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ロシア連邦は、まさにその主権を守るために、なぜウクライナとの軍事衝突を余儀なくされたのか?

<記事原文 寺島先生推薦>

Empire of Lies Christens the New World Order. Part I of II: Overthrow Russia

嘘の帝国が「新世界秩序」の名付け親(I部)_ロシアの転覆

筆者:ロン・リドヌール(Ron Ridenour)

出典:Strategic Culture

2022年9月15日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月30日

 この小論では、ロシア連邦が、まさにその主権を守るために、なぜウクライナとの軍事衝突を余儀なくされたのかを説明する。



 この小論は、なぜロシア連邦が、まさにその主権を守るために、ウクライナとの軍事衝突に追い込まれたのかを説明している。新世界秩序はその結果である。世界は今、2つの勢力に分かれ、激しい対立がどれほど続くかわからない。この論考は、著者が受けたラジオインタビューを元に書き上げたものである。(920) Ron Ridenour & Sam Husseini - YouTube.
 
 アメリカ合衆国人種差別的軍事帝国(以降U.S.-ARME)は、70カ国以上で約800の軍事基地を管理し、さらに90カ国で「軍事施設」に占領軍隊を配置している。アメリカは、軍隊を持つことができるいくつかの国の50の軍事基地に資金を提供している。これらの国の多くは、中米とコロンビアにある。米国は世界の外国基地の95%を所有している。また、いつでも発射できる核兵器を搭載して世界中を航行する数十隻の船も持っている。米国は自国内に、数カ国を合わせたよりもはるかに多くの軍事基地を有している:50州に4,154、準州に114の基地がある。(デイヴィッド・ヴァインのBasic Nation Official Book Website参照)

 ロシアは旧ソ連を中心とした9カ国に9つの軍事基地と2つのレーダー・通信施設を有している。これらの基地には約5万人の軍人が駐留しており、その半数がクリミアの海軍基地セヴァストポリに駐留している。

 U.S.-ARMEの支配者たちは、ロシア、そしてそれ以前はソ連を、世界平和に対する脅威であり、外国の領土を併合し、他国、「地球上でもっとも偉大な民主主義国」に対しても干渉していると厚かましくも非難している。これは古典的な心理的投影である。
 彼らの嘘:
ウラジミール・プーチン大統領は、ヒラリー・クリントンが大統領選で負け、彼の「友人」ドナルド・トランプが勝つように、2016年の米国選挙に干渉した。
ヒラリー・クリントンは我々のメッセンジャーであるジュリアン・アサンジを憎んでおり、真実を公表した彼をドローンで暗殺するよう呼びかけたのだ。彼女はロシアの最高指導者プーチンを憎むあまり、彼を新しいヒトラー的戦争犯罪者と呼んでいる。

 民主党上層部、ワシントンDC警察、CIAは、ジュリアン・アサンジとウラジミール・プーチンが民主党全国委員会(以降DNC)のファイルのハッキングをグルになって行ったという嘘がばれないように、DNCのコンピュータに対する科学捜査の調査を認めなかった。

 DNCの選挙不正と不正操作の情報が明らかになったとき、主流メディア(MSM)と政府はDNCの犯罪を認めようとしなかった。これは、ジュリアン・アサンジを「国家安全保障」に対する犯罪として告発する際に国家が用いる戦術と同じである。アサンジ(ウィキリークス)が行ったのは、2014年のウクライナでの戦争のような多くの戦争やクーデターにおける、国家の人道に対する犯罪の文書を明らかにしただけなのに。


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§1917-8 10月のロシア革命は、「平和、土地、パン」のためだった。
 10月のロシア革命の勝利は、ほんの一握りの犠牲者で済んだ。ロシアを荒廃させ、数百万人の死者を出したのは、革命ではない。欧米・日本の侵攻が原因だ。ロシア貴族派の白軍はこの侵攻に支えられ、アレクサンドル・ケレンスキー(Alexander Kerensky)の臨時政府軍の一部に支援されていた。

 欧米の政治家とその主流メディアの宣伝担当者は、同盟国がまだドイツと戦争していた1918年の夏に、20-30万の軍隊をロシアに侵攻させたのが、U.S.-ARMEとその同盟国であったことを隠している。ウッドロウ・ウィルソン大統領は議会に、「ボルシェビキ革命の影響を相殺する」ために1万3千人の軍隊を派遣すると述べた。

 同時に、ウィルソン大統領はスパイ活動法を制定した。このスパイ活動法は、見せかけの「報道の自由」と「言論の自由」のすべてを終わらせる目的で、民衆の使者であるジュリアン・アサンジを殺すために現在使われている。

 1918年、すべての軍隊の状況は悲惨であり、アメリカ人を含む多くの欧米諸国の兵士たちは戦争にうんざりし、戦意を喪失していた。1920年4月1日、最後の米軍がロシアを離れた。米軍の424人がさまざまな原因で死亡したが、そのほとんどが戦死だった。全部合わせると、内戦と外部からの干渉で、死傷者は民間人を中心に700万から1200万人だった。

 「アメリカ遠征軍」を指揮したウィリアム・グレイブス(William Graves)少将は、「アメリカが軍事介入によって何を達成しようとしていたのかわからない」と回顧録に書いている。

 ロシアに関する3冊の本を書いた小説家、ギャザー・スチュワート(Gather Stewart)は、また、拙著『ロシア平和への脅威:厳戒態勢のペンタゴン(The Russian Peace Threat: Pentagon on Alert)』に序文を寄せてくれた。 (The Russian Peace Threat: Pentagon on Alert: Ridenour, Ron: 9780996487061: Amazon.com: Books)

 次は、欧米諸国のロシアに対する関心が、昔も今も変わらないというスチュワートの評価である。

 「欧米全般、特にアメリカはロシアを妬んでいる。ロシアの自然の富の多くは、ウラル山脈の向こうの土の中に埋もれている。なぜロシアがその富を独り占めするのか?それがアメリカの態度であり、ロシアを服従させ、小国に分割する大陰謀を正当化する理由の一部となっている。」THE CHARACTER OF RUSSIAN COMMUNISM – The Greanville Post

 ロシアを小国家に分割する(アメリカとNATOはユーゴスラビアをそうした)ことが、今日、U.S.-ARMEの目標になっている。

関連記事:Ukraine: The CIA’s 75-year-old Proxy – CovertAction Magazine

 1920年に敗退した米国はロシアを苛め、破壊し、包囲し、転覆させるためにあらゆることを行ってきた。ソ連、ロシア、中国、キューバ、ベトナム、北朝鮮、あるいは米国が国民を飢えさせ内乱を引き起こすことを望んで、制裁かボイコットのいずれか、あるいは両方をしかける40の国のいずれも、米国を侵略したり破壊したりしたことはないのである。

 U.S.-ARMEが地球を支配するために戦争をし、戦争の脅しをかけているにもかかわらず、世界大戦と核兵器の使用を防止してきたのはロシア人である。ミハイル・ゴルバチョフ、ボリス・エリツィン、ウラジミール・プーチンの3人のソ連・ロシア大統領は、それぞれアメリカ大統領に、NATO加入許可の許しを乞い、お互いへの戦争行為が起こらないように要請した。しかしその交渉はすべて不成立!

§ 1930年代 スメドリー・バトラー(Smedley Butler)将軍が暴露したルーズベルト大統領転覆の陰謀的取引

 資本家の多くは、肌の色に関係なく、困っているすべての人に仕事と社会的・文化的利益を提供するニューディールを掲げたフランクリン・D・ルーズベルトを嫌っていた。大実業家たちは、人種差別主義者で、反組合主義者で、ファシスト的な解決策を好んでいた。彼らは、失業した白人の退役軍人を利用することで、自分たちに有利になると考えた。彼らは、大統領を転覆させ、場合によっては暗殺しようと企てた。



バトラー将軍は、史上最も多くの勲章を受けた海兵隊員であり、大統領を守った

 陰謀的取引(別名:ホワイトハウス・クーデター、ファシストの陰謀)とは、1933年から4年にかけての政治的陰謀である。スメドリー・ダーリントン・バトラー(Smedley Darlington Butler) 海兵隊退役少将に、J.P.モルガンに指導される超富裕実業家たちを代表するマクガイア(MacGuire)将軍が近づいた。彼は、ルーズベルト大統領打倒目的の、50万人の海兵隊員と兵士によるクーデターを組織するため、国民に人気のあったバトラー将軍を利用しようとしたのである。(New York Times, November 21, 1934, "Gen. Butler Bares ‘Fascist Plot’ To Seize Government by Force”.)"参照)。

 バトラー将軍は、この考えに賛同するふりをしながら、ルーズベルト大統領にクーデター派の陰湿な本質を明かした。公の場に出た彼は、自分が軍歴の中でやってきたことを説明した:
 
「私は33年と4ヶ月の間、現役の軍人として過ごし、その間、ほとんどの時間をビッグビジネス、ウォール街と銀行家のための高級筋肉マンとして過ごした。要するに、私は資本主義のためのゆすり屋であり、ギャングだったのだ。 War is a Racket by Smedley D. Butler | Goodreads

「私は1914年にメキシコ、特にタンピコをアメリカの石油利権にとって安全な場所にするのを手伝った。私はハイチとキューバを、ナショナルシティ銀行関連の人物たちが収入を得るための適切な場所にするのを手伝った。私は、ウォール街の利益のために、中米の6つの共和国を強奪するのを手伝った。私は1902年から1912年にかけて、ブラウン・ブラザーズ国際銀行家のためにニカラグアを浄化するのを手伝った。1916年、アメリカの砂糖利権者のためにドミニカ共和国を占領する光をともした。私は、1903年にアメリカの果物会社のためにホンジュラスを真っ当にする手助けをした。1927年には中国で、スタンダード・オイルが妨害を受けずに操業できているかどうかの確認する手助けをした。今にして思えば、アル・カポネにいくつかヒントを与えたかもしれない。彼がゆすりを操業したのは、せいぜい(シカゴ市の)3つの地区だけだ。私の操業範囲は3つの大陸になる。」

 ルーズベルトはこの企業クーデターを企んだ人物たちと妥協した。ニューディールの邪魔をしなければ、裁判も懲役刑もない、という内容だ。それはうまくいったようで、少なくとも彼らはルーズベルトを打倒することをあきらめた。それでも、彼らは戦争に必要な資材を販売したり、貸し付けたり、寄付したりして、ヨーロッパのファシズムを支援し続けた。


 ヘンリー・フォードの75歳の誕生日に、1938年7月30日、ミシガン州のフォード工場でナチス領事がヒトラーの大十字架勲章を授与。


 ヘンリー・フォードは、ナチス・ドイツが外国人に与えることのできる最高の勲章「ドイツ鷲大十字章」を授与された。 1938年7月30日。 Henry Ford: American Icon, Businessman, And Staunch Nazi Sympathizer (allthatsinteresting.com)

 1937年6月、IBMの創業者トーマス・ジョン・ワトソン(Thomas John Watson)がドイツ鷲勲章(2等)を受章する。1938年、ゼネラルモーター社のジェームス・ムーニー(James Mooney)最高経営責任者がアドルフ・ヒトラーからドイツ鷲勲章(1等)」を授与される。J.P.モルガン銀行の代理人、グレイソン・マーフィ(Grayson Murphy)は、ファシスト政権下のイタリアにモルガン銀行の融資を提供した功績により、ムッソリーニから「イタル王冠勲章」を授与されている。

 グレイソン・マーフィーは、金持ちの大物たちが「急進主義と戦い、個人と財産の権利の尊重を教え、自由な民間企業を育成する」ために立ち上げたばかりのアメリカ自由連盟の最初の財政担当だった。アメリカ自由連盟は上述のクーデター計画を支援していた。

 連盟の創設者の一人は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマン銀行と友好関係にあったプレスコット・ブッシュ(Prescott Bush)上院議員である。ブッシュは、ヒトラーともビジネス上のつながりがあった。彼は、ドイツの鉄鋼王フリッツ・ティッセン(Fritz Thyssen)の資産と企業の決済機関として運営されていた投資銀行、ユニオン・バンキング・コーポレーションの7人の取締役のうちの一人であった。1942年10月、アメリカは「敵国取引法」に基づいて、このファシストの戦争営利目的の銀行を押収したが、終戦までその資産を保有するにとどまった。プレスコット・ブッシュは、後に大統領となった二人の父親である。どちらもロシアの富と主権を抑えるために行動した。


§ 第二次世界大戦


 「戦争に負けていたら、戦犯として裁かれていただろう。幸いなことに、私たちは勝者の側にいたのだ」。1945年の東京大空襲をはじめ、日本各地での空爆を指揮したカーティス・ル・メイ(Curtis Le May)将軍はそう語った。

 「任務は成功した。米国戦略爆撃調査団は、「6時間の間に東京で火災によって命を失った人の数は、おそらく人類の歴史上最も多い」と推定している。 The General and World War III | The New Yorker

 ル・メイやダグラス・マッカーサー(Douglass MacArthur)元帥は、広島・長崎への原爆使用は不要と反対したが、ハリー・トルーマンは「主敵」であるソ連に警告を発したいと思っていた。

 戦争による死者は7000万から8500万人(世界人口の3%)、重傷者は数え切れないほどである。ソ連と中国の国民が死者の半分を占めた。中国の死者は1,500万~2,000万人で、人口の3~4%にあたる。ソ連は民間人1600-1800万人、兵士900-1100万人(人口比14%)を失った。重傷者の数もほぼ同数だった。さらに7万の村、1,710の町、470万の家屋を失った。ソ連邦15カ国のうち、ロシアは人口の12.7%を失った。その数は1400万人。うち半数強が民間人であった。ウクライナは700万人近くを失い、500万人以上が民間人で、合計で人口の16.3%を失った。アメリカは民間人12,000人、軍人407,300人(人口の1パーセントの1/3に当たる)を失っただけであった。 World War II casualties – Wikipedia

 ウクライナでは、ヒトラー・ナチスとウクライナのファシストであるステパン・バンデラ(Stepan Bandera)は、特に民間人のユダヤ人、ポーランド人、ロシア人を狙ったので、他の国より多くの民間人が殺された。バンデラは、ウクライナ民族主義者組織の指導者としてドイツのナチスと手を組んで戦った。その後、彼はドイツ軍から離れ、ロシア人とユダヤ人の殺害を続けた。バンデラは、よく知られたアゾフ大隊を含むウクライナ・ファシスト勢力の国家的英雄である。


§ 1945-6 チャーチル-トルーマンは、いわゆる「鉄のカーテン」に核兵器で侵入する作戦をいくつか計画していた:アンシンカブル作戦、ピンチャー作戦、ドロップショット作戦......。

 50年代初頭、400発の核ミサイルがソ連に投下されるべく製造されていた。マンハッタン計画の勇敢な内部告発者クラウス・フックス(Klaus Fuchs)とテッド・ホール(Ted Hall)(その他)は、世界が核兵器の均衡を保つためにと、重要な情報をソ連に提供し、この終末的な侵略を防いだのである。(調査報道ジャーナリストで共同プロデューサーであるデイブ・リンドルフ(Dave Lindorff)が着手したドキュメンタリー映画「A Compassionate Spy(心優しいスパイ)」は必見。‘A Compassionate Spy’ Review: A Nuanced Steve James Documentary – The Hollywood Reporter) そして United States war plans (1945–1950) – Wikipedia)


§ 1947 トルーマンは、スパイ活動や「秘密工作」を行うために中央情報局を設立。

 CIAは何人もの政治指導者を暗殺し、何十もの政府を転覆させてきた。何百万人もの人々を殺してきた。The CIA’s Cult of Death | Dissident Voice

 1974年、トルーマンは伝記作家のメルル・ミラーにCIAについてこう語っている:「間違いだったと思う・・・こんな風になることが分かっていたら、CIAなんか絶対に作らなかっただろう・・・つまり・・・CIAは、完全に独立独歩の、すべてが秘密の政府みたいになってしまった。彼らは誰にも説明する必要がないのだ。」Plain Speaking: An Oral Biography of Harry S. Truman: Miller, Merle: 9780425026649: Amazon.com: Books

 トルーマンは免責事項としているが、冷戦時代の「トルーマン・ドクトリン」の下、彼はロシア移民を含むCIA諜報員をソ連に潜入させた:その目的は
① さまざまな暗殺の遂行、
② 列車、橋、発電所、武器工場の破壊、
③ 文書の持ち出し、
④ 西側工作員の逃亡幇助、
⑤ 共産党と政府内の政治闘争の促進、
である。トルーマンはディープ・ステート(闇の国家)を作り上げた。


§ 1949-54 トルーマン・アイゼンハワーがソビエト連邦打倒のためにNATOを創設。

 1949年8月 米国主導の北大西洋条約機構に12カ国が調印。ベルギー、カナダ、デンマーク(自治州も含む)、フランス、アイスランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、イギリス、アメリカ。 Member states of NATO – Wikipedia

 そして、ル・メイ将軍は、「30日間にソ連の70都市を133個の原爆で破壊し、270万人の死者と400万人の犠牲者を出す」という原爆侵攻作戦を提案した。アメリカの空軍戦略家は、ル・メイが提案した攻撃をこう呼んでいた:「国家の殺戮」。 The General and World War III | The New Yorker

 「カーティス・ル・メイは、ソ連との関係を独自に、秘密裏に、そして超法規的に、高い要求水準に上げ始めていたようだ。ソ連への偵察飛行は、1950年には始まっていた。ル・メイはこれらの飛行を電子的、写真的な情報収集のためだけでなく、ソ連の防空を探るために利用した。 戦争を誘発することになるかもしれないと知りながら、彼はそうしていたのだ。」

 「1954年、ル・メイが一晩でソ連の標的に750個の原爆を投下するノックアウトが可能だと計算した時、国防省兵器システム評価グループは、ソ連とソ連圏の犠牲者は負傷1700万人、死亡6000万人と推定した」。

 ソ連は、この年、東欧を友好国にしたワルシャワ条約を結ぶまで、強硬な対応はしていなかった。ル・メイの戦略空軍によるソ連領内のスパイ飛行の多くは、日本の米軍基地から離陸していた。U.S.ARMEがひどく前のめりに狂気の状態にいた時、私はこれらの軍用レーダー基地のひとつで直接の訓練を受けていた。ル・メイが私の父の崇拝対象であることも私は知った。

 1956年にハンガリーで危機が起こったとき、空軍の軍務将校だった父と私はラジオでそれを聞いていた。そして17歳の私は、高校を中退し、「共産主義と戦う 」ために米空軍に入隊した。日本の米軍レーダー基地で、「偵察飛行」に参加したのだ。ソ連がアメリカやその占領地の上空で同じようなスパイ活動をしたら、それを撃墜するようにという指示だった。私たちの軍務報告では、常にロシア人を人間以下の存在として悪魔化していた。

 ソ連は対話、相互抑制を求めた。ソ連は、同時に、自衛能力を持っていることを示す必要があった。1960年の、メーデーにぴったりのタイミングで、CIAのスパイ機を撃墜した。

 「1960年5月、ソ連社会主義共和国連邦(USSR)がアメリカの偵察機U-2をソ連領空で撃墜し、パイロットのフランシス・ゲーリー・パワーズ(1929-77)を拘束するという国際外交危機が勃発した。アイゼンハワー大統領(1890-1969)は、自国のスパイ活動の証拠を突きつけられ、米国中央情報局(CIA)が数年前からソ連上空でスパイ活動を行っていたことをソ連側に認めざるを得なくなった。ソ連はパワーズをスパイ容疑で有罪とし、10年の禁固刑を宣告した」[2年後、囚人交換で釈放] U-2 Spy Incident – HISTORY


§ 1949中国革命;1950-53,「朝鮮軍事行動」

 1949年10月1日、中国共産党の革命的勝利により、アメリカは世界最大の人口を持つ新たな敵を手に入れた。敗れたアメリカの同盟者、蒋介石(Chung kai Shek)と軍隊は台湾に逃れた。台湾は蒋介石が統治する真の中国であると主張し、現地住民に有無を言わせなかった。アメリカは中国の機能を停止させようとした。「朝鮮軍事行動」は、アメリカ支配対中国、ソ連の社会主義成功の可能性をめぐる代理戦争となった。

 第二次世界大戦後、朝鮮半島は冷戦の最初の軍事衝突となった。1950年、アメリカは北朝鮮が38度線を越えて韓国に侵入したと主張し、トルーマンはより大きな戦争を始めるための口実を得た。

 「日本が降伏するわずか5日前、アメリカのディーン・ラスク(Dean Rusk)とチャールズ・ボネスティール(Charles Bonesteel)は、東アジアにおけるアメリカの占領区域を画定する仕事を与えられた。朝鮮人にはだれひとり相談することなく、朝鮮半島最大の都市ソウルがアメリカ側に位置するように、朝鮮半島を緯度38度線に沿ってほぼ半分に切断することを、恣意的に決めた。ラスクとボネスティールの選択は、戦後の日本統治の指針である「一般命令第1号」に明記された。朝鮮半島北部の日本軍はソビエトに降伏し、南部の日本軍はアメリカに降伏した。」 Why Is Korea Split Into North and South Korea? (thoughtco.com)

 米国が北朝鮮のほぼすべての都市を破壊した後、恣意的に線引きされた38度線はまだ決着がついていない。少なくとも300万人が死亡、その大半は民間人であった。軍人の死者:北朝鮮軍30万人(人口1000万人の12-15%が死亡)、中国軍18万3000人、韓国軍13万8000人、米軍3万3700人である。Korean War – Wikipedia
 ル・メイは、「3年ほどの間に、我々は(北)朝鮮の人口の- 何と!-20パーセントを殺した・・・」と言った。 The General and World War III | The New Yorker


§ 1954-1975,アメリカの対ベトナム-カンボジア-ラオス戦争

 東南アジア戦争はソ連、中国も巻き込んだ。数百万人が死亡。東南アジアはソ連と中国の援助を受け、1975年メーデーの日にアメリカを撃退。

 1954年、アイゼンハワー・ニクソン政権はディエン・ビエン・フーで敗れた南ベトナムをフランスから引き継いだ。フランスはアメリカの核兵器提供の申し出を拒否した。1954年ジュネーブ条約により、2年間南北ベトナムに分割され、1956年に選挙が行われた。

 「東南アジアフランス植民地帝国が崩壊し、ベトナム民主共和国(北ベトナム)、ベトナム国(後のベトナム共和国、南ベトナム)、カンボジア王国、そしてラオス王国などの国家が形成された。南朝鮮北朝鮮中華人民共和国(PRC)、ソビエト社会主義共和国連邦、そしてアメリカ合衆国(U.S.)の外交官たちが、ジュネーブ協定の朝鮮問題に対応した。インドシナ問題については、フランスベトミン、ソ連、中国、アメリカ、イギリス、そして将来仏領インドシナから作られる諸国家との間で協定が結ばれた。この協定により、ベトナムは一時的に2つの地帯に分けられ、北部はベトミンが統治し、南部は当時のバオ・ダイ(Bảo Đại).元皇帝が率いるベトナム国が統治することになった。」1954 Geneva Conference – Wikipedia

 南ベトナムの臨時政権は、選挙に反対していた。第二次世界大戦の元大将で、当時大統領だったドワイト・D・アイゼンハワーは、1956年の選挙実施を拒否した。回顧録『変革への委任、1953-1956』:ホワイトハウス時代』(1963年)372ページに向こう見ずな意見を述べている:

 「私はインドシナ事情に詳しい人と話し、通信のやりとりをしたことがある。彼らの中で、もし、戦闘時に選挙が行われていたら、おそらく国民の80%がバオ・ダイ国家主席ではなく、共産主義者のホー・チ・ミンに投票しただろう、ということに同意しない人物は一人もいなかった。[民主主義なんて、そんなものだ!]


§ 1961年4月、ロシアのユーリ・ガガーリン(Yuri Gagarin)が地球を周回し、アメリカがキューバに侵攻する。

 1961年4月12日、ソ連が27歳の宇宙飛行士ユーリ・ガガーリンを時速2万7千キロで地球軌道に乗せ、新世界を切り開いた日、ジョン・F・ケネディ大統領は記者会見を行った。

 「まず言っておきたいのは、いかなる状況下でも米軍によるキューバへの介入はありえないということです。」「キューバの基本的な問題は、米国とキューバの間の問題ではありません。キューバの基本的な問題は、米国とキューバの間の問題ではなく、キューバ人自身の間の問題である。そして、私はこの原則を遵守することを確認するつもりです。」 (1)

 翌日4月13日、グアテマラからCIA作戦40が発動された。キューバ人亡命者を中心とした1400人の準軍人と一握りのCIA軍人が、キューバ侵攻のために出航したのである。


ユーリ・ガガーリン、平和の鳩を手に世界ツアー

 大気圏に再突入したとき、ユーリは重大な技術的問題に直面し、カプセルから脱出しなければ死に至る可能性があった。高度7,000mで再突入し、ガガーリンは数キロメートル自由落下した後、パラシュートを開いて地上に降り立った。その後、彼は世界一周の旅に出て、地球の素晴らしさを熱く語った。

 2年かけて30カ国で行ったユーリのメッセージ。「軌道上で地球を一周し、私はこの惑星の美しさに驚嘆しました。遠く離れた親愛なる地球に浮かぶ雲とその光の影...地球の豊かな色のスペクトルを楽しみました。水色の光輪に包まれた地球は、次第に暗くなり、青緑色、ダークブルー、すみれ色、そして漆黒へと変化してゆきます。世界の皆さん。この美しさを破壊するのではなく、守り、高めてゆこうではありませんか!」 Russian cosmonaut Yuri Gagarin (inyourpocket.com)

 キューバの農民民兵と新革命軍の一部の部隊は、アメリカの「民主化」のための侵略をわずか3日で鎮圧したのである。それ以来、CIAは数々のテロ作戦、フィデル・カストロ大統領の殺害計画、化学・生物兵器による人間、動物、農作物の殺戮と破壊を企んできた。CIAとペンタゴンの極悪マフィアによる最も陰湿な提案は、偽旗計画「オペレーション・ノースウッズ」だった。Operation Northwoods – Wikipedia

 この計画のために、違法なグアンタナモ海軍基地の数人の職員を、CIAが配置した秘密工作員が殺害する必要があった。一部の犠牲者は、アメリカ人やアメリカに入国しようとしているキューバの亡命者ということになっただろう。非難はフィデル・カストロに向けられただろうし、その後、ペンタゴン-CIA軍は政権交代のための本当の戦争という段取りに移れる。ケネディ大統領はその計画を拒否した。この拒否によって、ケネディ大統領は自らの死刑執行令状にサインしたのである。


§1962年キューバミサイル危機
 
 

 ピッグス湾侵攻後、キューバとソ連政府は、ペンタゴン-CIAの不気味な脅威、おそらく核兵器でキューバを石器時代に戻すという脅迫に対する防衛策として、キューバに核兵器を設置することを決定した。The Cuban Missile Crisis: A Timeline – HISTORY

ヴァシリ・アルキポフ大尉が、おそらく世界を核兵器による終末から救っている。

 1962年10月、アメリカの察機がキューバに核ミサイルが設置されているのを確認した。ペンタゴンとCIAは、核兵器でキューバとソ連を侵略することを望んでいた。米国領土に近い核兵器は許されない。ケネディ大統領が「何人のアメリカ人が死ぬことになるのか」と尋ねると、軍国主義者たちは100万人といういい加減な数値をあげた。ケネディはそれ以上の犠牲が出ることがわかっていた。核による対応の代わり、彼はキューバの海上封鎖を命じ、ニキータ・フルシチョフ(Nikita Khrushchev)首相にすべてのミサイルを撤去するよう要求した。交渉中、核ミサイルを1発ずつ積んだロシアの潜水艦4隻がキューバへ向かっていた。これらの潜水艦は、多くのアメリカ海軍の艦艇によって追跡された。1隻のロシア潜水艦K-19には、深海爆雷が投下された。彼らの通信は遮断された。大尉たちは戦争が始まったと思い、ミサイルを発射することを話し合った。ヴァシリ・アルキポフ大尉は、ミサイルを発射しないよう周囲を説得し、彼らはロシアに帰還した。2週間にわたる交渉の末、ロシアはミサイルを撤去することになった。アメリカは、キューバへの再侵略をしないこと、トルコから核ミサイルを撤去することを約束した。

 翌年の11月22日、世界平和を希求するケネディがCIAによって白昼堂々殺害された。その5カ月前の6月10日、ケネディはアメリカン大学で講演を行っていた。


「私はCIAを粉々に粉砕し、風の中に吹き流してしまうだろう。」

 「私が考える平和、私たちが求める平和とはどんなものでしょう?アメリカの戦争兵器によって世界に強制されるパックス・アメリカーナではありません。墓場が支えている平和や奴隷制度の維持の上で成り立つ平和でもありません。私は真の平和について話しているのです。地球上の生命を生きがいのあるものにするような平和、人と国が成長し、希望を持ち、子供たちのためによりよい生活を築くことができるような平和、単にアメリカ人のための平和ではなく、すべての男性と女性のための平和、単に現代における平和ではなく、すべての時代の平和についてなのです。」

 「私が平和について語るのは、戦争がこれまでにない様相を示しているからです。全面戦争は全く意味をなしません。というのも、今は大国が、大規模で、他国に倒されることのない核戦力を維持できているからです。そのため、軍に頼らなくても、降伏することを拒否できる時代なのです。」Speec on peace delivered by President John F. Kennedy – Peace Corps Worldwide

 ケネディの副大統領リンドン・ベインズ・ジョンソン(Lyndon Baines Johnson)は、その流れを理解した。大統領になったジョンソンは、あまり乗り気でないアール・ウォーレン(Earl Warren)最高裁判事に調査委員会の長を命じた。調査委員会の主任にはアレン・ダレス(Allen Dulles)が任命された。ケネディは、ピッグス湾事件での失態を理由に彼をクビにしていた。ダレスはケネディを嫌っていた。

 リー・ハーヴェイ・オズワルド(Lee Harvey Oswald)という一人の男が一発の「魔法の弾丸」で大統領を殺害したという政府の嘘を、騙されやすい米国民でさえ信じていないのである。1976年の世論調査で、陰謀であったと考える人の割合は81%と、最も高かった。オズワルドの殺害50年後でも、61%が複数の人物が関与していたと考えている。犯人はマフィアか連邦政府かCIAか、あるいはその三者のうちの二者、あるいは三者全てによる共謀だ、などという意見もあった。 Majority in U.S. Still Believe JFK Killed in a Conspiracy (gallup.com)

 内部犯行である証拠は山ほどある。The One Paragraph from the JFK Assassination Files that Reveals Everything – Page 3 of 3 – Truth And Action

 オリバー・ストーン監督の2作品:「JFK」と「JFK再検討」。CIAの幹部、ハワード・ハント(Howard Hunt)が共犯者の名前を挙げている。 Who Killed JFK? The Last Confession of E. Howard Hunt – Rolling Stone。関係したマフィアのボスの一人、サム・ジャンカナ(Sam Giancana)も共犯者の名前を挙げている。
Amazon.com: Double Cross: The Explosive Inside Story of the Mobster Who Controlled America: 9781510711242: Giancana, Sam, Giancana, Chuck, Giancana, Bettina, Newark, Tim: Books
 CIAは、キューバ人に対する破壊工作と秘密戦争を続けている。生物化学兵器を使って、人間、豚、鶏、植物に致命的な病気を引き起こしたことさえあるのだ。この歴史をここで説明する余裕はない。参照:Backfire: The CIA’s Biggest Burn: Ridenour, Ron: 9780962497513: Amazon.com: Books,第4章「細菌戦士」。

§1964 トンキン湾の嘘がベトナム、カンボジア、そしてラオスでの全面戦争へ

 ケネディの晩年、彼はキューバとベトナムの指導者に静かに近づいた。彼らとの戦争から手を引くため、彼らからどんな支援が可能かを探るためだった。彼らが自分たちの主権を維持できるように、というのが目的だった。兵器産業、ウォール街、国防総省、CIAは、このような「裏切り」を許さないだろう。

 ジョン・ケネディが暗殺された後、リンドン・ジョンソンは、アメリカ軍の船が北ベトナムかその近くで攻撃を受けたという嘘をついた。この嘘によって、議会は「トンキン湾決議」を可決し、全面的な戦争権限を認めることになった。The Gulf Of Tonkin Incident: The Lie That Sparked The Vietnam War (allthatsinteresting.com)

 ベトナム国民は、1975年のメーデーに、米軍とその代理人である南ベトナム政権を打ち破り、解放を勝ち取った。何百万人ものまともなアメリカ人が、長年にわたってアメリカの無謀な侵略に抗議してきた。同時に、世界の多くの国々で何百万という人々の抗議があった。ダニエル・エルズバーグ(Daniel Ellsberg)は、戦争屋世界の人間だったが、我々の側に立ち、ペンタゴン・ペーパーズの偉大な内部告発者となったのである。Pentagon Papers | National Archives そして The Pentagon Papers: Secrets, lies and leaks – Reveal (revealnews.org)

 ジュリアン・アサンジ(Julian Assange)はエルズバーグ同様の道を歩いている。エルズバーグは、12年前に戦争メーカー体制がジュリアンを初めて逮捕して以来、ずっと彼の支援活動をしてきた。エルズバーグは、アメリカの戦争に抗議して何度も逮捕されている。私たち反戦活動家は刑務所を満杯にし、もっと早く戦争から撤退するよう米国政府を説き伏せる補助をした。結局、350万から500万人もの人々が亡くなった。そのうち米軍の死者はわずか58,000人。CIAのフェニックス計画で、1965年から1972年の間に約4万人のベトナム人愛国者たちとその家族を一人ずつ選びだして暗殺した。アメリカは戦争期間中、ベトナム/東南アジアに860万人の軍人を送り込んだ。Vietnam War casualties – Wikipedia

(ゴルバチョフ、レーガン、そしてブッシュが関係する期間の歴史については省略)


§アフガニスタン/ソビエト/アメリカの戦争 1978-89年


 私は2017年、ロシアの駐デンマーク大使、ミクヤイル・ヴァーニン(Mikjail Vanin)にインタビューした。彼は私に次のように語った。「ロシアのアフガニスタン戦争は、イデオロギーと拡張主義に基づくものでした。大きな間違いだったのです!ロシアはこの国の本当の歴史と文化を知らずに、アフガニスタンの地に足を踏み入れたのです。この国はあまりに封建的であったため、社会主義社会への転換は不可能です。実際それは無理です。マルクスの分析にも合っていません。」

 「しかし、ロシアは侵攻しませんでした。私たちはアフガニスタン政府から、テロリズムに資金を提供し武装させた外国勢力(米国)の支援を受けた反革命的な家父長制に対抗する支援を何度か要請されました。私たちは恐ろしい代償を払いました。今でも恐ろしい代償だったと感じています。この紛争で、ロシア国民の生命とロシア経済などに数々の損失を被ったために、国内の反対運動が起こりました。私たちは経済的な安定を失いました。この戦争で我々はほぼ破滅し、ソ連の崩壊に影響を与えたのです。」

 1978年4月27日~28日、共産主義者率いるアフガニスタン人民民主党(PDPA)がサウル革命を起こした。モハメド・ダウド・ハーン(Mohammed Daoud Khan)政府が転覆された。この政府は1973年にクーデターを起こし、伝統的な家父長制に基づく独裁的な一党独裁体制を確立していた。Saur Revolution – Wikipedia.

 社会主義路線を開始すると、10月令で「男女平等」が認められ、家父長制のムジャヒディンの武装騒動が始まった。CIAは、資金、武器、訓練で介入した。CIAとそのパキスタン側同伴者である総合情報局(Inter-Services Intelligence)(ISI)は、ジハード主義の若者がタリバン(知識を求める学生という意味)を始めるのを助けた。中国もまた、彼らに資金援助した。9/11の後、アメリカはタリバン政府を打倒した。米国はまた、サウジアラビアの富豪オサマ・ビン・ラディン(Osama bin Laden)を支援し、彼は後にアルカイダを結成して、彼を指導した人々を恐怖に陥れた。

 父ブッシュ時代のCIA長官、子ブッシュ時代の国防長官であったロバート・ゲイツ(Robert Gates)は、米国の関与をこう説明する。1979 年 3 月、「CIA はアフガニスタンに関するいくつかの諜報活動の選択肢を米国国家安全保障会議の SCC(特別調整委員会)に送った」。3月30日の会議で、米国防総省のウォルター・B・スロコンベ(Walter B. Slocombe)代表は「アフガニスタンの反乱を継続させ、『ソビエトをベトナムの泥沼に吸い込む』ことに価値があるのか」と質問した。 From the Shadows: The Ultimate Insider’s Story of Five Presidents and How They Won the Cold War: Gates, Robert M.: 9781416543367: Amazon.com: Books

 ソ連がアフガニスタン政府の要請を却下してから、新しい世俗的な国家を守るためにしぶしぶ軍隊を派遣するまで、20ヶ月もかかったことは重要な点である。アメリカは、平等な権利よりもジハードや家父長制を優先した。米国の戦争メーカーは、アフガニスタンでの出来事を喜んでいた。ちょうど今日のウクライナとロシアの戦争を喜んでいるように。しかし、今回の戦争は「ソ連・ベトナムの泥沼」にはならないだろう。むしろ世界勢力の分裂が生じており、第三次世界大戦の火柱が次から次へと立ち上るのではないか、と私は心配している。フィンランドも、今、挑発的にそのような動きをしている。

 1980年にロナルド・レーガン(Ronald Reagan)が当選すると、レーガン・ドクトリン(トルーマン・ドクトリンのようなもの)を制定し、世界中の反共勢力を支援した。ミハイル・ゴルバチョフ(Mikhail Gorbachev)がソ連首相に就任すると(1985年3月~1991年12月25日)、彼はアフガニスタン戦争の終結を目指し、イラン・イラク戦争の解決に望みをつないだ。ソ連はイランを支持し、アメリカはイラクを支持した。レーガンはと言えば、無慈悲なニカラグアの反政府勢力に資金を提供するために、アメリカの敵であるイランに武器を売るという不誠実で、違法なイラン・コントラ取引を行った。
Iran-Contra Affair – HISTORY

 ゴルバチョフは、アフガニスタンの占領を「血が止まらない傷」と呼んだ。1989年2月に最後のソ連軍が退去したが、戦火は1992年まで続いた。アフガニスタンとソ連の戦争では、62万人のソ連軍が従軍し、14,453人が死亡、53,753人が何らかの傷を負った。アフガニスタンの死者はムジャヒディン、政府軍、非戦闘員合わせて約150万人。非戦闘員を中心に約300万人の重軽傷者が出た。ロシアの日刊紙「ロシア・ビヨンド」(Russkaya Semoyorka)は、2017年に、この戦争で年間20~30億ドルの費用がかかったと書いた。つまり総計180億ドルから270億ドルということになる。

 これらの戦争にもかかわらず、ゴルバチョフはレーガンを説得し、双方がすべての核兵器を廃棄し、ソ連がNATOに加盟すれば、すべての人がより安全になることを伝えようとした。ウォール街とペンタゴン/CIAは、そのような平和な状態を容認することはなかった。それでも、ゴルバチョフはレーガンを説得し、1987年に中距離核条約を締結させた。INF条約は、両国が保有する陸上弾道ミサイル、巡航ミサイル、射程500~1000キロの短中距離ミサイル、1000~5500キロの中距離ミサイル発射機をすべて禁止したのだ。この条約は、空や海から発射されるミサイルには適用されなかった。次の共和党ドナルド・トランプ大統領は、2019年に、この条約をほごにした。Intermediate-Range Nuclear Forces Treaty – Wikipedia.

 レーガンはまた、戦略兵器削減条約にも同意し、ジョージ・H・W・ブッシュは1991年に署名した。この条約が完全に実施されると、当時存在していた戦略核兵器の約80%が撤去されることになった。この条約により、米国は約8,556発、ソ連は約6,449発の核弾頭に制限された。米国とロシア連邦は2026年2月4日まで条約を延長することに合意している。Strategic Arms Reduction Treaty of 1991 (U.S. National Park Service) (nps.gov)


§グラスノスチ―ペレストロイカ

(以下は拙著『ロシア平和への脅威:厳戒態勢のペンタゴン』12章からの引用)

 ゴルバチョフは、ロシア社会は開放と福祉の充実が必要であると気づいた。アフガニスタン戦争やイラン・イラク戦争、そしてアメリカの兵器増強に対応するには途方もない費用がかかるからだ。ゴルバチョフは、地方、地域、共和国の統制を強化し、メディアの報道を許可し、公務員官僚主義や行政府の腐敗を減らすことによって、国の経営をより透明化し、過剰に支配していた官僚たちの支配の輪を回避しようとしたのである。

 ロシアのメディアは、これまで報道されなかった問題、すなわち、貧弱な住宅事情、食糧不足、アルコール中毒、公害の蔓延、忍び寄る高死亡率、多くの女性が低い地位に置かれていること、さらに国民に対する国家犯罪を暴露し始めた。しかし、このことは、国民の幻滅を助長し、国民はアメリカやヨーロッパの文化・政治に対する好奇心をより強くもつことになった。ペレストロイカは、省庁の独立性を高め、企業の独立採算を認め、いくつかの市場的改革を行った。しかし、ペレストロイカの目的は、中央集権体制を終わらせることではなく、社会主義をより効率的に機能させ、市民のニーズをよりよく満たすことにあった。

 ロシアや他の社会主義国、例えば私が8年間住んだキューバでは、多くの共産主義者が、これらの改革は遅すぎるし、崩壊を促進すると考えていた。崩壊は、実際に起こった。

 ゴルバチョフの当初の目標であった、共産党の部分的支配を維持したままのソビエト連邦の改革は失敗していた。根本的な問題を解決しない改革は、ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、チェコスロバキアを中心とするいくつかのワルシャワ条約加盟国でも不和と暴力につながった。1990年3月、ハンガリーは複数政党制を合法化した。東ドイツ、ブルガリア、ルーマニア、チェコスロバキアがこれに続いた。

 アゼルバイジャン、ジョージア、そしてウズベキスタンを構成国とする共和国で内紛が拡大。リトアニアは独立を模索した。1989年から90年にかけて、ゴルバチョフは中央アジアのいくつかの共和国で血なまぐさい民族間抗争を軍事力で抑えたが、共和国の合法的な分離独立を規定する仕組みを導入した。

 1990年、ゴルバチョフは、党から選挙で選ばれた政府機関への権力移譲を加速させた。3月15日、人民代議員会議がゴルバチョフを、広範な行政権を持つソ連大統領(新たに創設された役職)選出した。議会は、憲法で保障された共産党の政治権力独占を廃止し、他の政党を合法化する道を開いた。1990年、「和平の過程における主導的役割」が評価され、ノーベル平和賞を受賞した。


§米国/NATOのゴルバチョフへの約束-ソビエト連邦を解体するための新たな嘘

 この激動の時代に、米国と西ドイツの首脳は、NATOがソ連に接近しない可能性をゴルバチョフと議論し、ゴルバチョフのNATO加盟案が検討された。

 「ベーカー米国務長官はNATOの拡大について「1インチたりとも東進しない」という有名な約束をした。1990年2月9日にソ連のミハイル・ゴルバチョフ大統領と会談した際のことだった。それは1990年のドイツ統一の過程から1991年にかけて、西側指導者がゴルバチョフと他のソ連高官に与えたソ連の安全に関する確約の数々の一部である 。」

 2017年12月12日、ジョージ・ワシントン大学に拠点を置く国家安全保障文書館が、米国、ソ連、ドイツ、イギリス、フランスの機密解除文書を含むこの情報を掲載した。NATO Expansion: What Gorbachev Heard | National Security Archive (gwu.edu)

 「ブッシュ大統領は、1989年12月のマルタ会談で、東欧の革命が起きているが、アメリカはそれに乗じてソビエトの利益を損ねるようなことはしない(「私はベルリンの壁の上で小躍りして跳ね回ったことはない」)、とゴルバチョフに太鼓判を押した。しかし、その時点ではブッシュもゴルバチョフも(あるいはこの問題については、西ドイツのヘルムート・コール首相も)、東ドイツの崩壊やドイツ統一の速度がそれほど早くなるとは思っていなかったのだ。」

 「この文書は、1990年初頭から1991年にかけて、複数の国の指導者が中・東欧のNATO加盟を検討し、そして受け入れない流れになっていたことを示すものである。[また]、①1990年のドイツ統一交渉の文脈におけるNATOの議論は、東ドイツの領土の状況に狭く限定されていたわけで全くなかったこと、そして②その後のNATOの拡大が間違った方向に向いているというソ連とロシアの不満は、最高レベルの同時代の談話メモや通話メモに書かれていたことが根拠となっている。この2点もこの文書には示されている。」


1990年5月31日、ワシントン・サミット開催後、ホワイトハウスの芝生で盛大にセレモニーが行われ、ブッシュ大統領からミハイル・ゴルバチョフへの正式な挨拶が行われた。(出典:ジョージ・H・W・ブッシュ大統領図書館 P13298-18)

 「西側諸国の指導者によるNATOに関する最初の具体的な保証は、1990年1月31日、西ドイツのハンス・ディートリッヒ・ゲンシャー(Hans-Dietrich Genscher)外相は、バイエルン州のツツィングにおける重要な公開演説で、ドイツ統一に関する論議の口火を切った。ボンの米国大使館(資料1参照)は、ゲンシャーが「東欧の変化とドイツ統一プロセスが『ソ連の安全保障上の利益の減損』につながることがあってはならない」と明言したことをワシントンに伝えた。したがって、NATOは「東方への領土拡大、すなわちソ連国境に近づけること」を排除すべきである」。ボンの電報は、また、ゲンシャーの提案として、NATOに統一されたドイツにおいても、東ドイツ領をNATOの軍事機構から除外することに言及していた。

 「ドイツ民主共和国領土の特別な地位という後者の考え方は、1990年9月12日に2プラス4(両独と戦勝4カ国)外相によって署名された最終的なドイツ統一条約に成文化されたものである。前者の「ソ連国境に近づく」という考え方は、条約ではなく、ソ連と西側の最高レベルの対話者(ゲンシャー、コール、ベーカー、ゲイツ、ブッシュ、ミッテラン、サッチャー、メジャー、ヴォルナーなど)が1990年から91年にかけて保証を与えた複数の会話メモに書き記されている。[これらの会談や覚書が保証しているのは]ソ連の安全保障上の利益保護と、ソ連をヨーロッパの新しい安全保障構造に組み込むことであった。この2つの問題は関連していたが、同じではなかった。その後の分析では、この2つを混同し、議論はヨーロッパ全体を包み込んだものではなかったと主張されることもあった。(しかし)以下に公表された文書は、それがヨーロッパ全体を包み込んだものであったことを明確に示している。」 (2)

 1991年3月17日、ロシア政府は、ソ連史上初の国民投票を実施した。それは、ソ連邦を継続するか否かを問うものであった。

 「アルメニア、エストニア、ジョージア(ただし、アブハジアは98%以上の賛成、南オセチア、ラトビア、リトアニア、モルドバ(トランスニストラ、ガガウジアは除く)は当局が投票をボイコットしたが、ソ連の他の地域では投票率が80%であった。国民投票の問いは、参加した他の9つの共和国すべてで80%近くの有権者に承認された)。1991 Soviet Union referendum – Wikipedia.

