国防総省(ペンタゴン)の生物兵器
<記事原文 寺島先生推薦>
The Pentagon Bio-weapons
筆者:ディリアナ・ガイタンジエバ(Dilyana Gaytandzhieva )
出典:ガイタンジエバ氏の個人ブログ 2018年4月19日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年5月11日(改訂版、2024年5月28日)
米軍は定期的に致死性のウイルスや細菌、毒素を製造しており、生物兵器禁止に関する国連条約に直接違反している。何十万人もの人々が知らず知らずのうちに、危険な病原体やその他の不治の病気に組織的にさらされている。生物戦争の科学者たちは、世界25カ国の国防総省の生物研究所で外交的隠れ蓑を利用して人工ウイルスの検査を行なっている。これらの米国の生物研究所は、21億ドルの軍事計画である生物協力計画(CBEP)に基づいて国防脅威削減局(DTRA)から資金提供を受けており、グルジアやウクライナなどの旧ソ連諸国、中東、東南アジアとアフリカに配置されている。
訳注:本記事では国名のジョージアは、グルジアと記載する。
試験場としてのグルジア
ルガー・センターは、グルジアにある国防総省の生物研究所である。この研究所は首都トビリシにある米軍ヴァツィアーニ空軍基地からわずか17kmに位置する。この軍事計画の任務を負っているのは、グルジア陸軍医学研究部隊 (USAMRU-G) の生物学者と民間請負業者である。生物研究の危険度が3であるこの研究所には、安全性において許可を持つ米国民のみが近づける。彼らには、2002年の防衛協力に関する米国・グルジア協定に基づいて外交特権が与えられている。
グルジア共和国のルガー・センター
ルガー・センターにある国防総省の生物研究所から17キロ離れたヴァイツィアーニ軍事空軍基地に配備されている米陸軍。
米国とジョージア間の協定は、グルジアで国防総省計画に取り組む米軍人および民間人(外交用車両を含む)に外交上の地位を与えるものである。
米国連邦契約登録簿から得られた情報により、ルガー・センターでの軍事活動の一部が明らかになった。その中には、生物剤(炭疽菌、野兎病)やウイルス性疾患(クリミア・コンゴ出血熱など)の研究、および今後の実験のための生物標本の収集が含まれていた。
国防総省の請負業者が外交上の隠れ蓑のもとで生物剤を製造
国防脅威削減局(DTRA)は、軍事計画に基づく業務の多くを民間企業に委託しているが、民間企業は議会に対する責任を負っておらず、より自由に活動し、法の支配を中心に活動できる。ルガー・センターで勤務する米国の民間人も、外交官ではないが、外交特権を与えられている。したがって、民間企業は、駐留国(この場合はグルジア共和国)の直接の管理下になくても、外交上の隠れ蓑の下で米国政府のために仕事を行なうことができる。この慣行は、CIA が工作員を隠蔽するためによく使用される手口だ。トビリシの米国バイオ研究所では、CH2Mヒル社やバテル社、メタビオタ社という3つの米国民間企業が活動している!国防総省に加えて、これらの民間請負業者は CIA やその他のさまざまな政府機関のために研究を行なっている。
CH2Mヒル社は、グルジアやウガンダ、タンザニア、イラク、アフガニスタン、東南アジアのバイオ研究所向けの国防総省計画に基づき、3億4150万ドルのDTRA契約を獲得した。この金額の半分 (1億6110 万ドル) は、ジョージアの契約に基づいてルガー・センターに割り当てられる。CH2Mヒル社によると、この米国企業は生物剤を確保し、ルガー・センターの元生物兵器科学者を雇用した、という。これらの科学者はグルジアの軍事計画に関与する別の米国企業であるバテル記念研究所で働いている科学者たちだ。
ルガー・センターの5900万ドルの下請け業者であるバテル社は、米国陸軍との過去11件の契約(1952年から1966年)に基づいてすでに米国生物兵器計画に取り組んでおり、生物剤の研究に豊富な経験を持っている。
出典:米国における米軍の活動、生物戦計画、vol. II、1977、p. 82
この民間会社は、アフガニスタンやアルメニア、グルジア、ウガンダ、タンザニア、イラク、アフガニスタン、ベトナムにある国防総省の DTRA 生物研究所で業務を行なっている。バテル社は、米国の幅広い政府機関向けに、毒性の高い化学物質と病原性の高い生物剤の両方を使用した研究や開発、試験、評価を行なっている。同社は総額約20億ドルの連邦契約を獲得しており、米国政府請負業者上位100社では23位に格付けされている。
CIA-バテル社計画の明確な視座
CIA とバテル記念研究所による共同調査である「プロジェクト・クリア・ビジョン(1997年と2000年) は、CIA から授与された契約に基づいて、その拡散特性を検査するためにソ連時代の炭疽菌子嚢を復元し、検査をおこなった。この計画で定められた目標は、子猫の生物剤拡散特性を評価することだった。CIAとバテル社間の秘密作戦は、国連に提出された米国生物兵器禁止条約の宣言から除外されていた。
極秘実験
バテル社は過去10年間、米国土安全保障省 (DHS) の契約に基づき、メリーランド州フォート・デトリックで極秘生物研究所 (国家生物防御分析対策センター – NBACC) を運営してきた。同社は、3億4440 万ドルの連邦契約(2006 ~ 2016 年) と、さらに1730 万ドルの契約(2015~2026年) をDHSから獲得した。
米国の極秘施設として分類されているNBACC。写真提供: DHS
バテル社によっておこなわれたNBACCの秘密実験には次のようなものがある:粉末散布技術の評価、エアロゾル*化毒素がもたらす危険性の評価、ヒト以外の霊長類におけるエアロゾル粒子の機能としてのB.シュードマレイ(メリオイドーシス)の病原性の評価などである。メリオイドーシスは生物兵器として開発される可能性があるため、分類Bのバイオテロリズム薬品に分類される。B.シュードマレイは過去に米国が生物兵器の可能性がある物質として研究したことがある。
* 気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子と周囲の気体の混合体のこと
グルジアのルガー・センターでの軍事実験のほかに、バテル社はすでに米国のフォート・デトリックにある生物研究危険度4のNBACC極秘研究所でバイオテロ薬品を製造している。 NBACCの発表においては、研究室の16の研究優先事項があげられている。中でも、BTA(生物学的脅威物質)の可能性について、従来の病原体、新興病原体、遺伝子操作病原体の特徴を明らかにすること、BTAの可能性がある病原体による非伝統的、新規、非流行性の疾病誘発の性質を評価すること、そしてヒト以外の霊長類に対するエアロゾル暴露試験能力を拡大することである。
NBACC 研究所で病原体を操作している科学者。写真提供: NBACC
米国企業メタビオタ社は、グルジアとウクライナにおける国防総省のDTRA計画に基づき、科学および技術相談事業に関して1840 万ドルの連邦契約を獲得した。メタビオタ社の事業には、世界規模の現地での生物学的脅威研究や病原体の発見、流行への対応、臨床試験が含まれている。メタビオタ社は、西アフリカにおけるエボラ出血熱危機の前および最中にDTRAの業務を行なうよう国防総省から契約を受けており、エボラ出血熱流行の中心地の一つであるシエラレオネでの事業に対して310万ドル(2012~2015年)を獲得した。
メタビオタ社はエボラ出血熱危機の中心地で国防総省の計画に取り組んだが、そこには米国の生物研究施設が3箇所ある。
ウイルス性出血熱協会が起草した2014年7月17日の報告書は、メタビオタ社が検査結果の報告方法に関する既存の協定を守らず、そこで働くシエラレオネの科学者を迂回したと非難した。報告書はまた、メタビオタ社が研究所で血液細胞を培養していた可能性を指摘し、これは危険なことであり、健康な患者を誤診していた可能性もあるとした。これらの疑惑はすべてメタビオタ社によって否定された。
2011年、ルガー・センター、アンドリュー・C・ウェバー(右) – 米国国防次官補(2009~2014年)、米国国防総省エボラ対策副調整官(2014~2015年)、現在はメタビオタ(米国請負業者)の従業員。
刺咬昆虫に関する軍事実験
昆虫戦とは、病気を伝染させるために昆虫を使用する生物戦争の一種である。国防総省はグルジアとロシアでそのような昆虫学的検査を行なった、とされる。 2014年、ルガー・センターには昆虫施設が設置され、「グルジアとコーカサスにおけるサシバエのバーコーディング*に関する意識向上」計画が開始された。この計画は、ジョージア国外のより広い地理的領域、つまりコーカサスを網羅するものとされた。 2014年から2015年にかけて、別の計画である「急性熱性疾患に関する監視活動」の下でフレボトミンサシバエの種が収集され、すべての(メスの)サシバエの感染率を調べる検査が行なわれた。3番目の計画では、サシバエの収集も含まれており、サシバエの唾液腺の特徴を研究した。
*特定の遺伝子領域の短い塩基配列を使用して生物の種を同定したり、多様性を調べるための技法。
トビリシのトイレにとまっているハエ (写真 1)、ジョージアのハエ (写真 2、3)
その結果、トビリシには2015年から刺咬性ハエが蔓延している。これらの刺咬性昆虫は一年中屋内の風呂場に生息しているが、その行動は、以前はジョージアにおけるこれらの種の典型的な行動ではなかった。(通常、ジョージアのプレボトミンバエの活動期は非常に短く6月から9月までだった)。地元住民は、風呂場で裸になっているときに、新たに出現したハエに刺された、と訴えている。寒さにも強く、氷点下の山中でも生きていける。
ロシア、ダゲスタンの刺咬性ハエ
2014年に国防総省の計画が開始されて以来、グルジアのハエと同様のハエが隣国のダゲスタン(ロシア)にも発生している。地元の人によると、噛まれて発疹が出るそうだ。繁殖場所は家の排水溝だという
グルジアのハエ(上)。ダゲスタンの同じ種のハエ(下)
フレボトミン科のハエは、唾液中に危険な寄生虫を運び、人間を刺すことで感染する。これらのハエが媒介するこの病気には、国防総省が大きな関心を寄せている。2003年の米国のイラク侵攻中、米国兵士はサシバエにひどく刺され、リーシュモナス症に罹患した。この病気はイラクとアフガニスタンに固有のもので、急性リーシュモナス症を治療せずに放置すると死に至る可能性がある。
1967年の米陸軍報告書「アジアとヨーロッパ・ソ連における医学的に重要な節足動物」には、すべての地域の昆虫、その分布、およびそれらが媒介する病気があげられている。排水溝に生息する刺咬ハエも文書に記載されている。しかし、これらの昆虫の自然の生息地はグルジアやロシアではなく、フィリピンである。
