず、手りゅう弾の使い方も効果的で、一瞬でその場から姿を消し、すっと姿を消し、ウクライナとの国境まで導く「窓」をすんでのところでつかむところまで進んだ。

こんなことをしようと思えば訓練が必要だ。その訓練には、えげつない尋問に対する受け答えも含まれる。それでも、FSBはこれらすべてを打ち破ったようだ。木っ端みじんに。

支援者と思われる人が姿を現した。それは、アブドゥロ・ヒュッリイェトという人物だ。トルコの諜報機関は以前から、ISIS-Kやアフガニスタンの過激派組織であるウィラーヤ・ホラーサーンの支援者として彼を特定していた。クロッカスの突撃部隊の一人がこの人物が「知り合い」だとFSBに語ったという。アブドゥロは彼らに、この作戦に必要な車を買う手助けをした。

そうなると、とんでもない厄介者に行きつく。それがISIS-Kだ。

2020年以来のISIS-Kの首長とされる人物は、アフガニスタンのタジク人であるサナウッラー・ガファリという人物だ。彼は2023年6月にアフガニスタンで殺されてはいなかった。米国はそのような話を流していたが。おそらく現在はパキスタンのバローチスターン州に潜んでいるようだ。

ただし、ここで注目すべき真の人物は、タジク人のガファリではなく、チェチェン人のアブドゥル・ハキム・アル・シシャニだ。アジュナド・アル・カフカス(「コーカサスの戦士」という意味)というイスラム教聖戦士組織の元指導者で、イドリブでダマスカス政権と戦い、ウクライナに逃げこんだ人物だ。それは、ハイアト・タハリール・アル=シャーム(HTS)という組織により弾圧されたからだ。この組織は、アジュナド・アル・カフカスと同じイスラム教聖戦士組織だったが仲間割れを起こしたのだ。

シシャニは先日ウクライナ諜報機関がロシア国内で起こした攻撃の際、ベルゴロドの国境付近で目撃された。この攻撃も「えげつない贈り物」のひとつと呼んでいいだろう。

シシャニがウクライナに滞在してもう2年以上がたち、市民権も獲得している。彼はシリアにいる寄せ集めのイドリブ・ギャングたちとキエフのGURとの正真正銘の接点だ。というのも、彼の配下のチェチェン人は「アル・ヌスラ戦線」という組織と協働しているからだ。この組織は、事実上ISISと区別がつかない組織だからだ。

激しい反アサド派であり、反プーチン派であり、反カディロフ派であるシシャニは典型的な「穏健派反抗分子」であり、CIAや国防総省が長年「自由戦士」として宣伝してきた人物だ。

この4人の不幸なタジク人のうちの何人かは、思想的/宗教的な教化に従っていたようだ。その教義はネット上でアフガニスタンの過激派組織ウィラーヤ・ホラーサーンやISIS-Kが、「ラフナモ・バ・ハトロン」というチャットルームで流していたものだ。

この教化はタジク人のサルモン・クフロソニという人物が監修していた。彼はこれらの奇襲隊を採用する最初の動きを見せた人物だ。クフロソニはISIS-KとCIAの間をつなぐ人物だと考えられている。

問題はISIS-Kの手口によれば、どんな攻撃に対しても、報酬は一握りのドルも出さない、という点だ。報酬は、殉死すれば天国に行ける、という約束なのだ。ただし今回の場合、50万ルーブルの報酬を承認したのは、クフロソニ自身であるようだ。

支援者のヒュッリイェトが指示を伝えたのち、奇襲隊はバヤト(ISISの忠誠の誓い)をクフロソニに送った。ウクライナは彼らの最終目的地ではなかったようだ。(FSBが特定できない)別の外国諜報機関が、トルコ、その後アフガニスタンに彼らを逃がそうとしていたようだ。

アフガニスタンこそ、クフロソニと落ち合える場所だ。クフロソニはクロッカス事件の首謀者として理想的な存在だったのだろう。しかし彼が依頼人でないことは決定的な事実だ。

ウクライナとテロ・ギャングとの蜜月

ウクライナの諜報機関であるSBU(保安庁)とGUR(国防省上放送局)は、「イスラム教」テロ集団を、1990年代中旬のチェチェン戦争以来、好きなように使ってきた。もちろん、ミリーとヌーランドはそのことを知っていた。というのも、例えば過去に、GURとCIAの間に重大な亀裂が走った時があったからだ。

1991年の後のどのウクライナ政権も様々なテロ/聖戦士組織と協働していたことに続き、マイダン後のキエフ政権はこれらの組織、特にイドリブのギャングらとの結びつきを急速に強めた。さらには北コーカサスの組織とも。具体的にはチェチェンのシシャーニからシリアのISIS、その後ISIS-Kだ。GURは日常的にオンラインのチャットルームを使って、ISISとISIS-Kの兵士を採用しようとしている。まさにこの手口こそ、クロッカス虐殺事件につながった手口だ。

(汎イスラム国際政府組織)ヒズブ・タフリールの一員であるアンバル・デルカッチが2017年に創設した「ひとつのアザーン*」という協会は、住居の提供から法的な援助まで、クリミア出身のタタール人を含むウクライナ在住テロリストの生活を助けている。
*イスラム教における礼拝へのよびかけ

FSBによる捜査の結果が目に見えてきつつある。クロッカスはプロの手により計画されたが、タジク人のIQの低い出来損ない集団が考えたものでは絶対ない。無知なタジク人を使うことによりISIS-Kのために働いているという印象をもたせるという典型的な偽旗作戦だ。

さらにFSBによる捜査は、どこからでも実行可能なオンラインを使った手口を明らかにしつつある。採用する側はその人物のプロフィールの特定の部分に照準を合わせ、その人物が候補者としてふさわしいか見極める。その際、特に大事なのは、その人のIQの低さだ。そしてその人物に、その仕事に最低限必要なものを提供し、その候補者/実行者を破棄する。

ロシア国民なら誰でも覚えていることは、クリミア大橋への一度目の攻撃の際、あのカミカゼ攻撃のトラックの運転手は、お気楽にも自分が何を運んでいるか知らなかった、という事実だ。

ISISについていえば、西アジアの状況を真剣につかんでいる人々なら誰でも承知している事実は、この組織が巨大な偽妨害組織であるという事実だ。それを完全に裏付ける事実は、米国がISISの工作員をイラクのアル・タンフ基地から東ユーフラテス地方に、その後米帝国が屈辱的な「撤退」をした後は、アフガニスタンに移動させた事実だ。ISIS-K作戦が実際に始まったのは2021年のことだ。容赦なく拡大を続けるタリバンを抑えられなくなり、シリアからISISという暴力組織を輸入利用する意味がなくなったからだ。

ロシアの戦争特派員の第1人者マラト・ハイルリンはこの激しいサラダの盛り合わせにもう一つおいしいドレッシングを投げ込んだ。彼は説得力を持って、クロッカス・シティ・ホールのテロ攻撃におけるMI6の視点を明らかにしたのだ。(英語版はこちら。2部構成。投稿者名は「S」)

FSBは今、この事件のほとんどすべてを解明しようという骨の折れる仕事の真っただ中だ。すべてのl ISIS-K-CIA/MI6のつながりを解明できるかわけではないだろうが。すべてが明らかになれば、一大事になるだろう。

しかし話はそこでは終わらない。西側の諜報機関が、これら無数のテロ組織網を抑えているわけではなく、これらのテロ組織は仲介者を通して西側諜報機関と協働している。その仲介者とは主にサラフィー主義者の「伝道師」であり、これらの組織がサウジ/湾岸諸国の諜報機関工作員と取引をしている。

CIAが「黒い」ヘリコプターを飛ばして、シリアからジハーディスト(イスラム教聖戦士)を連れてきてアフガニスタンに送り込んでいたという事例は、よくあることではなく例外ととらえたほうがいい。直接的な接触があった、という点においてだ。それゆえ、FSBとクレムリンが非常に慎重になるのは、これらの関連網を運営しているとして、CIAやMI6を直接非難するときだろう。

しかしどれだけ納得のいく否定を並べたとしても、クロッカス事件の捜査は、ロシア側が望む方向に進み、重大な仲介者を明らかにするように思える。そしてすべてが、ブダノフとその手下らの仕業であるという答えに行きつくように見える。

(チェチェンの)ラムザン・カディロフ主張が大きなヒントを出してくれた。彼によると、クロッカスの「首謀者」は意図的に少数民族という要素を利用することを選んだ、というのだ。つまりタジク人だ。タジク人はロシア語がほとんど使えず、多民族国家であるロシア国内で新たな傷口を広げるために利用されているからだ。ロシアというのは、何十もの民族が何世紀もの間寄り添って暮らしてきた国なのだが。

結局は、それは上手く行かなかった。ロシア国民は、クレムリンに完全な委任状を出したのだから、ロシア政府は残忍で最大限の罰を与えることができる――手段や場所を問わずにだ。
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ゼレンスキー大統領、治安責任者を解任

<記事原文 寺島先生推薦>
Zelensky fires security chief
ウクライナ国家安全保障・国防評議会(SNBO)のアレクセイ・ダニロフ議長を解任
出典:RT 2024年3月26日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月28日


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アレクセイ・ダニロフ。© Aleksandr Gusev / SOPA Images / LightRocket(Getty Images)


ウクライナのウラジミール・ゼレンスキー大統領は火曜日(3月26日)、国家安全保障・国防会議(SNBO)のアレクセイ・ダニロフ委員長を解任した。この警備責任者は、好戦的で攻撃的な発言に頼ることで知られている。

関連する法令はウクライナ大統領の公式ウェブサイトで公開されたが、決定の理由は示されていない。

その後、アレクサンドル・リトビネンコ氏が新しいSNBO長官に指名された。同氏は2021年7月からウクライナ対外情報機関の指揮を執っており、それ以前はSNBO副長官を務めていた。

ダニロフ氏は在任中、厳しい発言で知られていた。2023年後半、キエフの人材採用問題についてコメントした際、彼はすべてのウクライナ人が「成長」して戦わなければならないと主張した。

その際、同氏はまた、ウクライナが計画している動員活動は1日や1か月では終わらず、全てが完結するには少なくとも1年はかかる可能性がある、とも述べた。

11月には匿名で西側ジャーナリストらに演説し、ゼレンスキー氏を中傷する当局者の取り締まりを呼び掛けた。ダニロフ氏はまた、メッセージング・アプリのテレグラムを「危険で有害である」と非難した。同氏は11月、このアプリはウクライナ社会に影響を与えようとする人々にプラットフォームを提供していると述べ、完全に禁止する用意がある、と付け加えた。

この元SNBO長官はキエフの西側支援者たちにも批判的だった。同氏は12月、NATOの戦争教本はどれもウクライナ戦争に兵士を準備することができないため、棚上げされるべきだ、と述べた。同氏はまた、キエフへのさらなる武器供与を繰り返し要求し、ウクライナ軍が何らかの後退をすれば、西側諸国自身の「イメージ、権威、団結」を損なうことになる、と警告した。

2024年2月、ダニロフ氏はEUに対し、すべての重火器をウクライナに引き渡すよう要求し、EU自体は今後の紛争においていずれにしても重火器を必要としないだろうから、と付け加えた。

この元当局者(ダニロフ)は先週、中国がウクライナ紛争に関する国際会議をボイコットする可能性がある計画をめぐって、ユーラシア問題担当の中国の李輝特別代表を侮辱した。キエフはこの会議をロシアなしでスイスで開催しようとしていた。ダニロフ氏はこの問題についてコメントしながら、卑猥な言葉遊びを使って中国外交官の名前を嘲笑した。

2023年8月、国が認可した「放送マラソン」というテレビ番組中に、 ダニロフはまた、ロシア人は「アジア人」であるため、ウクライナ人より 「人道的」ではないと主張したことで悪名高くなった。この元SNBO長官はまた、世界中どこでもロシア人を「殺す」と繰り返し約束していた。
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ジュリアン・アサンジに関して英国高等裁判所の判断が意味するもの

<記事原文 寺島先生推薦>
What UK High Court’s decision in Julian Assange case means
獄中のウィキリークス創設者(アサンジ)は米国への身柄引き渡しに対抗するため、限られた新しい機会を与えられ、再び訴訟を行うことを許可された。
出典:RT 2024年3月26日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月28日


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ファイル写真: ロンドンの王立裁判所前で集会を行うジュリアン・アサンジ支持者。© Dave Benett / Dave Benett / Getty Images


ウィキリークス創設者ジュリアン・アサンジは火曜日(3月26日)、米国への身柄引き渡しを回避するための英国での長年の法廷闘争に勝利を収めた。彼の現在の状況はあまり変わっていないが、弁護側は法廷での新たな一日を与えられることになった。

アサンジ(52歳)は2019年以来、英国の最高警備刑務所に収容されている。彼は保釈違反の裁判を待つ間、通常は危険な犯罪者しか入れないベルマーシュ刑務所で独房に耐えている。米国は逮捕の1カ月後に米国の諜報活動取締法(スパイ法)により彼を起訴し、ワシントンの弁護士は身柄引き渡し請求を進めている。支持者たちは、彼は政治的な理由で米国と英国に迫害されていると言っている。

2021年、英国の連邦地裁判事は、アサンジ容疑者が米国に拘束されている間に自殺する可能性を認め、身柄引き渡しを拒否した。ただし、弁護側の他の主張は退けた。米側はこの決定を不服とし、容疑者が誤った扱いを受けないという保証を提示した。

結果的に米国が勝訴し、2022年6月、当時のプリティ・パテル内務大臣はアサンジを米国に送ることを許可した。何度かの挫折の後、彼の弁護団は2月に高等裁判所に、彼らの裁判の大部分が却下されたことに異議を唱える機会を求めた。

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関連記事:アサンジの妻、英国の移送決定に先立って「公正な裁判」を求める。

ビクトリア・シャープ判事とジェレミー・ジョンソン判事は火曜日(3月26日)、被告人の権利が守られることをさらに保証するために米国に3週間の猶予を与え、身柄引き渡しを停止するよう命じた。

英国が特に求めているのは、アサンジが独房に入れられたり、隔離されたりすることはないという確約である。オーストラリア国籍のアサンジが、アメリカの連邦刑務所のいわゆる通信管理ユニット(CMU)に入れられるのではないかという懸念がある。ウィキリークスは、著名な権利団体によれば、アメリカの保証は「本質的に信頼できない」と指摘している。

もし今週、判事がアサンジに不利な判決を下していたら、英国の裁判制度における彼の選択肢は尽きていただろう。外国が介入しない限り、彼は24時間から28日以内に米国の拘束下に置かれる可能性があった。彼の弁護団は、欧州人権裁判所に緊急差し止め命令を求める嘆願書を提出する予定だった。

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関連記事:アサンジは司法取引で米と対話―WSJ

アサンジ支持者たちによれば、彼は、イラクとアフガニスタンでの軍事作戦中の犯罪容疑の証拠を含む、厄介な国家機密を公開したことで、アメリカの報復に直面しているという。

この事件は西側の報道の自由に重大な影響を与える。オバマ大統領は、透明性活動家のアサンジのジャーナリズム活動が従来のメディアと変わらないという、いわゆる 「ニューヨーク・タイムズのジレンマ」を理由に、アサンジの告発を拒否したという。

ドナルド・トランプ政権下の司法省は、内部告発者チェルシー・マニングが2010年にウィキリークスに機密文書をリークした際、アサンジがそれを幇助したと告発した。

ジョー・バイデン大統領は、起訴の取り下げを求める声を拒否している。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)によると、米政府はアサンジと司法取引を行うことを検討しているという。司法取引では、アサンジは身柄引き渡し要求の撤回と引き換えに軽犯罪の罪を認めることになる。
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「モスクワのテロ攻撃について西側は嘘をついている」– 英国国会議員

<記事原文 寺島先生推薦>
West lying about Moscow terrorist attack – British MP
ジョージ・ギャロウェイ議員、ワシントンとロンドンはイスラム主義者に責任を押し付けるのが早すぎた、と発言
出典:RT 2024年3月25日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月27日


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英国国会議員ジョージ・ギャロウェイ© Global Look Press / Ian Hinchliffe


モスクワ郊外のクロッカス・シティ・ホールでの恐ろしいテロ攻撃がイスラム国(IS、旧ISIS)によって実行された、という米国、英国とその西側同盟国の主張は「嘘」である可能性が非常に高い、と英国のジョージ・ギャロウェイ議員は日曜日(3月24日)に述べた。

4人の武装集団がロシア首都郊外にあるこのコンサート会場を襲撃し、130人以上が死亡、180人以上が負傷した直後、ワシントンとその同盟諸国が広めた言説に、同議員自身のマザー・オブ・オール・トークショー(MOATS)で疑問を呈した。

米国家安全保障会議のジョン・カービー報道官は、攻撃直後にこの悲劇について発言し、米国政府はウクライナ国民が関与したという「兆候は見られなかった」と述べた。その後、ロイター通信やCNNなど一部の西側報道機関は、ISがこのテロ攻撃の犯行声明を出した、と報じた。

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関連記事:Suspects behind Moscow terrorist attack: What we know so far

「米国や英国などが、モスクワでこの大量殺人を実行したのはISISだけだ、としてすぐに私を安心させようとしたとき、私は彼らが嘘をついていることが自動的にわかりました」とギャロウェイ議員は語った。

さらに同議員は、カービー報道官の発言を含め、一部の西側政治家や当局者による不審で「説明のつかない」動きを指摘した。

関連記事: Three more suspects in Moscow terrorist attack arrested

同英国議員は、米国政府が3月初旬に、モスクワの混雑した場所に近づかないよう国民に呼び掛けていたことを米国当局者が確認したという事実に特に注目した。

カービー報道官は、在ロシア米国大使館が3月7日に警戒警報を発令し、「過激派」がモスクワで差し迫った攻撃を計画していると警告した、と語った。それでも同報道官は、その警告は先週金曜日(3月22日)のテロとは関係がないと、した。「あの警告が今回のテロ事件と関係しているとは思いません」と同報道官は述べた。

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関連記事:US has created ‘Frankenstein’ states – British MP

ギャロウェイ議員はまた、バラク・オバマ元米国大統領がモスクワ攻撃の数日前にダウニング街を突然訪問したという事実も指摘した。「この予告なしの訪問について誰も説明しません」と同議員は言った。

英国報道機関は訪問当時、この元米国指導者が1時間の「表敬訪問」中にリシ・スナク首相とAIを含む幅広い議題について話し合ったと報じていた。

ギャロウェイ議員が言及したもう一つの話には、米国政務担当国務次官ビクトリア・ヌーランド氏が関わっていた。同国務次官は、今年モスクワに「戦場での素敵なサプライズ」があることを約束していたという。ヌーランド氏は1月に「ウクライナがこの先非常に大きな成功を収めることになるでしょう」と述べたが、この問題についてはそれ以上の発言はしなかった。

ギャロウェイ議員はこれらの事実を「米国とそのNATO同盟諸国、そしてその代理奉仕者…つまりウクライナ国家…が実際にこの大量殺人に関与した」ことを示唆する「証拠」として引用した。
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ウクライナのバー、モスクワのコンサートホール襲撃事件を嘲笑

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukrainian bar mocks deadly Moscow concert hall attack
非常に政治的で物議を醸すメニューを出すことで知られるキエフのバーが、130人以上の死者を出したクロッカス市シティホール虐殺事件を揶揄した新しいスナックセットを販売している。
出典:RT 2024年3月24日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月27日


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オフェンジヴァのバーメニューの「クロッカスシティ」スナックセット。© ofenziva.ps.me


キエフにある「アートバーOfenziva(オフェンジヴァ「攻撃的」の意)」は、モスクワのクロッカス・シティコンサートホールに対する致命的な週末のテロ攻撃を揶揄した新メニューを出し、物議を醸している。この攻撃では少なくとも133人の命が奪われたが、犠牲者の捜索はまだ続いており、死者数はさらに増えることが予想されている。

ネット上のミーム戦争を連想させるこの店は、自らをキエフ初の「ミーム・ミリタリー・アート・バー」と宣伝している。様々なパフォーマーのプラットフォームとして機能しており、そのほとんどが民族主義的な見解を示している。

攻撃直後、オフェンジヴァはいくつかの揚げスナックで構成された「クロッカス・シティ」と名付けられた新しいセットメニューを出した。このバーのウェブサイトのメニュー項目には、攻撃の余波で炎上したこのコンサートホールの写真が添えられている。

このバーでは、ほかにもいくつかのテーマに沿ったメニューを提供しているが、味は常に疑わしいものである。中には、「ナワリヌイ」と呼ばれるさまざまな具材が入った一連のサンドイッチもある。この一連のサンドイッチは、ロシアの野党指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏が2月に亡くなった直後に導入された。

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関連記事:Russia mourns concert hall terror victims

「ダリヤ・ドゥギナ」と名付けられたポークステーキも用意されているが、これはロシアの政治活動家で哲学者のアレクサンドル・ドゥギナ氏の娘の死を嘲笑するためだ。彼女は2022年8月に自動車爆破事件で死亡した。その暗殺はウクライナ諜報機関によるもの、とされている。

ウクライナで悪趣味な政治的ユーモアをメニューに取り入れたのはこの店が初めてではない。2014年5月にオデッサで起きた虐殺事件では、国家主義者らがいわゆる「尊厳革命」に反対する数十人の活動家を殺害し、生きたまま焼き殺した。その年、ウクライナのレストランで提供された「ロシアの赤ちゃん」の形をしたケーキの写真がインターネットで衝撃を巻き起こした

このようないかがわしい販売戦略は、モスクワとキエフの間で続く紛争の中でさらに広まり、ウクライナのレストランが展開した物議を醸す商品が繰り返し見出しを飾っている。
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モスクワへのテロ攻撃により、ついに真の開戦となった

<記事原文 寺島先生推薦>
Moscow Terror Attack: Open War
筆者:ぺぺ・エスコバル(Pepe Escobar)
出典:INTERNATIONALIST 360° 2024年3月23日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月26日


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影絵芝居はもう終わりだ。いま役者が顕わにになった。禁じ手はなしだ。



重要な動き1:2024年3月22日。これは戦争だ。ペスコフ大統領報道官を通じて、クレムリンがついにそれを正式に認めた。

重要な引用:

「ロシアはどんな方策を用いてでもクリミアをロシアから奪おうという明確な意志を持つ勢力がロシア国境付近に存在することを許すわけにはゆかない。いうまでもないことですが、新たにロシアに編入された地域についてもそうです。」


つまり:米帝国が設(しつら)えたキエフの悪政権の運命はどうあっても潰える。クレムリンのメッセージはこうだ。「『我々は始めてすらいなかった』が、今始まるのだ。」

重要な動き2:金曜日(3月22日)の午後、ペスコフ大統領報道官の発表の数時間後だ。ヨーロッパ(ロシアではない)の信頼できる情報源により確認された事項だ。クレムリン発表に対する最初の動きだ。

「フランスとドイツ、ポーランドからの正規軍が、鉄路及び空路にてキエフの南チェルカスイに到着した。高い軍事力をもつ軍だ。数はわからない。学校に駐留している。これは、事実上、NATO軍だ。」


この信号の意味は「ゲームを始めよう」だ。ロシア側から見れば、キンジャール氏(ロシア戦闘機のこと)の名刺が、引っ張りだこになる、ということだ。

重要な動き3:金曜日(3月11日)の夜。モスクワの北西部に位置するクロクス市のコンサート会場にテロ攻撃が加えられた。十分に訓練された一人の奇襲部隊員が視界に入った人々を直射で平然と射撃し、コンサートホールに火を付けた。まさに決定的な信号だ。「戦場がうまくいっていないので、できることはモスクワにテロを仕掛けることしか残っていない」だ。

モスクワがテロに襲われているのとまさに同時に、米・英がアジアの西南アジアのイエメンの首都サヌアに対して、少なくとも5発の爆撃を加えた。


この爆撃を生んだイエメンの華麗な動きがあった。イエメンは、オマーン領海の紅海で妨害を行なわないという取り決めを露中と結んだばかりであり、イエメンは次の10月のカザンでの拡大BRICS+の第一候補のひとつになっている。

フーシ派は、制海権を見事に破壊しているだけではなく、露中の戦略的友好関係さえ味方に付けたのだ。露中に対して、自国の船がバブ・エル・マンデブ海峡や紅海、アデン湾を何の問題もなく通航できることを保証したかわりに、中国政府とロシア政府からの全面的な政治的支援を手に入れた、ということだ。

資金源は同じ

夜が更けたモスクワ、2月23日の夜明け前のことだった。寝ているものはほぼいなかった。噂があちこちで飛び交っていた。もちろん、確認されたことは何もなかった。その時点では。FSB(連邦保安庁)のみが、答えを知ることになるだろ。大規模な捜査が進行中だ。

クロクス市での大虐殺がおこなわれた時期は、興味深いものだ。この日はラマダン中の金曜日。真のイスラム教徒ならこんな神聖な日に非武装の市民の大量虐殺を企もうなどとは考えないだろう。いつもの容疑者たちが、必死にISISを犯人にしてしまおうとしている姿に注目あれ。

往年のロックバンド、トーキング・ヘッズの歌の歌詞のように、ポップに行ってみよう!「パーティじゃないぜ、ディスコでもないぜ。おふざけじゃないんだ!」。今回は米国による心理作戦と考えた方がいい。ISISはマンガみたいな傭兵/暴力団だ。真のイスラム教徒ではない。そしてそのISISに誰が軍事資金を出しているかは誰もが知っている。

そうなれば、もっともあり得そうな筋書が思い浮かぶ。FSBの助けを借りずとも、だ。やったのは、シリアの戦場から連れてこられたISISの暴力団員だ。おそらくタジク人だろう。これらの暴力団員は、CIAやMI6から訓練を受け、ウクライナのSBU(保安庁)のために活動している。クロクスでの襲撃事件の目撃者の中には、犯人を「ワッハーブ派」だとしたものもいる。この奇襲隊殺人者らはスラブ系には見えなかった、というのだ。

セルビアのアレクサンダル・ヴチッチ大統領のおかげで筋書きがハッキリした。同大統領は3月上旬に米国大使館と英国大使館が出していた「警告」とこの事件の直接の結び付きを指摘したのだ。その警告によると、両国市民に対してモスクワ市内の公共の場所にいかないよう注意を促していた。それはCIA/MI6が、テロが起こる可能性に関する内部情報を得ていたからだ、とされた。しかしその件はロシア政府には伝えられていなかった。この筋書きをさらに裏付けたのは、クロクス・シティ・ホールがアガラロフ一族の持ち物であるという事実だ。この一族は、アゼルバイジャン系ロシア人の億万長者一族であり、ある人物と非常に近しい友人関係にある一族だ。そしてその人物とは、ドナルド・トランプだ。

ディープ・ステイトが正確に的を絞った標的だといっていい。

ISISの別働隊であれバンデラ主義勢力であれ、資金源は同じだ。道化師のようなウクライナ国家安全保障・国防会議長官であるオレクシー・ダニーロフは、愚かにも、間接的にこのテロの首謀者は自分たちである、と事実上認めてしまった。ウクライナのテレビでこう語ったのだ。「我が国は奴ら(ロシア)にこんな楽しみをこの先ますます頻繁に与えることになるだろう」と。

ただし、ロシアの優れた反テロ組織「ロシア・アルファ」での長い経歴をもつセルゲイ・ゴンチャロフはこの謎の解明にさらに近づかせてくれた。彼はスプートニク通信社に、最もありそうな黒幕として、キリーノ・ブダノフの名をあげた。ウクライナ国防省情報総局長だ。

この「諜報部長」は、偶然にもウクライナ政府内のCIAのスパイ長だ。



ウクライナ国民が最後の一人になるまで続けなければ

上記3展開を補足する形で、NATOのロブ・バウアー軍事委員長は以前キエフでの安全保障会議でこう述べていた。「手榴弾だけでは足りません―戦死したり負傷した兵たちのかわりを準備する必要があります。つまり徴兵が必要になる、ということです」と。

翻訳しよう。「NATOはウクライナ国民が最後の一人になるまで戦争を続ける、とハッキリさせた」のだ。

そしてキエフの「指導者」はまだその意味がわかっていないようだ。ウクライナのオメリャン元インフラ大臣がこう語っている。「我が国が勝利すれば、ロシアの石油や天然ガス、ダイアモンド、毛皮で借りをお返しします。我が国が負けた場合、お金の話はなかったことになります。西側は我が国が生き残る術を考えてくれるでしょう」と。

同時に、「欧州は庭園、欧州外はジャングル」の発言で名を馳せた小物ボレル欧州連合外務・安全保障政策上級代表は、米国政府が手を引けば、EUからウクライナへの500億ユーロ追加支援は「困難であるだろう」と認めた。コカイン中毒で汗臭いスウェットスーツを身につけた男、ゼレンスキーは、米国政府は、借金としてではなく無償の贈り物として「支援してくれる」ものと心から信じている。そしてゼレンスキーはEUに対しても同様に考えているようだ。

「不条理演劇」でもこんなに酷くはない。ウクライナ当局から「レバーソーセージ」呼ばわりされたドイツの首相も、ロシアから盗んだ資産から得た利益は、「誰のものでもない」から、ウクライナへのさらなる軍事支援に使ってもよい、と本気で考えている。

脳のある人なら誰でも、「凍結した」、実際はロシア資産から盗んだ資金をウクライナの軍事支援に使うことは、終わりを意味することがわかっている。ほとんどがベルギーとスイスに置かれている、およそ2000億ドル相当のロシア資産を全て盗まなければユーロは暴落し、それが理由でEU経済は破綻するだろうからだ。

EUを支配している官僚らは、ロシア連邦中央銀行の巨大「邪魔者(米国から見た言い方だが)」エルビラ・ナビウリナの言い分に耳を傾けたほうがいい。彼女はこう言った。「EUが「凍結した(つまりは盗んだ)ロシア資産に少しでも手を出すのであれば、ロシア連邦中央銀行は『適切な措置』を取る」と。言うまでもないが、上記の3展開は、「ちいさな王」で、いまは自国内で「マクロン・ナポレオン」の名で知られるあの小物が繰り出している演劇「La Cage aux Folles(ラ・カージュ・オ・フォール)*」さながらのサーカスを全く意味のないものにしている。
*フランスの演劇。「狂女の檻」の意味。息子の結婚相手の親をもてなすためにゲイのカップルが、自分たちがゲイであることを隠そうと苦心するが失敗する、という筋書き。マクロンが見苦しい対露強硬姿勢を示していることと、仏首相にゲイを起用したことを揶揄するためにこの劇を持ち出した、と思われる。

グローバル・ノースで英語を話す国々も含めたこの惑星全体から、マクロンの「フレンチカンカン」軍の「功績」は既に嘲笑の対象となっていた。

そんな中で、NATOの一翼として、フランスやドイツ、ポーランド兵たちが既にキエフの南に駐在している。もっともあり得そうな筋書きは、これらの軍が、前線からはずっとずっと離れたところにとどまることだ。もちろん、キンジャール氏戦闘機の事業活動の監視網にはひっかかるだろうが。

この新たなNATOの一団がキエフの南に到着する前でさえ、ウクライナ軍への主要交通回路の役割を果たしているポーランドは、西側の軍がすでに現地にいることを認めていた。

つまり、もう傭兵という話ではない、ということだ。ちなみにフランスは、戦場に派遣されている傭兵の数では7位にすぎない。主要な傭兵提供国は、例えばポーランドや米国、ジョージアだ。ロシア国防省はこれに関する正確な数字を知っている。

要約すると、いまやこの戦争の戦場は、ドネツクやアブデーフカ、ベルゴロドから、モスクワに移行した、ということだ。このさき、この戦争はキエフで止まらないかもしれない。いや、リヴィウで済むかもしれない。国民からほぼ全会一致で支持を受けた、「ミスター87%」プーチンは、どこまでも攻めていい委任状を手にしたのだから。クロクス大虐殺事件があった後だから、なおさら。

キエフ配下の暴力団員らが繰り出したテロ作戦により、ロシアがウクライナの国境を、海のない領土しか有していなかった17世紀のものに戻せる可能性が十分考えられるようになった。ウクライナは黒海沿岸を奪われ、ポーランドやルーマニア、ハンガリーからもとの領土を戻すよう迫られことになるかもしれない。

残されたウクライナ国民は、この戦争、つまりは自分たちの死のきっかけが何だったのかを真剣に考え始めることになるだろう。その答えは、米国のディープ・ステイトであり軍産複合体でありブラック・ロック社だ。

かくして、地獄の激戦へと向かう高速道路の速度は、最高速度に到達しつつある。
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プーチン大統領、「血の海」モスクワ攻撃への復讐を誓う。 11人の「テロリスト」を捕らえ、ウクライナからの幇助を指弾

<記事原文 寺島先生推薦>
Putin Vows Revenge For "Bloodbath" Moscow Attack, Points Finger At Help From Ukraine, As 11 'Terrorists' Captured
筆者:タイラー・ダーデン(TYLER DURDEN)
出典:Zero Hedge 2024年3月24日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月26日


金曜日(3月22日)にモスクワのコンサートホールで発生したテロ事件で、ロシア当局が公式に発表した死者数は133人に達した。現場の処理と捜査が続けられており、入院者の何人かが重体であることから、死者数はさらに増える可能性が高い。この襲撃事件では150人以上が負傷した。装備の整った襲撃者グループが、商店街を通り抜けコンサートホールへ向かう群衆に向かって散発的に発砲した。3人の子供がまだ病院におり、1人は重体である。

ショッピング・モールとクロッカス・シティ・ホール音楽会場の複合施設は、夜通し何時間も燃えていたようだ。ロシアの調査委員会はその後、くすぶる建物からさらに多くの遺体が発見されたと発表した。重要なことは、土曜日(3月23日)に当局が4人の容疑者の逮捕を発表したことである。また、拘束された銃撃犯の一部が映っているとされる未確認のソーシャルメディア動画もある。

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静止画: Daily Express
おすすめ動画 (モスクワのコンサートホールで銃撃、少なくとも40人が死亡) *訳者:動画は原サイトで見てください。


全部で11人がテロ攻撃に関連して逮捕された。ロシア連邦保安庁(FSB)は「その中で、クロッカスへのテロ攻撃に直接関与した4人のテロリストが含まれる」と発表した。治安当局によれば、彼らはロシア国籍ではないという。

金曜日(3月22日)の夜、モスクワ郊外の会場で大暴れした後、「犯人は車で逃走し、ロシアとウクライナの国境に向かって逃げようとした」とFSBは土曜日(3月23日)に発表した。

4人の容疑者は「ウクライナとの国境からそんなに遠くない場所」で拘束された。西側諸国ではISIS-Kの犯行との報道が広まっているが、クレムリンではウクライナの関与を疑う声が上がっている。先に述べたように、ロシアのメディアはISIS-Kの犯行声明を強調する西側諸国の報道を支持していない。

その代わりに、プーチン大統領は、野蛮なテロ行為の犯人を罰することを誓うと同時に、ウクライナがテロリストの逃亡を助けるために「逃げ口」を用意したことを告発した。

5分半のビデオ演説の中で、プーチンはこう言った。「この犯罪のすべての実行犯、組織者、依頼主は、公正で避けられない罰を受けるだろう、彼らが誰であれ、彼らを手引きした者が誰であれ。繰り返すが、われわれはテロリストの背後にいる者、この残虐行為、ロシアに対する攻撃、われわれの国民に対する攻撃を準備した者をすべて特定し、処罰する」。

🚨モスクワ・クロッカス・シティ・ホールのテロリストの一人が捕らえられ、尋問を受けている。どの名前を名乗るのだろうか? pic.twitter.com/5mcxiwD9XC
- オージー・コサック (@aussiecossack) March 23, 2024

彼はウクライナに矛先を向けながらこう続けた。「テロ攻撃の直接の実行犯である4人全員、つまり人々を撃ち殺した全員が発見され、拘束された。彼らは隠れようとしてウクライナに移動し、予備データによれば、ウクライナ側には国境を越えるための逃げ口が用意されていた。合計11人が拘束された。」

プーチンはさらに述べた。「ロシア連邦保安庁と他の法執行機関は、テロリストの共犯者、すなわち、テロリストに輸送手段を提供した者、犯行現場からの逃走経路を設定した者、隠し場所を用意した者、武器弾薬の隠し場所を特定し、摘発することに取り組んでいる。」

「現在の主な目標は、この大虐殺の背後にいる者たちが新たな犯罪を犯すのを防ぐことだ」、とロシアの指導者(プーチン)は強調した。

しかし、ワシントンもキエフも、ウクライナが関与したという言説を否定している。ホワイトハウスのジョン・カービー報道官は金曜日(3月22日)に、「映像はただただ恐ろしい。私たちの思いは明らかに、このひどい、ひどい銃撃攻撃の犠牲者に向けられている」と述べた後、「現時点では、ウクライナやウクライナ人が銃撃に関与したという兆候はない」と強調した。

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火災で全焼したクロッカス・シティ・ホール (スプートニックによる)

ニューヨーク・タイムズ紙の取材に応じたアメリカの情報当局者は、イスラム国(ISIS-K)が背後にいると述べ、ワシントンはモスクワに何らかの大きなテロ攻撃が起こることを警告しようとさえしたと主張した。

今月初め、モスクワのアメリカ大使館は、ロシアにいるすべてのアメリカ国民に公共の場を避けるよう呼びかける治安警報を発令した。その疑惑から、ロシア外務省は、アメリカの情報当局が何を知っていたのか、いつ知ったのかについて回答を求めていた。
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モスクワのコンサートホールでのテロ攻撃:時系列での報告

<記事原文 寺島先生推薦>
Terrorist attack at Moscow concert hall: As it happened
モスクワの大きな音楽会場で銃乱射事件が起き、建物に放火され、多数の死傷者が出たとの報道
出典:RT 2024年3月22日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月25日


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@© スプートニク / マクシム・ブリノフ

ロシアの首都のすぐ北西にある音楽会場であるクラスノゴルスクのクロクス・シティ・ホールが金曜日(3月22日)遅く、武装集団による襲撃を受けた。

動画には、突撃ライフルで武装した数人が訪問者を攻撃し、発見次第、至近距離で発砲する様子が映っている。男たちは隣接するショッピングモールも狙って放火し、建物に大火災を引き起こした後、現場から逃走した。

ロシア連邦保安局(FSB)は土曜日(3月23日)、虐殺の直接加害者4人を含む11人が拘束された、と発表した。同庁は、容疑者4人はウクライナに向けて逃走しようとしていたところを逮捕された、と付け加えた。

ロシアの調査委員会は、この襲撃による死者数は133人に達したと発表した。モスクワ地方当局によると、この銃撃で121人が負傷し、このうち107人が入院を必要としている、という。

2024年3月23日
21:10 GMT(グリニッジ標準時)


RTは、少なくとも133人の命が奪われ、150人以上が負傷したモスクワ郊外のクロクス・シティ・コンサートホールでの虐殺の生中継を終えようとしている。

この致命的なテロ攻撃について詳しくは、以下のリンクを参照。

致命的なモスクワテロ攻撃:これまでに知られていること
モスクワのテロ攻撃に関与した者は全員処罰される – プーチン大統領
FSB、テロ攻撃で容疑者11人拘束と発表
モスクワ、ウクライナへ逃亡を計画していたテロリストを襲撃 – FSB

20:28 GMT

ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、ウクライナのウラジーミル・ゼレンスキー大統領の攻撃に関する発言で、事件の背後にロシア当局がいることを示唆した発言を強く非難した。

ザハロワ報道官はテレグラム上に「テロ攻撃をロシア自身のせいにするほど愚かな国家元首はゼレンスキー氏だけだ」と書き、ウクライナ指導者の「自己暴露」は必ずゼレンスキー氏を「破滅させる」と付け加えた。