 NATOがソ連を脅かさないことを保証したこと、そしてワルシャワ条約加盟国の多くが不満で結束が取れず、生産性も損なっていたため、ゴルバチョフは1991年7月1日にワルシャワ条約を解除した。この時、共産党政権の一部の強硬派は動揺し、政権を奪おうとした。クーデター未遂は1991年8月19日から21日のわずか2日間であった。1991年6月12日に行われた大統領選の最初の人気投票で選ばれたロシアの新大統領、ボリス・エリツィンが率いる市民の抵抗運動が効果的にこれを鎮圧したのである。エリツィンはゴルバチョフの盟友であると同時に批判者でもあった。クーデターは崩壊し、ゴルバチョフが政権に復帰したものの、この事件はソ連を不安定にし、その崩壊の一因となった。

 1991年のクリスマスの日、ゴルバチョフは友人のブッシュ大統領に電話をかけた。

ゴルバチョフ:約2時間後、私はモスクワのテレビで、私の決断について短い声明を発表します。...最初は副大統領として、次に米国大統領としてのあなたと一緒に仕事をしたことを非常に高く評価していることを、あなたに申し上げたい。私は、連邦のすべての指導者、そして何よりもロシアが、米ソ2国の指導者たちの間にあって、あなたと私がどのような財産が生み出してきたかを理解してくれることを願っています。この重要な資本の源泉を維持し、拡大する責任を指導者たちに理解してほしいのです。どのような国家を創設するかについての我々の連邦における議論は、私が正しいと思っていたこととは異なる方向に進みました。しかし、私は、この新しい連邦が効果的なものとなるよう、自分の政治的権限と役割を果たすと申し上げておきます。

ブッシュ:ミハイル、まず、この電話にどれだけ感謝しているかを言わせていただきたい...私たちの関係は変わらないでしょう。特に、この冬に問題が深刻化する可能性のあるロシア共和国とはそうです。あなたが森に隠れるようなことをせず、政治的に積極的であることをうれしく思います。それが新しい連邦のためになると、私は全幅の信頼を寄せています。」

 翌日、ソビエト連邦は解体された。11の共和国が独立した:アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、ジョージア、カザフスタン、キルギスタン、モルドバ、タジキスタン、トルクメニスタン、ウクライナ、ウズベキスタンである。バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)は再び独立した。ソ連の他の地域はロシアとなった。アルバニアとユーゴスラビアは共産主義国家でなくなった(1990~1992年)。同時期、アメリカ/NATOはユーゴスラビアを5つの国に分割した:ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、マケドニア、スロベニア、ユーゴスラビア連邦共和国(セルビア・モンテネグロ)である。


§ 1991-1999 エリツィン-クリントン ロシアの主権を弱体化させる。NATOは東進しないとの約束を破った

 ボリス・エリツィンは直ちに、古典的な新自由主義資本主義経済をモデルとした反革命を開始した。まず、ロシア国内の共産党の活動を禁止した。アメリカは小躍りした。ブッシュ大統領に続き、クリントン大統領も経済と政治のトップ補佐官を送り込んできた。かつては強大な独立国であったこの国に、アメリカ企業が群がった。

 エリツィンは、ソ連が多くの国々に与えていた援助のほとんどをカットした。当時私が住んでいたキューバは、「平時の特別期間」に突入した。キューバは一夜にして輸出の85%と、ソ連諸国からあった食料供給の63%を失った。政府は一部の統制された市場経済対策に門戸を開いた。米国の対キューバ封鎖にあえて逆らう非米国人資本家には、外国投資が許可された。米国は、キューバと取引する外国資本主義企業に罰金まで課している。彼らは、アメリカと取引を続けるために、金を払い、キューバとの取引を止めなければならないのだ。

 何千人ものキューバ人が栄養失調で視力の一部を失った。ラテンアメリカの国々や他の地域で多く見られるように、誰も飢えることはなかったが、空腹のまま寝ることもしばしばだった。多くの社会事業は削減されなければならなかったが、無料の教育や医療は、薬の数は減ったとはいえ、削減されることはなかった。

 ロシアでは、経済の総転換により、国民の財産と富の多くが少数の人々の手に渡った。その多くはかつて共産主義者であった。大富豪、億万長者のオリガルヒたちは、自分たちを19世紀の強盗男爵になぞらえている。

 1993年4月、クリントン・エリツィンは最初の会談を持った。全部で18回行われた会談の最初だった。その直後、憲法危機が発生した。すでに何千万人を貧困に陥れた混沌とした経済に対して、大半の国会議員がてんやわんやだった。

 10月には、兵士と市民が街頭でデモを行い、衝突した。エリツィン派のデモ隊は、国会周辺の警察線条網を撤去し、市長室を占拠し、オスタンキノ・テレビセンターに突入しようとした。当初、陸軍のほとんどは中立を宣言していた。しかし、その一部は国会を支持した。しかし、ほとんどの将兵たちは危険な橋を渡ることは望まなかった。10月4日朝、エリツィンの命令で、将軍たちは兵士たちに最高会議ビル(ホワイトハウス)への突入を指示した。正午までに軍隊はホワイトハウスを占拠し、抵抗する議員たちのリーダーを逮捕した。「第二次十月革命」とも呼ばれるこの革命は、1917年10月よりもはるかに多くの流血を伴うものであった。政府の推計では、死者187人、負傷者437人である。政府以外の発表では、死者数は2,000人にものぼるという。議員を含む多くの死者は、エリツィンが議会の爆撃を命じた時に発生した。

 欧米の政治指導者とそのマスメディアは、この死者数を「民主主義のために必要なこと」として拍手喝采せんばかりだった。小国ながら疑いなく忠実な属国であるデンマーク(著者は現在ここに住んでいる)でさえ、エリツィンの勝利を歓迎した。デンマーク外相ニールス・ヘルビック・ペーターゼン(Niels Helvig Petersen)は、エリツィンは「我々の希望だ。彼は民主主義の発展を保証してくれる」と述べた。

 ジョージ・H・W・ブッシュ(父)は、東進しないという約束を密かに取り消し、クリントンに汚れた行為を始めさせた。1999年、クリントンはチェコ共和国、ハンガリー、ポーランドを追加した。ジョージ・W・ブッシュ(子)はブルガリア、ルーマニア、エストニア、ラトビア、リトアニアに加え、スロバキアとスロベニアを追加した。(3)

 ゴルバチョフは愚かにも、クリントンの側近と米国企業にロシア経済の大半を支配させた。米国のアグリビジネスは、かつては自給自足の国であったロシアに食料を輸出した。その結果、1998年までにロシアの農場の8割が倒産した。まだロシアの手元にある経済の一部は、新しい資本主義のオリガルヒが所有することになった。エリツィンは彼らにほとんど税金を払わせなかった。

 1998年7月25日、エリツィンはプーチンをロシア連邦の主要な情報・治安組織であり、KGBを引き継いだ連邦保安局(FSB)の局長に任命した。プーチンはKGBの中佐を務めていた。クーデター未遂に抗議して辞職した。

 1999年8月9日、プーチンは首相代行に任命された。エリツィンもプーチンを後継者に指名する意向であることを表明した。同日、プーチンは大統領選への出馬に同意した。プーチンは正式にはどの政党にも属していなかったが、1999年12月の下院選挙で第2位の得票率(23.3%)を獲得した新党「統一党」への支持を表明した。「統一党」はプーチンを支持した。

 1999年12月31日、エリツィンは突然辞任をした。プーチンが大統領代行に就任した。2000年3月26日、第一回目の投票で4000万票(53%)を獲得した。共産党のゲンナジー・ジュガーノフ(Gennady Zyuganov)が2200万票(30%)、社会自由党ヤブロコの候補者グリゴリー・ヤブロインスキー(Grigory Yavloinsky)が440万票(6%)だった。

 エリツィンの失政が終わるまでに、平均寿命は5年(69歳から64歳まで)縮まった。ロシア人の貧困率は、ソ連末期の1.5%から43.4%に激増した。(プーチン大統領は国家の主権を取り戻し、これを劇的に変化させた。2020年、貧困率は2.9%だった) Russia Poverty Rate 1997-2022 | MacroTrends


§アメリカ新世紀プロジェクト(PNAC)2000プロジェクトと9/11

 PNACは、「衝撃と畏怖」を利用した世界征服のための共和党極右の青写真であった。25人の署名者は、米国に対する巨大な危機、この青写真の執筆者たちが提示した、たぶん「真珠湾攻撃のような出来事」なしには、それが国民の支持を得られず、達成不可能かもしれないことを理解していた。The Twenty Year Shadow of 9/11: U.S. Complicity in the Terror Spectacle and the Urgent Need to End It – Global ResearchGlobal Research – Centre for Research on Globalization

 PNACを支持するジョージ・W・ブッシュ(子)候補が大統領に就任してわずか8ヶ月後、9.11テロが発生した。ブッシュはPNACの執筆者たちの多く要職につけていた。その一人がリチャード・パール(Richard Perle)だった。

 真のジャーナリスト、ジョン・ピルジャー(John Pilger)は、パールがレーガン大統領の顧問をしていた時にインタビューしたことがある。ピルジャーはこう書いている:

「パールが『全面戦争』について語ったとき、こいつは狂人だ、とほっておいた。しかし、それは間違いだった。彼は最近、アメリカの『テロとの戦い』を説明するときに、再びこの言葉を使ったのだ。「段階は踏まない。これは全面戦争だ。我々は様々な敵と戦っている。たくさんの敵がいる。まずアフガニスタンをやる、次にイラクをやる......というのは、まったく間違ったやり方だ。もし、私たちが抱いている世界ビジョンをただ前面に押し出し、そしてそれを完全に受け入れ、そして小賢しい民主主義をつなぎ合わせることはせず、ただ全面戦争を行うのであれば......今後何年も経ってから、我々の子供たちは我々について素晴らしい歌を歌うだろう。」New Statesman – John Pilger reveals the American plan (archive.org)

 19人の外国人-サウジアラビアから15人、アラブ首長国連邦、エジプト、レバノンから4人-が、世界で最高の軍隊を持ち、監視が行き届いた国の4か所でどのように攻撃を成功させたか、まさに信じがたいことである。 Our Mission – 911Truth.Org, そして World Trade Center Building 7 Demolished on 9/11? | AE911Truth

 あの謎の爆破の後、アメリカが望むどんな戦争も、西側諸国の政府と国民は受け入れることができた。この20年間、ブッシュのアメリカ例外主義者のスローガンは現存している:

「あなたは我々の側につくのか?それともテロリストの側につくのか?」

§2001-2022 アメリカのアフガン戦争とプーチン大統領の方針

 西側の政治家とその主流メディアは、プーチン大統領がどれだけ米国やNATOとパートナーになりたがっていたか、2022年2月24日までどれだけ努力したか、を伝えようとしない。米帝がその指導者たちが望んでいたもの、つまり「テロとの全面戦争」を開始することを可能にした9/11という新たな真珠湾攻撃を手に入れたとき、プーチン大統領はブッシュ大統領に電話をかけ、私はと妻と、殺された人々のために祈っていると言った。そして、タリバンとの戦いへの援助を申し出た-これはひどい間違いだ。

 米国がロシアに対して破壊工作を行った経緯があるにもかかわらず、新大統領プーチンは子ブッシュに、タリバンに関する情報を提供し、アフガニスタン戦争用だったソ連2つの軍事基地の使用を申し出た。

 プーチン大統領は、両国は「敵ではない」と語り、NATO加盟を要請した。「我々は良い同盟国になれる。」 プーチンはブッシュに、CIAがロシアの影響下にある地域で、反政府テロリスト集団を武装させ、訓練し、資金を提供するのを止めることだけを望んだ。

 プーチン大統領は、ジョージ・W・ブッシュ大統領と何度か会談し、二人はお互いを友人と呼び合っている。2001年6月16日、スロベニアで行われた最初の会談で、ブッシュはこう言った。「私は彼の目を見て、彼の魂を感じた。私は彼を信頼することができた。」しかし、プーチンはブッシュを信用できたのだろうか?


 ブッシュはCIAの動きを止めることができなかったし、止めようともしなかった。CIAはロシアの情報機関に書簡を送り、CIAは望むことを続けるだろうと述べた。ブッシュ/ペンタゴン/CIAはまた、ロシアのNATO加盟の申し出を拒否した。NATO加盟の申し出は、U.S.-ARMEとの軍事衝突を終わらせようと3代のロシア大統領が継続的に続けた努力だった。ブッシュ政権は、共和党右派のリチャード・ニクソンとソ連が1972年に署名した重要な対弾道ミサイル条約さえ破棄した。

 エリツィンそしてプーチン両大統領は、NATOが国境を越えて拡張していることに苦言を呈している。「ワルシャワ条約が解かれた後、西側のパートナーたちが提示した確約はどうなったのか。その宣言は今どこにあるのか?」プーチンは2007年のミュンヘン安全保障会議でこう述べている。

 「それを誰一人覚えていないのです。しかし、何が語られたのか、私はみなさまに思い出していただこうと思います。1990年5月17日、ブリュッセルでのヴェルナーNATO事務総長の演説を引用したいと思います。彼は当時、次のように言っています:
ドイツ領土の外にNATO軍を配置しない態勢であるという事実は、ソ連に確固たる安全保障を与えます。
この保証は今どこにあるのでしょうか?」 TRANSCRIPT: 2007 Putin Speech and the Following Discussion at the Munich Conference on Security Policy – Johnson’s Russia List


§ 2008-16バラク・オバマは、ブッシュのアフガニスタンとイラクに対する戦争をすぐに拡大し、さらに5つの戦争を追加した。一度に7つの戦争、これはどの米国大統領よりも多い数である。

 「平和の候補者」バラク・オバマは、多くの進歩的でかつての過激な米国民から支持されていた。しかし、彼はすぐに金持ちの白人の最高のアンクル・トムになった。オバマはブッシュのアフガニスタンとイラクに対する戦争を拡大し、パキスタンの半分、貧困も不平等もない生活をしていた世俗的国家リビア、イエメン、ソマリア、世俗的国家シリアを追加した。(参照: Ron Ridenour: Obama: The Worst President Ever そして Obama And His Seven Wars – Shadowproof, さらにこのCNNも Countries bombed by the U.S. under Obama administration | CNN Politics)

 ロシアの援助がなければ、正統性のあるシリア政府は、アメリカ、ヨーロッパの同盟国、イスラエル、湾岸諸国、トルコによって不法に転覆させられていたことだろう。この寄せ集めの同盟国は、時に最も過激で残忍なイスラム国のテロリスト、アルカイダ、アルヌルサなどを時には支援し、時には戦った。アメリカは今も世俗国家シリアに対して戦争を仕掛け、その石油を盗んでいる。

 プーチン大統領は、アサド大統領に、所有する神経ガスを、化学生物兵器を大量に保有し、それを使用している世界第一のテロ国家(アメリカ)に引き渡すよう説得した。同じ時期に、プーチン大統領はイランに原子力兵器を作らないよう説得した。イラン、米国、フランス、ドイツ、中国、ロシアとの「包括的共同行動計画」は、当初プーチン大統領の仕事であった。この「計画」に従い、イランの核エネルギープログラムの制限と引き換えに、西側のイランに対する経済制裁を解除した。それを止めたのがドナルド・トランプだ。


§ ウクライナはオバマの8つ目の戦争遂行となった

 オバマはあまりに多くの戦争を抱え込んでいたので、ウクライナを副大統領のジョー・バイデンに委ねた。その使命は、米国・EUとロシアの両方と友好的で取引しようとしたヴィクトル・ヤヌコビッチ(Victor Yanukovych)大統領を排除することだった。帝国主義者たちはロシアとの友好的な取引を許さなかった。ヤヌコビッチは去らねばならなかった。

 ブッシュのNATO大使だったビクトリア・ヌーランド(Victoria Nuland)は、オバマが連れてきた多くのブッシュによって任命された人間の一人に過ぎない。彼は彼女をヨーロッパ・ユーラシア問題担当国務次官補にし、バイデンに引き継いだ。その使命は、親ファシストや他の極右勢力、例えばステパン・バンデラを英雄と仰ぐ右派セクターやスヴォボダ-社会国民党とバイデンとのトップの連絡役になることだった。この極右勢力は多くのデモでバンデラを称えている。ヌーランドは、ジェフリー・パイアット(Geoffrey Pyatt)米国大使と協力して、クーデターを準備した。

 2014年2月4日、クーデターの3週間前、彼らは来るべきクーデター政権の座につくべき人物について電話会談を行った。幸運にも、この会話は盗聴され、世界中に送信された。U.S.-ARMEのもとで、誰が次の知事になったのか、必聴。 (927) Nuland-Pyatt leaked phone conversation _COMPLETE with SUBTITLES – YouTube

 ヌーランド-パイアットのクーデター計画決定後、2月後半にユーロマイダンデモが発生し、暴力的になった。主に狙撃手によって100人以上が殺害された。ファシストたちはヤヌコビッチ大統領を殺害しようとした。大統領は逃亡を余儀なくされた。2月22日、アメリカは念願の「政権交代」を果たした。

 「チョコレートオリガルヒ」ペトロ・ポロシェンコ(Petro Poroshenko)は、最右翼で米国に友好的と判断され、大統領に就任した。2015年にまだ大統領である彼は、クーデターによって大統領になったことを認めている。

 「ウクライナのポロシェンコ大統領、ヤヌコビッチ打倒はクーデターだったと発言」 -Global Research - Centre for Research on Globalization

 「ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領が、ウクライナ最高裁判所に対し、前任者のヴィクトル・ヤヌコビッチが違法な作戦によって転覆されたと宣言することを要請:つまりそれは、ポロシェンコ自身の大統領職を含むポストヤヌコヴィッチ政権がそうだということになる。」Ukraine’s President Poroshenko Says Overthrow of Yanukovych Was a Coup – Global ResearchGlobal Research – Centre for Research on Globalization

 ヌーランドの部下の一人で、社会国民会議の共同創設者であるアンドリー・ビレツキー(Andriy Biletsky)は、その後間もなく合体することになったいくつかのファシスト大隊の一つである「アゾフ大隊」を創設した。アゾフはクーデターの過程で多くの警察官を殺害した。その後、彼らはドンバス地方でロシア人に対する戦争を開始した。14,000人以上が殺害された。プーチン大統領は、民族ロシア人からの嘆願にもかかわらず、今年になるまでロシアへの編入を認めなかった。


この「黒い太陽」はアゾフのシンボルのひとつにすぎない。ナチスドイツも使っていた。

 アメリカの軍向けラジオFree Europe/Radio Libertyもアゾフのルーツはファシストと認めている。In Ukraine, Ultranationalist Militia Strikes Fear In Some Quarters (rferl.org)

 クーデター政権の初期、バイデンは生活費を稼ぐために息子のハンターをウクライナに送り込んだ。彼はウクライナの民間エネルギー企業の一つであるブリスマ(Burisma)社の「アドバイザー」としての仕事を与えられた。給与は月給83,000ドル。 Hunter Biden: What was he doing in China and Ukraine? – BBC News.

 親ファシスト政府は、露土戦争の間にロシアが建設したセヴァストポリのクリミア海軍基地(1772-83年)の米国による乗っ取りを承認したのである。もしロシアがグアンタナモ海軍基地の買収に動いたり、メキシコとアメリカの国境に基地を建設したりしたらどうなるか想像してみてほしい。

 2月23日、クーデター派のヤヌコビッチ大統領に逮捕状が出された日、親ロシア派のクリミア人がクリミアの首都シンフェロポリにある政府庁舎を占拠した。3月11日、クリミアのウクライナからの独立を議会が宣言。分離に賛成78票、反対22票の投票を受けてのことだった。3月16日有権者数1,274,096人(投票予定者の83%)の住民投票の結果:1,233,002人がロシア連邦への統合を支持(96.8%)、32,000人がウクライナに残留を支持(2.5%)。

 不正投票の告発はなかった。3月17日 クリミア議会がこの結果を認め、ロシア連邦内の独立国家になることを申請。プーチン大統領は申請を受理し、議会とセルゲイ・アクショノフ(Sergey Aksyonov)の首相就任を承認した。

 住民投票から1年後、資本主義の立場に立つフォーブス誌はこう書いた:

「米国とEUはクリミア人を彼らのために救いたいと考えているかもしれない。しかし、クリミア人は今のままで幸せなのだ。黒海のウクライナ半島の併合から1年、世論調査によると、そこの地元民は、ウクライナ人、ロシア民族、タタール人など、ほとんど全員が一致している。ロシアとの生活の方がウクライナとの生活より良い、と。」One Year After Russia Annexed Crimea, Locals Prefer Moscow To Kiev (forbes.com).

 同時にガーディアン紙の見出し Welcome to Ukraine, the most corrupt nation in Europe | Ukraine | (欧州で最も腐敗した国ウクライナへようこそ)The Guardian

 2018年、私はプーチン大統領の駐デンマーク大使ミクジャイル・ヴァニン(Mikjail Vanin)にインタビューした。拙著『ロシア平和への脅威:厳戒態勢のペンタゴン』の取材のためだった。ヴァニン大使は、米国を「我々の友好国」と呼んだ。私が「米国はロシアを友好国として望んでいないのですが」と指摘すると、ヴァニン氏はクスッと笑った。「まあ、我が国の大統領はまだ希望を持っていますよ 。」これは米国が計画したウクライナのクーデターから4年後の発言である。


(1) “The President’s News Conference of April 12, 1961,” John F. Kennedy, The Public Papers of the Presidents, 1961. (Washington: United States Government Printing Office, 1962, page 259). And “Text of Secretary Rusk’s News Conference, Including Observations on Cuba,” New York Times, 18 April 1961.
(2) “From the Shadows: The Ultimate Insider’s Story of Five Presidents and How They Won the Cold War”, Simon & Schuster, 2007.
(3) Barak Obama added Albania and Croatia. Donald Trump added Montenegro and North Macedonia. Joe Biden is adding Sweden and Finland, which will encircle Russia as much as seas can allow with the exceptions of Georgia and Ukraine, which is why the CIA has been endeavoring to annex those two through terrorist actions and coup attempts. See part two for more of Clinton’s imperial crimes.

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石油をめぐって悪化したサウジ・米国関係だが、問題はもっと深い

<記事原文 寺島先生推薦>

Saudi-US relations deteriorate over oil, but the issue is much deeper

バイデンは米国中間選挙を前に、サウジの石油減産を阻止しようとしたが失敗して、サウジアラビアに対して人権に関する空虚な警告を再び発した。

筆者:ロバート・インラケシュ(Robert Inlakesh )


政治分析家、ジャーナリスト、ドキュメンタリー映画制作者。パレスチナ自治区で取材・生活し、現在はQuds Newsに所属している「Steal of the Century: Trump's Palestine-Israel Catastrophe」」の監督。

出典:RT

2022年10月25日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月28日


画像:サウジアラビア・ジッダのアルサラーム王宮で、ジョー・バイデン米大統領(左)とサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(右)が会談した。© サウジアラビア王宮 / アナドル・エージェンシー 、ゲッティが画像を提供

 ジョー・バイデン米大統領は、リヤドによる原油減産の決定についてその「影響」を警告したが、結果は民主党党首バイデンを困惑させるものとなった。しかし、サウジアラビアの反抗的な動きは、見た目よりもずっと複雑なのかもしれない。

 中東における米国の長年の友好国であるサウジアラビア王国が、今年10月初めに開かれたOPEC+の会合で原油の減産を推し進めて以来、米国は強く反対の声を上げている。バイデンは11月の中間選挙に向けて党を率いているが、原油価格は下がらず、選挙で共和党を打ち負かすという希望を損なうことになった。民主党の有力者たちは、サウジの動きが選挙結果に影響することに憤慨し、サウジを激しく非難するようになった。

 今月初めにOPEC+が2020年以来の低水準への減産を決定したことは、ワシントンでは即座に、サウジアラビアが欧米よりもロシアの味方をした、と評された。バイデンにとってさらに悪いことに、リヤドは現在南アフリカ、ブラジル、ロシア、インド、中国からなるBRICS経済連合への参加に関心を示していると報じられている。

 サウジアラビアは、ロシア側につくために何らかの決定を下したことは否定しており、特にサウジがウクライナに対抗する姿勢を示しているという主張に対しては「驚愕している」と述べている。


<関連記事> サウジアラビア、石油減産をめぐる米国の圧力を明らかにする

 サウジアラビアの減産の決定は、特にヨーロッパがエネルギー不足に苦しむ中、西側諸国にとって打撃であることは間違いないが、この動きはNATOが支援するウクライナとロシアとの紛争に対する政治的な意図でなされたものではないだろう。どちらかといえば、反米というより、反民主党の立場をとっていると解釈できる。

 ワシントンでは、バイデン政権発足当初の立場を反映し、現在は人権侵害やサウジの独裁的な国家体質に焦点を当てた言い方に変化しているが、その真意は、純粋な懸念ではない。リヤドによれば、バイデンはサウジ政府に対し、原油減産の発効を選挙後にするよう譲歩を求めたとさえ伝えられている。しかし、OPEC+の決定を延期する試みは徒労に終わり、米国大統領は11月8日の予備選挙で、この問題で減るかもしれない民主党の票を失わないために原油価格の問題を取り上げざるを得なくなったのである。

 ドナルド・トランプ前大統領が就任後初の外遊先としてサウジアラビアを選んだように、共和党がサウジ自身の地域政策に好意的であることは明らかである。現在も共和党に大きな影響力を持つトランプ氏は、在任中、サウジとアラブ首長国連邦の双方にとって大きな味方であった。共和党へのロビー活動などを通じて、リヤドやアブダビは自分たちが得た結果に満足しているようだった。特筆すべきは、トランプ政権の非公式補佐官を務めたトーマス・バラックが、首長国政府の外国人工作員であると非難されたことだ。それはバラックが、外交政策の主要問題で前大統領に影響を与え、サウジとUAEが湾岸地域で影響力を高める方向性を大きく変えた可能性があったからだった。

 次に問題になったのは、バイデン政権の偽善的な取り組み方である。米国大統領バイデンは、政権の外交政策課題に関する最初の演説で、リヤドの人権侵害の責任を追及し、イエメンでの戦争を終結させるために努力すると主張した。しかしバイデンは、サウジアラビアへの攻撃用武器やその他の関連武器売却を中止すると表明しながら、同年末には武器売却を承認したのである。

 7月の外遊では、アラブ首脳会議にオブザーバーとして参加し、大統領は中東から「離れない」ことを誓った。この外遊は、米国の世界的・地域的課題にとって何ら具体的な利益をもたらすものではなかったが、米国はサウジアラビアへの攻撃用兵器の売却を再び検討する用意があるとの情報も入っていた。実際、OPEC+による減産の1週間前には、米国の投資家にサウジアラビアへの訪問を奨励する報道がなされ、サウジと米国の関係は新たな高みに達している。それは、サウジアラビアがロシアとウクライナの囚人交換に関与した後のことでもある。

 民主党の複数の有力議員から関係断絶を求める声が上がる中、サウジのアデル・アルジュベイル外相はCNNのインタビューで、米国とサウジの関係を結びつける要素を以下のように列挙した。


<関連記事> アメリカ人は、米国が中東の同盟国に圧力をかけたかどうか分かるべきだ --- 下院議員

 「サウジアラビアには、約8万人のアメリカ人が住み、働いています。我々は非常に強力な貿易・投資関係を持っています。イエメンに平和をもたらすこと、イスラエルとアラブの間に平和をもたらすこと、アフガニスタンを安定させること、イラクをアラブに復帰させること、アフリカの角に安定をもたらすこと、リビアやサヘル地域*のG5諸国の安定と平和をもたらすこと、そして過激主義やテロとの戦いにおいても、我々の共通の利益を守るために我々は非常に緊密に働いています。それらの利益は永久に続くものであり、それらの利益はとてつもなく大きなものです。」
 [訳注]*サヘル地域----中央アフリカ北部、セネガルからエチオピアに至るサハラ砂漠の南に接する半乾燥地域

 この発言が注目される理由は、米国がリヤドとの関係を通じて活用できる力を明確に示しているからである。両者は1938年の石油発見以来、一心同体の関係であり、1979年のイラン王国の没落後、この関係は大きく改善されてきた。しかし、サウジアラビアは米国にただ利用されることを黙って見てはいなかった。米国の石油市場の主要部分を自ら買い占め、地域情勢への影響力を確保し、単なる国際的ガソリンスタンドではなく、地域の主要プレーヤーとしての役割を確固たるものにしているのである。

 サウジアラビアが国内外で行っている人権侵害は忌まわしいものであるが、バイデン政権は明らかにそれらに関心を抱いていない。だからこそ、原油価格と党派的な選挙問題が絡む今になって米国とサウジの関係が悪化し、ホワイトハウスにとってまた新たな困惑が浮き彫りになっているのである。バイデン大統領のサウジアラビア訪問の際、大統領はワシントン・ポスト紙の記者ジャマル・カショギ氏の殺害事件を持ち出そうとしたと伝えられている。サウジアラビアの説明によると、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、イスラエルによるパレスチナ系アメリカ人ジャーナリスト、シリーン・アブ・アクレの殺害と、米軍によるイラクのアブグレイブ刑務所での拘禁者拷問を指摘してバイデン氏に対抗したという。「自分を偽るな」と、サルマン皇太子は言いたかったのだ。しかし、米国とサウジアラビアの関係は、米国が再び政権転覆戦争を引き起こさない限り、今後も続くだろう。
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西側メディアで悪者にされているドンバス軍は、ウクライナの砲撃とファシズムから自分たちの未来を守っている

<記事原文 寺島先生推薦>
Maligned in Western Media, Donbass Forces are Defending Their Future from Ukrainian Shelling and Fascism
出典:INTERNATIONALIST 360°2022年11月19日
筆者:エヴァ・バートレット
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2022年11月29日



ピャトナシカ(ドンバス内で活動している旅団戦闘団)の司令官たちと共に、ドネツク人民共和国のアブデーフカ市の近くの前哨基地にいる著者。[画像はエヴァ・バートレットさんのご好意により提供されたもの ]


 米国は、ウクライナで起こっている紛争の裏にいる重要な扇動者である、という事実が広く理解されるようになっている。そしてその紛争により、本来は兄弟のような同胞だった同士が、戦わさせられている。

 西側メディアによる喧伝(けんでん)により、悪口を言われ、汚名を着せられ、嘘をつかれてきたドンバス地域在住の、主にロシア語話者である人々は、残酷な戦争において何千人もが殺戮されてきた。そしてその殺戮は、「民族浄化」の名のもとに、キーウ当局内のナチ政権により行われてきたのだ。そしてそのナチ勢力に権力を持たせたのは米国だ。それは、CIAが、2014年のクーデターで、法的に選ばれた大統領を失脚させた後のことだ。

 ドンバスの人々は、ロシア軍に支援を頼み、ウクライナ政府軍によるますます激しさを増していた殺人的な軍事攻撃から守ってほしいと懇願してきた。その攻撃により、ドンバス住民1万4千人以上が亡くなっていた。しかしロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、介入には後ろ向きだった。同大統領はそれよりも、戦争に関わっている勢力間の和平同意を仲介しようとしていた。

 しかし、米・英は密かに共謀して、和平交渉を妨害しようとし、ゼレンスキー大統領を説き伏せて、ミンスク合意3を無視させた。この合意は、以前ウクライナ政権が署名したもので、ロシア、フランス・ドイツも共に署名していたものだった。

 米国と米国の同盟国であるNATO諸国には、和平交渉を成立させることを認める意図が全くないことが分かったプーチン大統領は、2月24日、ついに兵をウクライナに進めた。ロシア軍がウクライナに入ったのは、劣勢に置かれていて、武器も不足していたドンバス特別軍を支援するためであった。このドンバス特別軍は、自分たちの故郷をほぼ8年間、キエフ政権から守り続けていた。


ウクライナ東部の前線からの声

 10月、ドネツク人民共和国(以降DPR)で、私は(ドネツクの北西部にある)アブデーフカ市内のウクライナ軍陣地から70メートル離れた(私が話を聞いたドンバス側の司令官たちはそう言っていた)前哨基地に向かった。

 現地に着くために、私は他2名の記者とともに、ピャトナシカ(志願兵からなる部隊。その部隊には、ドンバス住民以外にも、※アブハズ人、スロバキア人、ロシア人、※オセット人などの人々がいる)の2名の司令官との待ち合わせ場所を訪れた。
※アブハズ人・・南コーカサス地方に住む民族
※オセット人・・北カフーカス地域に住むイラン系の民族


 その待ち合わせ場所から、この2名の司令官たちは、車で行けなくなるところまで乗せてくれて、そこからは徒歩で数分間、茂みと塹壕を抜けて、最後に土嚢でつくった木とセメントで要塞化された前哨基地に到着した。

 この場所の支配者は何年かの間に何度か変わった。ウクライナ軍が占領した時期もあったが、今はドンバス軍の支配下にある。

 ВЫДРА(ヴィドラ:カワウソ)という呼び名で通っている、部隊の司令官である一人の兵士は、DPR出身の元鉱夫で、家族と共にロシアで暮らしていた。2014年、この兵士はドンバスに戻り、ドンバスに残っていた母や親戚を守ろうとした。この兵士は前哨基地でこんな話をしてくれた。

 「ここは俺たちが自分たちの手で掘って、建てたんだ。ここ何年かで数回、ウクライナ軍がここを占領したこともある。俺たちはウクライナ軍を押し返し、ウクライナ軍がまた攻めてくる。そんな感じで、俺たちはウクライナ軍と戦ってきたんだ。」

 兵士たちにとって最も危ないのは砲火だ。「狙撃者から隠れることはできるけど、砲撃からは無理だからね。あいつらはでかい口径のものを使ってるし。」



ピャトナシカ兵たちの中の部隊司令官の一人「ヴィドラ」。[画像はエヴァ・バートレットさんのご好意により提供されたもの ]

 ヴィドラさんの住処には、じめじめした、狭苦しい小さな部屋があり、そこには、小さなにわか作りのベッドがあり、もうひとつの小部屋には、前哨基地内の他の兵士たちのためのベッドか置かれていた。

 ある注意書きがあった。「砲撃が始まったら、防空壕に逃げろ」と。このような注意書きは、ドネツクやドンバスの諸都市に貼られている。ウクライナが市民に対する止むことのない砲撃を続けているからだ。
砲撃が普通に起こる前線の前哨基地において、 この注意書きは少しばかげた注意書きに思えるし、たしかにこれは冗談だ。

 ロシア正教の聖像が、この注意書きの上に貼られていた。ウクライナの国粋主義者たちは、ナチの落書きや死の標語を掲げたり、スプレーで吹きかけたりしていた。これらの標語や落書きから、ウクライナ国粋主義者たちの信念が見える。

 DPRの国旗とともに貼られていたポスターには、こう書かれていた。「我々は敗北を決して知らない、そして明らかにこの事実は神が決めたもうたものだ。ドンバスは決して跪くことはない。そんなことをするものは何人とも許されない」と。


 この部屋を飾っている唯一のものは、ツナの瓶詰、肉の缶詰、インスタント麺、そして洗濯洗剤だった。これらは生活に必要な最低限のもので、別に魅力のあるものではない。この兵士たちが志願したのは、兵士たちの言葉の通り、ここが兵士たちの故郷であり、そこを守らなければならないからだ。

 驚く人もいるかも知れないが、ヴィドラさんは、ウクライナ国民を嫌っているかという問に対して、力強く「違う」と答えた。それは、ウクライナには友人たちや親戚がいるからだ、と。

 「俺たちはウクライナに憎しみなんて持っちゃいない。権力を握った国粋主義者たちが憎いだけさ。普通のウクライナ国民はって?俺たちの多くはウクライナ語をしゃべれるよ。ウクライナの人たちの言っていることもわかるし、ウクライナの人たちも俺たちが言っていることがわかるんだ!だってウクライナの人たちの多くはロシア語がしゃべれるんだから。」


 「俺は何度もスポーツの大会に出たことがあるよ。レスリングだけどね。だから友達はたくさんいるよ。ドニプロペトロウシクにもハルキウにもキロヴォフラードにもオデッサにもリヴィウにもイバノーフランコフスクにもトランスカルパチアにもね。親戚はウクライナ西部にいて、まだ連絡を取っているよ。そうさ。みんな街の中では口を揃えて同じことしか言わないけれど、でも人前じゃないところじゃ、こう言ってるんだ。“だってそう言わなきゃ仕方ないだろ。SBU(ウクライナ秘密警察)が聞いてるんだからさ” って。ウクライナは民主主義を叫んでるけど、そんなこと言いながら何の理由もなしに、人々に手錠をかける国なんだ。俺の叔母さんが苦労したのは、自分のスカイプに俺の画像を貼っていたからなんだ。俺、ミロトウォレット(暗殺対象者リスト)に載せられてるから。」 [この記事の著者も、このリストに載せられている。こちらの記事を参照。]

 ヴィドラさんは2014年から続いているウクライナによる砲撃について話した。ドンバスの人々は武装しておらず、自分たちが国から攻撃を受けるとは思ってもいなかった、という。

 「ゴロフカの東にあるイェナキエヴォ市に砲弾が着弾した時、俺たちには武器はなかったんだ。狩猟用のライフル銃と松明を手に持って戦いに行ったんだ。俺たちが手に入れた武器は、後で敵から集めたものだった。俺たちは武器を持たずに戦場に出ていって、武器を取りに行ったってわけさ。」

 「ウクライナ軍にドネツクを取られてしまわないか心配ではないか?」と聞かれたヴィドラさんは「いや、もちろんそんな心配はしていない。2014年にできなかったんだから、今もできるわけがない」と返した。

 ウクライナ軍の兵たちに何か伝言はないか、という問いに、ヴィドラさんは躊躇うことなく、こう答えた。「家に帰りな。俺たちは2014年からずっとそう言い続けてきたよ。家に帰りなってね。俺たちはあいつらを殺したくはないんだ。あの国粋主義者たちのことじゃないよ。ウクライナ軍の兵たちのことだ。ウクライナ軍の兵たちは、ウクライナ軍に徴兵されて、無理やり働かされてるんだから。みんな、家に帰りな。降参するか家に帰るかどっちかを選びな。ここは、俺たちの土地だから。俺たちは出ていかないぜ。どこにも行かないぜ。」

 私は、ヴィドラさんに非人間として扱われたり、描かれたり、非人道的な名で呼ばれることについてどう思うか尋ねた。ウクライナの国粋主義者たちはそのような洗脳的な喧伝を使っているからだ。それに対して、ヴィドラさんは、私が先述した答えを言ってくれた。

 「ウクライナの国粋主義者たちは、自分たちがロシア人は人間ではないと思っていることを、あからさまにしている。学校の教科書でもそんな考え方を教えてるんだ。そんな考え方が、どの程度なのかをよく示している動画もあるよ。子どもたちにロシア人を嫌いにさせたり、ロシア人を人間だと思わせないように教えているだけじゃないんだ。子どもたちを洗脳して、ドンバスの住民たちを殺しても構わないと思わせる教育もやってるんだ。ウクライナ国家は、ネオナチが運営してる若者向けの教化合宿にお金を出しているんだから。」

 ヴィドラさんは、こう言っていた。「嫌だよね。悲しいよ。奴らは、病気なんだ。治してあげなきゃ。ゆっくりとね。」

 私は、ウクライナ人とロシア人の間で友情を結ぶことはできるか、とヴィドラさんに聞いてみた。

 「友情が生まれるまでには時間がかかるんじゃないかな。チェチェンのことを考えてみなよ。ほら、ロシアのチェチェン地方のことだよ。昔は戦争していた。でもゆっくりと、ゆっくりとだけど、きっと俺たちは一緒に暮らせるようなるのさ。俺たちは同じ国の国民なんだ」。実際、チェチェンの兵士たちは、ドンバスの民兵やロシア軍と共に戦っていて、最も戦功を挙げる勢力のひとつになり、ドンバス地域をウクライナ軍から解放してくれている。」

 ヴィドラさんがズポンのポケットのチャックを開け、誇らしげに見せてくれたのは、小さなプラスティックの入れ物で、そこに入っていたのは、子どもが書いた絵や聖者やキリストの聖像や祈りの言葉など・・だった。
 
  「これは本当に個人的なものなんだ。俺を守ってくれる天使のようもんさ。それをプラスティックの入れ物に入れてるんだ。自分の身分証明書さえそんなところには入れてないよ。2月からずっとこれをポケットに入れてるんだ。俺はずっといろんな紛争現場を体験してきた。ある一人の子どもがこの絵を描いてくれたんだ。子どもたちから手紙ももらってるしね。つらいときや、砲撃を受けているときは、これをみるとすごくいい気持ちになるんだ。」

 ヴィドラさんは一枚の手紙を読んでくれた。「僕たちはあなた方の帰りを待っています。命をかけて、ドンバスを守ってくれてありがとうございます。ユリアとイラより。」

 「俺はユリアちゃんとかイラちゃんのこと、知らないんだ」とヴィドラさんは微笑みながら語った。

 聖像を見せながら、ヴィドラさんはこう語った。「この人は聖ウシャコフ、俺たちの偉大な司令官さ。こちらはイエス・キリスト。俺たちを天から見守ってくれている。このアブハズの聖像は、アブハズの人たちからもらったんだ。こっちは祈祷書。ここに祈りの言葉が書いてある」とヴィドラさんは祈祷書の1ページを示しながら言った。

 「つらいときには、ここにある言葉が支えになる。激しい砲撃のときは、砲撃が何時間も続くことがある。だからそんなときは、そこに座り込んで、この言葉を読めるんだ。」

 「22~23歳位の若者にとったら特にそうだ。大学を出たばかりのね。そいつらにとったらこんな体験、初めてだろうよ。」


ウクライナの戦争を地政学的観点から語ってくれた司令官たち


 戸外で、ロシア正教の看板や、集められた軍需物資(西側のものもあった)の前に、二人の小隊の司令官が座っていた。彼らは「кабар(カバル:ニュース)」と「カマズ(камаз:トラック)」という呼び名が与えられていた二人だったが、彼らは地政学的見地から語ってくれた。[こちらの動画を参照]

 「米国はここで見世物をやっているんだ」とカバールは言った。「米国は自分の国の内政の立て方を基準にした外交政策を打ち立てている。つまり、自国外で紛争させようという手口だ。米国の奴らは、世界中でテロ行為を起こすことで、米国の持つ国力を米国民に証明することに慣れっこになってる。東方のシリアでの戦争もそうだった。シリアで使ったのは、イスラム過激派というカードだった。」

 「そしていま、米国が使っているのは、ファシズムのカードだ。なのに米国は、自分たちが善人の逆側にいるとは、思っていない。米国には、戦争や血や残忍性が必要なんだ。そして、そのために欧州諸国と同盟を結んでいるんだ。」

 「ただし、米国民が見落としている点が一つある。それがロシアだ。ソ連時代から、ロシアは大規模な戦争で一度も負けていない。米国は欧州を抑え、ロシアを虐殺しようとし、ロシアが自国の利益を守らなければならない状況に追い込んだんだ。欧州諸国はそのことを理解する必要がある。歴史に目を向けて、米国に追従することをやめるべきなんだ。」




ピャトナシカ兵の司令官の一人「カバル」[画像はエヴァ・バートレットさんのご好意により提供されたもの]


 ウクライナ国民に対する気持ちを問われたとき、「カバル」さんは「ヴィドラ」さんと同じような答えを伝えた。

 「ウクライナ国民みなを責めているわけじゃない。ウクライナ国民は俺たちの友人だし、親戚でもある。ウクライナ国民は邪悪なものにとりつかれているけど、それはウクライナ国民のせいじゃない。普通の人たちがその責任を問われることにはならないのさ。俺たちはその普通の人たちをファシズムから解放するつもりだ。友情を示して、友人になりたいんだ。」

 「俺たちにとったら、今は邪悪な者たちを打ち負かすいい機会なんだ。神のおかげで、俺たちは邪悪な者たちと戦う権利を手にすることができたんだ。」

 戦っている理由を問われたカマズさんの答えは、「ここが自分の故郷だから」というものだった。カマズさんは、ここで生まれ、息子もいる。その息子にドンバスでのウクライナによるこの戦いを続けてもらいたくない、と考えているのだ。

 「僕の国籍はギリシャだ。ウクライナ人はスラブ系だから、僕たちの兄弟に当たるし、ウクライナ人のおじいさんたちは、僕たちのおじいさんたちと肩を組んで、ナチズムやファシズムと戦ったんだ。僕たちがここにいる理由は、その戦いを終わらせるためなんだ。僕たちの子どもたちが普通の幸せな生活を送れるようにね。僕たちは未来のために戦っているんだ。」
 
 カマズさんは米国が戦争をずっと持続させる必要についても語ってくれた。

 「シリアでもユーゴスラビアでも目にしてきたことさ。米国がすべてを破壊して、そのあとで米国の都合の良いやりかたで再建する。だから現地の人々は受け入れるしかなくなるんだ、まるで奴隷のようにね。」

 ウクライナとロシアの間で平和が構築できるかどうかについて、聞いてみた。

 「できると思うよ、たぶんね。なぜ無理だというんだい。でも今のところは、ウクライナの大統領は、ロシアとは交渉しないって言ってる。」

 「交渉はできると思うよ。でも、今の大統領じゃだめだね。ゼレンスキーが我に返ったとしても、交渉はできないだろうよ。だってゼレンスキーはたくさんお金をもらってるんだから。」

 前哨基地を出る前に、私たちはこれらの司令官と少し話を交わしていた。一匹の子犬が若い兵士の気を引いた。もう一匹の子犬が、私たちの足元に駆け寄ってきた。前哨基地にいる司令官や兵士たちが、飼っていた犬たちだ。犬たちがいることで、現場に少し現実離れした空気が流れた。常に砲撃にさらされている前哨基地。いつ命が奪われてもおかしくないところだ。そんなところで、可愛がられて、幸せそうな子犬たちが駆け回っている。平和な場所にいる犬たちと同じように。


西側メディアは真実をゆがめ、ナチを称賛し、自分の故郷を守る者たちを悪魔化している

 西側の多くの人々は、この紛争は2022年2月に始まったと考えている。しかし、実際この紛争が始まったのは、2014年のことだ。マイダンでのクーデターに始まり、オデッサでの大虐殺事件、国民の意図に反したウクライナでのファシズムの台頭と続いたこれらの動きから、ドンバス共和国が、ウクライナのナチやファシズムから距離を取りたいと考えたのは明らかだ。

 ドンバス共和国の人々が払ってきた犠牲、特に自分の家族や愛する人たちを守ろうと戦ってきた人たちの犠牲は、過去も今も計り知れないままだ。

 シリアのアラブ軍の英雄たちが悪口を言われていたのとまったく同じように、ドンバス軍の人々も西側メディアからずっと悪口を言われ続けてきた。両者とも、自分の故郷を西側が育て、資金援助してきたテロリストたちから守っているというのに。テロリストたちはドンバスの市民たちに、終わることのない悪行非道を行う自由を与えられているのだ。

 自らの故郷を守ろうというこれらの兵士たちの多くは、じめじめした塹壕の中での生活を強いられているが、これらの兵士たちが戦争を選んだわけではない。仕掛けられた戦争に対応し、愛する者たちや自分たちの未来を守ろうとしただけだ。ウクライナにより仕掛けられた8年間以上の戦争が続いてきたにもかかわらず、ドンバス側の兵士たちは人間性を失ってはいない。
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少なくとも200万人のウクライナ人が冬に移住することになる、とWHO

<記事原文 寺島先生推薦>

At least two million Ukrainians will migrate in winter – WHO
The ongoing conflict is also taking a heavy mental health toll on citizens, a senior WHO official says

現在進行中の紛争は、ウクライナの市民たちの精神健康面にも害を与えている、とWHOの高官は語る。

出典:RT

2022年11月21日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月27日



ウクライナのキエフ市内で雪が降る中マイダン広場を歩いている人々。2022年11月19日撮影©  Getty Images / Jeff J Mitchell


 この冬は、ウクライナの「何百万もの人々」にとって「命の危険に晒される」冬になるかもしれない、と世界保健機関(以降WHO)のハンス・クルーゲ欧州地域部長は警告している。300万人ものウクライナ国民が、「暖と安全」を求めて、国外に逃れる可能性がある、とクルーゲ氏は、月曜日(11月21日)に、キエフでの記者会見で語った。

 「私たちは、2~3百万以上の人々が家を出て、暖と安全を求めるのでは、と考えています。そしてこのような国外に逃れようとする人々は、特異な健康問題に直面することになるでしょう。例えば新型コロナや、肺炎、インフルエンザなどのような呼吸器系の感染症です。ジフテリアに感染する危険も高いです。ワクチンを打っていなければ、麻疹にかかる危険もあります」とクルーゲ氏は述べた。

 クルーゲ氏はさらに、ウクライナ国内の自宅に残る人々も、「暖を取る別の方法」を選ばざるを得なくなるが、「炭や木材を燃やしたり、ディーゼル(軽油)燃料や電気ヒーターを使う」場合は、健康に害を与える危険がある、と語った。


関連記事:Harsh winter’ ahead for Ukraine – Pentagon chief

 これらの燃料や機器を使う危険性には、「子どもやお年寄りや呼吸器や心臓に疾患のある人々にとって有害な毒物に曝される危険や、さらには事故によるやけどや負傷が起きる危険もある」と、同氏は語った。

 現在進行中の紛争により、ウクライナ国民の精神健康面にも大きな害が出ている、とクルーゲ氏は述べた。1000万人ほどの国民が、既に「激しいストレス、 不安、うつ、薬物使用、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神異常の危険に晒されています」とクルーゲ氏は述べた。

  国連の最新の調査によると、今年2月下旬にモスクワ当局とキエフ当局間で始まった紛争の間に、780万人以上の人々がウクライナから欧州に出国しているという。そのうち470万人ほど欧州内の一時的保護指令や、それと同じような国家による保護の枠組みの中で支援を受けているという。また難民のかなり多くは、ロシアに出国していて、ロシアへの難民は280万人以上になるという。
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電力会社の幹部がウクライナ国民に国外移住を要請

<記事原文 寺島先生推薦>

Power boss urges Ukrainians to leave the country
Moving abroad for “another three or four months” would help the energy system amid Russian attacks, DTEK CEO Maksim Timchenko says

「この先、3~4ヶ月」外国に移住してくれれば、ロシアによる攻撃が続く中、エネルギー体系維持の助けになる、とDTEK社のマクシム・ティムシェンコ代表取締役は語る。

出典:RT

2022年11月20日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月27日


車のヘッドライトが写し出す暗い通りを歩く通行人。2022年11月17日。停電中のウクライナのキエフにて © Getty Images / SOPA Images / LightRocket / Sergei Chuzavkov

 ウクライナ国民が、自国を離れることで、ロシアにより被害を受けたウクライナ国内の電力網の負担を減らすことを考えるべきだ、とウクライナ最大の民間電力会社のDTEKホールディング社の最高幹部であるマクシム・ティムシェンコ氏が語った。同氏がこの発言を行ったのは、BBCが土曜日(11月19日)に放映した番組内のインタビューの中でのことだった。

 「この先の3~4ヶ月間、どこか別の場所が見つかってそこで暮らせるのならば、電力体系にとっては助かります」とティムシェンコ氏は述べた。

 同氏はさらに、ウクライナ国民に電気の使用量を減らすことを求め、その結果生まれた余剰分を、必要不可欠な生活基盤施設や病院に回す必要がある、と説明した。ここ数週間、ウクライナのエネルギー体系はロシア軍により何度も標的にされ、 計画停電や非常停電が発生している。