出典: 「アジアとヨーロッパ・ソ連における医学的に重要な節足動物」、米陸軍報告書、1967年
白衣作戦: 感染したハエが人間を刺すかどうかの検査
サシチョウバエ
機密解除された米陸軍の報告書(米国における米軍基地の活動、生物兵器計画、1977、vol. II, p. 203)によれば、1970年と1972年に、サシチョウバエ熱の人体実験が行なわれた、という。この「白衣作戦」中、治験者は感染したサシチョウバエに刺された。白衣作戦は、1954年から1973年にかけてメリーランド州フォート・デトリックで米陸軍が実施した生物防衛医学研究計画である。
米国の生物兵器計画は公式に終了したにもかかわらず、1982年にUSAMRIID(米陸軍感染症医学研究所)は、サシチョウバエと蚊がリフトバレー・ウイルスやデング熱、チクングニア熱、東部馬脳炎の媒介者になりうるかどうかの実験を行なった。
殺人昆虫
ネッタイシマカ
国防総省には、昆虫を病気の媒介者として利用してきた長い歴史がある。部分的に機密解除された1981年の米陸軍報告書によると、米国の生物兵器科学者は昆虫に対して多くの実験を実施してきた、という。これらの作戦は米国生物兵器計画に基づく米国昆虫戦の一環であった。
国防総省: 1人当たりわずか0.29ドルの費用で62万5000人を殺害する方法
1981年の米陸軍報告書では、黄熱病に感染したネッタイシマカによる都市への16回の同時攻撃と野兎病エアロゾル攻撃の2つの計画を比較し、費用と死傷者数の効果を評価した。
大コチョコチョ作戦:熱帯ネズミノミXenopsylla cheopisを生物兵器における疾病媒介動物として使用するための感染パターンと生存率を決定するための実地試験が行われた。
大騒ぎ作戦: 100万匹のネッタイシマカが生産され、1/3は弾薬に入れられて航空機から投下されるか、地上に散布された。蚊は空中投下を生き延び、人間の血液を積極的に探し求めた。
出典:米国およびヨーロッパの NATO 諸国に対する潜在的危険としての昆虫戦の評価、米陸軍、1981年3月報告書
メーデー作戦:米国ジョージア州で、暗号名「メーデー」と名付けられた米軍作戦中に、地上からの方法でネッタイシマカが散布された。
「ネッタイシマカの大量生産」など、1981年の米陸軍報告書の一部は機密解除されておらず、潜在的にはこの計画がまだ進行中であることを意味している。
黄熱病の蚊としても知られるネッタイシマカは、米軍の作戦で広く使用されている。同じ種類の蚊が、デング熱やチクングニア熱、新生児の遺伝的奇形を引き起こすジカウイルスの媒介者であると言われている。
先導者作戦 [*訳註:原文のbellweatherはbellwetherの誤植]
米陸軍化学研究開発司令部生物兵器部門は、1960年にユタ州ダグウェイ試験場での野外試験で屋外の蚊の刺咬活動を研究した。飢えさせた処女の雌のネッタイシマカが、戸外に出動した軍隊に対して試験された。
関連画像:屋外の蚊の刺し活動の研究、先導者作戦、1960年、技術報告書、米陸軍、ダグウェイ試験場
グルジアでの熱帯の蚊とダニを使った軍事実験
この種の蚊やノミ(米国昆虫学戦争計画の下で過去に研究された)もグルジアで収集され、ルガー・センターで検査された。
2014年のDTRAの計画「グルジアのウイルスとその他のアルボウイルス」のもとで、これまで見たことのない熱帯蚊であるヒトスジシマカが初めて検出され、数十年 (60 年) を経て、西グルジアでネッタイシマカの存在が確認された。
ヒトスジシマカは、黄熱病ウイルスやデング熱、チクングニア熱、ジカ熱などの多くのウイルス病原体を媒介する。
欧州疾病予防管理センターが提供した数値によると、これらの熱帯蚊であるヒトスジシマカは、グルジアではこれまで観察されたことがなかったが、隣国のロシア(クラスノダール)とトルコでも検出されている。世界のこの地域でこの蚊が広がっているのは、異例のことだ。
ネッタイシマカは、グルジアやロシア南部、トルコ北部にのみ分布している。それらは、国防総省のルガー・センターでの計画が開始された後の2014年に初めて検出された。
別の DTRA 計画「グルジア野兎病の疫学と生態」(2013~ 2016年)では、6148 匹の地上ダニが収集された。牛からは5871匹が採取され、ノミは1310匹、ダニは731匹捕獲された。 2016年にはさらに21590匹のダニがルガー・センターで収集され研究された。
グルジアにおける炭疽菌の発生とNATOによる人体実験
2007年、グルジアは家畜炭疽ワクチン接種を毎年義務付ける政策を終了した。その結果、この病気の罹患率は2013年に頂点に達した。同年、 NATOはグルジアのルガー・センターで人体を対象とした炭疽菌ワクチンの試験を開始した。
炭疽菌が発生したにもかかわらず、2007年にグルジア政府は7年間にわたる強制ワクチン接種を中止し、2013年、NATOはグルジアで新しい炭疽菌ワクチンの人体治験を開始した。
国防総省によるロシア炭疽菌の研究
炭疽菌は、過去に米軍によって兵器化された生物剤の1つである。国防総省は、その計画は防衛のみである、と主張しているが、それに反する事実がある。2016年、アメリカの科学者は、トビリシにおける米国国防脅威削減局(DTRA)の協力的生物学的関与計画の資金援助を受けて、ルガー・センターで「ソビエト/ロシアの炭疽菌ワクチン株55-VNIIVViMのゲノム配列」に関する研究を実施した。この研究は、メタビオタ社 (グルジアでの国防総省計画に基づく米国の請負業者) によって管理されている。
2017年、DTRAはさらなる研究、「グルジアの炭疽菌のヒトおよび家畜分離株の10のゲノム配列」に資金を提供し、この研究はルガー・センターのUSAMRU-Gによって実施された。
グルジア34人がクリミア・コンゴ出血熱(CCHF)に感染
クリミア・コンゴ出血熱(CCHF)は、ダニ媒介ウイルス(ナイロウイルス)による感染によって引き起こされる。この病気は 1944 年にクリミアで初めて特定され、クリミア出血熱という名前が付けられた。その後、このウイルスが1969年にコンゴの病気の原因であることが認識され、現在の病名になった。 2014年には34人がCCHFに感染(うち1名が4歳児)し、うち3人が死亡した。同年、国防総省の生物学者は、DTRA計画「グルジアにおけるデング熱ウイルスおよび他のアルボウイルスによって引き起こされる発熱性疾患の疫学」の下で、グルジアにおいてこのウイルスが研究された。この計画には、発熱症状のある患者の検査と、臨床検査用のCCHVを媒介する可能性があるダニの収集が含まれていた。
グルジアでは34人がCCHFに感染し、そのうち3人が死亡した。出典: NCDC-グルジア
グルジアでのCCHF発生の原因はまだ不明である。地元の獣医局の報告書によると、感染した村から採取したすべてのダニのうち、検査でこの病気の陽性反応を示したのはたったの1匹だけだった、という。ウイルスは動物から人間に感染した、という地元当局の主張にもかかわらず、動物から採集された血液もすべて陰性だった。2014年にCCHFのヒト症例が急増したことを考えると、感染したダニや動物がいないことは説明がつかない。これは、発生が自然なものではなく、ウイルスが意図的に拡散されたことを意味する。
2016年には、国防総省の計画「グルジアにおけるクリミア・コンゴ出血熱ウイルス(CCHFV)およびハンタウイルスの血清保有率と遺伝的多様性の評価」のもと、ルガー・センターでの将来の研究のためのDNA集積情報のために、さらに21590匹のダニが収集された。
CCHFの症状
アフガニスタンでの致死性CCHF発生の責任は軍の生物研究所にある
アフガニスタン全土でクリミア・コンゴ出血熱(CCHF)の症例も237件報告されており、2017年12月時点でそのうち41名が死亡した。アフガニスタン保健省によると、症例のほとんどは首都カブールで登録されており、71例が報告されている。死者数は13名、イランとの国境近くのヘラート州では感染者67名が報告された。
アフガニスタンは、領土内に国防総省の生物研究所がある世界25カ国のうちの一つである。アフガニスタンでのこの計画は、国防脅威軽減局(DTRA)の資金提供を受けている米国の生物防衛計画、協力的生物活動計画(CBEP)の一環である。グルジアのルガー・センターやCH2Mヒル社、バテル社で働くDTRAの請負業者も、アフガニスタンでの計画と契約を結んでいる。 CH2Mヒル社は1040 万ドルの契約(2013 ~ 2017年)を獲得した。アフガニスタンとグルジアの国防総省の請負業者は同じであり、両国の地元住民の間で蔓延している病気も同様である。
国防総省がコウモリを収集し研究する理由
コウモリは、エボラウイルスや中東呼吸器症候群(MERS)、その他の致命的な病気の宿主であると言われている。しかし、これらのウイルスが人に感染する正確な経路は現在不明である。DTRA 協力生物学的関与計画(CBEP) のもとで、コウモリの軍事的に重要な致死性病原体の探索を目的として、数多くの研究が実施されてきた。
2014年にルガー・センターでは研究目的で221匹のコウモリが安楽死させられた。
アフリカでの致死性エボラ出血熱の流行(2014~2016年)はコウモリが原因だと考えられている。しかし、ウイルスがどのようにして人間に「感染」したのかを正確に示す決定的な証拠はこれまでに提供されておらず、自然感染ではなく意図的な感染の疑いが生じている。
致死性のウイルスを操作することは米国では合法
MERS-CoVはコウモリに由来し、人間やラクダに直接感染すると考えられている。しかし、エボラ出血熱と同様、ウイルスの正確な感染経路は不明である。 いまのところ、MERS-CoVによる感染者1980人、死亡者699人が世界15カ国で報告されている(2017年6月時点)。
MERSで報告された患者10人につき、3~4人が死亡している(出典:WHO)
MERS-CoVは、インフルエンザやSARSと同様、米国によって開発され、国防総省によって研究されてきたウイルスの1つである。この慣行が裏付けられたのは、オバマ大統領が2014年にそのような「二重用途」研究に対する政府資金提供を一時的に禁止したことによる。2017年に一時停止は解除され、実験は続けられている。米国では、潜在大流行病原体(PPP)の強化実験が合法である。このような実験は、病原体の伝播性や毒性を高めることを目的としている。
生物兵器としての野兎病
F. ツラレンシスは感染力が非常に高い細菌であり、エアロゾル攻撃により兵器化される可能性がある。