ゼレンスキー大統領は最新の動画演説で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と「その他のクズども」が、襲撃事件の真犯人でありながら、事件の責任を他人に負わせようとしていることは「明らか」だ、と主張した。ゼレンスキー大統領はこの主張を展開する際、明らかに2000年代初頭の陰謀論に言及し、当時ロシアが耐えた一連のテロ攻撃は実際にはモスクワによって画策された、と主張した。しかし、そのような理論を裏付ける証拠はこれまでに提示されていない。

19:56 GMT

クラスノゴルスクのクロクス・シティ・ホールでの救出活動が終了した、とモスクワ州のアンドレイ・ヴォロビヨフ知事が発表した。しかし、瓦礫の中の捜索は今後も続く予定で、現場への接近を容易にするために救急隊が建物の壁に穴を開ける予定である、と同知事は述べた。

19:25 GMT

ロシア捜査委員会のアレクサンドル・バストリキン委員長は職員に対し、犠牲者が襲撃者から逃げるのを手伝ったコンサートホールのすべての訪問者と従業員を特定するよう指示した。同委員会は勇敢な民間人に大臣賞を授与することを求めている。

18:19 GMT

ロシア非常事態省はテロ攻撃の特定犠牲者のリストを更新し、コンサートホールで死亡した29人の名前を発表した。

18:12 GMT
襲撃当時コンサートホールで演奏する予定だったロックバンド「ピクニック」のマネージャーの1人、エカテリーナ・クシュナー氏が現在も行方不明である、と同バンドがソーシャルメディアへの投稿で発表した。

17:45 GMT

モスクワ州のアンドレイ・ヴォロビョフ知事は、救急隊が現場の瓦礫を完全に撤去するには数日かかるだろう、と述べた。

16:55 GMT

ロシア非常事態省は、甚大な被害を受けたクラスノゴルスクのクロクス・シティ・ホールを消防士らが消火したと発表した。被害の大きさにより重機の使用が不可能となったため、救助隊はコンサートホールの瓦礫を人力で掘り起こしている。

(ここに埋め込まれているテレグラムの投稿については、原文サイトを参照:訳者)

16:40 GMT

アントニー・ブリンケン米国務長官は声明で、米国はコンサートホール襲撃を「強く非難する」と述べた。 「我が国は、この凶悪な犯罪によって殺害され、被害を受けた人々の家族と愛する人たちに深い哀悼の意を表します。私たちはあらゆる形態のテロを非難し、この恐ろしい事件による人命の損失を悲しむロシア国民と連帯します」と付け加えた。

16:10 GMT

ロシア外務省は、民間人に対するテロ攻撃に関してモスクワに哀悼の意を表したすべての国と国際機関に感謝の意を表明した。

同省のマリア・ザハロワ報道官は声明で、「悲劇に直面して無関心でいられなかった皆様に心から感謝の意を表します」と述べた。

ロシアは長年にわたって国際テロと戦っており、この分野でのあらゆる努力を支援している、と彼女は指摘した。

「この悪との戦いは、国際社会のすべての健全な勢力の焦点であり続けなければなりません」とザハロワ報道官は付け加えた。

15:16 GMT

ロシア内務省は、国境近くのブリャンスク州で拘束された容疑者4人は全員外国人であると発表した。同省は、テロリストらがロシア国籍を取得したというネット上で広まっている噂に反論し、信頼できない情報源に依存しないよう国民に警告した。

14:43 GMT

EU外交政策責任者のジョセップ・ボレル氏は、クラスノゴルスクのクロクス・シティ・ホール襲撃事件を「凶悪な」犯罪であると非難した。

「テロは再び無防備な人々を標的にしています。国際社会はテロの惨禍に対してしっかりと団結し続けなければなりません」と彼はX(旧Twitter)上に書いた。

13:39 GMT

ロシアの調査委員会は、モスクワ近郊のクロクス・シティコンサートホールでの虐殺後の死者数が133人に達したと発表した。

全文はここ

13:35 GMT

ロシアのタチアナ・ゴリコワ副首相は、クロクス・シティホールへのテロ攻撃後、子ども3人を含む合計107人が病院に残っていると発表し、患者のうち15人が極めて重篤な状態で、うち42人が重篤であると付け加えた。

モスクワ地方保健省は先に、この銃撃により121人が負傷したと報告したが、このうち14人は入院の必要はなかったと発表した。

13:19 GMT

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はクロクス・シティホール庁舎襲撃事件を受けて国民に向けて演説し、その後モスクワとモスクワ地方で追加のテロ対策が実施されたと述べた。

「現在の主な目標は、この大虐殺の背後にいる人々が新たな犯罪を犯すのを防ぐことだ」と同大統領は強調した。

同大統領によると、クラスノゴルスクでの銃撃事件をめぐっては、襲撃の直接加害者4人を含む11人が拘束されたという。同氏は、容疑者4人はロシアからウクライナに向けて逃亡しようとしており、国境を越える準備が整っていたと付け加えた。

同大統領によると、捜査当局は現在、武器を隠し、車両を提供し、逃走経路を準備した「テロリスト」の共犯者の特定に取り組んでいるという。

12:34 GMT
ロシア調査委員会は、金曜日(3月22日)のテロ攻撃とクロクス・シティ・コンサートホールの火災による大規模な破壊の現場で活動する専門家の動画を公開した。

(ここに埋め込まれているテレグラムの投稿については、原文サイトを参照:訳者)

12:23 GMT

RTのマルガリータ・シモニャン編集長は、クロクスシティ・コンサートホールでの銃乱射事件の背後にあるテロ容疑者の一人の尋問の映像を投稿した。土曜日(3月23日)初め、ロシア連邦保安庁(FSB)は、攻撃の実行犯とされる4人を含む容疑者11人がウクライナ国境からほど近いブリャンスク州で拘束されたことを確認した。

金曜日(3月22日)の夜、クロクスシティホールの会場で何をしたのかと尋ねられると、容疑者はこう答えた。「私は...人々を撃ち殺した」と。容疑者は「お金のために」犯行に及んだと付け加え、 50万ルーブル(約82万円)を約束されていたと詳述した。

この映像の男はまた、首謀者とされる人物が襲撃場所について指示した、とも主張している。同容疑者は「そこにいる人々を殺すように…誰であろうと関係なく」と命令されていた、と述べた。

全文はこちら

2166-2.jpgクロクス・シティホール襲撃事件のテロリスト容疑者の一人。 ©テレグラム/マルガリータ・シモニャン

12:03 GMT

NATOはモスクワ郊外のクロクス・シティホールでの「コンサート参加者を狙った攻撃を明確に非難する」と米国主導軍事ブロックのファラー・ダフララ報道官が述べた。

「このような凶悪な犯罪を正当化できるものは何もない」とダフラッラー氏はX(旧Twitter)上に書いた。 NATOは犠牲者の遺族に「深い哀悼の意を表する」と付け加えた。

11:45 GMT

金曜日(3月22日)の夜にクロクス・シティホールで公演する予定だったロシアのロックバンド「ピクニック」はソーシャルメディアで声明を発表し、犠牲者の遺族に深い哀悼の意を表し、メンバーはテロ攻撃により負傷した人々の早期回復を祈っている、と述べた。1978年から活動を続けているこのバンドは「私たちはこの恐ろしい悲劇に深くショックを受けており、皆さんと一緒に追悼しています」と述べた。

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ステージ上の「ピクニック」のリーダー、エドモンド・シュクリャルスキー氏 © スプートニク / イリヤ・ピタレフ

10:14 GMT

ロシアの捜査委員会は、クロクス・シティホールでのテロ攻撃の現場でさらに多くの遺体が発見されたと発表した。これにより全体の死者数は115人となった、と当局は発表し、捜索救助活動は継続している、と付け加えた。

モスクワ地域保健省は以前、死者の中には少なくとも3人の子ともが含まれていると報告していた。同省の数値によると、少なくとも121人が負傷し、107人が入院を必要としている、という。

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銃撃事件と大火災が発生したクロクス市庁舎のコンサート会場。 © スプートニク / キリル・カリニコフ

10:02 GMT

ロシア連邦保安庁(FSB)は声明で、モスクワ郊外のコンサート会場「クロクス・シティホール」へのテロ攻撃で11人が拘束されたと発表した。声明によると、 逮捕された容疑者には「テロ攻撃に直接関与したテロリスト4人」が含まれている、という。

FSBによると、「テロリスト4人全員」はロシアとウクライナの国境に向かって車で逃走しようとしたところ、数時間以内にロシアのブリャンスク州で拘束された。同容疑者らはウクライナへの入国を意図しており、ウクライナ側に関連する連絡先があった、と付け加えた。

07:52 GMT

トビリシ当局はフェイスブック上の声明で、グルジアはモスクワ郊外のクロクス・シティホールでの「恐ろしいテロ行為を非難する」と述べた。グルジア政府は犠牲者の家族に哀悼の意を表し、負傷者の早期回復を願っている、と声明で述べた。

07:30 GMT

国際刑事警察機構のユルゲン・ストック事務局長は、国際刑事警察機構はクロクス・シティホール襲撃事件の捜査においてロシア当局を支援する用意がある、と述べた。「私はこの攻撃を強く非難します…無実の民間人に対するひどい行為でした」とストック氏はX(旧ツイッター)上に書き込み、同時に犠牲者の親族への哀悼の意を表明した。

06:51 GMT

RTやその他の報道機関の動画で見られるように、クロクス・シティホールへの襲撃で負傷した人々に献血するためにモスクワの病院の外に何百人もの人が並んでいる。モスクワ地域保健省が発表した負傷者一覧には140人以上の記載がある。数十人の犠牲者が重篤な状態にある、と言われている。死傷者の数に関する最新情報は間もなく発表される予定だ。

(ここに埋め込まれているテレグラムの投稿については、原文サイトを参照:訳者)

05:43 GMT

キプロスはクロクス・シティホールへのテロ攻撃の「悲劇的なニュースに衝撃を受けている」とキプロス外務省はX(旧ツイッター)上への声明で述べた。犠牲者の遺族に哀悼の意を表し、キプロス当局は「民間人に対する攻撃を強く非難する」と付け加えた。

05:36 GMT

北京のロシア大使館は、中国指導者のメッセージを引用し、クロッカス市庁舎への「重大なテロ攻撃」に関して、中国の習近平国家主席とロシアのウラジーミル・プーチン大統領と犠牲者の家族に哀悼の意を表した、と発表した。習主席はこの出来事に「衝撃を受けた」と語った。

同中国国家主席は「中国はあらゆる形態のテロに反対し、テロ攻撃を強く非難し、国家の安全と安定を確保するためのロシア政府の努力を断固支持します」と述べた。

04:08 GMT

MV-Lehti(フィンランドのニュースサイト)のフィンランド人編集長ヤヌス・プトコネン氏はRTとのインタビューで、クロクス・シティホールを襲撃したテロリストらは軍事訓練を受けていたようだと示唆し、彼らが距離を保ち、平然と、一気に射撃をおこなったことを指摘した。

同氏はまた、この悲劇を「政治的攻撃」と表現し、何らかの形でウクライナ紛争に関連している可能性があることを示唆した。

以下のインタビュー全文を参照
(ここに埋め込まれているテレグラムの投稿については、原文サイトを参照:訳者)

03:49 GMT

クロクス・シティホール銃乱射事件で入院した被害者の一人は、死んだふりをして生き延びた、と語った。ロシアの複数の報道機関が報じたインタビューの中で、この女性は、襲撃犯が他の数人とともに彼女を発見し、被害者たちが命からがら逃げ出す中、すぐに発砲したことを回想した。

「私は地面に倒れ、死んだふりをしました。私の近くにいた女の子はおそらく殺されたのでしょう」とこの女性は言い、建物内で火災が燃え広がったとき、息をする機会を得るためにドアの近くに横たわったと付け加えた。この女性も火災による火傷を負ったが、数分後には這って出口に向かうことができた、と語った。

03:04 GMT

サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、クロクス・シティホール襲撃事件を受け、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と犠牲者の家族に哀悼の意を表し、この犯罪行為を強く非難した。

02:32 GMT

モスクワ州アンドレイ・ヴォロビョフ知事の報道機関は、クロクス・シティ・コンサートホールの惨状を示す現場の写真を共有した。

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© モスクワ州アンドレイ・ヴォロビョフ知事の報道機関

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© モスクワ州アンドレイ・ヴォロビョフ知事の報道機関

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© モスクワ州アンドレイ・ヴォロビョフ知事の報道機関

02:28 GMT

ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相やセルビアのアレクサンダー・ヴチッチ大統領からも哀悼の意が表明された。ヴチッチ氏は地元報道機関に対し、この悲劇が「計り知れない結果」をもたらす可能性があると、示唆した。

同大統領は、テロ攻撃を正確に指揮した勢力は不明だが、「ウクライナで紛争がさらに激化するのは間違いない」と指摘した。

02:26GMT

インドのナレンドラ・モディ首相はクロクス・シティホールへの「凶悪なテロ攻撃を強く非難」し、哀悼の意を表明した。「インドはこの悲しみの時にロシア連邦政府と国民と連帯します」と彼は付け加えた。

02:08 GMT

クロクス・シティ・コンサートホールの屋根は崩壊したが、火災はほぼ鎮火し、まだ燃えているのは少数の小さな箇所だけだとモスクワ州アンドレイ・ヴォロビョフ知事が述べた。同知事は、救急隊が瓦礫の撤去と消火活動を続けていると述べ、火災が最も激しかった大講堂に初動対応者が入ることができた、と付け加えた。

(ここに埋め込まれているテレグラムの投稿については、原文サイトを参照:訳者)
01:40 GMT

米国家安全保障会議のエイドリアン・ワトソン報道官は、米国政府はクロクス・シティホール銃乱射事件の前にモスクワで計画されているテロ攻撃に関する情報を入手していた、と主張した。CBSニュースが報じたように、このため米国政府はロシアの米国人とモスクワ当局の両方に警告を発した、と付け加えた。

01:27 GMT

ロシア下院のヴャチェスラフ・ヴォロディン議長は、クロクス・シティホール銃乱射事件の犠牲者に哀悼の意を表し、襲撃を仕掛けた「変質者」は排除されるべきだ、と強調した。

00:52 GMT

タチアナ・ゴリコワ副首相によると、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、クロクス・シティホール銃乱射事件の犠牲者を治療していた医師らに感謝の意を表し、負傷者の早期回復を願った、という。

00:47 GMT

ロシアの調査委員会は、クロッカス市庁舎で死者のうち1人の遺体から爆発物が発見されたという報道は確認できない、と述べた。

00:31 GMT

ロシアの調査委員会は暫定データを引用し、テロ攻撃による死者数を60人以上とし、その数はさらに増加する可能性があると付け加えた。

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©スクリーンショット/ロシア調査委員会/テレグラム

同庁はまた、他の法執行機関と同様に職員らが現場で作業を続け、死者の遺体や残された武器や弾薬などの証拠品を調べていることも指摘した。

00:30 GMT

クレムリンの報道機関によると、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、クロクス市での銃乱射事件について、モスクワ州のアンドレイ・ヴォロビョフ知事、タチアナ・ゴリコワ副首相、ロシアのミハイル・ムラシコ保健大臣らと協議した。3人の当局者はプーチン大統領に対し、テロ攻撃の犠牲者に対する継続的な支援について説明した。

クレムリンは、ロシア非常事態省(EMERCOM)のアレクサンドル・クレンコフ長官もプーチン大統領に支援の取り組みについて報告したと付け加えた。

00:00 GMT

首都の保健局によると、クロクス・シティ・コンサートホールでの銃乱射事件後、モスクワの病院に80人が入院した、という。

2024年3月22日
23:36 GMT


アントニオ・グテーレス国連事務総長は銃乱射事件の非難に加わり、犠牲者の家族とロシア国民と政府に深い哀悼の意を表明した。声明はグテーレス事務総長のファルハン・ハク副報道官が発表した。

23:30 GMT

国連安全保障理事会は、金曜日(3月22日)にモスクワ郊外のクロクス・シティホールで起きた「凶悪かつ卑劣なテロ攻撃」を最も強い言葉で非難する声明を発表した。この声明は、ロシアの代理であるドミトリー・ポリャンスキー国連次席大使によって共有された。

安全保障理事会の構成員らは犠牲者の親族とロシア国民に「深い同情」を表明するとともに、負傷者の早期回復を願った。彼らはまた、「これらの非難すべきテロ行為の加害者や主導者、資金提供者の責任を追及し、裁判にかけられる」必要性を強調した。

23:13 GMT

モスクワ市議会のアレクセイ・シャポシニコフ議長は、銃撃事件の犠牲者のために献血するよう同胞に呼び掛けた。同氏はテレグラム上に「これは非常に重要だ。何十人もの人々にとって生死にかかわる問題だ」と書き、首都圏にある4つのドナーセンターの住所を共有した。

22:39 GMT

ロシアのミハイル・ムラシュコ保健大臣は、モール近くの病院での記者会見で、襲撃以来、子ども5人を含む計115人が入院していると述べた。同大臣によると、約60人が重傷を負った。さらに30人が軽傷を負い治療を受けた、という。

21:59 GMT

非常事態省は、会場の火災は鎮火したと発表した。

21:46 GMT

モスクワ地域保健省は、この攻撃で負傷した144人のリストを公開した。

21:33 GMT

モスクワ地域保健省は、この攻撃で負傷した約37人が入院していると発表した。

21:08 GMT

金曜日(3月22日)の夜に演奏する予定だったバンド「ピクニック」のメンバーが襲撃後に行方不明になっている、とバンドのディレクターがRIAノーボスチ紙に語った。

20:46 GMT

ロシア緊急事態省が公開した映像によると、複数の消防ヘリコプターが現場に出動していることが示されている。火災の延焼はいまだ止められていない。

(ここに埋め込まれているテレグラムの投稿については、原文サイトを参照:訳者)

20:21 GMT

ロシア国家警備隊は現在、襲撃犯の捜索を行っているほか、モールから生存者を避難させていると述べた。

19:55 GMT

探知犬を連れた法執行官が、ショッピングモールの近くに駐車されている、ウクライナ発行の古いナンバープレートを載せた不審な白いバンを検査しているのが目撃された。

(ここに埋め込まれているテレグラムの投稿については、原文サイトを参照:訳者)
19:17 GMT

ロシア国内治安当局であるFSB(連邦保安庁)は、事件の暫定評価を引用し、この攻撃で少なくとも40人が死亡、100人以上が負傷した、と発表した。

19:00 GMT

火災は会場全体に急速に広がり、建物の上には黒煙と裸火の柱が立ち上っているのが見られる、と伝えられている。消火活動のため、少なくとも1機の消防ヘリコプターが現場に出動した。

18:50 GMT

ロシアの最も緊密な同盟国であるベラルーシはこの攻撃を強く非難し、同国の外務省は「何も」この攻撃を正当化することはできなかった、と述べた。

18:49 GMT

ホワイトハウスはショッピングモールへの襲撃を「ひどい事件だ」と非難した。国家安全保障会議のジョン・カービー報道官は記者団に対し、「映像はただただ恐ろしく、見るのが辛いだけです」と語った。同報道官はまた、米国はこの攻撃に関する情報を持っておらず、この攻撃がウクライナと何らかの関連があるとも考えていない、と主張した。

18:35 GMT

燃え盛るショッピングモールから新たな爆発が発生した、と報告された。しかし、現場のRT特派員はそのような主張を裏付けていない。

18:20 GMT

襲撃犯らは燃えている建物の中に立てこもった、と伝えられている。この組織は明らかに人質をとったり、声明を出そうとはせず、目撃した人々を射殺した。

18:20 GMT

この事件は大規模な緊急対応を引き起こし、多数の救急車と重武装した警察の特殊部隊が現場で発見された。

(ここに埋め込まれているテレグラムの投稿については、原文サイトを参照:訳者)

18:12 GMT

襲撃者らはコンサートホールに侵入し、逃走中のコンサート来場者を狙った。襲撃者らはホールにも放火し、現場では少なくとも1回の爆発があった、との報告がある。

18:10 GMT

報道によると、少なくとも10人が死亡、50人以上が負傷している、とのことで、モールでの襲撃と大規模火災の規模を考慮すると、その数はさらに増えることが予想されている。

18:01 GMT

ショッピングモールで大規模な火災が発生し、炎が建物の屋根を包み込み、建物の一部が崩壊した、と伝えられている。

17:38 GMT

明らかに防弾チョッキを着た複数の重武装した襲撃者が会場に侵入し、来場者を目撃すると銃撃し、非常に生々しい映像がオンライン番組で拡散した。

17:30 GMT

この襲撃事件が最初に報じられたのは、現地時間の午後8時過ぎ、ちょうどロシアを代表するロックバンド、ピクニックのコンサートが会場で始まろうとしていた頃だった。
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モスクワでの恐ろしいテロ攻撃—これまでに分かっていること

<記事原文 寺島先生推薦>
Deadly Moscow terrorist attack: What’s known so far
クラスノゴルスク虐殺に直接関与した4人を含む11人が拘束された、とロシア治安当局が発表
出典:RT 2024年3月23日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月25日


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@ スプートニク/マクシム・ブリノフ


金曜日(3月22日)遅く、モスクワ近郊の大きなコンサート会場が銃乱射事件の現場となった。この虐殺では子どもを含む100人以上が死亡し、ロシア現代史上最悪のテロ攻撃の一つとなった。

最新の推計によると、ロシアの首都郊外の大きな音楽会場であるクラスノゴルスクのクロクス・シティ・ホールを襲撃した武装集団による銃撃とそれに続く火災で、少なくとも133人が死亡、数十人が負傷したという。

詳細はまだ明らかになっていないが、ロシア連邦保安庁(FSB)によると、この攻撃は死傷者を最大化するよう慎重に計画されたものであるという。この事件については捜査が進行中である。これまでにわかっていることは以下のとおり。

加害者を拘留

FSBは土曜日(3月23日)の声明で、銃撃事件に直接関与したテロリスト4人を含む11人が拘束された、と発表した。

治安当局によると、銃撃に使用された武器は事前に保管庫に保管されていたという。

ロシアの捜査委員会はまた、クラスノゴルスクのクロクス・シティ・ホールの「テロ攻撃を行なった」容疑者4人が「ウクライナとの国境からそれほど遠くない」ブリャンスク州で拘束されたことを確認した。

当局によると、テロリストらはウクライナへの逃亡を計画していた、という。

死者数の増加

調査委員会によると、瓦礫の中からさらに多くの遺体が発見され、土曜日午後の時点で、この襲撃による死者数は少なくとも133人に上り、その中には子ども3人が含まれているという。モスクワ地方保健省は、少なくとも121人が負傷し、107人が入院を必要としていると発表した。現場では救急隊が活動を続けている。

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関連記事:Death toll in Moscow concert hall attack climbs to 133 – investigators

プーチン大統領の国民向け演説

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、クラスノゴルスクのクロクス・シティ・ホールのテロ攻撃を受けて国民に向けて演説した。同大統領は銃撃の犠牲者とその家族に哀悼の意を表し、この悲劇の責任者は全員処罰される、と述べた。

関与した襲撃犯は全員逮捕されており、治安部隊は更なる大量殺人からロシア国民を守るために全力を尽くしている、と同大統領は付け加えた。

いま重要なことは、この流血事件の背後にいる人物たちに新たな犯罪を起こさせないことである、とプーチン大統領は土曜日(3月23日)の演説で述べた。

テロ容疑者が取り調べを受ける

土曜日、RTのマルガリータ・シモニアン編集者は容疑者の1人の尋問の映像を投稿した。その映像の男は、50万ルーブル(約82万円)を約束された後に殺人を犯した、と主張している。同容疑者はまた、指示者が攻撃を行なう場所について指示した、と主張した。彼は「そこで人々を殺すよう命じられた…誰であろうと関係なく」と語った。同容疑者は、テロ行為は武器を提供した未知の人物によってテレグラム上で組織された、と主張した。

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関連記事:First interrogation of Moscow terrorist attack suspect (VIDEO)

無差別銃乱射事件

モスクワ西郊外のクラスノゴルスク市にあるクロクス・シティ・ホールが金曜(3月22日)夜、武装集団に襲撃された。ロシアのロックバンド「ピクニック」のコンサート前の出来事だった。収容人数約7500人の会場はほぼ満席となっていた。

襲撃犯らは会場の入り口で非武装の警備員を殺害し、会場を封鎖した後、会場内で暴れ続けた。

目撃者によると、犯人たちは視界に入った者に至近距離で発砲したという。その後、襲撃者らは建物に放火した。

炎はすぐに屋根を含む建物の大部分に広がった。消火のため複数の消防隊と航空機が出動した。非常事態省は、この7階建ての建物の約1万3000平方メートルが炎に包まれた、と発表した。

哀悼と非難

虐殺を受けて、世界中の政府がロシア国民への哀悼と支援のメッセージを送った。

国際機関やEU、NATO当局者はこのテロ攻撃を非難した。

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関連記事:Moscow terrorist attack: World sends condolences and condemnation

数百人の追悼者がメキシコやモルドバ、セルビア、カナダ、米国、アルゼンチンにあるモスクワの在外公館に花を手向けた。

いっぽう、銃乱射事件の犠牲者に献血するため、数十人のモスクワ市民が市内の病院に並んでいる。

米国のセキュリティ警告

今月初め、米国はロシア在住の米国市民に警告を発し、公共の場所や大規模な集会を避けるよう促していた。在露米大使館は、「過激派」がモスクワでの差し迫った攻撃計画を立てている、と主張した。他のいくつかの大使館もこれに続き、同様の警告を発した。しかし、ホワイトハウス顧問のジョン・カービー氏は、ワシントンは金曜日(3月22日)の銃撃事件について具体的な「事前知識」を持っていなかった、と述べた。
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恐るべき研究結果:米国の平均寿命が急落し続けている

<記事原文 寺島先生推薦>
Shocking Finding: Life Expectancy in America Continues to Plummet
筆者:ジョゼフ・マーコラ(Joseph Mercola)博士
出典:グローバル・リサーチ(Global Research) 2024年3月3日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月24日


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暫定推計と最終報告によれば、アメリカ人の平均寿命が著しく低下しており、若い成人が超過死亡の大きな割合を占めていることが明らかになっている。

米国における男女間の平均余命格差は1996年以来最も拡大しているが、その主な原因はCOVID-19と麻薬の一種であるオピオイドによる危機であるとされ、医療治療や社会構造における問題点として大きく取り上げられている。

歴史的な傾向とは逆に、死亡の割合は現在、若年および労働年齢層の米国人に偏って高く、根本的な原因や公衆衛生上の対応策の欠如についての懸念が広がっている。

検閲や論争が巻き起こる中、過剰な死亡の根本原因を理解するために、ロックダウン措置や治療手順、ワクチン配備を含むパンデミック管理に関する徹底的な調査を求める声が高まっている。

世界の医療に対する新たな取り組みをおこなう必要性は、現在の危機によって浮き彫りになっている。私の近刊『選択の力』で提唱しているように、健康格差への対処と、意識とのつながりを取り戻すことに重点を置くべきである。




*
結局のところ、2023年最大のニュースのひとつが見出しを飾ることはなかったが、その意味を考えれば理解できる。世界は今、世界的な危機の余波と闘っている。政府やマスメディアが巧妙かつ綿密に仕組んだ洗脳戦略のおかげで、この危機は大衆には知られていない。

2022年8月、2021年の平均余命の暫定推定値(1,2)が発表され、アメリカ人は2020年と2021年の間に平均余命が3年近く短くなったことが明らかになった。2022年12月、死亡率の最終報告(3)が発表され、この衝撃的な数値が確認された。

2019年、アメリカ人の全民族の平均寿命は78.8歳であった(4)。2020年末には77.0歳、(5)、2021年末には76.4歳に低下した(6)。米国疾病管理予防センターが2021年の死亡率最終報告書の中で指摘しているように(7)、「2020年から2021年にかけて、1歳以上の各年齢層で死亡率が上昇した...。」

当時、バージニア・コモンウェルス大学の公衆医療学のスティーブン・ウールフ教授は、USAトゥデイ紙の取材にこう答えていた(8)。「この数値が持つ意味は、この四半世紀に達成された医療における前進が、抹消されてしまった、ということです」と。

COVIDが転換点だった

COVID-19パンデミックが、人類史上における転換点となり、いま私たちが収集している数値は、政府による不合理な措置がもたらした悪影響を文書化しているだけに過ぎない。事実上、誰も話題にしていない大きなニュースとは、a) 男性平均寿命が女性平均寿命よりもずっと低下していること、b)若年層及び労働年齢層の過剰死亡件数が大量に生じていること(9)、という2点だ。

こんなニュースは、すべての主流報道機関において見出しを飾って当たり前なのだが、そうはならず、そのような報道が抑え込まれている理由はおそらく、このような状況になったことには、パンデミック時の様々な措置が大きな役割を果たしたからだ、と思われる。私も、ジミー・ドア氏によるピエール・コリー医師とのインタビュー(上記動画を参照)を見るまではそのことに気づけなかった。2023年11月にJAMAインターナル医学誌に掲載された論文(10,11,12,13)にはこうある。

「米国における出生時の平均寿命は、2年連続低下しており、78.8歳(2019年)が77.0歳(2020年)、76.1歳(2021年)となった。また男性平均寿命と女性平均寿命の格差が5.8歳となり、1996年以来最大となり、2010年時点での4.8歳から大きく拡大している。」

「一世紀以上のあいだ、米国女性は米国男性よりも長寿であるが、その理由は心血管系の癌や肺癌による死因が少なかったからだが、それは男女間の喫煙習慣の割合に違いにあるところが大きい。本研究は2010年から2021年の間における、COVID-19などやそれ以外の根底にある死因が、性別間の平均寿命の格差拡大にどう影響を与えたのかを体系的に研究したものである。」

オピオイド危機がさらにこの兆候を顕著にしており、薬物の過剰摂取や事故、自殺により男性平均寿命が短くなっている。絶望死とは、自殺や薬物乱用、アルコール性肝疾患の増加を包括する言葉で、しばしば経済的苦難やうつ病、ストレスと関連している。

これらの死亡事例は特に男性において顕著に生じており、性別間の平均寿命格差において大きな変化をもたらしている。様々な研究により明らかになってきた厳しい現実は、まさに労働年齢層の男性が、ますますCOVID-19の危機の被害を被っている、という事実である。

平均寿命の男女間格差の拡大

この慎重に工作された手口の創造者は、恐ろしいほどの精度でこのような結果を生み出したのだ。その目的は、単にウイルスを蔓延させることだけではなく、医学治療の入手方法や公衆医療対策などの条件をかえることにより、前例のない抑圧に対する社会構造の抵抗力や医学治療体系の適応力を試すことにある。

このパンデミックが不釣り合いに男性に悪影響を及ぼした理由は、生物学的要因だけではなく、その社会的そして行動的の特性にもある。例えば、男性が医療支援を受けることを避けたり、危険度の高い行為をおこなう傾向があることが、男女間の平均寿命において格差が見られる大きな要因であるようだ。

世界がパンデミックの波から抜けつつあるなか、いま私たちは医学治療や雇用、社会による支援体制の基本的な側面について考え直すことを余儀なくされている。先述のJAMA誌掲載論文で詳述されているとおり、米国における男女間の平均寿命格差(具体的には6歳近い格差)は、1996年以来最大(14)となっている。

「平均寿命の男女間格差は、2010年から2019年の間に0.23歳、2019年から2021年の間には0.70歳広がった。COVID-19蔓延前の2020年においては、男女間の平均寿命格差を広げる最大の要因は、予期せぬ怪我や糖尿病、自殺、被殺、心臓病などだった。

男女間の年齢調整死亡率*は、2010年から2021年で、10万人あたり252人から315人に増加したが、ずっとその要因となってきたのは心臓病で、COVID-19や不慮の怪我、その他の死因が格差を拡大させた。
*年齢構成の異なる集団について死亡状況の比較ができるように年齢構成を調整した死亡率のこと。

この分析により、COVID-19と薬物の過剰摂取の伝染が、近年の平均寿命における男女間格差拡大の主要因になったことがわかった。」

若年層米国民の死亡件数が驚くべき発生頻度で生じている

2023年12月12日付けのヒル誌に掲載された記事(15)において、コーリー博士はさらに生命表*に基づく数値を研究し、さらなる驚愕すべき変化について明らかにした。それは、現在の死亡件数の割合が若年層や労働年齢層に不釣り合いに偏っている、という事実だ。この層は、かつては米国社会において、健康で活力的である典型的な層だった。米国疾病予防管理センターが、9月に過剰死亡件数ウェブページを保管扱いし、今後更新しないことを決定したことも、この困惑させられるような状況の謎を深めている。
*ある期間における死亡状況(年齢別死亡率)が今後変化しないと仮定したときに、各年齢の者が1年以内に死亡する確率や平均してあと何年生きられるかという期待値などを死亡率や平均余命などの指標(生命関数)によって表したもの

保険業界が受けている経済的影響は大きい。2020年以来死亡件数が急増し、1918のインフルエンザ大流行以降最大の増加を見せ、新たな健康脅威から被保険者を守るための早期に警告する体制作りの必要性を求める声が高まっている。コーリー博士は以下のように記述している(16)。

「パンデミック初期のころとはちがい、これらの死因は高齢層での主要な死因ではなくなっている。アクチュアリー(保険経理)会の新しい報告書によると、65歳以上の2023年第2四半期の死亡者数は、パンデミック前の標準を6%下回ったという。

死亡率は35歳から44歳の被保険者で26%、25歳から34歳では19%高く、2021年第3四半期にピークに達した死亡急増は、それぞれ通常を101%、79%上回るという驚異的な数字だった。」

興味深いことに、死亡率の増加は高齢者に限ったことではなく、保険に加入している若年層で著しく高くなっている。この変化は、COVID-19にとどまらず、肝臓や腎臓、心血管疾患、糖尿病、薬物の過剰摂取の増加など、死因について重大な問題を提起している。

このような状況については、徹底的な調査が求められるはずだ。かつてパンデミック対策の最前線にいたはずの公衆衛生当局が、なぜこのような過剰な死へ、誰の目にも明らかなように、対応しなかったのだろうか。

パンデミック後の過剰死亡に関する英国の独立した公的調査は著しい対照を示しているが、それは米国でも、同様の厳格な調査が必要であることを浮き彫りにしている。このような調査により、潜在的な副作用に関する100万件を超える報告や、ワクチン接種後の症候群に関する新たな研究がある中で、ロックダウン措置や治療手順、ワクチンの迅速な配備など、パンデミックの管理を精査すべきである。

異論への検閲やパンデミック対策の強行は、危機の最中に下された決定についてさらなる懸念を抱かせる。保険数理人が2030年まで、特に若年被保険者の間で過剰死亡が続くと警告しているように、包括的な評価の必要性は明らかである。

この評価では、どの戦略が成功し、どの戦略が失敗したかを分析し、将来のパンデミックによりよく備え、社会のあらゆる層、特に最も弱い立場の人々を守る必要がある。

新しい視点が必要

この数年間、私が言ってきたことを裏付けるデータが集まりつつある今、私たちが騙されてきたこと、そしてその騙しの結果をいま、受け取っていることは、これ以上ないほど明白だ。

私の意図は、世界保健の新時代を切り開くことだ。つまり、健康格差の要因となっている複雑な網の目を認識し、それに対処することである。 その主な要因のひとつが、自己と意識の断絶である。

現在、新しい本『選択の力(The Power of Choice)』を書き終えているところだが、今後数か月以内に出版される予定だ。この本は、私たちが現在陥っている絶望的な状況をもたらした根本的な問題に取り組む独創的な作品となるように設計されている。多くの意味で、この危機から抜け出す方法についての指南書となろう。

*

Notes
1, 6 CDC Provisional Life Expectancy Estimates for 2021, August 2022
2 New York Times August 31, 2022 (Archived)
3, 5, 7 CDC NCHS Data Brief December 2022
4 CDC Press release July 21, 2021
8 USA Today December 22, 2022
9, 15, 16 The Hill December 12, 2023
10, 14 JAMA Internal Medicine November 2023; 184(1)
11 Harvard Press Release November 13, 2023
12 STAT News November 13, 2023
13 Medical Xpress November 13, 2023
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ロシア流の民主主義

<記事原文 寺島先生推薦>
Democracy, Russian Style
筆者:スコット・リッター (SCOTT RITTER)
出典:Scott Ritter Extra   2024年3月21日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月24日


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2024年ロシア大統領選挙でオンライン投票するプーチン大統領


ロシアは、今後6年間の国家内部の方向性を決定づけ、そうすることで今後数十年間の世界的な変革の原動力となる、3日間の選挙過程を終えたばかりだ。ロシアの有権者数は約1億1230万人。3月15日から17日にかけて、そのうちの77%強が、今後6年間の大統領を決めるための投票所に足を運んだ。その中で88%以上という圧倒的な人々が、現職のウラジーミル・プーチンに一票を投じた。

この選挙でどのような結果が出るか、疑う余地はなかった。ウラジーミル・プーチンは必ず再選を果たすだろう、と思われていた。

今回の選挙は個人に対する信頼投票以上の意味を持っていた。ウラジーミル・プーチンは、今世紀に入って以来ロシアを治める支配的な政治勢力であり、意志の力によって1990年代の暗黒の破局からロシアを抜け出させ、ロシアを現代で最も強力で影響力のある国のひとつにした人物である。

この選挙は、ウクライナ戦争に関する信託ではなかった。この問題は2022年秋に決着がつき、ウクライナに対する短期間の軍事作戦として想定されていたものが、西側諸国に対する、より大規模で長期にわたる軍事闘争へと変化したため、ロシアは兵力増員と軍事産業能力を動員せざるを得なくなったのである。

簡単に言えば、ウクライナ紛争は2024年の投票対象ではなかった。

投票が何であったのか、それはロシアの未来だった。

ウラジーミル・プーチンは71歳。プーチンの勝利で、もう6年の任期が確保された。この任期が終わる2030年、プーチンは77歳である。

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レオニード・ブレジネフ元ソ連首相

ロシア人は歴史をよく学んでおり、1960年代半ばにレオニード・ブレジネフの指導下で始まったソ連の停滞がもたらした悲しい遺産をよく知っている。ブレジネフは75歳で、心身ともに衰弱していた。彼の後任はユーリ・アンドロポフで、彼はその2年後に69歳で死去した。コンスタンティン・チェルネンコがその後任となったが、1985年73歳で死去した。

ウラジーミル・プーチンが残りの任期中、現在の肉体的・精神的健康レベルを維持できないとは考えられない。しかし、結局のところ、人はみな平等につくられたのであり、プーチンのような特別な人物であっても、時の流れは誰にでも重くのしかかる。

ウラジーミル・プーチンは過去四半世紀の間、ロシアを復興の道へと導くために、顧問や役人からなる中核的なチームを頼りにしてきた。このチームが非常に有能であることは証明されているが、このチームもまた、「灰は灰に、塵は塵に」*という人間存在を支配する自然の法則に従う。
*「お前は顔に汗を流してパンを得る。土に返るときまで。お前がそこから取られた土に。塵にすぎないお前は塵に返る。」(創世記3章19節)

人は永遠に生きられない。

しかし、ロシアを構成する人々の心の中では、ロシアは永遠である。

米国を中心とする西側諸国がロシアをバラバラにすることでロシアを沈没させようと謀った1990年代の窮乏生活から、プーチンがロシアを救った経験から考えると、彼は、歴史の教訓をよく理解している。支配階級のエリートが、その座を誰が引き継いだらいいか考えずに、権力に長くしがみつくとどうなるかということを。

ミハイル・ゴルバチョフはロシア(ソ連)をソ連の停滞期から抜け出させようとした。彼はよく練られた考えもなしに、受け身的な方法で対処した。その結果、ソ連は崩壊し、1990年代の恐ろしい10年間が始まった。