「電気消費を減らせば、負傷した兵士たちがいる病院の電力が賄えます。つまり電気消費量を減らしたり、国外に移住することで、他の人々に貢献できる、ということです」とティムシェンコ氏は語った。


関連記事: ‘Harsh winter’ ahead for Ukraine – Pentagon chief

 この発言は、一般の人々には明らかな警告に聞こえたようだ。エネルギー省はこの件に介入し、国民に対して、電力供給状況は、当局の統制下にあり、国外移住する必要はない、と明言した。

 「私たちは、SNSなどのオンライン上で生じている混乱を引き起こすような投稿を否定します。今のエネルギー供給は困難な状況にはありますが、当局の統制下にあることを保証します」とエネルギー省は声明を出している。

 DTEK社も代表取締役が行った発言の影響を抑えようとしていた。 同社は、ティムシェンコ氏が国民に国外移住を求めた事実はなかったとし、BBCが同氏に行ったインタビューの一部を切り取って発表し、自社の主張の正しさを示そうとした。

 「すぐに国外移住しなければならないような緊急事態ではありません。私たちは、今こそ冷静に行動すべきです。私たちはみな、エネルギーの前線で戦っている兵士なのですから」とは、DTEK社が出した、ティムシェンコ氏によるインタビューからの抜粋箇所だ。

 ロシア軍がウクライナ国内のエネルギー基盤施設を標的にし始めたのは10月上旬のことで、それはクリミア橋が、死者を出したトラック爆破事故により損害を受けた事件を受けてのことだった。モスクワ当局は、この事件をキエフ当局によるものだとし、この事件は、ウクライナがこれまで行ってきた、ロシアの生活基盤施設に損害を与えようとした企みの中で、最新のものに過ぎない、と主張している。
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「ドンバス殺しを止めてください」という動画により、ウクライナ軍の犯罪が、世界の注目を集めている

<記事原文 寺島先生推薦>
#StopKillingDonbass Draws the World’s Attention to the Crimes of the Ukrainian Army

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年11月20日

 <記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月28日



#StopKillingDonbass Day to once again draw world’s attention to endless shelling of peaceful Donbass citizens by Ukrainian army & neo-Nazis
Held Everywhere: November 19, 2022


以下の動画、あるいは一部を拡散して、人々の注意を引いていただきたいのです。2014年以来続いている、ドンバスの市民たちの日々の苦境を伝えて欲しいのです。そして西側が止むことのないかのように広め続けている、喧伝(けんでん)や嘘を払拭していただきたいのです。














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米国はウクライナへの武器提供が枯渇(CNNの報道)

<記事原文 寺島先生推薦>

US running low on arms to give to Ukraine – CNN

The Pentagon is reportedly concerned about its stockpiles of artillery shells, as well as air defense and anti-tank missiles

報道によると、国防総省は、砲弾や防空ミサイル、対戦車ミサイルの備蓄を懸念しているという。

出典:RT

2022年11月18日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月27日



2022年10月11日、英国内での5週間の戦闘訓練期間中に、ジャベリン対戦車兵器を手にするウクライナの補充兵©  Daniel LEAL / AFP


 米国政府内で、ロシアと紛争中のウクライナに、最先端の武器と砲弾を供給し続けられなくなるという懸念が広がっている、とCNNは木曜日(11月17日)に報じた。CNNがインタビューした3名の米当局関係者の話によると、米国がウクライナへの支援に関して直面している問題の中には、武器の備蓄の「減少」していることや、防衛関連業者が国からの要求に応じられない状況がある、という。1人の当局関係者がCNNの取材で語ったところによると、ワシントン当局がキエフ当局に送ることができる余剰備蓄には、「限りがある」とのことだ。

 ワシントン当局が特に懸念しているのは、使用可能な155ミリ砲弾とスティンガー防空ミサイル備蓄である、とCNNは報じている。さらに、武器の生産について懸念している当局者もいる。具体的には、HARMs対レーダーミサイル、GMLRS(誘導型多連装ロケット発射システム)の地対地ミサイル、ジャベリン対戦車システムといった武器だ。

 ただし、CNNの情報筋が断言した内容によると、備蓄の減少により、米国の安全保障が低下することはない、ということだ。それは、ウクライナには、国防総省が不測の事態に備えて米国が保管している武器とは別のものを供給しているからだ。さらに一人の高官はCNNの取材に答え、米国は武器が「枯渇している」と考えるのは主観的な捉え方だとも言っている。そしてそれは、武器が枯渇しているかどうかは、国防総省がどのくらいの危険に対して準備しているかにより決まるからだ、とのことだ。


関連記事: Ukraine asks US for Patriot missiles

 主要な懸念のひとつは、米国の防衛産業が、政府からの要請に応えることに苦労していることだ。いっぽう、欧州各国は、ウクライナに軍事関連機器を送ったために生じた、自国の備蓄武器の不足の補填を完全には成し遂げられていない、と複数の当局関係者は語っている。ただし、状況の改善のために、米国は特定の種類の武器の生産の増加につとめている、とのことだ。

 今年の2月下旬にウクライナでのロシアの特殊軍事作戦が開始されて以来、米国と米国の西側同盟諸国は、軍事安全保障支援として、キエフ当局の何十億ドル相当の武器を供給してきた。いっぽうモスクワ当局は、そのような武器の供給は、紛争を長引かせることにしかならない、と繰り返し主張してきた。

 米国国防総省によると、11月初旬時点で、ワシントン当局は、キエフ当局に1400機以上のスティンガー・ミサイルと、8500機のジャベリン・ミサイル、142機の155ミリ榴弾砲、90万3千発の銃弾を供給しているとのことだ。

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米国は同盟国にポーランドのミサイル事故について警告―ポリティコ社の報道

<記事原文 寺島先生推薦>
US warns allies over Poland missile incident – Politico

Officials in Europe were reportedly told to refrain from definitive statements until an investigation is complete

報道によると、欧州の各国政府は、捜査が完了するまでは、明確な声明を出さないよう指示を受けたという。

出典:RT

2022年11月18日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月27日



2022年11月16日、ポーランドのプシェボドフ村でのミサイル着弾の現場に到着した警察の車両 © AP Photo / Evgeniy Maloletka

 東欧での緊張が高まる中、報道によると、米国当局は同盟諸国に早まった行為を取らないよう求めた。それは今週起こった、ポーランドでのミサイル着弾による死亡事件に関する発言の中でのことだった。これは、ニュースメディアのポリティコ社の報道によるもので、その報道はさらに、同じ伝令がウクライナ政府にも伝えられたと報じていた。

 ポリティコ社がインタビューを行った西側の3名の政府関係者の話によると、ここ数日間、米国が欧州内の同盟諸国、及びウクライナのヴォロデミル・ゼレンスキー大統領府に依頼したのは、このミサイル着弾の原因について話すときは、注意すべきである、という点だった。

 報道によると、さらに米国当局は、緊急の電話を各国政府に入れ、その電話では、米国のNATO同盟諸国に、事件の捜査が実行されるまでは、明確な声明を出さないように求めていた、ということだ。

 米国によるこのような努力がなされたのは、西側各国政府やウクライナ当局が、ウクライナ国境近くにある、ポーランドのプシェボドフ村での爆発事件の責任者は誰であるかについて、論議が重ねられていた中でのことだ。なおこの事件では、2名の方が亡くなっている。西側各国政府当局は、この爆発はおそらく、ウクライナのミサイルによるものだと見ているが、キエフ当局は、ミサイルの出所はロシアである、と主張している。


関連記事: Zelensky aide brushes off fake missile claims

 ポリティコ社によると、これらの声明は、今年2月に、ロシアが近隣国のウクライナに対して起こした軍事行動が起こって以来、「ワシントン当局とキエフ当局の間で、初めて大きな意見の相違がみられた事例だ」という。米国当局は、この亀裂を大きくしないよう努力しているが、ワシントン当局とキエフ当局の間で新たに起こったこの亀裂は、意見の相違が続くならば、表面化する可能性がある、とポリティコ社は報じている。

 元国務相職員のヘザー・コンリー氏によると、ポーランドのミサイル事件にかかわる「混乱」は、米国とNATOとウクライナにとっての、「重要な試金石」になるとのことだ。「私の考えでは、私たちはこの件で非常に貴重なことを学べたと思います。この事件の真相がわかるまでは、何かを表明すべきではありません。というのも、今は非常に危険度が高いからです」と、同氏はポリティコ社の取材に答えている。

 火曜日(11月15日)の着弾事件を受け、ゼレンスキーは、その責めをロシアに帰し、この事件は、「非常に重要な状況の激化だ」と語り、この攻撃はNATOに対する攻撃だとし、反撃を求めていた。ただし、その後、同大統領は主張を弱め、この事件の真相については、「100%わかっているわけではない」と認めた。

 ロシア国防相は、この事件に関する関与を完全に否定し、ロシアの軍専門家現場の写真を分析したところ、ミサイルの破片は、ウクライナが使用したS-300防空システムの一部であると断定した、と述べた。

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ルーラ氏の勝利は、ブラジルにとってはいいことだが、革命と呼べるには程遠い。

<記事原文 寺島先生推薦>

Lula’s victory is good for Brazil, but far from a revolution
The veteran leftist is back in power after a narrow win, but his power to bring change is very limited

経験豊富な左翼政治家が、辛勝で政権に復帰したが、ルーラ氏がもつ変化を引き起こす力は非常に限られたものだ。

筆者:ブラッドリー・ブランケンシップ(Bradley Blankenship)

出典:RT

2022年11月1日

Bradley Blankenship is an American journalist, columnist and political commentator. He has a syndicated column at CGTN and is a freelance reporter for international news agencies including Xinhua News Agency. 

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月25日


 選挙管理委員会が、現職のジャイール・ボルソナロ大統領を破り、次期大統領に選出されたことを報告したことを祝福しているブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ元大統領。ブラジルのサンパウロにて。2022年10月30日撮影。©  AP Photo/Andre Penner

 ブラジルの大統領選の結果が届いたが、その結果は世界各国方大きな注目を浴びた。略称であるルーラという名前で知られているルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ氏が、得票率50.9%を獲得し、得票率が49.1%だった現職のジャイール・ボルソナロ大統領を破り、選挙戦を制した。この結果は、事前に行われていた世論調査による見通しの通りだった。私が当RTにこの話題について書いた最新の記事で引き合いにだした私の親友は、ありがたいことに、今回は涙にくれることはなく、電話で歓喜あふれる声で話してくれた。 
 
 その理由は、いま私がかいつまんで書いた通り、ルーラ氏が勝利したことが、ブラジルにとって大きな前進になるからだ。この勝利により、貧富格差は縮まり、南アメリカのこの国が、世界の飢餓国から抜け出せる一撃になり、国民に対する社会福祉が拡大し、ブラジルは世界の地政学上重要な地位を占めるというふさわしい姿に戻れる可能性がでてきたからだ。さらに期待されることは、ブラジルの自然、つまりアマゾンの熱帯雨林が保護されることにもつながる可能性がでてきたのだ。よく「地球の肺」と称され、酸素を大気中に送り出し、炭素を吐き出す役割を果たしているそのアマゾンが、守られる可能性が出てきたのだ。

 数週間前に書いた記事で示した通り、ルーラ氏の勝利は、ラテンアメリカや世界にとって非常に重大な意味がある。というのも、ボルソナロ氏は、ヤンキー(米)帝国の走狗として働き、ブラジルは、ラテンアメリカにおいて、ベネズエラの弱体化や、いわゆる「薬物との戦い」の拡張などの役目を果たしてきたからだ。ルーラ氏の勝利により、南アメリカ大陸は中国との事業を増やし、たとえばブラジルが、中国主導の一帯一路構想(BRI)に参加することもあるかもしれない。


関連記事:Lula defeats Bolsonaro in Brazilian election

 もしあなたが私と同様に、多極化主義や人類の平和的な発展や、世界の安定に価値を置く人であったとすれば、ルーラ氏の勝利を喜ぶことに十分な理由を持てるだろう。しかし、過剰な期待をすることはやめ、現状に対する現実的な視点を持ち続け、ルーラ氏が大統領としてできることには限界があることを悟るべきだ。私の友人で元同僚にカミラ・エスカランテという、現在プレスTVのラテンアメリカ特派員をしている人がいる。カミラが大統領選の結果が出る前に、こんなかなり正確な書き方をしていた。「ブラジルでは、社会主義は選挙の争点にはならない」と。

 カミラの見立てを言い換えると、ブラジル国民は自国の社会階級秩序を抜本的に改革することは望んでいないし、 そのような政策を掲げた勢力には、票を投じることさえない、ということだ。 カミラが書いていたように、「帝国主義」という言葉は今回の大統領選の選挙運動期間中、使われることすらなかったのだ。そして国民は、社会階級秩序の抜本的な見直しは求めていないし、ラテンアメリカ全体から見ても、各国国民はそんなことは求めていないのだ。社会階級秩序の改革といった呼び掛けがなされることは、本当にない。 ラテンアメリカ地域の、ブラジルでも、その他の国々でも、4カ国(キューバ、ベネズエラ、ボリビア、ニカラグア)以外は、そのような改革が行われることはないだろう。

 カミラによると、選挙結果の数値が示している通り、ルーラ氏を支持しても、さらに進んで労働者党(PT)まで支持する人は多くない。つまりルーラ氏が勝利するのに必要だったのは、「左翼」や「右翼」という伝統的な分け方で自身の政治的志向を決めていない人々と繋がることだった、ということだ。そしてそのような考え方は、ルーラ氏が選挙運動をするにあたり、いくつかの論点に影響を与えていた。その一例が中絶問題だ。 この件に関して、ルーラ氏はカトリック教会に申し入れを行った一方で、根っからの左派に対してはこう伝えていた。「キューバのように規制された社会は誰も求めていない」と。

 もちろん、左翼の同好会から離れたところに位置する大多数の大衆から受け入れられていると考えていない人もいるだろうが、そうであれば米国ジョー・バイデン大統領が、ルーラ氏の勝利に対して即座に祝辞を送った事実を思い起こしてほしい。このような事実を受け流すことは容易いことだし、そんなことはよくあることかもしれないが、 重要だったのは、バイデン大統領が祝辞を送るまで、つまりルーラ氏の勝利を正当化するまでにかかった時間の速さだった。 なぜ重要かというと、報道によれば、ボルソーナロ側が、不正選挙があるかもしれないという話の種をまいていたからだ。このボルソーナロ現大統領がとった作戦は、ドナルド・トランプ前米大統領が行った、2021年1月6日に国会議事堂で起こった暴動に繋がる作戦を彷彿とさせるものだった。

 なぜか今回のブラジルでの大統領選では、これまでよく目にしてきた現実とは違うことが起こっていた。これまでのように、米国や、CIAなどの米国関連の諜報機関が、ラテンアメリカの1国において右派のクーデター勢力に資金を出そうとはしていない。実際、ホワイトハウスの反応は、その真逆のようだ。米国は、もし何かがあるのであれば、その何かが起こる可能性があるだけでも、その兆しを阻止しようとするのに、今回は180度手のひらを返したかのようだ。以前ルーラ氏が、でっち上げの汚職容疑で投獄され、ルーラ氏の同士であったジルマ・ルセフ氏が大統領職から追放されたことが、米国の関与による明らかな「穏健なクーデター」だとされたのとは大違いだ。


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 米国はなぜ、ルーラ政権に敵対することから、表向きではあるが同政権を支持するようになったのか、という疑問が浮かぶだろう。その1つ目の答えは、既に述べた通り。ルーラ氏は、ブラジル社会を革命的に変革させるような選挙運動を展開してこなかったことだ。さらにルーラ氏は、米帝国に楯突くような姿勢も見せていなかった。ルーラ氏は、あまり過激な立場はとれない。というのも、副大統領候補が中道左派勢力から出ているからだ。

 2つ目の答えは、ルーラ氏が多くの得票を得られたのは、ルーラ氏が中道派の人々と面会したからだ。とはいえ、これらの人々は、ルーラ氏を支持はしても、労働者党には投票しなかった。つまり、ルーラ氏が立法上できることは非常に限られたものになる、ということだ。それは、ボルソナロ氏のリベラル党(PL)が、ブラジル国会における最大党派であり、またリベラル党からは、ブラジル国内の主要な州の知事を出し、国民からの広い支持を集めているからだ

  ボルソナロ支持層は、明らかに今回の大統領選の結果以上に幅広いということだ。

 であるので、ワシントン当局からすれば、これでいいのだ。ワシントン当局は、南アメリカで最も大きい国ブラジルの国情が混乱し、 米国国境まで移民が押し寄せる状況を望むだろうか?それとも、以前の敵が選挙に勝ち、政権を取ったとしても、以前よりも丸くなっている状況に満足するだろうか?後者の方が都合がいいのは明らかだ。もちろんルーラ氏の勝利がブラジルにとって前進の一歩であるとは事実だ。しかし、その一歩は、本当にごく限られた一歩だ。
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英米は中央アジアで秘密の生物学的研究を継続中

<記事原文 寺島先生推薦>

The United States and Britain continue secret biological research in Central Asia.

英米は中央アジアで秘密の生物学的研究を継続している。

筆者:ウラジミール・プラトフ(Vladimir Platov)

出典:New Eastern Outlook

2022年10月19日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月24日



 ソ連崩壊後、米国の秘密生物学研究所における軍事研究について多くの出版物があり、その活動を厳格な国際管理下に置くよう様々な要求はあるが、残念ながらこの問題における状況の質的向上は見られない。したがって、先日の第22回SCO(上海協力機構)首脳会議において、中国の国家主席が「生物兵器などの非軍事武器に対する安全保障領域における課題に効果的に対応する」必要性について、ことさらSCO加盟国の注意を喚起したことは驚くには当たらない。2022年のサマルカンド宣言の一環として、SCO諸国は生物兵器禁止条約を厳格に遵守し、効果的な検証の仕組みを提供する同条約の議定書を採択するよう促された。

 ロシアがウクライナの非ナチ化作戦を開始し、同時に、米国の秘密生物研究所での違法な生物兵器開発活動を暴露した後、米国防総省はウクライナで完成しなかった計画をできるだけ早く旧ソビエト地域の他の国々に移そうと考えた。特に、中央アジア(CA)と東欧の国々の領土に関連する地域だ。

 最近、ロシア・トゥデイ(RT)のジャーナリストたちは、米国がキルギスタンの生物研究所で致死性の炭疽菌を研究することを決定したことを突き止めた。この関連で、米国保健福祉省はこの作業に資金を提供し、この目的のために約25万ドルを割り当てることを計画している。米国政府の調達ポータルサイトに公表された入札によると、キルギスタン共和国南部のオシュ市にある地域病院がこの試験の拠点となる予定。同時に、RTは、キルギスタンと米国が、カザフスタン共和国における米国の生物学的研究所の分野で、両国間の新しい協定を交渉していることを思い起こさせた。しかし、(交渉の結果)将来この文書にどんな意味合いや論点が込められるのかに関しては、国民には隠されている。

 この点に関して非常に不穏な情報が最近ウズベキスタンからもたらされた。テレグラム・チャンネルによると、同国に強力な軍事・生物集団を作るために米国の代表が積極的に動いていることが確認されたのだ。特に、米国国際開発庁(USAID)と米国国防脅威削減局(DTRA)の側で、近年ウズベキスタンでの「仕事」が増えていることがそれを物語っている。この問題に関して、本誌はウズベキスタンにおける米国の軍事生物学的活動に関する解説画像を作成した。それはホワイトハウスの主要な政治的敵対者である中央アジア諸国、ロシア連邦、そして中国の安全保障に損害を与える可能性を明確に示したものだ。

 また、米国と英国は、アルマトイにあるカザフスタン中央参考実験室(CRL)で共同研究を続けているという情報もある。2022年初頭、英国は英国の海運会社WN Shippingを通じて、多くのウイルス株のサンプル、実験装置、診断機器などを2022年上半期に出荷している。

 カザフスタンのアルマトイにあるCRLは国防総省の資金で建設され、この施設の敷地内には特に危険な感染性物質の保管場所があり、ペスト、コレラ、人獣共通感染症細菌、そして自然ウイルス病巣感染症の専門研究所の職員によって検査されており、生物学的な危険度は第3レベルである。カザフスタンの公式情報によると、CRLでは米軍の専門家(生物学者、ウイルス学者)は働いていないとされており、2020年1月1日現在、カザフスタンの予算のみで全額が賄われ、所有されている。しかし、実際には、この施設は米国から直接資金提供を受けていないとはいえ、米国の助成金制度を通じて、つまり、国防総省のある計画のもと、米国の利益のために研究が行われているのである。そして、この「協力」は、どうやら、今も停止しているわけではない。

 このことが特に裏付けられるのは、2021年11月5日、カザフスタン産業・インフラ開発省が、とある公開討論の取り組みを開始していたという事実だ。その公開討論の中身は、BSL-4(Biosafety Level 4)の実験室を建築する件についてだった。その実験室では、特に危険な菌株を扱い、地下貯蔵施設も設置されることになっていた。その地下貯蔵施設は、非常に危険なウイルス株の収集のために利用されることになっていた。そしてその実験室は、ジャンビル地域のグバルジェイスキー村に、2025年に建築されることになっていた。この実験室の生物学的安全基準が、BSL-4(Biosafety Level 4)にあるという事実だけでも、この施設が研究対象のウイルスの、人と社会に対する危険度が高いことを示している。つまり、そのウイルスの大半は、取り扱うことが土台無理なウイルスなのだ。

 この計画に対して、キルギス国民はすでに非常に批判的な反応を示している。米国大使館の前には抗議者が集まり、研究所がキルギスタンとの国境近く、ビシュケクからわずか90キロのところに建設されることに憤慨しているのだ。キルギスの専門家たちは、国際生物学研究統制協会とともに、この夏、カザフスタンのカシム・ジョマルト・トカエフ大統領に書簡を送り、国境地帯での生物学研究所の建設を中止するよう要請した。

 明らかに、ワシントンは中央アジアの国々を軍事的な生物学的研究の実験場として確保しておきたい、と強く望んでいる。それゆえ、アメリカはウズベキスタン、キルギスタン、カザフスタン、そしてタジキスタンで同様の計画を展開しようと努力しているのである。同時にワシントンは、タシケント(ウズベキスタン)とアルマアタ(カザフスタン)への関心を高めている。この2カ国は、他の中央アジア諸国と比較してインフラが整備され、有能な人材も多いからである。また、ウズベキスタンに対する米国の関心が高まっているのは、同国がCSTO*に加盟していないため、ワシントンがより自由に行動できるからだ。
CSTO*・・・集団安全保障条約は、1992年5月15日に旧ソビエト連邦の構成共和国6か国が調印した集団安全保障および集団的自衛権に関する軍事同盟である。3か国の新規加盟、3か国の条約延長拒否を経て、2022年時点でロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの6か国が加盟している。(ウィキペディア)

Vladimir Platov, an expert on the Middle East, exclusively for the online journal “New Eastern Outlook”.

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米国の主要二郡で投票機の不具合があったとの報道

<記事原文 寺島先生推薦>

 Two major US counties report voting machine problems

State capital regions in Arizona and New Jersey had “technical issues” on midterm election day

アリゾナ州とニュージャージー州の州都を含む郡で、中間選挙投票日に「技術的な問題」が発生

出典:RT

2022年11月8日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月21日


アリゾナ州フェニックス市内のビルトモア・ファッション・パークで、投票を待っている有権者たち。
2022年11月8日撮影©  Kevin Dietsch / GETTY IMAGES NORTH AMERICA / Getty Images via AFP

 11月8日(火)、アリゾナ州とニュージャージー州の州都を持つ2つの郡で、投票機に不具合が生じたことが報じられ、主に共和党派の有権者から怒りを買っている。報道によると、アリゾナ州のマリコパ郡では、「技術的な問題」が生じたため、集計装置が作動しなくなったという。またニュージャージー州のマーサー郡では、「システムが停止した」と報じられている。両郡とも、使用されていたのはドミニオン社の機械だった。

 「マーサー郡で、郡全体規模でのシステム停止が発生し、現在郡の全地域で投票機が止まっています」と
関係役員が11月8日(火)に述べた、とABC傘下の地元メディアWPVI-TVが報じた。報道によると、マーサー郡は、「ドミニオン社と協力しながら」、この問題の解決にあたっているという。

 マーサー郡には、ニュージャージー州の州都のトレントン市がある。システムが停止になった詳しい原因については明らかにされておらず、「投票機のソフトの問題」であるとのみ報じられていた。

 アリゾナ州マーサー郡の選挙管理委員会によると、223の投票所にある集計機の約5台に1台が、投票を受け付けられなくなっており、有権者に投票用紙を提出しても、集計が遅れる旨の呼び掛けを行っていた。投票機が停止した理由は、パスワードを何度も入力したためだと、東郡選挙監視委員のビル・ゲイツ氏は語っている。 「投票権を剥奪された人は誰もいませんし、このような事態のうらに、不正などがあったわけでは全くありません。ただの技術的な問題です」とゲイツ氏は記者たちに答えていた。

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 共和党アリゾナ州支部代表のケリー・ウォード氏は、こんなにも多くの投票所がこのような事態になっていることは、「馬鹿げている」と述べた。この「技術的な問題」の影響を受けているのは、共和党に投票した有権者に偏っていることが、アリゾナ州当局が出している数値から明らかになっている。マリコパ郡の場合は、郵送で投票せずに、投票日に投票所で投票した人のうち、共和党に投票した人と民主党に投票した人の割合は、4対1だった。 

 マリコパ郡は、アリゾナ州全体の人口の62%を占め、マリコパ郡には州都であるフェニックス市もある。同郡は7月にドミニオン社から新しい投票機を注文したが、これは、同州州務長官であるケイティ・ホッブス氏が、2020年の選挙時に使われていたのと同じ投票機を使った選挙は、認定しないと発言したからだった。この発言は共和党によって行われた監査結果を受けたものだった。なおホッブス氏は、アリゾナ州知事選に民主党員として出馬中だ。

 11月8日(火)に行われた中間選挙により、米国下院全議員435議席、上院35議席、及び米国全50州のうち35州の州知事の議席が改選される。

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ルーラ・ダ・シルヴァがブラジル新大統領に当選したことは、南米全体が自立する大きな契機となっている

<記事原文 寺島先生推薦>

The Lula-López Obrador and Petro-Maduro Impact

ブラジル大統領ル-ラとメキシコの左派政治家ロペツ・オブラドール、そしてコロンビア大統領ペトロとベネズエラ大統領マドゥロの組み合わせの衝撃

筆者:エドアルド・パツ・ラダ(Eduardo Paz Rada)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年11月10日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月22日

 10月30日のルーラ・ダ・シルヴァの困難な選挙での勝利を祝ったのは、ブラジルの貧しい人々、疎外された人々、女性、労働者、インディオ、農民、学生だけではなく、北東部ペルナンブコ州出身の金属労働者で労働者党(PT)から大統領選に立候補したルーラ・ダ・シルヴァの姿に自分たちを重ねて見たラテン・アメリカとカリブの人々すべてであった。なぜなら、彼の大統領就任は、この21世紀の新しいサイクルを開くアブヤ・ヤラ*大陸の統一と解放的統合を推進するプロジェクトに希望の地平を開くからである。
アブヤ・ヤラ (Abya Yala) *・・・「成熟した土地 (land in its full maturity)」ないし「活き活きとした血の土地 (land of vital blood)」を意味するクナ語の言葉であり、ダリエン地峡(現在のコロンビア北西部からパナマ南東部にかけての地域)付近に居住するアメリカ先住民のひとつであるクナ族が、クリストファー・コロンブスの到来以からアメリカ大陸を指して用いていた表現(ウィキペディア)

 ジャイル・ボルソナロの敗北は、同時に、この地域のオリガルヒや保守的エリートたち(危機的状況にある北米とヨーロッパの帝国主義の支援を受けている)の敗北でもあった。彼らは国民の愛国的意識の高まりと、選挙に縛られない、経済、文化、社会、民族解放の民主主義となる参加型民主主義の深化の邪魔をしようと徘徊している輩だ。

 今、世界は深い経済的危機にある。その原因は、
①パンデミックの影響、
②一握りの多国籍億万長者の金融投機、
③ウクライナにおける戦争、
④列強の地政学的闘争、
⑤米国の軍事的脅威と内政干渉、だ。
そういう事態に直面して、ラテン・アメリカとカリブ海諸国の共同、自律、自立の立場を評価し、実行する戦略が唯一の選択肢として提示されている。これがあれば、ラテン・アメリカは世界の中で主人公的な立場を維持することができ、ティファナやシウダー・フアレスからパタゴニアやフォークランド諸島に至る、パトリア・グランデ(偉大な祖国)を建設するという(シモン・ボリバリを信奉する)ボリバリアンと(ホセ・デ・サン・マルティニを信奉する)サンマルティニアンの目標達成のための歴史的条件を発展させることにつながる。

 フィデル・カストロとウゴ・チャベスという二人の司令官は、一点の曇りもないやり方で、道を開いた。そしてルーラ・ダ・シルヴァ、ネストル・キルチネル、エボ・モラレス、ペペ・ムヒカ、ラファエル・コレア、ダニエル・オルテガ、そしてその他の国家元首とともに、地域統合を進めるための「我々のアメリカの人々のためのボリバリア連合(ALBA)」「南米諸国連合(ウナスール)」「中南米・カリブ諸国連合(CELAC)」とペトロカリベ*のプロジェクトについて調整した。
ペトロカリベ*・・・中米・カリブ海地域におけるエネルギー政策の調整とエネルギー産業発展のための協力機構。産油国ベネズエラのチャベス大統領の提案により2005年6月に発足した。加盟国は18カ国(カリブ海諸国のうちバルバドス、トリニダード・トバゴは加盟していない)。目的は、連帯、相互補完、団結を原則に域内諸国のエネルギー資源へのアクセスを確保することにより、社会的不公正の是正や国民生活の向上を実現するとされている。域内の後発国に対しては、石油代金の支払いのための長期・短期の融資や分割払いのほか、バーター取引なども行われる。これによって地場産業の発展を目指す。このほか、採掘、精製、輸送、貯蔵など様々な分野における地域ネットワークの形成も目指しており、そのために、ベネズエラ石油公社(PDVSA)は関連施設の建設・維持等の投資のための子会社PDVSA‐CARIBEを設立した。また、社会的不平等の是正や経済発展のための基金アルバ・カリベ(ALBA-CARIBE)も設けられた。ベネズエラのイニシアチブによる地域エネルギー協力体制としては、このほかに南米諸国によるペトロスル(PETROSUR)がある。アンデス諸国についてはペトロアンディーノ(PETORANDINO)が計画されている。(https://imidas.jp/genre/detail/D-117-0015.html)

 ルーラ・ダ・シルヴァにはほぼ10年に及ぶ挫折と政治的敗北の年月があった。クーデター、選挙での敗北、大富豪のメディアキャンペーン、フェイクニュース、ワシントンに統制された裁判所の動き、そして卑劣な裏切りの数々があった。そして現在、ルーラ・ダ・シルヴァはアルゼンチン大統領アルベルト・フェルナンデス(Alberto Fernández)と会い、アルゼンチン議会上院議員のクリスティーナ・エリザベット・フェルナンデス・デ・キルチネル(Cristina Fernández de Kirchner)の大統領選挙を推進、支援するとともに、メキシコの左派政党国家再生運動(Morena)の指導者であるアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(Andrés Manuel López Obrador)と対話し、CELACとラテンアメリカ・カリブの結束力を強化して自らの歴史のルーツを変えるものを構築していこうとしている。

 同時に、コロンビアの新大統領で、自国のリベラル派と保守派の親米右翼を打ち負かしたグスタボ・ペトロが、カラカスでボリバル・チャビスタのベネズエラ人ニコラス・マドゥロと会い、外交関係を再開してボリバリアン友愛の旗を掲げ、アンデス諸国共同体(CAN)の強化を提案した。それに伴い、南米諸国連合(UNASUR)が強力な南米プロジェクトとして回帰することが確実になる。

 メキシコ、ホンジュラス、ニカラグア、キューバ、グアテマラ、ドミニカ、セントビンセント・グレナディーン、セントルシア、アンティグア・バーブーダ、ベネズエラ、コロンビア、ペルー、ボリビア、チリ、アルゼンチンそして今回ブラジル政府が表明した、米国が支配する米国国家機構(OAS)や南北アメリカ首脳会議に対抗してCELACを強化するという約束は、(スペインからの独立に続く)第2の独立を戦い、実行する挑戦になっている。
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日本は極超音速仕様の軍備計画を立案

<記事原文 寺島先生推薦>

Japan devises hypersonic plan – media

Tokyo hopes to upgrade air defense weapons and even develop its own hypersonic missile by 2030

日本は極超音速計画を立案
日本政府は対空防衛武器を改良し、2030年までに自国製の極超音速ミサイルの開発さえ行う構え

出典:RT

2022年11月8日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月22日



軍事演習中に発射を行っている日本の03式中距離陸対空ミサイル発射機©日本陸軍自衛隊 

 日本は現行の地対空ミサイルの再設計を行い、極超音速武器に対応できるよう計画を立てている、と共同通信社が11月8日(月)のニュースで伝え、この動きは日本当局の「反撃能力」の強化をこの10年で成し遂げようとしているより広範な戦略の一部ではないか、と報じている。

 日本の自衛隊は、03式中距離ミサイルの改良を完了し、2029年までに新型の武器の大量生産ができるよう望んでいる、と共同通信は、匿名の「この件に詳しい情報筋」からの情報として報じた。

 この再整備は、日本の「包括的な対空及びミサイル防衛」を改善しようとする努力の一環であり、
今年の末までに改訂版が発表されることになっている国家安全保障戦略の中で概述されるだろう、とこの情報筋は付け加えている。


関連記事:Japan looking to buy US Tomahawk missiles – media

 三菱重工の設計・製造による、03式中距離地対空誘導弾は、陸上自衛隊に2003年に配備されたが、現在の射程距離はおよそ50キロ(31マイル)だ。しかし、極超音速武器は、音速の5倍以上の速度で飛行し、しかも不規則な弾道を描くため、03式や、同等の対空防衛体系では、そのような武器を追跡し、無力化することは困難になってきている。その情報筋が共同通信に伝えたところによると、03式は、「極超音速武器の飛行経路を予測し、レーダーでそれらの武器を検出するだけでなく、追跡もできるよう改良」されるとのことだ。ただし、そのような改良で果たして新技術に対応できるかは定かではない、とその情報筋は付け加えている。


関連記事:Japan unveils massive spending package

 9月の日本の浜田靖一防衛大臣と米国のロイド・オースティン国防長官間の会談後に、両陣営は極超音速武器についての研究を共に進めていくと発表した。それは米国側がまだ自前の極超音速武器の開発ができていない中でのことだ。

 米国同様、日本もこの極超音速武器の開発に着手し始めているようで、日経新聞の先週(11月第1週)の報道によると、日本当局は2030年までに極超音速武器の配置を求めているという。日経新聞の報道によれば、 間もなく発表される国家安全保障戦略には、日本の「抑止」能力の強化に向けた3つの主要施策が記載され、その中には、米国から米国製トマホーク巡航ミサイルなどの「実戦済み」兵器を入手することや、日本が自前で持っている武器を改良することや、新たな極超音速武器を開発にすることが、記載されることになるという。
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米国民の意識調査―大半が「米国は制御不能」「状況は悪化する」と回答

<記事原文 寺島先生推薦>

Most Americans think US is ‘out of control’ – poll
A survey finds that 73% of respondents believe things are “going badly” for the country

ほとんどの米国人が、米国は「制御不能の状態」にあると思っている―世論調査
73%の回答者が自国の状況は「悪い方向」に進んでいると考えていることが調査で判明

2022年10月31日

出典:RT

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月21日


© Getty Images / Ariel Skelley

 日曜日(10月30日)発表された世論調査によると、来月の中間選挙に向け、10人中8人近くのアメリカ人が、政府は自国の統制が取れていないと考えているようだ。

 CBS News-YouGovの調査によると、回答者の79%が現在の状況を「制御不能」と見ており、21%がそう思わないと回答した。一方、有権者の73%がアメリカの状況は「やや」または「非常に」悪いと見ており、楽観的な見方を示しているのは26%に過ぎない。

 ジョー・バイデン氏が米国大統領として行っている仕事については、56%の米国人が不支持であり、44%が肯定的な見方をしている。

 また、世論調査では有権者の優先順位が分かれていることも明らかになり、民主党支持者の63%が強い経済よりも民主主義が機能していることの方が心配だと考え、共和党支持者の70%が、経済がより緊急の関心事だと考えていることがわかった。


関連記事:米国の民主主義は破綻している―世論調査

 11月8日の中間選挙が近づく中、世論調査は共和党が下院で過半数を獲得する「良い位置」にいると結論づけ、共和党が合計228議席を獲得する一方、民主党は現在の220議席から207議席に減少すると予測している。

 共和党が勝利した場合、有権者の半数以上が共和党は、米国のエネルギー生産を増加させ、バイデンを弾劾し、中絶を禁止し、選挙での民主党の勝利を覆すと予想している。一方、民主党が下院の過半数を維持した場合、回答者は、民主党は中絶の国家的権利を保証する法案を通そうとする、メキシコとの国境を開く、警察資金を削減する、社会保障を増強する、などの行動をとると予想している。

 この調査は、与党民主党に対する不満が高まっている時期に行われた。多くの有権者が、記録的な高インフレ、ガソリン価格の高騰、不法移民、犯罪率の上昇などに対処できていないとして非難している。今月初め、ブルームバーグ社は独自の経済モデルを引用し、米国経済が今後12カ月で景気後退に入ることは100%確実だと結論づけた。

 CBS News-YouGovの世論調査は、登録有権者2,119人を対象に、10月26日から28日の間に実施された。
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NATOとロシアが一触即発の危機。ポーランドのミサイル事件は、すんでのところで核兵器による人類絶滅になるところだった。

<記事原文 寺島先生推薦>

NATO’s hair trigger: The Polish missile incident was a close brush with nuclear annihilation
The fervor with which Poland and others sought to drag NATO into a war with Russia should ring alarm bells for everyone

ポーランドなどが、しきりにNATOをロシアとの戦争に引きずり込もうとしたことには、誰もが警鐘を鳴らすべきことだ。

筆者:スコット・リッター

スコット・リッター
元米海兵隊情報将校で、「ペレストロイカ時代の軍縮」の著者。Arms Control and the End of the Soviet Union』(ペレストロイカ時代の軍縮:軍備管理とソ連の終焉)の著者。ソ連ではINF条約を実施する査察官として、湾岸戦争ではシュワルツコフ将軍の幕僚として、1991年から1998年までは国連の兵器査察官として勤務した。


出典:RT

2022年11月17日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月21日


2022年11月15日、ウクライナとの国境に近いポーランド東部のプリシュトフ村で、ミサイルが男性2人を殺害した現場の空撮写真。© Wojtek RADWANSKI, Damien SIMONART / AFP Japan

 今週(11月第3週)、NATOの一部の加盟国は、ウクライナでロシアに対抗する手段として第4条を発動しようとしたが、失敗し、世界は戦争を回避した。しかし、次回はそうはいかないかもしれない。

 ウクライナの地対空ミサイルが誤ってポーランドに着弾し、2人のポーランド人が死亡したことは、今では世界のほとんどの人が認めるところだが、この出来事は、今日のNATO東部の醜い現実を露呈している。NATOの旧体制派(米、英、仏、独)が控えめな態度をとっているにもかかわらず、東欧の新興勢力は、NATOのウクライナ介入を正当化するための方策を探して躍起になっているようだ。

 なぜなら、ポーランドとバルト三国の政府を支配するロシア恐怖症の役人たちは、ヨーロッパの戦場でNATOがロシアを倒すという幻想を追いかけながら、自分たちの運命に気づかず、ウクライナの崖に向かって走るレミングのような行動をとるからである。


<関連記事> ミサイル事件はウクライナの「挑発」だった---ポーランドの政治家

 ウクライナの地対空ミサイルがポーランドに飛来したことに伴う急ぎすぎの判断は、NATO憲章の本来は防衛的な性格が、紛争の抑止ではなく、むしろ助長に利用されることを痛感させるものだ。

 NATOは、ポーランドのプリスティフ村付近に着弾し、2人のポーランド人を死亡させたミサイルが、発射された瞬間にウクライナの地対空ミサイルであることを認識していたのである。ウクライナの上空は、世界で最も監視の厳しい場所の一つである。情報源や方法を明らかにされていなくても、ウクライナ上空で起こったことで、ポーランドを含むヨーロッパ中のNATO本部の画面に即座に記録されないものはないと言えば十分だろう。

 それなのに、ポーランドはロシア大使を呼び出して抗議を申し入れるべきだと考えた。

 さらにポーランドは、NATO条約第4条*の発動を検討しながら、軍事的な準備態勢を強化すると宣言した。第4条は、NATO発足以来NATOが戦火を交えた全ての国、具体的にはセルビア、リビア、アフガニスンへの戦闘配備を支持した条項だ。
*北大西洋条約第4条は、「締約国は、領土保全、政治的独立 安全が脅かされていると認めたときは、いつでも協議する」という内容。一方、同条約の第5条では「一又は二以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃とみなす」として、「兵力の使用を含む行動を直ちにとる」としている。

 これを受けて、ポーランドと国境を接するリトアニアのギタナス・ナウシダ大統領は、「NATOの領土は隅々まで守らねばならない!」とツイートした。

 チェコのペトル・フィアラ首相も同様にツイッターでこう絶叫した。「ポーランドがミサイル攻撃を自国領土内で受けたことが確認されれば、これはロシアによるさらなる戦争拡大である。我々はEUとNATOの同盟国をしっかりと支える」と。

 エストニアは、このニュースを「最も懸念される」とし、外相は「ポーランドや他の同盟国と緊密に協議している。エストニアはNATOの領土を隅々まで守る用意がある」とツイッターで表明した。


<関連記事> ゼレンスキー、ミサイルの主張を撤回

 NATOの第5条(集団安全保障条項)を発動する根拠がないことは、すべての当事者間で一致していたが、第4条は非常に重要な意味をもっていた。 ポーランドは断固とした態度で臨んだ。ポーランドに対するミサイル「攻撃」は、明らかに犯罪であり、罰せられないわけにはいかない。そのため、第4条のもと、ポーランドは「NATO加盟国とポーランドが、ウクライナの領土の一部を含む追加の対空防衛の提供について合意する」よう働きかけていたのである。

 そして、そこには 「ウクライナの領土の一部を含めて」、という言葉がある。

 続いて、ドイツも加わる。ドイツ国防省の報道官は、「ポーランドでの事件への即時対応として、ドイツのユーロファイター(NATOの戦闘機)も、その空域での戦闘空中哨戒作戦による航空警察強化の申し出を行う」と宣言している。

 NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、ブリュッセルでNATO大使の緊急会議を開き、ポーランドの事件について議論した。フィンランド外相(フィンランドはNATO加盟国ではないが、会議に招待された)によれば、「(ウクライナ上空の)領空閉鎖は間違いなく議論されるだろう。ウクライナをどう守るか、さまざまな選択肢が俎上にあがっている」という。

 ドイツは、ウクライナ上空に飛行禁止区域を設定することは、ロシアとNATOの直接対決の恐れがあると指摘し、拒否したと伝えられているが、そもそもなぜこのような議論がなされるようになったのか、不思議でならない。ウクライナは地対空ミサイルを発射し、それがポーランドに着弾したのをNATOが追跡した。その結果、NATO加盟国はNATO憲章第4条を発動し、NATO軍機による飛行禁止区域の設定と連動して、ウクライナ領空にNATOの防空機能を拡大する可能性を議論することになった、というのはおかしな筋道ではないのか。


<関連記事>ウクライナ側、ミサイル発射認める ポーランド爆心地付近で - CNN

 元NATO政策企画部長のファブリス・ポティエ氏は「ウクライナのロケットがポーランドに着弾した味方同士の事件であっても、ポーランドが第4条を発動する十分な根拠があると思う」と明言した。

 ポティエ氏が言っていることをはっきりさせておく。ウクライナが地対空ミサイルを発射し、それがポーランドに着弾したため、NATOは第4条の発動を正当化することで、ウクライナでのNATOとロシアの紛争を引き起こし、核兵器による世界絶滅につながる可能性があるというのである。

 NATOが全世界に脅威を与えているという説について、少しでも疑念がある人もいただろうが、そんな疑念を持つ人はこの先、全くいなくなるだろう。

 ポーランドに落ちたミサイルがウクライナ製であることは誰もが認めているにもかかわらず、その可能性を否定し、NATOの介入を期待してロシアを非難するウクライナの指導者になり代わって、この話が広められていることは、この危機の狂気性をさらに高めるだけである。

 今回、世界はNATOの第4条によって引き起こされる死刑宣告の危機を回避したように見えるが、NATOがウクライナへの軍事介入を正当化する理由を求めて、パブロフ的反応で一触即発の危機を引き起こしたことは、誰もが厳しく警戒すべきものである。

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物々交換が西側金融システムを揺るがす―イランとロシアとの連携が拓く新しい世界

<記事原文 寺島先生推薦>

Rewiring Eurasia: Mr. Patrushev Goes to Tehran

ユーラシアの再編成:パトルシェフ氏、テヘランへ行く

筆者:ペペ・エスコバル(Pepe Escobar)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年11月10日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月20日


今週(11月第2週)に行われたユーラシアの安全保障担当の2人の実力者による会談は、西側がアジアに残した大きすぎる足跡を消し去るためのさらなる一歩となるものだ。

 二人の男が、テヘランの居心地の良い部屋で、心ときめく新しい世界地図を背景にして佇んでいる。

 そこには見るべきものは何もないのか? いや、あるのだ。そこにいるのは、ユーラシアにおける安全保障の巨人、ロシアのパトルシェフ安全保障会議書記とイランのアリ・シャムハニ最高国家安全保障会議書記にほかならない。ふたりは珍しくリラックスしている。

 なぜ、これほどまでに和やかな雰囲気なのか。それは、二人の会話の主題である「ロシアとイランの戦略的友好関係」にまつわる将来の展望が、これ以上ないほど心躍るものだったからである。

 この日はきわめて重要な取引が行われた。パトルシェフの訪問はシャムハニの招きによる公式のものであった。

 パトルシェフがテヘランにいたのは、ロシアのショイグ国防相が、特殊軍事作戦の総指揮官であるセルゲイ・スロヴィキン将軍の勧告に従って、へルソンからのロシアの撤退を命じたのと全く同じ日だった。

 パトルシェフは数日前からそれを知っていた。だから、テヘランで用を足すために飛行機に乗るのは問題なかったのだ。結局のところ、へルソンのドラマは、ウクライナに関するパトルシェフと米国国家安全保障顧問のジェイク・サリバンの交渉の一部であった。その交渉は数週間前から行われていて、サウジアラビアを最終的な仲介者としていた。

 ロシアのタス通信の報道によれば、ウクライナ問題以外にも「情報の安全管理や、西側の特殊機関による両国の内政干渉への対策」についても話し合われたとのことだ。

 ご存知のように、両国は西側の情報戦と破壊工作の特別な標的であり、イランは現在、こうした外国が支援する無制限の不安定化作戦の焦点の一つとなっている。

 パトルシェフは、イランのエブラヒム・ライシ大統領に公式に迎えられ、「他国に依存しない二国間の協力は、米国とその同盟国の制裁と不安定化政策に対する最も強い反応である」と率直に述べた。

 パトルシェフは、ロシア連邦にとって、イランとの戦略的関係はロシアの国家安全保障に不可欠であるとライシ大統領に断言した。

 その断言はゼラニウム2・神風ドローン(ウクライナの戦場で大惨事を引き起こしたシャヘド136と同類のもの。イランがロシアに提供したと言われている)をはるかに超える威力がある。ちなみに、この発言はその後で、シャムハニ自身の口から次のような言葉を引き出すこととなった。「イランはウクライナ問題の平和的解決を歓迎し」「モスクワとキエフの対話に基づく平和を支持する」。

 パトルシェフとシャムハニは、もちろん安全保障問題や、おなじみの「国際舞台での協力」について話し合った。しかし、より重要なのは、ロシアの代表団にいくつかの主要な経済機関の高官が含まれていたことであろう。

 それに関する情報は公表されなかったが、これはユーラシア大陸で制裁を受けた2つの主要国家の戦略的友好関係の中核に、重要な経済的つながりが残っていることを示唆している。

 今回の協議で鍵となったのは、イランがそれぞれの国の通貨であるルーブルとリヤルによる二国間貿易の迅速な拡大に重点を置いていることである。このような二国間関係は、上海協力機構(SCO)とBRICSが多極化に向けて推進していることの中心をなすものである。イランは現在、SCOの正式メンバーであり、西アジア諸国としては唯一、このアジアの戦略的巨大組織に属していて、BRICS+の一員となることを申請する予定である。

物々交換あり、いつどこにでも参上

 パトルシェフ/シャムハニ会談は、来月、イランがガスプロム*との間で400億ドルという途方もない額のエネルギー取引に調印することを前にして行われた。
 *ロシアの半国営企業。天然ガスの生産・供給において世界最大の企業。創設は 1993年。

 イラン国営石油会社(NIOC)は、すでに65億ドルの初期契約を締結している。その内容は、2つのガス鉱床と6つの油田の開発、天然ガスと石油製品の交換、LNG計画、ガス輸送管の増設などが中心となっている。

 先月、ロシアのアレクサンドル・ノヴァク副首相が、2022年末までに終了する500万トンの原油と100億立方メートルの天然ガスの物々交換を発表した。そして、「イランの油田に対するロシアの投資額は増加する」と確約した。