ウサギ熱としても知られる野兎病はバイオテロ要因として分類されており、過去に米国によりそのために開発された。しかし、国防総省は野兎病に関する研究と、この病気の原因となるダニや齧歯動物などの細菌の媒介の可能性についての研究を続けている。 DTRA は、グルジアの他の特に危険な病原体とともに野兎病に関する多くの計画を立ち上げた。特に危険な病原体(EDP)、または特定の病原体は、世界中の公衆衛生にとって大きな懸念事項となっている。これらの高病原性病原体は、以下の国防総省 の計画を通じて軍事的重要性の証拠として武器化される可能性を秘めている。その研究名は「グルジアにおけるヒト野兎病の疫学およびグルジアにおける特に危険な病原体のヒト疾患疫学とその精査」(未分化熱および出血熱/敗血症性ショックの患者における選択された薬剤の研究)、である。
野兎病は、米陸軍が過去に開発した生物兵器の一つである。出典:1981米国陸軍報告書
国防総省の生物研究所によりウクライナで伝染病が蔓延
国防総省国防脅威削減局(DTRA)は、ロシアと国境を接する旧ソ連のウクライナにある11の生物研究所に資金を提供している。
米軍による計画は機密情報
ウクライナは自国領土内の軍事生物研究所を管理していない。米国防総省とウクライナ保健省との間の2005年協定によれば、ウクライナ政府は米国の計画に関する機密情報の公開を禁じられており、ウクライナは生物学的研究のために危険な病原体を米国防総省(DoD)に譲渡する義務を負っている。米国防総省は、この協定に基づく計画に関連して、ウクライナの特定の国家機密を知ることを認められている。
59, 60
外交という偽装に守られた生物兵器研究者たち
米国とウクライナの二国間協定の中に、ウクライナ科学技術センター(STCU)の設立がある。STCUは、かつてソ連の生物兵器計画に関与した科学者の計画を公式に支援している。過去20年間で、STCUは2億8500万ドル以上を投じて、大量破壊兵器の開発に以前携わっていた科学者たち約1850人の計画に資金を提供し、管理してきた。
外交的偽装の下で働いているウクライナ駐在の米職員
364人のウクライナ国民が豚インフルエンザで死亡
国防総省の研究所のひとつはハルキウにあり、2016年1月には少なくとも20人のウクライナ兵がわずか2日間でインフルエンザのようなウイルスで死亡し、さらに200人が入院した。ウクライナ政府はハルキウで死亡したウクライナ兵について報告していない。2016年3月現在、ウクライナ全土で364人の死亡が報告されている(81.3%が豚インフルエンザA(H1N1)pdm09によるもので、2009年に世界的大流行を引き起こしたのと同じ株である)。
ドネツク人民共和国の諜報機関の情報によると、ハルキウにある米国の生物研究所が致死性のウイルスを流出させた、という。
警察が難病感染を捜査
国防総省の生物研究施設が集中するウクライナ南東部では、わずか数ヶ月の間にA型肝炎感染が急速に拡大した。
ウクライナの都市ミコライフで2018年1月現在、37人がA型肝炎で入院している。地元警察は「ヒト免疫不全ウイルスやその他の難病への感染」について捜査を開始した。3年前には同市で100人以上がコレラに感染した。どちらの病気も汚染された飲料水を通じて広がったとされている。
2017年夏、ザポリージャ市で60人のA型肝炎患者が入院したが、この集団感染の原因はまだ不明である。
オデッサ地方では、2017年6月に孤児院の子ども19人がA型肝炎で入院した。
ハルキウでは2017年11月に29例のA型肝炎が報告された。汚染された飲料水からウイルスが分離された。国防総省の生物研究施設の1つがハルキウにあり、そこは1年前に364人のウクライナ人の命を奪った致死性インフルエンザ流行の原因となった地域でもある。
ウクライナとロシアが新たな強毒性コレラ感染に見舞われる
2011年、ウクライナはコレラの流行に見舞われた。 33人の患者が重度の下痢で入院したと報告されている。2014年には2度目の流行がウクライナを襲い、ウクライナ全土で800人以上がコレラに感染したと報告された。2015年にはミコライフ市だけで少なくとも100人の患者が新たに登録された。
コレラ菌
2014年、ウクライナで報告されたコレラ菌と高い遺伝的類似性を持つ、コレラ菌ビブリオ・コレラの新たな強毒型がモスクワを襲った。2014年のロシアの反ペスト研究所の遺伝子研究によると、モスクワで分離されたコレラ株は、隣国ウクライナで流行を引き起こした細菌と類似していた。
ウクライナの生物研究所で活動している米国の請負業者の一つである南部研究所は、コレラやインフルエンザ、ジカ熱に関する計画を持っている。
サザン・リサーチ協会の他に、ブラック&ヴィーチ社とメタビオタ社という2つの米国の民間企業がウクライナで軍事生物研究所を運営している。
ブラック&ヴィーチ特殊計画会社は、1億9870万ドルのDTRA契約を獲得し、ウクライナ(2008年と2012年の2回の5年契約で総額1億2850万ドル)のほか、ドイツやアゼルバイジャン、カメルーン、タイ、エチオピア、ベトナム、アルメニアで生物研究所を建設・運営している。
メタビオタ社は、グルジアとウクライナにおける同計画の下で1840万ドルの連邦政府契約を獲得した。 この米国企業は、西アフリカのエボラ危機の前と最中にもDTRAの仕事を請け負っており、同社はシエラレオネでの仕事で310万ドル(2012~2015年)を獲得している。
サザン・リサーチ協会は2008年以来、ウクライナのDTRA計画の主要な下請け業者である。同社はまた、1951年から1962年にかけて16件の契約を結び、米国の生物兵器計画の下で生物試薬の研究開発を行なった国防総省の元請け企業でもある。
出典:米陸軍の活動、生物兵器計画、第2巻、1977年、82ページ
ソ連亡命者が国防総省のために炭疽菌を製造
サザン・リサーチ協会は2001年、国防総省の炭疽菌研究プログラムの下請け業者でもあった。 主契約者はアドバンスト・バイオシステムズ社で、当時の社長はケン・アリベック氏(1992年に米国に亡命した旧ソ連の微生物学者で生物兵器専門家。カザフスタン出身)であった。
ケン・アリベック氏
ケン・アリベック氏はバイオ・プレパラート社の第一副所長で、生物兵器施設の計画を監督し、炭疽菌に関するソ連の主要専門家であった。米国に亡命後、国防総省の研究計画に従事した。
ジェフ・セッションズ元上院議員に対する「米情報機関のための調査 」への働きかけの活動に25万ドル
サザン・リサーチ協会は、米国議会と国務省に「米国諜報機関の研究開発に関する問題」と「国防関連の研究開発」について強く働きかけた。この働きかけは、ウクライナや旧ソビエト諸国における国防総省の生物研究所計画の開始と時を同じくして行なわれた。
同社は2008年から2009年にかけて、当時のジェフ・セッションズ上院議員(現在はドナルド・トランプ大統領が任命した米司法長官)への働きかけに25万ドルを支払っている。
ジェフ・セッションズ米司法長官、アラバマ州選出上院議員(1997~2017年)
2006年から2016年の10年間、サザン・リサーチ協会は米上院や下院、国務省、国防総省(DoD)への働きかけに128万ドルを支払った。ジェフ・セッションズ上院議員の側近だったワトソン・ドナルド氏は現在、サザン・リサーチ協会の上席理事である。
警察がウクライナでボツリヌス中毒を捜査
ワトソン・ドナルド氏
ウクライナでは2016年に115例のボツリヌス中毒が報告され、12人が死亡した。2017年、ウクライナ保健省は、ボツリヌス毒素中毒(既知の生物学的物質の中で最も有毒なもののひとつ)の新たな症例をさらに90件確認し、8人が死亡した。地元保健当局によると、発生原因は食中毒で、警察が捜査を開始した。ボツリヌス毒素はすでに米国国防総省の生物兵器施設で製造されたバイオテロ剤の一つであるため、ウクライナの国防総省の生物研究所が第一容疑者に挙げられている。 (下記参照)
ウクライナ政府は2014年に抗毒素の供給を停止し、2016年から2017年にかけての大流行時にはボツリヌス症ワクチンの在庫はなかった。
ボツリヌス中毒は、ボツリヌス菌が産生する毒素によって引き起こされる稀で非常に危険な病気である。
1gの毒素で100万人が死亡する可能性がある
ボツリヌス神経毒は、極めて強力で、製造や輸送が容易であるため、重大な脅威を持つ生物兵器となっている。 ボツリヌス毒素は筋肉麻痺や呼吸不全を引き起こし、直ちに治療しなければ最終的には死に至る。1グラムの結晶毒素を均一に分散させて吸い込むと、100万人以上が死亡する可能性がある。毒素はエアロゾルを介して、あるいは水や食品の汚染によって拡散する可能性がある。
国防総省は生きたウイルスや細菌、毒素を製造している
ボツリヌス毒素は、炭疽菌やブルセラ菌、野兎病菌と同様に、過去に米軍によって生物兵器として実験された。米国の生物兵器計画は1969年に公式に終了したが、軍事実験は決して終了していないことが文書で示されている。現在、米国防総省はかつてと同じ軍事施設であるダグウェイ実験場で生物兵器の製造と実験を行っている。
現在の実地試験
出典:ウェスト・デザート・テストセンター、2012年能力報告書
過去の実地試験
出典:1977年米陸軍報告書135ページ
米国の生物兵器工場
米陸軍は、ダグウェイ試験場(ユタ州ウェスト・デザート・テストセンター)にある特別軍事施設で生物試薬を製造・試験している、と2012年の陸軍報告書に記載されている。この施設は陸軍試験評価司令部が監督している。
ダグウェイ試験場の生命科学部門(LSD)は、生物試薬の製造を任務としている。陸軍の報告書によると、この部門の科学者はローター・サロマン生命科学試験施設(LSTF)でエアロゾル化生物試薬を製造し、試験を行なっている、という。
ローター・サロマン生命科学実験施設(LSTF)では、バイオテロ用薬剤が製造され、エアロゾル化される。 写真出典:ダグウェイ試験場
米国ユタ州ダグウェイ実験場で米陸軍が製造した生物製剤、出典:2012年能力報告書、ウェスト・デザート・テストセンター
ライフサイエンス部門は、エアロゾル技術部門と微生物学部門で構成されている。エアロゾル技術部門は、生物剤と模擬剤をエアロゾル化する。 微生物学部門は、毒素やバクテリア、ウイルス、薬剤様生物を製造し、屋内試験や実地試験に使用する。
生命科学試験施設の発酵実験室では、2Lの小型のものから1500Lの大型装置まで、さまざまな発酵槽で細菌を培養している。発酵槽は、微生物が最適な増殖速度を得られるよう、pHや温度、光、圧力、栄養濃度など、設計される微生物の要件に合わせて特別に調整されている。
大型の1500L発酵槽
生産後実験室では、テスト材料を乾燥・粉砕する。写真クレジット:Dugway Proving Ground
生物試薬が製造されると、科学者たちは封じ込めエアロゾル室でその試薬に挑戦する。