ウラジーミル・プーチンがこれからの6年間を、単に見事な在任期間の継続として取り組むとすれば、彼はロシアを歴史的前例という過酷な愛人と衝突する道に導くことになるだろう。つまり、老齢化した男が老齢化した政府システムのトップに立ち、避けられない運命の定めが到来したときに、どのように進むかについて明確な計画を持たないままだとどうなるか、ということだ。

要するに、プーチンが2030年にロシア大統領としてさらに6年の任期を求めざるを得ない状況になった場合、ロシアは新たな停滞期に沈み、プーチン支配の30年間で得たものが無駄になり、1990年代並みの社会崩壊の可能性が現実味を帯びてくる可能性が高いということだ。

だからこそ、2024年のロシア大統領選挙から浮かび上がる重要な統計は、ウラジーミル・プーチンを支持する票を投じた有権者の88%ではなく、ロシア国家への支持を表明するために集まった有権者の77%なのである。有権者の投票率は常に、有権者個々の信任の反映とみなされ、投票によって維持される政治体制が、自分たちの住む国の将来像を最もよく反映してきた。

ちなみに、2020年のアメリカ大統領選挙では、有権者の投票率が過去最高の66%を記録した。

2024年のロシア大統領選挙は、それを11ポイント上回った。

つまり、ロシア国民は、71歳のウラジーミル・プーチンが、過去の過ちを繰り返すような歴史的必然の道を導くことはないと確信しているのだ。むしろ、ウラジーミル・プーチンがこれまでロシアを導いてきたことに自信を持つロシア国民は、プーチン後のロシアにおいて、ロシアがこれらの利益を維持し、繁栄し続けることができるよう、ロシアを最もよい位置に導く人物がプーチンだと信じているのだ。

2024年のロシア大統領選挙は、現状を維持するための投票ではなかった。

変化のための投票だった。

この変化を監督するのは、ウラジーミル・プーチンである。

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2024年大統領選でのウラジーミル・プーチンの勝利後、赤の広場で行われた選挙後の集会


今後数カ月で、国の支配層の交代が始まると予想される。今日のロシアを築き上げたプ―チンの補佐役であったロシアの指導層が一歩退くのだ。ウラジーミル・プーチンの指導とリーダーシップの下で、プーチンが大統領でなくなった後にロシアを待ち受けているいかなる課題にも備える若い世代のロシア指導者たちが取って代わることになる。

この変化がどのように現れるのか。おそらく、政治エリートはモスクワ中心からではなく、ロシア各地域から出てくることになるだろう。しかし、それはまだわからない。変化はあるだろう。変化は不可避なのだから。

そして、この変化は投票によってもたらされた。

西側諸国は2024年のロシア大統領選挙を見せかけのものと揶揄した。

これほど真実からかけ離れたことはない。

2024年のロシア大統領選挙は、繁栄する民主主義の現れであったが、ロシア人によって定義された民主主義であった。

西側諸国は、ウラジーミル・プーチンに投票した88%のロシア人に焦点を当て、国民に1つの選択肢しか与えなかったシステムにおける当然の結論に過ぎないと揶揄する。

しかし、ロシアの民主主義は77%という選挙参加率によって定義され、ウラジーミル・プーチンがもたらした強固な地位から脱却し、プーチン後の時代にもこの強さを維持するロシア国家の能力に対する国民の信頼を反映している。

それは、過去を再認識することで定義された投票ではなく、むしろ、ロシア国家の未来のために必要な重要な変化を行う権限を政府に与えた投票だった。

それは、ロシア流の民主主義の完璧な表現だった。
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「今回の選挙運動は国民投票のような性質を持っていた」: 2024 年ロシア大統領選挙への手引き

<記事原文 寺島先生推薦>
‘This time the campaign has had a referendum-like nature’: Your guide to Russia’s 2024 Presidential Election
ロシア人が指導者を選ぶために投票所に向かう際に知っておくべきことすべて
出典:RT 2024年3月15日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月24日


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ロシア・ルガンスク人民共和国ルガンスクの大統領選挙中、投票所で投票する女性。© スタニスラフ・クラシルニコフ/スプートニク


2024年ロシア大統領選挙の投票は金曜日(3月15日)に始まり、日曜日(3月17日)まで続く。多くの意味で、それはこの国の歴史の中で唯一無二の出来事となるだろう。

今回は、2020年に憲法が改正されて以来、初めて行なわれる大統領選挙となる。2020年の憲法改正で、現国家元首ウラジーミル・プーチン氏(が今回の選挙で勝利すれば)それまでの任期が「ゼロ」となり、同氏は5回目の出馬が可能となった。また、投票所だけでなくオンラインでも3日間にわたって投票が行われる初めての大統領選挙でもある。さらに、これは、ロシアの新たな4つの地域、ヘルソンとザポリージャ、ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国の住民が参加する初めての選挙である。

この記事では、候補者や選挙手順、結果予想まで、投票について知っておくべきすべてを詳しく解説する。


通常よりも控えめな選挙運動

ロシアが紛争の最中に大統領選挙を実施したのは今回が初めてではない。1996年と2000年の選挙ではプーチン氏が初めて大統領に選出されたが、後者はチェチェン戦争中に行なわれた。それにもかかわらず、現在のウクライナとの紛争の規模は、1990年代に起こったこととは比較できないくらい大きい。1990年代に北コーカサスのチェチェンでの軍事行動はロシア国内の問題であり、対テロ戦という色彩が濃かった。

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関連記事:Polls open in Russian presidential election

おそらくこの理由から、今回の選挙に向けた選挙運動はやや控えめなものとなった。主な争点の一つは、野党政治家がどれだけの署名を集めることができるか、そしてそのうちのどの候補者が中央選挙管理委員会(CEC)に登録されるかということであった。イリーナ・スビリドワ氏(タンボフ出身の若い母親)やウラジオストク生まれの環境活動家アナトリー・バタシェフ氏など一部の有望な候補者は必要な数の署名を集めることができなかった一方、著名なリベラル派のボリス・ナデジディン氏やシベリアの共産主義者セルゲイ・マレンコーヴィチ氏などは、書類に多くの誤りがあり、CECの要件を満たしていなかったため、登録は却下された。また、超保守派のセルゲイ・バブリン氏やロシアの石工長アンドレイ・ボグダノフのように、署名の検証が始まる前から立候補を取り下げる者もいた。

その結果、CECの要件を満たした大きな政党から出馬しない候補はプーチン氏のみとなった。2018年同様、彼は無所属で出馬し、政権与党の「統一ロシア」と野党の「公正ロシア」、「真実とロージナのため」という3つの政党から支持を受けている。

プーチン氏は他の3人の政治家と対決することになるが、いずれも議会政党の出身であるため、推薦のための署名集めは必要ない。そのうち2人は大統領選挙初挑戦で、もう1人は20年ぶりの復帰である。


ニコライ・ハリトーノフ候補

共産党のニコライ・ハリトーノフ氏は、今回の候補者のなかで唯一過去に大統領選挙を経験している人物である。昨年10月に75歳となった。今回の選挙戦での最年長候補である。

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ロシア・モスクワで、祖国防衛の日を記念してクレムリンの壁際にある無名兵士の墓で行われた献花式に出席したロシア共産党中央委員会議長で党大統領候補のニコライ・ハリトーノフ氏。 Ramil Sitdikov / スプートニク

ハリトーノフ氏はロシア政界のベテランで、ソ連崩壊前の1990年に国会議員に初当選した。1990年代の初期にはロシア農業党の創設者の一人となったが、2007年に離党し、共産党に合流した。現国会では極東・北極圏開発委員会の委員長を務める。

ハリトーノフ氏が立候補したことに関して最も驚かされたことは、長年共産党を率いてきたゲンナジー・ジュガーノフ氏を差し置いて指名されたことだ。共産党は以前からハリトーノフ氏に賭けており、2004年の選挙では正式に入党する前から候補者に選んでいた。その時は13.69%の得票率でプーチン氏に次ぐ2位だった。

今回、ハリトーノフ氏の選挙前の取り組みは「資本主義を試したが、もうたくさんだ!」である。同候補の主な提案は、累進課税の導入や低所得者への課税の廃止、定年年齢の引き下げなどである。同候補は、資本主義と社会主義の要素を組み合わせることができる中国を見習うべき例として挙げている。ハリトーノフ氏は、ロシアがWTOやIMFなど欧米主導の国際機関から脱退することを主張している。またウクライナ紛争については現政権の立場を支持している。

「我々には恐れるものはありませんが、自身と国を守るために必要なものは持っています。ロシアを征服できると考えている人たちは、大きな間違いをしていると、私たちはもう一度言う」とハリトーノフは宣言した。


レオニード・スルツキー候補

右翼自由民主党(LDPR)の長年の指導者であったウラジミール・ジリノフスキー氏が新型コロナウイルス感染症による合併症のため2022年に死去したとき、同党は誰が後継者となり国内最古の政党を代表するのかという問題に直面した。実際、ジリノフスキー氏は長年ロシア大統領選挙でおなじみの顔だった。しかし、自由民主党がレオニード・スルツキー氏を新党首に指名したとき、多くの人は驚かなかった。

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ロシアのモスクワでの選挙計画のプレゼンテーション時の演説中の2024年3月の選挙におけるロシア自由民主党(LDPR)からの大統領候補レオニード・スルツキー党首 ©グリゴリー・シソエフ/スプートニク

スルツキー氏は政治家としての経歴を通じてさまざまな役職を歴任し、欧州評議会(PACE)ロシア代表団の副団長やロシア平和基金の理事長を務めた。彼は「ジリノフスキーの遺産は生き続ける」「スルツキーは常に近くにある」という呼びかけ文句を掲げて大統領選挙運動を行なっている。

国際関係に関する国会委員会の委員長として、スルツキー氏は西側諸国を脅威とみなしながらも、アジア諸国との協力を拡大する政策を強く信じている。同氏は「外国工作員」に対する法整備強化や対ウクライナ軍事作戦の加速を求めるなど、多くの分野でタカ派とみられている。

スルツキー氏は、5年前、ウクライナは領土の一部を失い、いくつかの地域がロシアに加わるだろうと宣言した故ジリノフスキー氏の予言に同調した。スルツキー氏の選挙運動では、「ロシア兵器の勝利によってこの紛争を終わらせる」ために軍事攻勢を強化することが語られている。


ウラジスラフ・ダワンコフ候補

ウラジスラフ・ダワンコフ氏は40歳で、4人の大統領候補の中で最年少である。彼は、2021年の議会選挙に先立って創設され、5番目に議席の多い党となった新人民党の代表を務めている。議席獲得の5%の基準を超えたことで、ほぼ15年間続いてきた国家下院の4党構成を突き崩した。

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ロシアのモスクワで開催された新人民党大会に出席中のロシア国家院の党派閥第一副党首であり、2024年ロシア大統領選挙の同党候補者であるウラジスラフ・ダワンコフ氏。 ©キリル・ジコフ/スプートニク

ダワンコフ氏の政治家としての経歴は新人民党の創設から始まり、それ以前は事業や教育計画に携わっていた。2021年に州下院議員となり、予算・税制委員会および連邦予算支出を検討する委員会に加わった。また、統一ロシアのヴャチェスラフ・ヴォロージン議長の下で国家院副議長にも就任した。

ダワンコフ氏が重要な公職に立候補するのは、昨年のモスクワ市長選挙に参加し、得票率5.34%で4位に終わって以来2度目となる。同氏はリベラルな見解を推進してきたが、選挙戦の論点は主に経済問題に焦点を当てており、地方都市や地方に有利な税収の再分配や企業への恩恵の拡大、「大規模な経済恩赦」の実施などの提案が含まれている。

ダワンコフ氏は、ロシアを他のヨーロッパ諸国やアジアから切り離すことはできないと信じており、敵を探すのではなく、新たな友好国を探して互恵関係を築く必要がある、と主張している。ダワンコフ氏は、ロシア人およびロシアの他の先住民族の代表者の祖国復帰を簡素化し、外交政策の見直しを行うことを提案した。

同氏の選挙戦での論点は和平と交渉を中心にしているが、「我が国の条件にしたがって、一歩下がるものではない」とも断った上でのことである。同時に、西側諸国の多くはウクライナでの軍事行動を儲かるビジネスチャンスとみなしているため、西側諸国はまだ話し合いの準備ができていない、とも主張している。


ウラジーミル・プーチン候補

今回の選挙はこのロシアの現職指導者にとって5回目だが、これが最後ではない可能性も十分にある。2020年に採択された憲法修正案によると、今年勝利した場合、プーチン大統領は2030年の大統領選挙にも再び立候補できることになるからだ。

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ロシア・クラスノダール地方のシリウス連邦直轄領で開催される2024年世界青少年フェスティバル(WYF)の会場を訪問中のロシアのウラジーミル・プーチン大統領。 ©ミハイル・メッツェル/プール/スプートニク

プーチン大統領は4期にわたって国家の実権を握っており、これに首相としての約5年間も加えることができる。同氏は、西側ジャーナリストが「プーチン氏とは誰なのか」としか尋ねることのできなかったソ連治安局の無名の職員から長い道のりを辿り、世界的に地位のある政治家となった。

プーチン大統領の新任期計画の大部分は、連邦議会での最近の演説で概説された。プーチン大統領は、国とその指導者が直面する主な課題の中で、貧困との闘いや子どもを持つ家族の支援、特に技術・科学産業におけるロシアの経済的独立性の強化を挙げた。今後6年間の同氏の計画には、国のインフラの開発と大規模な近代化、税制改革が含まれている。

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軍事も主題である。プーチン大統領によれば、ウクライナ紛争はロシアにとって存亡に関わる重要なものであり、ロシア政府の目標は完全に達成されなければならない、という。同時にプーチン大統領は、ロシアが交渉の可能性を排除していないことを強調した。外交政策では、多極化した世界とそれを望む国々との協力を支持している。


予測

今週初め、全ロシア世論研究センター(VCIOM)、世論財団(FOM)、ソーシャルマーケティング研究所(INSOMAR)がそれぞれ投票結果の予測を発表した。これらの組織の総合評価によれば、投票率は70%を超え、プーチン大統領が80%以上の票を獲得することになるだろう、とのことである。残りの候補者は接戦となっているが、現時点ではハリトーノフ氏が2位に終わると予想されている。専門家らは予想される結果について、「戦時のため国家が一団となる時期にあること」やプーチン氏以外に魅力的な候補者いないことなど、さまざまな理由を挙げている。

具体的には、VCIOM は投票率が 71% で、プーチン大統領は得票率の82%、ハリトーノフ氏は6%。ダワンコフ氏は6%(ただし共産党からの候補者のハリトーノフ氏よりわずかに少ない)、スルツキーは5%で、無効票が1%になる、と予想している。

FOMによると、予想投票率は69.8%で、プーチン大統領が80.8%の票を獲得するだろう、と予想している。 VCIOMと同様に、他の候補者間は僅差になる、とのことで、ハリトーノフ氏が5.7%で2位、次いでスルツキー氏(5.6%)、ダワンコフ氏(4.6%)、無効票(3.3%)、という予想になっている。

INSOMARも同様の予想を発表し、投票率は71.7%、プーチン大統領は80.2%、ハリトーノフ氏は6.3%、スルツキー氏は5.6%、ダワンコフ氏は5.1%、そして無効票が2.8%、とのことだ。

VCIOMの責任者であるヴァレリー・フェドロフ氏は以下のような考え方を述べた。「この選挙を理解する鍵は、今回の選挙が住民投票のような性質であることにあります。まさにそのように設計された選挙なのです。『特別軍事作戦』が2年間にわたって行なわれ、この先どれくらい続くか不明であることを考えると、別の選挙体制はあり得ませんでした。このような状況では選挙を完全に中止する国もあることでしょう」と。

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政治結合センターのアレクセイ・チェスナコフ学術会議所長によると、プーチン大統領の大勝利が予想される、という。同所長はプーチン大統領の優位性が社会の統合に直接関係していると確信しており、選挙制度に対する高い信頼を示している。「指導者の資質を示したのはウラジーミル・プーチン氏だけだと言えます。第二層の候補者は政党との結びつきが強すぎるため、大統領選挙では少し足かせとなっています。選挙を妨害しようとする陰謀は、当該地域がどのように行動するかにかかっています。そういう意味では、ロシア連邦の一部として初めて大統領を選出する新しい地域での投票は興味深いです」との考えをチェスナコフ所長は述べた。


選挙の手順と今後のこと

史上初めて、ロシア大統領選挙の投票は金曜日(3月15日)から日曜日(3月17日)までの3日間に亘って行なわれる。伝統に則り、投票所の開所時間はロシア国内に11存在する時間帯に応じた現地時間8 時から 20 時までとされている。期日前投票はすでにロシアのいくつかの辺境地域で行なわれており、金曜日(3月15日)までに約200万人がすでに投票を済ませている。

ロシア大統領選挙では初めて遠隔電子投票も実施され、28地域の住民が利用できる。デジタル開発・通信・マスメディア省によると、300万人以上がこの形式の投票への参加を申請したという。海外にいるロシア人のために、144か国に281の投票所が設置されている。

候補者が勝者とみなされるには、半数以上の票を獲得する必要がある。それ以外の場合は、二次投票として決選投票が必要となる。開票はモスクワの標準時間より1時間遅れの同国最西端のカリーニングラード州の投票所閉鎖直後に始まる。

3月19日から21日までの期間は開票と結果の評価に割り当てられ、3月21日から28日までは結果の最終決定に割り当てられる。しかし実際には、最終決定がもっと早く起こる可能性がある。前回の大統領選挙の結果に関する中央選挙管理委員会の議定書は、投票終了から5日目の3月23日に署名された。
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ティモフェイ・ボルダチェフ:西側諸国は気に入らない結果が出れば、簡単に民主主義を捨てる

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Timofey Bordachev: The West loves democracy until it gets results it doesn’t like
1990年代初頭にソ連が崩壊して以来、米国とその同盟諸国はこの国の政治を操作しようとしてきた
筆者:ティモフェイ・ボルダチェフ(Timofey Bordachev)。ヴァルダイ・クラブ計画部長
出典:RT 2024年3月17日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月23日


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ロシアのモスクワの大統領選挙中に投票所で投票する男性。© スプートニク / マクシム・ブリノフ

冷戦後の米露関係の激動の歴史の中で最も興味深い事例の一つは、1993年の下院の自由選挙で、かつての与党共産党と国家主義的色彩の濃い自民党(LDPR)の代表がかなりの議席を獲得した後、ロシアへの財政援助を削減することを米国当局が決めたことである。外国における民意の結果に対して米国政府が見せたこのあからさまな反応は、西側諸国が、自分たちに依存していると見なす国々の民主主義制度の本質と直面する課題をどのように見ているかを示す好例である。

これが1990年代の米国と西ヨーロッパのロシア認識であり、ロシアの立法者に期待されていたのは、国外にいる管理者の計画で割り当てられた役割を無条件に果たすことだけだった。念頭に置いておくべきことは、いわゆるポスト共産主義諸国すべての議会と政府は、言われたことを忠実に実行することを期待されていた、という事実である。

ロシアの選挙の予期せぬ結果に対する失望は、ロシア当局の怒りを買うことになった。その結果、米国は、ロシア政府は西側にとって最も都合の良い方法ですべてを行なう気はない、と考えるようになったからだ。翌1994年にNATOの東方拡大に関する実質的な議論が開始されると、西側とロシアの関係の崩壊が始まった。

西側諸国は、その世界的支配の期間中、自らの政治文明の中で生まれた原則に対する不誠実さを、信じられないほど多くの例で示してきた。それゆえ、世界の他の国々が、社会制度の安定的な機能を保証する最も信頼できる方法として民主主義に期待し続けているのは驚くべきことである。特に、米国民や西ヨーロッパ諸国民自身が、民主主義や選挙は政治操作の道具であり、本質的な価値はないと私たちに信じ込ませるために最善を尽くしてきたことを考えれば、なおさらである。西欧の世界観では、民主主義にもとづくとされるこれらの社会制度は、第一に、その決定を常に世界情勢における国の位置と関連付け、第二に、エリート層や政府に対して外部からの支配の機会を提供するものとして機能している。

選挙制度の相互監視と選挙制度の質全般を相互評価する行為は、国家間の関係において最も議論を呼ぶ問題のひとつである。その第一の理由は、そうすることで、国連憲章に謳われ、国際秩序の基盤を構成する国家主権の基本原則との調和が非常に難しいからである。

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独立国家であれば、その内部の政治動向を外国からの監視の的にする必要はまったくないはずだ。古典的な国際政治学では、国家の内部で起こることを他国が「承認」することなどありえないのである。各国がそれぞれ自国内の正義を定義し、他国の人々はそれに留意しなければならないからだ。

しかし、20世紀の劇的な歴史により、ほとんどの国々に、自国の民主主義の手続きを国際的に正統化する必要性を認めさせることになった。この微妙な形の内政相互介入が使われるようになったのは、第二次世界大戦後のことだ。

西側諸国が結束してこのような相互監視体制をとることを決めた主な形式的理由には、1920年代から30年代にかけてドイツとイタリアで、民主的な手続きを用いて権力を握った勢力が世界大戦開始の原因になったことがあげられる。

NATO軍事同盟の創設や欧州評議会の設立、そしてそれに続く欧州統合の開始によって、西側諸国の大半は徐々に主権を失っていった。より一般的に言えば、対外的な正統性、つまり他者による承認は、歴史的に国家が他国と意思疎通を図るための重要な拠り所となった、ということだ。

しかし、この慣例はどこでも守られているわけではない。例えば、2020年に米国で行われた前回の大統領選挙では、外国からの監視員はわずか40人だけ参加したのだが、結果の正当性を疑問視する者はいなかった。それは単に、米国当局が他の監視員候補に招待状を送らなかったからだった。

2012年の米大統領選挙と連邦議会選挙の際、いくつかの州では、OSCE(欧州安全保障協力機構)の監視員は投獄を脅された上で投票所に近づくことを禁止された。もちろん、この時もこの欧州各国の代表は、組織的な違反を発見していない。

米国民は一般的に、同盟国の意見をかなり軽視する。米国における正統性の唯一の源泉は(少なくとも形式的には)自国民の意見であるため、他国民の態度や外部からの評価など誰もあまり気にしない。

これらの事例から実例を挙げるのは間違っているが、選挙監視の実践そのものには何の問題もない。市民社会間の対話を促進し、相互の信頼と開放性を高め、近隣諸国を代表する少数民族の権利保護にも役立つからだ。しかし、これはあくまでも基本的な機能を維持し、外交政策の道具とならない限りにおいての話である。冷戦終結後、西側諸国が行なってきた選挙監視や選挙の質の評価という実践は、まさにこのようなものであった。

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1990年に設立されたOSCEの民主制度・人権事務局(ODIHR)は、自身の存在意義をロシアや他の旧社会主義諸国の政治形態の民主主義に則った形への移行を直接「援助」する使命を帯びていることにある、としている。言い換えれば、内政に干渉することを完全に正当な行為であることを宣言している、ということだった。同時に、欧州評議会や欧州連合といった西側政府組織がこの分野においてその活動を強めることになった。

後者の場合、欧州議会は定期的に監視員を外国の選挙に派遣し、そのことについての報告書を用意しているのだが、こんなことは完全に馬鹿げたことに思える。事実、欧州議会は欧州連合(EU)の統治機関のひとつであり、重要な国家グループの協力組織である。その機能を通じて、欧州議会はその権限と資金を決定する国民と各国政府の利益を守る義務を負っている。EU条約の関連条文に基づいて運営されている。なぜ欧州議会議員がこれらの協定に署名していない国の内政について意見を述べるのか、まったく理解できない。 彼らの活動の目的は常に明確である。EUの友好諸国に政治的圧力をかける機会を作り、EUの交渉上の地位を向上させることである。

形式的には公平性を保つことになっている国際機関の活動に関しても、状況はあまり変わっていない。事実、OSCEや欧州評議会では、数の上ではNATOとEU諸国が完全に優位に立っていた。数年のうちに、NATOとEU諸国は選挙監視の分野で、単独で行動する他のすべての国の活動を独占することができるようになった。瞬く間に、この分野におけるOSCEと欧州評議会の活動全体が、狭い勢力団の利益のための道具となった。

これは、第二次世界大戦後に策定された相互選挙監視の基本原則を破壊するものである。外国人監視団の主な利点は、選挙に対する監視団の態度が中立であることであった。今や監視団は、ロシアや他の主権国家の国内政治との関係において、単に西側の利益を代弁しているにすぎない。当然のことながら、このような選挙監視は次第に、選挙制度の本質ではなく、西側諸国とその外部友好諸国との力関係によって結果が決まる政治的なかけひきへと変化している。

今、最も難しい問題は、選挙監視という制度をどうするかということである。不干渉と無関心の妥協点をどう見つけるかであるが、これはとりわけ自国の利益を損なうことになりかねない。例えば、ロシアと他の旧ソ連諸国は、互いの投票所に自国の代表が立ち会うという慣行を維持することができる。

友好諸国や国際機関から500人から1000人の監視員が今週末のロシア大統領選挙期間に出席することになるが、おそらくそれは最善を期してのことだろう。単に、相互に開かれているということは悪いことではないし、主権が尊重される条件下では、選挙監視を国際政治の道具と化している西側諸国にはできない事業を提供できるからだ。
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プーチン大統領、ナワリヌイとの囚人交換に同意したと明かす

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Putin reveals he agreed to swap Navalny
ロシア大統領は、西側諸国で拘束されている囚人と野党の人物を交換する用意があると述べた。
出典:RT 2024年3月17日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月22日


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ロシアの野党活動家アレクセイ・ナワリヌイ。スプートニク


ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、先月(2月)流刑地で死亡した野党活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏を、西側諸国で拘束されている囚人と交換することに基本的に同意していたことを明らかにした。

日曜日に支持者を前にしてプーチンは、ナワリヌイが亡くなる数日前に、ロシアの高官が囚人交換の提案を持ちかけていたと語った。ナワリヌイは2月、北極圏にあるポーラー・ウルフという流刑地で、詐欺事件に端を発する罪などで長期刑に服していた。

私にその話を持ちかけた人が最後まで言葉を言い終わらないうちに、私は『賛成だ』と言った。しかし、起こったことは起こった。

大統領は、どの囚人が、とか何人の収監中のロシア人と交換できたかについては言及しなかった。ナワリヌイが帰国せず、西側に留まることだけが交換の条件だっただろうと指摘した。



ナワリヌイがかつて代表を務めていたNGO、「反腐敗財団(FBK)」は以前、この野党の人物と、2021年後半にドイツで殺人罪の有罪判決を受けたロシア国籍のヴァディム・クラシコフとが交換されることになっており、これに関する話し合いは「最終段階にある」と主張していた。FBKの現代表であるマリア・ペフチフもまた、ナワリヌイは交換を阻止するために殺されたと主張している。モスクワはこの件に関するすべての非難を拒否し、捜査が終わるまで冷静さを保つよう呼びかけている。

プーチン大統領の発言は、大統領選挙で地滑り的勝利を収め、中央選挙管理委員会によれば、投票率74%の中、推定87%の得票率で5期目の任期を確保したときになされた後になされた。
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ロシア軍、ザポリージャ地域の別の入植地を解放 – 国防省

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Russian forces liberate another settlement in Zaporozhye region – MOD
ロシア政府、攻撃行動の成功によりミールノエ村は確保されたと発表。
出典:RT 2024年3月17日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月21日


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© スプートニク / パベル・リシツィン 


ロシア国防省は、ロシア軍がザポリージャ地方のミールノエ村をウクライナ軍から奪還した、と発表した。

軍は日曜日(3月17日)の声明で、この入植地はボストーク(東部)部隊による「攻撃行動の成功の結果」解放された、と述べた。

英語ではpeaceful(平和な)と訳されるミールノエは、ロシアとウクライナの紛争前の人口は約500人だった。

この村はフリアイポレから南西14キロメートル、ザポリージャの南東77キロメートルに位置する。フリアイポレとザポリージャは両市とも、依然としてウクライナの支配下にある。

同省はまた、過去24時間に行なわれたベルゴロド州でのウクライナの破壊工作員や偵察部隊によるロシア領土への侵入を試みは数回あったが、全て撃退された、と述べた。

関連記事: Long-range strikes, drone warfare and border escalation: Key events of the week in Russia-Ukraine conflict (VIDEOS)

ウクライナ軍はこの1週間、ほぼ毎日この地域でロシアへの侵入を試みてきたが、攻撃はすべて阻止された。ロシア当局によれば、ウクライナ側はこの過程で1500人以上の兵士と、戦車やAPC(装甲兵員輸送車)を含む数十台の軍用車両を失った、という。

ウラジーミル・プーチン大統領は水曜日(3月13日)、国営メディアとのインタビューで、ロシア軍は最近、ウクライナ紛争の「最前線全体に沿って前進している」と述べた。

2月にロシア軍は、ロシア領ドネツク人民共和国にあるウクライナの主要拠点であるアヴディイフカを占領するいっぽう、他の場所にある多数の小規模集落も制圧した。
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ウクライナ、ロシアの投票所を攻撃

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Ukraine attacking Russian polling stations – officials
ヘルソン地方とザポリージャ地方の選挙管理当局は、ウクライナによる攻撃で数人が負傷したと報告した。
出典:RT 2024年3月16日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月21日


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ロシア領となったザポリージャ州ベルジャーンシクでの大統領選挙中、投票所で投票する女性。© スプートニク/コンスタンチン・ミハルチェフスキー


ヘルソン地方とザポリージャ地方のロシア選挙管理委員会は、大統領選投票のために開設された投票所に対するウクライナによる複数の攻撃を報告した。

土曜日(3月16日)の朝、ウクライナ軍はザポリージャ州のブラゴヴェシチェンカ村の投票所を狙って無人機から爆発物を投下した、と地元の選挙管理官ナタリヤ・リャベンカヤ氏がタス通信に語った。

同氏は、現場に到着したロシア軍関係者の話として、それは「リン弾だった」と主張した。この攻撃による死傷者や物的損害は発生しなかった。

「私たちは脅しに怯(ひる)むことはありません。投票を希望する国民、すべての国民を受け入れるつもりです」とリャベンカヤ氏はタス通信に語った。

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©ソーシャルネットワーク

金曜日(3月15日)、ヘルソン地域の選挙管理委員会は、ウクライナ軍がカホフカ市とブリレフカ村の建物を砲撃し、不特定多数が負傷した、と発表した。

「残念なことに、国民の投票の自由はキエフ政権の喉に突き刺さった骨のようなものなのです」と同委員会はテレグラ厶上に投稿した。当局者らはまた、「敵がわれわれを脅迫しようとしている」にもかかわらず、地元住民が「このような重要な日に投票できる」よう作業を継続する、と誓った。

数分後、スカドフスク市の投票所の外のゴミ箱で即席爆発装置が爆発したが、この事件で死傷者は出なかった、と当局は報告した。

地元当局によると、投票2日目の土曜日(3月16日)のヘルソン地方の投票率は77%に達した。またザポリージャ州では、有権者の72%以上が投票した。

かつてウクライナだった2つの地域は、ドネツク人民共和国とルガンシク人民共和国とともに、住民投票を経て2022年末にロシアに加盟した。

関連記事:‘Neo-Nazi Kiev regime’ tried to disrupt Russian elections – Putin

現在行なわれている大統領選挙は3日間あり、3月15日に始まり、3月17日に終わる。。現職国家元首のウラジーミル・プーチン氏に加えて、レオニード・スルツキー氏、ニコライ・ハリトーノフ氏、ウラジスラフ・ダワンコフ氏という他の3人の候補者が国の最高職を争っている。
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ウクライナ砲撃でロシアの選挙事務員が死亡

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Russian election clerk killed in Ukrainian shelling – authorities
ウクライナがロシアの港湾都市ベルジャーンスクを攻撃、前線地域の他の場所でも重大な問題が報告されている、とロシア高官が語る
出典:RT 2024年3月17日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月21日


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© スプートニク / アレクサンドル・クリャジェフ


アレクサンドル・ゴロヴォイ第一副内務大臣は、ウクライナ軍の砲撃により、ロシアのザポリージャ州で大統領選挙を監督する女性職員が死亡した、と発表した。ロシア側は、ウクライナは投票を混乱させるためには手段を選ばない、と警告していた。

日曜日(3月17日)に中央選挙管理委員会で講演したゴロヴォイ氏は、ウクライナ側の攻撃により、最前線から約100キロ離れた港湾都市ベルジャーンシクで選挙管理委員会の係員が死亡したというニュースを発表した。同氏はその悲劇に関するそれ以上の詳細には触れなかった。

ザポリージャ州は、他の3つの旧ウクライナ領土と同様に、2022年秋のロシアへの編入に圧倒的多数で賛成票を投じた。ウクライナ当局も西側の支援諸国もその住民投票の結果を認めていない。

ゴロヴォイ氏はまた、地方レベルの選挙当局がカメンカ・ドネプロフスカヤ市やエネルゴダル市など、他の最前線地域で重大な問題に直面している、と指摘した。どちらもドニエプル川の左岸に位置し、後者にはヨーロッパ最大規模の原発であるザポリージャ原子力発電所もある。

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関連記事:Ukraine attacking Russian polling stations – officials

同第一内務副大臣によると、これらの地域では選挙管理委員会がすべての書類を持っての移転を余儀なくされた、という。

金曜日(3月15日)、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナがロシアの有権者を脅迫するために「多くの犯罪的であからさまな武装行為」を画策するだろう、と警告した。日曜日(3月17日)の朝、ヘルソン州とザポリージャ州の地方当局は、投票所への攻撃があり、数名が負傷したと報告した。

大統領選挙の投票は3月15日から17日まで行われた。全体の投票率は74%を超え、ほぼ半数が開票されており、現職のウラジーミル・プーチン氏の圧勝が広く予想されている。

ロシア中央選挙管理委員会によると、現時点ではプーチン大統領が推定得票率87%で選挙戦の先頭を走っており、共産党のニコライ・ハリトーノフ氏と新国民党のウラジスラフ・ダワンコフ氏がそれぞれ約4%で続いている。自由民主党のレオニード・スルツキー氏はこれまで得票率3.1%を獲得している。
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民主主義が機能している国、ロシア

<記事原文 寺島先生推薦>
Russia — A Democracy that Works
筆者:ポール・クレイグ・ロバーツ(Paul Craig Roberts )
出典:ポール・クレイグ・ロバーツ個人のブログ 2024年3月18日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月21日


75%の投票率で、投票者の87%がプーチンに投票した。

そう、この選挙では不正などなかった。米国民は自国の選挙で不正が横行することに慣れすぎてしまって、すべての外国でも同じように不正がおこなわれている、と勘違いしているようだ。愚かな米国報道機関は、即座に誰かに命じられたお題目を唱え始めた。「胡散臭い選挙だ」と。もちろんこれらの報道機関が、米国の選挙が胡散臭い、と報じることはない。たとえ、こっそりと投票総数が書き換えられることがあっても。

ロシアでこのような高い投票率が見られたのは、プーチンがバイデンではなく、ドナルド・レーガンのように国をまとめようとすることに焦点を置いている指導者だからだ。ロシアの国家的視点から考えれば、プーチンが言っていることと合致しないものはまずない。 先日プーチンがロシア国民に呼びかけた内容からわかることは、プーチンが心配していることや積極的に取り組もうとしていることは、家族や兵たちを支援することだ。自分の利益のために職に就いたり、その職を利用したりしようとしていない指導者を持つ国は、いまはほとんど存在しない。

ロシアと米国の関係に関しては、何の希望ももてない。米国の軍/安全保障複合体の予算と力や武器産業を取り囲む強力なロビー活動、選挙資金が提供されることで選ばれている議会、そしてCIA、FBIなどには敵が必要なのだ。ロシアは格好の敵だ。米国民は何十年間も続いた冷戦時代のせいで、「ロシアの脅威」というものが実在すると思い込まされてしまった。

ロシアの投票率が高いもうひとつの理由は、米国の対中東外交政策が、イスラエル系圧力団体に抑え込まれていることだ。このイスラエル系圧力団体は、米国軍産複合体につぐ2番目の力を有しており、しばしばこの両者は共闘する。イスラエルの中東における関心は、ロシアのものとは相容れない。イスラエルの関心はイランの破壊にあり、そうなればCIA子飼いの「イスラム教聖戦士たち」がロシア連邦内や旧ソ連中央アジア地方になだれ込む通路が生じてしまう。ウクライナの場合とは異なり、その数は多くなるだろう。

プーチンには善悪の概念がある。西側では悪と直面させられることを彼は学び始めている。ロシア正教会もそのことを理解し、プーチンを支援している。

20世紀の冷戦期に流れていた、ラジオ局の「ボイス・オブ・アメリカ」や「ラジオ・フリー・ヨーロッパ」からの宣伝にいまだに影響されているロシア国民もいる。しかしアレクセイ・ナワリヌイに対する政治的な支援が不足していた事実や、プーチンに反対する抗議活動への支援がなかった事実からすると、 ロシア国民は米帝国からの脅威に直面しているいま、国の団結が必要であることを理解しているようだ。

現在、米国において、民主党と企業は国境を広く開放することで、カネがかかる米国の被雇用者と共和党に投票する人々を、(不法移民者たちと)入れ替えようとしている。米国と西側社会全体の連帯はアイデンティティ政治により破壊された。西側社会においては自分の国の国民基盤を代表する政府は存在しない。各国政府が代表としているのは支配者層の利益だけだ。トランプ大統領はそれを変えようとしたが、その結果どうなったかは見ての通りだ。
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アレクセイ・ナワリヌイ:裏切り者の悲劇的な死(前編:その起源)

<記事原文 寺島先生推薦>
The Tragic Death of a Traitor Part One: Origins
筆者:スコット・リッター (SCOTT RITTER)
出典:Scott Ritter Extra   2024年2月21日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月21日


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逮捕されたアレクセイ・ナワリヌイ


西側諸国での人気が、ロシア国内での支持をはるかに上回っていたロシアの野党政治家アレクセイ・ナワリヌイが、ロシアの刑務所に収監中に死亡した。彼は詐欺と政治的過激主義の罪で合わせて30年半の刑に服していた。ナワリヌイと彼の支持者たちは、近年ロシアで最も声高にプーチン大統領を批判する人物として頭角を現していた彼を黙らせるためのでっち上げの告発に過ぎないと主張している。

ロシア連邦刑務局が発表した声明によると、「2024年2月16日、第3収容所において、アレクセイ・ナワリヌイ受刑者は散歩の後に気分が悪くなり、ほとんどすぐに意識を失った。施設の医療スタッフが直ちに到着し、救急隊が呼ばれた。必要なすべての蘇生措置が施されたが、良い結果は得られなかった。救急車の医師は、受刑者の死亡を確認した。死因は現在調査中である。

アレクセイ・ナワリヌイは死亡時47歳。妻のユリアと2人の子供が残された。

ナワリヌイは、モスクワの北東約2000キロに位置するヤマル・ネネツ自治管区の集落ハルプにあるIK-3刑務所で刑期を終えていた。そこで服役していた受刑者たちによると厳しく、残虐な刑務所であったという。

スコット・リッターがこの記事について『Ask the Inspector.』第136話(Ep. 136)で取り上げる。

ナワリヌイの死は欧米で広く非難され、ジョー・バイデン大統領もホワイトハウスのルーズベルト・ルームから長文の声明を発表した。ナワリヌイは「プーチン政権が行なっていた腐敗、暴力、そして...あらゆる悪事に勇敢に立ち向かった。それに対してプーチンは彼を毒殺した。逮捕させた。でっち上げの罪で起訴させた。彼は刑務所に入れられた。彼は隔離された。それでも彼はプーチンの嘘を告発することを止めなかった。」