 言うまでもなく、物々交換は、モスクワとテヘランが共同で、西側金融システムと連動して間断なく問題になっている制裁と支払決済の問題を回避する理想的な方法である。その上、ロシアとイランは、カスピ海を経由する直接的な貿易網に投資することができる。

 最近カザフスタンのアスタナで開催された、アジアにおける交流と信頼の醸成と措置に関する会議(CICA)の首脳会談で、ライシ大統領は、成功する「新しいアジア」は必然的に他国に依存しない自立国家が国の内部から発展するモデルを開発しなければならないと力強く提案した。

 SCO 加盟国であり、ロシア、インドと並んで国際南北輸送回廊(INSTC)においても重要な役割を果たしているイランを、ライシ大統領は多国間主義の重要な動因に位置づけている。

 イランがSCOに加盟して以来、イランとロシア・中国間の協力が加速しているのは予想通りである。パトルシェフの訪問は、その一環である。テヘランは、数十年にわたるイラン恐怖症と、制裁からカラー革命の試みに至るまでの、アメリカの「最大限の圧力」によって起こりえたあらゆる後退を乗り越えて、ユーラシア大陸と躍動的に結びつこうとしている。

BRI、SCO、INSTC *
*一帯一路構想、上海協力機構、国際南北輸送回廊

 イランは、ユーラシア大陸を道路、海、鉄道で結ぶ中国の壮大な生活基盤建設計画である一帯一路構想(BRI)の重要な同士である。同時に、ロシア主導の国際南北輸送回廊(INSTC)は、インド亜大陸と中央アジアの貿易を促進し、南コーカサスとカスピ海地域におけるロシアの存在感を高めるために不可欠である。

 イランとインドは、イランのチャバハル港の一部を中央アジア諸国に提供し、排他的経済水域に入れるように便宜を図ることを約束している。

 サマルカンドで開催された上海協力機構(SCO)首脳会議では、ロシアと中国は、特に西側諸国に対して、イランを国際的孤立国家と扱うつもりはもうないことを明確に表明した。

 したがって、イランが、SCOのすべての加盟国と新しいビジネス時代に突入しているのは不思議ではない。主にロシア、中国、インドによって設計されている新興金融秩序の兆候の下で新時代は始まっているのだ。戦略的友好関係という点では、ロシアとインド(ナレンドラ・モディ大統領はこれを「切れ目のない友情」と呼んだ)の結びつきは、ロシアと中国の結びつきに匹敵するほど強力である。そして、ロシアに関して、イランが狙っているのはそこである。

 パトルシェフ/シャムハニ戦略会談は、西側の苛立ちを未曾有の規模にまで跳ね上げるだろう―イラン恐怖症とロシア嫌悪症を一挙に完全に粉砕するのだから。イランは、ロシアが多極化を進めるうえで、緊密な同盟国として比類のない戦略的資産なのだ。

 イランとユーラシア経済連合(EAEU)は、ロシアの石油をめぐる物々交換と並行して、すでに自由貿易協定(FTA)の交渉を行っている。西側がSWIFTという銀行間通信制度に依存することは、ロシアとイランにとってほとんど何の意味もない。南半球は、特に石油が米ドルで取引されているイランの近隣諸国を中心に、この動きを注視している。

 西側で常温*以上のIQを持つ人間であれば、結局、共同包括行動計画(JCPOA、イラン核合意)は、もうどうでもいいということが明らかになりつつある。イランの未来は、BRICSのうち3つの国の成功に直結している。ロシア、中国、インドである。イラン自身も近いうちにBRICS+の一員になるかもしれない。
 *この場合は華氏で、常温(人間の体温)は100度。

 それだけではない。イランはペルシャ湾地域の模範となりつつある。この先、SCO加盟を目指す地域諸国の長い行列を目の当たりにすることが 。トランプ大統領の「アブラハム合意」*? 何それ? BRICS/SCO/BRIこそは、現在の西アジアで進むべき唯一の道なのだ。
 *2020年8月にアラブ首長国連邦(UAE)とイスラエルとの間で締結された外交合意。トランプ米大統領が仲介した。UAEは、エジプト、ヨルダンに次いでイスラエルと国交正常化したアラブ世界で3番目の国となった。背景には、パレスチナの孤立化、反米政策をとるイランへの対策という米国の思惑がある。
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「キューバ危機」から60年

<記事原文 寺島先生推薦>

60 years since the Cuban Missile Crisis: How cool heads prevented a Soviet-US naval encounter sparking a nuclear war

キューバミサイル危機から60年:冷静な頭脳が、核戦争の口火となる米ソ海軍衝突を防いだ経過
世界が危険なほど核ハルマゲドンに近づいた時

筆者:フェリックス・リヴシッツ(Felix Livshitz)

出典:RT

2022年10月12日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月19日


© RT

 今年の10月は、「海中」版キューバ危機から60年目にあたる。これは、数週間後、モスクワとワシントンの間で悪名高い膠着状態を引き起こし、同様に世界を核破壊の瀬戸際に追いやった異常なエピソードである。ウクライナ紛争でクレムリンが核兵器の使用を準備しているという西側の逆上的な非難があり、クレムリン側からは、それに対して気迫を込めて否定する動きがある現在、「キューバ危機」を見直すことが、今ほど重要になったことはない。


高まる緊張
 1962年10月1日、核魚雷を搭載したソ連の潜水艦4隻が、キューバへ向けてバレンツ海のコラ湾を出港した。この小艦隊は、キューバとその周辺に存在する広大なソ連軍を秘密裏に強化し、CIAの「ピッグス湾作戦」(アメリカの支援を受けた反乱勢力がハバナを急襲し、国民に人気のあったフィデル・カストロ共産党政権を転覆させようとした事件)の後、キューバ政府が(モスクワに)要求した防衛ミサイル基地の建設を保護することを目的としていた。


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 潜水艦B-59の副艦長であったヴァシリー・アルキポフ(Vasily Arkhipov)の私的な記録(「キューバ危機」を記念して米国国家安全保障アーカイブが今回初めて公開したもの)によると、移動中の天候は、長時間にわたる潜航が「全般的に外部に知られなくしてくれるようなものだった」。つまり「荒天、低雲、低視界、突風降雪、雨」だったという。

 潜航途中、この小艦隊は「対潜水艦航空機の測位局の活動が、短時間間隔で活発になっている」ことを発見した。しかし、10月18日、ソ連情報部が「フランスのラジオ局からの、ソ連の潜水艦が大西洋に入り、アメリカの海岸に移動しているという通信を傍受」するまで、ソ連の潜水艦秘密小艦隊が外部に気づかれることはなかった。

 「アメリカがどうやって潜水艦小艦隊を発見したのかはよくわかりません・・・しかし、航空機のレーダーで発見されたのではないということは、確信を持って言えます」とアルキポフは主張する。

 その4日後、アメリカのケネディ大統領はキューバ封鎖を発表し、多数のアメリカ海軍の艦船と航空機をキューバ沿岸と大西洋近くに配備し、この地域に接近する外国の潜水艦は識別のために浮上せよとの明確な命令を出した。アメリカ軍の艦艇司令官は、この命令を拒否した艦艇を攻撃するよう命じられた。10月23日、アメリカの潜水艦は、まだ発見されていない艦船を確認するため、付近の偵察を開始した。


FILE PHOTO. John F. Kennedy and Nikita Khrushchev. © Universal History Archive/Universal Images Group via Getty Images

 その結果、「ソ連の指揮官は...完全な警戒態勢をとり、秘密裏に潜航を続けるよう命じられた」とアルキポフは振り返る。

 10月24日、ソ連の潜水艦はキューバ近海の「指定区域」に到着した。ソ連の指導者ニキータ・フルシチョフ(Nikita Khrushchev)がモスクワのワシントン高官に対し、「もしアメリカ船が公海上でソ連商船を捜索し始めたら、それは海賊行為とみなされ、ソ連潜水艦に妨害するアメリカ船の破壊命令を出すだろう」と言ったまさにその日である。


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 それは途轍もなく緊張した状況だった。そして3日後にはB-59が充電のために浮上することになった。アルキポフの証言によると、浮上したB-59は次のようなことを発見したという:
 「空母1隻、駆逐艦9隻、ネプチューン機4機、トレッカー3機を沿岸警備隊の3つの同心円で包囲・・・潜水艦の展望塔からわずか20~30mの上空での飛行機による偵察飛行、強力なサーチライト使用、自動砲(300発以上)の射撃、水中爆雷投下、駆逐艦による危険な(近)距離での5潜水艦前割り込み航行、潜水艦への標的砲、拡声器を通しエンジン停止を怒号で命令。」

 それは、明らかに仰天するような武器を次々と使用した敵対行動の連続だった。アルキポフの言葉を借りれば、「米軍のあらゆる挑発行為」がB-59の乗組員を待ち受けていた」のである。潜水艦の司令官ヴァレンティン・サヴィツキー(Valentin Savitsky)は、遭遇した反応の大きさに衝撃を受け、目がくらんだ。このような状況では、敵に向けて核弾頭を発射する準備として「緊急潜航」を実行することが規定されていた。

「航行中、武器は戦闘可能な状態にしておくこと。海軍総司令官の通常兵器の使用命令、または潜水艦への武力攻撃があった場合に備えて。」と、当時のソ連の戦闘指示書は説明している。


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 危うくそうなるところだった。多数の乗組員がその後何年にもわたって証言しているが、サヴィツキーは、パニック状態になり、自分たちが攻撃されていると信じ込んで、潜航を命じ、第三次世界大戦への引き金になる、命取りの魚雷発射を求めた。しかし、現実にはそうならなかった。なぜか?


(司令官より)冷静な頭脳が勝(まさ)った
 「潜航した後だったので、飛行機が潜水艦を撃っていたのか、その周りを撃っていたのか、という疑問は誰の頭にも浮かばなかっただろう。それが戦争だ。しかし、飛行機は展望塔の上を飛んでいて、発射の1~3秒前に強力なサーチライトを点灯し、甲板にいた人たちの目が痛くなるほどだった。衝撃だった」とアルキポフは振り返る。「(ザヴィツキー)司令官といえば・・・・何が起こっているのかまったく理解できなかったのだ。」

 世界にとって幸運だったのは、司令官ザヴィツキーが世界滅亡を招く命令を発した時、アルキポフはまだ展望塔にいたのだ。彼がもしその時展望塔にいなかったら、この地球が今のまま存在している可能性は薄かったろう。アメリカ側が、実際は潜水艦に警告信号を発し、攻撃していないことを確認したアルキポフは、そんな事情ではだれでもパニックになるのは無理なからぬサヴィツキーをなだめ、彼の命令が潜水艦の魚雷担当の士官に伝わらないようにし、アメリカ側に挑発行為をすべてやめるよう明確なメッセージを送り返したのだ。


資料写真.「赤い命令軍旗」を甲板に掲げてソ連のどこかの基地に停泊する3隻のソ連潜水艦© Getty Images/Bettmann

 このことは、その後の米軍戦闘機による12回にわたる上空飛行も「それほど心配することはない」ことを意味し、米公共放送局の「断続的な無線傍受」を聞けば、「状況は緊迫して(戦争寸前)」いるものの、まだ明白な戦争にはなっていない、という内容がはっきりしている。事態はうまく収拾し、翌日には完全充電されたB-59が警告なしに潜航し、基地に戻ってきた。そこで、ソ連の軍事会議の幹部が乗組員に言った:
「我々は君たちが生きて帰ってくるとはまったく思っていなかった」。


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 アメリカ国民は、この事件とソビエトが核弾頭発射にどれだけ近づいていたかを、何十年も経つまで知る由もなかった。この事実の公表は、当時、衝撃的であったが、数年後には忘れ去られてしまった。が、このエピソードは国際政治における絶望的で危険な状況が、(司令官よりも)冷静な頭脳をもった現場兵士によって解決されることがあることを示す好例となっている。

 キューバ危機として知られるようになったミサイル配備をめぐる対立の解決は、同時にまた、健全で成熟した賢明な外交によって促進され、その中で米ソ双方が大きな譲歩をしたのである。フルシチョフはキューバから核施設を撤去することに同意し、その見返りとしてケネディは二度とキューバを侵略しないことを約束し、トルコからはソ連を狙ったジュピター・ミサイルが撤去された。

 また、モスクワとワシントンの間に「ホットライン」が開設され、2つの超大国の間に直接的で迅速なコミュニケーションが確保されるようになった。その後、両国の平和とデタント(緊張緩和)がしばらく続いたが、1980年代にワシントンが核兵器を拡大し始めると、再び緊張が高まった。このため、軍備管理条約が作成されたが、トランプ大統領の下で破棄されることになった。

 この話の最新版として、今年2月24日に先立つ数カ月前、クレムリンは、破棄された以前の協定の条項の多くを含む、より包括的な新しい欧州安全保障秩序の草稿を提案した。

 こういった努力も馬の耳に念仏だった。
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CIA、NATO、そしてヘロイン大クーデター。マイアミはいかにして国際ファシズムの中心地となり、ケネディ大統領を殺害したのか。

<記事原文 寺島先生推薦>

CIA, NATO and the Great Heroin Coup: How Miami Became the Center of International Fascism and the Murder of President Kennedy

筆者:シンシア・チョン(Cynthia Chung)

出典:ストラテジック・カルチャー

2022年5月10日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月19日

 ノースウッズ作戦の論理は、グラディオ作戦と同じ筋書きだった。参謀たちは予め作成済みの暴力に傾いたが、それは国家が得る利益の方が個人に対する不正よりも大きいと考えたからである。


 これは5部構成のシリーズの第4部。[第1部第2部では、第二次世界大戦後のウクライナの民族主義運動がいかにCIAによって買収されたかを解説。第3部は、NATOの「グラディオ作戦」の重要な要素について述べており、本稿の前に必読である]。


暗黒街作戦と海軍情報局(ONI)

 チャールズ・"ラッキー"・ルチアーノ(1897-1962)は、アメリカ史上、最も強力で成功したギャングだった。1931年に闇組織「Commision職務遂行」を設立したことから、米国における近代組織犯罪の父とみなされている。
 ルチアーノは1936年、売春の強要と売春組織の運営で有罪判決を受けた。30年から50年の禁固刑を言い渡されたが、第二次世界大戦中、米海軍の海軍情報局(ONI)が彼にある提案をした。

 ルチアーノは、南イタリアのマフィアをムッソリーニに対抗する連合国側の第5列として引き渡せば、最終的に自由になれると約束されたのである。
 これが、南イタリアの強力なマフィアファミリーを生み出す種となった。こうしてアメリカは、イタリアのマフィアに、待機米軍の中で傭兵として活動するよう命じた。

 ルチアーノとONIの連絡役となったのが、ユダヤ系マフィアのボス、マイヤー・ランスキーで、かくして、「暗黒街作戦」が誕生した。
 ルチアーノは部下に命じ、ランスキーの指示に従うよう命じ、ランスキーは実質的にイタリア系アメリカ人マフィアの大部分を統括するようになった。

 トーマス・デューイ(当時のニューヨーク州知事)は、ルチアーノを刑務所に入れた責任はあったものの、連合国への貢献により1946年に恩赦を与え、ルチアーノは手下の数人とともにイタリアに送還された。が、これは、彼がOSS(戦略諜報局)の諜報員と会って、その指示に合意したからこそ実現したことである。

 ルモンド紙は、1973年6月、アメリカ側の諜報機関とマフィアのつながりを詳述している。
「ラッキー・ルチアーノは、自分(ルチアーノ)自身がアメリカの諜報機関と協力した経験から、ベイルートからアンカラやマルセイユを経由してモロッコのタンジールに至るまで、そこらに散らばっている著名な組織員たちに、自分がしたように活動するよう勧めたものだった。
 このようにして、麻薬の売人や運び屋は、[イギリスの]MI5、[アメリカの]CIA、[フランスの]SDECE、[西ドイツの]Gehlen組織、さらにはイタリアのSIFFARの情報提供者となった。(1)

 マフィアとこれらの情報機関との間のこの特別な関係は、数十年にわたり強固なものとなり、今日に至っている。


マイヤー・ランスキーのキューバ帝国

 マイヤー・ランスキー(1902-1983)は、ラッキー・ルチアーノとともに、略称「連合(シンジケート)」と呼ばれる「全国犯罪連合」を創設した。ランスキーは、1947年頃から「連合」の財務の魔術師であり、会長を務めていた。
 彼は50年代初頭、ハバナに本部を置く「キューバ帝国」を築き始めた。ランスキーは文字通り、キューバの独裁者フルヘンシオ・バティスタの頭越しに、キューバを統治した。
 親友であるキューバの独裁者フルヘンシオ・バティスタが、1944年に、自由選挙によって政権から追われると、ランスキーもキューバを離れ、サント・シニアが率いるトラフィカンテの一族にマフィアの帝国を託した(かくして、サント・トラフィカンテは、キューバのルチアーノ・ネットワークの後継者となった)。

 ランスキーとバティスタは、マイアミのすぐ北にあるフロリダ州ハリウッドに居を構えた。まもなく、ランスキーは東海岸で違法なカジノ帝国を経営し、ラッキー・ルチアーノが創設した麻薬取引を拡大させた。
 古くからのマフィアは麻薬取引をタブー視していたため、ランスキーの「シンジケート」はトラフィカンテの長男サントJr.がヘロインの流通を管理し、市場を独占していた。
 サント・シニアが1954年に亡くなると、サント・ジュニア・トラフィカンテはランスキーの右腕となり、ランスキーのキューバでの利益を管理するようになった。

 フロリダにあったランスキーの違法カジノが、1950年、閉鎖されると、ランスキーはキューバで独裁者バティスタの政権復帰を推進した。
 こうして、1940年から1944年までキューバ大統領だったフルヘンシオ・バティスタは、1952年に、アメリカの支援を受けて、再び軍事独裁者としてキューバに戻った。そして、1959年に、フィデル・カストロ率いるキューバ革命によって、独裁政権は倒された。

 カストロがキューバを支配する中、ランスキーとトラフィカンテは窮地に立たされた。彼らはカストロから、キューバ王国ではもう歓迎されないという明確なメッセージを受け取っていたのである。ランスキーとトラフィカンテとともに、50万人のキューバ人がキューバを離れ、25万人がトラフィカンテの新本拠地であるフロリダに新居を構えた。

 キューバから追い出され、フロリダでカジノを閉鎖したランスキーは、バハマのナッソーに同様のギャンブル天国を作り上げた。
 ギャンブルの儲け以外に、コルシカ人の分も含めたアメリカの麻薬取引で得た驚くべき大金の大部分は、ランスキーのマイアミ・ナショナル銀行で洗浄されて、バハマのナッソー、スイス、レバノンの番号付き口座に移された。(2)
 ランスキーはやがて世界の無冠の麻薬王となった。彼の決断は、フランスやイタリアの大物たちを含むすべての麻薬人に影響を与えた。ランスキーの麻薬流通ルートは、ラスベガス、ローマ、マルセイユ、ベイルート、ジュネーブなどに跨がっていた。


マイアミを国際ファシストたちの新たな拠点に

 DEA(麻薬取締局)マイアミ事務所のアラン・プリングルは、1980年初め、Associate Pressの記者に対し、マイアミの銀行が麻薬取引人たちの「ウォール街」を構成していると語った。(3)

 このことを最初に暴露したのは、1980年にヘンリク・クルーガーが出版した「ヘロインの大クーデター」という素晴らしい研究書である。
 この本では、マイアミが「偉大なるヘロイン・クーデター」の結果として、この国際的なファシズムの新しい中心地であることが明らかにされたのである。

 しかし、クルーガーが示した重要なポイントは、高級ヘロインの主要生産者と売人として、フランス領コルシカ島のマフィア(トルコとレバノンが原料生産者)が、イタリア領シチリアのマフィアに取って代わられたということである。その支配地は東南アジアと南米をも含んでいた。
 この移行は、DEA(麻薬取締局)を支配するCIAによって支援され、実施された。
 ニクソンの「麻薬戦争」は、ヘロインの特定の生産者と流通経路を閉鎖したが、最終的にはアメリカの厳しい管理下に置かれる新しい生産者と流通経路を開拓するためのものであった。
 ベトナムと同様、フランスはアメリカによってあらゆる権力から押し出され、今後はこの新しいジャングルの王に従属することになった。

 ランスキーのシンジケートは、この移行をCIAとその同盟する諜報機関の手に安全に導くのに貢献した。これらの 諜報機関が、NATOの「グラディオ作戦」に大きく関わっていた。
 マイアミは、メイヤー・ランスキーだけでなく、CIAにとっても、あらゆるヘロインとキューバにおける作戦の中心地となった。

 ヘンリク・クルーガーはこう書いている。
「国際的ファシスト組織は、50年代にCIAのために働いていたナチスの故オットー・スコルツェニが、マドリッドで長年にわたって計画してきた成果である。
 その名簿には、元SS(ナチス親衛隊Schutzstaffel)の隊員、OAS(フランスの秘密軍事組織)のテロリスト、ポルトガルの恐ろしい秘密警察(PIDE)の手下、スペインのフエルサ・ヌエバのテロリスト、アルゼンチンとイタリアのファシスト、キューバの亡命者、SAC(フランス民間行動隊)のギャング、そして[CIAの]オペレーション40、グアテマラ、ブラジル、アルゼンチンでのテロ作戦で鍛えられた元CIAエージェントが載っている。
 国際ファシスタの過激派には、キューバ人亡命組織CORUの他に、ポルトガル解放軍(ELP)とイヴ・ゲラン=セラック率いるアジンテール・プレス部隊、サルバトーレ・フランチャ率いるイタリアのオルディネ・ヌオーヴォ、ピエルルイジ・コンキュテッリが様々な時期に名を連ねていた。 スペインのGuerillas of Christ the King、Associacion Anticommunista Iberica、Alianza Anticommunista Apostolica(AAA)も名簿に載っている。ただし最後のAAAを、アルゼンチンのAAAと混同してはいけない。後者は、国際的ファシスト組織 Internacional Fascistaや聖騎士団Paladinグループのなかに、すでに名を連ねている。」
[註1:OAS(Organisation de l'armée secrète秘密軍事組織)は、フランスの極右民族主義者の武装地下組織]
[註2:SAC(Service d'action civique市民行動サービス)とは、かつてフランスにあった民兵(私兵)組織。民間行動隊、市民運動の義務などとも訳される。
[註3:CORU(Coordinacion de Organisaciones Revolucionarias Unidas)は、キューバ人亡命者の統括組織。本部はマイアミにあった]。


 国際的なファシズムの網の目のような世界におけるマイアミの重要性は、アメリカでもよく知られた秘密の一つである。
 その糸は大西洋を越えて、もともとリスボンにあった偽装通信社アギンタの活動や、武器密輸の網の中心であるマドリッドにひっそりと座っている元ナチス親衛隊中佐スコルツェニにまで伸びていた。
 クルーガーにとって、マイアミ-リスボン-マドリッド-ローマという軸は、ナチスの高官と同盟を結んだCIAの記録の論理的延長であった。
 ネオ・ファシストの聖騎士団(Paladin Group )とスペインの情報機関であるDGS(La Dirección General de Seguridad 保安総局)は、共にナチスの戦犯オットー・スコルツェニ大佐(Colonel Otto Skorzeny)によって運営されていた。

 マイアミは、CIAの巨大な利益を生む麻薬密売組織と、国際テロリズムを含むその他多くの組織のための国際的な接合点と万能の情報センターであった。https://en.wikipedia.org/wiki/JMWAVE
 マイアミのCIAの秘密作戦本部JM/WAVEは、1961年から1968年まで活動していた米国の主要な秘密作戦・情報収集局である。キューバを戦略的標的とする一連の奇襲攻撃を企て、「ピッグス湾作戦」そのものよりも多くの人員と経費を費やした。300人の工作員と4600人のキューバ人亡命者がJM/Waveの作戦に参加した。
 クルーガーは書いている。「後に明らかになったように、その最後の作戦の一つは中止になった。航空機で米国へ麻薬を密輸しようとして捕まったからだ。JM/Waveの時代には、中国(国民党)ロビー-=ラフィカント=キューバ人亡命者=CIAのつながりが大きく拡大した。」

 さらにクルーガーはこう書いている。
 「秘密戦争の開始とともに、この新しい局はCIAにとって最大のものとなり、世界中の対カストロ作戦の司令塔となった。年間予算は5,000万ドルから1億ドルで、300人の工作員の活動に資金を供給していた。CIAの各主要局には、少なくとも1人の作戦要員がキューバ作戦を担当し、最終的にマイアミに報告することになっていた。ヨーロッパでは、すべてのキューバ問題はフランクフルト支局(ドイツ)を経由して、JM/Waveに報告された。

 1963年には、ホンジュラスで、次にドミニカ共和国で、そして3番目はグアテマラで、政権転覆を企てた。
 1964年には、ブラジルでブランコ将軍の軍事クーデターを支援した。
 1965年、特殊部隊は海兵隊とともにドミニカ共和国の内戦を鎮圧し、1966年にはアルゼンチンでオンガニア大佐の軍事クーデターを幇助した。
 1966年には、CIAがアルゼンチンのオンガニア大佐の軍事クーデターを支援した。
 同じ頃、マイアミのリトル・ハバナでは、キューバ人亡命者の活動組織が生まれた。アルファ66やオメガ7のようなテロ集団が生まれ、その悪名高いリーダーはCIAに訓練されていた。
 JM/Waveが解体された時、シャックリと彼のスタッフは、組織犯罪と米国の極右の強力な要素と結びついた6000人の狂信的反共主義キューバ人の高度な訓練を受けた軍隊を残して、マイアミからラオスに向かった...」[強調は筆者]。

 JM/Waveは、世界のどこであろうと、キューバに関するあらゆることを取り仕切った。CIAは最大の秘密作戦組織JM/WAVEを維持し、活気あるネットワークを構築していた。たとえば準軍事的な訓練基地や隠れ家などの運営だ。

1. ハワード・ハントとビル・ハーヴェイの二人はJM/WAVEで働いていたが、この二人については後ほど紹介する。

 マイアミのキューバ人は、グアテマラの偽装通信社アギンター・プレスのテロリストに区わった。フロリダに住む100人のキューバ人は、スペインでアギンター・プレス社=ELPファシスト軍に加わり、テロ行為に関与した。
 [注:偽装通信社アギンタープレスは、主にNATOのグラディオのために働いていたOASのフランス・ファシスト準軍隊の訓練・流通拠点である、第3部参照]。

 ここまでで我々は、NATO/CIA/イタリア系アメリカ人マフィア/キューバの亡命者/ナチスを含むファシストがすべて同じ組織のために働き、本質的に同じ目標、すなわち民主的に選ばれた指導者を打倒し、独裁者とファシスト右翼政権に置き換えるという実態を見たはずである。
 麻薬取引の利益は、グラディオをモデルにした世界規模の右翼テロ活動の資金として使われる。ヘンリック・クルーガーが暴露した「ヘロイン大クーデター」は、まさにこの目的のために、ヘロインの利益を完全に支配することだった。


ニクソンのホワイトハウスの配管工と 「麻薬戦争」

 ニクソンのウォーターゲート事件への関与の歴史は、彼の個人的な麻薬取締りへの関与の歴史と絡み合っている。
 ニクソンは1971年6月にヘロインとの戦いを公言し、直ちに国際的な麻薬取引に対抗するため、「ホワイトハウスの配管工」、キューバからの亡命者、さらには「殺し屋集団」まで集めるに至った。
 [註:White House Plumbers「ホワイトハウスの配管工」は、本来、ニクソン政権の情報漏洩に対処するために組織された秘密工作グループ]

 クルーガーはこう書いている。
「1972年7月17日、ジェームズ・マッコード、フランク・スタージス、バーナード・バーカー、エウゲニオ・ロランド・マルティネス、ヴァージリオ・ゴンザレスは、[E・ハワード]ハントと[G・ゴードン]リディに率いられて、ワシントンの民主党のウォーターゲート事務所に押し入った。
 この7人のうち、4人はマイアミ出身で、4人は現役または元CIAの工作員、4人はピッグス湾侵攻に関わったことがあり、3人はキューバの麻薬マフィアと密接なつながりがあった。」
[源注:フランク・スタージス(本名フランク・フィオリーニ)は、トラフィカンテのCIA連絡先の1人だった。1960年代後半、スタージスはマイアミを拠点とする国際反共旅団(IACB)を運営し、メイヤー・ランスキー・シンジケートの資金援助を受けていたと言われている。(4)]

 E. ハワード・ハントの経歴は第二次世界大戦まで遡り、OSS(Office of Strategic Services戦略情報局)に所属しながら中国雲南省の昆明に駐在していた。
 OSSは蒋介石と国民党軍を支援していた。彼らはファシストの日本と戦うと同時に、毛沢東率いる中国共産党と内戦を戦っていた考えられている。
 蒋介石の支配下にあった雲南は(OSSの監督する一団と共に)中国アヘン栽培の中心となり、昆明は米軍陸軍航空隊将校クレア・シェノーの第14空軍やOSS(戦略情報局=CIAの前身)202分遣隊などによる、軍事作戦の温床となったのである。
 [国民党とCIAなどとの世界的なヘロイン取引に関する提携については、次稿で詳しく紹介する]。

 ハントはここで、フランス外人部隊の隊長でOSS工作員に転身したルシアン・コニーヌと出会った。
 クルーガーは書いている。
「E. ハワード・ハントは明らかに中国/キューバ/ラテンアメリカ・ロビーの手先であった。
 ハントの20年来の親友であり、彼の子供たちの名付け親でもあるウィリアム・F・バックリーがWACL(World Anti-Communist League世界反共連盟)のアメリカでのトップ・サポーターであったことからも、ハントもWACLと関係があることがうかがえる。
 また、ルシアン・コネインや国務省の元情報部長のレイ・S・クラインも同じロビー団体と関係があり、彼は台湾WACLの拠点に頻繁に出入りし続けている。
「ハントとコネインは、ホワイトハウスのヘロイン大クーデターを支える重要な力であった。
 またハントはキューバ人亡命者に必要な足場を確保した...」。

 ここではっきりさせておきたいのは、クルーガーが中国/キューバ/ラテンアメリカ・ロビーとして言及しているのは、共産主義の指導者ではなく、むしろファシストの指導者、蒋介石、バチスタ、ラテンアメリカのファシスト独裁者についてである、という点だ。

 インドシナは第二次世界大戦後もコネインの活動拠点であり、ハントと同様、彼はOSSからその後継組織であるCIAに移籍していた。そして、南ベトナム、北ベトナム、カンボジア、ビルマで活動し、この地域とアヘン密輸のコルシカ・マフィアに関する米国の最高専門家となった。

 ピーター・デールスコットは、クルーガーの「ヘロイン大クーデター」の序文でこう書いている。
「E. ハワード・ハントは、明らかに中国/キューバ/ラテンアメリカ・ロビーの手先であった。
 ハントの20年来の親友であり、彼の子供たちの名付け親でもあるウィリアム・F・バックリーが、WACL(世界反共連盟)の米国におけるトップ支援者の一人であったことからも、彼がWACLとも関係があることがうかがえる。
 また、ルシアン・コネインや国務省の元情報部長のレイ・S・クラインも同じロビー団体と関係があり、台湾WACLの本拠地には今も頻繁に出入りしている。

 しかし、中国に古くからいる人脈のある者たちは、新生DEAに移籍し始めた。ハントはOSS-クミングの旧友ルシアン・コニンのために、最終的にDEA(Drug Enforcement Administration麻薬取締局)となるポストを確保し、コニンは今度はインディアナ州ディーコンにあるCIAキューバ人支部から自分の仲間を採用し、そのうちの少なくとも一人は、CIAの報告によれば、すでに死の部隊作戦に参加した。
 最近明らかになったことは...偽装通信社アジンタと亡命キューバ人組織CORUの関係者が、ジョン・F・ケネディ大統領の暗殺に関連していることだ。
 レテリエ事件(チリのアジェンデ大統領政権下で外交官だったオルランド・レテリエルを自動車爆弾で暗殺)で著名な少なくとも3人のキューバ人は、ケネディ暗殺下院特別委員会の最近の発表によって、1963年の亡命キューバ人組織と連携していたことが明らかになった。この特別委員会は、ケネディ暗殺事件の「徹底した調査」を保証する、と請け負った。
 リー・ハーヴェイ・オズワルドはニューオリンズでの活動によって、CORUが資金的に支援する反カストロ・グループや、将来のアジンター社や、おそらくOAS(Organisation de l'armée secrète、フランス秘密軍事組織)とつながりのあるアメリカ人と接触することになった。
 そして1963年11月23日、OASのテロリストで将来、偽装通信社アジンターの工作員となるジャン・レネ・スエトルは、最近、機密解除されたCIAの報告書によれば、「(ケネディ)暗殺の18時間後に、米国ダラス/フォートワース空港から追放された
。」 [強調は筆者]

 クルーガーはこう書いている。
「ルシアン・コネインは、DEA(Drug Enforcement Administration麻薬取締局)の特殊作戦部門の責任者になると、ワシントンのコネチカット通りにある偽装会社BRフォックス社と建物を使って、DEASOG(the DEA’s Special Operations Group:DEAの特殊作戦グループ)を立ち上げた後、暗殺計画を実行したとされる。
 DEASOGの12人のメンバー、いわゆるDirty Dozen(汚い12人)は、決意が固く経験豊富なラテン系CIA工作員が、この機会を利用して、DEA麻薬取締局に移籍してきた。
 コネインはDEASOGを立ち上げる前に、インディアナ州ディーコンで、DEA麻薬取締局の「諜報」活動を立ち上げ、CIA訓練所出身のキューバ人亡命者を採用した。彼らは30人のキューバ人(全員が元CIAの秘密情報部)に監督されていた...。
 DEAの出現は、ヘロイン・クーデターの最終局面を準備するものだった。ハントとコネインが率いるCIA職員は、DEAの情報収集と作戦実行に移行した...」[強調は筆者]。

 グアテマラのアルベンス大統領は、1952年、大規模な土地改革法案を議会で可決し、それを強力に実行した。それは、国内の農地面積の70%を、人口の2%にすぎない地主の手から取り上げて、それを民衆に再分配することを目的としたものだった。
 その2%の地主の中には、ユナイテッド・フルーツ社が含まれていた。その会社は、ワシントンDCやCIAと多くのつながりを持っていた。たとえば、アルベンス大統領を追放するクーデターの後に役員になったウォルター・ベデル・スミス(元CIA長官)、キャボット家のヘンリー・キャボット・ロッジ、アレンとフォスター・ダレス法律事務所のサリバン&クロムウェルなどだ。(5)

 CIAはユナイテッド・フルーツ社のためにクーデターを画策した。E・ハワード・ハントは、1954年にグアテマラのアルベンス大統領の政権を転覆させるためのCIAの政治活動責任者であった。(6)

 クルーガーはこう書いている。

 「事実上、手を携えた政権転覆活動の全領域に重なる人物もいた。その中には、ハワード・ハントと、ユナイテッド・フルーツの汚れ仕事を取り仕切る「トミー・コーコラン社」がいた。
 ユナイテッド・フルーツ社はマイアミにある石油請負業ダブル・チェック社の顧客であり、ピッグス湾侵攻のために飛行機を供給したCIAの隠れ蓑でもあった。
 コーコランはチェノー将軍の未亡人アンナ・チェノーのワシントンでの護衛だった。チェノーはかつて中国(国民党)ロビーのトップで、東南アジアのアヘンの鍵を握っていた」。

 CIAの新しい公式の麻薬政策とともに、非公式のものも登場した。後者の汚い仕事は、DEAの中の大きな部門によって行われた。彼らは、キューバ人亡命テロリストの大規模で独立した軍事組織(CIAによって訓練された)を容認し、その部門は、ラテンアメリカで、独裁者の要求に応じて行動することを奨励していた。たとえ全面的にではないにしても、
 しかし、これは10年近く前に起こっていたはずのことである。

 1964年6月2日付のニューヨークタイムズの記事によれば、「リチャード・M・ニクソン前副大統領は、次のように言っている。

 「リチャード・M・ニクソン元副大統領は、キューバのピッグス湾への侵攻を1960年11月8日の国民選挙の前に行うことを望んでいた
 ニクソンは、アイゼンハワー政権が大統領選挙の終盤にフィデル・カストロを破壊すれば、選挙で楽勝することは確実だったので、11月8日より前に侵攻することを望んでいたのだ。

 ニクソンは1953年1月から1961年までの8年間、アイゼンハワーの副大統領を務めていた。ニクソンは次期大統領になるはずで、誰もがそれを知っていた。
 しかしケネディは、この秘密の侵略計画を知っていたので、カストロに対する計算ずくの強硬姿勢と、公開討論でキューバの反乱者を支援すると表明したおかげで、ニクソンの鼻先から選挙を取ることができた。
 一方、ニクソンは、そんなことに賛成すれば実際の計画を損なうと考え、それに反対する振りをすることが最善であると考えた。

 こうして、何十年にもわたる計画が水の泡となり、ニクソンが去り、ケネディが登場したのだった。


ノースウッド作戦、ピッグス湾への侵攻作戦、さらに「照明弾による抹殺」作戦

[註:“Elimination by Illumination照明弾による排除”は、空軍准将エドワード・ランズデールが考え出したカストロ暗殺計画」

 連中の計画を潰したのはケネディだけではなかった。フィデル・カストロによる1959年の、バティスタの打倒とヘロイン取引を含むマイヤー・ランスキーのキューバ帝国の追放は、こうした長期計画にとって、控えめに言っても問題であった。

 フィデル・カストロは、ドゴール同様、暗殺計画やクーデターを阻止する名手であった。カストロは、1959年から2011年までキューバを統治することになる。

 カストロのキューバは、米国「ビジネス」のあり方の現状を覆すという非常にわかりやすい理由で、受け入れがたい存在とされた。ランスキーのシンジケートだけでなく、ユナイテッド・フルーツ社、U.S.スチール、デュポン、スタンダード・オイルなど、フォーチュン500に名を連ねる企業が、カストロ政権の登場によって多くの金が失われた。(7)

 こうして、カストロは去らねばならなくなった。だからCIAと国防総省が救出に乗り出した。少なくとも、そのような脚本になるはずだった。

 1961年1月20日、ケネディが大統領に就任した。ケネディ大統領は、国家と国民の福祉の責任を引き継ぐと同時に、CIAが仕切る共産主義キューバとの秘密戦争も引き継ぐことになった。

 失敗した「ピッグス湾」作戦は、1961年4月17日から20日にかけておこなわれた。この事件は、CIA長官アレン・ダレス、CIA計画担当副長官リチャード・M・ビッセルJr、CIA副長官チャールズ・カベルの解雇につながった(この件に関する詳細はこちらを参照)。

 クルーガーはこう書いている。

「ピッグス湾侵攻軍の創設、資金調達、訓練のために集められた陰謀家たちほど、驚くべき、狂信的な集団はかつて存在したことがない。
 CIAの中心人物は、エドワード・ランズデール(特殊作戦担当の国防次官補) の部下ナポレオン・ヴァレリアーノ、謎の男フランク・ベンダー、そしてE・ハワード・ハントだった。ハント自身もフィデル・カストロの命を狙った少なくとも一件に関与している人物であった。彼らは、マイアミにある4つの偽装会社から集まったCIA工作員の小部隊に支援されていた。

ピーター・デール・スコットは、クルーガーの『ヘロイン大クーデター』の序文でこう書いている。

「CIAはピッグス湾作戦のために、昔のグアテマラ・チーム(キューバ人の勧誘を監督していたハントを含む)を再結集させた。
 ピッグス湾の失敗で、キューバはアメリカにとって、フランスにとってのアルジェリアのような存在になった。
 爆発的な政治的論争は、何千人ものキューバ人亡命者(その多くはハバナの武装集団の経歴を持つ)が、アメリカによってゲリラやテロリストとして訓練され、その後、政治的には迷惑な存在になったことを意味した...
 ピッグス湾作戦の中心である「作戦40」から生まれた少なくとも一つのCIA計画は、メンバーの麻薬活動があまりにも厄介になり、終了せざるを得なくなった。
 1973年、日刊紙Newsdayは、『1500人のピッグス湾侵攻軍の少なくとも8パーセントが、その後、麻薬取引で調査されたり逮捕されたりした』と報じた。」[強調は筆者]

 さらに言えば、ピッグス湾作戦は、実際、失敗することが運命づけられていた。それは単にキューバへの直接の軍事侵攻を求める世論をかき立てるためのものだったからだ。
 CIAのリチャード・ビッセル計画担当副長官、統合参謀本部議長のライマン・レムニッツァー、海軍大将のバーク提督が、ケネディ大統領にキューバへの直接軍事攻撃を承認させようとする会議(あるいは「作戦への介入」と表現する方が適切かも)が公文書に記載されている。
 バーク提督はすでに、キューバ沖の海軍駆逐艦に海兵隊の2個大隊を勝手に配置し、「失敗した侵攻をやり直すために米軍がキューバに出動することを想定」していたからだ(これについては、こちらを参照)。

 その後もカストロ暗殺やクーデターの試みが繰り返された。
 サイゴン軍事ミッションのチーフでレムニッツァー将軍の部下であり、秘密作戦の専門家エドワード・ランズデールは、潜水艦をハバナ郊外の海岸に送り、「光の地獄」を作り出そうと考えていたのだ。
 ランズデールによれば、作戦部隊の上陸と同時に、キューバにいる工作員に、照明弾を使って「キリストの再臨とフィデル・カストロに対する救世主の嫌悪」を演出させる計画であった。
 この計画は 「イルミネーションによる抹殺」"Elimination by Illumination "と呼ばれたが、最終的には棚上げされた。(8)

 このような計画が紙の上にとどまっていれば面白かったのだが、この男たちは、現実になった計画のために、数え切れないほどの人々を拷問し、死に至らしめたのである。

 レムニッツァー将軍は1959年、陸軍参謀総長に就任するとすぐに、ランズデールを特殊作戦担当の国防次官補として任命し、ペンタゴン(国防総省)のギルパトリック国防副長官の執務室に勤務させた。
 ランスデールはレムニッツァーの直属の部下として「マングース作戦」の責任者となり、政治的暗殺を禁止する連邦法に反して、カストロを排除することを主目的とした活動に入った。
 「マングース作戦」は、CIAによる民間人へのテロ攻撃を実行する秘密作戦の大規模な展開であり、マイアミのJM/Waveから実行された。
 こうして、さらにランスデールは、キューバをはじめ、中南米全域の襲撃や爆破など、多くの秘密作戦に参加することになる。

[註:JMWAVE、JM/WAVE、またはJM WAVEは、1961 年から 1968 年までCIAによって運営されていた、放送局をはじめとする米国の主要な秘密工作および情報収集ステーションのコードネーム。その飛行船基地は、マイアミ大学のメイン キャンパスの約 12 マイル南にあり、現在のマイアミの大学のサウス キャンパスにあった。]


 1962年3月、ライマン・L・レムニッツァー将軍は、元CIA長官ダレス、元CIA副長官ビッセル、CIA長官キャベルに起こったこと[ピッグス湾作戦]をヒントにせず、「ノースウッズ作戦」をケネディ大統領に提案し、承認を得ることが良い考えだと判断した。

 ノースウッズ作戦は、アメリカ市民に対する偽旗作戦で、CIAの工作員がアメリカの軍人と民間人を標的にテロ行為を行い、その後、キューバに対する戦争を正当化するためにキューバ政府を非難するというもので、演出と実行の両方を行うことが提案されていた。
 この計画はレムニッツァー将軍によって具体的に立案され、NATOのグラディオ作戦(第3回参照)と著しい類似性を持っている。
 ノースウッズの論理はグラディオの筋書きであった。参謀本部がプレハブ暴力に傾いたのは、国家が得る利益は個人に対する不正よりも重要だと考えたからである。唯一の重要な基準は目的に到達することであり、その目的は右翼政権をキューバにつくることであった。



ノースウッズ作戦の覚書 1962年3月13日

 ノースウッズのマニュアルには、あからさまな合衆国憲法への反逆罪とならない項目は一つもなかった。しかし、ペンタゴン幹部は「最高機密:キューバへの米軍介入の正当化」をロバート・マクナマラ国防長官の机に直送し、ケネディ大統領に伝達したのである。

 言うまでもなくケネディ大統領はこの提案を拒否し、数ヵ月後、1960年10月1日から1962年9月30日まで務めたレムニッツァー将軍の統合参謀本部議長としての任期は更新されなかった。

 しかし、NATO は、1962 年 11 月にレムニッツァーを米欧軍司令官と NATO の欧州連合最高司令官に任命し、後者には 1963 年 1 月 1 日から 1969 年 7 月 1 日まで在任することになった。

 レムニッツァーは、ヨーロッパにおける大陸を背棄権する席巻した「グラディオ作戦」を監督するのにうってつけの人物であった。レムニッツァーは、1952年にカリフォルニア州フォート・ブラッグに特殊部隊グループを設立する原動力となった。
 ここでは、ソ連のヨーロッパ侵攻を想定したゲリラ反乱作戦の訓練を受けた特殊部隊が配備されていた。独特のグリーンベレー帽を誇らしげにかぶった彼らは、やがてヨーロッパ各国の軍隊と慎重に協力し、直接的な軍事作戦に参加するようになったが、その中には極めて機密性が高く、合法性が極めて疑わしいものもあった。
 この合法性の疑わしい作戦の一つに、少なくとも二度にわたる「ドゴール大統領暗殺計画」を支援したNATO-CIA連合がある。
 これに対してドゴールは、NATO本部をフランスから追い出し、フランスをNATOから脱退させ、レムニッツァー将軍にNATOからの撤退を略式命令した(第3部参照)。
 偽装持ち株会社パーミンデックスと世界貿易センター(WTC)も、このドゴール暗殺未遂事件にかかわっていたので、ドゴールの命令でスイス本社を閉鎖せざるを得なくなった。が、これについては後ほど詳しく述べる。
 もしドゴール大統領の命令が否定されたなら、彼はこれらの問題で戦争をする用意があっただろうから、こうして多少のNATO改造はおこなわれた。が、基本的にはゲームはそのまま継続されたのである。
 CIAとペンタゴンにとって、ケネディは中国にいる牛のような存在だった。彼はペンタゴンの政策に、ことごとく逆らったからだ。
 たとえば、ケネディは、フランスとの異例の戦争を内々で解決することにこだわり、米ソのミサイル危機では手を引き、トルコから最前線のミサイルを撤去した。また、ベトナム戦争から徐々に手を引き、それを終わらせようと考えた。
 また亡命キューバ人による秘密作戦を混乱させ、ペンタゴンがソ連と中国の脅威はかつてなく大きいと考えていたことが完全に明白だったときに、アメリカを平時に逆戻りさせようとした。
 そして究極の侮辱は、CIAのゴッドファーザーであるアレン・ダレスと第一参謀総長レムニッツァー将軍の解雇したことだった。こうしてレムニッツァーを亡命へと、すなわちNATO軍司令官へと追いやった。

 CIA、国防総省、NATOは一致していた。かくしてケネディはこの世から去らねばならなかった。

 偽旗作戦グラディオ、偽装会社パーミンデックス、ローマのWTC世界貿易センター、フランスの右翼武装組織OAS(Organisation Armée Secrèt)は、アメリカという「殺人会社MURDER INC.」の道具なのだ。

 フェレンツ・ナギ(Ferenc Nagy)は、共産党が1947年5月に政権を取り、彼を首相から追い出すまで、ハンガリーの首相を短期間務めていた。
 ナギはアメリカから亡命を認められ、1948年にワシントンDCに移住し、そこでFBIに就職した。その後、彼はCIAの副長官フランク・ウィズナーの親友となった。ウィズナは、CIA長官アレン・ダレスの右腕となり、CIAのならず者的作戦を実行した人物だ。

 ハンガリー動乱前夜の1956年、ナギを会長としてスイスのバーゼルに設立されたのが、CIAの偽装会社であるパーミンデックス(Permanent Industrial Expositions)である。ナギはローマのWTC世界貿易センター(別名CMC、Centro Mondiale Commerciale)の支配人でもあり、そのアメリカ理事会の会長でもあった。

 リチャード・コットレルは著書『作戦グラディオ:ヨーロッパの心臓に刺さったNATOの短剣』の中で次のように書いている。

 両組織(パーミンデックスとCMC)は、武器や麻薬の売買、資金の洗浄、グラディオに近い過激派組織の潤滑油、ヨーロッパのギャングとの取引など、CIAの秘密裏に世界中で行われる商業活動のためのパイプ役であった」。
 パーミンデックスはイタリアに支社を持ち、P2(Propaganda Due)の黒幕リチオ・ゲリが取締役に名を連ねていた。
 JFK暗殺事件で逮捕、尋問されたニューオリンズの実業家クレイ・ショーは、一時期パーミンデックスのアメリカの役員を務めていた。ショーについては、イタリアの左翼紙「パエーゼ・セーラ」が60年代にローマWTCの活動を詳細に調査していた。

[註:P2(Propaganda Due(イタリア語発音:[propaˈː])は、1877年に設立されたイタリアのグランドオリエント傘下の秘密結社フリーメイソン支部ロッジ。1976年に認可が取り消され、秘密結社を禁じたイタリア憲法第18条に反して活動する犯罪的、秘密的、反共産的、反ソ連的、反左翼的、疑似メイソン、急進右派の組織に変貌を遂げた。]