識別感度テストのために生きた生物製剤をばらまく技術者たち(写真:ダグウェイ実験場)
ボツリヌス神経毒と炭疽菌のエアゾール実験
米陸軍が世界で最も致死性の高い毒素であるボツリヌス神経毒のエアロゾルを製造、保有、実験していることを証明する文書がある。2014年、陸軍省はダグウェイ試験場での検査のためにメタボロジクス社から100mgのボツリヌス毒素を購入した。
この実験は2007年に遡り、不特定多数の毒素が同じメタボロジクス社によって陸軍省に調達された。2012年のウェスト・デザート・テスト・センターの報告書によれば、この軍事施設はボツリヌス神経毒エアロゾルやエアロゾル化炭疽菌、エルシニア・ペスティス、ベネズエラ馬脳炎ウイルス(VEE)を使った検査を行なっている。
出典:ウェスト・デザート・テスト・センター、2012年能力報告書
ダグウェイ実験場での屋外実地試験計画
米陸軍の文書や写真によれば、国防総省は爆発物によるものを含め、生物テロ攻撃のためのさまざまな拡散方法を開発していることがわかる。
出典:ウェスト・デザート・テスト・センター、2012年能力報告書
生物学的/化学的試験のための汚染物質の散布。 写真著作権:ダグウェイ実験場
液体の散布
粉末の散布
実験場での散布。写真著作権:ダグウェイ実験場
エアロゾル散布機
試験区域での配布。写真提供: ダグウェイ試験場
米陸軍の報告書には、生物エアロゾル散布機など、数多くの散布技術が挙げられている。 マイクロネール散布機と呼ばれるこのような散布機はすでに米陸軍によって開発され、ダグウェイ実験場で検査されている。資料によれば、車両に搭載することも、後部に付帯させて背負わせることも可能で、放出精度を高めるためにポンプを取り付けることもできるという。ミクロネア噴霧器は、12Lの貯水機から1分間に50~500mLの生物液体模擬物質を放出できる。
米国はサダム・フセインの生物兵器工場からバクテリアを盗み出した
バチルス・チューリンゲンシス
バチルス・チューリンゲンシスは、生物農薬として広く使用されている昆虫病原体である。BT(バチルス・チューリンゲンシス)アル・ハカムは、2003年に米国が主導した国連特別委員会によってイラクで採取され、イラクの生物兵器製造施設であるアル・ハカムにちなんで命名された。国防総省の実地試験とは別に、この細菌は米国でも害虫に強い遺伝子組み換えトウモロコシの生産に使われている。CIAが投稿した写真は、この細菌がイラクで米国によって収集されたことを証明している。CIAによれば、生物農薬の入った小瓶は、アル・ハカムの科学者の自宅から回収されたものだという。
CIA:2003年、イラクの科学者宅から、単細胞タンパク質や生物殺虫剤、BW剤製造に使用可能な菌株など、アル・ハカムの偽装工作と一致する名札が貼られた小瓶を含む計97本が回収された。 写真著作権:CIA
米国連邦契約登録の情報によれば、国防総省はイラクのサダム・フセインの生物兵器工場から盗んだバクテリアを使った検査を行なっている。
国防脅威削減局(DTRA)の連邦計画では、細菌を使った実験室分析と実地試験を行なっている。 出典:govtribe.com
実験はカートランド空軍基地(カートランドは空軍資材司令部の核兵器センターの本拠地)で行なわれる。ここでは兵器の実験が行なわれており、つまり生物学的模擬物質(バクテリア)を使った実地試験もこの一連の実験に含まれる。
この計画のDTRA請負業者であるラブレス生物医学・環境研究所(LBERI)は、生物研究安全性基準3(ABSL-3)の研究所を運営しており、これは選択薬剤(Select Agent)の基準を満たしている。 この施設は生物エアロゾル研究を行なうように設計されている。同社は、カートランド空軍基地での生物学的模擬物質を使った実地試験の5年契約を獲得している。
写真の著作権。カートランド空軍基地
風のトンネルの中でおこなわれる実験もある。写真の著作権。ダグウェイ実験場
生物学的模擬物質(バクテリア)による実地試験
米国防総省が現在行なっていることは、過去に行なっていたこととまったく同じである。米陸軍は、1949年からニクソン大統領が計画の終了を公式に発表した1968年まで、このような生物学的模擬物質を使った実地試験を、一般市民を巻き込んで27回行なった。
出典:米陸軍の活動、生物兵器計画、第2巻、1977年、125-126ページ
チェチェンでの実地試験
グルジアのルガー・センターで米軍の計画を運営する国防脅威削減局(DTRA)は、すでにロシアのチェチェンで未知の物質を使った実地試験を行なったとされている。2017年春、地元市民は、グルジアとのロシア国境近くで白い粉を撒き散らす無人機を目撃した、と報告した。 グルジア国境警察も、グルジアとロシアの国境で活動する米軍関係者も、この情報については声明を出していない。
ロシア・グルジア国境での920万ドルの米軍による計画
DTRAは、「グルジア陸上国境警備計画」と呼ばれる軍事計画のもと、ロシアとグルジアの国境に全面的に立ち入ることができる。この計画に関する活動は、米国の民間企業パーソンズ・ガバメント・サービス・インターナショナル社に委託されている。DTRAはこれまでにも、レバノンやヨルダン、リビア、シリアの同様の国境警備計画でパーソンズ社と契約している。 パーソンズ社は、ロシアとグルジアの国境における国防総省の国境警備計画で920万ドルの契約を獲得している。
チェチェンの地元市民は2017年、グルジアとのロシア国境付近で無人散布機に気づいた。
米国防総省が遺伝子組み換えウイルスを媒介する遺伝子組み換え昆虫を検査
米国防総省は遺伝子編集に少なくとも6500万ドルを投資している。米国防総省国防高等研究計画局(DARPA)は、DARPAの「安全な遺伝子計画」のもとで、昆虫やげっ歯類、バクテリアのゲノム編集のための手段を開発するために、新規のCRISPR-Cas9*技術を使用する7つの研究団を獲得した。
*ゲノム中で任意の領域を切断できる遺伝子改変手段
別の軍事計画(「昆虫同盟」)では、遺伝子組み換え昆虫を操作して、改変遺伝子を植物に移植する。この1030万ドルのDARPAによる計画には、昆虫の遺伝子編集と昆虫が媒介するウイルスの遺伝子編集の両方が含まれている。「生態学的適所優先工学」は、昆虫のゲノム編集に関する現在進行中の第3の軍事計画である。国防総省の目的は、遺伝子組み換え生物が特定の温度に耐えられるようにし、生息地や食料源を変えられるようにすることである。
出典: fbo.gov
人間の遺伝子操作
昆虫や昆虫が媒介するウイルスの遺伝子編集に加え、米国防総省は人間も遺伝子操作したいと考えている。 DARPA Advanced Tools for Mammalian Genome Engineering Project(哺乳類ゲノム工学のためのDARPA先進手段計画)は、人体内に生物学的装置を作り、それを使って新しい遺伝情報を送り込み、DNA段階で人間を改変しようとしている。
DARPAは、さらに47番目の人工染色体をヒト細胞に挿入したいと考えている。この染色体は、人体工学に使用される新しい遺伝子を提供する。 シンプロイド・バイオテック合弁会社は、同計画の下、総額110万ドル(2015-2016年:研究の第一段階で10万600ドル、2015-2017年:連邦契約登録簿に明記されていない作業で99万9300ドル)の契約を2件獲得している。同社は従業員2名のみで、生物研究の実績はない。
合成ウイルスの極秘研究
2008年から2014年の間に、米国は合成生物学の研究に約8億2000万ドルを投資し、国防総省はその主要な貢献者であった。合成生物学に関する軍事計画のほとんどは機密扱いで、そのなかには米軍顧問の秘密組織JASON団による多くの機密研究(国防総省のための「新興ウイルスとゲノム編集」、国家テロ対策センターのための「合成ウイルス」など)がある。
JASONは、国防科学技術に関して米政府に相談事業を提供する独立した科学諮問団である。1960年に設立されたJASONの報告書の大半は機密扱いである。管理上、JASONによる計画は、国防総省やCIA、FBIと契約しているマイター社によって運営されている。2014年以降、マイター社は国防総省と約2740万ドルの契約を結んでいる。
JASON報告書は機密扱いであるが、「生物工学: 遺伝子操作された病原体」と題された米空軍の別の研究結果が存在し、その研究により、JASONの研究団がどんな研究をおこなっていたのかが明らかになっている。つまり、生物兵器として使用可能な遺伝子操作された病原体の5つの集団について、である。それらは、バイナリー生物兵器(2つのウイルスの致死的な組み合わせ)や宿主交換病(エボラウイルスのようにヒトに「飛び移る」動物ウイルス)、ステルスウイルス、そしてデザイナー病である。 デザイナー病は、特定の民族を標的にするように設計することができる。つまり、民族生物兵器として使用できるのである。
民族生物兵器
民族生物兵器(生物遺伝子兵器)とは、主に特定の民族、あるいは遺伝子型の人々に危害を加えることを目的とした理論上の兵器である。
公式に民族生物兵器の研究開発が確認されたことはないが、文書によれば、米国は特定の民族、つまりロシア人と中国人から生物材料を収集していることがわかっている。
米空軍は特にロシア人のRNAと滑膜組織の標本を収集しており、ロシア当局では米国の秘密民族生物兵器計画に対する懸念が高まっている。
出典:fbo.gov
ロシア人とは別に、米国は中国の健康な患者とがん患者の両方から生体試料を収集している。米国国立癌研究所は、中国の林仙や鄭州、成都から300人の被験者の生体試料を収集した。いっぽう、別の連邦による計画は、「中国における食道扁平上皮癌の血清代謝バイオマーカー*探索研究」と題され、中国人患者から収集した349の血清標本の分析が含まれている。
*疾患の有無や、進行状態を示す目安となる生理学的指標のこと
米国国立癌研究所は、北京の中国癌病院の患者から生体試料を収集している
中国の生物試料は、唾液やがん組織を含む一連の連邦計画の下で収集されている。その中には、リンパ腫症例と統制集団(健康な患者)からのDNA標本の遺伝子検査や乳がん患者からの乳がん組織の塊、3例以上のUGI(上部消化管)がん症例を持つ50家族の唾液標本、北京の癌病院からのDNA標本の遺伝子型50のスニップ**、北京の3000例の胃がん症例と3000例の統制集団(健康な患者)からの遺伝子検査などがある。
*個体差につながる身体的差異と、疾患の根底にある病理学的な変化の両方を含め、表現型に大きな変化をもたらす小さな遺伝的差異を検出する技術
**個人間の遺伝子情報の僅かな違い
タバコワクチン: 国防総省はいかにしてエボラ出血熱から利益を得るためにタバコ会社を支援したか?