バイデンは述べた。「刑務所の中でさえ、彼(ナワリヌイ)は力強く真実を訴えていた。そして、彼は2020年に暗殺未遂に遭い、危うく命を落とすところだった。しかし彼は、......彼はそのとき国外を旅行していた。そのまま国外に滞在せずに、彼はロシアに戻った。仕事を続ければ投獄されるか、殺される可能性が高いと知りながらロシアに戻ったが、とにかく彼は自分の国、ロシアを深く信じていたからだ。」

バイデンは、ナワリヌイの死の責任を、ロシアのプーチン大統領の足元に真っ向から投げつけた。「間違いはない。プーチンはナワリヌイの死に責任がある。プーチンには責任がある。ナワリヌイの身に起きたことは、プーチンの残忍さをさらに証明するものだ。ロシアでも、国内でも、世界のどこでも、誰も騙されてはならない。」 ナワリヌイは、「プーチンとは違って、多くのことを行なっていた。彼は勇敢だった。信念を持っていた。彼は、法の支配が存在し、それがすべての人に適用されるロシアを建設することに専念していた。ナワリヌイはそのロシアを信じていた。彼はそれが戦うに値する大義であり、明らかにそのために死ぬことさえあることを知っていた」。

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夫が亡くなった2024年2月16日、ミュンヘン安全保障会議でのユリア・ナワリヌイ

ナワリヌイの妻、ユリア・ナヴァルナヤは、カマラ・ハリス副大統領とアントニー・ブリンケン国務長官が出席したミュンヘン安全保障会議の前で、彼の死を訴えた。「私は、プーチンとその周囲全体、つまりプーチンの友人たちや政府に知ってほしいのです。そして、その日はすぐにやってくるでしょう」と彼女は宣言し、「ウラジーミル・プーチンは、彼らが私の国、私たちの国、つまりロシアに対して行なっているすべての恐怖の責任を負わなければなりません」と付け加えた。

歴史的にロシアと敵対してきた国々の指導者やメディアからも、同様の悲しみと支援の声が上がっている。ナワリヌイは、生きているときよりも、死んでいるときのほうがより多くの支持を集めることができたようだ。

ナワリヌイは、「ロシアの民主主義」の理想的な象徴として、神話に近い地位に昇格した。

しかし、真実は大きく異なる。

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アレクセイ・ナワリヌイと両親、弟のオレグ(1980年代半ば)。

ナワリヌイは1976年6月4日生まれ。父親はソ連陸軍のキャリア将校だった。ナワリヌイの母親によると、息子は夫がソ連の状況悪化について他のソ連軍将校と交わした会話を聞いて過激化したという。ナワリヌイは1998年にモスクワの人民友好大学で法律の学位を取得した後、2001年に国立金融アカデミーで経済学の修士号を取得した。在学中、ナワリヌイは政治に関わるようになり、1999年にリベラルな野党連合「ヤブロコ」に加入した。

「ヤブロコ(ロシア語で「リンゴ」を意味する)」は1993年、エリツィン大統領に反対するロシア下院の投票ブロックとして発足した。実際、1999年5月(ナワリヌイが加入した年)、「ヤブロコ」はエリツィン大統領の弾劾に賛成票を投じた(将来の政治的方向性を考えると皮肉なことだが、1999年8月、このブロックはウラジーミル・プーチンの首相選出にも賛成票を投じた)。1990年代の10年間は、ロシアの生活環境が大幅に悪化し、ロシアの政治、経済、社会のほぼすべての面で汚職が目立っていた。2001年12月、ヤブロコは政党登録を申請し、許可を得た。

ナワリヌイが政治的に成熟したのは、ロシアの民主主義機関がほとんど西側の機関によって組織され、資金を提供されていた時期であった。その使命は、「中央集権的な共産主義体制に代わって民主主義を構築する歴史的な機会を生かす」ことであり、「あらゆる民主的な制度、民主的なプロセス、民主的価値観」を創造し、育成することによって、「ロシア政府の対応力と実効性」を高めることであった。このプログラムは、「民主化推進派の政治活動家や政党、改革推進派の労働組合、裁判所制度、法科大学院、政府高官、メディアのメンバー」に対して、財政的・経営的支援を提供した。米国が資金提供したロシアにおける政党育成プログラムは、全米民主化基金(NED)と米国国際開発庁(USAID)の助成金により、全米民主主義研究所(NDI)と国際共和国研究所(IRI)によって実施された。

2005年、ナワリヌイはもう一人の政治活動家マリア・ガイダル(元首相イーゴリ・ガイダルの娘で、政党「右派連合」のメンバー)と協力し、「民主的代替案」(DA)と呼ばれる連合を結成した。マリア・ガイダルは2005年に米国政府高官に対して行なった声明で、資金提供のほとんどがNEDからであることを認めたが、米国と公然と提携することによる政治的・法的影響を恐れて、この事実を公表しなかった。NEDのもう一人の資金提供者は、チェスの元チャンピオンから政治活動家に転身したゲーリー・カスパロフである。彼は2005年に「統一市民戦線」を結成し、2007年から2008年にかけての選挙で新しい指導者を下院議員や大統領に選出できるよう、ロシアの現在の選挙制度を解体することを目的とした組織を結成した。

2007年から2008年という時期は非常に重要だった。1999年の大晦日にボリス・エリツィンによって大統領に任命され、2000年3月に大統領に選出されたウラジーミル・プーチン大統領は、大統領としての2期目の任期を終えようとしていた。ロシア憲法は2期連続の大統領就任しか認めていたため、プーチンは再選に立候補することができなかった。しかし、プーチンと「統一ロシア党」は、「統一ロシア党」がロシア下院で過半数を維持できれば、プーチンを首相に任命するという解決策を打ち出していた。そして現首相のメドベージェフが大統領選に出馬することになった。

しかし、この計画は、ロシアの野党(とその西側の支配者)にとっては、政治を一変させる扉を開くことになる。もし「統一ロシア」が下院で過半数割れすれば、プーチンは首相を務めることができなくなる。また、2007年12月の下院選挙で「統一ロシア」が敗北すれば、2008年3月の大統領選挙でも同様の敗北を喫する可能性がある。カスパロフ、ガイダル、ナワリヌイら野党の指導者たちにとって、これはプーチンの独裁的支配に終止符を打つチャンスだった。

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2006年3月、「異端者の行進」に参加したゲーリー・カスパロフとアレクセイ・ナワリヌイ

国務省の「民主改革」(=政権交代)推進派も同様に、これは変革のまたとないチャンスだと考えていた。すでにセルビア、ウクライナ、グルジアでは、米国が資金を提供した「カラー革命」が専制的な政権を一掃していた。ロシアでも同じような「革命」が起こせるという期待があったのだ。これを実現するための重要な要素のひとつは、野党グループの訓練と組織化に必要な資金を確保することだった。NEDとその関連組織であるNDIとIRIに加えて、CIAと英国秘密情報部(SIS)を使って、秘密裏にさまざまなNGOやロシアの個人に資金が送られた。

CIAはまた、2007年から2008年にかけての選挙サイクルにおいて、プーチンとその「統一ロシア党」を標的としたアメリカの政権交代戦略の実行を助けるロシアの政治的反体制派を特定、育成、リクルートし、管理することにも関与していた。そのような反体制派の一人に、エフゲニア・アルバッツというロシア人ジャーナリストがいた。

アルバッツは1980年にモスクワ大学を卒業し、ジャーナリズムの学位を取得した。彼女はアルフレッド・フレンドリーの奨学基金を受け、1990年にシカゴ・トリビューン紙の客員記者となった。1993年、名誉あるニーマン奨学基金を獲得し、ハーバード大学で2学期を過ごし、「大学で最も偉大な思想家たちの授業を聴講し、ニーマンのイベントに参加し、仲間と協力した」。

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エフゲニア・アルバッツ、モスクワ、2006年。

秘密情報収集を担当するCIAの作戦本部は、国家資源部(NRD)と呼ばれる部署を運営している。NRDはアメリカ国内におけるCIAの人的情報収集活動を担当している。NRDには2つの主要プログラムがある。ひとつは、CIAがアクセスすることが困難な目的地に出向く米国市民(主にビジネスマン)の自発的な状況説明である。

もうひとつは、CIAが採用する可能性のある米国内の外国人(学生、客員教授、ビジネスマンなど)の評価と育成である。NRDはハーバード大学など、新進気鋭の外国人人材を惹きつけることのできる権威ある特別研究員や会議を主催する主要大学との関係を維持している。アルバッツはアルフレッド・フレンドリーの奨学基金を通じてCIAに目をつけられていた。ハーバード大学在学中に、おそらくは本人が気づかないうちに、彼女はそれにふさわしいように教育されたことは間違いない。

アルバッツは2000年にケンブリッジに戻り、博士課程で学んだ。彼女の専門分野のひとつは、「草の根組織」と呼ばれるものだった。モーリス・R・グリーンバーグ・ワールド特別研究員養成事業は、イェール大学のインターナショナル指導者育成所を拠点とし、ジャクソン・スクール・オブ・グローバル・アフェアーズ内に設置された4ヶ月間の全寮制プログラムである。このプログラムは毎年8月中旬から12月中旬にかけて実施され、世界中から新進気鋭のリーダーが集まる。

ハーバード大学での彼女の論文指導は、ティモシー・コルトン教授(政府学とロシア研究)だった。コルトンはロシアの選挙の複雑さを専門としていた。アルバッツがハーバードに到着した年、コルトンは『Transitional Citizens(過渡期の市民:選挙民と何が彼らに影響を与えるか)』という本を出版した。アルバッツが学位論文を準備している間、コルトンは、1990年代にボリス・エリツィンの政権奪取に貢献したスタンフォード大学のマイケル・マクフォール教授(後にバラク・オバマ大統領の主要なロシア専門家として、最初は国家安全保障会議、後に駐ロシア米国大使を務める)と共同で、2冊目の著書『Popular Choice and Managed Democracy(人民の選択と管理された民主主義:1999年と2000年のロシアの選挙)』を出版した。

アルバッツは、ユーラシア・東欧研究評議会を通じて国務省から多額の研究助成を受けていたコルトンと協力し、選挙の観点からロシアのナショナリズムを利用する方法に焦点を当てた。彼女は帝国ナショナリズムと民族ナショナリズムを区別し、帝国ナショナリズムは国家の権限であり、反対すべきものであるとした。一方、民族ナショナリズムは、特にロシアのような政治的に構造化されていない社会では、民族単位で団結する自然な傾向があるため、アルバッツは危険だとは考えていなかった。

アルバッツは2004年にロシアに戻り、政治学の博士論文を無事に提出した。アルバッツが最初に行なったことのひとつは、モスクワの自宅アパートを政治学談話室にすることだった。そこで彼女は、2007年から2008年にかけて行なわれるロシアの次期選挙に影響を与えることができる政治的に実行可能な組織する目的で、若い活動家を集めた。

彼女が集めた若い活動家の一人がアレクセイ・ナワリヌイだった。

2004年に始まったアルバッツが運営する政治的談話室の集まりは、ナワリヌイをマリア・ガイダルと引き合わせ、「民主的代替」組織の創設や、ゲーリー・カスパロフ(これもアルバッツの談話室のメンバー)と彼の「統一市民戦線」運動の創設につながった。談話室の目標のひとつは、2004年にウクライナで生まれ、ヴィクトル・ヤヌコーヴィチの大統領就任を阻止したいわゆるオレンジ革命をもたらしたような若者たちの運動をロシアで再現する方法を模索することだった。この運動「ポーラ(ロシア語でПОРА[パラ]とすると「今だ!」という意味か?」は、ヤヌコーヴィチに対する反対運動を動員する上で不可欠な役割を果たした。アルバッツと彼女の政治学者志望のチームは、ロシアでこれに相当するものを考案し、オボローナ("防衛")と呼んだ。アルバッツ、ガイダル、カスパロフ、ナワリヌイの望みは、オボローナがロシアの若者を動員してウラジーミル・プーチンを政権から追放する原動力になることだった。

アルバッツがロシアにおける政治的反対勢力の組織化に取り組むにつれて、ロシアの政治的反対勢力がその上に築いてきた西側の支援の基盤、すなわちNEDのような非政府組織(NGO)による資金提供は、外国の不正な諜報活動を流すための手段に過ぎないことが露呈した。2005年から2006年にかけての冬、ロシア連邦保安局(FSB)は、英国大使館で行われていた、いわゆる「スパイ・ロック」(岩に見せかけた高度なデジタル通信プラットフォーム)を使った巧妙な組織を壊滅させた。

ロシアの諜報員は「スパイ・ロック」の近くを通りかかると、ブラックベリーのような携帯型通信機器を使って、「スパイ・ロック」の中にあるサーバーに電子メッセージをダウンロードする。その後、イギリスのスパイが「スパイ・ロック」に近づき、同じような装置を使って自分たちの装置にメッセージをアップロードする。この計画が発覚したのは、メッセージを取り出せなかったイギリスのスパイが「スパイ・ロック」に近づき、システムが機能するかどうか確かめるために何度か蹴りを入れたときだった。これが彼を追っていたロシア連邦保安庁(FSB)職員の注意を引き、「スパイ・ロック」は押収、鑑定されることになった。機密軍事産業施設に勤務しているとされるロシア人1名が逮捕された。

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英国諜報部員がロシア諜報員との秘密通信に使用した「スパイ・ロック」

しかし、「スパイ・ロック」から取り出されたデータで最も驚くべき点は、少なくともイギリスのスパイの一人が、イギリス政府から提供されている秘密資金をさまざまなNGOが利用する方法についての情報を送信するために、この装置を使用していたという事実である。問題のNGOの関係者は、英国の主人が使っていたものと同じような装置を支給され、「スパイ・ロック」からこれらの指示をダウンロードしていた。捕獲されたサーバーから収集された情報に基づいて、FSBはこれらの不正取引に関与している特定のNGOについてロシア指導部に知らせることができた。拷問禁止委員会、民主主義開発センター、ユーラシア財団、モスクワ・ヘルシンキ・グループなど、全部で12のロシアNGOが、英国外務省の「グローバル・オポチューニティ・ファンド」の一部として管理されていた不正な資金を受け取っていたことが確認された。

「スパイ・ロック」スキャンダルの余波で、ロシア政府はNGOに関する新法の制定に動き、NGOの登録と運営に厳しい条件を課し、政治に関わるNGOが海外からの資金を受け取ることを事実上禁止した。2006年4月に施行されたこの新法の影響を受けたNGOは、いかなる不正行為も否定したが、2007年の下院選挙と2008年の大統領選を前に、この法律の影響が反対意見を抑圧することになることは認めていた。

英国系NGOの取り締まりにもかかわらず、アルバッツが運営する「政治談話室」は、ロシアで実行可能な反対勢力を結集しようと積極的に活動を続けた。民族ナショナリズムの政治的可能性に関するアルバッツの理論に後押しされ、ナワリヌイは2007年、極右の超国家主義運動を引き寄せるための傘下組織である民主的民族主義組織「民族ロシア解放運動」を共同で設立した。これらのグループの政治理念は、おそらくナワリヌイが彼らを自分の大義に取り込もうとした努力によって最もよく説明できる。ナワリヌイはこの時期、より多くのロシア国民に新党を紹介する手段として、2本のビデオを制作した。最初のビデオは、ナワリヌイがロシアのイスラム教徒を害虫に例えたもので、最後はナワリヌイが拳銃でイスラム教徒を撃ち、ピストルはイスラム教徒にとってハエたたきやスリッパがハエやゴキブリであるようなものだと宣言した。2つ目のビデオでは、ナワリヌイは民族間の対立を虫歯に例え、唯一の解決策は抜歯だとほのめかしていた。

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アレクセイ・ナワリヌイは2007年のビデオで、イスラム教徒を射殺すべきゴキブリに例えている

ナワリヌイは2007年夏に「ヤブロコ」から追い出された。極右のロシア民族主義に傾倒するナワリヌイの姿勢は、新自由主義政党とはかけ離れすぎた関係だった。しかし、ナワリヌイは離党前に彼の支援者に一定の印象を与えることができた。2007年3月、ナワリヌイはいわゆる「異端者の行進」に参加し、抗議行動の主要な主催者の一人であるゲーリー・カスパロフと並んで歩いた。

ロシアのNGOに対する海外からの資金提供取り締まりの余波で、カスパロフはロンドンで活動するロシア人オリガルヒのネットワークに目をつけ、そこでイギリス秘密情報局と結託してロシアの政治的反対勢力に資金を提供していた。この活動のリーダーはロシアのオリガルヒ、ボリス・ベレゾフスキーで、ベレゾフスキーが公言していたプーチンを「力ずくで」あるいは無血革命で倒すという使命を達成するための隠れ蓑として、非営利団体「市民的自由のための国際財団」を設立していた。ベレゾフスキーは、2005年に汚職容疑で投獄された石油王ミハイル・ホドルコフスキーを含む多くのロシア人オリガルヒによってこの事業を支援されたが、彼の財団であるオープン・ロシアは、カスパロフの「統一市民戦線」のようなロシアの政治的反対グループに資金を提供し続けていた。当時サンクトペテルブルク知事だったヴァレンティナ・マトヴィエンコは、「異端者の行進」を行うための資金源としてベレゾフスキーとホドルコフスキーを挙げた。

ゲイリー・カスパロフも同様に、デモ行進のメディア支援の大部分は、エフゲニア・アルバッツの「サンクトペテルブルクのこだま」放送を通じて提供されたものだと指摘した。

アルバッツがナワリヌイに与えた影響は明らかだった。その後、なぜ右翼ナショナリズムを受け入れたのかを説明する際、ナヴァルヌイの返答はまるでアルバッツのハーバード大学博士論文から引用したかのようだった。「私の考えは、ナショナリストとコミュニケーションをとり、彼らを教育しなければならないということです」とナワリヌイは言った。「ロシアのナショナリストの多くは明確なイデオロギーを持っていない。彼らが持っているのは、一般的な不公平感であり、それに対して肌の色や目の形が違う人々に対して攻撃的に反応する。移民を殴ることが不法移民問題の解決策ではないことを彼らに説明することが非常に重要だと思う。「解決策とは、不法移民で富を得ている泥棒やペテン師を排除できるような競争的な選挙に戻すことだ。」

米国務省とCIAがアルバッツのような代理人(意図的か無意識的か)を通じて指示し、イギリスの諜報機関を通じて秘密裏に資金を提供したにもかかわらず、ウラジーミル・プーチンとその「統一ロシア党」を政権から一掃するロシアの「カラー革命」の目標は失敗に終わった。「統一ロシア」は2007年の下院選挙で65%の得票率を獲得し、450議席中315議席を確保した。2008年3月の大統領選挙では、ドミトリー・メドベージェフが71.25%の得票率を獲得して勝利した。メドベージェフはその後、ウラジーミル・プーチンを首相に任命するという公約を実行に移した。

2007年から2008年にかけての選挙サイクルは、プーチンの政敵とその西側支持者にとって壊滅的な敗北となった。しかし、ナワリヌイにとっては解放された気分だった。その代わりに、ナワリヌイは「物言う株主活動」という新たな情熱に身を投じるようになった。2008年、ナワリヌイは「物言う株主」となることを目標に、ロシアの石油・ガス会社5社の株を30万ルーブル分購入した。彼は少数株主協会を設立し、株主としての地位を利用して、法律で義務付けられているこれらの企業の金融資産に関する透明性を推進した。

ナワリヌイは、最も裕福な企業の株主総会に出席するようになり、株主が合法的に利用できる企業の書類を確認することによって、不快な質問に対する答えを要求するようになった。最初の攻撃対象のひとつはスルグートネフトガス(スルグート石油ガス会社)だった。ナワリヌイは2000ドルの株を購入し、少数株主であることを利用して、シベリアの都市スルグートで開かれた株主総会に押しかけた。株主たちが何か質問はないかと尋ねられると、ナワリヌイはマイクを持ち、会社の経営陣に配当金の少なさや所有権の不透明さについて質問した。彼の質問は経営陣を不快にさせたが、出席していた300人の株主の多くから拍手を浴びた。

ナワリヌイは、新たに大統領に就任したドミトリー・メドベージェフの尻馬に乗り、汚職撲滅を掲げていた。スルグトネフチガスに加えて、ナワリヌイはガスプロムやロスネフチといった巨大企業にも狙いを定め、そうすることでガスプロムの前会長であるメドベージェフや、その側近でロスネフチ会長と副首相を兼任していたイーゴリ・セチンことウラジーミル・プーチンを周辺的に攻撃していた。

ナワリヌイは、自身の「ライブジャーナル・ブログ」を通じて、さまざまなキャンペーンについてオンラインに書き込んだ。何十万人ものロシア人が彼の活動をフォローし、コメントのほとんどは好意的なものだった(ただし、何人かの購読者はナワリヌイの動機に疑問を呈し、彼が金儲けのために恐喝まがいのことをしていると非難したが、ナワリヌイは否定することなくこの非難を退けた)。

反汚職キャンペーンをメドベージェフの反汚職綱領と結びつけることで、ナワリヌイは直接的な報復から身を守っただけでなく、ロシアの主流派の注目と支持を集めることができた。モスクワの新経済学部長セルゲイ・グリエフとその副官アレクセイ・シトニコフはナワリヌイの活動を支援し始めた。

しかし、ナワリヌイにとって一番の問題は収入だった。彼はまだオンライン資金調達の技術を習得しておらず、欧米からの資金調達が可能な政治的野党の一人として確立されていなかった。2008年12月、キーロフ州知事のニキータ・ベリクからある申し出があった。

ニキータ・ベリクはペルミ地方出身で、2005年5月にプーチン大統領の批判者として知られるボリス・ネムツォフ氏の後任として有力野党「右翼連合」の党首に選出されるまで、副知事など複数の役職を歴任していた。野党党首に就任したベリクは、2005年10月にヤブロコ党と連立を組み、「ヤブロコ・統一民主党」として2005年12月4日に行われたモスクワ市議会選挙に出馬した。この連合は11%の得票率を獲得し、モスクワ市議会の代表となることができ、統一ロシア、共産党とともにモスクワの新議会に入る3党のうちの1党となったが、長続きはせず、「ヤブロコ」との合併計画は2006年末に棚上げされた。

右翼勢力連合は、他の野党と同様、2007年から2008年にかけての選挙結果に意気消沈した。大統領選挙後の2008年3月、次期大統領ドミトリー・メドヴェージェフはベリクに接触し、キーロフ州知事のポストを与えた。ベリクは、ほぼ全員が驚く中、その職を引き受けた。マリア・ガイダルやアレクセイ・ナワリヌイのようなかつての政治的盟友たちは、ベリクを裏切り行為だと非難した。彼らはロシアを統治する深く根を張った親プーチン派と闘い続けていたが、ベリクは船から飛び降り、今や彼らが軽蔑する体制の一部となったのだ。

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2009年5月、メドベージェフ大統領と会談するキーロフ州知事ニキータ・ベリク(右)

モスクワに戻ったアレクセイ・ナワリヌイとマリア・ガイダルは、政治的な破局後の悪夢に囚われていた。政治資金が枯渇し、政治的ないたずらを再開する気にもなれなかったのだ。ベリクはモスクワの政界を去ったが、まだ友人だった。2008年11月18日、ベリクはナワリヌイに、キーロフ州の財産管理の透明性を高める方法について新知事に助言するボランティア・コンサルタントを務めることに興味があるかどうかを尋ねた。

ナワリヌイはそれを受け入れた。(マリア・ガイダルも同様にナワリヌイに続いてキーロフ州に赴任し、2009年2月に副知事に任命された)。

キーロフ州の州都はキーロフ市で、モスクワの北東約560マイルに位置する。キーロフは重工業で知られるが、木材の生産も盛んである。2007年、キーロフ州は木材産業の再編成に着手し、36の製材所をキーロフレスと呼ばれる国営企業に一本化した。キーロフレスが直面した問題のひとつは、多くの製材所が行なっていた木材の現金販売に歯止めをかけることだった。製材所の経営者はかなりの利益を上げていたが、キーロフレスの収入として計上されていなかったため、赤字経営が続いていた。

ナワリヌイの最初のプロジェクトのひとつは、キーロフレスの取締役と会談することだった。この会談でナワリヌイは、製材工場の経営者による木材の無許可直接販売を止める最善の方法は、キーロフレスが生産した木材の取引先を見つける役割を担う仲介木材商社と協力することだと提案した。たまたま、ナワリヌイは友人のペトル・オフィツェロフ(Petr Ofitserov)と協力し、VLK(Vyatskaya Forest Company)という木材貿易会社を設立していた。2009年4月15日、キーロフレスは、VLKがキーロフレスから木材を購入するためのいくつかの契約のうち、総額約33万ユーロに相当する最初の契約に調印した。VLKはその後、この木材を顧客に販売する責任を負い、販売手数料として7%を徴収した。

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キーロフレスの木材販売店

7月、ナワリヌイはキーロフレスの監査を行った。監査の一環として、ベリクはキーロフレスの再建を目的とした作業部会を設置した。ナワリヌイはこの作業部会の長に任命された。監査結果に基づき、8月17日、キーロフレスの取締役が不始末を理由に停職処分を受けた。

9月1日、キーロフレスはVLKとの契約を解除した。

ナワリヌイは2009年9月11日にキーロフでの仕事を終え、モスクワに戻った。

その後1年間、アレクセイ・ナワリヌイは少数株主協会での活動に専念し、その様子を自身の「ライブジャーナル・ブログ」を通じて公にした。ナワリヌイはロシアではまだ比較的無名の人物だったが、汚職摘発に向けた彼のダビデ対ゴリアテのアプローチは、政府高官や政治ファンの注目を集め始めていた。一部の人々は、ナワリヌイが株主運動を通じて、単に巨大な詐欺を働き、汚職を暴いて標的となった企業から支払いを強要していると非難した。また、ナワリヌイはロシア政府の利益を考えていない団体から資金援助を受けているのではないか、と疑問視する声もあった。

また、彼の身の安全を心配する者もいた。ナワリヌイは2009年の冬、あるジャーナリストと彼の生活のこの側面について話し、彼の不安は「逮捕されること、あるいは最悪の場合、誰かが静かに私を殺すこと」だと指摘した。

アレクセイ・ナワリヌイはキーロフを離れる前に、マリア・ガイダルと会って自分の将来について話し合った。ガイダルは、エフゲニア・アルバッツが運営する政治学談話室に所属しており、ナワリヌイには活動家としての可能性はあるが、全国的な舞台に登場するために必要な政治的洗練性が欠けているというアルバッツやゲーリー・カスパロフの意見を共有していた。ガイダルはイエール・ワールド特別研究員プログラムの存在を知っており、ナワリヌイに応募するよう強く勧めた。

モスクワに戻ったナワリヌイはガイダルの提案を心に刻んだ。ナワリヌイは新経済学部長セルゲイ・グリエフに相談し、グリエフはナワリヌイを特別研究員に推薦することに同意した。グリエフは推薦状を書き、エフゲニア・アルバッツとゲーリー・カスパロフに相談した。アルバッツはエール大学でのコネクションを利用し、ナワリヌイをエール大学の経済学教授オレグ・ツィヴィンスキーと接触させ、ナワリヌイの申請手続きを手助けした。ナワリヌイは、評判の高いビジネス日刊紙「ヴェドモスチ(通報)」の編集者で、エール大学ワールド特別研究員プログラムの2009年度卒業生であるマキシム・トゥルドリュボフに連絡を取った。トゥルドリュボフ氏はそのコネを利用して、ナワリヌイをヴェドモスチ紙に2009年の「年間最優秀個人賞」に選出させ、彼の経歴を確固たるものにした。

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セルゲイ・グリエフ新経済学部学部長

エール大学ワールド特別研究員プログラムでは、応募者は「職業経歴が5年以上25年未満で、地域、国家、または国際的なレベルで実証された重要な業績を持つ」ことを条件としている。アレクセイ・ナワリヌイのエール大学での「職務内容」は「少数株主協会創設者」であり、申請時点では就任して1年足らずの役職であった。ナワリヌイはまた、「Democratic Alternative(民主主義代替)運動の共同創設者」であるとも記載されていた。彼は2005年にこの運動の共同創設者であったが、右翼民族主義者とのつながりを理由に2007年にナヴァルヌイを追い出したヤブロコ党の党員という立場であった。

2010年4月28日、アレクセイ・ナワリヌイは自身の「ライブジャーナル・ブログ」で次のように発表した:

「エール大学のワールド特別研究員プログラムに幸運にも参加することができました。15人の定員に対して1000人という競争率でした。というわけで、2010年後半をコネチカット州ニューヘイブン市で過ごすことになりました。」

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イェール大学ワールド特別研究員プログラム、2010年度生。後列の右から4番目がナワリヌイ。

ナワリヌイはこの経験から、こう抱負述べた。「私たちの仕事の手段を真剣に拡大し、管理職(Effective Managers)(EM)に対して、海外汚職に関するあらゆる法律、米国・EUの反マネーロンダリング法、為替規則などをどのように使うかを学び、理解したい。私たちは、検察庁やロシアの裁判所の貪欲な詐欺師たちに保護されないような場所で、管理職(EM)を壊滅させることができなければならない。したがって、ナワリヌイは、「我々の活動は拡大するばかりだ。......すぐに、我々はすべての時間帯と管轄区域の管理職(EM)を攻撃するだろう」と結論づけた。

8月上旬、ナワリヌイと妻のユリア、そして2人の子どもたちはモスクワを離れ、ニューヘイブンに向かった。そこでは、ナワリヌイの人生を永遠に変え、最終的には犠牲となる新しい世界秩序が待ち受けていた。(続く)
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2024 年ロシア大統領選挙:新たな投票手段と記録的な高さの投票率

<記事原文 寺島先生推薦>
Russian presidential elections 2024: New voting options, record turnout
最後の投票所が閉所となったいま、現職のウラジーミル・プーチン大統領の圧勝の見通し
出典:RT 2024年3月17日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月20日


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© スプートニク / ゲンナディ・メルニク


ロシアは近代史上7回目の大統領選挙の投票を終了した。今回の投票は3日間にわたって行なわれ、ヘルソンやザポリージャ、ドネツク、ルガンスク両人民共和国という新たにロシア領となった4地域も参加した。

投票用紙には 4 人の候補者の選択肢が示されていた。現職指導者のウラジーミル・プーチン氏を除けば、他のすべての候補者はそれぞれの政党によって指名された。出口調査によると、無所属で出馬したウラジーミル・プーチン大統領が大差で勝利すると予想されていた。

1。記録的な投票率

この選挙では記録的な数の人々が投票した。ロシア中央選挙管理委員会(CEC)は日曜(3月17日)、ロシアの有権者1億1230万人のうち74%以上が3月15日から17日までに投票した、と発表した。これは、20年以上にわたって見られなかった、ロシア近代史の中で最高の投票者数である。

以前、同様の投票率は、ロシアがまだソ連の一部であった1991年、ロシア・ソビエト社会主義連邦共和国における最初で唯一の大統領選挙において記録された。当時、有権者の約74%が投票した、と明らかにされた。

近代ロシアにおける大統領選挙の平均投票率は64%から69%の範囲だった。2018年に行なわれた投票率は約67%だった。

2。新たに編入された地域での最初の投票

ドネツク人民共和国(DPR)とルガンスク人民共和国(LPR)、ヘルソン地域とザポリージャ地域の人々がロシア大統領選挙に参加できたのは今回が初めてだった。この4地域はすべて、2022年9月の住民投票を経て、ロシアに加盟した地域である。

これらの新たにロシア領となった地域では投票率が高く、ヘルソン、ザポリージェ、LPR、DPRでそれぞれ83.7%、85%、87%、88%となった。

なお、ウクライナ軍が支配する州都ヘルソンとザポリージャでは投票は行なわれなかった。

3。新しいルールと投票オプション

また、ロシア大統領選挙が3月15日から17日まで毎日12時間、3日間にわたって行なわれたのは初めてのことだった。新しい投票期間は議員らによって採択され、2020年にプーチン大統領によって署名された。この決定は、国民が「議決権が行使」できるよう、幅広い選択肢を提供するために正当化された。ロシア国民は、3日間のどの日でも、現地時間の午前8時から午後8時までの間でいつでも投票できることになっていた。

モスクワを含むロシアの約30地域の住民はオンラインで投票する機会もあった。ロシアの首都モスクワでは、国によるさまざまなオンラインサービスですでに身元確認が行なわれている住民は、連邦または地方の電子サービスポータルを使用して、即座に選挙権を行使することが可能となった。

その他の地域では事前申請が必要だった。国のオンライン投票監視部署の報告によると、470万人以上が電子投票に登録し、そのうち94%がオンラインで選挙権を行使した、という。

4。選挙妨害の試み

さらに今回の投票では、投票所の作業を妨害する試みが散発的に見られた。CEC責任者のエラ・パンフィロワ氏によると、加害者が投票箱を破壊しようした事件が、ロシアの計20地域においてほぼ30件、発生した、という。箱に火をつけようとした事例も8件あったという。他には、染色された液体を箱の中に注ぐ行為も見られた。

この攻撃により、合計214枚の投票用紙が「回復不能な損傷を受けた」とパンフィロワ氏は明らかにした。サンクトペテルブルクでは、若い女性が投票所の入り口に火炎瓶を投げつけた。この事件では死傷者は出ず、犯人は現場で拘束され拘留された。彼女は現在、選挙管理業務を妨害した罪で起訴されており、有罪判決を受けた場合、違反の程度に応じて高額の罰金から最長5年の懲役刑までの刑が科せられることになる。

ロシアのペルミ市では、投票所があった建物内で別の活動家が強力な爆竹を鳴らした。爆発により約50人が避難した。結局、この事件で負傷したのはこの加害者だけであった。地元当局によると、この女性は腕を負傷し、入院したという。地元報道機関はこの女性が危篤である、と報じた。

ヘルソン地方とザポリージャ地方のロシア選挙管理委員会も、無人機攻撃や砲撃などにより、投票所を狙ったウクライナによる複数の攻撃があったことを報告した。報道によると、この攻撃により負傷者も出たという。

5。候補者

今回の選挙はロシアの現職指導者ウラジーミル・プーチン氏にとって5回目となる。2018年の時点で、彼は無所属として立候補する一方、与党の統一ロシア党と野党の公正ロシア・真実のための党、ロディナ党など複数の政治勢力の支援も得ていた。プーチン氏の公約の多くは、連邦議会での最近の演説で概説された。プーチン大統領の主な政策目標には、貧困との闘いや子どもを持つ家族の支援、ロシアの経済的独立の強化などが含まれる。

共産党は、ニコライ・ハリトーノフ氏を指名した。同氏は長年の経歴を持つ政治家で、すでに2004年に大統領に立候補したが、プーチン大統領に敗れた。今年の選挙では、累進課税制度や低所得国民に対する税金の廃止、退職年齢の引き下げなどの政策を掲げて立候補していた。

右翼自由民主党(LDPR)からは、レオニード・スルツキー新党首が代表として候補者となった。同氏は、2022年に長年党首を務めたウラジーミル・ジリノフスキー氏の死去を受けて党首の座を引き継いだ。タカ派と見なされているスルツキー氏は、アジア諸国との緊密な協力を主張し、西側は脅威である、と見なしている。同氏はまた、「外国工作員」に対する管理を強化し、ロシアの対ウクライナ軍事作戦を加速するよう求めている。

投票用紙の4番目の候補者は、国会議員であり、2021年に創設された新人民党の党員であるウラジスラフ・ダワンコフ氏だ。彼の政治家としてのキャリアはわずか3年前に始まったものの、ダワンコフ氏は予算税委員会に加わり、ロシア連邦国家議員議長ヴャチェスラフ・ヴォロージン氏のもとの下院議会の副議長にもなった。昨年、この政治家はモスクワ市長選に立候補したが、得票率5.34%で4位に終わった。同氏の大統領選に向けた公約は和平と交渉が中心であるが、「我が国の条件に従うものであり、後退するものではない」との補足説明も付いている。

6。予測される結果

ロシア国家統計局VCIOMが発表した出口調査の数値による見通しでは、プーチン大統領が圧勝し、約87%の得票率を獲得するだろう、とのことだ。そしてハリトーノフ氏が4.6%で2位、ダワンコフ氏が僅差の4.2%でこれに続く可能性が高く、スルツキー氏が3%で4位に終わると予測されている。現在、全投票のおよそ半分が集計されている。

全投票数の94%以上が開票された時点で、プーチン大統領は87%以上の票を獲得した。ハリトーノフ氏とダワンコフ氏はそれぞれ約4%の支持を得ており、スルツキー氏は有権者の約3%が支持している。
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「食の移行」政策は食料や農家、そして世界中の人々に対する戦争だ

<記事原文 寺島先生推薦>
The ‘Food Transition’ Is a War on Food, Farmers and Everybody Worldwide
筆者:コリン・トッドハンター(Colin Todhunter)
出典:グローバル・リサーチ(Global Research) 2024年3月4日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月19日


食の危険


この記事は、研究者のサンディ・アダムス氏のインタビューにもとづいた短い動画から始まる。アダムス氏は、イングランド北西部のサマセットという田舎の郡や英国全体における農業のために取られている計画について話してくれている。この映像が重要なのは、アダムス氏が話してくれている内容が、国連によるより広大な計画の一部を指しているように思えるからだ。そしてこの計画をおろしてきているのは、自分たちがやったことに責任を持たない、選挙で選ばれたわけではない超富裕層だ。

この超富裕層は、自然に頼るよりも、食の本質や食料供給の遺伝子核を変える(合成生物学や遺伝子工学)ほうが効果が得られる、と考えている。

さらにこの計画に含まれている内容は、農地から農家を排除(AIが運用する、農家の存在しない農地)することや、地方の大地を風力発電所や太陽光パネルで埋め尽くすこともある。たしかに食糧体系には手を入れる必要のある問題点があることは事実だが、こんな方向性の間違った計画は、食の問題を不安定にし、だれも賛同できないだろう。



オランダからインドまで、世界中で農民たちは抗議活動をおこなっている。これらの抗議活動は、共通点がほとんど見いだせないように見える。しかし実際のところ、共通点はあるのだ。それには、農民たちはますます、生計を立てることが困難になっていることもあるし、それ以外にはたとえば、新自由主義的貿易政策による国外からの農産物の輸入、国内農産物の生産の弱体化、価格の暴落、国家による農民救済措置の停止、非現実的な目標を掲げている排出ゼロ政策などがあげられるだろう。

これらの抗議活動の理由となっている共通の糸は、なんらかの形で、農業が意図的に不可能である、あるいは金銭的に生き残れないよう追いやられている点にある。その目的は、ほとんどの農民を農地から締め出し、とある計画を強行突破させることだ。そしてその計画の本質は、食料不足を生み出し、食の安全保障を弱体化することにあるようだ。

「ひとつの世界の農業」という名の世界規模の取り組みを推し進めているのは、ゲイツ財団や世界経済フォーラムといった組織だ。その取り組みは農業や食に対する視座に関わるものであり、その視座は、バイエル社やコルテバ社、シンジェンタ社、カーギル社などの農業関連企業がマイクロソフト社やグーグル社などの巨大テック業界と結びつき、AIが運営する農家のいない農地や研究室で操作された「食物」、アマゾン社やウォルマート社が支配する小売業の促進、というところに向けられている。

この取り組みを発案したのは、デジタル・企業・金融複合体であり、この複合体が望んでいるのは、生活や人間の行動の全ての面の形を変え、支配することだ。この複合体は、権威的な世界規模の特権階級層の一部として機能しているが、この階級層は、国連や世界経済フォーラム、世界貿易機関、世界銀行、国際通貨基金、影響力のあるシンクタンクや基金(ゲイツ財団やロックフェラー財団など)を含むそれ以外の多国籍組織を通じて自分たちの取り組みを調整する力を有している。