 またイタリアの左翼紙Paese Sera(パエーゼ・セーラ)は、フェレンツ・ナギーが世界貿易センター(WTC)と偽装会社パーミンデックスを通してフランスの右翼武装組織OASに資金を提供し、パーミンデックスはCIAから資金をもらっていたとも言っている。これらの企業はいずれも、目に見える商業活動をしていないようだった。

 ジム・ギャリソンは1962年から1973年までニューオーリンズの地方検事で、ケネディ大統領暗殺に関する裁判を起こした唯一の検事であった。その捜査の過程で、ギャリソンは多くの人脈に遭遇したが、当時はまだすべての点をつなげるだけの知識はなかった。

 重要な点の一つは、元シカゴFBI支局長でニューオーリンズ警察副長官でもあったガイ・バニスターであある。彼は、第二次世界大戦中に海軍情報局(ONI)でキャリアをスタートさせた。
 バニスターは、「引退後」自分の小さな探偵事務所を設立し、それは通りを隔てて、ONIと大統領警護事務所の真向かいという便利な場所にあった。さらに、ラファイエット公園を越え、セントチャールズ通りを少し歩いたところにCIAの本部があった。

 ギャリソンは『暗殺者の追跡』の中でこう書いている。

「ニューオーリンズ警察副長官バニスターの作戦には、この街を通過する反カストロの訓練生の調査・取り扱いも含まれていた。
 亡命者の多くは、ニューオーリンズ州ポンチャートレイン湖の北にあるキャンプでゲリラ訓練を受けるために西側からやってきた新兵だった。
 また、CIAがフロリダで行っている同様の訓練に参加するため、フロリダに送られた者もいた。時折、フロリダでの訓練プログラムの卒業生が、ダラス近郊の自宅に戻る途中、宿泊と食事の手配をするために、バニスターの店に立ち寄ることがあった...」。

 ギャリソンは、ダラス-ニューオリンズ-マイアミという供給ラインの一部であるバニスター機関を発見した。これらの供給品は、カストロのキューバに対して使用する武器と爆発物から成っていた。
 デイヴィッド・フェリーは元OSS(戦略情報局の一員)で、ガイ・バニスターとクレイ・ショー(これも元OSS)の下で働いていた。フェリーは地元のキューバ革命戦線のリーダーの一人であった。

 ギャリソンは調査の結果、元シカゴFBI支局長でニューオーリンズ警察副長官でもあったバニスターが、キューバ国内での準軍事行動のための特殊部隊の訓練と装備に携わっていたことを発見する。

 John F Kennedyを暗殺したとされるオズワルドは、ジャック・ルビーに射殺されたが、そのルビーはFBIのダラス支局と特別な関係にあった。1959年、ルビーはFBIダラス支局の捜査官の一人と少なくとも9回会っている。
 この時、彼はマイク付き腕時計、盗聴器付きネクタイ・クリップ、電話盗聴器、盗聴器付きアタッシュケースも購入した。これらの事実は、ジャック・ルビーが地元FBI支局の常連情報提供者であった可能性を示唆している。(9)

 ギャリソンはこう続ける。

 アリソン・G・フォルソムJr中佐の証言を検討すると、彼はオズワルドの訓練記録を朗読していた。彼は、オズワルドがソ連に亡命する直前の1966年に、カリフォルニア州のエルトロ海兵隊基地で受けたロシア語試験の成績について述べている...
 「私はまだ軍務についており、今では少佐になっていたが、これまで一人の兵士もロシア語をどれだけ学んだかを示すことを求められた記憶がない... リー・オズワルドは-少なくとも1959年には-情報訓練を受けていた。海兵隊の情報活動が海軍情報局(ONI)によって指導されていることは、軍歴のある人なら誰でも知っていることだ。

 ...1963年の夏。オズワルドは、いくつかのパンフレット配布事件に参加しているのが目撃されていた。...ウォーレン委員会は、これと他の証拠から、オズワルドはフィデル・カストロを支援するためにキューバ公正行動委員会に参加していた熱心な共産主義者であると結論付けていた。

 オズワルドはキャンプ544の住所に足を踏み入れていた...私はその場所を直接見てみたかったのだ...」。

 ギャリソンは、キャンプ544とラファイエット531番地(バニスター探偵事務所の住所)の両方が同じ場所に通じていることを発見する。
 こうして、ウォーレン委員会が親カストロの共産主義者というレッテルを簡単に貼ったオズワルドを、ギャリソンは、オズワルドの亡命キューバ人の活動とバニスターとを接結びつける糸口を見いだしたのである。

 ギャリソンはまた、ジョージ・ド・モーレンスチャイルドがオズワルドの「子守り=お目付役」(10)であったことを発見する。ド・モーレンスシルトは第二次世界大戦中、フランスの諜報機関で働き、彼の親友にはCIAと密接な関係を持つシュランバーガー社の社長ジャン・ド・メニルがいた。(11)

 ギャリソンはこう書いている。

「シュランバーガー社はフランスが所有する巨大企業で、爆発物や地質測定器を使って世界中の石油生産者にサービスを提供していた。
 1950年代後半から1960年代前半にかけて、北アフリカのアルジェリアを解放したシャルル・ド・ゴール大統領を何度も暗殺しようとしたフランスの反革命秘密軍組織(OAS)の支援者でもあった。CIAもフランスOASの将軍たちを支援しており、シュランバーガー社に対人用爆弾を供給していた......。

 ギャリソンは続ける。

「クレイ・ショーも取締役を務めていたパーミンデックス社は、ドゴール大統領のアルジェリア独立支持に反対するフランス秘密軍事組織(OAS)に秘密裏に資金を提供し、ドゴール暗殺未遂をおこしたと言われていることもイタリアの新聞で明らかにされた。
 この事実を1967年に私たちが知っていれば、ルイジアナ州フーマの飛行船基地まで戻って返し、先にCIAが暗殺を目的としたO.A.Sに渡していた軍需品を奪還していたであろう。
 それは、民間機のパイロットだったデイヴィッド・フェリーと元FBIガイ・バニスターの作戦に参加した者たちが、シュランバーガー社の貯蔵庫から再入手したものだった。
 しかし、残念ながら、限られた人員と資金、そして多くの手がかりのために、私たちの調査はこの重要な背景情報を最も必要とするときに発見することができなかった」。

 1967年にフランスのパエサ・セラ紙(Paesa Sera)が発表した記事によると、イタリアWTC世界貿易センター理事会のメンバーには、イタリアの王子でサボイ家(the House of Savoy)の一員であるグティエレス・ディ・スパダフォロ(Gutierrez di Spadaforo)がいた。
 彼は、ベニート・ムッソリーニ総統の内閣農務次官であった。スパダフォロは、その娘婿を通じて、ドイツのナチス財務大臣ハルマー・シャハトと関係があった。
 イタリアWTC世界貿易センター理事会の、もう一人役員はギゼッピ・ジジオッティ(Guiseppi Zigiotti)で、彼はファシスト全国武器協会の会長でもあった。そして先に述べたように、元ハンガリー首相フェレンツ・ナギ(Ferenc Nagy Nagy)はアメリカWTC理事会の会長であった。

 カナダのモントリーオールに拠点を置くフランス語紙Le Devoirは、1967年の初めに、「Nagy元首相は...CIAと密接な関係を保ち、それが彼をマイアミのキューバ人共同体と結びつけた」と書いている。ナギーはその後、アメリカに移住し、テキサス州ダラスに居を構えた。(12)

さらにフランスのパエサ・セラ紙(Paesa Sera)は次のように報じている。

「イタリアWTC(世界貿易センター)がCIAと関わっている可能性の中には(それは極右の組織に深くコミットしている人物が指導的地位にいることによって裏付けられている)、そのセンターががCIAの創造物であり、不法な政治スパイ活動のために、イタリアでCIA資金を送金するための隠れ蓑として設定されたということがある。
 しかし、クレイ・ショーとOSS(戦略情報局)の元少佐ブルームフィールドが、イアタリアWTCの理事会にいたことを明らかにすることがまだ残っている。

 ギャリソンによれば、地質学者ジョージ・ド・モーレンスシルト(George de Mohrenschildt)は、おそらくこの先何が待ち受けているかは知らされていなかったが、彼がCIAの工作員として事件に深く関わっていたことは、今ではほとんど疑いの余地はない。

 デ・モーレンスシルト(de Mohrenschildt)はオズワルドにダラスに移るよう説得し、オズワルドは元FBI職員かつ元ニューオーリンズ警察副署長ガイ・バニスター(Guy Banister)の好意でニューオーリンズに派遣された。そして羊飼い(親カストロの共産主義者に見せかけること)にさせられた。
 さらにオズワルドは、デ・モーレンスシルトを通じてルース・ペインに紹介される。ペインはオズワルドがテキサス教科書倉庫で仕事を得るのを手助けした人物である。(13)

 ジョージ・ド・モーレンスシルトは1977年3月29日、下院暗殺特別委員会の調査官と会う約束をしたわずか数時間後に「自殺」したとされている。

* * *

 E. ハワード・ハントは、ウォーターゲート事件で捕まったニクソンの「ホワイトハウスの配管工」の一人として悪名高く、その後33ヶ月の服役をしたが、彼自身と彼の家族の人生を台無しにしたことは確かである。
 ハントは、自分が死に瀕していると思ったとき、セイント・ジョン(Saint John)と名付けた別居中の長男に、ケネディ殺害の秘密を知っていると告白している。
 しかし、彼はその後4年も生き伸びたとき、再び息子に背を向け、何の役にも立たない人生だと息子を批判し、息子セイントに渡したJFKのメモをすべて返せと要求した。
 このままでは父と一緒に埋もれてしまうと思ったセイントは、生前に父からできるだけ多くの情報を聞き出そうとし、その一部はローリングストーン誌のインタビューに掲載された。

 E・ハワード・ハントがケネディ殺害に関与していると述べた人物の中に、ビル・ハーヴェイ(Bill Harvey)がいた。

 ハーヴェイは1947年にCIAに入局し(まさに創設時)、1950年代にはCIAのベルリン支局を運営していた。ドイツにいる間、ハーヴェイは元ナチスドイツの情報将校ラインハルト・ゲーレン(Reinhard Gehlen)の悪名高い組織、いわゆる「ゲーレン機関」と密接に働き、ゲーレンはハーヴェイを「非常に尊敬すべき(そして)本当に信頼できる友人」と考えるようになった。(14)
 
 元CIAベルリン支局長ハーヴェイは、1961年11月、コードネームZR/RIFLEと呼ばれるカストロ殺害のためのCIA極秘作戦の責任者に任命された。(15)
 彼はマフィアの大使であるジョニー・ロセリ(Johnny Rosselli)と直接に仕事をするようになった。E・ハワード・ハントも一緒に仕事をしていた。

 デビッド・タルボットは著書『悪魔のチェス盤』の中でこう書いている。

「後のCIA長官ヘルムズ(Richard Helms,)は、「引退した」ダレスに取って代わって、CIA職員アングルトン(James Jesus Angleton)と共にハーヴェイの主たる擁護者となっていた。
 そして1962年に、CIAのタフガイとしてビル・ハーヴェイを昇進させ、CIAの全キューバ作戦、タスクフォースWの責任者に指名した。
 ヘルムズとハーヴェイは、カストロに対する暗殺計画を含む作戦の多くを、ケネディ大統領に秘密にしていた...。

 ビル・ハーヴェイは、キューバ危機の後、CIAローマ支局長として、イタリアでのグラディオ作戦を監督する立場にあった。
 ハーヴェイは、サルデーニャ島のグラディオ本部で行われた会議にマーク・ワイアット(Mark Wyatt 、イタリア駐在のもう一人のCIAエージェント)とともに出席していたとき、ケネディ大統領が撃たれたという知らせを聞いたとされる。(16)

 しかし、ワイアットが、フランスの調査ジャーナリスト、ファブリツィオ・カルヴィ(Fabrizio Calvi)に、グラディオ作戦についてインタビューで語ったところによれば、ビル・ハーヴェイは1963年11月にダラスにいたという。(17)

 下院暗殺委員会の調査官であるダン・ハードウェイ(Dan Hardway)は、同委員会からJFK殺害にCIAが関係している可能性を調査するように命じられ、数年後に次のような事実を認めている。(18)

「我々は、ハーヴェイを最初から第一容疑者の一人と考えていた。彼は、組織犯罪、カストロに対する陰謀が行われたマイアミのCIA基地など、すべてに重要なコネクションを持っていた...
 我々はハーヴェイの旅行券と公安関係のファイルをCIAから入手しようとしたが、彼らはいつも我々を妨害した。しかし、暗殺までの数ヶ月間、彼がよく旅行していたことを示唆するメモをたくさん見つけた。」

 タルボットはこう書いている。

 「ハントは息子に自分の話をしながらも、自分自身の計画への関与についてはあいまいなままであった。
 結局、彼(ハント)は、ケネディ殺害の周辺的な「補欠選手」「ベンチの暖め役」の役割を果たしたに過ぎないと言った。ハントによれば、「攻撃の司令塔」「クォーター・バック」はビル・ハーヴェイだった...
 カストロ暗殺チームを編成する間、ハーヴェイは、(後のCIA長官ヘルムスの許可を得て)様々な裏社会の専門家に接触していた。その中にはCIAが雇った悪名高いヨーロッパの暗殺者、コードネームQJ-WINと呼ばれる人物もいた。その男がコンゴ独立運動の指導者パトリス・ルムンバ(Patrice Lumumba)を殺したのだった。
 だからハーヴェイは、CIAローマ支局長として、再びヨーロッパの裏社会を探り、ダラスの殺人チームを作るのにうってつけの立場にあった」。

 このように、1963年11月にダラスに集結した奇妙な殺人鬼の中に、ドゴール大統領暗殺計画に関係していたジャン・スエトル(Jean Souetre)という悪名高いフランスOAS特殊部隊員がいたことは驚くにはあたらない。スエトルはケネディ暗殺後、ダラスで逮捕され、メキシコに追放された。(19)
 このシリーズの第3回で、OAS(Organisation Armée Secrète)が元フランス軍と情報機関の将校からなる主要なファシスト・テロ部隊であり、ヨーロッパ、南米、その他の地域での「グラディオ作戦」で主役を演じていることを思い出してほしい。

 クルーガーはこう結論付けている。

 「CIAの新しい公式の政策に加えて、いやむしろその背後には、非公式の政策がある。
 それは、以前はCIAの汚れ仕事であったことを実行するためにDEAを操作したり、独裁者の要請に応じてラテンアメリカで活動できるキューバ人亡命テロリストの大規模な独立軍を、奨励はしないまでも容認していることなどに表れている。...
 もちろん、この非公式な政策が、実際にはCIAから粛清されたか、より穏健な路線に抗議して去った、元工作員によって実行されているという可能性を否定することはできない。
 しかし、それはCIAの反乱分子が独立した秘密情報機関を運営していることを意味する...」。

[第5回は、このシリーズの締めくくりとして、今日のウクライナの状況を位置づける予定である。著者の連絡先はcynthiachung.substack.comである]。


NOTES

(1) Le Monde, 17-18 June, 1973, p. 11.
(2) Henrik Kruger. (1980) The Great Heroin Coup: Drugs, Intelligence & International Fascism. South End Press: pg. 89
(3) Ibid. pg. 203
(4) Ibid. pg. 145
(5) David Talbot. (2015) The Devil’s Chessboard: Allen Dulles, the CIA, and the Rise of America’s Secret Government. Harper New York: pg. 279
(6) Henrik Kruger. (1980) The Great Heroin Coup: Drugs, Intelligence & International Fascism. South End Press: pg. 130
(7) David Talbot. (2015) The Devil’s Chessboard: Allen Dulles, the CIA, and the Rise of America’s Secret Government. Harper New York: pg. 459
(8) Henrik Kruger. (1980) The Great Heroin Coup: Drugs, Intelligence & International Fascism. South End Press: pg. 143
(9) Jim Garrison. (1991) On the Trail of the Assassins. Warner Books: pg. 254
(10) A “baby sitter” is a term used by American intelligence agencies to describe an agent assigned to protect or otherwise see to the general welfare of a particular individual.
(11) Jim Garrison. (1991) On the Trail of the Assassins. Warner Books: pg. 61
(12) Ibid. pg. 102
(13) Ibid. pg. 72
(14) David Talbot. (2015) The Devil’s Chessboard: Allen Dulles, the CIA, and the Rise of America’s Secret Government. Harper New York: pg. 470
(15) Ibid. pg. 471
(16) Ibid. pg. 476
(17) Ibid. pg. 477
(18) Ibid. pg. 477
(19) Ibid. pg. 502

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動画で見る: 「死の津波」がやってきた。「もう絶対にコロナワクチンを打ってはいけない」。シェリー・テンペニー博士

<記事原文 寺島先生推薦>

Video: The “Death Tsunami” Is Here. “You should never ever take any Covid shot anymore”. Dr. Sherry Tenpenny

筆者:シェリー・テンペニー博士とピーター・ケーニッヒ

投稿元:グローバルリサーチ

2022年11月08日

<翻訳 寺島メソッド翻訳ルグープ>

2022年11月19日


***

 私たちは、かつてないほど激しい「死の津波」の中で生きている。シェリー・テンペニー博士が語る。

 動画を見るには、画面を下に下げてください。

 政府のデータによると、イギリスでは、予防接種を受けた73人のうち1人がすでに亡くなっているそうだ。さらに、ワクチンの強制的接種の結果、週に約1,000人が亡くなっていると言う。

 約900人のプロスポーツ選手がすでに死亡しており、その数は急速に増えている。そのほとんどが、ワクチン接種の結果引き起こされた心筋炎である。

 2021年初頭にワクチン接種を始めたとき、ワクチンが荷電していて、カギなどの金属片を腕や額にくっつけた人のインスタグラムの写真を何百人も見た、とテンペニー博士は言う。そんな写真を見たことがある人もいるかもしれない。

 これは明らかに、酸化グラフェンを大量に接種した結果だ。

 そのような写真がほとんど消えてしまったのは、彼らが注射の中身を変えたからかもしれないが、その物質はまだ身体に残っていると、同博士は示唆している。

 このことは、最初のワクチンが「試験的な薬品」のようなものだったことを示しているようだ。彼らはそれをやり過ごし、誰もそれを止めなかった。

 酸化グラフェンは、水素に触れると磁気を帯びる。テンペニー博士は、このことを証明する何百もの科学的文書に言及している。

 「彼ら」は、30億から50億の人々を地球上から消し去りたいと考えていることを、同博士は思い起こさせてくれる。

 それは「緩慢な殺害」であり、時には非常に痛みを伴う。しかし、ほとんどの人は、関連性がわからない。

 テンペニー博士の言葉は、元ファイザー社副社長で最高科学責任者のマイク・イェードン博士が、先に世界に向けて警告として述べたものと実質的に同じものだ。

 テンペニー博士は、この話を聞いている人も、そうでない人も、もう絶対にコロナワクチン接種をしてはいけないと忠告して話し終えている。

 まして、ブースター(追加接種)は絶対にダメだ。この警告は、単純なインフルエンザ予防接種、あるいはインフルエンザとコロナを組み合わせた予防接種にも適用される。なぜなら、これらの注射はすべて、「彼ら」は言わないが、殺人者の処方を含んでいるからだ。

 こちらを参照。

 結論、そう、確かに、極めて強制的な予防接種が始まってからちょうど1年後、大量死が始まった。「死の津波が、まさに人類に押し寄せているのだ。」

 この2分間の短い動画を参照。

(動画は原文サイトからご覧下さい。訳者)

*
ピーター・ケーニッヒは地政学アナリストで、世界銀行と世界保健機関(WHO)の元上級経済学者として、30年以上にわたって世界各地で勤務した経験を持つ。米国、欧州、南米の大学で講義を行う。オンラインジャーナルに定期的に寄稿している。著書に『インプロージョン-戦争、環境破壊、企業の強欲に関する経済スリラー』、シンシア・マッキニー著『中国がくしゃみをするとき』の共著がある。『コロナロックダウンから世界的政治・経済危機へ(From the Coronavirus Lockdown to the Global Politico-Economic Crisis)』 (Clarity Press - November 1, 2020)の共著者でもある。

ピーターはグローバル・リサーチ研究センター (CRG)の研究員である。また、北京の人民大学重陽学院の非常勤上級研究員でもある。

画像はChildren's Health Defenseから引用。

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米政権がマスコミを使って、ウクライナ支援を支持する世論を醸成しようとした手口

<記事原文 寺島先生推薦>

How the US government attempts to control public perception of its aid to Ukraine
A recent media expose on the US effort to arm Ukraine looks as if it’s been curated by the Biden administration to shape public perception
 
 米国政府が、ウクライナへの支援に対する米国の国民感情を抑制しようとしている手口とは 
 先日の報道により明らかになったのは、米国によるウクライナへの軍事支援に対する世論形成に、バイデン政権が関わっていたという事実だった。

筆者:スコット・リッター(Scot Ritter)


Scott Ritter is a former US Marine Corps intelligence officer and author of 'Disarmament in the Time of Perestroika: Arms Control and the End of the Soviet Union.' He served in the Soviet Union as an inspector implementing the INF Treaty, in General Schwarzkopf’s staff during the Gulf War, and from 1991-1998 as a UN weapons inspector.  
@RealScottRitter@ScottRitter

出典:RT

2022年11月5日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月19日
 

米国製FIM-92スティンガー・ミサイルを運搬中のウクライナ軍兵士たち©  Sergei SUPINSKY / AFP

 NBCニュースが出した記事によると、 この出来事をよく知っている4人の関係者からの話として、米国のジョー・バイデン大統領と、通話相手であったウクライナのヴォロデミル・ゼレンスキー大統領の電話会談が、怒りの電話になったという事件があったようだ。そしてその理由は、ゼレンスキーがバイデンにさらなる援助を要求したからだったという。

 6月15日、バイデンはゼレンスキーに電話をかけ、ゼレンスキーに10億ドルほどの支援(その中には米国防省の武器庫にある3億5000万ドル相当の武器や設備の譲渡や、米国防省「ウクライナ安全保障支援構想」のもとでの6億5000万ドルの追加支援も含まれていた)をウクライナに送ることになったことを伝えた。このような両大統領間での電話のやり取りが普通に行われるようになったのは、2022年2月にロシアがウクライナへの派兵を決めてからのことで、その電話では、バイデンがゼレンスキーに、支援計画における主要な支援があるごとに報告を行っていた。その計画では、6月15日時点で、米国による軍事支援として、56億ドルがウクライナに送られることになっていた。

 ただし今回の電話において、ゼレンスキーは、これまで行ってきたように、米国大統領に賛辞を送るのではなく、一歩踏み込んで、さらなる支援を要求し、6月時点での支援内容には含まれていなかったある特定の設備を要求したのだった。NBCの情報筋によると、バイデンが怒りを示したのは、その時点だったという。以下はNBCの記事からだ。「米国民はずっとかなり気前よくウクライナに支援してきたし、米政権や米軍もウクライナを助けようと必死に努力してきた、とバイデンは声を荒らげ、ゼレンスキーはもっとそのことに対する感謝の意を示せるだろう、と語った。」

 NBCの報道によると、バイデンが怒った理由は、ゼレンスキーが米国に対する感謝の気持ちが欠けていたためだという。(NBCによると、両指導者はそれ以降はお互い歩み寄ったとのことだ)。しかし、バイデン大統領府からすれば、段々と大きくなっている実感があったのだ。その実感とは、ウクライナでの戦争支援に白紙小切手を出し続けることに対して、国会の両党派からの支持が薄れてきたことだ。来たる中間選挙において、共和党が下院での過半数支配を取り返すことが期待されていて、上院での過半数支配も窺っているなか、バイデン政権は、選挙後から現職議員の任期がきれる来年1月までの、いわゆるレームダック*期間に、さらにウクライナへの支援として400~600億ドルを捻出する構えをとるようだ。この新しい支援計画については、共和党からの激しい反発が予想されていて、共和党の過半数支配下にある新たな議会が開かれるまで、その議案に対する回答を先送りする作戦に出ると見られている。
  *lame-duck 「足を引きずったカモ(アヒル)」から「再選に落ちて最後の任期を務めている落選議員(のいる期間)」の意。


関連記事: US troops on the ground in Ukraine – media

 NBCニュースが、バイデン・ゼレンスキー間の電話についての人騒がせな報道をする直前に、ザ・ニューヨーカー誌は、米・ウクライナ間の軍事協力の現状についての一際目立つ論説記事を出した。その記事の題名は、「ウクライナを軍事化させる米国の努力の内側」というもので、著者は同誌の寄稿者であるジョシュア・ヤファ氏だった。ヤファ氏は、広範に及びながら、詳細な視点で、米・ウクライナ間の複雑なやり取りをまとめ、軍装備の点だけではなく、米・ウクライナ間の軍や諜報機関の活発な協力体制についても触れている。具体的には、両国の軍や諜報機関が、今回のロシア・ウクライナ間の紛争で実際に行っている行動に関する記述もあり、米国がミサイル発射装置を提供した事実を裏付ける数値も示している。ミサイル発射装置の例をあげると、M777榴弾砲や、M142 高機動ロケット砲システムなどだ。

 この事実から以下の主要な2点を要約することができる。ひとつ目は、米国の兵器がウクライナがロシアに対抗する助けとなることで、世界に対して、「プーチンは打倒できる相手だ」ということを示せるという点だ。2つ目は、米国は、超えてはいけない線を踏み外して、戦争が激化し、モスクワ当局との直接対決にならないように細心の注意を払っている、という点だ。

 長年モスクワを拠点に活動していた体験のあるヤファ氏は、ロシア事情に関して経験豊富な記者だ。彼の筆による最新のこの記事を書くにあたり、ヤファ氏が利用している情報源は、幅広く規模も大きく、米・ウクライナ両国の抑えておくべき要人の公人たちを網羅している。名を明かしている情報源も、匿名の情報源もみな、ヤファ氏に内部情報のようなものを伝えるのに適した要職についている人々だ。そのおかげで、彼の記事は魅力的で、得られる情報も多く、読み応えもある。

 ウクライナ側でヤファ氏が取材したのは、アレクセイ・レズニコフ国防相、 ミハイル・ポドリャク大統領主席補佐官、アレクセイ・ダニロフ国家安全保障・国防会議書記、「ウクライナ軍の高官」である、ヴァレリー・ザルジニー軍総司令官の側近だ。ウクライナの高官が西側の記者たちと関わることはよくあることで、その目的は現在進行中のロシアとの紛争についての言説を形成する取り組みの一つだ。ヤファ氏がこれらの人物たちにインタビューできたことが、驚きではない。むしろ、これらの高官たちが、これまでは不明瞭だった、この紛争で実際に取られている、米国とウクライナ間の緻密な協力関係についての詳細を明らかにしたことが、驚きだった。

 米国は他諸国との秘密の協力関係を明らかすることについては、非常に気をつけている。このような問題に関して沈黙を貫くことは、米国側の関係者たちだけにとどまらず、この秘密活動に関わっている外国側の人々にも課されている。端的に言うと、上記のウクライナ側の3名の高官たちが、ヤファ氏の前に座って、このような米・ウクライナ間の協力体制について話をすることに同意するなど、普通はありえないのだ。
それが可能になるのは、事前にバイデン政権がこれらの高官たちに、取材を受けることを承認していた場合のみだ。

 これらのウクライナ側の高官たちが、この件に関するヤファ氏の取材に対して協力することを決めた際に、バイデン政権がどれだけ絡んでいたかは、この記事の取材に応じた匿名の情報筋について詳しく調べれば明らかになる。「対ウクライナ政策に関わっていたバイデン政権内の役人」、「国防省の高官」、「バイデンの大統領府内でのウクライナ問題に関する議論の内容を知っている人物」、「行政官」、統合参謀本部議長ミリー将軍に近い「米国の高官」、「バイデン政権内の高官」、そして「米国諜報機関の高官」などの多くの人々が、ヤファ氏のインタビューに応じていた。


関連記事: Moscow issues update on frontline reinforcements

 情報が漏れないように細心の注意が払われている国家安全保障関連の活動に触れた経験がある人なら誰でも承知していることだが、このような活動に関しては2つの厳しい壁がある。ひとつは、このような活動は厳しく機密が守られていて、しかも全体像が見えにくいよう細分化されているという壁で、もうひとつは、 このような活動について、権威からの許可なしに、活動の内容を外に漏らすことは、重大な法律違反行為とされ、情報をメディアに渡したものは誰でも、処罰や投獄の対象となる、という壁だ。

 そうであるので、ヤファ氏が利用したすべての情報筋は、集団自殺をすると言われているネズミ科のレミングのような欲求に即座に囚われて、目に見えない崖から飛び込もうと、自身の経歴を失い、牢屋に入れられることも辞さずに、ニューヨーカー誌の若きヤファ記者が、一世一代のスクープを書きあげる手助けをした、ということになる。 あるいは、ヤファ氏の記事は、バイデン政権の情報戦の一環で、その記事を出させる目的は、米・ウクライナ間の軍事協力関係について肯定的な世論を形成するためだとも考えられる。つまり、大手メディアを使ってウクライナの件を世間の討論の場に持ち込むという、中間選挙に向けた世論形成を行おうという、政権側の各所に手を回した努力、の表れ、と取ることもできるのだ。

 私なら後者に賭ける。

 良質な報道とはすべて、「下から上に向かう」記事だ。記者が或るネタを嗅ぎつけ、現場に向かい、関係者から話を聞こうと走り回る記事だ。速記記事とは、情報筋が、自分の口元に差し出してきた匙の中にあるネタを書く記事のことだ。その情報筋の狙いは、とある企みに資することだ。事実に基づく真実を追い求めることが目的では全くない。重要案件についての世論形成が、その目的だ。

 ヤファ氏の「ウクライナを軍事化する米国の努力の内側」という記事は、政府が監督した狡猾で秀逸な速記記事だ。こんな記事を、報道とは呼べない。すべての読者は、そのことを心して読むべきだ。
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30名の民主党員が、バイデン大統領に、ロシアとの交渉を求める書簡を送ったが、すぐに引っ込めた。ロシアと交渉しようとするだけでも許されない、ということだ。 

<記事原文 寺島先生推薦>

30 Democrats walk into the White House demanding diplomacy with Russia. Yes, this is a joke

A group of US representatives appealed to President Joe Biden to pursue diplomacy with Russia, only to retract their letter shortly thereafter, proving that not even the suggestion of talking to Russia is tolerated 

30名の民主党員が、ホワイトハウスに乗り込み、ロシアとの交渉を要求したが、それはただの冗談に過ぎなかった。
米国の国会議員の一団が、ジョー・バイデンにロシアとの交渉を行うよう求めたが、すぐにその書簡を引っ込めた。このことからわかることは、ロシアと話し合いをもつことを提案することさえ許されない、という事実だ。
  
 
筆者:ロバート・ブリッジ(Robert Bridge)
Robert Bridge is an American writer and journalist. He is the author of 'Midnight in the American Empire,' How Corporations and Their Political Servants are Destroying the American Dream.
@Robert_Bridge

出典:RT

2022年10月26日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月17日

 
米国国会議事堂案内所で、国会議員による株取引を禁止する件に関する記者会見時の民主党国会議員3人。左からアレクサンドリア・オカシオーコルテス(ニューヨーク州選出)議員。プラミラ・ジャヤパール(ワシントン州選出)議員。ジョー・ネグズ(コロラド州選出)議員© Tom Williams/CQ-Roll Call, Inc via Getty Images

 今週(10月最終週)、30人からなる民主党国会議員団が、モスクワ当局との交渉を要求した。その動機は、核の冬を避けたいというよりは、明らかに11月の中間選挙での大敗北を避けたいがためだった。しかし数時間後に、彼らはその「過激すぎる」立場を即座に撤回した。

 老齢の帝王、ジョー・バイデンに宛てた仰々しい書簡の中で、これらの議員団が求めていたのは、「積極的な外交努力や、休戦に向けた現実的な骨組みを模索する努力の加速」という内容に過ぎなかった。このような要求は、イーロン・マスク氏が先日提案していた和平計画の内容とは、ほど遠いものであった。マスク氏がとりわけ求めていたのは、クリミアをロシア領にとどめるべきだという主張(クリミアは1783年以来ずっとロシア領だった。フルシチョフ書記長が、間違ってウクライナに割譲してしまうまでのことだが)と、ウクライナは中立国であるべきだ、という主張だった。しかし、物乞いには選り好みは許されない*、のだ。
     *米国支配体制が示す範囲内でしか行動できない民主党議員を「物乞い」に喩えている。

 「核兵器が使用される危険性が、冷戦時代の対立が最も激しかった時期以来、これまでになく高まっています」、とこの民主党員の一団は、書簡に記し、ウクライナのヴォロデミール・ゼレンスキー大統領を不用意に煽ることがないよう求めていた。ゼレンスキー大統領は、ロシアのウラジミール・プーチン大統領と話をする気は全くない、と言っているからだ。「この理由のため、大統領に緊急に取り組んでいただきたいのは、米国がこれまでウクライナに対して行ってきた軍事的支援や経済的支援を、積極的な外交努力と結びつけ、休戦に向けた真の骨組みを模索する努力を加速することなのです。」


関連記事: バイデン氏に和平追求を促す書簡を撤回する議員たち

 この皮肉はナイフで薄切りできる(ほど緊迫感に満ちている)。なぜなら、核戦争による被害が差し迫っているという誇大宣伝は、すべてワシントン当局が出所になっているからだ。先日、バイデンは、聴衆に以下のような発言をして、民主党の資金源の人たちを驚かせたところだ。「私たちは今、ケネディとキューバのミサイル危機以来のアルマゲドンが発生する危険に直面しているという事実に向き合えていません・・・。(プーチンは)冗談で、戦略的核兵器や生物兵器や化学兵器を使う可能性がある、と言っているのではありません。というのも、今ロシア軍は思ったような戦果を上げられていないからです」、と。民主党が理解し損ねているのは、モスクワ当局はウクライナでもどこでも、大量破壊兵器を使用するなどと脅したことはない、という事実だ。

 このように自分の言い分だけを信じ込んで、民主党はうっかり眠れる巨人を起こしてしまったのだ。その巨人とは、反戦活動だ。この運動が大規模に見られたのは、2003年のイラク侵略時以来のことだ。アレクサンドリ・オカシオ-コルテス(以降AOC)は、5月にウクライナへ400億ドルの軍事支援を送る議案に賛成票を投じていた。そのAOCは、今月(10月)の質疑応答会で、数名の反戦活動家という希有な存在と記憶に残る面会を果たしていた。

 「あなたは、当初、はみ出しものとして出馬されていましたよね。それなのに、あなたは今回のウクライナでの戦争を始める議案に賛成票を投じ続けていますね」。聴衆の中にいた一人の青年男性の声が、AOCの耳にとまった。「あなたはロシアや中国との第三次世界大戦を始めようという議案に賛成票を投じていることになります。あなたはなぜ、米国市民たちの命をおもちゃにするようなことをしているのですか?」
 
 さらにもうひとりの反戦活動家は、AOCに民主党を離党するよう懇願していた。その活動家は、トゥルシー・ギャバード元下院議員が、離党する意思を発表したことをひきあいに出していた。ギャバード元議員は、民主党のことをこう批判していた。「臆病なウォーク(人種差別などに対する意識が高すぎること)に引きずられている、戦争亡者である支配者層たちの陰謀団」、だと。

 言うまでもないことだが、ギャバード元議員が言っていたような姿は、民主党が中間選挙の直前に有権者に植え付けたい印象ではない。特に、「戦争亡者」であることが米国の国家予算では到底支払えないような代償を伴う場合はなおさらである。もう少し穏健な言い方をすれば、ジョージ・ソロスのような人々から選挙運動の資金援助を受けているAOCが、おまえは偽善者だと罵られたということだ。国会に出馬した際、AOCは何百万人もの民主党員に対して、自身は「環境活動家・社会主義者・平和運動家」であり、普通の男性・女性・トランスジェンダー・絶滅危惧種たちを、企業の暴走から守るという姿で売っていた。しかし一瞬にして、AOCは巨大企業にとっての、ただの画面映りのいい、太鼓持ちになりさがってしまった。その巨大企業の例をあげると、レイセオン・テクノロジーズ社だ。同社は169億5千万ドルという巨大な利益をあげている。その理由の大部分は、現在進行中のウクライナでの紛争のおかげで、ミサイルや防衛装置の契約が増えたからだ。


関連記事:アレクサンドリア・オカシオ・コルテス、公会堂で抗議者をあざ笑う

 米国経済が大不況に向かって歩を進めている現在、多くの米国民は、ウクライナの大統領に、彼が必要とするものを、ずっと指図され続けている現状に嫌気がさしている。結局のところ、これは意外かもしれないが、ウクライナのことは、米国民たちにとって最重要課題ではないのだ。世論調査の結果が出るたびにあきらかになっているのは、ほとんどの米国民にとっても最優先課題は、止めどなく進行するインフレだ、という事実だ。結局、米国民の9割が地図のどこにあるかを言えないような、そんなはるか遠い国でおこっていることなど、誰も気にしていないのだ。そんなことより、月末にお金がなくて、家賃や暖房費が払えないことのほうが切実だ。しかしゼレンスキーは、そんなことは気にしていないし、ゼレンスキーを操っている貪欲な勢力もそうだ。自己資産が推定2000万ドルあって、豪邸に住み、各種不動産も所持しているゼレンスキーなら、インフレ問題など、2の次どころか3の次の問題とさえ思えるだろう。

 民主党員、少なくとも党員のうちの何名かは、米国民が、ゼレンスキー政権に白紙小切手を渡すという政策に辟易していることにやっと気づいたようだ。いっぽう共和党は、11月の中間選挙で勝利すれば、キエフ当局への資金提供を終わらせる警告を出しているが、その共和党が票を伸ばしている理由は、国家支出を抑え、国境を封鎖する政策を立てているからだ。国境を封鎖することについては、特に多くの共和党員にとっては重要な点だ。多くの共和党員が、こんな質問をしている。「なぜ民主党員が、ウクライナがロシアとの国境を補強することにこんなにも関心があるのだろうか? その一方で、米国とメキシコ間の国境が、ひろく開放されていて、あらゆる種類の犯罪の種が入り込んでいる問題には目も向けないのに。」

 悲しいかな、民主党員はウクライナ国民を使ったロシアとの代理戦争に完全に加担していて、ウクライナ国民は使い捨ての砲弾の餌食にされている。ウクライナ国民は、他の点においては知的な国民だったが、中立国という立場を維持する絶好の機会を逃してしまった。NATOからの圧力に耐えかね、巨大な隣人に対する無益な戦いでダビデ像を演じたからだ。しかし、現代の筋書きにおいては、巨人を倒せるような魔法の石は存在しない。ウクライナにとって悲劇の運命となったのは、いつものあの連中が、モスクワ当局が12月に出していた和平計画を拒絶し、その代わりに、モスクワがウクライナに対して特殊軍事作戦を行うと発表するしかないように追い込むのを選んだことだ。ウクライナ国民の何人が、以下の簡単な質問を自問したことだろう? それは、「中立国であるという状況が、国家に損害を与えることなどあるのだろうか?」という問いだ。中立国であることで、スイスは苦しんでいるだろうか?そんなことはほとんどない。スイスは欧州で最も裕福な国の一つで、資産家たちがスイスの諸銀行に列を成している。中立国であることで、フィランドは被害を受けただろうか? いや、そんなことはない。フィンランドは、CEOWORLD誌が2021年の記事で出した、「2021年、世界で最も生活の質の高い国」で一位に選ばれているのだから。


関連記事: ウクライナの銀行が2セントで買収される可能性

 そして今、民主党員の一団は、今回の選挙運動期に、ロシアとの対話を求めている。たとえ彼らがすぐにそれを撤回しなかったとしても、これは「些細なことだ、手遅れだ」と言うことはかなり控えめな表現になるだろう。というのも、これらの民主党員たちが、心の底から反戦の立場を示していたのであれば、何十億万ドル相当の武器がウクライナに垂れ流される前に、平和の声を大声で叫んでいたはずだ。だからこそ、いま平和を実現するということは、ほぼ不可能な夢なのだ。

 残念なことに、モスクワ当局も同様の結論を出さざるを得なくなっている。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が先日発表したところによると、ロシアは西側への外交努力から撤退する可能性がある、という。その際、同外相が触れていたのは、西側各国政府の対ロシア外交が、ますますあからさまに敵意を表している、という事実だった。

「ロシアは、ほとんど人間扱いされない状況で活動しています」、とラブロフ外相は語り、さらに、「問題や脅威が常に継続している」とした。同外相はさらに付け加えて、外交における存在感をこれまでと同程度に維持することには、「意味がない」とした。

 言い換えれば、今私たちは人類史上最も不吉な時代を迎えているということである。というのも、世界の二大核保有国間で、外交努力を行う機会が事実上消滅してしまっているからだ。近年、世界がこのような状況に置かれたことはない。冷戦時、最も激しい対立があったときでさえそんなことはなかった。残念ながらワシントン当局は、このような危険な状況を迎えてしまった責めを負わなければいけない。そして今、このような状況を止められるのは、ウクライナ国民だけだ。ウクライナ国民が、自国の指導者たちに要求して、ロシアとの紛争に縛られることから抜けだし、ウクライナが中立国であるべきという条件を飲むことしかない。この惑星の将来は、本当にこの点にかかっている。
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アメリカが掲げる「麻薬戦争」の実態、そしてその終結を目指すコロンビア新大統領

<記事原文 寺島先生推薦>

The US War on Drugs Isn’t What it Seems – and Colombia’s New President Wants to End it

アメリカの「麻薬戦争」の実態は表面からは見えない---コロンビア新大統領はそれを終結させたいと思っている

筆者:ブラドレイ・ブランケンシップ(Bradley Blankenship)

出典:INTERNATIONALIST 360° 

2022年8月14日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月16日



 南米に対するアメリカの覇権への強烈な攻撃を約束するグスタボ・ペトロ

 8月7日、左派のグスタボ・ペトロ(Gustavo Petro)がコロンビアの新大統領に就任した。長年右派政権だったコロンビアにとって、前例のない政治の揺り戻しの始まりとなる。ペトロは最初の演説で、気候変動、貧困、教育、そして特に、いわゆる「麻薬戦争」など、コロンビアが直面する多くの重要な問題について言及した。

 (以下引用)
 「今こそ、薬物戦争が音を立てて失敗し、過去40年間に100万人のラテンアメリカ人(そのほとんどがコロンビア人)を殺害され、北米では毎年7万人が薬物の過剰摂取で死亡していることを受け入れる新しい国際条約が必要だ。この薬物は、どれひとつとしてラテンアメリカで生産されているわけではないのだ」と彼は言った

 ペトロは、さらに言葉を続けた:この戦争が「マフィアを強化し、国家を弱体化させ」、他方、各国を犯罪に走らせたのだ。その中にはコロンビアも入る。そして、「生命を受け入れ、死を生みださない」新しいパラダイムを呼びかけると同時に、世界の麻薬政策を変えることができるのに、そうしないアメリカを非難した。

 (引用はここまで)

 米国主導の「麻薬撲滅戦争」において、コロンビアは最も重要なパートナーであり、このペトロの宣言はまさに画期的なものだ。コロンビアが現状を否定することは、国際社会に衝撃を与え、軍事優先の対応ではない新たな戦略について多国間で議論するきっかけになるだろう。

 注目すべきは、ペトロが、今は存在しない左翼準軍事組織M-19と過去に関係があったことから、麻薬戦争について多少なりとも知っていること。この戦争には深い矛盾がある。コロンビアに対するアメリカの軍事援助と訓練は、麻薬取引との戦いよりも、反共産主義、つまりM-19のような集団の鎮圧に重点を置いてきたという事実である。

 アメリカは、コロンビア軍を含む、十分に文書的裏付けのある人権侵害を行ったコロンビア国内の集団に軍事援助を送ったことがある。クリントン政権は、米国の国家安全保障にとってきわめて重要だとして、このような援助に通常付される人権に関する条件の大半を放棄することまでした。アメリカはまた、コロンビアの左翼勢力との闘いに過度の関心を向ける一方で、右翼勢力、例えば米国資本を支持する勢力を、たとえそれが麻薬取引と関係があったとしても支援する。

 その顕著な例として、ジョージ・ブッシュ元米大統領から米国文民最高賞である大統領自由勲章を授与されたアルバロ・ウリベ(Alvaro Uribe)元コロンビア大統領は、米国情報機関によって同国の麻薬取引と結びついていることが確認された。彼は今もコロンビア政界の有力者であり、2002年から2010年までの在任期間中、この地域におけるワシントンの主要なパイプ役を務めていた。

 こうした冷戦政治に伴う矛盾の上に、ペトロは米国主導の「麻薬戦争」の内部矛盾も正しく指摘している。麻薬禁止という国内政策はうまくいっておらず、人々はいたるところで死んでいる。米国の平均寿命は、現在進行中のCovid-19の大流行によって低下している。しかし、貧困と麻薬の蔓延が、平均寿命低下の一番の原因となっている。

 このことは、RTのコラムでさまざまな論点について何度か書いた中で、私自身にとって特に重要な点である。オハイオ州シンシナティに生まれ、ケンタッキー州北部で育った私は、米国におけるアヘン危機の震源地であり、これらの薬物の破壊的な影響を直接目にしてきた。私は、そのためにバラバラに離散してしまった家族をいくつも知っている。中毒による困窮を目の当たりにし、さらに過剰摂取、自殺、ギャングによる殺人で12人ほどの同級生を失った。

 ひとつ言えることは、現状はうまくいっていないということだ。せいぜい、再犯や再発が避けられないようなフィードバック・ループ(経過の振り返りを繰り返すこと)を生み出すだけだ。その一方で、民間のリハビリ施設や大手製薬会社は最終的には利益を得ている。その結果、米国ではこれまでと同様、貧困故の犯罪が生じることになる。なぜなら、世帯収入の低さは、おそらく薬物乱用の最も重要な指標だからだ。

 このことがとりわけ重要なのは、国内的にも国際的にも、貧困が「麻薬戦争」の諸矛盾が交錯していることを示しているからである。すなわち、この戦争は、ワシントン政権の、後退的で、新自由主義的な動きの延長線上にあり、国内外を問わず、アメリカの富裕層独裁に挑戦するすべての社会運動を粉砕することが目的なのだ。

 このアメリカという帝国は、言語に絶する犯罪を、どうしても犯してしまいかねない傾向を持つ国であり、その傾向のせいで被害を受けた人々に対して、道徳的な正義心をもたないだけでなく、信頼もできないし、無責任で、一貫したところが何もないことをさらけ出してきた。アメリカ帝国主義が必然的に下降線をたどるなか、国際社会の利益にそぐわない既存の政策を変更する機会の窓は自然に開かれることになるだろう。グスタボ・ペトロ大統領が、新しい国際的な麻薬撲滅という視点を呼びかけたのもその一つだ。




関連記事

ウクライナ戦争はアメリカ製―ロシアに軍事的対応を強いた米国

<記事原文 寺島先生推薦>

The War in Ukraine: Made in Washington Not Moscow

筆者:マイク・ホイットニー(Mike Whitney)

出典:Global Research

2022年10月24日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月16日



「あなた方はまだ危機感を抱いていません。それが心配です。世界が取り返しのつかない方向に引っ張られているのがわからないのですか。

その一方で、あなたがたは何も起こっていないふりをしています。もう、どうしたらいいのか、わたしにはわかりません。」
 

ロシア大統領 ウラジーミル・プーチン、YouTube、12分の動画 

 「ロシアは核兵器を厳戒態勢に置いています。。これは本当に重要な状況の進展です。彼らは.....非常に強力な合図を送ってきているのです。もし我々が勝ち始め、ロシアが負け始めたら、私たちが話していることを理解する必要があります。ここでやっていることは核武装した大国を―彼らはいま起こっていることを実存的脅威*とみなしています―追い詰めることなのです。これは本当に危険なことです。 
    *自分の国の存続が脅かされている状況

 キューバ危機を思い出してください。キューバ危機で起こったことが、ロシアにとって今回の状況ほど脅威的だったとは思えません。しかし、当時を振り返って米国の意思決定者が何を考えていたのかを見てみると、彼らはひどく怯えていたのです"。



ミアシャイマー:「ロシアを追い込む」ことの危険性。ツィッター上の動画の1分19秒の部分を参照

 プーチンは、西側の国境であるウクライナにワシントンの核ミサイルが駐留することを望んでいない。安全保障上の理由から、彼はこれを許すことができない。彼はこのことを何度も何度も辛抱強く明言してきた。開戦の1カ月以上前、2021年12月21日に彼が言ったように。

 「米国とNATOのミサイルシステムがウクライナに配備された場合、モスクワまでの飛行時間はわずか7~10分、極超音速システムなら5分にまで短縮される。

 アメリカの大統領は、潜在的な敵対国がメキシコとアメリカの国境沿いの場所に核ミサイルを配備することを許さないだろう。国家安全保障に対する危険があまりにも大きすぎるからだ。

 実際、アメリカだったら平然とミサイル基地を武力で撤去するだろう。私たちは皆、それを知っている。では、なぜロシアには同じ基準が適用されないのだろうか。関係者全員が何が問題なのかを知っており、「近隣諸国の犠牲の上に自国の安全を向上させない」ことを約束する条約に署名していることを知っているのに、なぜ政策立案者はアメリカやNATOの側に立つのだろうか。これは、カクテルを飲みながら気軽に交わした意味のない「口約束」ではなく、署名者が守るべき条約に署名した約束なのである。(注:米国とNATOに加盟するすべての国は、1999年のイスタンブール*と2010年のアスタナ**で、他国を犠牲にして自国の安全を向上させないことを規定した条約に署名している)。NATOの拡大がウクライナの安全保障を強化し、ロシアの安全保障を弱体化させることは疑いようがない。それだけは議論の余地がない。そして、これは単なる条約違反ではなく、宣戦布告に等しい明確な挑発行為である。レイ・マクガバンによる記事からの抜粋をご覧いただきたい。この記事は、西側メディアによって省略されてきたいくつかの重要な詳細について光を当てている。
    *トルコで最大の都市  **カザフスタンの首都

 「ウラジーミル・プーチン大統領は、ロシアが直面していると信じる存亡の危機について何度も警告してきた。というのも、西側の国境沿いにはロシアがトマホークのような「攻撃型ミサイル」と呼ぶものがあり、そしていずれは極超音速ミサイルまで配備されようとしているからである。

 いわゆる「ABM*基地」がルーマニアにはすでに設置され、ポーランドでも完成間近になっており、コンピューターディスクを挿入すれば、一晩でトマホークと極超音速ミサイルを格納できる。6年前に西側のジャーナリストの小グループに行った異例の口頭説明で、プーチン自身がこのことをはっきりと示していた。(このビデオの最初の10分間を視聴ください)。
    *弾道弾迎撃ミサイル。Anti-Ballistic Missile

 2021年12月21日、プーチン大統領は軍の最高指導者たちにこう言った。

 「米国の地球規模の防衛システムの要素がロシアの近くに配備されていることは、極めて憂慮すべきことだ。ルーマニアにあり、ポーランドに配備される予定のMk41発射機は、トマホーク攻撃ミサイルの発射に適合している。この基礎設備がこのまま進み、米国やNATOのミサイルシステムがウクライナに配備されれば、モスクワまでの飛行時間はわずか7~10分、極超音速システムなら5分程度で済むようになる。これは、私たちにとって、私たちの安全保障にとって大きな挑戦である。」

 2021年12月30日、バイデンとプーチンは、プーチンの緊急要請により電話で会談した。クレムリンの情報提示ではこうなっている。

 「ジョセフ・バイデンは、ロシアとアメリカがヨーロッパと全世界の安定を確保するための特別な責任を共有しており、ワシントンがウクライナに攻撃型打撃兵器を配備する意図はないことを強調した。」 プーチンの外交政策最高顧問であるユーリ・ウシャコフは、これはモスクワが米国とNATOへの安全保障の提案で達成したい目標の一つでもあると指摘した。

 ...2022年2月12日、ウシャコフは、その日の早い時間に行われたプーチンとバイデンの電話会談についてメディアに報告した。

 「この電話は、再確認のようなものであった...12月30日の電話会談の...。ロシア大統領は、バイデン大統領の提案が、NATOの非拡張に関しても、ウクライナ領土への攻撃兵器システムの非展開に関しても、ロシアによる提案の中心的で重要な要素に真面目に対応していないことを明らかにした... これらの項目に対して、我々は意味のある返答を受け取ってはいない。」

 2022年2月24日、ロシアはウクライナに侵攻した。なぜ多くのアメリカ人が「(この侵攻には)正当な理由がない」という大嘘を信じるのか、私にはわかる。彼らはただ単に知らされていないだけなのだ。(「情け容赦なき攻撃の対象:キューバ危機のときのケネディ、そしてウクライナ戦争のプーチン」、レイ・マクガバン、antiwar.com)

 これは何を意味するのだろうか。

 バイデンは当初の約束から手を引いたということだ。ロシアが侵攻する前に、プーチンのささやかで正当な安全保障上の要求を考慮することさえ拒否したということである。NATOの拡大の脅威、特にロシア西部の国境にある致命的なミサイルの脅威は、プーチンに自らの安全保障の盾を確立するために軍事的に対応する以外の選択肢を与えないことを、ワシントンは知っていたということである。プーチンはこのように要約している。

 「我々は誰も脅かしたりしていない。これ以上NATOの東方への拡大は受け入れられないということを明確にしたのだ。これに関して不明瞭なところはどこもない。我々は米国の国境にミサイルを配備していないが、米国はわれわれの家の玄関にミサイルを配備している。私たちは多くを求めすぎているのだろうか? 私たちが望んでいるのは、ただ、彼らが私たちの家に攻撃システムを配備しないことだけなのだ。それを理解することはそんなに難しいのだろうか?(「ロシアのプーチン、米国は私たちの家の玄関先にミサイルを駐留させている」、YouTube、開始時間:48秒)



 合理的に考える人なら誰でも、プーチンは頭に銃を突きつけられていて、同じような状況で「責任あるリーダーならすること」をしなければならなかったと結論づけるだろう。

 しかし、プーチンは「責任ある指導者なら誰でもすること」をしなかった。それどころか、彼は待ったをかけた。しかし、ウクライナのNATO加盟という脅威は、侵攻のきっかけとなる罠とはならなかった。プーチンが侵攻せざるを得なかったのは、ウクライナ東部のドンバスと呼ばれる地域で、ロシア系市民が砲撃されたからだ。以前の記事で述べたとおりである。

 何が実際には起きていたのか?