国防高等研究計画局(DARPA)は、タバコ植物からのワクチン製造に1億ドルを投資した。この計画に参加している企業は、米国の大手タバコ会社によって所有されている。メディアカゴ社はフィリップ・モリス社の共同所有であり、ケンタッキー・バイオプロセシング社はブリティッシュ・アメリカン・タバコ社所有のレイノルズ・アメリカン社の子会社である。現在、これらの企業はタバコからインフルエンザとエボラ出血熱のワクチンを製造している。
1億ドル規模の計画「ブルー・エンジェル」は、2009年のH1N1大流行への対応として開始された。メディカゴ社は、1ヶ月以内に1000万回分のインフルエンザワクチンを製造するために2100万ドルを獲得した。
ブルー・エンジェルの計画部長のジョン・ジュリアス博士は次のように説明する:「代替タンパク質生産組織として、複数の植物種や他の生物が研究されていますが、米国政府はタバコを原料にした製造に投資を続けています」と。
植物由来のワクチン製造法は、標的とするウイルスからヒトの免疫反応を引き起こす特定の抗原タンパク質を分離することで機能する。そのタンパク質の遺伝子をバクテリアに移し、それを植物に感染させる。その後、植物はワクチン接種に使用されるタンパク質の生産を開始する(写真:DARPA)
国防総省が、他のあらゆる植物種の中からタバコから製造されたワクチンに投資することを選んだ理由は明らかではない。フィリップ・モリス社が共同所有するメディカゴ社は、国防総省、連邦議会、保健福祉省に「公衆衛生への備えを支援する技術を進歩させるための資金援助」を求めて働きかけを行ない、49万5000ドルを支払った。国防総省は、新しい技術を開発し、ワクチンで利益を得るためにタバコ会社に資金を提供した。
生物実験は戦争犯罪である
国際刑事裁判所(ICC)のローマ規程第8条は、生物実験を戦争犯罪と規定している。しかし、米国はこの国際条約の締約国ではないため、戦争犯罪の責任を問われることはない。
筆者
ディリアナ・ガイタンジエバ
https://armswatch.com/
ブルガリアの調査報道記者、中東特派員。「アームズ・ウォッチ(兵器の監視)」の創設者でもある。彼女はここ数年、シリア、イラク、イエメンでのテロリストへの武器供給に関する一連の暴露報告書を発表してきた。現在の仕事は、世界中の紛争地帯への戦争犯罪と違法な武器輸出の記録に焦点を当てている。
The Pentagon Bio-weapons
筆者:ディリアナ・ガイタンジエバ(Dilyana Gaytandzhieva )
出典:ガイタンジエバ氏の個人ブログ 2018年4月19日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年5月11日(改訂版、2024年5月28日)
米軍は定期的に致死性のウイルスや細菌、毒素を製造しており、生物兵器禁止に関する国連条約に直接違反している。何十万人もの人々が知らず知らずのうちに、危険な病原体やその他の不治の病気に組織的にさらされている。生物戦争の科学者たちは、世界25カ国の国防総省の生物研究所で外交的隠れ蓑を利用して人工ウイルスの検査を行なっている。これらの米国の生物研究所は、21億ドルの軍事計画である生物協力計画(CBEP)に基づいて国防脅威削減局(DTRA)から資金提供を受けており、グルジアやウクライナなどの旧ソ連諸国、中東、東南アジアとアフリカに配置されている。
訳注:本記事では国名のジョージアは、グルジアと記載する。
試験場としてのグルジア
ルガー・センターは、グルジアにある国防総省の生物研究所である。この研究所は首都トビリシにある米軍ヴァツィアーニ空軍基地からわずか17kmに位置する。この軍事計画の任務を負っているのは、グルジア陸軍医学研究部隊 (USAMRU-G) の生物学者と民間請負業者である。生物研究の危険度が3であるこの研究所には、安全性において許可を持つ米国民のみが近づける。彼らには、2002年の防衛協力に関する米国・グルジア協定に基づいて外交特権が与えられている。
グルジア共和国のルガー・センター
ルガー・センターにある国防総省の生物研究所から17キロ離れたヴァイツィアーニ軍事空軍基地に配備されている米陸軍。
米国とジョージア間の協定は、グルジアで国防総省計画に取り組む米軍人および民間人(外交用車両を含む)に外交上の地位を与えるものである。
米国連邦契約登録簿から得られた情報により、ルガー・センターでの軍事活動の一部が明らかになった。その中には、生物剤(炭疽菌、野兎病)やウイルス性疾患(クリミア・コンゴ出血熱など)の研究、および今後の実験のための生物標本の収集が含まれていた。
国防総省の請負業者が外交上の隠れ蓑のもとで生物剤を製造
国防脅威削減局(DTRA)は、軍事計画に基づく業務の多くを民間企業に委託しているが、民間企業は議会に対する責任を負っておらず、より自由に活動し、法の支配を中心に活動できる。ルガー・センターで勤務する米国の民間人も、外交官ではないが、外交特権を与えられている。したがって、民間企業は、駐留国(この場合はグルジア共和国)の直接の管理下になくても、外交上の隠れ蓑の下で米国政府のために仕事を行なうことができる。この慣行は、CIA が工作員を隠蔽するためによく使用される手口だ。トビリシの米国バイオ研究所では、CH2Mヒル社やバテル社、メタビオタ社という3つの米国民間企業が活動している!国防総省に加えて、これらの民間請負業者は CIA やその他のさまざまな政府機関のために研究を行なっている。
CH2Mヒル社は、グルジアやウガンダ、タンザニア、イラク、アフガニスタン、東南アジアのバイオ研究所向けの国防総省計画に基づき、3億4150万ドルのDTRA契約を獲得した。この金額の半分 (1億6110 万ドル) は、ジョージアの契約に基づいてルガー・センターに割り当てられる。CH2Mヒル社によると、この米国企業は生物剤を確保し、ルガー・センターの元生物兵器科学者を雇用した、という。これらの科学者はグルジアの軍事計画に関与する別の米国企業であるバテル記念研究所で働いている科学者たちだ。
ルガー・センターの5900万ドルの下請け業者であるバテル社は、米国陸軍との過去11件の契約(1952年から1966年)に基づいてすでに米国生物兵器計画に取り組んでおり、生物剤の研究に豊富な経験を持っている。
出典:米国における米軍の活動、生物戦計画、vol. II、1977、p. 82
この民間会社は、アフガニスタンやアルメニア、グルジア、ウガンダ、タンザニア、イラク、アフガニスタン、ベトナムにある国防総省の DTRA 生物研究所で業務を行なっている。バテル社は、米国の幅広い政府機関向けに、毒性の高い化学物質と病原性の高い生物剤の両方を使用した研究や開発、試験、評価を行なっている。同社は総額約20億ドルの連邦契約を獲得しており、米国政府請負業者上位100社では23位に格付けされている。
CIA-バテル社計画の明確な視座
CIA とバテル記念研究所による共同調査である「プロジェクト・クリア・ビジョン(1997年と2000年) は、CIA から授与された契約に基づいて、その拡散特性を検査するためにソ連時代の炭疽菌子嚢を復元し、検査をおこなった。この計画で定められた目標は、子猫の生物剤拡散特性を評価することだった。CIAとバテル社間の秘密作戦は、国連に提出された米国生物兵器禁止条約の宣言から除外されていた。
極秘実験
バテル社は過去10年間、米国土安全保障省 (DHS) の契約に基づき、メリーランド州フォート・デトリックで極秘生物研究所 (国家生物防御分析対策センター – NBACC) を運営してきた。同社は、3億4440 万ドルの連邦契約(2006 ~ 2016 年) と、さらに1730 万ドルの契約(2015~2026年) をDHSから獲得した。
米国の極秘施設として分類されているNBACC。写真提供: DHS
バテル社によっておこなわれたNBACCの秘密実験には次のようなものがある:粉末散布技術の評価、エアロゾル*化毒素がもたらす危険性の評価、ヒト以外の霊長類におけるエアロゾル粒子の機能としてのB.シュードマレイ(メリオイドーシス)の病原性の評価などである。メリオイドーシスは生物兵器として開発される可能性があるため、分類Bのバイオテロリズム薬品に分類される。B.シュードマレイは過去に米国が生物兵器の可能性がある物質として研究したことがある。
* 気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子と周囲の気体の混合体のこと
グルジアのルガー・センターでの軍事実験のほかに、バテル社はすでに米国のフォート・デトリックにある生物研究危険度4のNBACC極秘研究所でバイオテロ薬品を製造している。 NBACCの発表においては、研究室の16の研究優先事項があげられている。中でも、BTA(生物学的脅威物質)の可能性について、従来の病原体、新興病原体、遺伝子操作病原体の特徴を明らかにすること、BTAの可能性がある病原体による非伝統的、新規、非流行性の疾病誘発の性質を評価すること、そしてヒト以外の霊長類に対するエアロゾル暴露試験能力を拡大することである。
NBACC 研究所で病原体を操作している科学者。写真提供: NBACC
米国企業メタビオタ社は、グルジアとウクライナにおける国防総省のDTRA計画に基づき、科学および技術相談事業に関して1840 万ドルの連邦契約を獲得した。メタビオタ社の事業には、世界規模の現地での生物学的脅威研究や病原体の発見、流行への対応、臨床試験が含まれている。メタビオタ社は、西アフリカにおけるエボラ出血熱危機の前および最中にDTRAの業務を行なうよう国防総省から契約を受けており、エボラ出血熱流行の中心地の一つであるシエラレオネでの事業に対して310万ドル(2012~2015年)を獲得した。
メタビオタ社はエボラ出血熱危機の中心地で国防総省の計画に取り組んだが、そこには米国の生物研究施設が3箇所ある。
ウイルス性出血熱協会が起草した2014年7月17日の報告書は、メタビオタ社が検査結果の報告方法に関する既存の協定を守らず、そこで働くシエラレオネの科学者を迂回したと非難した。報告書はまた、メタビオタ社が研究所で血液細胞を培養していた可能性を指摘し、これは危険なことであり、健康な患者を誤診していた可能性もあるとした。これらの疑惑はすべてメタビオタ社によって否定された。
2011年、ルガー・センター、アンドリュー・C・ウェバー(右) – 米国国防次官補(2009~2014年)、米国国防総省エボラ対策副調整官(2014~2015年)、現在はメタビオタ(米国請負業者)の従業員。
刺咬昆虫に関する軍事実験
昆虫戦とは、病気を伝染させるために昆虫を使用する生物戦争の一種である。国防総省はグルジアとロシアでそのような昆虫学的検査を行なった、とされる。 2014年、ルガー・センターには昆虫施設が設置され、「グルジアとコーカサスにおけるサシバエのバーコーディング*に関する意識向上」計画が開始された。この計画は、ジョージア国外のより広い地理的領域、つまりコーカサスを網羅するものとされた。 2014年から2015年にかけて、別の計画である「急性熱性疾患に関する監視活動」の下でフレボトミンサシバエの種が収集され、すべての(メスの)サシバエの感染率を調べる検査が行なわれた。3番目の計画では、サシバエの収集も含まれており、サシバエの唾液腺の特徴を研究した。
*特定の遺伝子領域の短い塩基配列を使用して生物の種を同定したり、多様性を調べるための技法。
トビリシのトイレにとまっているハエ (写真 1)、ジョージアのハエ (写真 2、3)
その結果、トビリシには2015年から刺咬性ハエが蔓延している。これらの刺咬性昆虫は一年中屋内の風呂場に生息しているが、その行動は、以前はジョージアにおけるこれらの種の典型的な行動ではなかった。(通常、ジョージアのプレボトミンバエの活動期は非常に短く6月から9月までだった)。地元住民は、風呂場で裸になっているときに、新たに出現したハエに刺された、と訴えている。寒さにも強く、氷点下の山中でも生きていける。