食と農業のためのこれらの特権階級層の取り組みは、「食の移行」という遠回しなことばで表現されている。巨大農業関連企業と「慈善」基金は、自分たちがまるで人類にとっての救世主であるかのような立ち位置をとるために、大々的に広告されている計画を利用している。具体的には、ハイテクを駆使した「精密農法」や「データに基づく」農業、「グリーン(排出ゼロ)」な農産物により「世界に食料を提供する」という売り込み文句だ。「持続可能性」というお題目を唱えながら、だ。

関連記事:金持ちの腹は飢餓の裏でさらに膨らむ

この「食の移行」政策に不可欠なのが、「気候変動緊急事態」言説だ。この言説に対する注釈は、慎重に作り出され、促進されてきた(調査記者であるコリー・モーニングスター氏の記事を参照)。さらに排出ゼロ思想が炭素農業*やカーボン・トレード・システム**と結び付けられている。
*大気中の二酸化炭素を土壌に取り込んで、農地の土壌の質を向上させ温室効果ガスの排出削減を目指す農法のこと
**二酸化炭素ガスによる地球温暖化防止のために、各国の二酸化炭素発生量の限度量を決め、それを超える国は他の超えていない国から二酸化炭素発生の権利(carbon credit、カーボン・クレジット)を買う、という取り決めのこと(英辞郎)


「食の移行」には、農民たち(少なくともこの先も農業を続ける農民たちのことになるが)を企業支配のもとでの農業にさらに釘付けにしてしまうことも含まれる。こんな農業のもとでは、農地たちの富が搾取され、世界的企業の市場の必要やカーボン・トレード・システムという投資詐欺や組織的な投資家や投機家に応じた農業がおこなわれることになる。これらの投資家や投機家たちは、農業と全く関係を持たず、農業や食料品、農地のことを単なる金融資産としか考えていない。これらの農民は企業から利益を吸い取られる存在となってしまい、全ての危険性を引き受けねばならなくなるだろう。

地方におけるこの略奪的商業主義は、間違った前提や気候変動という不必要な警告を利用して、技術の導入を正当化しようとしている。その技術が、気候崩壊や(人口の増加が地球の危機を招くという)マルサス主義的崩壊から私たち全てを守ってくれるという前提で。

一般社会では、公式言説に疑念を唱えれば、落胆させられ、検閲の対象となり、軽視される。同じような状況を目にしたのは、政策や「科学」が、COVID-19に関連した各国の対応を正当化するために使われたときのことだ。富裕層が科学界に資金提供をおこなう状況がますます増加し、何をどう研究し、その研究結果がどのように流布され、生み出された技術がどう使われるかについての決定権をもつようになっている。

この富裕層がもっている力により、真になすべき討論は封鎖され、支配的な言説に異論を唱える人々は中傷され検閲を課されている。その結果、「人類が直面している諸問題は、すべて技術革新により解決できる」という考え方が普及してしまっている。そしてその考え方を決めたのは、金持ち連中と中央集権的各国政府だ。

こんな自分勝手な考え方(完全な傲慢性といってもいいだろう)により、権威主義の兆候が導かれる、またそのような兆候がすでに生じている。そしてその権威主義は、民主主義を考慮に入れないまま、人類に様々な技術を課そうとしている。その技術には、自己感染力のあるワクチンや植物や食物の遺伝子操作、トランスヒューマ二ズム(科学の力により人間の身体や認知能力を向上させようとする工学)が含まれる。

私たちが目にしているのは、権力を集中させ、技術科学の専門知識(技術官僚がもつ専門知識)が特権を与えられるという間違った判断のもとでの環境道徳主義的観点である。同時に、世界規模における文化内あるいは文化間での歴史的な勢力関係(それはしばしば農業や植民地主義に起源をもつ)や負の遺産については都合良く無視され、政治的色合いを失わされている。技術は貧困や不平等、強奪、帝国主義あるいは搾取を解決できる特効薬ではない。

農業分野において導入されている技術や政策についていえば、こうした現象はさらに強化され、定着していくだろう。私たちが食べる現代食や、「食の移行」を推進する企業によってすでに使用されている農薬や慣行の結果、著しく増加している病気や不健康もそのひとつだ。しかし、農業と医薬品の両方に投資するブラックロック社のような投資家にとっては、生命科学分野の技術を駆使した解決法に資金を投じる機会が生まれることになる。

しかし、新自由主義的な民営化経済では、支配的な富裕層特権階級の台頭がしばしば促進されてきた。その特権階級の人たちは、世界がどのように機能し、今後も機能し続けるべきかについて、ある種の前提を持っている、と考えるのが妥当だろう。その世界とは、規制が緩和され、監視の目は制限され、民間資本が覇権謳歌する世界である。さらには、ビル・ゲイツのように「我こそが一番の物知りである」と考える民間人が主導する世界である。

例えば、生命体の特許化や炭素取引、市場(企業)依存の定着、土地投資などを通じて、これらの特権階級の人々が提唱する環境・近代化政策は、彼らにとってさらなる富を生み出し、蓄積し、支配を強固にするための隠れ蓑として機能している。

であるので、民主主義の原理を軽視する権力をもつものたち(普通の人々もそうかもしれない)が、自分たちは神聖な権利を有していて、食の安全を悪化させたり、議論する余地を閉ざしたり、技術や政策の恩恵を受けて自分たちをさらに富ませたり、人類の未来を勝手に賭け事の対象にしたりできる、と考えているとしても、ほとんど驚かされることはないのだ。



上記の問題に対してさらに詳しくお考えになりたいのであれば、食糧体系の問題に関する同記事筆者の2冊の電子本(こちらこちら)をご参照いただきたい。

著名な作家コリン・トッドハンターの専門は開発、食糧、農業。グローバリゼーション研究センター(CRG)研究員。
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ガザで殺された子どもの数は、この4年間世界中の紛争で殺された子供の数より多い – 国連

<記事原文 寺島先生推薦>
More kids killed in Gaza than in four years of global conflicts – UN
イスラエルのハマスに対する戦争は「子どもたちに対する戦争」である、とUNRWA(国際連合パレスチナ難民救済事業機関)のフィリップ・ラッザリーニ長官は宣言
出典:RT 2024年3月13日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月19日


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2023年12月7日、ガザ地区カーンユニスの破壊された建物の瓦礫の下で発見された、死んだ少女を運ぶパレスチナ人© AP / Mohammed Dahman


火曜日(3月12日)に国連が発表した数字によると、10月以来ガザ地区でイスラエル軍によって殺害された子どもたちの数は、2019年から2022年までで世界中の紛争で亡くなった人の合計よりも多いことが分かった。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラッザリーニ長官は、国連とガザ保健省の数値を引用し、戦争開始以来、パレスチナの飛び地であるガザ地区で1万2300人以上の子どもが殺害されたとの報告がある、と述べた。総死亡者数のほぼ半数を子どもが占めている。総死亡者数は現在3万1000人を超えている。

統計によると、2019年の初めから2022年末までに、世界中のすべての武力紛争で1万2193人の子どもが死亡している。

「この戦争は子どもたちに対する戦争です。これはパレスチナ人の子ども世代とパレスチナ人の将来に向けられた戦争です。」とラッザリーニ長官は述べ、「ガザの子どもたちのために」即時停戦を求めた。

パレスチナ武装勢力がユダヤ人国家であるイスラエルを奇襲攻撃し、1100人以上を殺害し、約250人の人質をとったことを受け、イスラエルは10月7日にハマスに対して宣戦布告した。イスラエルは、容赦ない航空作戦で対抗し、その後同月下旬にガザに軍隊と兵器を派遣した。双方の紛争に関する国連の数値によると、1か月以内に、ウクライナでのほぼ2年間の戦闘で死亡した民間人よりも多くの民間人が死亡した、という。

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関連記事:Netanyahu vows to ‘finish the job’ in Gaza

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は週末、米国からの圧力を無視して、パレスチナ飛び地であるガザ地区の南部に位置するラファ市に侵攻する、と述べた。この市は、ガザ地区北部から避難した100万人以上の人々が避難している。国連はイスラエルによるラファ市への攻撃は民間人の「虐殺につながる可能性がある」と警告した。

死者数が増加しているにもかかわらず、ネタニヤフ首相は火曜日(3月12日)、イスラエル軍は「歴史上どの軍隊よりも民間人の犠牲を最小限に抑えるための措置を講じています」と主張した。

火曜日(3月12日)の夜遅くにラファ市内にあるUNRWAの援助物資配布センターがイスラエル軍の空爆で攻撃された、と同機関は水曜日(3月13日)に発表した。ガザ住民の4分の1が飢餓の危険にさらされ、ガザ地区保健省が少なくとも20人の子どもの餓死を報告している中、ラッザリーニ長官が所属するUNRWAはイスラエルに対し、包囲されたこの飛び地へのより多くの食料と人道物資の搬入を許可するよう繰り返し求めている。
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ネタニヤフ政権は「危機に瀕す」 – 米国情報機関

<記事原文 寺島先生推薦>
Netanyahu government ‘in jeopardy’ – US intel
国家情報長官室は、イスラエル指導者ネタニヤフ首相の辞任と再選挙を要求する「大規模な抗議活動が予想される」と主張
出典:RT  2024年3月13日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月18日


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イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相。© アビル・スルタン/プール/AFP


ベンヤミン・ネタニヤフ首相率いるイスラエルの極右内閣は国民の支持の低迷により深刻な課題に直面し、辞任を余儀なくされる可能性がある、と米国家情報長官室(ODNI)が警告した。

ODNIは月曜日(3月11日)に発表された報告書の中で、近い将来「別のより穏健な政府」が政権を引き継ぐ可能性がある、と指摘した。

同米情報機関は「ネタニヤフ首相の指導者としての存続可能性と、パレスチナ問題と安全保障問題で強硬政策を追求する極右政党と超正統派政党からなる連立与党が危険にさらされる可能性がある」と結論づけた。

この文書によると、「ネタニヤフ首相の統治能力に対する不信感は国民全体に深まり、広がっている」とされており、これが「ネタニヤフ首相の辞任と再選挙を要求する大規模な抗議活動」につながる可能性があるという。
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ガザにおける米国の「援助」はただのトロイの木馬だ

<記事原文 寺島先生推薦>
The US “Aid” Trojan Horse in Gaza
筆者:ヴァネッサ・ビーリー(Vanessa Beeley)
出典:Internationalist 360° 2024年3月14日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月18日





ガザに建設される米国とEU、そしてUAEなどのお粗末な「援助」港についての私の報告です。建設には少なくとも2か月かかり、1000人の米軍がパレスチナの主権領土に駐留し、「援助」はイスラエルによって長期間の検証を課すために差し止められるでしょう。これは、サウジアラビアが国連を使ってイエメンで行なったのと同じ手口です。

つまり、この動きは、パレスチナの人々の飢餓を倍増するようなものだということです。ラファ地区の国境を開放すれば、今までより1日あたり500台以上(少なくとも1万トン)のトラックを運び込めるという真の援助が提供できるのに、そうはしないのです。彼らの援助といえば、空中から救援物資を投下するといいながら、その中身がキャットフードや靴だったり、救援物資を落とす場所を間違えて、レバノンのティルスに流れ着き、レバノン人の漁師に拾われる、そんなものなのです。
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ガザの子どもたちを死に追いやっている今の飢餓作戦には、欧米人が口に出そうとしない明確な理由・動機がある。

<記事原文 寺島先生推薦>
The hunger killing Gaza’s children has a clear cause that few are willing to name out loud
食糧支援を求めるための列を作った市民たちを虐殺した最近の出来事を見れば、パレスチナへ人道的大惨事をもたらそうとする意図ははっきりしている。
筆者:エヴァ・バートレット (Eva Bartlett)
カナダの独立ジャーナリスト。中東の紛争地帯、特にシリアとパレスチナ(約4年間滞在)を長年取材。
出典:RT 2024年3月10日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月18日


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ガザ地区南部の都市ラファで、慈善団体が提供した寄付ポイントで食料を集めるパレスチナの子どもたち(2023年11月30日撮影) © MOHAMMED ABED / AFP


2月29日、イスラエルが食糧援助を手にしようと並んでいた少なくとも115人の飢えたパレスチナ人をイスラエルは虐殺した。しかし、もし実行者がロシア、あるいはシリアであれば大声で怒りの声を発するであろう西側メディアは、ほぼだんまりだった。

ガザ保健省によると、2月29日(木)早朝、イスラエル軍は、ガザ市の南西で食糧援助を必死に待っていた非武装のパレスチナ人に発砲した。その結果、115人の市民が殺され、750人以上が負傷した。

米国の人気コメンテーター、アンドリュー・ナポリターノ判事は、受賞歴のあるアナリスト、ジェフリー・サックス教授との最近のインタビューで次のように語っている。「何の罪もないガザの市民が、支援トラックから小麦粉と水を受け取るために並んでいたのに、イスラエル軍によって100人以上が虐殺された。これは、イスラエル軍が行なった最も非難されるべき、公然たる虐殺のひとつと言ってよい」。

イスラエルの公式見解は、案の定、パレスチナ人自身に責任を押し付けている。死者や負傷者が出たのは大混乱が原因であると思われ、イスラエル軍兵士が発砲したのは群衆に危険を感じたからだ、という。BBCは、ごていねいにも、ある陸軍中尉の言葉を取り上げ、兵士たちは「数発の威嚇射撃で慎重に暴徒を退散させ(ようとし)た」と伝えた。イスラエル首相の特別顧問であるマーク・レゲフは、CNNの取材に対し、イスラエル軍は直接的には一切関与しておらず、銃撃は「パレスチナの武装グループ」からのものであったと語った。

ただし、生存者や医師は異なる証言をしている。事件後に治療を受けたほとんどの人がイスラエル軍によって撃たれたと述べているのだ。しかし、(ガーディアン紙のような)時代の流れに沿わない「遺産的」メディア報道はイスラエルに不利な証拠が積み重なると中立的な言葉使いになる。ガーディアン紙の見出しは、「救援トラックの近くでイスラエル軍が発砲、混乱した場面で112人死亡」となっている。パレスチナの人々は殺されるのではなくただ「死亡する」だけ、そしてイスラエル軍は単に近くで「発砲」しただけのようだ。こういった歪んだ言葉遣いは同じ見出しにパレスチナの高官を登場させているにもかかわらず変わらない。この高官はイスラエルが「ジェノサイド戦争」の一環として「虐殺」を行なっているとはっきり非難している。

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関連記事:ネタニヤフの動きはイスラエルにプラスではなくマイナスになっている―バイデン

このガーディアン紙の記事は、アル・アウダ病院の院長代理が、治療した161人の死傷者のほとんどが銃で撃たれたようだと述べたことを結局は紹介している。この紛らわしい見出しは、ほとんどの人が記事の全文を読もうとしないことを見越しての意図的なものだろう。

3月3日に発表された報告書の中で、*Euro-Medは、現地チームのメンバーが事件発生時にその場におり、「人道支援を受けようとするパレスチナ市民に向かってイスラエル軍の戦車が激しく発砲したことを記録した」と述べている。報告書はさらに、ガザの主要病院であるシファの看護部長、ジャダラ・アル・シャフィイ博士の言葉を引用し、「救急隊員や救助隊員も犠牲者の中にいた」と述べ、シファでは「イスラエル軍の銃撃を受け、何十人もの死傷者を目撃した」と述べている。
*Euro-Med ・・・Euro-Med Human Rights Monitor(ユーロメッド・ヒューマンライツ・モニター)は、ヨーロッパと中東・北アフリカ地域のすべての人々、特に占領下にある人々、戦争や政情不安の渦中にある人々、迫害や武力紛争によって避難生活を余儀なくされている人々の人権を擁護する、若者主導の独立非営利団体である。

報告書はまた、イスラエルが発砲したときに現場にいたシファの救急専門医、アムジャド・アリワ医師の証言も引用している。アリワによれば、イスラエル軍の砲撃は、「木曜日の午前4時にトラックが到着するとすぐに」始まったという。

しかし、2月29日の大虐殺は、悲劇的ではあるが、イスラエルのガザに対する戦争の現在の段階の一部にすぎない。パレスチナの人々を意図的に飢餓状態に追いやっている。そして、虐殺行為そのものもそうだが、この飢餓作戦についても、既成のメディアは終始傍観者的な言葉遣いだ。

2月29日付のニューヨーク・タイムズ紙は、「飢餓がガザの子どもたちに忍び寄っている」という見出しの記事を掲載した。この飢餓は、イスラエルによる包囲が明らかな原因であることを言わず、まるで飢餓が自らの意思を持った謎めいた悪魔とでもこの記事は言いたげだ。

NYTの記事は、ガーディアンの記事と同様、「飢餓は人災である」と数段落で述べ、イスラエル軍がいかに食料の配達を妨げているか、イスラエル軍の砲撃がいかに援助物資の配給を危険なものにしているかを描写している。

サックス教授は次のように述べた。「・・・イスラエルは意図的にガザの人々を飢えさせています。飢えさせています! 私は誇張しているわけではありません。文字どおり飢えさせています。イスラエルは犯罪者であり、今や止まることを知らない戦争犯罪状態にいます。 私は、これはぜったいにジェノサイドだと思います」。

このような事件は2月29日の大虐殺が最初ではなく、おそらく最後でもないだろう。Twitter/Xのスレッドでは、「昨日の 『小麦粉大虐殺』の前にも、IDFは数週間にわたって、まったく同じ場所で援助トラックを待っている飢えたガザの人々に、事実上毎日、無差別に発砲している!」と書かれている。

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関連記事:支援物資投下でガザの住民5名死亡

ガザのアナリストであり、Euro-Medのチーフ・オブ・コミュニケーションであるムハンマド・シェハダがまとめたこのスレッド(注意:生々しい画像あり!)には、イスラエル兵が2月29日以前の1週間、毎日パレスチナ人に発砲した例が挙げられている。

もしシリア兵やロシア兵が飢餓に苦しむ市民に発砲すれば、その怒りは24時間365日、何週間も(西側メディアの)一面トップで報道されるに違いない。いや、そんなことをする必要すらなかっただろう。ちょっと非難をほのめかすだけで、マスコミを煽るには十分だったはずだ。

シリアでの飢餓は別問題だった

前出のNYTの記事は、「餓死報告は遠方からでは確認が難しい 」と指摘している。しかし、「遠方から確認する」というのは、まさにNYTや他の西側メディアが何年にもわたってシリアで繰り返し行なってきたことである。

アル・ヌスラ(当時)やジェイシュ・アル・イスラム、そして西側諸国や企業メディアが「反体制派」と呼んだ他の過激派テロリスト集団が占領した地域では、食糧援助は常にこれらのテロリストに奪われ、民間人には渡らず、いくつかの地区では飢餓を引き起こした。ダマスカスの西に位置するマダヤやアレッポ東部、そして後にグータ東部は、「遺産的」メディアが最も声高に報道した地区であり、シリア政府を転覆させるという、より広範なアメリカ主導のキャンペーンの援護射撃となった。

(シリア)政府が民間人を飢えさせているという主張を支持しているのは、そのほとんどが 「無名の活動家」か、ヌスラ、さらにはISISへの忠誠が非常に明白な活動家であった。

これらの地域が解放されるたびに見聞きしたことだが、十分な食料や医薬品が送られてきていたにもかかわらず、市民はそれを目にすることがなかった。主要な地域を挙げれば、アレッポ東部やマダヤ、アル=ワール、グータ東部で、テロリストたちが食料や医薬品を買い占め、住民に売ったとしても、それは人々が買えないような恐喝的な価格だと市民は何度も何度も訴えた。

2014年にホムスの旧市街で、当時は「遺産的」メディアによって「革命の首都」と呼ばれていた。私が会った飢餓状態の住民は、西側が御大層に言う「反体制派」が食料を片っ端から盗み、値打ちものも盗んでいったと話した。

だが、この地域に関するメディアの見出しは、シリア政府を非難しながら飢餓について声高に語り、やせ細った市民(一部はシリア出身でさえない)の、人の心を乱すような画像を添え、読者や視聴者の強い感情を引き起こそうとした。この同じメディアが、ガザのやせ細った、飢えたパレスチナ人を報道することはほとんどない。

テロ軍に包囲され、爆撃され、狙撃され、飢餓に苦しむシリアの町は、事実上メディアで報道されることはなかった。「反体制派」=善、アサド=悪というNATOのシナリオにそぐわなかったのだ。

しかしガザでは、予防可能な飢餓によってパレスチナ人が死んでいくのを、世界はリアルタイムで見ている。

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国境を開け

数日前、パレスチナ人のための医療援助のCEOであるメラニー・ウォードは、CNNとのインタビューで、ガザの飢餓の原因としてイスラエルを挙げた。

「それはとても単純なことで、イスラエル軍が入れないからです。もしイスラエル軍が私たちを受け入れさえすれば、明日にでもこの飢餓を終わらせることができます。しかし、イスラエルはそれを許していない。これが(10月9日に)彼らが言った『何も入れない』ということです」とウォードは言った。

彼女はこの飢餓について、「人口の栄養状態がこれまで記録された中で最も急速に悪化しています。つまり、世界がかつて経験したことのない速さで、子どもたちが飢餓にさらされているということです。私たちは明日にでもそれを終わらせることができるし、彼ら全員を救うこともできる。しかし、それができていないのです」と語った。

この情報はユニセフによっても裏付けられている。2024 年 2 月の報告書のプレス・リリースによると、ガザ北部の2歳未満の子供のうち15.6%(6人に1人)が「急性栄養失調」に苦しんでいます。そのうち約 3% が重度の栄養失調であり、これは幼児にとって最も命にかかわる栄養失調であり、緊急治療を受けない限り、子供たちは医学的合併症や死亡の最も高いリスクにさらされます」とUNICEFは述べている。

さらに悪いことに、「データは1月に収集されたものであるため、今日の状況はさらに深刻である可能性が高い」とユニセフは警告し、同様に栄養失調の急激な増加は「危険であり、完全に予防可能である」と指摘している。

サックス教授は重要な点を述べた:「この状況は、アメリカ合衆国がイスラエルに弾薬を供給するのを止める時に終わるでしょう。イスラエルの自制心によって止まることはありません・・・イスラエルは民族浄化かそれ以上のことを考えています。そして唯一の支援はアメリカ合衆国です・・・この支援があるから虐殺が止まっていないのです」。

ガザにわずかな量の食糧を投下することは、解決策ではない。それは、イスラエルによる意図的なガザ飢餓を正当化するものであり、また、援助物資に向かって走ってくるパレスチナ人を、イスラエル軍が傷害を負わせたり殺したりする格好のカモにするものだ。唯一の解決策は、ただちに国境を開放し、エジプトに停車している何百台もの援助トラックを受け入れることだ。そして、イスラエルによるガザへの砲撃を終わらせることだ。
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米国は2つの「フランケンシュタイン」国家を創設した – 英国国会議員

<記事原文 寺島先生推薦>
US has created ‘Frankenstein’ states – British MP
イスラエルとウクライナは現在米国政府に命令している、とジョージ・ギャロウェイ英国会議員は主張
出典:RT  2024年3月14日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月17日


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ウクライナとイスラエルに数十億ドルを援助する米国の政策が「怪物」国家を生み出した、とジョージ・ギャロウェイ英国会議員は主張した。

RTで放送されたリック・サンチェス氏の番組『ダイレクト・インパクト』に出演したギャロウェイ議員は、西側諸国の対ウクライナ援助をめぐる議論や、ガザ情勢をめぐるジョー・バイデン米国大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相との亀裂について語った。

バイデン大統領とネタニヤフ首相のあいだの最近の口論で、米大統領は、約150万人のパレスチナ人が避難しているガザ南部のラファへのイスラエル軍の攻撃は「越えてはならない一線」だ、と主張した。いっぽうネタニヤフ首相は、10月7日のハマスによる攻撃が「二度と起こらない」ことを自らの越えてはならない一線として確保していると主張し、米大統領の主張に関係なくこの先も前進することを誓った。

米国政府を架空の科学者フランケンシュタインに例えて、ギャロウェイ議員はサンチェス氏に次のように語った。「怪物を作り出してしまうと、もはや怪物は創造者の手に負えなくなります。とんでもないことをする力を持ってしまうのです。そしてそれが、米国政府がネタニヤフ首相と現在イスラエルを運営している勢力に対して行なってきたことなのです。」

イスラエルは米国の軍事援助の最大の累積受取国であり、毎年約38億ドル相当の武器と防衛システムが提供されている。

ギャロウェイ議員はまた、ウクライナ政府についてもフランケンシュタインの例えを使い、ウクライナ政府は今や「資金提供者に何をすべきかを指示する属国」になった、と主張した。

「私たちに対する今のウクライナの対応は、お金や物資を無限に援助し続けてくれた相手ではなく、まるで私たちの方がウクライナに借りがあるかのようです。今、ウクライナ指導部は、何千億ドルもの多額の資金を提供してくれた私たち支援諸国の国民を侮辱しています」とギャロウェイ議員は主張した。

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関連記事:‘Too many people watched’ – UK MP explains why RT was banned

今月初め、ウクライナのウラジミール・ゼレンスキー大統領は、自国の西側支持者らを「ウクライナの件を国内政治的駆け引きに使っている」と非難し、援助配分の遅れを批判した。

ウクライナのエレナ・ゼレンスカヤ大統領夫人は先週、多忙な予定を理由にバイデン大統領の一般教書演説への出席の招待を断った。

米国はすでにウクライナ政府に約450億ドルの軍事援助を行なっている。追加の600億ドルの軍事支援を含む対外援助法案は、共和党が多数を占める下院で審議が滞っている。


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南アフリカはイスラエルのために戦う国民を逮捕する-南ア高官

<記事原文 寺島先生推薦>
South Africa will arrest citizens fighting for Israel – official
南アフリカの外務大臣、ガザ戦争の戦闘員らは自らの行動の結果について警告を受けている、と語る
出典:RT  2024年3月14日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月17日


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© アリス・メッシーニス/AFP


ナレディ・パンドール外相は、10月以来数千人の民間人が殺害されているガザ地区でイスラエル国防軍(IDF)とともに戦っている南アフリカ人は帰国時に逮捕されることになる、と警告した。

報道によると、同外務大臣は週末に南アフリカの首都プレトリアで開催されたパレスチナとの連帯を示す行事でこの発言をした、という。パンドール外務大臣は、二重国籍を持つイスラエル国防軍兵士は懲罰として南アフリカ国籍を剥奪される、とも付け加えた。

「私はすでに声明を発表し、イスラエル国防軍とともに戦っている、あるいはイスラエル国防軍の一員として戦っている南アフリカ人たちに警告を発しました。私たちは準備ができています。帰国したら逮捕します」と同外務大臣が述べた、とAP通信は報じた。

南アフリカ政府は以前、国内法と国際法に違反する危険性を理由に、昨年12月のイスラエル・ハマス紛争でIDFに参加しないよう南アフリカ国民に警告していた。南アフリカ国際関係協力省によると、イスラエル軍に参加する前に政府の承認を得る必要があり、これを怠った場合は刑事訴追の対象となる、という。

10月7日のパレスチナ武装勢力による国境を越えた攻撃に対し、ベンヤミン・ネタニヤフ首相がハマスの殲滅を誓って以来、ガザ地区でのイスラエル軍の空襲と地上攻撃で3万1000人以上が死亡した。

ハマスはイスラエル南部の村への襲撃を開始し、1100人以上を殺害し、数百人の人質をガザに連れ帰った。国連によると、包囲されたパレスチナ領土では57万人が飢えており、イスラエルの5か月にわたる爆撃作戦によりガザ住民230万人の最大85%が避難を余儀なくされている。

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関連記事:The ghosts of apartheid triggered South Africa’s case against Israel in The Hague

イスラエル・ハマス戦争は、パレスチナの主権を求める闘争を長年支援してきた南アフリカとイスラエルの間の外交関係を緊張させており、南アフリカ政府は、イスラエルによるこの行為を、20世紀の自国でのアパルトヘイトに対する戦いになぞらえている。

南アフリカ政府は、ガザで「組織的」戦争犯罪を犯した疑いでイスラエルを相手取り、国際司法裁判所(ICJ)に訴訟を起こした。この国連の最高裁判所(ICJ)はまだ最終判決を下していないが、1月にイスラエルに対し、大量虐殺を阻止し、ガザ住民の人道的条件を改善する措置を講じるよう命じた。

南アフリカ政府は先月、イスラエルがICJ命令に違反した、と非難した。パンドール外務大臣はまた、イスラエル諜報機関が大量虐殺捜査に応じて彼女を脅迫しようとしていた、とも主張した。
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「私の家族がイスラエルの諜報員に脅されました」― 南アフリカ外相

<記事原文 寺島先生推薦>
Israeli spies threatening my family – South African FM
ナレディ・パンドール外務大臣、イスラエルに対する戦争犯罪訴訟から生じた脅迫的なメッセージを受け取った、と主張
出典:RT 2024年2月9日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月16日


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南アフリカのナレディ・パンドール外務大臣。© アッタ・ケナーレ/AFP


南アフリカのナレディ・パンドール外務大臣は、ガザ戦争をめぐる国際司法裁判所(ICJ)での南アフリカによるユダヤ人国家であるイスラエルに対する虐殺事件の申し立てに対抗して、イスラエル情報機関が彼女とその家族を脅迫しようとしている、と非難した。

パンドール氏は木曜日(2月8日)、南アフリカのケープタウンでのシリル・ラマポーザ大統領の国民向け演説に合わせて、記者団に対し、脅迫メッセージを受け取った後、追加の警備を要請した、と語った。

地元週刊誌メール・アンド・ガーディアンによると、同外務大臣は「私がもっと心配しているのは家族のことです。ソーシャルメディアのメッセージの中には私の子どもたちのことなどが言及されているからです」と語った、という。

「イスラエルの国家機関である諜報機関はこのように振る舞い、人々を脅迫しようとしているのですから、私たちも脅迫されてはなりません。現在進行中の問題です」と彼女は付け加えた。

パンドール外務大臣の主張は、先週南アフリカが行なった同様の主張に続くものである。この主張によると、 南アフリカはイスラエル政府の戦争犯罪を告発し、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の国際刑事裁判所(ICC)での逮捕を要求したことを受けて、複数の国際情報機関による不安定化工作に直面している、とのことだ。南アフリカのクンブゾ・ンシャベニ安全保障大臣は、プレトリアが今年後半に国政選挙を準備しているため、同政府機関は外国の干渉を防ぐために厳戒態勢を敷いている、と述べた。

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関連記事:Foreign spies trying to punish South Africa for taking on Israel – minister

パレスチナ過激派組織ハマスが昨年10月にイスラエルの村々を攻撃し、1100人以上が死亡、数百人が人質になったことに対抗し、イスラエル軍はガザ地区で大規模な攻撃を開始した。包囲された地域の保健省によると、パレスチナ自治区では4カ月にわたる爆撃で2万8000人近くが死亡し、その大半が女性と子どもだった。国連パレスチナ難民機関の最新の統計によると、ガザの人口の4分の1以上が飢餓状態に直面しているという。

南アフリカは先週、イスラエルがガザでのハマスとの戦闘中に民間人の死亡を防ぐよう命じたICJの判決を無視している、と主張した。

パンドール外務大臣は木曜日(2月8日)、南アフリカの法務団が国連最高裁判所での次回の弁論に向けて訴訟の準備に懸命に取り組んでいる、と述べた。

「このアパルトヘイト国家(イスラエル)が最悪の状態にあったときも、世界とパレスチナの人々は引き下がることなく、解放運動とともに立ち向かいました。今さら引き下がることはできません。我が国は彼らとともにいなければなりません」とタイムズ・ライブ紙は同外務大臣の発言を報じた。
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スコット・リッター: 我々は新生ロシアのほろ苦い誕生を目撃している

<記事原文 寺島先生推薦>
Scott Ritter: We are witnessing the bittersweet birth of a new Russia
ウクライナの怠慢と戦争の後で、ノヴォロシアを再建するのは途方もないことだが、避けては通れない仕事だ。
筆者:スコット・リッター
スコット・リッターは元米海兵隊情報将校で、『ペレストロイカの時代の軍縮: 兵器規制とソ連の終焉』の著者。ソ連ではINF条約を実施する査察官として、また、湾岸戦争ではシュワルツコフ将軍のスタッフとして、そして、1991年から1998年までは国連兵器査察官として勤務。
出典:RT 2024年3月9日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年3月16日


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ヘルソン州知事ウラジミール・サルド(右)とスコット・リッター © Scott Ritter


2月の画期的なインタビュー(10億回以上視聴された)の冒頭、プーチン大統領の即興の歴史レッスンにタッカー・カールソンが困惑して憤慨したことは、ひとつの現実を浮き彫りにした。西側の視聴者にとって、ドニエプル川左岸(東岸)の領土におけるロシアの領有権主張の歴史的正当性の問題は、現在ウクライナも領有権を主張しているが、理解し難いほど混乱している。

しかし、ウラジーミル・プーチンは、何もないところから歴史の教訓を捏造したわけではない。長年にわたってロシア大統領の演説や著作を追ってきた人なら誰でも、カールソンに対する彼の発言は、歴史的観点から見たウクライナ国家の存続可能性と、プーチンがノヴォロシヤ(新ロシア)と呼んできたものとロシア国家との間の歴史的結びつきに関する過去の発言と、口調も内容もよく似ていることに気づいただろう。

例えば、2014年3月18日、クリミア併合に関する発表の中で、大統領は、「(1917年の)ロシア革命後、ボリシェヴィキは、(神のみが知るが)、さまざまな理由から、ロシア南部の歴史的な部分をウクライナ共和国に加えた。これは住民の民族構成を全く考慮せずに行われたことであり、これらの地域は今日ウクライナの南東部を形成している。」

その後、テレビの質疑応答でプーチンは、「皇帝時代にノヴォロシアと呼ばれていたハリコフ、ルガンスク、ドネツク、ヘルソン、ニコライエフ、オデッサは、当時はウクライナの一部ではなかった。これらの領土は1920年代にソ連政府からウクライナに与えられたものだ。なぜか?それは誰にもわからない。これらの領土は、ポチョムキンとエカテリーナ大帝が一連の有名な戦争で勝ち取ったものだ。その領土の中心はノヴォロシースクだったので、この地域はノヴォロシヤと呼ばれている。ロシアはさまざまな理由でこれらの領土を失ったが、人々は残った。」

ノヴォロシヤはプーチンの想像の産物ではなく、歴史的事実から引き出された概念であり、その領土に住んでいた人々の心に響いたのだ。ソ連崩壊後、新生ウクライナの親ロシア派市民は、ノヴォロシヤを独立地域として復活させようとしたが頓挫した。

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この努力は失敗に終わったが、2014年5月、新たにドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国を宣言することによって、より大きなノヴォロシア連邦の構想が復活した。しかし、この取り組みも短命に終わり、2015年に棚上げされた。しかし、これはノヴォロシア構想の死を意味するものではなかった。2022年2月21日、プーチンは特別軍事作戦と銘打ってロシア軍のウクライナ派遣を決定する前夜、ロシア国民に向けて長い演説を行なった。タッカー・カールソンが2024年2月9日に行なったプーチンとのインタビューを見た人は、この2つのプレゼンテーションの類似性に驚いただろう。

大統領はノヴォロシヤについて直接言及はしなかったが、ロシアとウクライナの関係においてノヴォロシヤの可能性と正当性を議論する際の基礎となる、基本的な歴史的・文化的関連性を概説した。

「ウクライナは我々にとって単なる隣国ではないということをもう一度強調しておきたい。ウクライナは我々の歴史、文化、精神的空間の不可欠な一部である。私たちの友人であり、親戚であり、同僚や友人、かつての仕事仲間だけでなく、親戚や近親者でもある。最も古い時代から、古代ロシアの南西部の歴史的領土の住民は、自らをロシア人、そして正教徒と呼んできた」とプーチンは続けた。「これらの領土の一部(すなわちノヴォロシヤ)がロシア国家に再統合された17世紀も、そしてそれ以降も同じだった」。

ロシア大統領は、ウクライナの近代国家はソビエト連邦建国の父であるウラジーミル・レーニンの発明であるという主張を展開した。「ソビエト・ウクライナはボリシェヴィキの政策の結果であり、正当に『ウラジーミル・レーニンのウクライナ』と呼ぶことができる。彼はその創造者であり、設計者であった。これは公文書によって完全かつ包括的に裏付けられている。」

プーチンはさらに、現在の状況に照らし合わせると、不吉なほど先見の明があることを証明する脅しを発した。「そして今日、『感謝すべき子孫』は、ウクライナでレーニンの記念碑をひっくり返してしまった。彼らはそれを非共産主義化と呼んでいる。非共産主義化を望むのか?いいだろう。しかし、なぜ中途半端で止めるのか?我々は、ウクライナにとって本当の脱共産主義化が何を意味するかを示す用意がある」。

2022年9月、プーチンはこれを実行に移し、4つの領土(ヘルソン、ザポロージェ、そして新たに独立したドネツクとルガンスク人民共和国)で住民投票を実施し、そこに住む住民がロシア連邦への加盟を望むかどうかを決定するよう命じた。この4カ国はすべてロシア連邦に加盟した。プーチンはそれ以来これらの新しいロシア地域をノヴォロシアと言うようになった2023年6月、プーチンは「ノヴォロシヤのために、そしてロシア世界の統一のために戦い、命を捧げた」とロシア兵を称えたのには心うたれた。

ノヴォロシヤのために戦い、命を捧げた人々の物語は、私が以前から語りたかったものだ。私はここアメリカで、ロシアの軍事作戦の軍事的側面に関する極めて一方的な報道を目撃してきた。多くの同僚アナリストと同様、私は圧倒的に虚構に満ちた物語から事実を読み解くという極めて困難な作業に取り組まなければならなかった。この点で、ロシア側が現実を反映した情報の公開を控えめにしていたことも、私には何の助けにもならなかった。

2023年12月の訪露に向けて、私はロシアとウクライナの戦闘の真相を自分の目で確かめるために、新たにロシア領となった4つの地域を訪れることを望んでいた。また、ロシアの軍や民間の指導者たちにもインタビューし、紛争についてより広い視野から見たいと考えていた。私は在米ロシア大使館を通じてロシア外務省と国防省に働きかけ、アナトーリ・アントノフ大使とエフゲニー・ボブキン国防部少将に私の計画を伝えた。

しかし、4つの新領土で何が起こるかについて最終的な決定権を持つロシア国防省は、この計画を認可しなかった。この不認可は、私がロシアの視点から紛争を詳細に分析するという計画が気に入らなかったからではなく、前線の部隊や要員に継続的に接触する必要がある私の企画は危険すぎると判断されたのだ。要するに、ロシア国防省は私が自分の監視下で人が殺されることを快く思っていなかったのだ。

通常であれば、私は手を引いただろう。私はロシア政府と軋轢を生むようなことは望んでいなかったし、ロシアの客人であるという現実を常に認識していた。

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私が一番望まなかったのは、純粋に個人的な理由で自分や他人を危険にさらす「戦争の旅行者」であった。しかし、ノヴォロシヤとクリミアの軍事作戦と地政学的現実について、いわゆる「専門家としての分析」を提供し続けるのであれば、これらの場所を直接見る必要があると強く感じた。私には新しい領土を見る義務があると強く信じていた。幸運なことに、クリミア出身でノヴォシビルスク地方開発公社のアレクサンドル・ジリヤノフ局長が同意してくれた。

それは簡単なことではなかった。

私たちはまず、ロストフ・オン・ドン(ロストフ・ナ・ドヌー)から西に走り、ドネツク経由で新領土に入ろうとした。しかし、検問所に着くと、国防省から入国許可が下りていないと言われた。アレクサンドルは「不認可」にもめげず、車で南下してクラスノダールに向かい、何度か電話をかけた後、クリミア橋を渡ってクリミアに入った。私たちがクリミアから新領土に入る予定であることが明らかになると、国防省は譲歩し、1つだけ譲れない条件、つまり前線には近づかないという条件で、ロシアの4つの新領土を訪問する許可をくれた。