 2月16日、ロシア軍侵攻のちょうど8日前のことだが、ドンバスへの砲撃は激増し、その後1週間にわたり着実に強化され、「2月22日には1日2000発以上」という規模にまで達した。これらの砲撃の大半は、最前線にいた欧州安全保障協力機構(OSCE)の監視団によって毎日の要約の中に記録されていた。言い換えれば、ウクライナ軍が自国民の住む地域に対して大規模な砲撃を行った証拠を文書化し、訓練を受けた専門家が記録したものである。今日に至るまで、この文書化された証拠の目録に異議を唱えた研究者は一人もいない。にもかかわらず、メディアは証拠が存在しないかのように装っている。彼らはその砲撃を完全に消し去ったのだ。そして歴史的記録を完全に無視したワシントン中心主義的な出来事を作り上げたのだ。 (「私たちの中にはロシアの侵攻を「侵略」と考えない人もいる」, Unz Review)    

 私たちが言ったように、これがロシア侵攻の引き金となった罠である。この「特別軍事作戦」は、基本的に国家安全保障上の緊急課題と密接に結びついた救出作戦であった。いずれにせよ、戦争の近因は、NATOの拡大ではなく、ドンバスの民間人地区への砲撃にあったのである。

 今週、イタリアのベルルスコーニ元首相の秘密録音がインターネット上で公開され、ロシアの侵攻に至るまでの出来事に関する我々の見解が、事実上正確であることが確認された。マリア・タデオのTwitterアカウントに掲載されたこの文章をご覧ください。



 以下は、RTの記事からの引用だ。

 イタリアの元首相は、ロシアとの対立を煽ったとしてキエフを非難したと報じられた...。

 イタリアの元首相シルヴィオ・ベルルスコーニは、キエフがウクライナ東部の和平計画(ミンスク条約)を反故にしてロシアとの紛争を誘発したと主張していると、メディアに提供されたテープが示唆している...火曜日に、ベルルスコーニはフォルツァ・イタリア党員に向けて、ウクライナ危機の起源についての視点を提供したと伝えられている。それは「隣国に対するロシアによる正当な理由のない侵略」というNATOが好むシナリオと衝突するものだった..

 その音声の一部分では、ベルルスコーニがキエフがドネツクおよびルガンスク人民共和国との和平協定を何年も守れなかったと非難しているのが聞こえる。2019年にウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領が政権を握ると、彼はこの地域への攻撃を「3倍」にしたと、この政治家は述べている。

 ドネツクとルガンスクはモスクワの保護を求めた、と彼は続けた。ロシアのプーチン大統領はウクライナに軍隊を送り込み...」(「ベルルスコーニ、ウクライナに関するNATOのシナリオをつぶす―メディア」、RT通信社)。

 ベルルスコーニをあなたがどう評価するかは別にしても、彼の言い分は欧州安全保障協力機構(OSCE)の監視員が作成した砲撃激化の報告と完全に一致する。(なぜメディアは、この歴然とした信用できる主張を調査しなかったのだろうかと不思議でならない。これは「ウクライナで戦争を始めたのは本当は誰なのか」という公式見解に考慮すべき疑問を投げかけるものだからだ。

 ダグラス・マクレガー大佐は、最近のYou Tubeのインタビューで、プーチンがウクライナで包囲されているロシア系民族の安全を確保するために、米国とEUに事態の収拾と暴力の停止を訴え、あらゆる努力をした」と説明し、「しかし、プーチンの要請は聞き入れられなかった」と総括している。

 「プーチンは、この大きな多民族国家の中で、ロシア国民はウクライナ国民と同じように法の下で平等に扱われるべきだということを、イギリス、フランス、ドイツ、そして我々に必死に理解してもらおうとした。(しかし)ゼレンスキーたちは『いやだ。我々と同じになるか、ここから出て行くかだ』と言った。そしてその結果、この悲劇的な(ロシアの)介入を招いた...。

 ロシアは「ウクライナを征服する」ことにも、キエフに駆け込んで「銃を突きつけて平和にする」ことにも、まったく興味がなかった。しかし、今、ゼレンスキーが強権的になり、彼の黒幕も強権的になったのは、我々(米国)が『ロシアを血祭りに上げる』と決めたからだ。我々はロシアを制裁し、その経済を破壊するつもりだった。何十万人ものロシア人を殺し、最終的にはロシアを我々の意志に従わせ、より全世界的なアメリカ支配の金融システムの臣民とするつもりだった。

 しかし、それはうまくいかなかった。制裁はすべて裏目に出た。今、絶望的な問題を抱えているのは、ヨーロッパの同盟国である。我々も絶望的な問題を抱えているが、それはヨーロッパほど深刻ではない。その上、我々はロシア軍を破壊することに全く成功していない。ロシア軍は非常によくまとまっており、先ほど申し上げたように、現在、南部では戦力の節約作戦が展開されていて、ミンスクからロシア西部に向かって軍隊が大規模に増強されているが、それはいずれは (おそらく) 地面が凍ったときに開始されるだろう。なぜなら、そのような地形で作戦を展開するにはその時期が最適だからだ。

 先に、これが何であるかをお話した。ロシアを滅ぼそうとする試みがあるのだ。ロシアはヨーロッパのような道を歩むことを拒否しているので、排除しなければならない血の敵とすることにしたのだ。(「大規模な戦力の増強」、ダグラス・マグレガー大佐。 You Tube、3分)



 これほど真実味のある言葉はない。アメリカは、ロシアを血の敵とすることを決めた。なぜなら、ロシアは踵を返して言われたとおりにすることを拒否しているからだ。ロシアは、崇高な「規則に支配された組織」の中で、もう一つの鼻持ちならない小間使いになることを拒否しているのだ。

 だから今、我々はロシアとの本格的な地上戦に入っている。この戦争は、ワシントンによって企てられ、扇動され、資金を供給され、指導され、細かく管理されたものである。この戦争は、イラクやアフガニスタンがワシントンの戦争であったのと同様に、いかなる客観的基準においても、ワシントンの戦争である。今回の違いは、敵は自らを守ることができるだけでなく、米国本土をくすぶる瓦礫の山にする手段を持っていることだ。最近、プーチンの発言が思い出されるが、マスコミはこれを見逃したようだ。プーチンはこう言った。

 「我々は持てる全ての力と資源で国土を守り、国民の安全を確保するために出来る限りのことをする。」

 バイデン氏のチームの誰かが、それが何を意味するのか理解するのに十分な賢さを持っていることを、私たちは願っている。

 この記事はThe Unz Reviewに掲載されたものだ。

マイケル・ホイットニーは、ワシントン州を拠点とする、著名な地政学・社会学の分析家。誠実な報道、社会正義、世界平和への献身を掲げ、2002年に独立した市民ジャーナリストとして仕事を始めた。
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チェコのプラハで、対ロシア制裁とウクライナへの支援の中止を求める大規模デモが発生

<記事原文 寺島先生推薦>

Major protest in EU capital calls for direct gas talks with Russia

Prague rally demands resignation of government, decrying its support for Kiev and anti-Russia sanctions

EU加盟国の首都で、天然ガスについて、ロシアと話し合いを要求する大規模デモが発生
プラハでの抗議集会は、政府の退陣を求め、キエフ当局への支援とロシアへの制裁を非難

出典:RT

2022年10月28日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月15日


10月初旬、プラハで、高騰するインフレに対する抗議活動を行っている市民連合の人々。© Getty Images / Sean Gallup

 10 月30 日(金)、何万人ものデモ参加者が、プラハの中央広場を覆い尽くし、チェコ政府が対ロシア制裁と、ウクライナ支援計画を支持する中で進行しているインフレを非難した。

 デモ参加者たちは、モスクワ当局との天然ガスについての直接の話し合いを持つことと、ペトル・フィアラ首相とその内閣の退陣を求めた。参加者たちは、チェコ国旗を振りながら、「退陣、退陣」と声を揃えた。

 この最新の集会は、9月に行われた同様の集会に続くものだが、その9月の集会では、推定7万人が参加したと報じられた集会もあった。

 ヴァーツラフ広場に集まった群衆は、エネルギー価格と食料価格の高騰の原因となっている、ウクライナ危機に関する対ロシア制裁へのチェコの参加の中止を求めていた。


 「ロシアは我が国の敵ではありません。戦争を求めている我が国の政府こそが、なのです」とは、AP通信が報じたデモ参加者の一人の声だ。この抗議活動を組織した、「チェコ共和国が一番」という名の団体は、NATOに反対し、チェコは軍事的中立の立場を取るよう求めた。


関連記事:New energy protest roils EU country

 「今、新しい国家が再生しようとしています。そしてその目的は、チェコ共和国が自立することなのです」とロイター通信は、この抗議活動の組織者であるラディスラフ・ブラベル氏のことばを報じた。「人々で埋め尽くされたこの様子を見れば、誰もこの動きを止められないと確信しました」

 フィアラ政権は、抗議者たちを軽くあしらい、これらの抗議者たちを、「親露派」呼び、この抗議活動の組織者たちを非難し、ロシアが流す偽情報作戦に耳を傾けているとした。 チェコがNATOに加盟したのは、1999年3月のことで、米国が主導するNATOが、ユーゴスラビアを攻撃した数日後だった。さらにチェコは、2004年にEUにも加盟した。

ヴィット・ラクサン内務大臣は10月30日(金)、「私たちは、自分の友人が誰で、私たちの自由のために誰が血を流しているのかも、分かっています」とツイートした。「さらに、私たちは誰が敵なのかも承知しています。そんな人たちに、私たちの愛国心を乗っ取られるわけにはいかないのです。」とも。

関連記事:Price rises in EU state break records

 チェコは、欧州のエネルギー危機において、特に厳しい打撃を受けている少なくともその理由の一つには、ロシアの天然ガスと歴史的な繋がりがあることが挙げられる。 報道によると、チェコの各家庭では、エストニアに次ぐ、EUで2番目に高い電気代に襲われているという。9月、チェコのインフレは18%に達した。
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ロシア軍のヘルソン撤退は、ウクライナ軍の「ピュロスの勝利」にすぎない

<記事原文 寺島先生推薦>

Russia’s Kherson Withdrawal is a Pyrrhic Ukrainian Victory

ロシア軍のヘルソン市からの撤退は、ウクライナ軍にとっては「ピュロスの勝利」である。

スプートニク通信社によるスコット・リッター氏へのインタビュー

出典: INTERNATIONALIST 360°

2022年11月9日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月13日



 ロシアのショイグ国防相は、ウクライナに駐留する全ロシア軍セルゲイ・スロヴィキン司令官が、キエフが地元のダムへの大規模なミサイル攻撃と市民への無差別攻撃を計画していると警告した後、ヘルソンの一部からロシア軍を撤退させてドニエプル川の左岸に防御陣地を形成するよう命じました。

 軍事アナリストで元米海兵隊情報将校のスコット・リッター氏はスプートニクの取材に対し、ドニエプル川左岸へのロシア軍移転の決定を「ロシアの敗北」と見なすのではなく、「ウクライナのピュロスの勝利」とみなすべき理由を説明しています。

スプートニク:ロシアがヘルソンの一部から撤退した主な理由は何ですか? 冬が近づいているなどの状況を考えると、これは妥当な動きなのでしょうか?

スコット・リッター:天候に関係なく決定されたのだと思います。短期的には本質的に価値のない領土にしがみつくことよりも、何千人ものロシア兵の命を守ることに重点を置いた決定だと思われます。純粋に軍事的な目的に基づいて行われた、正当な判断だったと思います。ヘルソン近辺の右岸に駐留するロシア軍に、攻撃してくるウクライナ軍に確実に勝利するために必要な資材を確実に供給することがあまりにも困難だったため、最終的には左岸に戻り、守備位置を確保し、ロシアがヘルソン奪還、右岸再占領、場合によってはウクライナへのさらなる進出に必要な攻撃的軍事力を蓄積できるまでウクライナを食い止めることによってこれらの命を救うことができると判断されたのではないでしょうか?

スプートニク:右岸を占領することで、ウクライナは何を得て、何を失うのでしょうか?

リッター:何よりもまず、これはウクライナにとって非常に大きな政治的勝利となります。これについては疑いの余地はありません。ウクライナは、ロシア軍の特別軍事作戦で捕捉された唯一の主要な行政センターを、彼らの観点から捕捉・奪還することになるからです。ヘルソン奪還は、9月の大規模反攻作戦開始以来、ゼレンスキー政権とウクライナ軍の戦略目標でした。そして、へルソンに軍隊を配置し、へルソンの行政施設にウクライナの旗を掲げることができれば、これは彼らにとって極めて重要な政治的勝利と見なされ、NATOや米国、その他の国々からの継続的な軍事・財政支援を主張するために利用することができるでしょう。

 しかし、ウクライナのへルソン占領が、ヘルソンの永続的な領有を保証する大規模な和平協定と結びついていない限り、これは単なる一時的な状態に過ぎず、最終的には、ロシアが動員した30万人の兵力を集結させることができるようになると私は考えています。ロシアはヘルソンを奪還し、ドニエプル川の右岸を再占領し、先ほど申し上げたように、オデッサ市の占領を含め、ウクライナにさらに前進する可能性を持っています。

スプートニク:国防相への報告の中で、ウクライナ駐留ロシア軍のスロヴィキン司令官は、ウクライナの損失はロシアの7~8倍であると指摘しました。ウクライナは本当に、このような急速な前進を続けられるのでしょうか?

リッター:これは結局のところ、状況を評価している誰もが考えなければならない軍事的な計算です。実際のところ、ウクライナはロシアの敵の7~8倍の死傷者を出している状況で作戦を続け、この紛争から勝利を得ることを期待することはできません。犠牲者の割合が高すぎます。このままでは持続不可能であり、最終的にはウクライナの戦略的敗北につながります。

 つまり、ウクライナは政治的勝利を収めたかもしれないが、その軍事的コストは高すぎ、持続不可能であり、最終的にはウクライナの敗北につながるということです。

スプートニク:この動きは、ロシアの戦略について何を物語っているのでしょうか? モスクワはウクライナで長期戦を展開しているのでしょうか? そのような戦略の利点と欠点は何ですか?

リッター:何よりもまず、これはロシアの母親、妻、娘たちに、ロシア政府は自分たちの愛する者たち、つまり戦闘に駆り出された男たちの命を真剣に受け止め、彼らを不必要に犠牲にする気はないことを示すべきものです。これは、ロシア政府が、ロシアの最も貴重な資産である人材、この場合はロシア軍の軍服を着た男たちの命を守ることと引き換えに、短期的な恥を受け入れることをいとわないという、極めて重要な声明です。

 また、ロシアがこの紛争の終結を急がないこと、紛争を長引かせる可能性のある人命を守るために防衛力を強化すること、しかしロシアにとってより有利な時間と場所で優位に立つことができる方法で、最終的にロシアが求める軍事的勝利を得るだけでなく、何千人ものロシア軍人の命を不必要に犠牲にせずにそうすることができることを示すものです。
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次回の大統領選挙ではバイデン氏の出馬を望まない――世論調査

<記事原文 寺島先生推薦>

US voters don’t want Biden to run for re-election – poll

The majority does not think the current president should seek a second term, a new survey shows

米国有権者の大多数は、現職大統領が二期目の出馬をすべきでないと考えていることが、新たな世論調査で判明

出典:RT

2022年11月9日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月12日


2022年11月7日、米国メリーランド州ブーイ市での選挙関連行事で語るジョー・バイデン大統領 © Nathan Howard / Getty Images / AFP

 米国の衆議院議員選挙の有権者のうち3分の2以上が、2024年、ジョー・バイデン大統領が2期目に出馬すべきではない、と考えていることが、 エディソン研究所が実施し、CNNが報じた出口調査の初期結果から分かった。

 民主党に投票した有権者の6割弱が、バイデン大統領は2期目も出馬すべき、と答えた。いっぽう、共和党に投票した有権者のほぼ9割と、無党派層の7割以上が、バイデン大統領の2期目の出馬を望んでいない、と答えた。

 バイデン大統領の支持率は、6月に大統領在職中最も低い値である36%にまで下降した。なお、ロイター通信とイプソス社が共同で行った世論調査の結果によると、中間選挙の前日の11月7日(月)の時点での支持率は39%だった。

 バイデン氏が大統領に選ばれたのは、2020年のことで、現職だったドナルド・トランプ氏を破っての勝利だった。バイデン大統領の業績評価は、低迷しているが、 これは高いインフレ率と天然ガス価格の急騰、などの問題が原因となっている。

関連記事:Republicans favored to retake US House as Senate up for grabs

 共和党員の中には、バイデン大統領が、ウクライナでのロシアとの紛争において、ウクライナに、「白紙小切手」を手渡していることを非難している人々もおり、バイデン大統領に対して、ウクライナの件よりも、経済など自国の内政に焦点を当てるよう強く促している。
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ゼレンスキー大統領の首席補佐官が、ロシアにミサイルを提供したイランに軍事攻撃を行うよう要求

<記事原文 寺島先生推薦>

Top Zelensky aide calls for strikes on Iran

Tehran's military industrial facilities should be attacked over alleged arms supplies to Russia, Mikhail Podolyak says

ロシアに武器提供したとされるイランの軍事産業施設を攻撃すべきだ、とミハイル・ポドリャク大統領首席補佐官は主張

 
出典:RT

2022年11月6日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月12日



イランのセムナンで開催された無人航空機の訓練の模様© Getty Images / Anadolu Agency / Iranian Army


 イランのドローンと弾道ミサイル製造工場は、破壊されるべきだ、とウクライナのゼレンスキー大統領の上級補佐官のひとりが述べた。この発言は、イラン政府がロシアに軍事用ドローンを送ったことを認めたことを受けてのものだ。ただし、イラン政府は、これらの武器をロシアに送ったのは、今年2月にウクライナ紛争が勃発する前のことだった、と主張している。

 「私見を言わせてもらえば、制裁や禁輸を課すだけが必要なことではなく、(イラン国内の)ドローンや弾道ミサイル製造施設に攻撃を加えることもありえると思っています。このような国家が、何の罰も受けずにこんな行為を続けることなどあってはなりません」と、ミハイル・ポドリャク補佐官は、11月4日(金)に地元テレビ局の生放送の番組内で述べた。同補佐官は、イスラム教国家であるイランに、誰がそのような攻撃を行うべきかについては、明言を避けていた。

 イランからロシアに武器が輸送されたという噂に関する情報が浮上したのは、ここ数週間のことで、これはモスクワ当局が、ウクライナに対して新しいカミカゼドローンを大量に使い始めた後のことだった。キエフ当局の主張では、ゲラン-2(ゲラニウム-2)という名で知られているドローンは、イラン製のシャヘド136という無人航空機と同じものだという。ドローンがロシアに送られたのでは、という疑惑は、イランとウクライナ間の関係を歪める原因となり、キエフ当局は、テヘラン当局との外交関係を格下げする姿勢を見せている。


関連記事: Iran says it supplied drones to Russia before Ukraine conflict

 モスクワ当局もテヘラン当局も、武器の輸送はこの紛争期間に行われたものではない、と繰り返し主張している。しかし11月5日(土)、イランのホセイン・アミール・アブドッラヒヤン外務大臣は、イランが「ウクライナでの戦争が始まる数ヶ月前に、ロシアに少数のドローンを供給した」事実を認めた。同時に同外務大臣は、イランがロシアにミサイルを提供したという主張については否定した。

 ポドリャク補佐官は、この発言に対する声明をだし、このような説明では信憑性にかける、と疑問の声を上げて、「ということは、我が国の生活基盤施設を攻撃するのではなく、(これらのドローンは)、武器倉庫で8ヶ月も眠っていたというのですか?」と同補佐官は語った。

 ロシアは、ドネツクとルガンスク両地域に、ウクライナ国家内の特別な地位を与えるとしたミンスク合意をウクライナ当局が実施しなかったことを理由に、2月24日にウクライナに軍隊を派遣した。ドイツとフランスが仲介したこの合意は、2014 年に初めて調印された。ウクライナのピョートル・ポロシェンコ前大統領は、ウクライナ側の主な目的は停戦を利用して時間を稼ぎ、「強力な軍隊を作る」ことだと認めている。しかしウクライナ当局は、ロシアの攻勢は全くいわれのないものだ、と主張している。

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アメリカとヨーロッパの支配者たちは、自分たちの国民が国内で戦争を始める前に、ロシアと戦争を始めたいと考えている。

<記事原文 寺島先生推薦>

The rulers of the United States and Europe want to start a war with Russia before their own people start a war at home.

出典:Strategic Culture

2022年10月21日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月13日


 今週開催された欧州連合(EU)外相会合では、ロシアと戦うウクライナ軍のEU域内での訓練を、正式に、欧州全域の関与とすることにした。このことは、27カ国からなるEUを不可避的にウクライナ戦争の当事者にする。

 2カ月近く前、前号8月19日付の戦略文化財団(Strategic Culture Foundation)週報社説で、我々はウクライナ紛争がすでに第3次世界大戦に転移していると仮定した。その警告は、米国を中心とするNATO同盟とEUによるウクライナへの軍事的関与の劇的なエスカレーションによって裏付けられている。

 今週、欧州連合(EU)の外務理事会は、今後2年間で最大15,000人のウクライナ軍を訓練する軍事支援ミッション(EUMAM)を発表した。ドイツとポーランドが主要な訓練拠点となる予定である。EUMAMの本部はブリュッセルに置かれる予定である。これは、戦争を想定した長期的な計画であり、嘆かわしいことに、いかなる種類の外交的解決策も放棄している。

 EU全体の訓練プログラムは、これまで国内レベル、二国間レベルで控えめに行われていた任務を、正式かつ包括的に採用したものである。米国、カナダ、英国は2014年からウクライナに軍事顧問を置き、アゾフ大隊などのネオナチ勢力を指導してきた。ウクライナ軍の訓練は、フランス、ドイツ、スペイン、ポルトガル、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、エストニア、そしてその他のバルト諸国でも行われてきた。

 しかし、EU外相が今週宣言したのは、ロシアに対するウクライナでの戦争に、欧州全域で組織的に参加することである。法的に言えば、戦争に積極的に参加する軍隊をEU域内で公式に訓練することは、EUを戦争の当事者にすることになる。これは、ロシアが合法的に軍を指揮する方法に対して重大な意味を持つ。潜在的には、欧州諸国は自らをロシア軍の攻撃目標にすることになる。

 NATOの欧州加盟国が米国と共同でウクライナに殺傷力の高い兵器をどんどん投入していたら、もっと早い段階ですでにそうなっていたことははっきりしている。

 ロシアは、ウクライナに供給されたNATOの兵器が、米国主導の枢軸を戦争当事者にした、と繰り返し警告している。したがって、この紛争はもはや代理戦争ではなく、全面的な対立である。

 週を追うごとに、米国とNATOの同盟国によるウクライナへの重火器納入の発表が続いている。西側諸国からウクライナに提供される武器は総額420億ドルと推定され、その3分の2近く(280億ドル)が米国からのものである。

 EU域内におけるウクライナ軍の訓練を強化することに加え、EUは今週、キエフ政権への武器供給を支援するために5億ユーロを追加で割り当てた。この資金調達の仕組みには、「欧州平和機関(European Peace Facility)」という『1984年』(ジョージ・オーウェル)を思わせるようなタイトルがつけられている。

 ドイツのオラフ・ショルツ(Olaf Scholz)首相は、自走式榴弾砲、防空システム、多連装ロケット発射システムの新規供給を約束した。先週、フランスのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領も、榴弾砲、防空レーダー、ミサイルの増設を約束した。

 欧州連合の指導者たち、そして米国やNATOの指導者たちの犯罪性は正気の沙汰には見えない。ウクライナでのロシアに対する戦争の激化は、NATO圏がヨーロッパでロシアを標的にした核戦争演習を行っているときに、今週起こった。NATO圏が着手した戦争路線は地球の破局につながりかねない、というモスクワの警告は、ロシアが「核の恐喝」を行っているとされ、西側諸国によって見境もなく歪曲されている。

 米国とその欧州の属国による二重思考には驚かされる。ジョー・バイデン米大統領は「核のハルマゲドン」の危険性を語っている。ショルツやマクロンのようなヨーロッパの指導者たちは、ロシアとの直接対決に警告を発したとされる。しかし、この同じ西側の政治家とその仲間は、ウクライナでの戦争を破滅的な規模にまで煽り続けているのだ。

 欧米の指導者は誰一人として、ウクライナ戦争を解決するための外交的解決策を提示せず、紛争を誘発した背景となる戦略的安全保障問題にも取り組んでいない。

 英国を襲っている政治的・経済的混乱は、首相就任からわずか6週間で、運に見放されたリズ・トラス(Liz Truss)首相が辞任に追い込まれたこともあり、経済の崩壊からくる西側諸国の倦怠感の表れであると言える。米国、英国、欧州連合は、その破綻した資本主義システムによって、まさに経済的メルトダウンに陥っている。

 貧困と社会崩壊の前例のないレベルを示す数値は桁外れである。戦争のことしか念頭にない政策や生活費の緊急事態に対する市民の抗議行動や産業界のストライキが、ヨーロッパやアメリカの都市で急増している。体制崩壊は何十年も前から進行していたが、ロシア(と中国)と対立しようとする間違った帝国主義政策によって加速されている。ロシアからヨーロッパへのガスの供給を自ら断ったことは、ヨーロッパのエリートが自国民に向けて発射した究極の神風特攻機だ。

 実際のところ、ウクライナにおける戦争は、老衰死の道をたどるアメリカ主導の西側秩序を何とか持ちこたえようとする、ロシアとの地政学的対決なのである。このアメリカ主導の西側秩序においては、ちょうちん持ち的な動きをする欧州各国によって、アメリカ政府が覇権を握っていると推定されている。そのような帝国主義的な秩序の時代は終わりを告げている。

 過去1世紀の間に起こった2つの世界大戦は、破綻した西欧資本主義を救済する手段として引き起こされた。恐ろしいことに、これらの戦争は部分的に西欧資本主義を再生すること、あるいは少なくとも災いの種を先送りすることに成功した。

 今日、再び、西側システムは存亡の危機に直面している。既存支配層は、革命的な社会的混乱に対する正当な懸念の中で、生き残りをかけて必死に抵抗している。この極端な状況だからこそ、西側の政治エリートは、犯罪的なまでに無謀な決定を下し、破滅的な戦争を引き起こす危険を冒しているのである。もちろん、その装いは時代から取り残された高貴さにしがみついた代物でしかない。

 アメリカとヨーロッパの支配者たちは、自分たちの国民が国内で戦争を始める前に、ロシアと戦争を始めたいと考えている。幸いなことに、ロシアには自衛のための十分な能力がある。しかし、それは(世界消滅という)悲惨な誤算を未然に防ぐものではない。

 この地獄のような状況の元凶は、欧米のエリート、その企業の親玉、そして病的な資本主義体制である。欧米の市民たちは、彼らに最大限の責任を取らせるべきである。
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フョドール・ルキャーノフ(Fyodor Lukyanov):「サウジアラビアがBRICSに参加する可能性がある。それは世界の西側支配から離脱する動きが止まらないことを示している」

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Fyodor Lukyanov: The possibility of Saudi Arabia joining the BRICS shows the world is moving on from Western dominance

(BRICSが)市場戦略として誕生してから20年、その構想は思いもよらない好転を遂げた。

著者: フョードル・ルキャーノフ

出典:RT

2022年10月21日

By Fyodor Lukyanov, the editor-in-chief of Russia in Global Affairs, chairman of the Presidium of the Council on Foreign and Defense Policy, and research director of the Valdai International Discussion Club.


<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月12日


FILE PHOTO. ©  Host Photo Agency/Pool /Anadolu Agency/Getty Images

 南アフリカのシリル・ラマポーザ(Cyril Ramaphosa)大統領は今週初め、リヤドから帰国し、サウジのムハンマド・ビン・サルマン(Mohammed bin Salman)皇太子が自国のBRICS加盟の意思を表明したとのニュースをもたらした。

 アルゼンチンやイランも春に同じことを発表しており、それほど驚くことではない。このままでは、この拡大する組織体のために、もっともっと複雑な略語を考える必要がありそうだが、そんなことはどうでもいい。

 BRICSをめぐる盛り上がりは、今、世界で起きている変化のひとつの兆候だ。

 BRICS(もともとはBRICと呼ばれていた)、ゴールドマン・サックスのアナリスト、ジム・オニール(Jim O’Neill)が、今世紀初め、実際的な用途のために考案した人為的な組織体である。投資家は新興国を「売る」必要があったため、成功実績のあるマーケティング戦略を用いたのである(「ブロックを積み重ねる」とはうまい言葉遊だ)。オニールのやり方もあり、BRICSは長い間、主に経済という角度から見られていた。

 しかし、この認識は、最終的には関係国の、真の友好関係樹立を意味する言葉ではなかった。彼らは非常に異なっており、互いに遠く離れており、経済協力を強化するための共通の枠組みを必要とせず、すべては二国間レベルで行うことができたからだ。また、BRICSを結びつける最初の理由であった成長率も変化した。予想されたことではあるが、さまざまなタイプの上昇と下降があった。


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 BRICSという構想は、そのイメージが再構成されなかったなら、後からの面白い思いつきというレベルを超えることはなかっただろう。2006年以来、BRIC/BRICSは閣僚レベル、そして元首レベルの定例会議の定番となっている。政治的共同体という特質が表面化するにつれ(強調しておかなければならないのは、これはあくまでも非公式)、基準が自然に形成された。BRICSは完全な主権を持つ、すなわち完全に独立した政策を追求できる国の集まりであるということである。

 これは、政治的な自律性(外部の意見に左右されない)だけでなく、この目標を実現するための経済的な潜在力があることも意味している。これが達成できる国はそう多くない。

 西側諸国では、今日、米国だけがそのような権利を持っているように見える。他の諸国は、どんなに経済的に発展した国であっても、同盟に参加することによって、自らの政治的主権を自主的に制限している。

 しかし、技術的な「主権者連合」というだけで、新しい枠組みが生まれたわけではない。BRICSの中で経済的な結びつきを強めようという試みは、大きな熱狂をもって迎えられることはなかった。また、BRICSをG7への対抗勢力として位置づけようという動きも、すべての参加国が欧米とのつながりを最重要と考えているため、共感を得られなかった。

 しかし、この状況は一変した。モスクワが引き起こした2022年の出来事によって、世界は明らかに、ロシアに対して結集する西側部分と、様子見の部分とに分かれた。西側諸国は、モスクワを罰し、不服従がどのように罰せられるかを示すために、あらゆる圧力を意のままに駆使した。

 結果は極めて予想外であった。他のすべての国、特にBRICSの大国や自国の役割を主張する国々は、欧米のキャンペーンに参加しないばかりか、そうした姿勢が米国とその同盟国から反発を受ける危険性があるにもかかわらず、全面的に拒否したのである。

 もちろん、これはロシアの行動を支持するということではなく、外圧の形態を拒否するということである。そして、それは本質的にシステム的なものであり、世界秩序の特殊性に関連しているため、それに対抗する方法は、世界秩序の特殊性を変える必要がある。

 そこで明らかになったのは、BRICSには大きな可能性があるということだ。かなり曖昧なグループ分けかもしれないが、代替的な国際秩序の枠組みに関心を持つ人々にとっては、BRICSは何より備えとなるものである。前述した完全主権(政治的、経済的)は、これらの選択肢を選ぶ前提条件である。


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 したがって、BRICSへの参加は、確固とした欧米の支配を抜け出そうとする世界に属していることの証となる。必ずしも対立する必要はない。

 西側の諸制度を迂回し、それとやりとりする危険性を低減できることの方が、はるかに価値がある。例えば、米国やEUが管理する手段に頼らず、金融、経済、貿易関係を行う同様な方法を構築することである。

 リヤド(サウジアラビア政府)はその参加意欲を隠そうともしない。もちろん、重要な物質資源を支配し、世界の価格を規制する能力を持つ国サウジアラビアは、独立した行動をとる余裕があり、交流に何だかんだと条件を課さない快適な相手国を選択することができる。

 覇権国家が主導する中央集権的な国際システムは、いずれにせよ終焉を迎えることになる。ウクライナ紛争がどのように終結しようとも、そうなるのである。従って、多様な定式が強く求められるようになる。現在進行中の新しい情勢は、BRICSの展望を切り開くだろう。

 BRICSの略号を考案したイギリス人(ゴールドマン・サックスのアナリスト、ジム・オニール)は、20年前にはこのようなシナリオを想像していなかっただろう。しかし、人生は時として、その発端がどんなにたわいもないと思われるような事業にも寛大に対応してくれることがある。

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「白紙小切手」をめぐる対話から見えるもの―「共和」「民主」は同じ穴の狢。ウ露の戦火は絶やさぬが、米国への飛び火はお断り

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Biden comments on ‘blank check’ for Ukraine

The US leader insists on “uninterrupted” weapons supplies to Kiev
米大統領、キエフへの武器供給を「中断しない」と主張

出典:RT

2022年11月10日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月12日



写真。米国が供給したM777榴弾砲からロシア軍に発砲するウクライナ軍兵士(2022年6月18日) © AP / Efrem Lukatsky


 バイデン米大統領は、ウクライナに対するアメリカの援助は無期限に継続されるとの見通しを示したが、共和党の批評家たちが、同政権が許可した数十億ドルの武器輸送と現金給付を非難した後、同国への援助には限界があると主張した。

 バイデンは、援助が「途切れることなく」継続されるかどうか尋ねられ、記者団に「それが私の期待だ」と述べるとともに、一部の共和党議員から、米国のウクライナへの援助は過剰であるとの非難に反論した。

 「ところで、我々はウクライナに白紙小切手を出したわけではありません。ウクライナが望んでいることで、我々がやらなかったこともたくさんある」と水曜日(11月9日)に述べ、キエフが自国の空を守るためにアメリカの戦闘機を要求したことに言及した。

 「私は、いや、そんなことはしない、と言った。我々は第三次世界大戦に突入し、ロシアの戦闘機と直接交戦するつもりはない」と彼は続け、ワシントンも特定の長距離攻撃可能兵器を拒否したと付け加えた。「私はロシア領土を爆撃し始めることを求めているわけではないので」。


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 今週の中間選挙を前に、共和党のケビン・マッカーシー下院議長は、同党が議会を掌握すれば、キエフはもはや「白紙小切手」を受け取ることはないだろうと宣言した。しかしバイデンは、この共和党議員が「ウクライナの正当な防衛上の必要性に資金を提供しないと主張する同僚が過半数いるとまで言うなら、それは"驚き"であろう」と述べた。

 記者会見では、大統領がロシア軍は「ファルージャから撤退している」と発言し、イラクの都市をへルソンと勘違いしたようで、訂正する場面もあった。

 軍当局によれば、モスクワは水曜日(11月9日)に同市からの撤退を発表し、兵士と民間人の命を守るためにドニエプル川沿いに新たな防衛線を設置することにしたという。

 バイデンはまた、キエフが和平交渉の一環として領土を譲歩する可能性を示唆したように見える最近の発言についても問われ、そのような提案はしていないと否定した。


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 「ウクライナ人次第だ。ウクライナ抜きでウクライナのことは何もできない」と述べ、政権の常套句を繰り返した。また、以前「妥協」について語ったものの、具体的なアイデアがあったわけではないとも付け加えた。

 「私は、...彼らは双方とも傷を癒やし、この冬の間に何をするか決め、妥協するかどうかを決めるつもりだと言った。それが、これから起こることだ」とバイデンは続けた。「彼らがどうするかはわからない。しかし、ひとつだけ言えることは、我々は彼らが何をしなければならないかを指示するつもりはないということだ」と述べた。
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「人命を救うため」の撤退。ロシアの最高司令官による、ヘルソン撤退に関する声明の要点

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 Pulling back ‘to save lives’: Key points from top Russian commander’s Kherson speech

The order to leave the city came seven months after Moscow's troops captured the regional capital
(ロシア軍がヘルソン州の州都ヘルソンを抑えてから7ヶ月後、ヘルソン市からの撤退命令が下った)

出典:RT

2022年11月9日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月12日



FILE PHOTO: ヘルソン市を横断するドニエプル川付近のロシア兵たち。2022年11月2日撮影。©  Sputnik / Ivan Rodionov

 ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は、ロシア軍にヘルソン市から撤退し、ドニエプル川沿いに新たな防衛線を引くよう命じた。同国防相が、この決定を下したのは11月9日(木)のことで、ロシアのウクライナ軍事作戦の総司令官であるセルゲイ・スロビキン陸軍大将からの演説を受けたものだった。

 その演説では、撤退の目的のひとつに、より適切な場所の方が、兵士や市民たちの人命を守れると考えられるという点があることが示された。以下に、スロビキン大将が、この紛争の最新の状況について高級将校たちに対して行った、テレビ放映された演説の要点のいくつかを記載する。

1.ウクライナ軍は市民を標的にしている

ウクライナ軍は、ヘルソン市に対して「無差別攻撃」を行い、特に学校や病院を攻撃している、とスロビキン大将は11月9日(木)の自身の演説で述べた。 「砲撃により、市民たちのいのちは常に危険にさらされています」と同大将は語気を強めた。 ドニエプル川の向こう側にある、市民が避難のために利用している人道支援センターや避難経路も攻撃を受けている、と同大将は付け加えた。

2.撤退の理由

 ヘルソン市近郊のカホフカ水力発電ダムへのウクライナによるミサイル攻撃が継続していることも、ドニエプル川右岸にいる軍と市民にとって深刻な脅威となっている、とスロビキン大将は語った。このダムは、ウクライナ側の攻撃により、既に損害を受けており、さらなる「壊滅的な」攻撃を受ければ、「広範囲にわたる地域」が、洪水に襲われる可能性があり、そうなれば、多くの市民が犠牲になり、この地域に在留しているロシア軍が、他地域のロシア軍との連携が断たれてしまう、とスロビキン大将は、撤退の提案をした際に主張した。ショイグ国防相は、スロビキン大将の主張に「同意」し、ドニエプル川左岸で軍陣を再整備する命令を下した。

3.防衛と反撃は成功している

 ロシア軍は、ヘルソンとドンバス両地域でのウクライナ側の前進を食い止めることに早くから成功していた、とスロビキン大将は述べた。そして特筆すべきは、ウクライナ側が9月に抑えたクピャンスク市からの、ルガンスク人民共和国内への攻撃を阻止できたことだ、と同大将は述べた。さらに同大将は、ドンバス内の激戦地域であるクラスニー・リマン地域でも同様の成果を出している、とした。ロシア軍が、反撃を加えている地域もあることも、スロビキン大将は触れた。

4.ロシア側とウクライナ側の損失について

 ウクライナ軍は、ここ数週間、攻撃において大きな損害を受けている、とスロビキン大将は述べた。ウクライナ軍は、10月だけで、推定1万2千人以上の兵士、戦車を200台以上、他の戦闘用車両を800台以上、戦闘機を18機を失ったとのことだ。同大将によると、ロシア側の損失は、「ウクライナ側の7~8倍少ない」という。8月から10月にかけて、ヘルソン地域でのウクライナ側の攻撃だけで9500人以上の犠牲者が出ている、とスロビキン大将は語った。

5.ヘルソン市からの市民の避難

 ロシア軍は、ヘルソン市からドニエプル川左岸に避難することを望んでいる全ての市民を支援している、と同大将は述べた。11万5千人以上の市民が、ここ数週間で既にヘルソン市から避難した、とスロビキン大将は、ショイグ国防相に語った。「避難を望んでいる市民たちの安全を確保するためにできることは全て行っています」とスロビキン大将は述べ、クリミアに避難した市民たちもいる、とも語った。

6.前線の現状

 ウクライナ側からの攻撃が継続する中でも、ロシア軍は前線の現状を「安定」させることができている、とスロビキン大将は述べた。さらに同大将によると、ロシアで9月から11月初旬の間に実施された部分的動員のおかげで、ロシア軍は予備軍を準備し、戦闘能力を各段に向上させることができたという。ドニエプル川右岸から撤退することになる諸部隊は、他の地域の前線の攻撃作戦の支援に回せることも可能だ、とも同大将は述べた。
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実験室で作られたCovid株が米政府から注目されている

<記事原文 寺島先生推薦>
Lab-made Covid strain gets attention from US government
(副題)
SARS-CoV-2混合株を開発したボストン大学は、当局の許可を得る必要はなかったと主張している。

出典:RT
 
2022年10月19日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月10日


FILE PHOTO © Getty Images / kokouu

 ボストン大学の研究者たちが、Covid-19を引き起こす致死的なウイルス株を開発したが、それが国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)との共同作業であるとのことを表沙汰にはしていないと、NIAIDは10月17日(月)に主張した。NIAIDは、なぜメディアの報道を通じてしかこの実験のことがわからなかったのかについて、大学側に答えを求めると発表した。

 NIAIDの微生物学・感染症部門の責任者であるエミリー・エーベルディング(Emily Erbelding)がSTAT Newsに語ったところによると、当初の助成金申請書には、この研究が※機能獲得研究であるかもしれないことが明記されておらず、この研究団の進捗報告書には、この重要な詳細については一切触れられていないとのことである。NIAIDとその親機関である米国国立衛生研究所(NIH)は、この研究に部分的に資金を提供している。

機能獲得研究・・・ある遺伝子の機能を調べる際にその遺伝子の機能や発現量を増強させることで機能を類推する実験手法を機能獲得実験という。

 この致死的ウイルス株を作ったボストン大学新興感染症実験室(National Emerging Infectious Diseases Laboratories)のロナルド・コーリー(Ronald Corley)室長は、10月18日(火)、この研究費用はボストン大学が独自に負担したと主張している。ただし、論文の前刷りには、NIAIDとNIHの複数の助成金が配布されている、ときちんと記載されている。

 コーリー室長は、この連邦政府の資金は、当初のシステム開発に回されただけで、その後そのシステムが論争の的になった、と主張した。さらに、彼の説明によれば、この取り組みでは、機能獲得は完全ではなかった、というのだ。つまり武漢のオリジナル株では実験に付されたマウスの100%死んだが、この混合株では80%のマウスしか死んでない、というのがその理由。

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 研究者たちは、SARS-CoV-2のオリジナル株である武漢株に、重症度の低いオミクロン株のスパイクタンパク質を加えた混合株を作り、後者のスパイク変異が感染者の軽症化に関与しているかどうかを明らかにしようとしたのである。

 2019年に発生したCovid-19の初期発生を説明する主な説として、武漢の海鮮卸売市場のコウモリに由来するという説と並んで、この機能獲得実験の失敗が依然として挙げられている。しかし、いずれの説も肯定も否定もするような調査はまだ行われていない。
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ヒトラー・ナチスの手本は、米国の黒人差別法と先住民の強制収容所だった。

<記事原文 寺島先生推薦>

The US-Nazi Connection Since World War II: From Inspiring the Third Reich to Supporting the Neo-Nazis of Ukraine - Global ResearchGlobal Research - Centre for Research on Globalization

第二次世界大戦以降の米国とナチスのつながり:第三帝国への鼓吹からウクライナのネオナチへの支援まで

筆者:ティモシー・アレクサンダー・グズマン(Timothy Alexander Guzman)

出典:Global Research

2022年10月20日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月10日



 ワシントン、ロンドン、ブリュッセル、テルアビブのマフィアは、彼らの「一極世界秩序」という計画を維持するためには何でもする。実際、彼らは最悪の敵と協力してでも、残された力を保持することに必死になっている。古来からの有名な諺に「敵の敵は味方」というのがあるが、今日もその言葉が当てはまるのだろう。なぜなら、ワシントン、CIA、軍産複合体、モサド、NATOは、イスラム国(ISIS)、アルカイダ、その他のグループを含む有名なテロリストを支援して自分たちが認めていない政府、とりわけ中東の政府を、転覆させてきたからだ。

 しかし、彼らがかつて敵であったテロリストを支援したのは、シリアやリビアに対する政権交代戦争から始まったのではない。敵を支援するという発想は第二次世界大戦中と戦後に、アメリカ政府が新しい敵であるソ連に対抗するためにウクライナのナチスを採用したことから始まっている。戦時中、アメリカやヨーロッパの同盟国と共にナチスと戦ったソビエトが新たな脅威と見なされたことを考えると、何とも奇妙な展開である。ワシントンとマフィアの仲間たちは、当時はナチスを利用し、今度は聖戦テロリストを世界支配のための戦争に利用している。長期的にどんな犠牲があっても彼らはそうするのだ。

 では、ナチスとはそもそも、いったい何者で、なぜワシントンは彼らを勧誘することに関心を持ったのだろうか? まず第一に、ナチスの構成員はアメリカ政府が興味を持ついくつかの科学技術分野に関与していたからだ。それは、後にあらゆる戦争兵器の製造や将来の軍事作戦のための心理作戦に活用することになるのだが、詳細については後で述べることにする。

 しかし、ナチスは極右のファシズム思想に従っていた。それは超国家主義の原則と一致する権威主義的な思想であり、無政府主義、共産主義、民主主義、共和主義、社会主義など、自分たちの権力の上昇を脅かすと見なされる政治形態を否定する。そして、これは正気の沙汰とは思えないが、ナチスは科学的人種主義、あるいは優生学と呼べるものを用いた。人間の遺伝子プール(給源)を操作して、ある集団を劣等とみなされる人々と優位とみなされる人々の間に分けたのだ。それから、第三帝国内に蔓延していた反ユダヤ主義という要素もある。ナチズムは、超国家主義者という人物像に合致しない人に対して大量虐殺、拷問、強制不妊手術、反対派の投獄、国外追放、その他の残虐行為を行った。とりわけ、彼らが要求するような人種的資質を備えていない場合はそういった被害を被った。

 ファシズムの歴史を振り返ると、そのルーツはヨーロッパにある。ルイ・ナポレオン・ボナパルト(別名ナポレオン3世)が1848年から1852年まで鉄拳でフランスを支配したとき、フランスはファシスト/ナチの国家としての要素を備えていた。


アメリカによる赤い野蛮人退治はアドルフ・ヒトラーにヒントに与えていた

 1933年1月30日、ドイツの首相に就任したアドルフ・ヒトラーは、ファシズム政策を率先して実行に移したが、そのときはヒトラーの同盟国であるイタリアのムッソリーニや日本の裕仁も、同様の政策をとっていた。

 では、このようなイデオロギーは何からヒントを得たのだろうか。ナチスはどこからその着想を思いついたのだろうか。

 アドルフ・ヒトラーが、アメリカの短い歴史の中で採用した特定の集団に対する対処法を賞賛していたことは周知の事実である。その対処法とは、アフリカ系アメリカ人に対するジム・クロウ法から、アメリカ・インディアン戦争で先住民が送られた捕虜収容所である。

 ジョン・トーランドの「アドルフ・ヒトラー:決定版伝記」には次のように書かれている。

(以下引用)
 「ヒトラーの強制収容所の概念と大量殺戮の実用性は、イギリスとアメリカの歴史の研究に負うところが大きかったと、ヒトラーは主張している」「彼は南アフリカのボーア人の囚人の収容所と米国西部の原住民の収容所を賞賛した。そしてしばしば側近に、アメリカが捕虜にしても手懐けることができなかった赤い野蛮人を絶滅させた効率性―それは飢餓と一方的な戦闘によるものだったが―を賞賛していた」
(引用はここまで)

 では、「強制収容所」という考え方はいつから施行されたのだろうか。それは、アメリカ大統領で民主党だったアンドリュー・ジャクソンの時代である。彼は1830年にできたインディアン移送法の一環として「移民収容所」を導入した。何万人もの先住民が強制的に「収容所」と呼ばれる場所に入れられた。それには、セミノール族、チェロキー族、チョクトー族、マスコギー族などの部族が含まれていた。主にアメリカ南部の部族国家で、アラバマ州やテネシー州が含まれていた。

 米国の統治モデルがナチスドイツに影響を与えたもう一つの要素は、ジム・クロウ法である。 法律学者で『ヒトラーが手本にしたアメリカ的手法:米国とナチ人種法の成立』の著者であるジェイムズ・Q・ホイットマンは、ナチスがアメリカの人種法をどのように見ていたかについて、紹介文を書いている。

(以下引用)
 冒頭、グルトナー法務大臣はアメリカの人種法に関するメモを提示した。これはこの会合のために同省の職員が入念に作成したものだった。参加者は議論の過程で何度もアメリカの人種差別法制のモデルに立ち返った。とりわけ驚くべきことだったのは、出席していた最も急進的なナチスがアメリカの方法は自分たちにとって最も役立つ教訓だと熱烈に支持していたことだった。後述するように、ナチがアメリカの人種法に関わっていた記録は、この記録だけではない。1920 年代後半から 1930 年代前半にかけて、多くのナチス、とりわけヒトラー自身は、アメリカの人種差別的立法を真摯に受け止めていた。実際、ヒトラーは『我が闘争』の中で、アメリカを、ニュルンベルク法が意図したような健全な人種差別秩序の構築に向けて前進した「一つの国家」にほかならない、と賞賛している。

 私の目的は、ニュルンベルク法制定時にナチがアメリカの人種法からヒントを得ようとした、この無視された歴史を記録し、それがナチスドイツについて、人種差別の現代史について、そして特にアメリカについて何を語っているかを問うことである。
(引用はここまで)

 アメリカから着想を得た人種法は、1935年9月15日に成立したニュルンベルク法によってドイツ社会に押しつけられた。ナチスは、アメリカの人種法を、最終的に非市民となったユダヤ人など、さまざまな集団に対して実施できる適切な政策であると考えた。というのも、その人種法は、アメリカ先住民、フィリピン人、アフリカ系アメリカ人などが、たとえアメリカやその植民地地域に住んでいたとしても、彼らを非市民とみなしたからだ。また、アメリカの人種法の中でナチスが関心を持った箇所がある。それは、アメリカの約30の州で異人種間の結婚を禁止する混血禁止法で、アメリカでこの法律を破ったものは厳しい刑事罰を受けることになっていた。


ペーパークリップ作戦:第二次大戦後、米国政府はなぜナチスを起用したのか?