ロシア、ダゲスタンの刺咬性ハエ
2014年に国防総省の計画が開始されて以来、グルジアのハエと同様のハエが隣国のダゲスタン(ロシア)にも発生している。地元の人によると、噛まれて発疹が出るそうだ。繁殖場所は家の排水溝だという
グルジアのハエ(上)。ダゲスタンの同じ種のハエ(下)
フレボトミン科のハエは、唾液中に危険な寄生虫を運び、人間を刺すことで感染する。これらのハエが媒介するこの病気には、国防総省が大きな関心を寄せている。2003年の米国のイラク侵攻中、米国兵士はサシバエにひどく刺され、リーシュモナス症に罹患した。この病気はイラクとアフガニスタンに固有のもので、急性リーシュモナス症を治療せずに放置すると死に至る可能性がある。
1967年の米陸軍報告書「アジアとヨーロッパ・ソ連における医学的に重要な節足動物」には、すべての地域の昆虫、その分布、およびそれらが媒介する病気があげられている。排水溝に生息する刺咬ハエも文書に記載されている。しかし、これらの昆虫の自然の生息地はグルジアやロシアではなく、フィリピンである。
出典: 「アジアとヨーロッパ・ソ連における医学的に重要な節足動物」、米陸軍報告書、1967年
白衣作戦: 感染したハエが人間を刺すかどうかの検査
サシチョウバエ
機密解除された米陸軍の報告書(米国における米軍基地の活動、生物兵器計画、1977、vol. II, p. 203)によれば、1970年と1972年に、サシチョウバエ熱の人体実験が行なわれた、という。この「白衣作戦」中、治験者は感染したサシチョウバエに刺された。白衣作戦は、1954年から1973年にかけてメリーランド州フォート・デトリックで米陸軍が実施した生物防衛医学研究計画である。
米国の生物兵器計画は公式に終了したにもかかわらず、1982年にUSAMRIID(米陸軍感染症医学研究所)は、サシチョウバエと蚊がリフトバレー・ウイルスやデング熱、チクングニア熱、東部馬脳炎の媒介者になりうるかどうかの実験を行なった。
殺人昆虫
ネッタイシマカ
国防総省には、昆虫を病気の媒介者として利用してきた長い歴史がある。部分的に機密解除された1981年の米陸軍報告書によると、米国の生物兵器科学者は昆虫に対して多くの実験を実施してきた、という。これらの作戦は米国生物兵器計画に基づく米国昆虫戦の一環であった。
国防総省: 1人当たりわずか0.29ドルの費用で62万5000人を殺害する方法
1981年の米陸軍報告書では、黄熱病に感染したネッタイシマカによる都市への16回の同時攻撃と野兎病エアロゾル攻撃の2つの計画を比較し、費用と死傷者数の効果を評価した。
大コチョコチョ作戦:熱帯ネズミノミXenopsylla cheopisを生物兵器における疾病媒介動物として使用するための感染パターンと生存率を決定するための実地試験が行われた。
大騒ぎ作戦: 100万匹のネッタイシマカが生産され、1/3は弾薬に入れられて航空機から投下されるか、地上に散布された。蚊は空中投下を生き延び、人間の血液を積極的に探し求めた。
出典:米国およびヨーロッパの NATO 諸国に対する潜在的危険としての昆虫戦の評価、米陸軍、1981年3月報告書
メーデー作戦:米国ジョージア州で、暗号名「メーデー」と名付けられた米軍作戦中に、地上からの方法でネッタイシマカが散布された。
「ネッタイシマカの大量生産」など、1981年の米陸軍報告書の一部は機密解除されておらず、潜在的にはこの計画がまだ進行中であることを意味している。
黄熱病の蚊としても知られるネッタイシマカは、米軍の作戦で広く使用されている。同じ種類の蚊が、デング熱やチクングニア熱、新生児の遺伝的奇形を引き起こすジカウイルスの媒介者であると言われている。
先導者作戦 [*訳註:原文のbellweatherはbellwetherの誤植]
米陸軍化学研究開発司令部生物兵器部門は、1960年にユタ州ダグウェイ試験場での野外試験で屋外の蚊の刺咬活動を研究した。飢えさせた処女の雌のネッタイシマカが、戸外に出動した軍隊に対して試験された。
関連画像:屋外の蚊の刺し活動の研究、先導者作戦、1960年、技術報告書、米陸軍、ダグウェイ試験場
グルジアでの熱帯の蚊とダニを使った軍事実験
この種の蚊やノミ(米国昆虫学戦争計画の下で過去に研究された)もグルジアで収集され、ルガー・センターで検査された。
2014年のDTRAの計画「グルジアのウイルスとその他のアルボウイルス」のもとで、これまで見たことのない熱帯蚊であるヒトスジシマカが初めて検出され、数十年 (60 年) を経て、西グルジアでネッタイシマカの存在が確認された。
ヒトスジシマカは、黄熱病ウイルスやデング熱、チクングニア熱、ジカ熱などの多くのウイルス病原体を媒介する。
欧州疾病予防管理センターが提供した数値によると、これらの熱帯蚊であるヒトスジシマカは、グルジアではこれまで観察されたことがなかったが、隣国のロシア(クラスノダール)とトルコでも検出されている。世界のこの地域でこの蚊が広がっているのは、異例のことだ。
ネッタイシマカは、グルジアやロシア南部、トルコ北部にのみ分布している。それらは、国防総省のルガー・センターでの計画が開始された後の2014年に初めて検出された。
別の DTRA 計画「グルジア野兎病の疫学と生態」(2013~ 2016年)では、6148 匹の地上ダニが収集された。牛からは5871匹が採取され、ノミは1310匹、ダニは731匹捕獲された。 2016年にはさらに21590匹のダニがルガー・センターで収集され研究された。
グルジアにおける炭疽菌の発生とNATOによる人体実験
2007年、グルジアは家畜炭疽ワクチン接種を毎年義務付ける政策を終了した。その結果、この病気の罹患率は2013年に頂点に達した。同年、 NATOはグルジアのルガー・センターで人体を対象とした炭疽菌ワクチンの試験を開始した。
炭疽菌が発生したにもかかわらず、2007年にグルジア政府は7年間にわたる強制ワクチン接種を中止し、2013年、NATOはグルジアで新しい炭疽菌ワクチンの人体治験を開始した。
国防総省によるロシア炭疽菌の研究
炭疽菌は、過去に米軍によって兵器化された生物剤の1つである。国防総省は、その計画は防衛のみである、と主張しているが、それに反する事実がある。2016年、アメリカの科学者は、トビリシにおける米国国防脅威削減局(DTRA)の協力的生物学的関与計画の資金援助を受けて、ルガー・センターで「ソビエト/ロシアの炭疽菌ワクチン株55-VNIIVViMのゲノム配列」に関する研究を実施した。この研究は、メタビオタ社 (グルジアでの国防総省計画に基づく米国の請負業者) によって管理されている。
2017年、DTRAはさらなる研究、「グルジアの炭疽菌のヒトおよび家畜分離株の10のゲノム配列」に資金を提供し、この研究はルガー・センターのUSAMRU-Gによって実施された。
グルジア34人がクリミア・コンゴ出血熱(CCHF)に感染
クリミア・コンゴ出血熱(CCHF)は、ダニ媒介ウイルス(ナイロウイルス)による感染によって引き起こされる。この病気は 1944 年にクリミアで初めて特定され、クリミア出血熱という名前が付けられた。その後、このウイルスが1969年にコンゴの病気の原因であることが認識され、現在の病名になった。 2014年には34人がCCHFに感染(うち1名が4歳児)し、うち3人が死亡した。同年、国防総省の生物学者は、DTRA計画「グルジアにおけるデング熱ウイルスおよび他のアルボウイルスによって引き起こされる発熱性疾患の疫学」の下で、グルジアにおいてこのウイルスが研究された。この計画には、発熱症状のある患者の検査と、臨床検査用のCCHVを媒介する可能性があるダニの収集が含まれていた。
グルジアでは34人がCCHFに感染し、そのうち3人が死亡した。出典: NCDC-グルジア
グルジアでのCCHF発生の原因はまだ不明である。地元の獣医局の報告書によると、感染した村から採取したすべてのダニのうち、検査でこの病気の陽性反応を示したのはたったの1匹だけだった、という。ウイルスは動物から人間に感染した、という地元当局の主張にもかかわらず、動物から採集された血液もすべて陰性だった。2014年にCCHFのヒト症例が急増したことを考えると、感染したダニや動物がいないことは説明がつかない。これは、発生が自然なものではなく、ウイルスが意図的に拡散されたことを意味する。
2016年には、国防総省の計画「グルジアにおけるクリミア・コンゴ出血熱ウイルス(CCHFV)およびハンタウイルスの血清保有率と遺伝的多様性の評価」のもと、ルガー・センターでの将来の研究のためのDNA集積情報のために、さらに21590匹のダニが収集された。
CCHFの症状
アフガニスタンでの致死性CCHF発生の責任は軍の生物研究所にある
アフガニスタン全土でクリミア・コンゴ出血熱(CCHF)の症例も237件報告されており、2017年12月時点でそのうち41名が死亡した。アフガニスタン保健省によると、症例のほとんどは首都カブールで登録されており、71例が報告されている。死者数は13名、イランとの国境近くのヘラート州では感染者67名が報告された。
アフガニスタンは、領土内に国防総省の生物研究所がある世界25カ国のうちの一つである。アフガニスタンでのこの計画は、国防脅威軽減局(DTRA)の資金提供を受けている米国の生物防衛計画、協力的生物活動計画(CBEP)の一環である。グルジアのルガー・センターやCH2Mヒル社、バテル社で働くDTRAの請負業者も、アフガニスタンでの計画と契約を結んでいる。 CH2Mヒル社は1040 万ドルの契約(2013 ~ 2017年)を獲得した。アフガニスタンとグルジアの国防総省の請負業者は同じであり、両国の地元住民の間で蔓延している病気も同様である。
国防総省がコウモリを収集し研究する理由
コウモリは、エボラウイルスや中東呼吸器症候群(MERS)、その他の致命的な病気の宿主であると言われている。しかし、これらのウイルスが人に感染する正確な経路は現在不明である。DTRA 協力生物学的関与計画(CBEP) のもとで、コウモリの軍事的に重要な致死性病原体の探索を目的として、数多くの研究が実施されてきた。
2014年にルガー・センターでは研究目的で221匹のコウモリが安楽死させられた。
アフリカでの致死性エボラ出血熱の流行(2014~2016年)はコウモリが原因だと考えられている。しかし、ウイルスがどのようにして人間に「感染」したのかを正確に示す決定的な証拠はこれまでに提供されておらず、自然感染ではなく意図的な感染の疑いが生じている。
致死性のウイルスを操作することは米国では合法
MERS-CoVはコウモリに由来し、人間やラクダに直接感染すると考えられている。しかし、エボラ出血熱と同様、ウイルスの正確な感染経路は不明である。 いまのところ、MERS-CoVによる感染者1980人、死亡者699人が世界15カ国で報告されている(2017年6月時点)。
MERSで報告された患者10人につき、3~4人が死亡している(出典:WHO)
MERS-CoVは、インフルエンザやSARSと同様、米国によって開発され、国防総省によって研究されてきたウイルスの1つである。この慣行が裏付けられたのは、オバマ大統領が2014年にそのような「二重用途」研究に対する政府資金提供を一時的に禁止したことによる。2017年に一時停止は解除され、実験は続けられている。米国では、潜在大流行病原体(PPP)の強化実験が合法である。このような実験は、病原体の伝播性や毒性を高めることを目的としている。
生物兵器としての野兎病
F. ツラレンシスは感染力が非常に高い細菌であり、エアロゾル攻撃により兵器化される可能性がある。