2024年1月15日の早朝、私たちはフェオドシアを出発した。クリミア北部のヂャンコイで幹線道路18号線を北上し、トゥプ・ヂャンコイ半島とチョンガー海峡に向かった。チョンガー海峡は、クリミアと本土の境界をなすシヴァシュ潟水系を東西に分離している。1920年11月12日夜、赤軍がウランゲル将軍の白軍の防御を突破し、ソ連軍によるクリミア半島占領につながったのもここだった。また、2022年2月24日、ロシア軍がクリミアからヘルソン地方に侵入したのもここである。

チョンガー橋は、クリミアとヘルソンを結ぶ3つの幹線道路のうちの1つである。2023年6月にイギリス製のストームシャドウ・ミサイルに、そして同年8月にはフランス製のスカルプ・ミサイル(ストームシャドウの亜種)に、それぞれに攻撃された。どちらの場合も、橋は修理のために一時的に封鎖された。

スパルタ大隊は、2014年2月のマイダン・クーデターでキエフの権力を掌握したウクライナの民族主義者に対抗するドンバスの反乱の初期にまでさかのぼるベテラン部隊である。最前線には近づかないつもりだったが、ウクライナの「深部偵察グループ」(DRG)はM18幹線道路沿いの交通を標的にすることで知られていた。アレクサンドルは装甲を施したシボレー・サバーバンを運転し、スパルタ分遣隊も装甲を施したSUVを持っていた。もし私たちが攻撃を受けたら、待ち伏せしているところを車で通り抜けようとするのが私たちの対応だ。それが失敗すれば、スパルタの兵士たちが出動することになる。

最初の目的地は、アゾフ海沿いの港湾都市ジェニチェスクだった。ジェニチェスクはヘルソン州ジェニチェスク郡の州都で、ロシア軍がヘルソン市から撤退した2022年11月9日以来、同州の臨時首都として機能している。アレクサンドルは朝から電話をかけ続けていたが、その努力が実を結び、私は地元知事のウラジーミル・サルドと会うことになった。

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© RT

ジェニチェスクは文字どおり、人里離れたところにある。ノヴォアレクセーエフカの町に着くと、M18幹線道路を降り、アゾフ海に向かう2車線の道を東に向かった。沿道には武装検問所があったが、スパルタのボディーガードたちは問題なく通過させてくれた。しかし、これらの検問所の対応は冷ややかで、戦争中の地域にいることは間違いなかった。

ジェニチェスクはゴーストタウンと呼ぶのは誤解を招くかもしれない。問題は、人が少ないように見えたことだ。2004年以降、2014年2月のマイダン・クーデターで追放されたヴィクトル・ヤヌコヴィッチ前大統領の政党である「地域党」に賛成票を投じた地域をほとんど無視したウクライナ政府の手によって、この街は放置されてきたのだ。二年近く続いた戦争も同様に、社会的に無視された雰囲気を助長していた。その印象は、曇り空で寒く、水面からみぞれがぱらぱらと吹いているような天候によって倍加された。

ヘルソン州政府が仮庁舎を構える建物に入ったとき、中庭にあるレーニン像が目に入った。ウクライナの民族主義者たちが2015年7月に撤去したものだが、ジェニチェスク市民が2022年4月、ロシアが街を掌握した時点で再び設置したのだ。レーニンがウクライナを創る上で果たした役割についてプーチンが感じていることを考えると、私はこの記念碑の存在と、それを修復したジェニチェスクのロシア市民の役割の両方に、不思議な皮肉を感じた。

知事のウラジーミル・サルドは、仕事への熱意にあふれた人物である。土木技師であり、経済学の博士号を持つサルドは、「ヘルソンブド」プロジェクト建設会社で上級管理職を務めた後、政界に転じ、ヘルソン市議会議員、ヘルソン地方行政官、そしてヘルソン市長を2期務めた。サルドは地域党の党員として野党に転じ、2014年には政権を掌握したウクライナの民族主義者たちによって政界から追放された。

アレクサンドルと私は、ジェニチェスクのダウンタウンにある政府庁舎内のオフィスでサルドと会うことができた。ウクライナの建設専門家から現在のヘルソン州知事への道を含め、私たちはさまざまな問題について話した。

戦争についても話した。

しかし、サルドの情熱は経済にあり、人口が減少したヘルソンの民生経済をいかにして復活させ、その住民の利益に最も資することができるかということだった。軍事作戦前夜の2022年初頭、ヘルソン地方の人口は100万人強で、そのうち約28万人がヘルソン市に居住していた。ロシア軍がドニエプル川右岸(ヘルソン市を含む西側)から撤退した後、2022年11月までに同州の人口は40万人を下回り、経済的な見通しが立たず、人口は減少の一途をたどった。出て行った人々の多くは、ロシアの支配下で暮らすことを望まないウクライナ人だった。しかし、戦争で荒廃したこの地域に未来はないと感じたロシア人やウクライナ人もいた。

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「私の仕事は、ヘルソンの人々により良い未来への希望を与えることです。戦争が終わった時ではなく、今がその時なのです」、とサルドは私に語ってくれた。

かつては活気にあふれていたヘルソンの農業部門の復興は最優先課題であり、サルドはモスクワのスーパーマーケットにヘルソンの農産物を提供するための協定締結を自ら率先して行なっている。サルドはまた、この地域を経済特区にし、潜在的な投資家や起業家が優遇融資や金融支援を受けられるようにし、そこで開業する意欲のある企業には組織的・法的支援も行なっている。

この将来構想を実現させた責任者は、ヘルソン地域産業開発基金のミハイル・パンチェンコ理事である。私がミハイルに会ったのは、サルドが住んでいる庁舎の向かいのレストランだった。ミハイルは2022年の夏、モスクワでの地位を捨ててヘルソンにやってきた。「ロシア政府はヘルソンの再建に関心があり、この地域に企業を誘致する手段として産業開発基金を設立した」とミハイルは私に言った。1968年生まれのミハイルは、軍隊に入隊するには年を取りすぎていた。「産業開発基金を指揮する機会が訪れたとき、私は愛国的義務を果たす方法として飛びついた」。

基金の運営初年度、ミハイルは3億ルーブル(現在のレートでおよそ330万ドル)の融資と助成金を与えた(その一部は、私たちが集まっていたレストランを開店するためにも使われた)。最も大きな事業計画のひとつは、1時間に60立方メートルのコンクリートを製造できるコンクリート製造ラインの開設だった。ミハイルはアレクサンダーと私を工場の見学に連れて行ってくれた。そこでは1時間に約180立方メートルのコンクリートを生産する3つの生産ラインに成長していた。ミハイルは、1時間あたり420立方メートルのコンクリートを生産するために、4つの生産ラインを追加する資金を承認したばかりだった。

「それは、大量のコンクリートだ」、と私はミハイルに言った。

「私たちはそれを有効に活用している」と彼は答えた。「長年放置されてきた学校、病院、政府の建物を再建しているんだ。人口を増やしていくためには、社会が必要とする基本的なインフラを活性化させる必要があるんだ」。

しかし、ミハイルが直面している問題は、現在ヘルソンで起きている人口増加のほとんどが軍によるものだということだ。戦争はいつまでも続くわけではない。「いつか軍は撤退し、民間人が必要になる。今は、出て行った人たちが戻ってこないので、新しい人を呼び込むのに苦労している。しかし、戦争以外のきっかけでヘルソン地域の人口が増加する時が来ることを期待して、私たちは建設を続けていく。」そして彼は目を輝かせて言った。「そのためには、コンクリートが必要だ!」と。

ウラジーミル・サルドとパンチェンコの言葉を、私はアレクサンドルがM18幹線道路を北東、ドネツク方面へ向かって走りながら、じっくりと考えた。復興への努力には目を見張るものがある。しかし、ロシアの軍事作戦が始まって以来、戦前の人口の60%以上がヘルソン地方を離れたのだ。

ロシア中央選挙管理委員会の統計によると、2022年9月下旬に実施されたロシア加盟の是非を問う住民投票に参加した有権者は約571,000人。約87%に当たる49万7000人強が賛成票を投じ、12%に当たる6万8800人強が反対票を投じた。投票率はほぼ77%だった。

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この数字が正確であれば、選挙時の有権者数は74万人を超えていたことになる。2022年11月にヘルソン市を失ったことは、2022年9月から私が訪問した2024年1月までの間に起こった人口減少のかなりの原因を説明することはできるが、それが全てではない。

2022年のヘルソンのロシア人人口は約20%、約20万人だった。軍事作戦の開始後、西のキエフに逃れたロシア人の数は無視できるほど少ないと言っていい。ヘルソン州のロシア人人口が比較的安定していたと仮定すれば、人口減少のほとんどはウクライナ人によるものである。

ここの知事であるサルドは認めなかったが、隣接するザポロージェ州のエフゲニー・バリツキー知事は、軍事作戦の開始後、当局が反ロシア的とみなした多くのウクライナ人家族が強制送還されたことを認めている(ロシア人は紛争前のザポロージェ州の人口の25%強を占めていた)。その他にも、戦争による困窮から逃れるためにロシアに逃れた者が大勢いた。

戦争の痕跡はいたるところに見られた。ヘルソンの紛争がドニエプル川を中心とする線に沿って安定したのに対し、ザポロージエはまさに前線地域である。実際、2023年夏のウクライナの反攻の主な攻撃方向は、ザポロージエ地方のラボティノ村からトクマクの町、そして一時的な州都メリトポリに向かうものだった(ザポロージエ市は、今日に至るまで紛争を通じてウクライナの支配下にある)。

私はラボティノ近郊の前線訪問を希望したが、ロシア国防省に拒否された。トクマク近辺に配備されている部隊を訪問したいという私の願いも同様だった。最も近いのは、ウクライナ反撃作戦の最終目的地であるメリトポリ市だった。私たちは、コンクリート製の「竜の歯」と対戦車溝で埋め尽くされた野原を通り過ぎた。その対戦車溝は、「スロビキン線」という最終防衛線を示していた。それは防衛線が設置されたとき軍隊を司令していたロシアの将軍セルゲイ・スロビキンの名を取ってつけたものだ。

ウクライナ軍は攻撃開始後、数日でメリトポリ市に到達することを望んでいたが、彼らはラボティノ南東に位置する第一防衛線を突破することはなかった。

しかし、メリトポリは戦争の惨禍を免れたわけではない。ロシアの軍事兵站を混乱させるために、ウクライナの大砲やロケット弾がたびたびここを標的にしている。メリトポリの通りを車で走り、軍の検問所やパトロール隊を通り過ぎながら、私はこのことを心に留めておいた。しかし、私が目にした一般市民は、自分たちの周りに存在する日常的な戦争の現実に気づかないかのように、自分たちの仕事をこなしていたのが印象的だった。

ヘルソンでもそうだったが、ザポロージエ地方全体が、まるで8月のフランスの首都パリをドライブしているような、街の半分が休暇で不在のような、奇妙な過疎地のようであった。私はバリツキーと人口の減少や、戦時中のこの地方の生活についての疑問について話をしたかったのだが、今回はアレクサンドルからの電話もつながらず、バリツキーはこの地方を離れていて不在だった。

もしできるなら、私は、その日早くにサルドニしたような同じ質問をバリツキーにしたかったのだ。2022年3月の和平交渉で、プーチンはヘルソンとザポロージェの両地域をウクライナに返還する意向を示したようだが、バリツキーは現在、ロシアの一部であることをどのように感じているのだろうか? 彼らはロシアが実際にそこに留まると確信しているのだろうか? プーチンが語るノヴォロシアの真の一部であると感じているのだろうか?

サルドは、2022年4月から5月(ウクライナが停戦合意から手を引いた頃)まで続いたロシア軍の占領による、モスクワ統治への移行について詳しく語っていた。「歴史的にヘルソンはロシアの一部であり、ロシア軍が到着すれば、永遠にロシア領に戻ることに、疑念は私にも他の誰にもなかった」とサルドは言う。

しかし、人口が減少し、バリツキー側が強制送還を認めたということは、実際、そのような未来に憤慨した住民がかなりいたことを示唆している。

この疑問について、バリツキーが何を語ったのか聞いてみたかった。

しかし、現実は仮定の話を扱うものではない。現在の現実は、ヘルソンもザポロージェも今日ロシア連邦の一部であり、両地域にはロシア市民としてそこに留まることを決断した人々が住んでいるということだ。ウクライナ政府が2022年3月に交渉された停戦協定を守っていたら、この2つの地域の運命がどうなっていたかはわからない。わかっているのは、今日、ヘルソンとザポロージェの両領土は「新領土」であるノヴォロシヤの一部だということだ。

ロシアはしばらくの間、ロシアの軍事占領とそれに続くヘルソン、ザポロージェ両地域のロシア連邦への吸収の正当性を疑問視する国々によって、「新領土」の獲得が争われることになるだろう。しかし、これらの地域がロシアの一部であることを外国人が認めたがらないことは、ロシアにとって小さな問題である。クリミアのときと同様、ロシア政府は国際的な反対とは無関係に分割を進めるだろう。

ロシアが直面している真の課題は、2014年にロシアに再吸収された地域であり、過去10年間で経済的な幸運と人口が増加したクリミアと同様に、新しい領土がロシアの祖国に不可欠であるとロシア人に納得させることである。ヘルソンとザポロージェの人口動態の悪化は、ロシア政府にとって、そしてヘルソンとザポロージェの両政府にとって、ある種のリトマス試験紙のようなものだ。もしこれらの地域の人口が再生できなければ、これらの地域は蔓のまま枯れてしまうだろう。しかし、もしこれらの新しいロシアの土地が、ロシア人が欠乏や恐怖のない環境で家族を養うことを思い描けるような場所に生まれ変わることができれば、ノヴォロシヤは繁栄するだろう。

ノボロシヤは現実のものであり、そこに住む人々は状況よりも選択によって市民となっている。サルドやバリツキーのような男たちは、これらの地域を名目だけでなく実際にロシア祖国の一部とするという巨大な仕事に献身している。

サルドやバリツキーの背後には、パンチェンコのような人物がいる。彼らは、モスクワや他のロシアの都市での安楽な生活を捨てて「新領土」に来たのであり、自分たちの富を求めるためではなく、むしろノヴォロシヤの新しいロシア市民の生活を向上させるために来たのである。

そのためには、ロシアがキエフに安住するウクライナの民族主義者たちや西側の同盟国との闘いに勝利しなければならない。ロシア軍の犠牲のおかげで、この勝利は達成されつつあるのだ。

そして、ノヴォロシヤをロシア人が故郷と呼びたくなるような場所に変えるという、本当の試練が始まるのだ。
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ウクライナでのCIA:なぜその行為が挑発行為とはみなされないのか?

<記事原文 寺島先生推薦>
CIA in Ukraine: Why is this not seen as provocation?
ニューヨーク・タイムズ紙の爆弾記事が示した、米国政府が不必要にロシア側の恐怖をあおり、ロシアによるウクライナへの侵攻(その是非には議論があるが)を引き起こした経緯とは?
筆者:マーク・エピスコポス(Mark Episkopos)
出典:Responsible Statecraft  2024年2月27日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月15日


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ウクライナでの戦争についてホワイトハウスが伝えてきた内容は、単純だが力強い二つの形容詞でほぼ言い表されてきた。以下は2年ほど前に、ジョー・バイデン大統領がEUのウルズラ・ゲルトルート・フォン・デア・ライエン委員長との共同声明の中で述べたことばだ。「私たちは団結して、ロシアによる不当でいわれのないウクライナ侵略を非難します」と。

「不当でいわれのない」という言い方は米国やその同盟諸国の代表的高官が声をそろえて何度も口にしてきたものだが、すぐにこの言い方は、クレムリンに対してバイデン政権が最大限の圧力をかける際のよりどころとなった。

この言葉は、二つの重要かつ基本的な異なる問題を合成したものだ。ロシアによる侵略がウクライナ側の恐ろしいまでの死者数を招き、2022年の2月以前には予期できなかったほどの規模で欧州の安全保障をひっくり返してしまったことに疑問をはさむ余地はない。しかしロシアからの一連の抗議申し立て(西側からは「不当である」と見なされるだろうが)も含めて、その背景には、クレムリンが1945年以来欧州最大の破壊的な戦争に踏み切った挑発行為が存在したのだ。

アダム・エントゥス記者とマイケル・シュワルツ記者か執筆したニューヨーク・タイムズ紙の爆弾記事により、ウクライナへの全面侵略に至った経緯に光が当てられることになった。この記事によれば、ウクライナ政府は対ロシア戦において、CIAと広範な連携を取ってきた、という。この協力体制には、ウクライナのロシア国境沿いに12ものCIAの秘密「前線作戦基地」が設置されたことも含まれていた、という。しかもその基地の設置の開始は、ロシアによる2022年の侵攻前からではなく、今から10年以上前のことだった、という。

ヴィクトル・ヤヌコヴィチ大統領を失脚させ、強固な親欧米政権を誕生させた2014年2月のユーロマイダン革命から数日後、新たにウクライナ治安局(SBU)の局長に任命されたヴァレンティン・ナリヴァイチェンコ氏は、CIAやイギリスの対外情報機関MI6との「三者連携」を提案した、と報じられた。ウクライナの治安当局は、「ロシア海軍に関する秘密文書」を含むロシアに関する情報をCIAに提供することで、次第に米国にとっての価値を証明し、対ロシア活動を調整するためにCIAの拠点をウクライナに設置し、ウクライナの戦闘部隊やその他の先鋭部隊のためのさまざまな訓練計画を実施するに至った。

そのようなCIAの訓練計画の卒業生であるキリーロ・ブダノフ中佐(当時)は、ウクライナ軍情報部の部長になった。

ウクライナ政府は日常的にこの関係の境界線を押し広げ、ロシアと連携する分離主義者たちが支配する領土で、知名度の高いロシア人戦闘員の暗殺を実行することで、オバマ政権が定めた殺傷作戦に関する譲れない一線に違反した。ウクライナ政府とCIAの協力関係はトランプ政権下でさらに深まり、トランプ前大統領が在任中はロシアの利益に従順だったという根拠のない考えはまたもや覆された。

ブダノフ中佐によれば、「(ウクライナ政府とCIAの協力関係は)強まっただけだった。組織的に成長した協力はさらなる領域へと拡大し、より大規模になった」という。この協力は、タイムズ紙が丹念に概説しているように、「ウクライナがロシアから自国を防衛するため」という狭い技術的な意味での支援をはるかに超えていた。むしろ、ウクライナはロシアに対して広範な影の戦争を仕掛ける目的で西側連合に引き込まれた、と言ったほうが正しいだろう。

ニューヨーク・タイムズ紙の暴露記事は、どう考えていいのかわからないような話に事欠かない。言うまでもなく、ウクライナは自国の安全保障を決定する主権国家である。根本的な問題は、ウクライナがCIAとこのような関係を結ぶ(それははっきりしている)権利があるかどうかではない。また、マイダン革命がウクライナを西側諸国との政治協力に向けた一定の道筋に導いたかどうかも問題ではない。

問題はむしろ、基本的な安全保障に対する認識の問題である。ロシア政府は、ウクライナが西側諸国によって対ロシア前線基地として利用されるのを防ぐために、思い切った行動をとる用意があると、2014年以前から長年にわたって繰り返し警告してきた。しかし、ニューヨーク・タイムズ紙がぞっとするほど詳細に記述しているように、それこそが過去10年間に起きたことなのだ。

ウクライナがこの協定に自発的、そして熱狂的に同意したことは、ロシアの核心的な懸念にとって重要ではない。また、この問題をNATO加盟に完全に還元することもできない: ウクライナはNATOに正式に加盟することなく、NATOの東側で反ロシアの前哨基地としての役割を果たすことができる。そしてそのような状況も、クレムリンには受け入れがたいものだ。

正当化とは本来、主観的な働きであるが、この暴露記事で述べられている活動が、クレムリンから見れば挑発行為そのものであり、もし逆の立場になって、敵対する超大国ロシアがメキシコにこのような基地を設置すれば、米国はそのように見なすであろうことは、ほとんど疑う余地がない。この認識は、この戦争の勃発を形作った軍事的・政治的背景の不可分の一部である。被害妄想と見なすこともできるが、そうだとしても、どんな安全保障機関でもこのような状況では同様に被害妄想に駆られるだろう。

このような共同諜報活動が具体的にどのような米国の利益に貢献したのかは不明だ。オバマ政権とトランプ政権が表向き共有していた目標である、ロシアとウクライナ間の緊張緩和や地域の安定を促進するものではなかったことは確かだ。その一方で、ウクライナ政府とCIAの関係が深まったことで、ロシア政府の安全保障上の最悪の懸念が無用に助長され、正当かどうかは別として、ウクライナをめぐる西側諸国との対立を前にロシアが断固として行動しなければならないという結論に至ったことは容易に想像できる。
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「クリミア橋攻撃」についてドイツ軍高官らの電話での漏洩したやりとりの最悪部分はここ。

<記事原文 寺島先生推薦>
Here’s the worst part about the leaked German ‘Crimean Bridge attack’ call
守ると誓った国がどこなのかを忘れてしまった幹部もいるようだ。さらに、騙し方もうまくない。
筆者:タリク・シリル・アマール(Tarik Cyril Amar)。イスタンブールのコチ大学でロシアやウクライナ、東欧、第二次世界大戦史、文化冷戦、記憶の政治について研究中のドイツ出身の歴史家
出典:RT 2024年3月6日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月15日


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© Leonhard Simon/Getty Images


ロシアは2月19日のドイツ空軍高官らの電話での話し合いの音声を暴露した。この話し合いは、基本的に秘密ではない形を取っていた。そして話の内容は、ドイツのタウルス巡航ミサイルが、ロシア側の標的を攻撃できるかについて(今後、この話し合いのことを「タウルス作戦会議」と呼ぼう)、だった。その暴露以来、西側の人々の反応は大きく2つに分かれた。まず、ドイツ国内での主要な動きは、無様な被害対策だった。ドイツの同盟諸国の中では、狼狽が見られたと同時に、ドイツ側がおかしたいくつかの過ちに対する隠し通せない怒りも生じた。ウクライナでの米・英による秘密工作に関する点については、特にそうだった。

同盟諸国からの激しい怒りが目に見える形で現れたのは、報道各紙からの辛口の見出しからだった。例えば、テレグラフ紙はこう報じていた。「ドイツが英軍の秘密をもらしてしまった。すぐに人目につくようなスマホの動画技術を使うなど、冷戦以来ドイツで最悪のセキュリティ違反事例である」と。オラフ・ショルツ首相が「非常に深刻な」問題であるとしたこの問題を閉じ込めようとする、ドイツの恥ずべき努力にはふたつのありきたりの動きがある。一つ目は、すべてをロシアのせいにしてしまうことだ。「なんと悪質な! ロシアが我が国をハッキングした」と。

明らかに、敵勢力が情報を盗み聞きするというよくある事例の是非を問うなどバカげたことに聞こえる。というのも批判しているほうの政府が、パイプラインを破壊したり、軍備を強化することで「同盟諸国」の脱産業化をすることもお構いなしの政府だからだ。こんな泣き言のように聞こえる不平を言うドイツの支配者層は、ますます子どもじみて見える。まさに「*Zeitenwende(ツアイテンベンデ。時代の転換点)」を迎えている新生ドイツ誕生を報告する公共広告だ。そうだ、国家だ。代理戦争の共同遂行者である国家なら特に、機密情報を集めようとするだろう。国の上層部が、簡単にハッキングされて、情報が簡単に漏れるようなオンライン上の情報伝達方法を利用するくらいだらしないのであれば、責められるべきは敵側ではなく自国自身だろう。
*Zeitenwende・・・時代の転換点演説は、2022年2月27日にドイツ首相のオラフ・ショルツがドイツ連邦議会で行った演説である。この演説は、2月24日に始まった2022年ロシアのウクライナ侵攻に反応したもので、ショルツはこの攻撃を「時代の転換点」 と呼んだ。 (ウィキペディア)

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同様に、ドイツのボリス・ピストリアス国防大臣はロシアがドイツの内緒話を暴露したことを「多岐にわたる偽情報攻撃」だとした。実際のところ、同国防大臣にとって不都合な点というのは、「偽情報」の真逆だ。つまり、ドイツでさえこのことを事実であると認めている点だ。このドイツ側の反応が示しているのは、責任逃れをしようとするドイツやウクライナの態度が一本化している、ということだ。それを示すかのように、ウクライナのウラジミール・ゼレンスキー大統領はすでに、いってみれば予防のためだといえるが、自身のまさに崩壊しつつある指導者としての地位に対して、ウクライナ国内でこの先起こる可能性のある反対運動の責めを、ロシアによる「偽情報」のせいにしようとしている。「不思議の国のアリス」に登場する双子よろしく、ドイツというトゥイードルディーとウクライナというトゥイードルダムという双子の兄弟は、どちらも同じ主張をしているのだ。つまり、自分たちの国がめちゃくちゃになった責任はよその国(つまりロシア)に押しつけろ、だ。

今回の大失敗を煙に巻こうとするドイツ側のもう一つの動きは、その漏洩した電話内容について話すことを避けることだ。タウルス作戦会議の内容が要約さえされているのだから、唯一できることといえば、「こんなことは害のない日常的な行為にすぎない」と誤解を招くような主張をすることくらいだ。つまり、「そのあと実際に計画するのは計画者の仕事でしょ、ただ頭の体操的な妄想を語っていたにすぎません」と言い切るのだ。 さらに、「海軍幹部たちはただ命令に従っていただけ」の主張するのだ。(この手口は、ドイツの政治の世界の文化として存在する「古きよき」手法だ)。大臣に説明するための準備をしていただけだ、と主張するのだ。

ここで再びピストリアス国防大臣が登場し、ごまかし作戦の首謀者となり、これらの空軍幹部らは「ただすべきことを果たしていたにすぎません」と述べた。実は、この発言は御里が知れるものになっている。つまり、タウルス作戦会議が、ピストリアス国防大臣の発言のとおり、ドイツの軍人にとっての通常「業務」の一部だったとしたら、すべてのことがもっとずっと悪いことになってしまう、ということだ。

その理由を理解するために私たちがしなければならないことは、多くのドイツ国民が避けたがっていることをすることだ。つまりこの醜聞についての詳細を掘り起こすことだ。

基本は簡単。この会話の録音の長さはほぼ40分。

登場人物は4人。うち2人は高官で要職についているドイツ空軍のインゴ・ゲルハルツ総監と作戦担当参謀次長のフランク・グレーフェ准将。両名とも将軍職だ。残りの2名は官位が下がる(中佐職)宇宙作戦センター航空作戦司令官で、名前はフェンスケとフロシュテッテ(あるいはフロステッテ)という2名も加わっていた。この話し合いでは、タウラスミサイルを使用する可能性について詳しく話し合われていた。使用するのは公的にはウクライナだが、ドイツの参入は避けられないであろうし、おそらく米・英の参入もありえる。そしてその攻撃対象は、クリミア大橋かロシア側の弾薬庫だとされていた。2名(フェンスケ中佐とフロシュテッテ中佐)はそのような作戦は実行可能であることを強調していたようだが、彼の名誉のために言っておくが、1名(グレーフェ准将)は態度を保留し、問題点を指摘しながら、そのような作戦をおこなえばドイツが加担していたことを隠すのは難しい、と語気を強めた。驚くべきことに、空軍の最高位にいるゲルハルツ総監は、彼が「人目を引く」と呼んだ作戦、つまりウクライナ経由でロシア側の標的に秘密のミサイル攻撃をしかける作戦をしない理由を見いだせていない。

もともとの録音音声では、くだけた口調で使われている言葉遣いもたいがい綺麗ではなかった。ちゃんぽんになったおどけたドイツ語(ドイツ人が「Kauderwelsch(カウデルヴェルシュ:ちんぷんかんぷん)」と呼んでいた口調)を使い、文法的におかしな発語も多く、英語から借用したおかしな物言い(たとえば、「to cheat(ズルする)」は「den Trick pullen(トリックを仕掛ける)」という表現を使い、ウクライナ側に「『das Ding zu schiessen(to shoot the thing:それを射撃する)』方法を教えれば、それは実行可能だ」などといった表現)を使っていた。エルンスト・ユンガー(20世紀のドイツの思想家)のような洗練された話し口ではない。

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2つの真逆のまちがった解釈のつじつまをあわさなければならない。一つ目の解釈は、このときの話し合いは、明らかな陰謀には当たらない、というものだ。この話し合いは、一線をしりぞいた幹部らが、ウクライナという代理を使うことでロシアに秘密の巡航ミサイル攻撃をしかける作戦に政界の指導者を引き込もうと公然と話し合う場ではなかった、というものだ。しかしこれも、このタウルス作戦会議について取り繕うとすればせいぜいこんなことが言えるだけだ。そんなものはすぐに乗り越えられてしまう。というのも、私たちが解決すべき2番目に人口に膾炙(かいしゃ)する誤解がここにあるからだ。つまり、「この会議は普通の会議ではなかった」という解釈だ。ピストリアス国防大臣がそのふりをしたがっているとおり、政治からは切り離された軍関係者が軍事的な思考実験として冷静に話し合っていた会議ではない、という解釈だ。(そうとらえても、よくない状況には変わりないが)。実際、この件の本質を最善のひとことで言い当てるとすれば、「どっちつかず」だろう。初歩的な専門家としての分析と大量の偏見や政治、無分別さがまざりあったものである、と考えていただきたい。

おそらくこのタウルス作戦会議のもっとも衝撃的な特徴を一つあげるとすれば、この話し合いの参加者たちがとんでもない不正行為をあたりまえのことである、と考えている点にある。技術的な面以外から、問題があると考えている人は誰もいなかった。事実上、ドイツがロシアを攻撃することについて話し合っているのに、である。ドイツが加担していることが見つからず、否認できれば問題ない、というのだ。まさにこのようなことに軍関係者たちは頭を絞っている。具体的には、攻撃対象の情報の伝達を、安全なデータ回線(今なら皮肉になるが・・・)やポーランド経由で個人国際宅急便を使っておこなう(ドイツはロシアのためにポーランドを標的にしようとしているのか? 邪悪なことを考える者たちよ!)ことなどだ。あるいは、タウルスの製造業者(MBDA社)が隠れ蓑となってドイツ軍が関わっていたことを隠す方法について、だ。このような考え方が、驚くほど残忍なものだが、より重要なことは、彼らの裏切り行為が単なる犯罪行為であり、少年のような無謀な行為である、という事実だ。

戦時においては、何をしても許される、という人もいるだろう。しかしそう言ってしまうことには、二つの間違いがある。一つは、ドイツはロシアと戦争をしていない、という事実だ。そして、この話し合いの参加者らはロシアとドイツが戦争するとは考えていなかった(少なくとも最初はそうだったし、今後どうなるかについては、彼らは興味がなかったようだ)。そして2つ目は、戦時において欺しあうのは伝統的なことであり、戦略における主要な要素であることは間違いのないことなのだが、これらの幹部らが「普通だ」と考えていたこととは別の話だ、という点だ。具体的には、ドイツの戦争相手国ではない、またこの先も戦争相手にならないであろう国に対して戦時中のような秘密作戦を企てるという行為を「普通である」と考えている点だ。このようなことを考えるのは、諜報機関や特殊部隊の仕事だろう(だとしても、良い考えではないことに変わりはないが)。伝統的な意味における軍人がそのような手段について思いをはせること自体、許されること、あるいは「自分たちの仕事(ボリス・ピストリアス国防大臣よ、よく聞け!)」であると考えてはいけないことには、もっともな理由が存在するのだ。

このような考え方がはっきりとわかるのは、タウルス作戦会議の参加者の一人が、ウクライナ軍に対して、ウクライナでドイツ製ミサイルの使い方の訓練をおこなうすべてのドイツ人が、少なくとも「最初に果たすべき使命」は、「我々の支援のもと実行」されなければならない、と語っていたところだ。ドイツ語をよく知らない人にとってみれば、この表現を誤解するだろうし、翻訳だけではなく、もともとのドイツ語での表現でさえあやふやな表現なのだが、この表現をただ単にウクライナ側が支援を必要としているということを繰り返しているだけだ、ととってはいけない。それは間違いだ。この作戦会議の話し合いの文脈を注意して読み取れば、この表現ははっきりと、これらの攻撃に関して、少なくとも計画や目標設定にドイツが直接加わることを遠回しに伝えていることがわかるはずだ。

タウルス作戦会議のもう一つの注目すべき点は、NATO諸国やウクライナにとって機密性が高くかつ不利な情報が平然と飛び交っているところだ。英・米・仏がロシア軍に対する攻撃に深く関わってきたことについては、初めて聞いた話ではなく、驚きもない。驚愕させられるのは、ドイツ将校らが、自国のものではない秘密の作戦についてまで簡単に口にするという軽はずみな行為だ。ウクライナに関していえば、ウクライナ空軍はドイツ空軍の将校らが、「ウクライナにはある種の戦闘機がほとんど(「一桁程度」)しか残っていないという話をしているのを聞いて、びくびくしたにちがいない。ロシア側がそんな状況を逐一つかんでいたことは確かだ。ただしロシア軍将校らが、ドイツ将校らのこの行為に対して、哀れな不信感と冷めた喜びの入り交じった表情で首を振っていたことは想像にかたくない。

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最後になるが重要な点は、現実のことが頭に浮かんだ瞬間でさえ、タウルス作戦会議参加者たちは妄想的な計画をやめようとしなかった点だ。この会議を主宰していた空軍最高位ゲルハルツ総監も、たとえタウルスが配置されたとしても、そのミサイル数は最大100以内に抑えられ、タウルスを使ったとしても、「戦況を変えることにはならない(もちろんウクライナ側が好転するという意味で)」ことを分かっていた。さらに、もう1人の作戦会議参加者、将軍職にあるフランク・グレーフェ准将が強調したのは、クリミア大橋は標的として狙うのは難しい対象であり、攻撃を加えたとしても持ち堪えるのではないか、という点だった。こんな攻撃は、無駄でしかない、ということだ。確かにそのとおりだ。

それなのに、会議参加者の誰一人も、こんな作戦を実行すれば何が最も危険なのかについて思い至っていなかった。グレーフェ准将はマスコミがドイツ軍によるこの秘密作戦の手口を嗅ぎつけることを警戒していたが、そんなことはこの先起こるかもしれない最悪の事態から比べると児戯のようなものだ。タウルスを使ったこの子どもじみた戦略が逆の意味で、「戦況を変える」ことにつながりかねないからだ。つまり、これまでロシアは西側諸国のほとんどが事実上攻撃を加えてきた事実に目をつぶってきたのに、今後は反撃に転じるきっかけになるかもしれないのだ。その対象は、たとえばドイツだ。

この海軍将校らは、ドイツを守ることを誓約したはずだ。しかし彼らがただただ心配しているのは、ウクライナがロシアと戦う助けをどうできるか、という点にあるようだ。そんな作戦を実行すれば、ドイツがロシアの警戒網から逃げたがっていることがばれてしまう危険があるとはいえ、だ。実際面からいえば、このことについてのいちばんの問題は、これらの将校らが、ドイツ国家に忠誠を誓っているのか、ウクライナ(この件に関してはNATO)に忠誠を誓っているのかの感覚の違いが分からなくなってしまっているように見えることだ。2つ目の問題は、ドイツの閣僚や首相、さらには多くの一般ドイツ国民も、その区別が出来なくなっているように見える点だ。そういう意味では、タウルス作戦会議はドイツのウクライナ政策の勝利として歴史に記載されるかもしれない。ただし不毛な政策として。
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巨大製薬業者とそのサクラたちは、自分たちが作り出した作り話と真実のつじつま合わせをしなくてはいけなくなっている

<記事原文 寺島先生推薦>
Big Pharma and Its Shills Are Having to Adjust Their COVID Fiction to the Facts
筆者:ポール・クレイグ・ロバーツ(Paul Craig Roberts)
出典:グローバル・リサーチ  2024年3月7日
<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月12日


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mRNAワクチンが蔓延するなか人々が突然死し、腫瘍学者が癌件数の急増を報告し、これまでなかったターボ癌が発現し、COVIDワクチンを接種した女性たちから月経や生殖能力低下の問題が発生している問題を取り上げる論文が出され、若年層で心臓発作が生じ、平らで細長いパスタであるリングイネのような形をした今までにないような凝血が発生し、ギラン・バレー症候群や神経疾患、心筋炎、心膜炎、脊髄や脳の炎症、などあらゆる種類の健康異常が流行するなか、しっかりと抑制された言説による説明が必要となっている。

巨大製薬業者は、多額の補助金で飼い慣らした医学研究者をかき集め、この問題に対処しようとし、これらの健康異常が発生することは認めるが、発生することは「稀である」として矮小化しようとしている。

何とした出来レースだろうか。巨大製薬業者は世界各国の21名の医学「学者」の論文を寄せ集め、9900万人のワクチン接種者を対象にした研究の結論として、mRNAワクチンが有害事象を引き起こすことは「稀である」とした。

この研究の結論は、全てのmRNAワクチンにおいて、「心筋炎や心膜炎、ギラン・バレー症候群、静脈洞血栓症」について、「注意信号(この遠回しの言い方にお気づきあれ)」は存在してきたし、「さらなる調査が必要な他の注意信号が特定された」、というものだった。こちらを参照。

この結論は巨大製薬業者やNIH(国立衛生研究所)、CDC(疾病予防管理センター)、FDA(食品・医薬品局)などのカネで転がされている腐敗した米国医療業界が耳にしたくないものだったが、売女報道機関が、彼らのために手直しを入れてくれた。

ブルームバーグ・ニュースのジェーソン・ゲイル記者は、このワクチンの研究で、健康上における副反応とワクチンの関連が明らかになったが、そのような事例は数少なく、「稀なことである」と報じた。こちらを参照。

嘘つきのプロである、サイトのFact Check.orgはこう報じた。「大規模なこの研究により、COVID-19ワクチンのよく知られているがほとんど起こることがない副反応が確認された」と。

「大規模な」ということばと「ほとんどない」ということばにご注意いただきたい。いいかえれば、「ワクチン」の落ち度は、大したことはない、ということだ。

どちらも間違った表現だ。ウイルスそのものよりも、ワクチンの副反応で亡くなった人の方が多いのだから。

この恐ろしい「ワクチン」を擁護する文章の最初の数行において、factcheck.orgは「稀な」副反応を矮小化するために、まちがった主張を展開している。それは、このウイルスが「世界で何百万もの人々の命を奪ってきたし、ワクチンが出てこなければ、さらに何百万もの人々の生命が奪われていただろう。専門家や各国の行政医療当局が広く共有している共通理解は、COVID-19ワクチン接種により得られる利点は、それが引き起こす危険性を上回っているという事実だ」という主張だ。

言い換えれば、この愚かな「事実確認者ら」は、嘘だと分かっていて嘘をついている、ということだ。いまとなってはよく知られており、認められている事実は、このワクチンにはCOVIDから守ってくれる効果はなく、感染を阻止できず、このウイルス自体そんなに恐ろしいものではなく、死亡事例のほとんどが、免疫系が弱っている年配層や病人たち、あるいは効果的で普及している治療法を拒まれ、人工呼吸器をつけさせられることで、死期を早められた人々である、という事実だ。

何が米国民の国民性をこんなにも完膚なきまでに叩きのめしたのだろうか? カネのために真実や人の命を犠牲にしてまでも嘘をついているのに、そんな自分たちのことを「真実を確認するもの」と呼んでいるなんて。厚かましいにもほどがある。

我々が知っておくべきいくつかの注意点を挙げておく。1つ目。医療当局者らは、独立系科学者らの主張が正しかったことを認め始めている。なお、これらの独立系科学者らは、巨大製薬業者やその医療業界の従属者らからカネをもらっておらず、比較的少数しか存在しない。これらの独立系科学者らは躊躇うことなく、mRNA「ワクチン」は副反応を生じると声をあげていたのだが、いまになってやっと腐敗した医療業界もその主張の正しさを認識し始めたのだ。

2つ目。カネのために真実を売り渡す、科学者や医師、売女報道機関はわんさと存在する。これらの人々は毎日のように起こっている死亡事例を「稀である」と報じている。人々の死はこのワクチンにおかされた世界で毎日起こっているのに、だ。むかしむかし、はるか遠い昔、科学に資金を出していたのは、大学だった。いま科学資金を出しているのは、良からぬ企みを持つ外部の利害関係者だ。連中は完全に腐っている。

3つ目。西側の報道機関全体は、どんな難しい主題に関しても無能であり、承認された言説を与えられることで満足し、それを人々に垂れ流している。これらの人々は、テレビ画面の前に座って、ラジオのNPRを聞き、ニューヨーク・タイムズを読んでいる。 

その結果、正確で正しい情報は届かず、市民たちは本当のことを実感できなくなっている。

米国民、西側世界の人々全体、ロシア国民でさえ、次にくるでっち上げのパンデミック騒ぎを口を開けて餌をまっているアヒルのような状態にある。

次はエボラが使われるのだろうか? そうだとすれば、不正にエボラウイルスを武漢に送ったカナダ駐留の複数の科学者の役割はなんなのだろうか?