 ロシアがウクライナに侵攻して以来、核戦争の噂は以前にも増して広まっている。ウクライナの俳優、失礼、つまり大統領のヴォロディミル・ゼレンスキーは、ロシアが核兵器を使うのを阻止するために「予防攻撃」を呼びかけたが、その後すぐにその主張を撤回した。しかし彼は、予防措置のために西側がロシアに核兵器をぶつけることを呼びかけた。ただ、彼の口から出たその言葉も極めて危険な言辞だった。核兵器といえば、そもそも弾道ミサイルに核爆弾を搭載することを提案したのは誰だったかご存じか? それは、第二次世界大戦中にアメリカ政府に雇われたナチスのロケット科学者から生まれた考えだった。当初の計画は、「ウラン計画」(Uranprojekt)と呼ばれていた。兵器や原子炉を製造するための核技術を開発する目的だったからだ。



 第二次世界大戦末期、アメリカの情報機関と軍産複合体は、ロケット科学、航空力学、化学兵器、医学など様々な分野の専門家である1600人以上のナチスの科学者とその家族をドイツから密かに移送し、ペーパークリップ作戦と呼ばれるものを行った。米軍のために働くナチスもいて、ソビエトが世界を征服するのではないかという恐怖とパニックを引き起こす情報概要を作成したが、これは誇張されすぎていた。しかし、アメリカ政府が最も恐れていたのは「オソアビアヒム*作戦」であった。その作戦は、ソ連が、ドイツ・ソ連占領地区(SBZ)とベルリンのソ連支配地区で2,500人以上の元ナチスの科学者や技術者を募集することで、兵器開発などの分野でアメリカ政府より一歩先に進もうという作戦だった。
*「防衛と航空化学建設への援助のための協会」 ロシア語。

 アメリカのナチス科学者に関する重要な歴史的事実の一つは、ナチス党員であり、ナチスドイツの準軍事部隊の主要部門であるアルゲマイネSS(一般親衛隊)の一員であったヴェルナー・フォン・ブラウン(フルネーム:ヴェルナー・マグヌス・マクシミリアン・フォンブラウン男爵)が採用されたことである。フォン・ブラウンは、ロケット技術開発の責任者でもあり、アメリカにおけるロケットと宇宙技術の先駆者とみなされている。彼はアポロ宇宙船を月へ打ち上げるのに役立ったとされる超大型ロケット「サターンV」の設計責任者でもあった。

 その中にはサリンガスや、VX(神経ガス)、そしてもちろんベトナム戦争で最も使用された生物兵器であるエージェント・オレンジ(枯れ葉剤)などの危険な戦争兵器が含まれている。つまり、アメリカ政府はナチスの科学者を雇い、大量破壊兵器を作る知識を得て、それ以来、世界中のさまざまな人々に被害を与えてきたのだ。ベトナム戦争の間、アメリカ軍はエージェント・オレンジをベトナムの人々に撒き散らし、300万人以上に先天性欠損症やその他の健康関連の問題を今日まで引き起こしている。ナチスの科学者たちは、戦争のための高度な兵器を開発することに関しては、まさに邪悪な天才であり、それは米軍と情報機関がもっぱら関心を寄せていたもので、それは昔も今も怖いことだ。


アメリカの創り出したフランケンシュタイン:ウクライナのネオナチ

 歴史の貴重な教訓から分かるように、アメリカ政府とCIAは1946年以来ウクライナのナチを支援し訓練してきた。CIAは東ヨーロッパなどでOUN-B(ネオナチのウクライナ民族主義者組織)と共に「背後から攻める(Stay Behind)」作戦を組織した。ウクライナ民族主義者を支援し、ソ連領ウクライナを不安定にするために派遣した。そしてそこで、特殊部隊を使ってソ連高官の暗殺、インフラの破壊、テロ行為などの作戦を密かに行ってきた。

 アメリカ政府とCIAの工作員の歴史を見ると、ウクライナの戦犯ステファン・バンデラを支援してソ連領ウクライナを不安定にするウクライナ地下運動を進めたので、CIAとその政策調整室(OPC)と特殊作戦室(OSO)はOUN-Bと秘密作戦を計画して、ソ連勢力圏内の心理戦のために反ソ連のウクライナ反乱軍(UPA)に支援を提供したのである。 CIAは、冷戦時代にナチスに協力したウクライナ民族主義者との関わりについて歴史的な記録を公表している。ケビン・C・ラフナー著「冷戦期の盟友:CIAとウクライナ民族主義者の関係の起源」では、「CIAがどのようにウクライナ人やその他の人々との接触を再び確立し拡大したか、そして彼らをどのように共産主義者に対して秘密行動をさせたり、あるいは赤軍戦線の背後でゲリラ、破壊活動、レジスタンス指導者として働かせる戦時資産として活用したか」を詳述している。歴史的な説明はさらに進んで、「多くの移民グループによる、時に残忍な面もある、戦争の記録は、彼らがCIAにとってより重要になるにつれて曖昧になった」と述べている。

 それからずっと後になるが、2013年11月には、ヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領が、EUとの自由貿易協定を拒否し、政治的・経済的関係を持つ代わりに、ロシアやユーラシア経済連合との関係を緊密にすることを決定したことに対して、ユーロマイダンと呼ばれる大規模な抗議デモが行われた。そして2014年2月、ウクライナの首都キエフでマイダン革命と呼ばれるデモ隊と政府の治安部隊との激しい衝突が起こり、民主的に選ばれた大統領ヴィクトール・ヤヌコヴィッチに対するクーデターが発生した。その後すぐにロシア・ウクライナ戦争が始まり、ネオナチに影響を受けたアゾフ大隊が誕生し、彼らはロシアのあらゆるものに対する抵抗勢力となったのである。

 今年1月22日、主流メディアの一角を占めるYahoo Newsは、「CIAが訓練したウクライナの準軍事組織は、ロシアが侵攻した場合に中心的役割を担うかもしれない」と題する記事を掲載し、CIAが2015年からウクライナ軍を密かに訓練していたことを基本的に認めた。

 秘密訓練プログラムはオバマ政権によって立案された。ロシアが2014年にクリミアへ進攻し、併合した後のことだった。その訓練は、CIAの地上支部―現在は地上部として正式に知られている―で働く準軍人によって執り行われた。その後、トランプ政権下で拡大し、バイデン政権でさらに増強されたと、政府の同僚と連絡を取っている元諜報部高官は述べている。

 Yahoo Newsによると、その匿名の元情報機関高官は「もしロシアが侵攻してきたら、彼ら(CIA訓練プログラムの卒業生)はあなた方の民兵、反乱軍のリーダーになる」「我々は彼らをこれまで8年間も訓練してきたのだから、実に優秀な戦士だ。このCIAプログラムが重要な影響を与える可能性があるのはそのところだ」と述べている。したがって、過激化したネオナチと呼べる人々が実際はどれほどいたのかについては疑問を持たざるを得ない。

 2018年、ロイター通信社はジョシュ・コーエンによる解説「ウクライナのネオナチ問題」を掲載し、ナチが国家民兵の隊列を埋めているウクライナの問題を解説した。コーエンによれば、1月28日にキエフで行われた、いわゆる「国民民兵」の隊員600人によるデモは、新しく結成された超民族主義勢力が「秩序を確立するために武力を行使する」と誓うものだったが、このことは、ネオナチの脅威を物語っている、ということだ。コーエンは、国民民兵はナチス系のアゾフ大隊から隊員を集めていると付け加えた。

(以下引用)
 国民民兵の隊員の多くは、30余りの民間資金による「ボランティア大隊」の一つであるアゾフ運動出身者である。彼らは戦争初期にロシアの代理人である分離主義者からウクライナの領土を守るために正規軍を助けている。アゾフはナチス時代の象徴を使い、ネオナチを隊員に勧誘しているが、フォーリン・アフェアーズ誌の最近の記事では、アゾフは他のボランティア民兵と同様にウクライナ軍に統合されて「抑制」されていると指摘して、この勢力がもたらすかもしれない危険性を軽視している。民兵がもはや戦場を支配していないのは事実だが、キエフが今心配しなければならないのは国内戦線である。
(引用はここまで)

 「プーチンがクリミアを占領した」というコーエンの文章は、明らかに主流メディアの言説に従っている。実際には、ロシア語を話すクリミアの人々が、ロシア連邦との再統合を住民投票で決めたのだ。しかし、コーエンの功績は、アゾフ大隊と右翼団体がロシアに支援された分離主義者と戦ったので、高い評価を受けたという事実に触れていることである。コーエンはアゾフ大隊が子供たちの訓練所を持っていたことについても言及している。

(以下引用)
 4年前にロシアのプーチン大統領がクリミアを占領し、ウクライナ軍の老朽化が露呈したとき、アゾフや右翼民兵がその隙間に入り、ロシアが支援する分離主義者を撃退し、その間にウクライナの正規軍は再編成された。その結果、多くのウクライナ人は民兵を感謝と賞賛の念を持って見守り続けているが、民兵の中でもより過激な勢力は、不寛容で非自由なイデオロギーを推進し、長期的にはウクライナを危険にさらすことになる。クリミア危機以降、民兵はウクライナ軍に正式に統合されたが、完全統合に抵抗するものもいる。例えば、アゾフは独自の子供向け訓練キャンプを運営しており、その人事部門は正規軍からアゾフへの転属を希望する新兵を指導している。
(引用はここまで)

 コーエンの主張はウクライナにネオナチがいることを暴露しているが、西側体制と主流メディアの筋書にしたがって、「ウクライナはファシストの巣窟だというクレムリンの主張は嘘だ。ウクライナの前回の議会選挙では極右政党の選挙結果が悪く、キエフでの国民民兵のデモにウクライナ人は警戒感を持っている」と述べている。しかしこれはすべて嘘である。コーエンの発言は嘘で、かつ矛盾している。彼は記事の冒頭で「国民民兵の隊員はアゾフ運動から集められた」と書きながら、一方で「アゾフはウクライナ軍に統合されることで『抑制』されたので心配ない」とも書いている。彼の間違った情報源はまず『Foreign Affairs』誌あたりだろう。これはアメリカの政治体制のお気に入りである外交問題評議会が所有している出版物である。

 では、アメリカ政府、軍産複合体、CIAは、現在進行中の対ロシア戦争でウクライナのネオナチを支援しているのだろうか? その答えはもう明らかだ。


Timothy Alexander Guzmanは自身のブログサイト、Silent Crow Newsで執筆しており、この記事の原文はここに掲載されている。彼はGlobal Researchに定期的に寄稿している。

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高騰するインフレにより、フランスで全国規模のストライキが発生

<記事原文 寺島先生推薦>

Soaring inflation triggers national strike in France
Trade unions have called for higher wages amid the cost-of-living crisis

(多くの労働組合は生活費が危機を迎える中で、賃上げを要求)

出典:RT

2022年10月18日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月9日


© AP / Daniel Cole

 
 10月18日(火)、フランスで全国規模のストライキが発生し、電車は不通になり、学校は休校になっているところも出ている。これは、高騰するインフレと、エネルギー危機の中で、多くの労働組合が賃上げを要求する動きを見せているからだ。

 フランス最大の労働組合であるCGT(フランス労働総同盟)によると、抗議運動者たちが要求しているのは、「給与や年金や最低限の社会保障額の引き上げと、生活と学習環境の改善」だという。CGTの説明によると、今日(10月18日)行われた労働争議は、数週間継続している製油所労働者たちによるストライキを拡大したものだとのことだ。なお、この製油所のストライキにより、ガソリンスタンドは、フランス中で休業となっている。この労働組合は石油業界の大手、特にトタル社とエクソン社の企業運営を非難し、生活費の危機に直面している被雇用者たちの要求は無視して、「巨額の利益」を得ている、と主張している。

 CGTは、エネルギー業界だけではなく、「公的機関と民間企業、両方」の様々な業界で、抗議活動の熱が高まっている今こそ、「被雇用者や退職者や青年層の人々」が、この労働争議に参加すべきだ、と呼びかけている。

 フランスのインフレ率は現在6%超となっており、フランスのほぼ全ての産業活動は記録的な低下を見せている。これは急速に進行しているエネルギー危機によるものであり、この危機は、対露制裁と、 ロシアからのエネルギー供給が急激に減少していることで、さらに悪化している。


関連記事: Industry stalls amid energy crisis – Bank of France

 今回のストライキは、いくつかの大きな労働組合が支持しており、大規模な混乱を招いている。フランスの国鉄であるSNCFは、「数路線が」不通になるという警告を発した。

 ユーロスター鉄道は、ストライキのために、ロンドン・パリ間のいつくかの電車を止めなければならなくなったと発表した。

 海運業界も影響を受け、10月18日(火)、数時間稼働を停止すると発表した港や波止場も出てきている。

 このストライキにより、休校になる学校も出てきている。教育省が出した最初の公的発表によると、教員の約6%がこのストライキに参加しているという。この数値は、特に専門学校で高くなっており、専門学校の教員のストライキへの参加率はほぼ23%に達している。

 パリやボルドーやレンヌなどを含むいくつかの都市では、数千人が様々な集会に参加しており、午後にはさらに多くの抗議運動が計画されていた。

 10月18日(火)、フランスの大臣の一人が、このストライキに対して声明を出し、ストライキの参加者たちは、「対話しないという姿勢に」固執している、と非難した。

 「ある一定の数の被雇用者の人々が、自分たちの購買力が改善されることへの期待を表明している状況は、理解できます。しかし、私がこれらの人々に言いたいことは、我が国の政府は、インフレの件に関しては、欧州で国民をもっとも保護している国だ、という点です」とエコロジー移行大臣のクリストフ・ベシュ氏はフランスのテレビ局Europe1の取材に答えている。

 同大臣が強調したのは、ストライキは事態をさらに悪くすることにしかならないという点だった。それは、すでにフランス経済は、「ウクライナでの戦争」と、経済悪化状況がより広がっているせいで、非常に困難な状況に追いやられているからだ、と述べた。
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産業壊滅と破産の瀬戸際にある欧州

<記事原文 寺島先生推薦>

Europe at the Gates of Deindustrialization and Ruin

筆者:ミッション・ヴェルダッド(Mission Verdad)

出典:INTERNATIONALIST 360° 

2022年10月16日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月9日


前代未聞の過酷な産業崩壊が進む欧州 (画像はル・モンド紙から)

 ウクライナでの戦争(この戦争の原因を作ったのは米国とNATOだが)勃発後、西側のほとんどの国々は、米国政府と足並みを揃え、前例のない規模で、ロシアに対する強圧的な措置を課すことを決めた。そのせいで、ロシア・欧州間の関係は悪化し、経済危機とエネルギー危機はますます深刻になっている。

  欧州連合(EU)各国政府は、悲観的な状況にあるのに、モスクワ当局に対して第二弾の「制裁」を準備している。気づいていないの意図的なのかは分からないが、このような動きは、欧州の未来を暗澹たるものにするしかないものだ。

 エネルギー危機について言えば、欧州内の諸工場での電気代は大幅に増加し、ロシアのエネルギーに大きく依存していた多くの製造業者は、産業活動が麻痺させられている。 経済面でいえば、欧州大陸内での高いインフレが、労働者たちが賃上げを求めて、ストライキを行う原因となっている。

 これらの様々な要因の影響を受け、欧州における生産費用は高騰し、脱産業化の過程が進行している。もっともそれは、新自由主義的な政策により、既に進行中だったことではあるが。


ドイツから逃げ出す諸企業

 経済的利益を守るため、もともと欧州で自社産業をたちあげてきた多くの強力な企業が「逃げ出し」はじめ、比較的生産費用がより安く済む国々に移転している。この現象は、特にドイツで顕著だ。 中国の新華社通信が再掲した、ドイツのハンデルスブラット紙の最近の記事によると、米国は60社以上のドイツ企業に、オクラハマ州での投資を持ちかけ、利益を増やすよう声をかけている。その企業は、ルフトハンザ社、シーメンス社*、アルディ社*、フレゼニウス社*である。 この4社だけで、最近の投資額をほぼ3億ドル増やしている。
[訳注]*シーメンス社、ミュンヘンにある電機メーカー
*アルディ社、ドイツに基盤を置くデスカウントストアのチェーン企業
*フレゼニウス社、ドイツ・ヘッセン州に本拠を置く医療機器の製造・販売会社

 この記事の解説によると、同じことが製薬業界や自動車業界でも起こっているという。バイエル社は、1億ドルかけて、ボストンに生物技術センターを建築し、化学会社のエボニック・インダストリーズ社は、2億ドルかけてインディアナ州に生産センターを建てる計画だ。フォルクスワーゲン社は、2027年まで、米国に710億ドルを投資する予定で、BMW社はサウスカロライナ州で、電気自動車に関する新しい一連の投資を始めるとしている。

 中国も、ドイツの諸企業が熱い視線を送っている国だ。ドイツの化学会社BASF社は、100億ユーロを投資し、湛江(たんこう)市に世界水準の統合基地を建設する予定で、先月初旬、その最初の計画が開始されたばかりだ。


BASF


中国南部湛江市で建設中のBASFの基地の航空写真(写真は新華社通信提供)

 7月、ドイツのザクセン州のミヒャエル・クレッチマー知事は、ディー・ツァイト紙に、ロシアを孤立させ、ロシアとの経済協力関係を断つことは、ドイツにとって危険な行為である、と語っていた。さらに同知事は、「制裁」がドイツの経済とエネルギーの安全保障に悪影響を及ぼすことを懸念し、モスクワ当局との関係には、「現実主義」を取るべきであるとし、EUが和平交渉を進めることで、ウクライナでの武力対立を停止すべきだ、とも語っていた。

 「我が国の経済体制は、完全に崩壊の危機にあります。慎重に動かなければ、ドイツは非産業化してしまう可能性があります」と同知事は警告していた。

 ドイツに届けられる天然ガスの3分の1以上は、産業界で消費されていて、ロシア・ウクライナ間の武力衝突が起きる前は、ロシアがドイツの天然ガスの半分以上を提供していた。米国とEUが原因を作った政治的及び技術的な状況のせいで、ここ数週間ロシアからの供給量が減少したため、ドイツ政府は厳しい現実に直面させられている。その現実とは、中期的に見て、ドイツは、ロシアからの天然ガスを諦めることはできないという現実だ。いくらここ数年、ドイツが最も力を入れている政策が、エネルギー移行計画という「大義」を掲げているにしても、そうなのだ。


産業界が警鐘を鳴らしているイタリア

 イタリアでは、北部と中央部の諸企業が、経済の非産業化が起こることに警鐘を鳴らしている。その原因は、ガスと電気の価格が法外に高騰し、国家の安全保障が脅かされていることだ。 エミリア・ロマーニャ、ロンバルディア、ピエモンテ、ベネト地域のイタリア産業総連合 (Confindustria) の会長たちの見積もりによると、生産費用は、最良で360億ユーロになるとしているが、410億ユーロにまで達する可能性もある、とのことだ。

 8月30日 、イタリアの産業生産の中枢部が集中している4地域の行政の経済開発部門の代表者たちの会合が開かれたが、この連合会の各地域の代表である、アナリサ・サッシ、フランセスコ・ブッゼラ、マルコ・ゲイ、エンリコ・カラロの4氏は、現在のエネルギー価格は、「尋常ではない高さで、しかも急激に高騰している」と語り、生産活動の完全閉鎖を阻止できる唯一の可能性は、欧州議会による介入しかないと述べた。

 地域連合会のこの4代表は、ガスと電気の費用が10倍になったことを報告書で記している。具体的には、2019年から2022年は45億ユーロだったのが、2023年には360~410億ユーロにまで高騰するとのことだ。イタリアでは前例のないこのような費用の高騰が起これば、産業は劇的に衰退し、イタリアの産業活動は完全に停止してしまうだろう。その際、一番大きな影響を受けるのが、中小企業なのだが、その危機は、外国に産業製品を輸出している大手企業にも影響を与えるだろう。

 その翌月、この産業連合会が発表したところによると、2023年の経済成長の見通しは、ゼロになるだろうという。 「私たちの経済は、複雑で、幾分暗く、面倒な方向に進むでしょう」と同連合会の代表であるフランセスカ・マリオッティ氏は、同連合会の研究センターが出した秋の経済予想を発表した際に語っていた。


記録的な企業倒産数を出しているフランス

 今年、ほぼ9千社のフランス企業が倒産しているが、この数は、ここ25年で最大だ、とラジオのフランスインホ局は、アルタレス社が出した数値を引用して報じた。

 今年の第3四半期、フランスでは、8950件の倒産手続きが取られたが、これは昨年の69%増しだった。アルタレス社によると、小規模店舗やレストランや美容院が、最も影響を受けたという。 2021年の同時期と比べると、レストランの閉店数は150%、美容所や美容院については94%増加している。

 アルタレス社はこの現状を、インフレの進行とサービス料金の高騰、そして国による企業支援措置の減少、さらには新型コロナウイルスの大流行後に消費者の習慣にやや変化が見られたことと関連付けている。

 昨年12月、ロシアからのエネルギー購入拒否運動が悪化する前のことだが、エネルギー消費者産業連合 (フランス語略称はUNIDEN)は次のように警告していた。「フランス国内の電気集中型産業は、価格状況が最悪になれば、近い将来、市場における供給の大部分を補充しなければならなくなるだろう」と。そしてその際の追加費用を、20億ユーロだと見積もっていた。

 UNIDENは、フランスで行われているエネルギー集中型産業を代表する団体であるが、食品業界、自動車業界、化学業界、セメントと石炭業界、建設業界、エネルギー業界、金属業界、製紙業界、運輸業界、ガラス業界も網羅している。この団体に加盟している諸企業は、フランス産業界の電気と天然ガスの7割を消費している。

 現在、フランスの燃料業界は、崩壊の瀬戸際にある。ガソリンスタンドの3割が、労働者たちによる大規模なストライキのために、ガソリンを所有していない。トタル社とエクソン・モービル社の労働者たちが激怒しているのは、現在のインフレ水準下、 補助金と援助なしでは今の給料で生活できない点だ。フランス当局は、堪忍袋の緒を切らせ、 ストライキを行っている労働者たちを、力づくで解散させ、従わなければ賃金カットも辞さない構えだ。


製油所の前で抗議活動を行っているフランスのトータル・エネルギー社とエクソン・モービル社の労働者たち( Photo: EFE )

 「労働組合が断固として合意の話し合いに応じないのであれば、必要な力を使って、できる手段を総動員して、精油作業を開始するしかありません。私が決める猶予期間は、時間単位、最大限許せて、日単位です。週単位ではありません。それでは時間がかかりすぎます」と、フランスのブルーノ・ル・メール金融大臣は述べている。


産業の経済的支柱なしで、欧州はどれほど継続できるだろうか?

  独・伊・仏、3カ国のこれらの事例は、ほんの数例を示したにすぎない。(これら3カ国の産業能力にとって、最も重要な事例だけ示したものだ)。そしてこれらの事例は、いま欧州連合が直面している一般的な現状を示すものだ。それは、非産業化が進行しているということである。

 産業の潜在能力が衰退すれば、失業率の高騰や、一般市民からの不満の増加といった、既に現れている直接の影響を招くだけでは済まない。それだけではなく、他国に依存して、不可欠な原料や部品などを入手しないといけない状況も生み出される。例えば、「錫とアルミの製造能力は、半分に抑え込まれ、金属の鋳造は衰退している」と欧州非鉄金属協会は発表している。

 このような状況が継続すれば、これらの天然資源を使って、これまで欧州大陸内で製造してきた原材料(例えば機械や航空機や車輪の部品など)を、アジアや米国からの輸入に置き換えなければならなくなるだろう。

 制裁による戦争を始めたことで、EU諸国は、自国主権を完全に手放すことになってしまった。この不当な制裁が課されるまでは、欧州の産業構造は、欧州大陸の各国が、ある一定の自決権を裁量できる力を維持できていた。しかし今は、欧州諸国の規則を決められるのは、欧州に原料や部品を供給する国になってしまいつつある。そのような原料や部品がなければ、欧州社会を維持してきた技術的な枠組みが回らなくなるからだ。

 米国は欧州にとって決定的な供給者になろうと、歩を進めてきた。そうなれば、EUが「米英にとっての下僕」という役割を担うことに甘んじざるをえなくなる。たとえ、英米の下僕になることが、欧州の人々にとって利益にならないとしてもである。
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ブラジル大統領決選投票で、ルーラ元大統領がボルソナロ現大統領を破る

<記事原文 寺島先生推薦>

Lula defeats Bolsonaro in Brazilian election

The president-elect calls his political comeback a “victory of democracy”
(新しく大統領に選出されたルーラ氏は、自身の政治的復権を「民主主義の勝利」と呼んだ)

出典:RT

2022年10月30日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月9日



大統領決選投票に勝利した後、支持者に対して演説を行うブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ次期大統領©  AFP / カイオ・グアテリ

 ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ元ブラジル大統領は、10月30日(日)、ブラジル大統領選の決選投票で、ライバルである右派のジャイール・ボルソナロに勝利を収めた。ブラジルの選挙管理委員会は、ボルソナロ氏の得票率49.1% に対して、ルーラ氏は50.9%の得票率を獲得し、ルーラ氏がわずかな差で勝利したと発表した。

 「これは私や労働者党の勝利ではありません。民主主義を求める運動が勝利したのです。この運動は党派や、個人の利益や、考え方を乗り越えたものです。そしてこの運動の目的は、民主主義が勝利がすることでした」と10月30日(日)の夜、ルーラ氏は、歓声を上げるサンパウロの支援者たちに語った。

 次期大統領に決まったルーラ氏は、このような接戦の選挙戦を受けて、この先の自身の取り組みへの批判が、「激しい」ものになることを認識しており、語気を強めて、「この国の真の魂を再建する必要があります。寛容さと、団結と、違いへの敬意、他の人々への愛を取り戻しましょう」と語った。

 2023年1月1日から大統領職につくことになっているルーラ氏は、自身に投票した人々だけの大統領ではなく、2億1500万人のブラジル全国民の大統領になると約束した。「2つのブラジルなど存在しません。我が国は、一つの国家であり、一つの国民から成り立っている国です。そして偉大な国家です」


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 ボルソナロ氏は、まだ公式には敗北宣言を出していない。 現職のボルソナロ大統領が、選挙期間中繰り返し警告していたのは、僅差で大統領選に敗れた際は、その結果に異議を申し立て、ブラジルの選挙体制の信頼性に疑問をなげかけるつもりだ、という点だった。

 ブラジル現地時間午後5時(グリニッジ標準時午後8時)にブラジル全土の投票が締め切られたあとの最初の発表では、ボルソナロ氏が優勢だった。 しかし、第一次選挙の時と同じく、シルバ氏の本拠地の開票が進むと共に、ボルソナロ氏の優勢は勢いを失した。10月2日の第一次選挙では、ダ・シルバ氏の特集は48%だったが、この数字では、即時勝利と認められるには届かない数字だった。

 ブラジル労働者党の代表であるルーラ・ダ・シルバ氏が、選挙戦の焦点においていたのは、社会の不平等を克服することと、貧困を緩和することだった。シルバ氏が提案していた政策には、富裕層への税金を増額することと、弱者を守る安全網を広げることと、最低賃金を上げることが含まれていた。


関連記事:Brazilian president and challenger trade insults

 ボルソナロ氏が選挙戦で掲げていたスローガンは、「神と家族と祖国と自由」だった。ボルソナロ氏から見たブラジルの未来像には、国有企業である石油会社の民営化や、アマゾン地域を鉱山業への更なる開放、銃規制の緩和も含まれていた。

 決戦への準備が進む中、選挙戦において、両者は互いに罵りあっていた。10月17日にテレビで放送された討論会で、ルーラ氏は、ボルソナロ氏のことを「ちっぽけな独裁者」呼ばわりし、自身は、自由と民主主義を守ると誓っていた。現職のボルソナロ大統領は、これに反論し、 ルーラ氏のことを、「国家の恥」と呼ばわりした。その根拠は、ルーラ氏の労働者党が政権をとっていた時に起こった汚職事件の疑惑だった。

 2003年から2010年までブラジルを統治していたルーラ氏が、2018年の大統領選への出馬を禁じられたのは、汚職により起訴され、投獄されていたからだった。なお後に、この起訴は取り消されている。
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EU主要各国の首都で、巨大なデモや抗議集会

<記事原文 寺島先生推薦>

Massive Demonstrations Taking Place in the Main European Capitals

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年10月17日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月8日



 この週末は、欧州連合(EU)加盟国の首都を埋め尽くすような、大規模な反政府集会が、同時におこなわれた。
 最も大規模なデモは、ドイツの首都ベルリンの連邦議会議事堂正面と、チェコの首都プラハの中心部で行われた。
 ドイツのデモ隊は「ロシアの石油とガスをよこせ」「ショルツ(社会民主党)が率いる三党連立政権は、バイデン大統領の召使い」の横断幕を掲げて登場した。

 チェコの首都プラハでは、週末に抗議デモが数回行われ、デモ参加者は政府に辞任を要求している。しかしペトル・フィアラ首相は、「デモと集会に参加しているひとたちはモスクワに利用されている人だけだ」と述べた。

 オーストリアの首都ウィーンでもデモが行われ、多くのロシア国旗すら見受けられた。デモ参加者は、ネハンマー首相に対し、ロシアとの対立を放棄し、友好関係を再開するよう求めた。

 EU諸国における動員のきっかけは、インフレの継続的な拡大である。
 ドイツでは1950年代初頭以来、初めて2桁になった。電気・ガス料金の途方もない高騰が、実質賃金を大幅に引き下げている。
 チェコ共和国のインフレ率は8月に年率17%となり、昨年の約3倍となった。

生活費高騰に対するフランスでのデモ

 14万人以上のデモ参加者が、給与の引き上げや企業の特別利益への課税強化など、危機の影響を緩和する措置を求めて、10月15日(日)にパリでデモ行進をおこなった。
 主催者は、エネルギー、必需品、家賃の凍結を要求し、年金改革に反対した。警察との深刻な衝突、ゴミ箱の焼却、いくつかの銀行のショーケースの破壊、などの行為が行われた。

 ストライキをおこなってデモに参加したのは、製油所、原子力発電所の整備作業員、清掃作業員、国鉄、銀行などの労働者だった。「賃上げのための闘いは公正である」と参加者は叫んだ。
 この呼びかけが行われたのは、製油所や燃料タンクでのストライキが慢性的なガソリン不足を引き起こし、マクロン政権が守勢に立たされる中のことだった。
 数百万人の労働者や自動車に依存する市民に影響が及び、ガソリンスタンドには巨大な行列ができた。

 マクロン政権は、6月の立法府選挙で過半数を失った議会でも守勢に立たされている。特に、来年度の政府予算案の議会審議は難航している。

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英国ドキュメンタリー番組、COVIDワクチンは「安全で効果的」との言説の裏にあるウソを暴露

<記事原文 寺島先生推薦>
 
UK Documentary Exposes Lies Behind ‘Safe and Effective’ COVID Vaccine Narrative

筆者:スザンヌ・バーディック(Suzanne Burdick)博士

出典:Global Research

2022年10月14日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月7日



***

 英国の新しいドキュメンタリー映画「安全で効果的:セカンドオピニオン」 - イギリス国民が、「安全で効果的」という「怪しげなマントラ(聖なる言葉)」のもと、COVID-19ワクチン接種の政府方針を遵守するよう精神的圧力をかけられていた様子を詳細に描いたもの。

 この55分間の映画は、ITVBSkyBの元幹部であるマーク・シャーマン(Mark Shaman)とNewsUncutの協力のもと、オラクル・フィルムズが制作した。

 このドキュメンタリーは、英国の国民保健サービスで研修を受けた有力なコンサルタント心臓専門医であるアセム・マルホトラ(Aseem Malhotra)博士の発言で始まり、彼は「2回接種終了者」で、「ファイザー社のワクチンを最初に接種した一人」と述べている。

 「数ヶ月の間、データを批判的に評価し、オックスフォード、スタンフォード、ハーバードの著名な科学者と話し、2人の調査医療ジャーナリストと話し、2人のファイザー社の内部告発者から連絡を受けた後、私はこのワクチンの完全な安全性は確保されておらず、前例のない害があるという結論を、心ならずも出しました」とマルホトラは述べている。

 「そして、すべての生データが公開され、独立した分析が行われるまで、このワクチンは中断する必要がありますとの結論に至りました」と語った。

 COVID-19ワクチンの中止を求めるのはマルホトラだけではないと、映画のナレーターは言う。「世界的な問題に発展しつつあることに警鐘を鳴らしている科学者はもっとたくさんいる 」とも。

 ナレーションは続く:
 
「数百万人のワクチン被害と数千人の死亡が、世界中の公式ルートで報告されています。」

「わが国政府は、新しく出たデータを隠蔽しているとの非難の声が上がっていますし、メディアは偏った話しかしていません。」

 また、映画にはジョージア・シーガル(Georgia Segal)のように、COVID-19ワクチンで身体的な影響を受けたという人たちも登場した。 

 シーガル(35歳)は、ファイザー社の注射を2回目に打った後に倒れ、その怪我が原因で「障害者」として公式に登録された。

 ワクチンによる傷害事件は、通常、主流メディアでは非常に稀なケースとして報道される。しかし、このドキュメンタリーによると、8月24日現在、英国医薬品医療製品規制庁(MHRA)を通じた英国の公式イエローカード報告システムでは、COVID-19ワクチン接種後の副反応(死亡例2240件を含む)が43万2819件以上報告されているが、すべての報告がワクチンによるものと確認されるわけではないという。

 米国では、VAERS(Vaccine Adverse Event Reporting Systemワクチン有害事象報告制度)に報告されたCOVID-19ワクチン接種の副反応や死亡例の数は、さらに多くなっている。

 2020年12月14日から2022年9月30日の間に、VAERSに報告された副作用は143万7273件(うち死亡は3万1470件)だった。

 CDCのV-safeアプリが収集し、今月発表したデータによると、COVID-19ワクチン接種後、78万2900人が診察、緊急治療、入院を求めたと報告されている。

 この数字と、シーガルのような個人の体験が公に認められていないことは、「どこから手をつけていいかわからないほど壮大なスキャンダル」だと、診断病理学者のクレア・クレイグ(Clare Craig,)博士はこのドキュメンタリー映画の中で述べている。

 英国議会議員のクリストファー・チョープ(Christopher Chope)卿によれば、英国政府はワクチンによる傷害を否定しており、政府は 「ワクチンを接種したことによる一部の人々への悪影響を隠蔽することによって、ワクチンの信頼を高めようとしているのだ」 という。

 チョープは、COVID-19ワクチンで負傷した人への補償迅速化し、補償額の上限を引き上げる民間議員法案を提唱しているという。

 しかし、ワクチン接種で体に障害を負った人にとっては、金銭的な補償だけでなく、それが認知され、健康を取り戻すことが重要なのだ。

 このドキュメンタリーに登場するキャロライン・ポーヴァー(Caroline Pover)は、作家であり、講演者であり、漬物屋を営んでいる。彼女は10年間、津波で壊滅的な被害を受けた日本の村を支援してきた。毎年、この村を訪問するためにCOVID-19ワクチンを接種している。

 「私の人生は今、完全に変わってしまいました」とポーヴァーは言う。「以前とは比べものにならないくらい。5カ月ほどは、ほとんど何もしていませんし、体がまったく動きませんでした。常に疲れていました。頭や目の痛みは絶え間なく続きました」。

 彼女の言葉は続く:
 
 「お金ではないんです。毎日の生活に仕事、やるべきことという目的意識を持つことです。それがないと、こんな生活、もう無理だ、となってしまいます。この人生はもう生きる価値がなくなってしまうのです。」

 「そして、ワクチンを接種した人々の中には自殺をした人もいます。」

 この映画は、さらに2020年秋、COVID-19ワクチンの「95%の効果」というファイザーの主張を否定した。この主張によって世界中の多くの政府がCOVID-19の公的接種キャンペーンに「ゴーサイン」を出したのである。

 ファイザー社の主張を支える方法論には欠陥がある、とマルホトラは言っている。つまり、同社は「相対的リスク減少」だけを引用し、「絶対的リスク減少」は引用していないからである。この2つの統計はまったく別物なのだ。

 ファイザー社のワクチンの相対リスクは95%効果的であったが、絶対リスクはわずか0.84%でした。つまり、1人がCOVID-19に感染するのを防ぐためには、119人にワクチンを接種しなければならないのだ。

 「相対的リスク低減は、あらゆる治療の効果を誇張する方法です」とマルホトラは言う。

 「相対的リスク低減だけでなく、患者との会話では常に絶対的リスク低減を用いなければならないというガイダンスが何年も前から出されているのです。そうでなければ、非倫理的と見なされるからです」とマルホトラは付け加えた。

 Children's Health Defenseの会長兼最高顧問であるロバート・F・ケネディ・ジュニア(Robert F. Kennedy Jr.)は、RFK Jr. The Defender Podcastの10月7日放送分のポッドキャスト番組の「ロバート・F・ケネディ・ジュニアのザ・ディフェンス」でマルホトラにインタビューしました。

「我々は真実を知らなければならない」

 映画は、「インフォームドコンセントを可能にするために、医師は十分な努力をしたか?」という問いかけをしている。

 クレイグさんは、インフォームドコンセントで起こったことは「大いに問題だ」と言い、「私が最も心配したのは、自分自身にインフォームドコンセントを行っていない医師たちだった」と付け加えた。

 小児科医を引退したロス・ジョーンズ(Ros Jones)博士は、「医師たちは非常に忙しく、自分たちで調査をしてこなかった。言われたことをそのまま受け入れてきただけなのです」 と述べた。

 また、このドキュメンタリーは、「科学者が、ワクチンでは感染を防げないこと、感染を防げないこと、統計上、国民の大多数が重症化する危険性がないことを知ったのに、なぜ政府はワクチンキャンペーンを推進し続けたのか?」と問いかけている。

 そして、COVID-19ワクチンの安全性と有効性には「非常に多くの疑問」が残るが、英国政府は「それでも予防接種プログラムを推し進める。しかも子供たちのために」、とナレーターは述べた。

 4月、英国は5歳から11歳の子供を対象としたCOVID-19ワクチンの提供を開始した。英国政府は、この夏、5歳から15歳までの通常の予防接種スケジュールにCOVID-19を追加したのである。ただし、12歳以下の子供にはファイザー社のワクチンを、40歳以下にはアストラゼネカ社のワクチンを推奨してはいない。

 この動きに対して、78人の著名な教授、医師、アナリストが次のような手紙を書いた:

 「臨床的必要性が証明されておらず、既知および未知のリスクがあり、これらのワクチンはまだ条件付き販売権しかないにもかかわらず、小児の定期予防接種プログラムにCOVID-19ワクチンの接種を追加することに強く異議を唱えます」。

 映画の最後にナレーターは、COVID-19ワクチンの安全性と有効性について、一般の人々が「健全な結論」に達することができるよう、「適切でバランスのとれた科学」が行われる必要があると強調した。

 「我々は真実を知る必要がある」とのナレーションが続いた。

 ドキュメンタリー映画「安全かつ効果的:セカンドオピニオン」の視聴はこちらから。

(残念ながら、この動画は削除されています:訳者)
*
Suzanne Burdick, Ph.D., is a reporter and researcher for The Defender based in Fairfield, Iowa. She holds a Ph.D. in Communication Studies from the University of Texas at Austin (2021), and a master’s degree in communication and leadership from Gonzaga University (2015). Her scholarship has been published in Health Communication. She has taught at various academic institutions in the United States and is fluent in Spanish.