ウサギ熱としても知られる野兎病はバイオテロ要因として分類されており、過去に米国によりそのために開発された。しかし、国防総省は野兎病に関する研究と、この病気の原因となるダニや齧歯動物などの細菌の媒介の可能性についての研究を続けている。 DTRA は、グルジアの他の特に危険な病原体とともに野兎病に関する多くの計画を立ち上げた。特に危険な病原体(EDP)、または特定の病原体は、世界中の公衆衛生にとって大きな懸念事項となっている。これらの高病原性病原体は、以下の国防総省 の計画を通じて軍事的重要性の証拠として武器化される可能性を秘めている。その研究名は「グルジアにおけるヒト野兎病の疫学およびグルジアにおける特に危険な病原体のヒト疾患疫学とその精査」(未分化熱および出血熱/敗血症性ショックの患者における選択された薬剤の研究)、である。
野兎病は、米陸軍が過去に開発した生物兵器の一つである。出典:1981米国陸軍報告書
国防総省の生物研究所によりウクライナで伝染病が蔓延
国防総省国防脅威削減局(DTRA)は、ロシアと国境を接する旧ソ連のウクライナにある11の生物研究所に資金を提供している。
米軍による計画は機密情報
ウクライナは自国領土内の軍事生物研究所を管理していない。米国防総省とウクライナ保健省との間の2005年協定によれば、ウクライナ政府は米国の計画に関する機密情報の公開を禁じられており、ウクライナは生物学的研究のために危険な病原体を米国防総省(DoD)に譲渡する義務を負っている。米国防総省は、この協定に基づく計画に関連して、ウクライナの特定の国家機密を知ることを認められている。
59, 60
外交という偽装に守られた生物兵器研究者たち
米国とウクライナの二国間協定の中に、ウクライナ科学技術センター(STCU)の設立がある。STCUは、かつてソ連の生物兵器計画に関与した科学者の計画を公式に支援している。過去20年間で、STCUは2億8500万ドル以上を投じて、大量破壊兵器の開発に以前携わっていた科学者たち約1850人の計画に資金を提供し、管理してきた。
外交的偽装の下で働いているウクライナ駐在の米職員
364人のウクライナ国民が豚インフルエンザで死亡
国防総省の研究所のひとつはハルキウにあり、2016年1月には少なくとも20人のウクライナ兵がわずか2日間でインフルエンザのようなウイルスで死亡し、さらに200人が入院した。ウクライナ政府はハルキウで死亡したウクライナ兵について報告していない。2016年3月現在、ウクライナ全土で364人の死亡が報告されている(81.3%が豚インフルエンザA(H1N1)pdm09によるもので、2009年に世界的大流行を引き起こしたのと同じ株である)。
ドネツク人民共和国の諜報機関の情報によると、ハルキウにある米国の生物研究所が致死性のウイルスを流出させた、という。
警察が難病感染を捜査
国防総省の生物研究施設が集中するウクライナ南東部では、わずか数ヶ月の間にA型肝炎感染が急速に拡大した。
ウクライナの都市ミコライフで2018年1月現在、37人がA型肝炎で入院している。地元警察は「ヒト免疫不全ウイルスやその他の難病への感染」について捜査を開始した。3年前には同市で100人以上がコレラに感染した。どちらの病気も汚染された飲料水を通じて広がったとされている。
2017年夏、ザポリージャ市で60人のA型肝炎患者が入院したが、この集団感染の原因はまだ不明である。
オデッサ地方では、2017年6月に孤児院の子ども19人がA型肝炎で入院した。
ハルキウでは2017年11月に29例のA型肝炎が報告された。汚染された飲料水からウイルスが分離された。国防総省の生物研究施設の1つがハルキウにあり、そこは1年前に364人のウクライナ人の命を奪った致死性インフルエンザ流行の原因となった地域でもある。
ウクライナとロシアが新たな強毒性コレラ感染に見舞われる
2011年、ウクライナはコレラの流行に見舞われた。 33人の患者が重度の下痢で入院したと報告されている。2014年には2度目の流行がウクライナを襲い、ウクライナ全土で800人以上がコレラに感染したと報告された。2015年にはミコライフ市だけで少なくとも100人の患者が新たに登録された。
コレラ菌
2014年、ウクライナで報告されたコレラ菌と高い遺伝的類似性を持つ、コレラ菌ビブリオ・コレラの新たな強毒型がモスクワを襲った。2014年のロシアの反ペスト研究所の遺伝子研究によると、モスクワで分離されたコレラ株は、隣国ウクライナで流行を引き起こした細菌と類似していた。
ウクライナの生物研究所で活動している米国の請負業者の一つである南部研究所は、コレラやインフルエンザ、ジカ熱に関する計画を持っている。
サザン・リサーチ協会の他に、ブラック&ヴィーチ社とメタビオタ社という2つの米国の民間企業がウクライナで軍事生物研究所を運営している。
ブラック&ヴィーチ特殊計画会社は、1億9870万ドルのDTRA契約を獲得し、ウクライナ(2008年と2012年の2回の5年契約で総額1億2850万ドル)のほか、ドイツやアゼルバイジャン、カメルーン、タイ、エチオピア、ベトナム、アルメニアで生物研究所を建設・運営している。
メタビオタ社は、グルジアとウクライナにおける同計画の下で1840万ドルの連邦政府契約を獲得した。 この米国企業は、西アフリカのエボラ危機の前と最中にもDTRAの仕事を請け負っており、同社はシエラレオネでの仕事で310万ドル(2012~2015年)を獲得している。
サザン・リサーチ協会は2008年以来、ウクライナのDTRA計画の主要な下請け業者である。同社はまた、1951年から1962年にかけて16件の契約を結び、米国の生物兵器計画の下で生物試薬の研究開発を行なった国防総省の元請け企業でもある。
出典:米陸軍の活動、生物兵器計画、第2巻、1977年、82ページ
ソ連亡命者が国防総省のために炭疽菌を製造
サザン・リサーチ協会は2001年、国防総省の炭疽菌研究プログラムの下請け業者でもあった。 主契約者はアドバンスト・バイオシステムズ社で、当時の社長はケン・アリベック氏(1992年に米国に亡命した旧ソ連の微生物学者で生物兵器専門家。カザフスタン出身)であった。
ケン・アリベック氏
ケン・アリベック氏はバイオ・プレパラート社の第一副所長で、生物兵器施設の計画を監督し、炭疽菌に関するソ連の主要専門家であった。米国に亡命後、国防総省の研究計画に従事した。
ジェフ・セッションズ元上院議員に対する「米情報機関のための調査 」への働きかけの活動に25万ドル
サザン・リサーチ協会は、米国議会と国務省に「米国諜報機関の研究開発に関する問題」と「国防関連の研究開発」について強く働きかけた。この働きかけは、ウクライナや旧ソビエト諸国における国防総省の生物研究所計画の開始と時を同じくして行なわれた。
同社は2008年から2009年にかけて、当時のジェフ・セッションズ上院議員(現在はドナルド・トランプ大統領が任命した米司法長官)への働きかけに25万ドルを支払っている。
ジェフ・セッションズ米司法長官、アラバマ州選出上院議員(1997~2017年)
2006年から2016年の10年間、サザン・リサーチ協会は米上院や下院、国務省、国防総省(DoD)への働きかけに128万ドルを支払った。ジェフ・セッションズ上院議員の側近だったワトソン・ドナルド氏は現在、サザン・リサーチ協会の上席理事である。
警察がウクライナでボツリヌス中毒を捜査
ワトソン・ドナルド氏
ウクライナでは2016年に115例のボツリヌス中毒が報告され、12人が死亡した。2017年、ウクライナ保健省は、ボツリヌス毒素中毒(既知の生物学的物質の中で最も有毒なもののひとつ)の新たな症例をさらに90件確認し、8人が死亡した。地元保健当局によると、発生原因は食中毒で、警察が捜査を開始した。ボツリヌス毒素はすでに米国国防総省の生物兵器施設で製造されたバイオテロ剤の一つであるため、ウクライナの国防総省の生物研究所が第一容疑者に挙げられている。 (下記参照)
ウクライナ政府は2014年に抗毒素の供給を停止し、2016年から2017年にかけての大流行時にはボツリヌス症ワクチンの在庫はなかった。
ボツリヌス中毒は、ボツリヌス菌が産生する毒素によって引き起こされる稀で非常に危険な病気である。
1gの毒素で100万人が死亡する可能性がある
ボツリヌス神経毒は、極めて強力で、製造や輸送が容易であるため、重大な脅威を持つ生物兵器となっている。 ボツリヌス毒素は筋肉麻痺や呼吸不全を引き起こし、直ちに治療しなければ最終的には死に至る。1グラムの結晶毒素を均一に分散させて吸い込むと、100万人以上が死亡する可能性がある。毒素はエアロゾルを介して、あるいは水や食品の汚染によって拡散する可能性がある。
国防総省は生きたウイルスや細菌、毒素を製造している
ボツリヌス毒素は、炭疽菌やブルセラ菌、野兎病菌と同様に、過去に米軍によって生物兵器として実験された。米国の生物兵器計画は1969年に公式に終了したが、軍事実験は決して終了していないことが文書で示されている。現在、米国防総省はかつてと同じ軍事施設であるダグウェイ実験場で生物兵器の製造と実験を行っている。
現在の実地試験
出典:ウェスト・デザート・テストセンター、2012年能力報告書
過去の実地試験
出典:1977年米陸軍報告書135ページ
米国の生物兵器工場
米陸軍は、ダグウェイ試験場(ユタ州ウェスト・デザート・テストセンター)にある特別軍事施設で生物試薬を製造・試験している、と2012年の陸軍報告書に記載されている。この施設は陸軍試験評価司令部が監督している。
ダグウェイ試験場の生命科学部門(LSD)は、生物試薬の製造を任務としている。陸軍の報告書によると、この部門の科学者はローター・サロマン生命科学試験施設(LSTF)でエアロゾル化生物試薬を製造し、試験を行なっている、という。
ローター・サロマン生命科学実験施設(LSTF)では、バイオテロ用薬剤が製造され、エアロゾル化される。 写真出典:ダグウェイ試験場
米国ユタ州ダグウェイ実験場で米陸軍が製造した生物製剤、出典:2012年能力報告書、ウェスト・デザート・テストセンター
ライフサイエンス部門は、エアロゾル技術部門と微生物学部門で構成されている。エアロゾル技術部門は、生物剤と模擬剤をエアロゾル化する。 微生物学部門は、毒素やバクテリア、ウイルス、薬剤様生物を製造し、屋内試験や実地試験に使用する。
生命科学試験施設の発酵実験室では、2Lの小型のものから1500Lの大型装置まで、さまざまな発酵槽で細菌を培養している。発酵槽は、微生物が最適な増殖速度を得られるよう、pHや温度、光、圧力、栄養濃度など、設計される微生物の要件に合わせて特別に調整されている。
大型の1500L発酵槽
生産後実験室では、テスト材料を乾燥・粉砕する。写真クレジット:Dugway Proving Ground
生物試薬が製造されると、科学者たちは封じ込めエアロゾル室でその試薬に挑戦する。
識別感度テストのために生きた生物製剤をばらまく技術者たち(写真:ダグウェイ実験場)
ボツリヌス神経毒と炭疽菌のエアゾール実験
米陸軍が世界で最も致死性の高い毒素であるボツリヌス神経毒のエアロゾルを製造、保有、実験していることを証明する文書がある。2014年、陸軍省はダグウェイ試験場での検査のためにメタボロジクス社から100mgのボツリヌス毒素を購入した。
この実験は2007年に遡り、不特定多数の毒素が同じメタボロジクス社によって陸軍省に調達された。2012年のウェスト・デザート・テスト・センターの報告書によれば、この軍事施設はボツリヌス神経毒エアロゾルやエアロゾル化炭疽菌、エルシニア・ペスティス、ベネズエラ馬脳炎ウイルス(VEE)を使った検査を行なっている。
出典:ウェスト・デザート・テスト・センター、2012年能力報告書
ダグウェイ実験場での屋外実地試験計画
米陸軍の文書や写真によれば、国防総省は爆発物によるものを含め、生物テロ攻撃のためのさまざまな拡散方法を開発していることがわかる。
出典:ウェスト・デザート・テスト・センター、2012年能力報告書
生物学的/化学的試験のための汚染物質の散布。 写真著作権:ダグウェイ実験場