世界で最も恐ろしいウイルスを扱っているカナダの研究所が安全対策を強化したのは、捜査官が中国政府や軍と関係をもつ複数の研究員が、武漢の研究所と連絡を取り、生きたエボラウイルスを送付した ことを突き止めたことを受けてのことだった。こちらを参照。

なぜ西側諸国政府は、法を破り不当な生物兵器の研究をしているのか? なぜ各国議会はこのことについて何も行動を起こさないのか?

なぜ西側の人々は、このことを知らず、気にもとめていないのか?
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ウクライナ政府、EUの食品輸入制限を受け入れる用意がある – フィナンシャル・タイムズ紙

<記事原文 寺島先生推薦>
Kiev ready to accept EU restrictions on food imports – FT
2022年以降、EU圏にはウクライナからの安価な農産物が大量に流入
出典:RT  2024年3月6日
<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月12日


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RIAノーボスチ紙


ウクライナはポーランドとの論争を終わらせるためにEUとの貿易制限を受け入れる用意があるが、EUに対しロシア食品の輸入を禁止するよう求めている、とフィナンシャル・タイムズ紙が水曜日(3月6日)に報じた。

ウクライナのタラス・カチカ通商代表は、ウクライナ政府は農産物供給の制限を受ける用意があるが、EUはロシアとベラルーシからのそのような商品、特に穀物の輸入も禁止すべきである、と語った。

「おそらく過渡期には、ウクライナとEUの間の貿易の流れに対するこの種の管理された政策は、全ての関係国に必要となるでしょう」とカチカ代表はFTに語った。「ただし小麦に関しては、ポーランドの農家に問題を引き起こしているのはウクライナではなく、ロシアのほうです」と同代表は付け加えた。

EUは2022年、ウクライナからの穀物を世界市場に出荷できるようにするため、ウクライナ産農産物の関税と割当を撤廃した。しかし、供給量の多くが東欧諸国に溢れたため、東欧諸国の市場を不安定にし、地元農民の生活が危機にさらされている。

ポーランド当局は昨年、ウクライナ産農産物の輸入に国境を開放するというEUの決定によって生じた問題を解決するため、ウクライナ産食品を市場から一方的に遮断した。

2月には農民らが国中で一連の抗議活動を開始し、これによりウクライナとのすべての国境検問所がほぼ完全に封鎖され、全国の港や道路で混乱が生じた。また、抗議活動を行なった農民らがウクライナ産穀物を運ぶ列車を襲撃し、約180トンの穀物を地面に流出させた、と報じられている。

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関連記事:Ukraine demands compensation from Poland over dumped grain

カチカ代表によると、西側の支援者との緊張を緩和するため、ウクライナ政府は6月から卵や家禽肉、砂糖の輸入に制限を課すという西側諸国が提案した措置を受け入れた、という。ウクライナはまた、第三国への移送を除き、各国が穀物の市場を閉鎖することを認めることに同意する意向だ、という。

カチカ代表は、ウクライナの砂糖生産量が2023年に前年比7000トンから50万トンに急増したことを認めた。

「あまりにも早い増産でしたので、誰もが怖がるかもしれません」と同代表は認めた。

いっぽう、抗議活動を行なう農民らの圧力を受けて、ポーランド政府はロシアとベラルーシからの農産物輸入を禁止する必要性についてウクライナ側と合意した。規模ははるかに小さいものの、こうした輸入は衰えることなく続いており、ベラルーシやバルト三国を経由してEUに到達している。

ポーランドのドナルド・トゥスク首相によると、この措置はリトアニアも支持する、という。

トゥスク首相は月曜日(3月4日)、首都ビリニュスで行なわれたリトアニアのイングリダ・シモン首相との共同記者会見で、「欧州共同決定の方が、地域諸国の個別決定よりも効率的であると確信しています」と述べた。

公式データによると、ポーランドのロシアからの食品輸入額は2023年に3億5000万ユーロ(約560億円)で、ウクライナからの輸入額17億ユーロ(18億ドル)を大きく下回っていた。

しかし、FT紙によると、EU全体でロシア農産物を禁止することは、世界市場を混乱させ、発展途上国の危機を悪化させるとして、いくつかの加盟国がそのような動きに反対しているため、実現は困難だという。
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セルゲイ・ストロカン: ヴィクトリア・ヌーランドが辞めた本当の理由とは?

<記事原文 寺島先生推薦>
Sergey Strokan: Is this the real reason why Victoria Nuland quit?
バイデン氏とブリンケン氏は、ロシア嫌いではなく、中国嫌いの人物を選んだ。この選択はヌーランド氏には、訳の分からないものだったかもしれない。
筆者:セルゲイ・ストロカン(Sergey Strokan)。ロシア日刊紙、コメルサント紙論説委員
出典:RT 2024年3月8日
<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月12日


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ヴィクトリア・ヌーランド女史。写真:ケビン・ディエッチ/ゲッティイメージズ


ヴィクトリア・ヌーランド米国務次官の辞任が間近に迫っているが、彼女が国務省を予期せず辞任した理由についてはさまざまな説が浮上している。ロシア政府の考えによると、その原因が「反ロシア路線」と米国が一体として取り組んだ「ウクライナ計画」の失敗によるものだという。それとあわせて、米国政府は、現在インド太平洋政策の責任者であるカート・キャンベル氏を国務省の次席官僚に指名しようとしている。報道機関と専門家らはこれを、ウクライナに対する米国の関心の低下を背景に、アジアがワシントンの最優先事項となりつつある証拠だと解釈している。

ヌーランド国務次官によるこの発表は多くの人々から驚きをもって迎えられた。長い経歴を持つ米国の外交官であり、2014年のウクライナでのマイダン革命で積極的な役割を果たした彼女が人々の記憶にあるのは、キエフでクッキーを配ったことだけではなく、ここ十何年かのあいだ、主要な国際的な危機や紛争に関わってきたことにもある。

様々な政権下において米国務省で35年以上働いていた経歴をもつヌーランド国務次官のほうが、現職国務長官という肩書きをもつブリンケン氏よりも一見より強い印象が残る。火曜日(3月5日)、ブリンケン国務長官は急いで自らヌーランド国務次官の業績に賛辞を送り、おごそかに彼女に付き添って国務省から退出させ、即座に彼女を歴史と外交の記録に記載する、と表明した。6名の大統領と10人の国務長官に仕えてきたことを思い起こしながら、ブリンケン国務長官はジョー・バイデン政権下で彼女が果たした最後の職務において、ヌーランド国務次官は「世界の指導者たる米国」の再建という願望を具体化した、と褒め称えた。

同国務長官は、ロシア・ウクライナ戦争勃発以来、反ロシア同盟の形成という点においてヌーランド国務次官が果たしてきた役割に特別な敬意を払い、ヌーランド国務次官がおこなってきた努力は不可欠であり、それは外交官や学生たちによって将来研究対象とされるだろう、とした。

同国務長官によると、近年、ヌーランド国務次官が取り組んできた主な使命は、ロシアの「戦略的敗北」であり、ウクライナの「民主的・経済的・軍事的」自立を支援してきたことにある、という。しかし彼女が有する全ての経験や影響力にかかわらず、ブリンケン国務長官は彼女を慰留しようとはしなかったようだ。

ヌーランド国務次官辞任の知らせにより、ロシア政界の指導者や外交官、専門家、報道機関から雪崩のような反応が引き起こされた。

ロシアのマリア・ザハロワ外務省報道官によると、ヌーランド国務次官が辞任においこまれたのは、バイデン大統領が対ロシア政策を誤ったからだ、という。

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関連記事:Western ‘expertise’ on the Ukraine conflict could lead the world to a nuclear disaster https://www.rt.com/russia/593717-western-expertise-ukraine-conflict/

「これはヌーランド国務次官が関わってきた政策の失敗です。というのも、同国務次官は我が国に対して嫌露感情をもとにした政策を追い求めてきた中心人物だったからです」とザハロワ外務省報道官は述べた。同報道官によると、この先、職を去ることになるこの国務次官は、「国務省の代表的な高官であっただけではなく、米国の省庁間の協力体制に取り組む重要人物」だった、という。

「ヌーランド国務次官は、米国の反ロシア感情や反ロシア政策を調整する働きをしていました。ウクライナに関しては、特にそうでした。ヌーランド国務次官が理論家であったとは思えません。米国内には彼女以上に我が国を嫌っている人々もいます。しかし、彼女は真の調整者の役割を果たしており、反ロシア政策に関わっていたのです。そのような事情こそ、米国政府がヌーランド国務次官に別れを告げた理由なのです」とこのロシア外務省報道官は語った。

現在米国内で生じている論によると、ヌーランド国務次官の辞任は第一副外交政策責任者の座を争う権力闘争の結果である、という。

専門家の中には、(一般的に)意見のぶつけ合いというのは自分を有利に導こうとする水面下での戦いと見る向きもある。(しかし)すべてはアメリカの外交政策の長期的な形とその優先順位をめぐる争いの一部なのだ。

思い起こすべき事実は、昨年夏にウエンディ・シャーマン女史が米国国務次官補を辞任した後に、後任としてヌーランド女史が6ヶ月勤めた点である。しかし昨年末、ホワイトハウスはもう一人の米国の長い経歴をもつ外交官であるキャンベル氏を外交当局の第2位の役職の候補者に据える、という想定外の決断を下した。ヌーランド国務次官ほどは外交界において名を知られていないキャンベル氏は、欧州・大西洋地域ではなく、インド・太平洋地域で経歴を積んできた。

「ヌーランド女史は、恒久的にシャーマン女史の後任をつとめる候補者として妥当である、と考えられていた。しかしブリンケン国務長官は元国家安全保障会議アジア担当代表カート・キャンベル氏を候補者に選んだ」とニューヨーク・タイムズ紙はこの人事について報じた。ジェームス・カーデン元米国務省高官がRIAノーボスチ通信社にこう語っている。「私が本当に驚いたのは、ヌーランド国務次官がこれほど長く要職に就き続けてきたことです。カート・キャンベル氏が国務省で2番目の地位の役職に就くことになった時点で、ヌーランド女史の時代は終わった、と確信しました」と。2月6日の上院での投票において、キャンベル候補には党派を問わず広い支持が集まった。具体的には上院で92名の議員が支持票を投じ、反対票は5票にすぎなかった。

「バイデン大統領がカート・キャンベル氏を選んだことは、バイデン氏の前任者たちが何十年も前から着手した努力を継続したいという欲望の表れだ。それは、米国の外交政策の焦点を中国にうつすことであり、中国をこの先、米国が直面する主要な脅威ととらえることである」とAP通信はこの人事異動について報じた。

「カート・キャンベル氏はバラク・オバマ大統領政権下での『アジア基軸』戦略において重要な役割を果たしてきました。その戦略はいま、バイデン大統領の『インド・太平洋戦略』に引き継がれています」とロシア・中国友好・平和・開発委員会専門部会ユーリ・タブロフスキー議長が、コメルサント紙に語った。

「実際、キャンベル氏は反中国軍事同盟であるAUKUS(豪・英・米)やQUAD(4カ国間安全保障会議―豪・印・米・日)の創設に特に積極的に関わってきました。キャンベル氏を国務省第2位の高官に任命したことは、ホワイトハウスが長年取り組んできた中国封じ込めに取り組もうという姿勢の表れです。ことばや態度からは中国との和解を求めているように取れますが・・」とタブロフスキー議長は述べた。”

つまりタブロフスキー氏によると、「国務省第2位の地位を、1番ロシアを嫌っている人物から、1番中国を嫌っている人物にすげ替えた」ということだ。

この記事の初出は、ロシアの日刊紙であるコメルサント紙。RTが、翻訳・編集を行なった。
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ネタニヤフ首相はイスラエルを助けるよりも傷つけている-バイデン大統領

<記事原文 寺島先生推薦>
Netanyahu hurting Israel more than helping – Biden
ただし米国大統領は、何があってもユダヤ人国家を支援し続けると主張
出典:RT 2024年3月10日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月12日


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テルアビブで会談中のジョー・バイデン米国大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相。 © AFP / ブレンダン・スミアロウスキー


イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はハマスとの戦争が続く中、ガザ地区での民間人の死傷者を無視することでイスラエルに利益よりも害を与えているが、それは米国政府がこのユダヤ人国家への支援をやめるという意味ではない、とジョー・バイデン米大統領は述べた。

ガザ保健省によると、1100人以上が命を落とし、240人が人質に取られた、ハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃に対抗してイスラエル国防軍がパレスチナ飛び地であるガザ地区への攻撃を開始した10月7日以来、少なくとも3万960人が死亡、7万2524人が負傷した。

バイデン大統領は土曜日(3月9日)、MSNBC局とのインタビューで、イスラエル国防軍のガザ作戦のやり方を巡り、イスラエル首相を再び批判した。

「彼にはイスラエルを守る権利、ハマスを追求し続ける権利があるが、取られた行動の結果として失われる罪のない命にもっと注意を払わなければなりません」と米国大統領は強調した。

そうしないことで、ネタニヤフ首相は「イスラエルを助けるというよりもイスラエルを傷つけることになっています…それはイスラエルが取るべき立場に反しています。これは大きな間違いだと思っていますので、停戦を望んでいます」と語った。

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関連記事:Biden announces new method of delivering aid to Gaza

バイデン大統領は、イスラエルとハマスの停戦期間は6週間続き、捕虜の「大規模な」交換が行なわれるはずだと述べ、日曜日(3月10日)から始まるイスラム教の聖なる月であるラマダン期間中に戦闘に関して「何も起きるべきではありません」と付け加えた。

ネタニヤフ首相は今週初め、ガザでの停戦を求める国際的な圧力の高まりによっても、イスラエルは「戦争の完全勝利」が達成されるまでハマスと戦うという目標を諦めることはない、と繰り返した。

バイデン大統領は、木曜日(3月7日)に一般教書演説を行なった後、ホットマイク*でキャッチされた、紛争への対応を巡りネタニヤフ首相と「イエスに近づく」会談を行なうつもりだという発言について説明するよう求められた。
*話し手がマイクがオンになっていることを気付かずに話してしまうこと

「これは私の州の南部で使われる表現で、真剣な会議を意味します」と同大統領は説明した。

ネタニヤフ首相により「さらに3万人のパレスチナ人を死なせるわけにはいかない」が、「イスラエル防衛は(米国にとって)依然として重要であり、米国が全ての武器の供給をやめるような譲れない線を設定することはありません。そうなればイスラエルは自衛のための鉄のドームを維持できなくなりますから」とバイデン大統領は「鉄のドーム」と呼ばれるイスラエルのミサイル防衛システムに言及して述べた。「私は決してイスラエルを見捨てるつもりはありません」とバイデン大統領は断言した。

関連記事:Hamas responds to US-backed ceasefire plan

今週初め、ワシントン・ポスト紙は、米当局者が議会での機密会見で、米国政府が10月7日以降、イスラエルへの100件以上の武器売却を承認し、納品したと述べた、と報じた。出荷には数千の精密誘導弾、小径弾などの武器が含まれていた、と同紙は報じた。
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「ウクライナに行くべきではなかった」―バイデン大統領

<記事原文 寺島先生推薦>
‘We shouldn’t have gone into Ukraine’ – Biden
米国大統領は、重要な世界的事件や場所を再びごちゃまぜにした上で、自国のイラク侵攻に遺憾の意を表明した
出典:RT 2024年3月10日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月12日


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米国のジョー・バイデン大統領がまたもや公記録に残る失言を犯した。土曜日(3月9日)のMSNBC局とのインタビューの中でバイデン大統領は、実際には米国のイラクとアフガニスタン侵攻に言及していたのに、米国がウクライナに進出したのは間違いだった、と述べたのだ。

バイデン大統領はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相を批判する文脈において、ネタニヤフ首相はガザでのIDF(イスラエル国防軍)の軍事作戦中の民間人の犠牲を無視することで「イスラエルを助ける以上にイスラエルを傷つけている」と述べた。

この米国指導者は、紛争初期にイスラエルを訪問した際、9/11後に米国が犯した「間違い」をしないようネタニヤフ首相に警告したことを思いおこした。

「米国は間違いを犯しました。私たちはオサマ・ビンラディンを捕まえるまで追い続けましたが、ウクライナに行くべきではなかったのです…」とこの81歳の男性は語った。

ガザ保健省の最新データによると、10月7日以降、3万1045人が死亡、7万2654人が負傷しているという。この攻撃は、IDFがパレスチナ飛び地であるガザ地区への攻撃を開始してからの数字だ。この攻撃は、ハマスがイスラエル侵攻に対抗して行なわれたものだ。ハマスによるこの侵攻では推定1200人が亡くなり、200人以上が人質となった。

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関連記事:Netanyahu hurting Israel more than helping – Biden

バイデン大統領はすぐに自分のことばを訂正し、「イラクとアフガニスタンのすべてに踏み込むべきではなかった」と述べた。米国によるこうした軍事作戦は「解決よりも多くの問題を引き起こした」と彼は付け加えた。

ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、バイデンがウクライナをイラクやアフガニスタンと混同したに過ぎないというメディアの報道にモスクワが同意していないことを示唆し、皮肉を込めた。

「バイデン大統領は混同したわけではありません。彼は誰もが理解していることをもはや自分の中に留めておくことはできないのです――米国はウクライナでの計画全体で最も血なまぐさいやり方で自らの恥をさらしたのです」と同報道官は日曜日(3月10日)、テレグラム紙に書いた。

昨年のウクライナの反撃を撃退した後、ロシア軍は前線の陣地を着実に改善しており、先月にはロシアのドネツク人民共和国にある戦略的拠点であるアブデーフカやその他いくつかの入植地を占領した。

長くくすぶっていたロシアとウクライナの紛争が2022年2月に武力衝突に激化して以来、米国はウクライナの主要支援者であり、1110億ドルを超える軍事・金融支援を提供してきた。しかしここ数カ月、バイデン政権がウクライナにさらに600億ドルを拠出しようとする共和党の抵抗に打ち勝つのに苦労しているため、米国からの援助は大幅に縮小している。

関連記事:US ‘will not bow down’ to Russia – Biden

バイデン大統領が国や場所を混合させるのは初めてではない。6月には「プーチン大統領はイラク戦争に負けつつある」と発言した。さらに最近の失策として、同大統領は1週間前、米国と友好諸国が「ウクライナへの食糧と物資の空輸」について話し合っていると述べたが、実際にはガザへの空輸を意味していた。
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ハイチ、大規模脱獄事件後に非常事態宣言発令

<記事原文 寺島先生推薦>
State of emergency declared after massive jailbreak in Haiti
このカリブ海の国の2大刑務所から武装集団襲撃により数千人の受刑者が解放された
出典:RT 2024年3月4日
<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月11日


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フランスのAFPTV通信局の報道から入手した静止画。2024年3月3日にハイチのポルトープランスにある主要刑務所近くで、数千人の受刑者による脱獄後にタイヤが燃えている様子が映されている。© AFP / ラッケンソン・ジーン / AFPTV / AFP


ハイチ政府は、週末に武装集団がこのカリブ海の国の2大刑務所を襲撃し、数千人の囚人が逃亡したことを受けて、3日間の非常事態と夜間外出禁止令を発令した。このギャングの幹部らはケニアを外遊中のアリエル・アンリ首相の辞任を要求している。

日曜日(3月3日)の政府発表を引用した複数の報道機関による報道によると、襲撃された刑務所は首都ポルトープランスにあるハイチの国立刑務所と、近くのクロワ・デ・ブーケにある別の刑務所だ、という。ポルトープランスにある施設の推定4000人の受刑者ほぼ全員が逃亡したと報告されている。この攻撃により、警察官を含む少なくとも12人が死亡した、と報じられている。

首相の海外滞在中に政府の責任者を務めるパトリック・ボワヴェール財務大臣は警察に対し、捕虜の奪還と外出禁止令の執行に「あらゆる法的手段を自由に使う」よう呼び掛けた。

最近の暴力行為の激化は、木曜日(2月29日)にヘンリー首相がハイチのギャングと戦うための国連支援の治安部隊を確保するためにナイロビを訪れたときから始まった。アンリ首相出発後、元警察の高官で、現在はギャング連合を運営し「バーベキュー」のあだ名を持つ人物が、アンリ首相の帰国を阻止するためにこの組織的な攻撃をおこなった、と発表した。このギャングの主導者は、急増している暴力行為の犯行声明を既に出している。

関連記事:Kenya ready for peacekeeping mission in Haiti

メディア報道によると、ポルトープランスで投獄された者の中には、2021年のハイチのジョヴネル・モイーズ元大統領殺害に関連して起訴された容疑者も含まれていた。アンリ首相はモイーズ大統領暗殺後に首相の座を引き継ぎ、議会選挙と大統領選挙の実施計画を繰り返し延期してきたので、これらは10年近く実施されていない。

統計によると、ギャング勢力がハイチの首都の最大 80% を支配している、という。国連は最近、昨年、殺害や負傷、誘拐を含むハイチのギャング暴力の犠牲者は8400人以上だった、と発表した。この数字は2022年の2倍以上だ。
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米国は日本をアジアのNATOに引き込みたがっている、との報道

<記事原文 寺島先生推薦>
US reportedly wants to drag Japan in to Asian NATO
米国政府は防衛技術分野での協力に日本政府を引き込む協議を開始した、と関係者が日経アジアに語った
出典:RT  2024年3月4日
<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月11日


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Kiyoshi Ota / Getty Images


日経アジア紙は土曜日(3月2日)、米国当局者の話として、米国がAUKUS安全保障連合の下での兵器開発に日本を招待することについて英国および豪州と協議している、と報じた。

この提携の公式発表は、来月の岸田文雄首相のワシントン訪問中に行われる予定である、と同紙は報じ、日本は2021年に設立された三国間軍事技術共有枠組み「AUKUS」に協力するよう、豪・英・米から招待される最初の国になる、と指摘した。

この報道により強調されていたのは、日本がこの軍事同盟に正式に加盟するという話は現時点ではなく、日本の参入はこの同盟のいわゆる第2柱に基づく最先端防衛技術の開発に関連した非常に特殊な事業に限定される予定であるという点だ。

AUKUS協定によると、第1の柱の焦点は豪州による通常武装原子力潜水艦の取得の支援であり、第2の柱の焦点は人工知能や量子計算、海底ドローン、極超音速ミサイル、電子戦技術などの戦闘能力を備えた先端技術の開発と共有にある、という。

ホワイトハウスと国防総省は日経アジアの報道を肯定も否定もしていないが、米国家安全保障会議のミラ・ラップフーパー東アジア・オセアニア担当部長は先月、米国政府が「非常に近いうちに」第2柱に新たな国を招待する意向があることを示唆していた。

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関連記事:China issues nuclear warning over AUKUS pact

先月、豪州のリチャード・マールズ国防大臣は、技術開発に関して日本とより緊密に協力したい、と述べたが、原子力潜水艦事業への日本の関与については否定し、協力関係が確立されるまでには時間がかかることを示唆した。さらに、第2柱計画も、まだ形成段階にある、とも述べた。

日経アジアの情報筋によると、豪州はAUKUS協定に追加諸国を含めることに懐疑的であり、そうすることで技術共有が複雑になり開発が遅れることを懸念している、とのことだ。

特に日本に関しては、AUKUSの下で兵器開発に全面的に貢献する前に、サイバーセキュリティ分野で大幅な進歩を遂げる必要があるのではないかとの懸念がある、と報じられている。

ある国務省高官は同紙に対し、サイバーセキュリティが「最重要」であると説明し、その理由は「(中国)などの敵対国が確実に好機を見出していることを我が国は理解しており…(そして)防衛の貿易を通じて我が国の防衛情報を入手しようとすることに多大な関心を持っているからである」と述べたという。

いっぽう、中国はAUKUS協定の成立以来、この協定を非難し続けているが、その理由として、豪州に原子力潜水艦を装備するという目的は「原子力を拡散する深刻な危険性」もたらし、アジア太平洋地域を脅かすことなるからだ、主張している。
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「視聴者が多すぎる」 – 英国国会議員がRT禁止の理由を説明

<記事原文 寺島先生推薦>
‘Too many people watched’ – UK MP explains why RT was banned
英国の言論の自由への取り組みは茶番だとジョージ・ギャロウェイ国会議員が主張
出典:RT  2024年3月5日
<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月11日


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© RT


英国議会議員に選出されたばかりのジョージ・ギャロウェイ議員は火曜日(3月5日)、英国の報道の自由の状況と、中東とウクライナにおける英国政府の破滅的な政策についてRTと語った。

ギャロウェイ議員は先週のロッチデール補欠選挙で保守党と労働党の両候補を破り、両主要政党の合計の2倍の票を獲得した。リシ・スナク首相は、この結果はこの結果を「憂慮に堪えない」ものであり、「我が国の民主主義そのもの」を脅かすものだと非難した。

しかし、ギャロウェイ議員が指摘したように、彼は合計7回議会に選出されており、その当選回数はスナク首相や労働党のキア・スターマー党首をはるかに上回っている。

「この人たちは偽善者です。彼らが口にする民主主義、人権、法の支配、ルールに基づく国際秩序など、『豚に口紅』(豚のように醜いものを綺麗に見せようと努力しても無駄に終わるだけ_英辞郎)にすぎません。より美しく見せる必要を感じなくなったときはいつでも、そんな口紅は拭き取るでしょう」と彼は主張した。

「金曜(3月1日)の(ダウニング街10番地での)スナク首相の私の選挙に関する演説で明らかなように、選挙結果を取り消すことさえ彼らには不可能ではないのです」と同議員は付け加えた。

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関連記事:George Galloway is not a threat to democracy – only to the elite hypocrites running the UK

英国当局はRTとイランのPressTVを完全に禁止し、中国のCGTNのライセンス更新を拒否し、ベネズエラのTeleSurなどの放送局を遮断した。

「考えてみれば、理由は非常に簡単です。あまりにも多くの人がこれらのテレビチャンネルを見ていたからです。RTの視聴者が多かったからです。英国だけではなく、ドイツではなおさらです。だからRTは禁止されたのです。あまりにも多くの国民がそれを見ていたからです。どこが自由のため、なのでしょう?」とギャロウェイ議員は述べた。

英国における報道の自由の現状を最もよく表しているのは、「私の親友がベルマーシュ最高警備刑務所の地下牢に横たわっていることです」とギャロウェイ議員は語った。

「彼の名前はジュリアン・アサンジです。彼は無罪なのに有罪判決を受けています。それにも関わらず、彼は大量殺人犯やテロリストとともに最悪の人々のための英国最悪の刑務所に拘留されています。罪状は? 出版人として真実を伝えてくれたことです。」

同議員はRTとの対話に対して政府が報復する可能性があることを認めたが、「気にしません」と述べた。

「私は誰とのインタビューにも応じています。私は自由人であり、選挙で選ばれた自由人です。私には話す権利があり、話を聞きたい人になら誰でも話し続けるつもりです。物事を隠しても何も解決しません。国民が異なる視点を見聞きすることを遮ることでは、何の解決にもならないのです。」とギャロウェイ議員はRTの長年の呼びかけ文句である「もっと質問せよ」を思いおこしながら語った。

ギャロウェイ議員がRTの取材に応じるのはこれが初めてではない。同議員はRTに多くの論説を執筆し、議員を離れている期間に「世界を駆け巡るスプートニク」と呼ばれる自身のテレビ番組の司会を務めたこともある。


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マレーシア首相、イスラエルの「殺人的暴走」に対する西側諸国の偽善を非難

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Malaysian PM slams West’s hypocrisy over Israel’s ‘murderous rampage’
アンワル・イブラヒム首相、ウクライナでのロシアの軍事作戦を非難しながらガザでの停戦は支持しないという西側の二重基準を指摘
出典:RT  2024年3月7日
<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月11日


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マレーシア首相アンワル ・イブラヒム© Getty Images / Annice Lyn / Stringer


マレーシアのアンワル・イブラヒム首相は、国際法を選択的に適用している、と西側諸国の指導者らを非難し、ウクライナでのロシアの軍事作戦を非難しながら、イスラエル・ガザ戦争での停戦には応じない点を指摘した。

アンワル首相は木曜日(3月7日)、キャンベラにあるオーストラリア国立大学で講演し、西側諸国は60年にわたりイスラエルに「パレスチナ人に対する殺人的暴行」を続ける「白紙委任状」を与えてきた、と述べた。

「残念ながら、ガザ地区で展開し続けている胸が張り裂けるような悲劇は、非常に重要視され、もてはやされてきた、『規則に基づく秩序』がもつ利己的な性質を露呈させることになりました」と同首相は主張した。

ロシア・ウクライナ紛争、イスラエル・ガザ紛争に対する西側諸国の対応の違いや一貫性のなさは「理にかなっていません」と同首相は強調した。さらに、インド太平洋諸国を含む他の国々がこの西側による国際法の適用における矛盾に気付いていないのだろうと信じようとすることは「無駄足だったのです」とも述べた。

アンワル首相はまた、オーストラリアに対し、ガザ地区の国連援助機関UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)への資金提供を復活するよう求めた。

オーストラリアやカナダ、ドイツ、米国、英国、日本、オランダなどが今年初めにUNRWAへの資金提供を停止したのは、UNRWAが10月7日のハマスのイスラエル攻撃に同機関の職員12人が参加した疑惑について調査を開始したことを受けてのことだった。

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ガザ紛争は10月7日、パレスチナ過激派組織ハマスがイスラエルに国境を越えて奇襲攻撃を開始し、約1200人が死亡、約250人が誘拐されたことを受けて激化した。これに応じて、イスラエルはこのパレスチナ飛び地であるガザ地区に大規模な空爆と地上作戦を開始した。ガザ保健省によると、この猛攻撃で3万人以上が死亡したとのことであり、国連は食糧と医薬品の深刻な不足による前例のない人道危機を警告した。
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国防総省は、ウクライナへの軍事支援は米国にとって経済的に大きな恩恵になる、と主張

<記事原文 寺島先生推薦>
Pentagon claims economic bonanza from arming Ukraine
テキサスからオハイオまで、全米の労働者は、ウクライナのために武器を調達する米国政府の施策により恩恵を受けている、とロイド・オースティン国防長官は主張
出典:RT 2024年3月6日
<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月11日


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2024年2月29日にワシントンDCで行われた下院軍事委員会の公聴会で証言するロイド・オースティン米国防長官。© アレックス・ウォン/ゲッティイメージズ/AFP


ロイド・オースティン国防長官は、ウクライナ紛争は米国の軍産部門でより多くの雇用創出を可能にし、米国経済にとって恩恵である、と述べた。

火曜日(3月5日)のホワイトハウス競争審議会の会合で演説した同国防総省長官は、特にウクライナとロシアの紛争を考慮して、米国は引き続き防衛産業の強化を推進する、と約束した。

オースティン国防長官は、ウクライナに対する米国の軍事援助は「命を救い」、ウクライナの戦いを継続させただけでなく、米国経済の強化にもつながった、と主張した。

「これらの投資により施設が拡張され、米国民労働者の雇用が創出されました。そして、ウクライナを守るために私たちがウクライナに送った武器は、テキサスからオハイオ、アリゾナに至るまで、全米の米国民労働者によって米国で作られたものです」と付け加えた。

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オースティン国防長官は、ウクライナ紛争は軍事生産を改善する必要性も浮き彫りにしているとし、米国の同盟諸国との連携を強調した。同国防長官はさらに、ウクライナに600億ドルを充当する国家安全保障予算案を採択するよう米国議員らに要請した。ホワイトハウスにメキシコ国境の治安危機への対応を要求してきた共和党の反対により、この法案の可決は議会で未だに停滞している。

キール世界経済研究所によると、米国はウクライナの主要な軍事支援者であり、2022年1月から2024年1月までにキエフに約450億ドル相当の兵器を提供しており、その総額は700億ドル以上に達している、という。同研究所の報告書では、米国によるウクライナへの武器供与の推進が、米国の武器の備蓄に重大な負担をかけていることが示唆されている。

ジョー・バイデン大統領政権の高官らは、ウクライナ資金のほとんどが米国内で使われていると主張しているが、一部の共和党議員は、ホワイトハウスが税金を外国のために使い、国内で生じている問題に直接使われていない、と批判している。

ピュー・リサーチ・センターの12月の世論調査によると、米国人の31%は米国が提供しているウクライナ支援は多すぎであると考えており、29%は現在の支援規模がほぼ適切だと答えている。

ロシアは西側諸国のウクライナへの武器輸送を繰り返し非難し、紛争を長引かせるだけだと警告している。ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は12月、米国は米国の納税者から資金を引き出せる状況が続く限り、2024年もウクライナ紛争を煽り続ける可能性が高い、と述べた。
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アヴディエフカを超えて

<記事原文 寺島先生推薦>
Transcending Adveevka
筆者:ペペ・エスコバル (Pepe Escobar)
出典:ストラジック・カルチャー・ファウンデイション 2024年2月17日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月11日

もちろん、ウクライナの代理戦争はアヴディエフカで終わることはなく、10年近く続くドネツク山麓での戦いは続く。

船酔いした船員たちは、故郷へ漕ぎ出す。
手ぶらの軍隊は、家に帰る
(Your empty-handed armies are going home)


アヴディエフカ。まるで呪文のような名前だ。デバルツェボ*やバフムート**のように。呪文は煮えたぎる大釜の姿を呼び起こす。
*デバルツェボの戦いは、ウクライナのドンバス地域での内戦中の2015年1月14日から2月20日までの間、ドネツク人民共和国 の親ロシア派分離主義勢力がドネツィク州のデバルツェボ市の再奪回を試みた戦い。2015年2月18日にウクライナ軍が撤退し、分離主義勢力が勝利した。
**バフムートの戦いは、2022年8月1日~2023年5月21日まで続いたロシアによるウクライナ侵攻のうち、ドネツィク州バフムートの支配権をめぐるロシア連邦軍及びワグネル・グループとウクライナ軍による一連の軍事衝突。ロシア軍は5月21日時点でバフムート市のほぼ全域を占領。


現状では、すべてが電光石火のスピードで動いているため、包囲の大釜が閉じられるためにはあとわずか2キロだ。事実上、すべての道路とぬかるんだ小道は、ロシアの大規模な銃火器の統制下にある。ウクライナ軍(AFU)の兵士は6000人ほど残っているかもしれない。彼らはどこにも行くところがない。彼らはすでに地獄にいる。

キエフでのやっかいな権力争いで、AFU総司令官に任命されたばかりの 「虐殺者」シルスキーは、さっそく新しい大釜に着手した。古い習慣はなかなか消えない。

AFU戦闘員の士気と心理状態はボロボロだ。アゾフ大隊のネオナチは、大砲、FPV*、FAB**によって壊滅させられている。
*FPVは、First Person Viewの頭字語、「一人称視点」のドローン。
**FAB-3000は、3,000キログラムの無誘導発射体は、主にバンカーなどの堅牢な施設の破壊を目的として設計された。爆発質量は1,400キログラム、潜在的な破壊半径は46メートル。


それでも、AFUの将兵たちは、イロヴァイスク*とデバルツェボの再演という、もうひとつの「勝利」のための宣伝の舞台を用意している。実際の退却、避難、「引き抜き」が地獄の回廊を通して進行するだろうが。
*イロヴァイスクの戦い(Battle of Ilovaisk)は、2014年8月7日、ウクライナ軍と親ウクライナ準軍事組織が、親ロシア派に占領されているドネツィク州イロヴァイスク市の奪回を試みた戦闘である。

実際、時間ぎりぎりで地獄からの脱出に成功した兵士はザルジニー元将軍だけだった。ディランの言葉を借りれば、
「Strike another match/ go start anew. (もう一つの闘いを、そして新たな開始を)」
である。


抵抗の枢軸とスラブの鏡

ほんの数日前、ドンバスを横断する目が回るような旅をしていたとき、*アヴディエフカという呪文がいたる所から聞こえてきた。ドネツク西郊外の暗闇に包まれた秘密施設での会合で、正教徒大隊の2人の最高指揮官が戦術を議論しながら、アヴディエフカの陥落は数日から最大でも数週間の問題だと指摘した。
*アヴディエフカは、ウクライナのドネツィク州ポクロウシク地区にある都市。カームヤンカ川の河岸に位置する。

その象徴は極めて超越的だ。キエフは10年近く、アヴディエフカをノンストップで要塞化してきた。基本的には、ドネツクやドンバスの他の地域の市民を無差別に、無限に砲撃し続けるためだ。ドネツクは依然として極めて脆弱であり、砲撃は続いている。この歴史的な鉱山の町、そして周辺の田園地帯の住民の強さ、回復力、信念には深く心を動かされる。

アレクサンドル・ドゥーギン*との特別な対話の中で、私たちはノボロシア**の労働者階級がパレスチナやイエメンの抑圧された人々の精神的な兄弟であることを、直接的にも間接的にも明らかにした。そう、西アジアにおける抵抗の枢軸は、草原の黒い土壌におけるスラブの抵抗の枢軸と鏡のように重なる。
*アレクサンドル・ゲーリエヴィチ・ドゥーギンは、ロシアの政治活動家、地政学者、政治思想家、哲学者。 ソビエト連邦モスクワ出身。2008年から2014年までモスクワ大学で教授を務めた。クレムリンに影響力を持つ存在とされ、レフ・グミリョフに始まるネオ・ユーラシア主義の代表的な思想家の一人とされる。
**ノボロシア (新ロシア)。 ウクライナからの分離独立を宣言した同国東部の分離・独立運動でできた国家。ノボロシア人民共和国連邦、またはノボロシア連邦。ロシア政府は「ノボロシア」と呼んでいる。


ロシアは集団的な西側に対する文明戦争に引き込まれたかもしれないが、それは精神的な戦争でもある。ウクライナにおける覇権国によるロシアへの代理戦争は、ロシア正教に対する西側の虚無主義の戦争と同様に、地政学的な賭けである。

私はある司令官に、正教とシーア主義の平行性について言及したことがある。彼は戸惑ったかもしれないが、確かに意図を理解してくれた。

結局のところ、正統派キリスト教とイスラム教を信じるがゆえに拒絶され、嫌がらせを受け、爆撃を受けた人々が、超越的な生存戦争のために正統派とイスラム文明を再び目覚めさせた(信仰を支えとして)と、彼は本能的に気づいたに違いない。

アヴディエフカの呪文、それは聖母マリアがやがて慰めを与えてくれるように、このような困難な時代の触媒のようなものであるが、それをはるかに超えている。ドンバスのこの目まぐるしい旅で私に衝撃を与えたのは、全能の民衆の力である。パレスチナ、シリア、レバノン、イラク、イエメンを含む大シリア全域に散らばる人々と同様に、ドンバスの住民こそがノボロシア完全解放の真の英雄なのだ。

彼らは、シオニズムと、その終末論的な駐屯地入植者である植民地支配の子孫が聖地を占領して以来、アヴディエフカの煮えたぎる大釜よりもずっと有毒で、ずっと長い間、地上の地獄に耐えてきた魂なのだ。

ノボロシアの人々は、イエメンのフーシ派と同様に、そのDNAに信仰を刻み込まれている。私が前線に近いノボロシアで出会った、深く献身的な指揮官や兵士たちは、民衆の総意を反映している。


希望の本道を行く冒険者たち

ベビーブーマーの欧米人にとって、私たちが旅に戻るときにディランに言及せざるをえない。
「本道は冒険者のためにある。感覚を磨け」。
ノボロシアの黒い大地を横断する究極の冒険者は、なぜか、自分たちの土地を守るために不滅の信念の力を呼び起こす志願兵であり、契約兵である。

包囲の大鍋が極限まで煮えたぎったときに、滅びるか降伏するかの西側ゲームの駒たちには、「空もあなたの下に崩れ落ちてくる」ということだ。

シェリー*は直感的に、私たちは誰もが忘却に反抗していること、つまり死が私たちを断罪していることを理解していた。しかし、この反逆は2つのまったく異なる道筋をたどることがある。
*パーシー・ビッシ・シェリー(Percy Bysshe Shelley、1792年~1822年)は、イングランドのロマン派詩人。小説家のメアリー・シェリーは妻。ここでは夫の方を言うのか?

権力に酔いしれた人間は、目の前のすべてを破壊し、そして順番に破壊されていく(それが現在の「嘘の帝国」の運命である)。

そして、詩人や精神的な戦士がたどる道もある。その魂はエオリアン・ハープ*であり、目に見えない巨大な奇跡の力を呼び起こす。
*エオリアン・ハープは弦楽器の一種。ウインド・ハープとも。自然に吹く風により音を鳴らす。ギリシャ神話の風神アイオロスに由来する。

もちろん、ウクライナの代理戦争はアヴディエフカで終わることはなく、10年近く続くドネツク山麓での戦いは続くだろう。

プロパガンダによるテロ攻撃はさらに続くだろうし、市民の窮状はかなり長期化するかもしれない。しかし、すでにはっきりしているのは、千年の歴史を持つロシアの土地でロシアの魂を打ち負かすことを夢見る、下劣な「ルールに基づく秩序」のチェスプレイヤーは、どうしようもなく破滅の運命をたどるだろうということだ。
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機密外交公電の漏洩により、CIAが2004年のハイチのクーデターを画策した事実があきらかに

<記事原文 寺島先生推薦>
Secret Cable: CIA Orchestrated Haiti’s 2004 Coup
筆者:ジェブ・スピローグ(Jeb Sprague)・キット・クラレンバーグ(Kit Klarenberg)
出典:INTERNATIONALIST 360° 2024年3月1日
<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月10日


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グレー・ゾーンが入手した、秘密の外交公電により、2004年、ハイチで人気のあったジャン=ベルトラン・アリスティッド大統領を暴力的に失脚させた事件の際にCIAのベテランの役人が大きな役割を担っていたことが明らかになった。



2002年8月にハイチのゴナイーヴで起こった大規模な脱獄事件では、当地の刑務所の壁がブルドーザーで破られ、武装したアミオ・「クバーン」・メタイエの支持者らがその施設から逃げ出した。メタイエは、ハイチの警官らに嫌がらせをしたことにより、数週間前に拘留されていたギャングの親玉だった。メタイエは他の158人の囚人と共に脱獄した。その中には、1994年4月のラボトー大虐殺事件の加害者らもいたが、この事件では何十人ものハイチ国民が殺害され、追放された。この事件の被害者は、反帝国主義者である人気のあったジャン=ベルトラン・アリスティッド大統領の支持者たちだった。

米国情報公開法(FOIA)に基づきグレー・ゾーンに渡された文書により、何らかの意図があったわけではないのだが、この脱獄事件が複雑な米国諜報機関による工作の一部であり、その狙いはアリスティッド大統領政権の弱体化にあったことが明らかになった。この工作の中心にいたのは、ジャニス・L・エルモアだった。この人物は、CIAの秘密工作活動をおこなっていたが、表向きはハイチの首都ポルトープランスの米国大使館内の国家「政府局」担当官という肩書きだった。

この脱獄劇により暴力的な政権転覆工作が動き始め、最終的には、2004年2月29日のアリスティッド大統領失脚につながった。追放され南アフリカに飛ばされたアリスティッドは、自分は米軍により「拉致」されたと主張し、この件を画策した米軍を直接に非難した。アリスティッドの母国はすぐさま専制的破綻国家におちいり、無慈悲な民兵らが国民たちに目もくれない勝手な振る舞いを見せていた。米海軍、のちには国連軍が「平和維持」のためという口実で派遣されたが、実情は、武装した反クーデター勢力だけではなく、激怒した反政府活動者や市民らをも暴力的に取り締まっていた。

2022年、元ハイチ在留フランス大使は、仏・米両国が、実際に「クーデター」を画策した事実を認め、その理由は「おそらく」アリスティッドが何度も繰り返し要求を出していたことにあったと認識していた、と述べた。具体的に、アリスティッドは、1825年以来、ハイチ国民を奴隷扱いしてきたフランス政府から受けてきた苦難の賠償金として210億ドルの支払いをフランス政府に求めていたのだ。この元大使がニューヨーク・タイムズ紙に語ったところによると、アリスティッドを追放したことで、賠償金を求める声が弱まり、「仕事がしやすくなりました」とのことだった。

米国当局者らは、アリスティッド失脚には無関係である、と繰り返し否認し、ハイチには、秩序回復のためクーデター後に介入しただけだ、と主張してきた。しかしグレー・ゾーンが入手した秘密の外交公電には、全く違う話が書き込まれていた。

アリスティッドは追放され、その支持者は虐殺された

1990年12月、37歳のカリスマ的存在のカトリックの司祭だったジャン・ベルトラン・アリスティッドは、ハイチで史上初の民主的な大統領選挙で大勝し、大統領に選ばれた。民主化と国家主権を掲げて大統領職に就いたアリスティッドは、「解放の神学」の実現を希求していた。この「解放の神学」とは、革命を通じて虐げられた人々を解放することを提唱するキリスト教哲学の一つである。

しかし就任式後たった7ヶ月で、アリスティッドは米国で訓練を受けたハイチ軍の隊員に銃を突きつけられてポルトープランスの大統領宮殿から追い出され、亡命を余儀なくされた。その後3年以上の間、ハイチは残忍な軍事政権により支配され、何千もの人々が軍や警察、ファシスト民兵らにより虐殺された。

その恐怖の治世が絶頂に達したのは、1994年4月22日のことだった。その日、軍と民兵隊らがゴナイーヴ市のラボトー地区近くで、親アリスティッド派を激しく攻撃した。多くの住民が大規模な抗議活動に参加しており、退陣させられていた元大統領の復権を求めていた。明け方におこなわれた急襲において、兵士達は一軒一軒家を回り、住民を打ちのめし、逮捕した。その中には子どもたちも含まれていた。さらに兵士達は、通行人や逃げようとした人々に無差別に発砲した。その発砲が終わったときには、少なくとも30人の地元の人々が亡くなっていた。

ラボトー虐殺事件が、アリスティッドが亡命中にハイチの軍事政権がおこなった唯一の虐殺だったわけでは全くなかった。しかしこの事件が、人道に対する罪として裁判となった、ハイチの歴史上初めての事例となった。2000年9月、59名の被告のうち53名が、この虐殺事件に加担した罪で有罪判決を受けた。その中には、1991年のクーデターの指導者らも含まれており、本人らが出廷しないなかではあったが、有罪となった。

当時、ニューヨーク・タイムズ紙は以下のような記事を出した。「この裁判はハイチにとって重要な転機となった。というのも、軍や民兵隊の支配者層やその部下らが裁判にかけられる第一歩となったからだ。彼らの罪状は、元大統領の失脚後の暴力的な軍事政権下における人権侵害であった」と。

自国やカリブ諸国の市民からの圧力が強まるなか、1994年10月15日、米国政府は選挙で選ばれたアリスティッド政権の復活を約束した。この動きを支援するために、2万人以上の米軍兵士が、カリブ共同体(CARICOM)の少人数の部隊とともに、ハイチを一時的に占領した。選挙で選ばれた政府が復活したことで、大虐殺は終結した。アリスティッド政権はついに、警察組織の再建とハイチの悪名高い抑圧的な軍の解散に着手することができ、そのいっぽうで、学校建設計画など、貧困層が利益をえる計画が開始された。

これらの計画はアリスティッドの後継者であるルネ・プレヴァルが1996年に大統領になったあとも継続された。プレヴァルは、進んで民営化を活用したことで、民主運動の支持者の多くを落胆させたが、2001年アリスティッドが92%近い得票率を得た大勝で大統領に再選されたときは、ハイチの国家運営は軌道に乗ったかのように見えた。

しかしその数ヶ月後、米国のジョージ・W.ブッシュ大統領がハイチに壊滅的な制裁を課し、世界銀行とIMFの貸付金を凍結させ、さらにハイチ政府に対し米国からの支援や開発援助を打ち切った。米国側がこの破壊的な措置を正当化するために、選挙を拒否したハイチの野党勢力が存在したことを指摘し、ハイチは選挙で不正があったと主張した。ただし、世論調査によると、有権者はアリスティッドを強く支持しており、選挙を拒否した勢力には同意していないことが分かった。

そのような介入に屈しなかったアリスティッド政権は、即座に貧困層の結集や市街地での内戦の休戦、医療制度や教育制度の強化、最低賃金の倍増、民兵隊や民兵隊への資金提供者の責任追及などに取り組んだ。さらに同大統領は、キューバとの外交関係を復活させ、キューバの医療団がハイチ入りできる道を開いた。

平均的なハイチ国民には人気が高かったこれらの計画だが、地元の反対勢力や米国政府内の反対勢力の支援者らからは、政治上緊急に取り組まねばならない脅威として捉えられていた。ブッシュ政権がハイチに対する開発援助を禁止したことで、ほとんどのNGOや他国の政府が、ハイチに対する支援を中断するよう圧力をかけることに成功した。さらに、米国の諜報機関の影の別働隊であり、外国の選挙に影響をあたえるために設立された組織である全米民主主義基金(NED)が、まとまっていなかった反政府勢力を「民主主義促進派」というひとつの傘下の組織にまとめあげた。

ほどなく、民兵隊による暴力的な工作が勃発し、ポルトープランスの政府の基盤組織を標的にし始め、その後その工作は地方にまで広がった。当時地方においては、アリスティッド氏と関係の深い勢力であるラバラス派が深く支援されていた。この騒乱のさなか、2002年8月、先述の大規模な脱獄事件がゴナイーヴで実行され、メタイエが数十人の民兵隊員や反政府ギャングらとともに解放されたのだ。

動かぬ証拠

「完全否定推奨」という印がしっかりと押されている、2002年9月18日付けの以前は機密にされていた外交公電が、ポルトープランスの米国大使館からコリン・パウエル米国務長官あてに送付された。その電報には、アリスティッドの「盟友」であるペール・デュバルシンが外交使節に近づいてきて、米国大使館の車が、脱獄事件の前夜にゴナイーヴで目撃されたことに「不満をこぼしていた」ことについて書かれていた。この電報によると、ドミニカ共和国のハイチ駐在大使は、アリスティッド自身がこの件を問題視し、ジャニス・エルモアという米国の役人が不安定化工作の首謀者であると指摘した、と述べている。

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米国大使館が発行した極秘公電によると、CIA職員とされる人物が、最終的にハイチの選挙で選ばれた政府を転覆させた悪名高い脱獄事件の周辺にいたという。

この公電によれば、脱獄の直前、エルモアは突然、大使館職員に、キャップ・ハイティアンで会議があり、「陸路で戻る」と伝えた、という。職員は「ゴナイーヴでの旅行と、そこへの旅行が禁止されていることについて、彼女に注意を促した」が、それに対して彼女は、単にその地域を「通過」するだけであり、警察の護衛があると付け加えた、という。

大使館のルイス・モレノ次席公使は、エルモアがそこに立ち寄ったり、「大使館手続き違反」となるような「用事をする」ことについては言及しなかった。同公使はさらに、エルモアに対し、「細心の注意を払い、適切な判断を下すこと」を促した。

その後、エルモアがゴナイーヴでの活動について言及することはなかったようだが、アリスティッドの腹心の部下は、繊細な洞察を豊富に提供してくれた。デュヴァルシンは、エルモアがダニー・トゥーサンに近い法執行当局者と会った、と主張した。ダニー・トゥーサンは地元の政治家で、軍に所属し、ハイチの暫定警察を率い、かつてはアリスティッドの個人的なボディーガードだった。カリスマ性があり、権力に飢えていたトゥーサンは、政治的カメレオンとして評判になった。記録にあるように、彼はアリスティッドの背後で米国大使館や地元の有力者と連携し、大統領を追放してハイチの民衆運動を掌握しようと画策していた。

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写真撮影に応じた、2004年のハイチでのクーデターに関与したアリスティッドの元ボディガード、ダニー・トゥーサン

大使館内での軋轢の可能性を示唆するように、カラン大使は文書の中でこう主張している。「(国務省が)トゥーサンと話すべき唯一の人間として私を指名した。さらに私は米国政府から特定の指示を受けている唯一の人物だった」と。エルモアのゴナイーヴでの会合について、カランは「エルモアは、(アミオ)キュバン(メテイエ)が関わった事件の前にも後にもゴナイーヴにいたとは一度も言っていない」と書いている。

当時、米国当局者らは、ゴナイーヴを含めて、ハイチ国内の大部分の地域に行かないよう明確な命令を受けていた。この命令に背いて、エルモアはゴナイーヴで「問題の多い人々」と接触した、とドミニカの大使が米国大使に伝えたという。

これらの「問題の多い人々」の中に、ヒューグ・パリという人物がいた。この人物はこの外交公電で、「クーデター画策者と関係のある」人物だとされている。この人物は、脱獄事件において影の役割を果たしていたようで、FLRNという名で知られている暗殺部隊を支援していた財力のある重要な支援者の1人だった。この暗殺部隊は、2004年2月のクーデターに先立ち、ハイチの一部を支配していた。その数年前、ヒューグ・パリは、1991年のアリスティッド政権失脚後3年間ハイチを統治した残忍な軍事政権のトップ、ラウル・セドラスの商業顧問を務めていたとして告発されていた。

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身元不明の女性とともにいるヒューグ・パリ

外交公電によると、ドミニカ大使は、アリスティッドが話し合いの中でエルモアのゴナイーヴ訪問について言及した、と述べた。このハイチ大統領は、その海辺の街でのエルモアの活動は、「自分の政権を弱体化させるための秘密計画の証拠である」と考えていた、という。

CIAの陰謀家とおぼしき人物が、ハイチで「疑問の多い人物ら」を動員

この外交公電の書き手の口調と言葉遣いから、ハイチにいる米国の外交官たちが、エルモアが問題を引き起こしているかもしれないことをよく知っていたことは明らかだ。しかし、この文書からは、彼らがエルモアの活動内容を正確に把握することに関心を持っていたことを示す証拠はほとんどない。

そうではなく、大使館職員らはエルモアの正体がばれたかどうか、彼女の電話がハイチ政府によって盗聴されていないかどうかを判断することにもっと関心があったことがうかがえる。この外交公電によると、米外交官は現地の警備会社の傍受能力について知るために、民間警備会社ダイナコープの元代表に接触した。その情報源は、ハイチ当局が国内の電話を監視する能力があることを確認し、米大使館はハイチ当局が「警察とのつながり」があることから、「(エルモアを)特に標的にしている......彼女を豊富な情報源と考えている」と捉えていた。

そういう意味では、エルモアがダニー・トゥーサンに忠誠を誓う人物と接触していたことは特に目を引く。この公電によると、大統領が外交上の用事で台湾に出発する前夜、「大使館の誰かがトゥーサンに電話をかけ、アリスティッドが国外にいる間にトゥーサンを逮捕させるつもりだ、と警告した」とアリスティッドの腹心の部下が語っている。その未特定の腹心は、トゥーサンを「なだめるために送り込まれた」とされる人物で、トゥーサンは「自分を投獄しようとするなら内戦になると脅した」という。

明らかに、エルモアはアリスティッドの失脚に興味を持っており、後の2004年2月のクーデターに関与していた「問題の多い人々」のことをよく知っていた。ゴナイーヴの脱獄事件の前夜に、エルモアがこれらの人々と面会していた事実は、米国がこの事件を前もって知っていたことやアリスティッドの強制追放の基盤は前もって慎重に練られていたことを明らかに示す証拠である、と言っていいだろう。

匿名でグレー・ゾーンに語ってくれた元ポルトープランス駐留米国大使は、エルモアは激しい「反アリスティッド派」であり、米軍特殊作戦部隊の一員と結婚した、と述べた。さらにエルモアはアリスティッド政権を標的にした弱体化工作の他の側面についても、事情を熟知していたようだ。

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グレー・ゾーンが入手した、2001年の国務省のメールによると、エルモアはハイチに対する米国の経済戦争についての扱い難い話し合いについての情報を聞かされていた、という。国務省の官僚らは米州開発銀行と歩調を合わせ、債務や支払いの停止や遅延を求めていたハイチ政府の主張に対応しようとしていた。エルモアはこの件に関して最前列で対応にあたっており、米国政府による反アリスティッドの取り組みにおいて静かな影響力を示していた。

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CIAの工作員だとされているジャニス・エルモア。撮影の日時は不明。

CIAのコカインを使った陰謀に関与したとされるエルモア

エルモアの経歴を詳しく調べると、この陰謀にCIAが直接関与していたことがわかる。実際、彼女は1997年12月、レーガン政権がニカラグアでの汚い戦争の資金調達のためにコカイン密売を秘密裏に利用したことを司法省が調査した際、DEA(麻薬取締局)捜査官によってCIA職員であることが明らかにされた。

米司法省当局者らは、セレリーノ・カスティージョ元DEA特別捜査官が提供した証言と文書を調査した。この捜査官は、エル・サルバドルのコカイン取引を支配していた組織内への侵入を試みていた。カスティージョ元捜査官の主張によると、ニカラグアのファシスト勢力であるコントラにも、「戦争資金を得る助けとなる麻薬の密輸のため」CIAが麻薬を提供していた動かぬ証拠を入手した、という。しかし、カスティージョが話をしていたCIAや米国大使館を脅そうとする「抵抗の壁」に直面させられた、とのことだった。カスティージョによると、自分の上司から、「この件は放っておけ」と警告を受けた、という。

カスティージョは当時の報告において、エルモアがエル・サルバドルでのCIA工作員だったと名指ししている。後に米司法省から厳しい追求を受けた際、エルモアはカスティージョが示した時系列を認めたが、それはただ現地大使館の「麻薬調整担当」の指示に従っただけだった、と主張した。さらにエルモアは、その担当者が「エル・サルバドルでの麻薬問題について取り組むよう何度か指示を出しており、一般的な話として、コントラが麻薬取引に関わっていたことを伝えていた」事実も認めた。しかしエルモアは 「そのような噂を裏付ける証拠は出てこなかった」と主張した。

その後エルモアは、密室において、下院特別諜報委員会よりCIAの麻薬取引について聞き取り調査を受けた。エルモアの証言の内容は未だに公開されていない。当時、マイケル・C.ラパート元ロサンゼルス警察(LAPD)特別捜査官は、エル・サルバドル在留中にエルモアが「軍や政治家の指導者ら」と「定期的に面会」し、「性的関係を利用して情報を集め麻薬工作を保護していた」ことを非難していた。ラパート元特別捜査官は、エルモアを表向きは国務省大使館の政治担当官であるCIAの工作員であるとしていた。

エルモアのリンクドイン上の自己紹介欄によると、政治担当官としての仕事以外にも、国務省国際麻薬・法執行局の航空・警察開発プログラムの仕事もおこなっていたことがうかがえる。1986年4月の国務省省内誌によると、エルモアは米上院外交官候補に指名されていた。1993年から1994年にかけて、エルモアはワシントンDCの米州防衛大学(IADC)に在学していたが、この大学は米州機構(OAS)のつながりがある。米国による西半球一帯の警察や軍の訓練に携わる他の計画と同様に、この防衛大学にはクーデターや暗殺部隊、米国が資金を出している諜報活動に関わる人々を育成してきた歴史がある。

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SOL世界合同会社のウェブサイトからのスクリーンショット。現在このサイトは削除されている。

エルモアのリンクドインの自己紹介欄によると、2006年に退職してから、エルモアはSOL世界合同会社の研究・分析部の相談係及び部長を勤めてきたという。同社の今は削除されているウェブサイトの説明には、「我社の職員は世界中で米国政府の取り組みを支援する活動をおこなってきました」と書かれてあった。その中には、アフガニスタン国家警察(ANP)現地国家通訳・翻訳計画やボスニア連邦内務省(FMOI)教育課程開発及び英語訓練も含まれていた。

また、このウェブサイトでは、SOL世界合同会社が柔軟な作戦準備と支援...建設、警備から物流の警備、輸送、生活支援まで幅広い活動に対応」しているとし、ドバイや米国メキシコ国境、エル・サルバドル、ハイチ、スーダン、トルコ、アフガニスタン南部での活動の例を挙げている。同サイトはさらに、「アフリカやラテンアメリカ、南西アジアでの活動を支援する多国籍企業」に対して、「さまざまな訓練や支援サービスが提供された」と説明している。

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ラクダに乗っているCIAの工作員であるとされているジャニス・エルモア

クーデターの結果、大量の墓が作られ、大量の殺人がおこなわれたが、その責任は問われず

2004年1月1日、ハイチの独立200周年を祝う祝賀式典がゴナイーヴで開催された。ゴナイーヴは、1804年にハイチがフランスからの独立を宣言した場所だ。この式典には、アリスティッドや著名な客人らが出席した。例えば、南アフリカのタボ・ムベキ大統領だ。この大統領が仏・米が主導していたこの行事をやめさせようという圧力に抵抗した唯一の外国の国家主席だった。

大群衆が祝賀ムードに包まれるなか、警察は200周年記念の集会を妨害しようとする地元の反乱組織と激しく衝突した。ハイチの正義と民主主義のための研究所のブライアン・コンキャノン事務局長は、その日ゴナイーヴにいた。同事務局長はグレー・ゾーンに、暴力の発生は「すべて何年もかけて丹念に練られた計画の一部でした」と語った。

「あの脱獄事件と1月1日の暴力はすべて、最終的にクーデターへ向かうために意図的に用意された手順でした」とコンキャノンは説明した。「小競り合いは政府を弱体化させ、支持者を怯えさせ、反対派を増長させました。警察はすでに、準軍事的な侵入者から国境を守り、わざと挑発的な態度をとっていた抗議行動を抑え込むために手薄になっていました。続いて、ゴナイーヴで不安を煽る行為が取られたため、警察にとって第3の戦線が生じ、力の分散が余儀なくされたのです。」

2004年2月中旬までには、ファシスト民兵勢力と地元当局の間の小競り合いが、全面戦争に拡大していた。ゴナイーヴの反乱勢力は反アリスティッド派の元警察や民兵隊員らと手を組んだ。これらの元警察や民兵隊員らは、ドミニカ共和国からハイチに侵入していた。彼らは、ドミニカ共和国で長年保護されていた。

正当な政府が追放されたのち、米国とその同盟諸国は新たな首相を据えた。それが、ゴナイーヴ生まれのジェラール・ラトルチュ。世界銀行の元役人で、当時フロリダ州ボカラトンに住んでいた。当時民兵隊らはハイチの街中を闊歩し、無罪の反クーデター派の抗議活動者らを殺害したり、服役させたりしていた。ランセット医学誌に掲載された論文によると、クーデター後の22ヶ月で、約8000人がポルトープランス広域圏内で殺害されたという。マイアミ大学の人権調査部の報告には、警察や国連占領軍による大量殺人だけではなく、大量の墓や狭い刑務所、薬のない病院、ウジ虫がはびこる遺体安置所などが記載されていた。

その後、まだ民主主義に忠誠を誓っていたハイチの行政、司法、治安部隊のあらゆる役人たちは粛清された。反クーデター派の大量解雇や反クーデター派労働組合への攻撃は日常茶飯事だった。反体制派のジャーナリストは暗殺や逮捕に直面し、政府発行のリュニオン紙とアリスティッド民主化財団のクレオール語版の新聞ダィティー紙は強制的に閉鎖された。いっぽう、ラボトーの虐殺やその他の準軍事的犯罪の責任者は訴追から免れた。

グレー・ゾーンは、現在は削除されている、SOL世界合同会社のウェブサイト上に書かれていた、ジャニス・エルモアのフェイスブックのアカウントとメールアドレスにコメントを求めるメッセージを送ったが、返事は帰ってきていない。そこに書かれていた電話番号も今は使われていない。

国務省はコメントを求める我々の要求に応じず、かわりにCIAに連絡を取るよう伝えてきたが、CIAも我々が送ったメールによる質問に無答のままだ。


ジェブ・スピローグはカリフォルニア大学リバーサイド校の研究員で、バージニア大学とカリフォルニア大学サンタバーバラ校で教鞭を執っていた。『カリブ諸国のグローバル化:政治・経済と社会変化、多国籍資本家階級(テンプル大学出版、2019)』、『ハイチの民兵隊主義と民主主義への侮辱(月刊レビュー出版、2019)』の著者であり、 『アジア、オセアニアでのグローバル化と多国籍資本主義(ラウトリッジ出版、2016)』の編集者。「グローバル資本主義の批判的研究ネットワーク」の共同創設者。ブログは http://jebsprague.blogspot.com。

キット・クラレンバーグは、政治や認識の形成における情報機関の役割を探る調査報道ジャーナリスト。
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今になってやっと、プーチンはことの成り行きに愚痴をこぼし始めたが、私はずっと前から警告していた。「この戦争は長くなりすぎるぞ」と。

<記事原文 寺島先生推薦>
Putin Now Complains of the Consequences, about which I warned, of a Conflict that Continues Too Long
筆者:ポール・クレイグ・ロバーツ (Paul Craig Roberts)
出典:本人ブログ 2024年3月5日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月7日


ロシアのウラジミール・プーチン大統領はモスクワでの連邦議会での先日の演説において、ロシアと戦争を始めたことについて西側に対して警告した。その内容は以下のとおり。

「西側はウクライナや中東や世界各地での戦争を挑発してきました。そしてその際、つねに間違った情報を宣伝してきました。現在、西側は愚かにも『ロシアには欧州を攻撃する意図がある』と言っています。」

「いまやウクライナはこの戦争の敗北が決まっており、西側は我が国の領土を攻撃対象に選ぼうとして、最も効果的な破壊手段を考えています。いまや西側は、NATO軍部隊をウクライナに配置する可能性について語り始めました。」

今になってやっと、プーチンは西側からの挑発が核戦争を招くかもしれないとの懸念を示し始めた。

「西側がいま繰り出しているすべてのことから、核兵器を使った戦争にまきこまれるのではないかという恐怖が世界を包んでいます。そんなことになれば、文明の破壊になるでしょう。西側はそんなことが分かっていないのでしょうか? 問題は、西側には厳しい敵に一度も直面したことがない、という事実です。戦争の恐怖という概念がないのです。我が国は、ロシアの若い世代でさえ、戦争の困難に苦しんだ経験があります。以前は、コーカサスでの世界的なテロと戦いましたし、今はウクライナで戦争を戦っています。それでも西側は、戦争をただのアクション・マンガの一種と思い続けているのです。」

プーチンが、自分が挑発に耐えることで、ネオコン勢力を力づけ、ネオコンが覇権を求める政策を前進させることになっている現状を本当に理解しているかどうかは不明だ。戦争を招いているのは、断固とした態度をとらなかったプーチンの失態なのだ。プーチンが理解すべきことは、西側にはネオコン以外の声は存在しない、という事実だ。プーチンが共に平和を希求し、奮起し合えるような反対勢力は存在しないのだ。プーチンと習近平だけが、米国の覇権を抑止できる。両者の抑止力が発動しなければ、核戦争への歩みは止まらないだろう。
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ニューヨーク・タイムズ紙の暴露記事により、10年以上にわたるウクライナでのCIA主導の秘密戦争拡大の詳細があきらかに

<記事原文 寺島先生推薦>
New York Times’ Exposé Details Expansion of CIA Secret War in Ukraine Over a Decade Ago
筆者:ウリエル・アラウホ(Uriel Araujo)
出典:Global Research 2024年3月3日
<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月7日


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米国は、ウクライナと「10年以上」、「秘密の諜報活動の友好関係」を育んでおり、米国は、ウクライナを「ロシア政府に対する最も重要な諜報活動上の友好国」に「変質させた」。

特にこの8年間は、CIAが支援する「諜報活動の基地網」が創設されたのだが、その中には、「ロシア国境付近の12箇所の秘密基地」もあった。

さらに2016年、中央情報局は優秀なウクライナ奇襲隊の訓練にまで手を出し始めたが、この奇襲隊はロシアのドローン機を確保し、CIAのためにそれを分解して模倣機を作った。
上記の話は、「ロシアによる喧伝」ではなくて、ピューリタン賞の受賞歴が二度あるアダム・エントゥス記者とマイケル・シュワーツ記者による記事だ。

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ニューヨーク・タイムズ紙からのスクリーンショット

おそらくロシアの高官らは、このことについて少し前から知っていたのだろう。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、2014年のウクライナでのマイダン革命で主要な役割を果たしたとして米国を非難していたことを思い起こす人もいるだろう。その際、プーチン大統領は特にCIAのことを名指ししていた。さて、先述したニューヨーク・タイムズ紙の暴露記事の時系列を考慮すれば、この米国の諜報機関がマイダン革命やアゾフ大隊への訓練の実施や資金援助にどれほど関わっていたのかを疑問に思うことは困難だろう。なお、このアゾフ大隊とはウクライナの国軍となった極右民兵隊のことである。

このことは、クインシー研究所のユーラシア研究員のマーク・エピスコポス氏の以下の説明のとおりだ。

「ヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領を失脚させ、強固な親欧米政権を誕生させた2014年2月のユーロマイダン革命の数日後、ウクライナ治安局(SBU)のヴァレンティン・ナリヴァイチェンコ新任局長は、CIAや英国の対外情報機関MI-6との「三者連携」を提案した、と報じられた。」

エピスコポス氏はさらに、「そのようなCIAの訓練計画の卒業生であるキーロ・ブダノフ中佐(当時)が、ウクライナ軍事情報部の部長になった」こと、そして「トランプ政権下でウクライナ側とCIAの連携関係が深まった」ことを付け加えている。ここで、米国のCIAについて少し説明しておこう。

2001年のワシントン・ポスト紙の記事によれば、CIAは単なる「諜報機関」ではなく、HUMINT(ヒューマン・インテリジェンス:人的情報収集活動)に重点を置き、アフガニスタンで「隠された戦争」を組織するなど、「戦闘の中心的役割」も果たしてきたことが長年知られている。特別活動センター、諜報活動や準軍事活動(SOG-特殊作戦団によって遂行される)、諜報政治活動(PAG-政治活動団によって遂行される)を任務とする部門、さらにその他の部門を通じて、CIAは外国人組織に対する拷問の訓練を調整し、偽旗テロ攻撃、外国人指導者の暗殺、「レジーム・チャンス(クーデターを指す暗号)」などを推進している。

グレッグ・グランディン(イェール大学歴史学教授)氏の言葉を借りれば、CIAは過去数十年間、特にラテンアメリカにおいて、「非自由主義勢力」と「軍国主義社会」を強化するためにテロを利用してきた、という。教授で外交官のピーター・デール・スコット氏、歴史家のアルフレッド・マッコイ氏、ジャーナリストのゲーリー・ウェッブ氏やアレクサンダー・コックバーン氏らは、CIAが麻薬密売に関与している、と述べている。CIAは今日、地球上で1,2位を争う危険な組織のひとつである、と表現してもまったく過言ではない。

CIAがウクライナのヤヌコーヴィチ大統領の失脚を画策し、同国に新政権を樹立する手助けをしたと考えることは、非常に理にかなっている。というのも、それこそがCIAの任務なのだから。

プーチン氏がかつて、NATOの拡大とウクライナがNATO加盟国になる可能性について言及し、中国がメキシコと軍事協定を結び、国境付近に軍事基地を設置することになったら、米国政府はどう反応するだろうかと尋ねたことがあったことはよく知られている。同様に、もしロシア連邦保安庁(FSB)が米国とメキシコの国境沿いに諜報機関の基地網を構築したらどうなるだろうか? しかし米国政府は何年も前から、そうしてきたのだ。

前述の専門家マーク・エピスコポス氏は今週、次のように書いている。

「ロシア政府は、ウクライナが西側諸国によって対ロシア前線基地として利用されるのを防ぐために、思い切った行動をとる用意があると、2014年以前から何年も繰り返し警告してきた。」

さらに
「しかし、ニューヨーク・タイムズ紙が薄気味悪いほど詳細に報じているように、それこそが過去10年間に起こったことなのだ。」

つまり、エピスコポス氏の主張によれば、ロシアのウクライナでの軍事作戦(2022年に開始された)の理由については、同意する人もしない人もいるだろうが、「何の理由もなくおこなわれたわけではなく、長年ロシアが西側から受けてきた苦難があったのである。西側の見方からは、この軍事作戦は正当化されることはなかったが、クレムリン側が十分な挑発行為があったと捉えるに値する理由が存在した」ということだ。

NATOの拡大という重要な話題については、多くの人が書いてきたが、その内容はすべて、欧州の軍事化とロシアの包囲化についてのことだった。そしていま、CIAの拡大について話すべきときが来たのだ。その話は、具体的には、暗殺、内容そのものが隠された工作や資金源が隠された工作、さらには民兵を使った工作についての話だ。ウクライナ危機においてCIAが果たした役割も、ソ連後の東欧において全く話されてこなかった内容のひとつだ。
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ドイツはまだ「非ナチ化」されていない – ロシア外務省ザハロワ報道官

<記事原文 寺島先生推薦>
Germany yet to be ‘denazified’ – Zakharova
ヒトラーの亡霊は今もこのEU加盟国につきまとっている、とロシア外務省報道官発言
出典:RT 2024年3月4日
<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月6日


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プーマ機械化歩兵戦闘車の前を走り抜ける連邦軍兵士。© ショーン・ギャラップ/ゲッティイメージズ

ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は月曜(3月4日)、ロシアのクリミア橋破壊作戦の可能性についてドイツ空軍の将軍らの間で会話が生じた背景にある考え方について何かがなされなければ、ドイツは「悲惨な結果」に直面する可能性がある、と述べた。

RTは、2月19日のドイツ空軍幹部間の通話の録音と書き起こしを公開した。その中では、ウクライナの要請に応じて、タウラス長距離ミサイルを長さ18キロメートルの接続機に対してどのように配備できるかについて話し合われていた。

「我が国は、ドイツは完全には非ナチス化されていない、と理解しています」とザハロワ報道官はソチで開催された世界青少年フェスティバル(WYF 2024)の傍らで記者団に語った。

「何もなされず、この状況をドイツ国民自身が止めなければ、まず第一にドイツ自体にとって悲惨な結果につながることになるでしょう」と同報道官は付け加えた。

これに先立ち、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、漏洩したドイツ空軍の会談は西側諸国がウクライナ紛争に直接関与している証拠になる、と述べた。ペスコフ報道官は、関与していた軍将校らはロシア領土への攻撃を開始する計画について「実質的かつ具体的に」話し合っていた、と述べた。

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関連記事:LISTEN to complete leaked Crimean Bridge attack recording

ドイツ軍はまた、英国製とフランス製の長距離ミサイルの標的監視員として活動する他の西側軍人がウクライナに存在していることも明らかにした。

クレムリンによると、現在問題となっているのは、ドイツ軍が独自に行動したのか(それであれば文民統制という問題が生じる)、それとも彼らの議論が政府の公式政策に沿ったものだったのか、ということだ。

「どちらの可能性であったとしても由々しき事態です」とペスコフ報道官は語った。

非ナチ化は、第二次世界大戦後、ソ連や米国、英国、フランスの政策であり、ドイツとオーストリアの政治や社会、文化、経済、法廷、報道からナチス思想を除去することを目的としていた。ロシアはウクライナの現政権がナチズムを復興させた、と非難している。

2022年2月に始まったロシアの特別軍事作戦の目的の一つとして、ウクライナの「非ナチ化」がうたわれていた。

米国とそのNATO同盟諸国は、ウクライナに2000億ドル相当の武器や弾薬、物資を送ることで対抗しているが、紛争には直接関与していない、と主張している。
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クリミア橋攻撃に関する漏洩音声の全編はこちら

<記事原文 寺島先生推薦>
LISTEN to complete leaked Crimean Bridge attack recording
ドイツ将校らは直接関与の非難を避ける方法でウクライナにトーラス・ミサイルを送ることについて議論していた
出典:RT 2024年3月4日
<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月6日


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クリミア橋。© スプートニク / コンスタンチン・ミハルチェフスキー


流出した音声によると、ドイツ軍当局者らは、ロシアの戦略上重要なクリミア橋に損害を与えるウクライナを秘密裏に支援する方法について話し合っていた。彼らはまた、外国軍人がすでにウクライナ国内に派遣されている、とも述べた。

RTは、ドイツとロシアで騒動を引き起こしたこの会話の未編集の字幕付き32分間録音を公開している。

ロシア語版の字幕と音声ファイルは、RTのマルガリータ・シモニャン編集長によって初めて共有された。同編集長はドイツ当局者4人が参加した会話は2月19日に行なわれたと主張し、その録音はロシアの治安当局者から自身に渡された、と付け加えた。

同編集長は、その声がドイツ空軍司令官インゴ・ゲアハルツ将軍と同支部の作戦担当副参謀長フランク・グレーフ准将、ドイツ宇宙軍航空作戦センターの職員2名のものである、と特定した。

関連記事:Germany preparing for war with Russia – Medvedev

当局者らは、タウラス長距離ミサイルのウクライナへの供給の可能性と、その運用と標的の詳細についても話し合っていた。さらに、ドイツが紛争への直接関与しているとして非難を受ける状況を回避できるよう、もっともらしい否認を維持する方法についても話し合っていた。

当事者らはまた、タウラス・ミサイルでクリミア橋を破壊することが可能かどうかについて議論しており、このミサイルが到達するのは難しく、この橋は何度も攻撃に耐えられるほど頑丈である、と結論づけていた。

流出した音声によると、ゲアハルツ将軍は「(ウクライナでは)私服を着て歩き回っているアメリカ訛りの人々がたくさんいる」とも述べた。この会話は、英国がウクライナに人員を派遣していることをドイツ当局者が認識していることを示唆するものだ。

この録音はドイツとロシアの両国で大騒ぎを引き起こした。ドイツ軍は会話が傍受されたことを認めており、この件について捜査が進められている。

いっぽう、ロシア外務省マリア・ザハロワ報道官はドイツ当局に説明を求め、ドミトリー・メドベージェフ元ロシア大統領は、この録音は「ドイツがロシアとの戦争の準備をしている」ことに疑いの余地はないことを示すものだ、と述べた。

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*音声は原サイトからお聞きください。
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