液体の散布
粉末の散布
実験場での散布。写真著作権:ダグウェイ実験場
エアロゾル散布機
試験区域での配布。写真提供: ダグウェイ試験場
米陸軍の報告書には、生物エアロゾル散布機など、数多くの散布技術が挙げられている。 マイクロネール散布機と呼ばれるこのような散布機はすでに米陸軍によって開発され、ダグウェイ実験場で検査されている。資料によれば、車両に搭載することも、後部に付帯させて背負わせることも可能で、放出精度を高めるためにポンプを取り付けることもできるという。ミクロネア噴霧器は、12Lの貯水機から1分間に50~500mLの生物液体模擬物質を放出できる。
米国はサダム・フセインの生物兵器工場からバクテリアを盗み出した
バチルス・チューリンゲンシス
バチルス・チューリンゲンシスは、生物農薬として広く使用されている昆虫病原体である。BT(バチルス・チューリンゲンシス)アル・ハカムは、2003年に米国が主導した国連特別委員会によってイラクで採取され、イラクの生物兵器製造施設であるアル・ハカムにちなんで命名された。国防総省の実地試験とは別に、この細菌は米国でも害虫に強い遺伝子組み換えトウモロコシの生産に使われている。CIAが投稿した写真は、この細菌がイラクで米国によって収集されたことを証明している。CIAによれば、生物農薬の入った小瓶は、アル・ハカムの科学者の自宅から回収されたものだという。
CIA:2003年、イラクの科学者宅から、単細胞タンパク質や生物殺虫剤、BW剤製造に使用可能な菌株など、アル・ハカムの偽装工作と一致する名札が貼られた小瓶を含む計97本が回収された。 写真著作権:CIA
米国連邦契約登録の情報によれば、国防総省はイラクのサダム・フセインの生物兵器工場から盗んだバクテリアを使った検査を行なっている。
国防脅威削減局(DTRA)の連邦計画では、細菌を使った実験室分析と実地試験を行なっている。 出典:govtribe.com
実験はカートランド空軍基地(カートランドは空軍資材司令部の核兵器センターの本拠地)で行なわれる。ここでは兵器の実験が行なわれており、つまり生物学的模擬物質(バクテリア)を使った実地試験もこの一連の実験に含まれる。
この計画のDTRA請負業者であるラブレス生物医学・環境研究所(LBERI)は、生物研究安全性基準3(ABSL-3)の研究所を運営しており、これは選択薬剤(Select Agent)の基準を満たしている。 この施設は生物エアロゾル研究を行なうように設計されている。同社は、カートランド空軍基地での生物学的模擬物質を使った実地試験の5年契約を獲得している。
写真の著作権。カートランド空軍基地
風のトンネルの中でおこなわれる実験もある。写真の著作権。ダグウェイ実験場
生物学的模擬物質(バクテリア)による実地試験
米国防総省が現在行なっていることは、過去に行なっていたこととまったく同じである。米陸軍は、1949年からニクソン大統領が計画の終了を公式に発表した1968年まで、このような生物学的模擬物質を使った実地試験を、一般市民を巻き込んで27回行なった。
出典:米陸軍の活動、生物兵器計画、第2巻、1977年、125-126ページ
チェチェンでの実地試験
グルジアのルガー・センターで米軍の計画を運営する国防脅威削減局(DTRA)は、すでにロシアのチェチェンで未知の物質を使った実地試験を行なったとされている。2017年春、地元市民は、グルジアとのロシア国境近くで白い粉を撒き散らす無人機を目撃した、と報告した。 グルジア国境警察も、グルジアとロシアの国境で活動する米軍関係者も、この情報については声明を出していない。
ロシア・グルジア国境での920万ドルの米軍による計画
DTRAは、「グルジア陸上国境警備計画」と呼ばれる軍事計画のもと、ロシアとグルジアの国境に全面的に立ち入ることができる。この計画に関する活動は、米国の民間企業パーソンズ・ガバメント・サービス・インターナショナル社に委託されている。DTRAはこれまでにも、レバノンやヨルダン、リビア、シリアの同様の国境警備計画でパーソンズ社と契約している。 パーソンズ社は、ロシアとグルジアの国境における国防総省の国境警備計画で920万ドルの契約を獲得している。
チェチェンの地元市民は2017年、グルジアとのロシア国境付近で無人散布機に気づいた。
米国防総省が遺伝子組み換えウイルスを媒介する遺伝子組み換え昆虫を検査
米国防総省は遺伝子編集に少なくとも6500万ドルを投資している。米国防総省国防高等研究計画局(DARPA)は、DARPAの「安全な遺伝子計画」のもとで、昆虫やげっ歯類、バクテリアのゲノム編集のための手段を開発するために、新規のCRISPR-Cas9*技術を使用する7つの研究団を獲得した。
*ゲノム中で任意の領域を切断できる遺伝子改変手段
別の軍事計画(「昆虫同盟」)では、遺伝子組み換え昆虫を操作して、改変遺伝子を植物に移植する。この1030万ドルのDARPAによる計画には、昆虫の遺伝子編集と昆虫が媒介するウイルスの遺伝子編集の両方が含まれている。「生態学的適所優先工学」は、昆虫のゲノム編集に関する現在進行中の第3の軍事計画である。国防総省の目的は、遺伝子組み換え生物が特定の温度に耐えられるようにし、生息地や食料源を変えられるようにすることである。
出典: fbo.gov
人間の遺伝子操作
昆虫や昆虫が媒介するウイルスの遺伝子編集に加え、米国防総省は人間も遺伝子操作したいと考えている。 DARPA Advanced Tools for Mammalian Genome Engineering Project(哺乳類ゲノム工学のためのDARPA先進手段計画)は、人体内に生物学的装置を作り、それを使って新しい遺伝情報を送り込み、DNA段階で人間を改変しようとしている。
DARPAは、さらに47番目の人工染色体をヒト細胞に挿入したいと考えている。この染色体は、人体工学に使用される新しい遺伝子を提供する。 シンプロイド・バイオテック合弁会社は、同計画の下、総額110万ドル(2015-2016年:研究の第一段階で10万600ドル、2015-2017年:連邦契約登録簿に明記されていない作業で99万9300ドル)の契約を2件獲得している。同社は従業員2名のみで、生物研究の実績はない。
合成ウイルスの極秘研究
2008年から2014年の間に、米国は合成生物学の研究に約8億2000万ドルを投資し、国防総省はその主要な貢献者であった。合成生物学に関する軍事計画のほとんどは機密扱いで、そのなかには米軍顧問の秘密組織JASON団による多くの機密研究(国防総省のための「新興ウイルスとゲノム編集」、国家テロ対策センターのための「合成ウイルス」など)がある。
JASONは、国防科学技術に関して米政府に相談事業を提供する独立した科学諮問団である。1960年に設立されたJASONの報告書の大半は機密扱いである。管理上、JASONによる計画は、国防総省やCIA、FBIと契約しているマイター社によって運営されている。2014年以降、マイター社は国防総省と約2740万ドルの契約を結んでいる。
JASON報告書は機密扱いであるが、「生物工学: 遺伝子操作された病原体」と題された米空軍の別の研究結果が存在し、その研究により、JASONの研究団がどんな研究をおこなっていたのかが明らかになっている。つまり、生物兵器として使用可能な遺伝子操作された病原体の5つの集団について、である。それらは、バイナリー生物兵器(2つのウイルスの致死的な組み合わせ)や宿主交換病(エボラウイルスのようにヒトに「飛び移る」動物ウイルス)、ステルスウイルス、そしてデザイナー病である。 デザイナー病は、特定の民族を標的にするように設計することができる。つまり、民族生物兵器として使用できるのである。
民族生物兵器
民族生物兵器(生物遺伝子兵器)とは、主に特定の民族、あるいは遺伝子型の人々に危害を加えることを目的とした理論上の兵器である。
公式に民族生物兵器の研究開発が確認されたことはないが、文書によれば、米国は特定の民族、つまりロシア人と中国人から生物材料を収集していることがわかっている。
米空軍は特にロシア人のRNAと滑膜組織の標本を収集しており、ロシア当局では米国の秘密民族生物兵器計画に対する懸念が高まっている。
出典:fbo.gov
ロシア人とは別に、米国は中国の健康な患者とがん患者の両方から生体試料を収集している。米国国立癌研究所は、中国の林仙や鄭州、成都から300人の被験者の生体試料を収集した。いっぽう、別の連邦による計画は、「中国における食道扁平上皮癌の血清代謝バイオマーカー*探索研究」と題され、中国人患者から収集した349の血清標本の分析が含まれている。
*疾患の有無や、進行状態を示す目安となる生理学的指標のこと
米国国立癌研究所は、北京の中国癌病院の患者から生体試料を収集している
中国の生物試料は、唾液やがん組織を含む一連の連邦計画の下で収集されている。その中には、リンパ腫症例と統制集団(健康な患者)からのDNA標本の遺伝子検査や乳がん患者からの乳がん組織の塊、3例以上のUGI(上部消化管)がん症例を持つ50家族の唾液標本、北京の癌病院からのDNA標本の遺伝子型50のスニップ**、北京の3000例の胃がん症例と3000例の統制集団(健康な患者)からの遺伝子検査などがある。
*個体差につながる身体的差異と、疾患の根底にある病理学的な変化の両方を含め、表現型に大きな変化をもたらす小さな遺伝的差異を検出する技術
**個人間の遺伝子情報の僅かな違い
タバコワクチン: 国防総省はいかにしてエボラ出血熱から利益を得るためにタバコ会社を支援したか?
国防高等研究計画局(DARPA)は、タバコ植物からのワクチン製造に1億ドルを投資した。この計画に参加している企業は、米国の大手タバコ会社によって所有されている。メディアカゴ社はフィリップ・モリス社の共同所有であり、ケンタッキー・バイオプロセシング社はブリティッシュ・アメリカン・タバコ社所有のレイノルズ・アメリカン社の子会社である。現在、これらの企業はタバコからインフルエンザとエボラ出血熱のワクチンを製造している。
1億ドル規模の計画「ブルー・エンジェル」は、2009年のH1N1大流行への対応として開始された。メディカゴ社は、1ヶ月以内に1000万回分のインフルエンザワクチンを製造するために2100万ドルを獲得した。
ブルー・エンジェルの計画部長のジョン・ジュリアス博士は次のように説明する:「代替タンパク質生産組織として、複数の植物種や他の生物が研究されていますが、米国政府はタバコを原料にした製造に投資を続けています」と。
植物由来のワクチン製造法は、標的とするウイルスからヒトの免疫反応を引き起こす特定の抗原タンパク質を分離することで機能する。そのタンパク質の遺伝子をバクテリアに移し、それを植物に感染させる。その後、植物はワクチン接種に使用されるタンパク質の生産を開始する(写真:DARPA)
国防総省が、他のあらゆる植物種の中からタバコから製造されたワクチンに投資することを選んだ理由は明らかではない。フィリップ・モリス社が共同所有するメディカゴ社は、国防総省、連邦議会、保健福祉省に「公衆衛生への備えを支援する技術を進歩させるための資金援助」を求めて働きかけを行ない、49万5000ドルを支払った。国防総省は、新しい技術を開発し、ワクチンで利益を得るためにタバコ会社に資金を提供した。
生物実験は戦争犯罪である
国際刑事裁判所(ICC)のローマ規程第8条は、生物実験を戦争犯罪と規定している。しかし、米国はこの国際条約の締約国ではないため、戦争犯罪の責任を問われることはない。
筆者
ディリアナ・ガイタンジエバ
https://armswatch.com/
ブルガリアの調査報道記者、中東特派員。「アームズ・ウォッチ(兵器の監視)」の創設者でもある。彼女はここ数年、シリア、イラク、イエメンでのテロリストへの武器供給に関する一連の暴露報告書を発表してきた。現在の仕事は、世界中の紛争地帯への戦争犯罪と違法な武器輸出の記録に焦点を当てている。