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米国の科学者が致死性の新型コロナ変種を作成。この変異体の開発チームは「火遊び」をしていると非難される。

<記事原文 寺島先生推薦>

US scientists create new lethal Covid variant
The lab team behind the mutant variant was accused of “playing with fire”

出典:RT 

2022年10月16日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月6日



写真。ニューヨーク州レイクサクセスの研究所で、半自動検査用にCovid-19患者サンプルを準備する検査技師(2020年3月11日) © AP / John Minchillo


 ボストン大学の科学者たちは、コロナウイルスのうち感染力の強いオミクロン変種とオリジナルの武漢株を組み合わせることで、死亡率80%の新型コロナ19を作り出したと主張している。この研究は、そもそもウイルスを作り出したと考えられている実験と同じものであり、激しい怒りを買っている。

 先週発表された研究論文の中で、科学者たちは、オミクロン変種のスパイクタンパク質を分離し、2020年初頭に流通したオリジナル株の「バックボーン」と結合させたと説明している。この結果、「ワクチンによる免疫から強固に逃れ」、実験用マウスに「深刻な病気」を引き起こすウイルスが誕生し、その80%が実験中に死亡したと論文には書かれている。

 研究チームは、この変異株はマウスよりもヒトでは致死率が低いだろうと言うが、実験室で育てたヒト肺細胞では、オミクロン変異株と比較して5倍のウイルス粒子が生成されることを発見した。

 この論文はまだ査読を受けていない。


関連記事:米国はコビドの起源に関する独立した研究を妨害した - Lancet誌

 この研究のニュースは、中国の武漢ウイルス研究所で行われた同様の「機能獲得」研究(病原体を改変してその効力を高めることを表す用語)が、Covid-19の世界的大流行につながったと広く信じられているため、ネット上で激しい怒りを買っている。米国は武漢研究所のこのような研究資金を提供したが、パンデミックを引き起こした特定のコロナウイルスがこの研究所から発生したものかどうかはまだ不明である。

 イスラエル生物学研究所の元所長であるシュムール・シャピラ氏はボストンの実験について「これは完全に禁止されるべきで、火遊びである」と述べた。「ウイルス学者たちは、何回キメリック[奇怪な]SARSウイルスをより致命的にしていないと言ったのだろうか?」と、レポーターのポール・テイカーはツイートしている。

 パンデミックの余波で潜在的に危険な研究に戻ってきた科学者は、ボストンのチームだけではない。武漢研究所の2020年以前の機能獲得研究の多くを担当した民間企業であるエコヘルス・アライアンスは、先月アメリカから65万ドルの助成金を受け、「ミャンマー、ラオス、ベトナムにおける将来のコウモリコロナウィルス出現の可能性 」を研究することになった。
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ブチャ再考

<記事原文 寺島先生推薦>
Bucha, Revisited
筆者:スコット・リッター(Scott Ritter)
出典:INTERNATIONALIST 360° 2022年10月22日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2022年11月6日





 西側が構築したウクライナ側のシナリオは、嘘の防御の上に成り立っている。そして、ブチャでウクライナの治安部隊に虐殺された何百人ものウクライナ市民の死をロシアのせいにする嘘ほど、大きなものはないのだ。

「60ミニッツ」*、誰が戦争犯罪を犯したか、についての偽情報を再録
『60ミニッツ』*・・・アメリカCBSテレビが放送するドキュメンタリーテレビ番組。

 2022年4月1日から3日の間のある時期に、ウクライナの治安部隊がキエフ北部の郊外ブチャに入った。この町を占領していたロシア軍は、3月25日にロシア国防省が発表した全般的な軍再編の一環として、3月30日に撤退していた。ブチャは最前線にあり、ロシア軍とウクライナ軍の激しい戦闘の舞台となり、この戦闘に巻き込まれた数百人の民間人が死傷している。

 ロシア軍はブチャに残ったウクライナ市民に人道的な物資を配り、地元の業者と乾物を新鮮な卵や乳製品と交換するなど、市民的な対応をしていた。ロシア軍が撤退する際には、親ロシア派市民も一緒に撤退するように勧めた。これは、ロシア軍がブチャを占領していた期間、自軍に「協力/協調」していたとみなされた民間人に対するウクライナの報復の可能性をロシア側が理解していることを明確に示している。

 ロシア軍と交流のあった多くのウクライナ人は、限られた商取引や生き延びるための人道的物資の受け入れなど、ロシア兵との通常の交流はウクライナ国家に対する反逆には当たらないとして、その場を離れなかったのだ。

 彼らは間違っていた。



 今夜(10月21日)の放送では、スコット・リッターがこの記事について解説し、視聴者の質問に生で答えます。

 ロシア軍がブチャを出発した直後、ウクライナの治安部隊が町へ入ってきた。ソーシャルメディアや公共放送で、協力者を対象とした「浄化作戦」についてブチャ市民に警告するアナウンスが流された。ブチャに残っていた多くのウクライナ人は、この発表を受け、自分たちの行く末を案じ、ロシアの戦線に逃げ込むようになった。彼らは、ロシア軍にとって脅威でないことを示す白い腕章を付けていた。また、ロシアから支給された食糧を持参し、旅の支度をした。

 しかし、時すでに遅し。

 ウクライナの治安部隊、特にネオナチ・アゾフ連隊の退役軍人からなる「サファリ」部隊は、北上中の数多くの難民を捕まえ、ウクライナ人の言葉で言えば「浄化」し、その場で銃殺したり、手を後ろに縛ってブチャの路地や街で処刑したのだ。

 この犯罪の証拠は圧倒的であった。しかし、事実に基づく真実の報道から、虚構のプロパガンダの速記へと機能を変えた元ジャーナリスト仲間たちが率いる「集団的西側」は、ロシア・ウクライナ紛争の交渉による解決の必要性から、ロシアを長期的に弱めるための消耗戦の維持へと世論を転換させるために、より大きな情報作戦に取り組んでいたのである。

 そのためには、「集団的西側」は、ウクライナ人は自由や解放といった民主的価値の勇敢な擁護者であり、ロシア人はウクライナの国土を荒らし回り、罪のない市民を残虐に扱う強奪者であるという明確な「善対悪」の構図を描く必要があったのである。このような明確な役割分担は、ロシアとウクライナの紛争を「善」(NATO)と「悪」(ロシア)の間の事実上の存亡の争いに変えるために、これから行われる数十億ドル規模の財政・軍事支援の支持を得るために必要であった。

 それは機能した。

 ブチャは「集団的西側」の市民が結集する象徴となり、自国の指導者たちが介入して、紛争の実行可能な外交的出口を狭めさせ、イスタンブールでロシアとウクライナ当局の間で交渉されていた、紛争からの実行可能な外交的出口を弱めるために指導者が介入することを支持するだけでなく、制裁を通じてロシアを抑止し打ち負かす努力の失敗がもたらす破壊的な経済結果にも目をつぶってしまったのだ。西側諸国民は、自国の見かけ上の経済的安定を回復するためにそれぞれの指導者に働きかけることを要求する代わりに、西側主流メディアが想像の中で作り上げた凶悪なロシア像により近い政府を維持するために、自分たちが苦労して稼いだ宝物の何百億ドルも政府が振り込むのを拍手して見ていたのである。

 それから7ヵ月後、「集団的西側」は新たな変節点にいることに気づいた。夏の間、NATOの基準で訓練・装備された新兵予備軍を増強したウクライナは、NATOの情報、通信、兵站、作戦計画の支援を受けて、ハリコフとケルソン方面で大々的な攻勢を行った。

 この新しいNATO軍を犠牲にすることで、(何万人ものウクライナ兵が死傷し、何百台もの戦車や装甲車が失われた)ウクライナは、ロシア軍に意味のある損害を与えることなく、鳴り物入りの領土獲得に至ったのである。この「ピュロス王の勝利」(訳注:犠牲が多くて引き合わない勝利)によって、ウクライナは意味のある軍事的目的を達成することなく、戦略的予備軍を破壊することになった。さらに、防衛線の強化、30万人の予備役部隊の部分的動員、ウクライナを麻痺させるための戦略的航空作戦の開始といったロシアの反応によって、「ウクライナの勝利、ロシアの崩壊が迫っている」という状況から「ロシアの勝利はNATOの敗北」へと劇的にシナリオが変化しているのである。

 ロシアは勝利している。

 NATOはウクライナ戦線で敗北している。

 この新しい現実を受け入れ、紛争を交渉で解決しようとするのではなく、「集団的西側」はまたしても、昔からよく知られている「善対悪」の偽りのシナリオを作り出し、ウクライナ支援でとっくに軍備と財政を空っぽにし、冬の到来とロシアのエネルギー制裁がもたらす現実を前に、経済と社会の惨事を目の前にした国々に、掛け金を次々に投入させ、過去にも現在にも未来にも負けが決まっているウクライナに倍賭けさせる気でいる。

 西側の主流メディアで活躍するいわゆる「ジャーナリスト」が直面している大きな問題の一つは、彼らほど有能なフィクション作家でさえ、ウクライナがステパン・バンデラ(Stepan Bandera)の胸がむかつくイデオロギーの生き写しであり、その殺人的倫理観がウクライナの政府、軍、治安機関のあらゆる側面を感染させているという新しい現実に基づいてみんなを納得させる物語を作れないということである。

 もう1つの問題は、ウクライナ人が簡単に言えば嘘つきだったことだ。

 例その1。ウクライナの元人権担当オンブズマン、リュドミラ・デニソワ(Lyudmyla Denisova)。

 ウクライナによって作られた「ブチャの大虐殺」という物語が、西側主流メディアの従順な共犯者によって流布された余波で、デニソワは、暗黒面からの物語にさらに尾ひれをつけることによって、元々の物語が生み出した道徳的怒りを持続させようとしたのである。彼女のやり口の典型は、BBCに語った物語で、ニューズウィークやワシントンポストなど他の西側メディアも疑うことなく、ウクライナでロシア兵が犯したとされる性的暴力犯罪について取り上げたものである。

 「ブチャのある家の地下で、約25人の14歳から24歳の少女と女性が占領中に組織的にレイプされた。そのうち9人は妊娠している。ロシア兵は、ウクライナの子供を産ませないために、どんな男性とも性的接触を望まないほどレイプする」とデニソワはBBCに語った。

 この話はどれひとつとして本当ではない。このような大嘘をつくと、いずれ誰かが、たとえ徹底的に妥協した西側の「ジャーナリスト」であっても、被害者と直接話をしたいと思うようになる。

 レイプ被害者はひとりもいなかった。

 デニソワはその後、自分の嘘の背後にある理由を説明した。「私はおぞましい話をしました。それも彼ら(西側)に、ウクライナとウクライナ人が必要とする決断をさせるためだったのです」とウクライナの新聞に話をしている。ある事例では、イタリア人が「私たちへの武器供与に反対」していたのに、彼女の話を聞いて「武器供与を含めてウクライナを支援する」と決めることになった、述べている。

 ウクライナによるハリコフ再征服の余波で、ウクライナ当局はイジウム近辺の集団墓地の存在を軸に「新しいブチャ」の物語を作り出そうとした。しかし、この物語は、ウクライナ人が「協力者」とみなされる者に対して残虐行為を行ったという直接的な証拠が増える中で、すぐに崩壊した。

 勝利に酔いしれたステパン・バンデラのウクライナ人支持者たちは、自分たちの犯罪を公然と自慢した。あるウクライナ人ボランティア分遣隊長(政党「右派セクター」のメンバー)は、ウクライナ人ジャーナリストに自分の犯罪を認めた。彼女は、多くの同胞の死を知っても何の感情も示さなかった。「あいつらを刑務所に入れる時間がない」と右派のチンピラは言い、ロシアとの協力で告発された人々は「ただ消えるだけ」と述べた。「多くの人々が消えたのでウクライナは国勢調査をしなければならないだろう、と彼は自慢げに言った。

 その司令官の言葉を裏付けるように、掘られたばかりの墓には、処刑されたばかりの男女の遺体が、私服姿で両手を後ろに縛られた状態で埋まっていた。

 この残酷な現実を克服できるような物語を作ることができず、主要メディアは、古い物語に新しい命を吹き込むという昔からの手口に頼った。ロシアの原罪であるブチャの「大虐殺」という嘘を、再び袋詰めしたのだ。

 10月16日、CBSの看板ニュース番組「60ミニッツ」で、「ブッチャの失われた魂」と題する特集が放送された。スコット・ペリー(Scott Pelley)という特派員が、視聴者の心の琴線に触れるようなナレーションをした。

 「ブチャの町は、春先にロシア占領軍が撤退するまで、国際的にはあまり知られていなかったが、全世界に衝撃を与える破壊と死を残した。ロシア軍は27日間にわたり、キエフ近郊で400人以上の市民を殺害した。犠牲者の中には、縛られ拷問されているのが発見された者もいた。多くは、殺された場所で腐敗するように放置された。」

 ペリーは、ウクライナ治安部隊に奪還された直後のブチャを訪れ、死体が散乱した何百人ものウクライナ市民の死因を「ロシアが悪い」というウクライナ側のシナリオをオウム返しする上で大きな役割を担った。「60ミニッツ」によると、ペリーは、「惨状を直接目にし、町の中心部にある教会の裏に掘られた集団墓地を目撃した」とし、「その集団墓地で殺され埋められた人々についてもっと知るために再び訪れることを誓った」と述べている。

 ペリーの話としてはそれだけだ。

 ブッチャに埋められた犠牲者がいたことは疑う余地がない。

 しかし、彼らはロシア人に殺されたわけではない。

 ウクライナ人によって殺されたのだ。

 願わくは、今回は、ウクライナで起きていることの真実に、欧米の聴衆が目を覚ましてほしい。

 右翼団体の赤と黒の旗に身を包み、ロシアから奪還したすべての村、町、都市で、ヴォルヒニア(Volhynia)と東ガリシアにおけるステパン・バンデラとその信奉者の殺人的歴史を再現しているウクライナ政府の実態に目を向けてほしい。

 訓練終了後、ステパン・バンデラを賛美するウクライナの空挺部隊の実態に目を向けてほしい。

 「クラーケン大隊」をはじめとするウクライナ軍内のネオナチ軍団の戦車や装甲車に、公然と卍が描かれている実態に目を向けてほしい。

 ウクライナ政府の犯罪的本質の現実に目を向けてほしい。

 「60ミニッツ」と西側メディアはブチャの悲劇を好きなだけ再検討することができる。彼らが報告することは、通りに横たわる死体がウクライナ政府高官の命令でバンデラ崇拝者の「サファリ」大隊の殺人者によって殺されたという事実を変えることはない。ゼレンスキー大統領以下、同じウクライナ政府関係者が、ウクライナの経済と軍に数百億ドル相当の援助を与えるために、西側の怒りを引き起こすことだけを目的に、ブチャについて意図的に嘘をついたという事実は、何一つ変えることはできないのだ。

 そして西側のウクライナへの投資は、敗戦にいたる大義の現実を変えることはできない。

 ロシアは勝利に向かっている。

 ロシアは勝利するだろう。

 そしてブッチャのウソの上塗りをいくらしてもその現実を変えることはないだろう。
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民主党の次世代スターだったトゥルシー・ギャバードが表舞台から去った訳は?

<記事原文 寺島先生推薦>

Tulsi Gabbard dares to challenge Washington’s war machine
The former presidential candidate has shown that opposing regime-change policies is the one taboo that the ruling class won’t tolerate

トゥルシー・ギャバードは、果敢にも米国戦争機構に挑戦
元大統領候補の彼女が示したのは、他国の政権を転覆しようとする政策に反対することは、支配者層が決して許さない禁忌事項であるという事実

筆者:トニー・コックス(Tony Cox)

米国の記者。ブリームバーグ紙やいくつかの大手日刊紙で記事執筆や編集活動を行ってきた経歴を持つ

出典:RT

2022年10月13日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月6日


Tulsi Gabbard. ©  AP Photo/Charlie Neibergall

 民主党の押しも押されぬ新しいスターだったトゥルシー・ギャバードが突然、悪者にされてのけ者扱いを受けた(ギャバードは今週民主党を離党する決意を示した)事象は、 ワシントンで強力な権力をにぎる全てのものが同意するあるひとつの考え方を示している。それは、「戦争は是である」とする考え方だ。

 本当にこの考え方は、米政界で権力を有し、 長期にわたり立派な経歴を持ちたいと願うのであれば、誰でも同意しなければならない考え方なのだ。そうしないものたちは、よくて端っこに追いやられるだろう。世間に対して効果的な発言をするものであれば、裏切り者の烙印を押される。元国会議員のロン・ポールやロンの息子のランド・ポール上院議員が実証した通り、そんな人々はまともな大統領候補として扱われることは決してなく、どれだけ多くの論争に勝利したとしても、出馬することは許されないだろう。

 ギャバードほど、この現実をはっきりと体現させた人物はいない。彼女が2013年に国会議員となったとき、どれだけ民主党に貢献したかを思い起こしてほしい。ギャバードは次世代の大物として本当に名を売っていた。それなのにギャバードが、ほんの僅かの時間で破門状態に追いやられてしまった様を見てほしい。ギャバードの名声の没落は、驚くべきほどはやく、目を引くものだった。

 当時まだ31歳だったギャバードは、最も信頼のおける民主党支持地域である「青の州」のハワイ出身で、彼女は、ハワイ選出で過去最年少の国会議員となった。

 ギャバードは非白人だ。ギャバードは、民主党が心から愛しているアイデンティティ政策に合致する要素で、2つチェックがつく。彼女は、初のヒンドゥー教徒、さらに初のサモア系米国民の国会議員だったからだ。彼女は軍人としての長年の経歴もある。はっきりとした性格で、自分の言っていることばに強い信念を持っていると思わせる人柄の持ち主だ。


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 端的に言えば、ギャバードはカマラ・ハリス副大統領より数段優秀だ、ということだ。現副大統領が、もっと若くて、賢くて、好感が持てて、一本筋が通っていると想像してみてほしい。さらにおまけの特典で、従軍体験があり、人間味もある人物を思い浮かべてほしい。何より、最も不適切な場面で、制御できないほど笑ってしまわない人物を思い浮かべてほしい。トゥルシー・ギャバードなら、そんな人物にぴったりだ。

 民主党の指導者たちが、ギャバードの潜在能力に気づくことは困難なことではなかった。2012年の初めての予備選挙で、彼女が勝利したからだ。バラク・オバマ大統領は、ギャバードを推し、当時のナンシー・ペロシ下院少数党院内総務も、ギャバードを招き、民主党全国大会で演説させた。 2013年の連邦議会が開催されてすぐに、ギャバードは民主党全国委員会の副議長に選出された。

 それに合わせて、CNNなどの旧来メディアがギャバードを褒めそやし始め、「次世代のスーパースター」や「目を離せない人物」だと持ち上げた。MSNBC局は、「ハリウッドはギャバードを題材にした映画を作るべきだ」とまで提案していたし、CNNの評論家アナ・ナヴァッロはこんな冗談を飛ばしていた。「よく分からないけど、戦争の時は、彼女を自分の陣にいれたいわね」と。

 しかしその後、突然と言っていいほどに、メディアの語り手たちは、ギャバードを自陣に入れたがらなくなってしまった。ドナルド・トランプが2016年の大統領選で衝撃的な勝利を収めたのち、ギャバードは果敢にも、新しく選ばれた大統領と面会したのだ。本当に問題とされたのは、ギャバードが「オレンジ顔の悪党」と面会した事実ではなかった。許されなかったのは、ギャバードがトランプと話し合った内容だったのだ。 それは、米国によるシリアでの政権転覆工作についてだった。

 「私が重要だと感じたのは、新しく選ばれた大統領と面会する機会を持てたことです。ネオコンたちが叩く軍靴の足音の高まりにより、戦争が激化され、シリアの政権転覆が目指される前に、です」と、当時ギャバードは語っていた。その数週間後、ギャバードはシリアを訪問し、現地の酷い状況を目にし、さらにシリアのバシャール・アル・アサド大統領と面会した。


関連記事: World is nearing ‘brink’ of nuclear war – Tulsi Gabbard

 ギャバードが2020年の大統領選に出馬したとき、予備選挙の討論会で反戦の態度を主張し、刑事司法の観点からみれば、 ハリスは偽善者である、と非難していた。一度目の討論会の後で、ギャバードはネット上で最も検索された候補者となったが、グーグルはギャバードの選挙公報用のアカウントを一時的に停止した。つまり、ギャバードは、投票者からの関心の急増を利用できなくなったということだ。ギャバードは、その後の重要な討論会に自身を参加させず、そうするために規則を変えることも一度あったと、民主党全国委員会を非難した。そしてギャバードは、その後すぐに選挙戦から降りた。

 メディアはギャバードを反LGBTQ主義者の頑固者で、「ロシアのまわし者」であると報じ、ギャバードは国会議員としての経歴も失った。ギャバードが選んだ道は、再選を求めないことであったし、国会でのトランプ糾弾に一票を投じなかった唯一の民主党員になった。

 しかしギャバードは反戦争中毒の声を上げ続けていた。2月にロシアがウクライナに特殊作戦を開始してからは、特にそうだった。そのことが、民主党員からも共和党員からも同様に非難を浴びたのだ。ギャバードが、政治家として関わってはいけない人物としての扱いを受けたのは、 バイデンが進めているロシアに対する代理戦争により、米国が核戦争による壊滅に近づいている、と警告したからだった。ギャバードが、米国が資金援助していたウクライナの生物研究所に関する懸念を表明した際、ミット・ロムニー上院議員は、ギャバードが、「反逆的な嘘」をばらまいていると、非難していた。

 ギャバードが10月11日(火)に民主党を離党すると発表したとき、「臆病なウォーク(アイデンティティに対する高すぎる意識)」という発言があった。
 つまり、人種による分断や、信念を持つ人々に対する敵意や、政敵を法律という武器で倒すことを批判していたのだ。しかし最も重要な点で、決して妥協できない違いは、戦争についての考え方だった。「私は今の民主党に留まることはもはやできません。いまの民主党は、戦争亡者である支配者層の陰謀団に完全に牛耳られているからです」とギャバードは語っている。

 悲しいことだが、もしギャバードが共和党員だったとしても、同じようなことを言っていただろう。経済学者で政策分析家のジェフリー・サックスが、10月10日(月)にあるインタビューでこう指摘していた。「この国の支配者層の最上位の人々は戦争を求めています」と。さらに「我が国は警備国家です。我が国には、我が国の外交と軍事政策のほとんどを運営している秘密の国家機関が存在しているのです」とも語った。


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 人種問題や性別問題などのでっち上げられた社会問題についての全ての駆け引きは、ただの政治的な見世物にすぎない。ワシントン当局にとって本当に問題になるのは、戦争のことであり、ギャバードが持つ効果的な雄弁さのせいで、ギャバードは戦争機構にとって危険な存在となってしまった。ギャバードが明らかにしたのは、米国の政策は、米国民にとっての真の安全保障や利益とは全く関係のないものである、という事実だった。

 「ワシントン当局内には、戦争亡者が有り余るほどいます。彼ら戦争亡者たちは、軍産複合体に従順で、自分たちだけの利己的な利益と、自分たちの主人の利益を優先します。自分たちが決めたことが米国民にどんな損害や被害を与えるなど、気にも留めていません」とギャバードは、10月12日(火)、フォックス・ニュースで語った。

 「今のバイデン大統領や、議会の指導者たちを見れば、まさにそうです。彼らが決めることのせいで、私たちは核戦争による破壊の瀬戸際に追いやられています。彼らには、核戦争が起こっても、安全に身を隠す場所があるかもしれませんが、私たち米国民には、そんな避難所などありませんし、行くところもありませんし、隠れる場所もありません。ただ人類全てと、私たちが知っているこの世界の崩壊に直面するしかないのです」。
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ブラジル共産党指導者(女性)の言葉:「街頭を占拠してル-ラ大統領の第2ラウンド選挙の勝利を確保せよ!」

<記事原文 寺島先生推薦>

Brazil’s Communist Leader says ‘Occupy the Streets’ to Guarantee Lula Second-Round Victory

筆者:ベン・カコ(Ben Chaco)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年10月3日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月5日


ブラジル・リオデジャネイロで2022年10月2日、総選挙の投票終了後、一部結果を聞きながら喜ぶブラジル前大統領ルイス・イナシオ・"ルーラ"・ダ・シルバの支持者たち。| Silvia Izquierdo / AP

 ブラジル共産党のルチアナ・サントス(Luciana Santos)党首は、4週間後に行われる大統領選の第2ラウンドでルーラ大統領の勝利を保証するため、左派に「街頭を占拠」するよう呼びかけた。

 ルイス・イナシオ・ダ・シルバ(Luiz Inácio “Lula” da Silva)元大統領は、10月2日(日)の選挙で現職のジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)に600万票以上の差をつけて1位になったが、第1ラウンドの勝利に必要な50%には届かなかった。

 「ブラジルは再び幸せになりたいという気持ちを示している。ルーラは第一ラウンドの勝者であり、我々は第二ラウンドでも勝つだろう」とサントスは述べた。ブラジル共産党(PCdoB)と緑の党は共にルーラ労働党と手を組み、彼を大統領候補として支持した。
 「国民は憎しみ、分裂、暴力、飢餓、権威主義をもはや望んでいないことを投票で示しました。今日(3日)、私たちはこの勝利を祝い、民主主義を祝い、そして4日(火)から、私たちは野外に出て、選挙運動を行うつもりです。

 街頭を占拠し、あらゆる人に声をかけ、大衆の意識を高めて、ルーラへの支持をより確実なものにしよう」と呼びかけた。

 地域の左派指導者たちは、ルーラの1位当選を祝福し、ボリビアのルイス・アルセ(Luis Arce)、アルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス(Alberto Fernández)、コロンビアのグスタボ・ペトロ(Gustavo Petro)、そしてメキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(Andrés Manuel López Obrador.)が祝辞を述べた。

 ルーラは支持者たちに感謝の意を表し、勝利するまで選挙活動を続けることを誓った。
 ボルソナロは、米国のトランプのように、選挙結果に異議を唱えることはしなかった。そうなることを懸念する声も多かったのだが。恐らく、まだ選挙中であるために自重したのだろう。ボルソナロは、(選挙結果は)<変化への欲求>を示したことを認めつつ、<ある種の変化は悪い方向に向かうこともある>と注意を促した。しかし、投票の公正さについては国防省の報告を待っていると述べ、異議を唱える門戸は閉じてはいない。

 また、彼がしっかり2位につけたことは世論の予測に合致したものであり、下院選挙では右派政党が健闘し、左派政党を抑えて過半数を占める可能性が高い。

 第1ラウンドでは、ルーラが57,257,453票(48%)、ボルソナロが51,071,106票(43%)を獲得し、99.9%が集計されている。
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「居場所を間違った子どもたち」。ドンバス在住、ファイナ・サヴェンコワ(13)さんによるエッセイ

<記事原文 寺島先生推薦>

Wrong Children: An Essay by Faina Savenkova, a Child of Donbass

筆者:デボラ・L.アームストロング(Deborah L. Armstrong)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年10月4日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月5日


Photo: Faina Savenkova

 今週、私は、長文ですが、お金がもらえる(!)翻訳活動に勤しんでいます。ですので、さらに記事を書くよりは、ドンバス在住の子ども作家、ファイナ・サヴェンコワさんの作品を紹介することにします。

 ファイナさんはたったの13歳で、11歳の時から作品を執筆しています。ファイナさんは既に2冊の小説を書き上げています。ファイナさんは、ロシアでよく知られていますが、ファイナさんの作品を読めば、なぜロシアで彼女が神童と考えられているかが、お分かりになることでしょう。執筆活動に取り組むだけではなく、ファイナさんは活動家でもあります。国連に顔を出し、ドンバスの子どもたちのことを世界に知らせようとしました。不幸にも、この行動のために、ファイナさんは悪名高い「ミロトウォレッツ」の暗殺リストに載せられてしまいました。この暗殺リストは、ウクライナ当局の支援のもと出されているもので、 標的とされた何千人もの記者や活動家などの一般市民の個人情報を晒しているものです。そのなかには300人以上の子どもたちも含まれています。

 ファイナさんは、執筆やメディアへの出演を続け、ミロトウォレッツのことを世間に広めようとしています。ウクライナの国粋主義勢力が行っている戦争犯罪について発信することは、ウクライナの法律では、「情報テロ行為」とされていますが、そんなことではファイナさんによる自分の思いの発露を止めることはできません。

 皆さんにぜひ、ファイナさんの思いを受け止めていただきたいです。

「間違った子どもたち」

ファイナ・サヴェンコワ

 私が皆さんにルガンスクで起きていることを伝えはじめてもう3年になります。私の日々の生活で続いているこの戦争には、悲しみもあれば喜びもあります。
一年前、「ミロトウォレッツ(平和創造者という意味です)」のサイト上で、私の個人情報が公表されました。私は西側諸国の指導者やアーティストたちにたくさん手紙を書きました。私が求めていたのは以下の2点だけです。それは、ミロトウォレッツ上にあるすべての子どもたちの個人情報を削除することと、ドンバスの子どもたちが、殺されることなく、平和な生活を送れる方法を見つけることです。「ミロトウォレッツ」との戦いが始まったとき、私の友人のウクライナの記者たちは、なぜ私がゼレンスキーに手紙を書かず、ただインタビューで彼の名前をあげただけなのかを聞いてきました。その時は答えるのが難しかったです。まだウクライナとドンバスのあいだで、平和が実現し、国連のグレーテス事務総長やユニセフが私を助けてくれると思っていたのです。この2つの機関は国際的によく知られた機関ですので。

 でも、残念なことに、私の考えは間違っていました。私がお願いしたことは、この2つの国際機関からすべて無視され、ウクライナは軍事力で私たちを征服しようと決めたのです。私の努力や夢は夢のまま終わっていました。ただひとつ良かったことは、その時、ゼレンスキーに手紙を書かなかったことです。今なら、なぜ私が手紙をかかなかったかが、わかります。 それは、ドネツクやゴロフカやアルチェフスクなどの都市を砲撃するよう命令している人に手紙を書いて、子どもたちを殺さないよう頼むことなどできないからです。出し惜しむことなく、何千人もの兵士を送り込み、その兵士たちを死に追いやり、テロ行為や、子どもたちの殺害を命じる大統領に手紙など書けるわけがありません。こんな虐殺を起こし、自分の国の領土の半分をなくしてしまった大統領に手紙など書けるわけがありません。 負け犬に書く手紙などありません。ドンバスやヘルソンやザポリージャで、子どもたちが 毎日亡くなっています。 その責任はすべてゼレンスキーにあります。全てをなくしてしまう大統領、ゼレンスキーに。

 さて、ユニセフや国連やアムネスティ・インターナショナルはどうでしょうか ?ウクライナ軍に殺された子どもたちについて、何か発言したでしょうか?もちろんそんなことはありません。「ミロトウォレッツ」のことについての対応と全く同じです。分かっているはずなのに、黙っていますし、「心配」だとも言いません。いつでもどこでも、あの人たちは黙っています。ユーゴスラビアやシリアやパレスチナやアフガニスタンやイラクやリビアの子どもたちが殺されていた時も、黙っていたのですから。尊敬を集めているこのような機関が、子どもたちが殺されている残酷な状況も目に入らない振りをするのであれば、「ミロトウォレッツ」についての話に何か言うことがあるでしょうか? そうは思えません。結局、私たちは間違った子どもたちなのです。ユニセフやアムネスティ・インターナショナルから見れば、私たちは、間違った場所で生まれて、生活しているのです。 私は以前、エッセイの中で、こう書きました。「戦争にさらされている子どもたちの声が聞こえないのは、大人たちがその声を聞こうとしないから」と。本当にそうなのです。残念なことに、私たち子どもは、そんな大人たちには興味がありません。私たちはそんな大人たちとは違います。大人たちは私たちが殺されても問題ないと考えているようです。そう、静かな殺され方をしたら、です。他の人に私たちが助けてと叫ぶ声を聞かせようとしないのです。本当に残念です。私の生まれた国が、私の大切な全てを、私が愛する全てを砲撃し、破壊しようとしています。それを可能にしているのは、そんな行為を笑顔で認めて、止めることができる戦争を止めようとしない大人たちがいるからです。 不幸なことですが、ウクライナを助けているすべての人たちは、この戦争が自分たちのところまで近づいていることが分かっていないのです。

 アメリカ合衆国やヨーロッパの普通の人たちは、ウクライナ軍が行っている残虐行為や、一般市民たちに行っている残酷な砲撃や殺害に気づいていません。
アメリカやヨーロッパの市民たちの耳に届いているのは、この8年間、私たちが自爆攻撃をしている、とかロシア軍が私たちを砲撃している、という話です。この仕打ちがあったから、私たちは、2022年にロシアがここに来てくれるのをずっと待ち続けていたこと は、分かりきっていることなのに。真実とは違う話が流れてしまっています。

 でも私は、ずっとこのままだとは絶対に思いません。最後には真実が勝つからです。一番辛いのは、勇気を失わないようにすることです。たとえやることすべて上手くいかなくって、いい結果が得られない時も、です。私たちは、話を聞いてもらえていないのですから。でも、何をやっても無駄だ、と思った時に、自分のやっている事が無駄じゃないと、もう一度思えるような事件が起こるんです。ローマ教皇から手紙をもらった時がそうでした。 私がモスクワにいた時、フランシス教皇から返事を受け取ったんです。 私のイタリアの友人によると、教皇が誰かに返事を書くことはめったにないそうです。それなのに教皇は、私とともに平和に祈りを捧げてくれました。教皇自身が返事を書かれたのか、代理の方が書かれたのかは分かりませんが、大事なことは、ローマ教皇が、ドンバスの子どもからの要求に初めて答えてくれて、「ウクライナの敵」と見なされている私と一緒に、平和に祈りを捧げたいと思ってくれたという事実です。教皇は、私とともに祈ってくれると言ってくれました。ウクライナでは人間扱いされていない、この私とです。私は必ず教皇とともに、ウクライナにより殺害された何百人もの子どもたちのために、祈りを捧げます。そして私たち全てが必要としている平和な生活が実現するよう、祈りを捧げます。



バチカンからファイナ・サヴェンコワさんに届いた手紙。

ファイナさんのエッセイの英語への翻訳は、デボラ・アームストロングによる。
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米国と同盟を結んでいない国々が、米国軍事生物研究所について回答を求めている

<記事原文 寺島先生推薦>

Non-Aligned Countries Demand Answers about US Military Biolabs

筆者:ルーカス・ライロス(Lucas Leiroz)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年10月21日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月4日



 国際社会は徐々に、犯罪的な科学活動への関与について米国が回答を求める動きになっている。10月18日、ベラルーシ、ベネズエラ、ジンバブエ、中国、キューバ、ニカラグア、シリア、そしてロシアが国連でワシントンに対して生物兵器条約(BWC)第6条の発効を求めた。この措置は重要だが、今のところ、欧米と同盟関係にない国々が地政学的な立場で足並みを揃えたに過ぎない。欧米諸国もワシントンに対して説明を求め始めていることもきわめて重要である。

 この条文により、ある国が条約のルールを守っていない疑いがある場合、安全保障理事会に提訴することができる。米国は生物兵器を禁止する条約に加盟しているので、犯罪の可能性を調査するために他の加盟国と協力することは米国政府の義務であろう。この場合、ワシントンが容疑者であることを考慮すると、アメリカの協力は、世界中の生物実験室、特にウクライナ国内の生物実験室の活動に関する文書や報告書を国連に提供することで成り立つはずである。

 よく知られているように、ウクライナでの特別軍事作戦が始まって以来、ロシア当局は2014年からアメリカ側とウクライナ側が共同で行っていた生物学的犯罪活動に関する報告書を定期的に発表してきた。ウクライナでは46のアメリカの研究所が確認され、その周辺には少なくとも2億ドルの投資が行われていた。この作戦を通じて、モスクワ軍は、ペンタゴンの機関、ファイザーやモデルナなどのビッグテック企業、ソロスのオープンソサエティなどの慈善財団、さらには現アメリカ大統領の息子であるハンター・バイデンが関与した汚職ネットワークからの違法資金など、複数の官民団体がこれらの活動の資金提供に参加していることを証明する文書を入手した。

 ロシア国防省の放射線・化学・生物防護部隊によると、これらのアメリカの研究所はコレラ、炭疽、野兎病、さらにはCOVID-19などの深刻な感染症病原体を使った研究を行い、サンプルを採取して実験結果を米国に送っていたという。ロシアの調査では、アメリカの施設で下級軍人や社会的弱者をモルモットとして使っていたことが指摘されており、違法な人体実験が行われていたことが分かっている。また、これらの人々の血液サンプルも採取され、米国に輸出されたことだろう。問題は、このような活動がWHOなどの保健機関の監督を受けずに行われていたため、実際にサンプルがどのように使われていたのかが管理されていなかったことだ。

 ロシアの情報機関は、この研究は特定の民族を標的にした生物兵器の開発が主目的であり、国境地帯で発射してロシア人だけに届くようにするためであるとする報告書さえ発表している。このような事情は事態をさらに悪化させるので、米国はこの件に関して信頼できる説明をする必要性がより一層高まっている。

 しかし、ロシアの非難が十分な根拠を持ち、物的証拠によって正当化されるのとは異なり、アメリカの「説明」は修辞的に弱いように思われる。ワシントンは、モスクワの主張に反論するためのいかなる種類の反論も提示することができなかった。それどころか、アメリカ当局は生物学的研究に関して曖昧で矛盾した発表をしており、これまで何一つ具体的で正式な情報が政府から得られていないのである。同じ意味で、この活動に資金を提供しているアメリカの機関も沈黙を守っている。
 だからこそ、国連における各国の参加が重要なのである。生物兵器条約(BWC)第6条を行使することによって、各国は米国に、これらの研究所における自らの行動についての答えを出すよう迫ることができる。もし、米国が協力を拒否し、重要な証拠に裏付けられたもっともらしい説明をしないなら、それは単にロシアの主張が真実であることを証明することになる。

 この件に関して、中国伝媒大学国際関係研究所の楊美庵教授は次のようにコメントしている:

「ロシアは調査を要求している。多くの国が要求している。アメリカの活動を調査することは必須である。しかし、彼らはあらゆる手段で調査を妨害している。米国に問題がないのであれば、何を恐れる必要があるのだろうか?このような研究の多くは、二重の目的を持っている。米国は科学的研究というが、新型兵器の製造に使われたのではないのか。米国は証拠と説明をするべきだ」。

 実際、現実的な視点から状況を見ると、ロシアの主張が虚偽である可能性は極めて低い。モスクワが提出した証拠は極めて具体的かつ複雑であり、ワシントンがこれまで反論してこなかったということは、アメリカがウクライナで実際に犯罪行為を行っていたことを示すものである。その意味で、国連での調査はアメリカにとって大きな問題となるだろう。アメリカにとっての唯一の希望は、国際的な動きを促すことであると思われる。

 非同盟諸国だけが調査を要求すれば、事態が先に進まない可能性がある。したがって、西側諸国もロシアの要求に沿うことが不可欠である。これは単なる地政学的な同盟の話ではなく、国際法上、何が正当で何がそうでないかの対立である。生物兵器の開発は許容すべからざる犯罪であり、地政学的利害に関係なく、国際社会全体がそれを阻止するために歩調をそろえるべきなのである。


Lucas Leiroz, researcher in Social Sciences at the Rural Federal University of Rio de Janeiro; geopolitical consultant.
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ダムの破壊。汚い爆弾の使用。ウクライナの危険な火遊びはレッドラインを超える

<記事原文 寺島先生推薦>

Dirty Bomb, Destruction of Kakhovka Dam: The Dangerous Games of Ukraine

筆者:クリステル・ニャン(Christelle Néant)

出典:INTERNATIONALIST 360° 

2022年10月24日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月2日



 
 ここ数日間、ウクライナが汚い爆弾を使用したり、カホフカダムの破壊を行うのではという警戒のために、両国間の緊張が非常に高まっている。キエフ当局に思うがままの行為をとらせ、最悪の戦争犯罪やテロ行為まで許している西側陣営は、ウクライナが火遊び的行為を続けることを奨励している。そしてその行為は、自国国境外にまで害を及ぼす惨事を起こしかねない。

 2022年10月23日、ロシア国防相は、米・仏・英・土の防衛相との電話会談を行った。その中で、セルゲイ・ショイグ露国防相は、ウクライナでの戦況について触れたが、何よりもロシアは、ウクライナが汚い爆弾を使うという挑発行為を行う可能性について懸念していることを強調した。 (汚い爆弾とは、 放射能物質で包まれた通常型爆弾であり、この爆弾が爆発すると、その放射能物質が撒き散らされるという爆弾だ)。

 その翌日、NRBC(ロシアの放射線・化学・生物防衛部隊)指揮官のイーゴリ・キリロフ中将は、記者会見を開き、ウクライナが汚い爆弾を使うという挑発行為に出る可能性について語った。そしてウクライナ側の目的は、 ロシアを国際社会から孤立させる狙いだとし、具体的には、「ロシアは、核兵器非所有の国々に対して核兵器を使用するテロ国家だ」という濡れ衣を着せようとしている、とした

 私見だが、これがキエフ、ロンドン、ワシントン、さらにはブリュッセル各当局の唯一の狙いだとは思えない。汚い爆弾を使った挑発行為により、ウクライナは西側陣営からの武器や資金の支援を継続できるだろうからだ。この挑発行為により、西側諸国での反露宣伝を強化し、 欧州で問題化している市民運動の高まりから注目を逸らせる狙いもあるだろう。

 ロシアに対する制裁や、ノルド・ストリームの破壊により、エネルギー価格がとんでもない規模で上昇していることが、欧州諸国の政府にとって大きな問題になっている。というのも、各国政府は高騰するエネルギー価格と、ウクライナへの支援に反対するデモ(その両者が関連していることを理解している人々によるデモだ)に直面しているからだ。そしてキエフ当局は、この先いつかの時点で西側の各国政府が二者択一に迫られることを完全に理解している。ひとつは、市民たちからの声に押されて、ウクライナに対する軍備や資金の援助を減らすか中止するか、もうひとつは、国内の騒乱に直面し、統制できない程の混乱を招く、あるいは責任を持てない政府にまで没落するか、の2択だ。 (1番目の選択肢を選んだとしても、責任を持てない政府に没落するという、同じ結末になるのだが)。

 さらに米国では、中間選挙が迫っていて、その結果はジョー・バイデンにとって良い結果にはならないと考えられる。そして、バイデンの健康状態は目に見えて悪化している。 (目が不自由な人々と握手をした後、バイデンは眠りに落ち、 インタビュー中に意味不明な言葉を発していた)。その結果、共和党がこの戦い(中間選挙のことだ。最近の世論調査では、共和党は民主党に僅差で上回る結果が出ている)で勝利する芽が出てきており、米国における政治の力の均衡が変わることになるだろう。共和党員の中には、ウクライナへの支援を減らしたいと思っている人々もいる。

 このような状況からすれば、ウクライナ当局が、何か華々しい成果を見せなければならない状況に追い込まれていることは、明白だ。西側諸国の市民たちの目を、自国政府がウクライナを支援している現状から目を逸らさせ、キエフ当局に対する軍備や資金援助を維持、あるいは強化することさえ正当化するために、そのような戦果が必要なのだ。

 その目的を達成するために、ウクライナがとる可能性がある道はふたつある。一つ目は、カホフカ水力発電所のダムを破壊し、ヘルソンやその周辺地域の大部分に洪水を起こし、ロシア軍の援軍との連携を断ち、ロシア軍に奪われていたヘルソン市を奪還することだ。 そうなれば、華々しい戦果を手にでき、西側からの資金や軍備の補強を増やせることになる。ウクライナ軍がこのような作戦に出る可能性があることが分かっているので、ロシア当局は、洪水が発生した際は、 被害を受けることのないよう町を離れることをヘルソン地域の市民たちに求めていて、貯水槽を空にすることで、起こる可能性のある被害を減らそうとし始めている。

 「こんな計画は妄想に過ぎず、ウクライナ当局はそこまでしないだろう」とお考えの方々のために、以下に 、(ウクライナ軍の)第35e旅団が投稿した一連のテレグラムのスクリーンショットを示す。



 翻訳: « ノアの大洪水が来る» ( Скоро будет Ноев потоп ) だから « 今のうちに泳ぎを覚えておけ» ( Учитесь плавать ). このことを、ただの口先だけであると考えるのは無理があるだろう。カホフカ水力発電所への攻撃をウクライナ軍が継続している事実があるのだから。

 10月24日、ウクライナ軍は、米国のハイマース・ミサイルを19発、カホフカ水力発電所に打ち込んだ。
 幸運にも、うち16発は撃退され、残りの3発は水力発電所に大きな被害を与えなかった。しかし、ウクライナ軍が、求めているような結果を得るまで、このような爆撃を続けることは確実だ。 ウクライナがザポリージャ原発の爆撃を継続し、同原発の支配権を奪還しようとしているのと同じことだ。

 キエフ当局が自国にとって利を得るために採用する2つ目の可能性は、汚い爆弾を使うことで、ロシアがウクライナに核兵器を使ったと非難することだ。この計画が1つ目の可能性よりも狂気じみているように見えるとしても、このような明らかにイカれた作戦をウクライナが取らないと決めつけるべきではない。それは、汚い爆弾をウクライナが使用すれば、ウクライナ領内で死や汚染が起こることは避けられないとしても、ウクライナ当局がこのような作戦をとる妨げにはならないだろうからだ。2020年に、一人の国会議員が、ロシアやハンガリーに対して汚い爆弾を使う提案をしていたことを思い出していただきたい。

 別の事例だが、2022年4月、ウクライナはクラマトロスク市を砲撃した際、その都市は自国の支配下におかれた都市で、一般市民たちは電車でそこから逃げ出していたとはいえ、その砲撃によりクラマトロスク市は血の海と化した。さらにウクライナは、2022年8月11日、ドネツクのビール醸成所を砲撃したため、アンモニアが漏れだす事象を起こしているが、これもウクライナは市民や環境への影響などこれっぽっちも気にかけていないことを示す事例だった。

 ここ何ヶ月間も、ウクライナ軍はドンバスの諸都市の住宅街への砲撃を続けているが、そのミサイルは(花びら)地雷を内包していて、 この地雷により、一般市民の中で、既に一人の死者と80人の負傷者が出ていて、その中には子どもも3人含まれている。言うまでもないことだが、繰り返されるテロ行為により、一般市民の多くの生命が奪われている。 (最近ヘルソン地域で起こった砲撃では、一人の通行人が亡くなっている)。

 最後に書き添えるが、戦争が始まってからのこの8ヶ月間で、ウクライナ軍は、ザポリージャ原発への砲撃や攻撃を29回行っている。この原発は、現在ロシアの管理下にあるが、ドローンを使った攻撃が10回行われている。ウクライナ側は、そのような攻撃の結果、どのような破壊的な状況が生まれるかを全く心配していないようだ。 ウクライナの支配下にある市民たちや領地も破壊的な被害を受けることになるであろうに!!

 事例にこと欠かないこのような状況から明らかにわかることは、ウクライナはどんな手段を使うことにもやぶさかではない、ということだ。どれだけ汚い手段でも、非人間的であっても、それがウクライナの利になるのであれば、お構いなしだ。

 だからこそ、ロシア国防省が出した情報が心配の種になる。

 「入手した情報によると、ウクライナの二つの政府機関が汚い爆弾の製造命令を直接下した、とのことです。このような手続きは最終段階にあたります。さらに、ウクライナの大統領官邸と英国の代表団が、核兵器の製造技術の伝達の可能性について連絡を取りあっているという情報も入っています」とロシアのイゴール・キリロフ中尉は語っている。

 記憶しておかなければいけないことは、ウクライナは汚い爆弾を作るのに必要なものをすべて所持しているという点だ。稼働中の原子力発電所が3箇所、ロブノとフメリヌィーツィクィイとユズノウクラインスク(貯蔵プールには1500トンの濃縮ウランがある)にあり、チェルノブイリ原子力発電所跡地 (2万2千以上の核燃料集合体がある)もある。さらにウクライナには、5万立方メートル以上の放射能廃棄物があり、抽出・処理業者は、キロヴォフラード地方にあるいくつかの鉱山から、1年で最大1000トンのウラン鉱石を採掘している。

 科学的にソ連の核計画に参加してきた歴史があるハルキウ物理・技術協会において、ハリケーン熱核体系を始めとする、いくつかの試験体系が今も稼働中だ。加えて、キエフにあるウクライナ国立科学アカデミーの核研究機関には、BBP-M原子炉がある。この原子炉は、高濃度の放射能物質の使用を含む研究に使用されるものだ。この機関が、ウクライナ東部の抽出・処理業者とともに、キエフ当局による汚い爆弾計画に関係している、とロシアのマリア・ザハロワ外務省報道官は語っている。

 ロシア国防省によると、ウクライナは汚い爆弾の使用を議会で通す計画がある、とのことだ。具体的には、その爆弾を使って、高濃度濃縮ウランを電源に使っているロシアの低出力核弾頭を爆発させるという計画だ。この計画の目的は、空気中に放射能同位体が存在することを、欧州に設置された国際管理体系のセンサーに記録させることで、ウクライナに対して戦略的核兵器を使用したとして、ロシアを非難することだ。

 今のところ、昨日(10月23日)、ロシア国防省と連絡を取った西側諸国は、知らぬふりを決め込み、ウクライナの動きが見えていないよう振舞っているが、これは、ウクライナ軍が8年間ずっとドンバスの一般市民たちに砲撃してきたことが見えていないのと、全く同じことだ。ただ違うのは、今回の見て見ぬふりが招く結末の規模が全く違うという点だ。

 2022年10月24日、ワレリー・ゲラシモフ露連邦軍参謀総長兼第一国防次官は、英国のアントニー・ラダキン提督と電話会談し、 ウクライナが汚い爆弾を使用する可能性について言及した。さらにロシアは、この件に関する議案を国連に提出する意向である、ともしている。

 このような手続きにより、ウクライナが挑発行為を中止することが望まれる。(起こるであろう挑発行為を遮る行為があったならば、ドンバスでの8年間の戦争での挑発行為は防げていたかもしれないのだから)。さらに望まれることは、西側陣営が、汚い爆弾の使用を、絶対に許されない超えてはいけない一線であることを理解することだ。汚い爆弾が使用されれば、そのあと酷い状況が待っていることだろう。
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ハリウッド俳優ジョン・マルコヴィッチ(John Malkovich)語る:「ジュリアン・アサンジはアメリカで公正な裁判を受けられるとは思わない。」

<記事原文 寺島先生推薦>
Hollywood actor asks Britain not to extradite Julian Assange
ハリウッド俳優がイギリスの、ジュリアン・アサンジのアメリカへの移送中止を要請

ハリウッド俳優ジョン・マルコヴィッチ(John Malkovich)語る:「ジュリアン・アサンジはアメリカで公正な裁判を受けられるとは思わない。」

出典:RT

2022年10月22日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月1日



ジョン・マルコヴィッチ、2022年8月© Getty Images / Europa Press News / Contributor

 オスカーの候補者に選考されたアメリカの俳優ジョン・マルコヴィッチは、ウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジ(Julian Assange)を米国に送還するという決定を「再検討」するようイギリス政府に要請した。マルコヴィッチは、ウィキリークスが金曜日(10月22日)に公開した自作の演説動画で、機密資料の公開をめぐって最高175年の禁固刑に直面しているアサンジの事例について、米国で公正な審理が行われるとは思っていないことを明らかにした。



 「ジュリアン・アサンジの場合、英国政府がアメリカへの身柄引き渡しについて再考することを強く希望する。なぜなら、彼がアメリカで公正な裁判を受けられるとは到底思えないからだ」とマルコヴィッチは述べた。

 彼は、もし欧米の政府が「自分たちの行動や活動についてもっと正直で、もっと積極的であれば」、アサンジのようなジャーナリストはおそらく必要ないだろうと強調した。しかし、この俳優の意見では、事実はそうなっていない。また、各国政府は 「多くの、多くのことについて」正直になっていない。

 「そして、私にとっては、自分の名前で何が行われているかを知ることは非常に重要であり、だからこそ、英国政府にその決定を再検討するよう強く求めたい」と、映画『マルコヴィッチの穴』のスター俳優であるマコヴィッチが語った。

 アサンジへの支持を表明したことで、マルコヴィッチは、ピンクフロイドの共同創設者ロジャー・ウォーターズ(Pink Floyd)、女優パメラ・アンダーソン(Pamela Anderson)、そしてファッションデザイナーヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)など他の著名人たちの列に加わることになった。


READ MORE: ‘Disgusting joke’ & mockery of the law: Julian Assange has ZERO chance of fair trial if extradited to US, Roger Waters tells RT

 アサンジは、2010年にウィキリークスがイラクとアフガニスタンで米軍が犯したとされる戦争犯罪を描いた機密文書を公開したときから、米国の標的になっている。それ以来、彼は国防総省のコンピュータをハッキングした共謀罪で告発され、アメリカのスパイ活動法により起訴されている。

 英国の裁判所は当初、非人道的な扱いを受ける恐れがあるとして、アサンジを米国に引き渡すことを拒否していた。しかしその後、ワシントンは、アサンジのジャーナリストとしての権利が尊重される、と英国の裁判官を何とか説得することに成功した。6月には、当時のプリティ・パテル内務大臣がアサンジの引き渡しを承認した。アサンジはこの決定を不服としている。
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内憂の米国、中間選挙後にウクライナへの支援を終了する可能性

<記事原文 寺島先生推薦>

US may end aid to Ukraine after midterms – Axios — RT World News
The Biden administration says it’ll keep working with Congress to support Kiev regardless of the outcome of November’s vote

米国、中間選挙後にウクライナへの支援を終了する可能性 ― アクシオス
バイデン政権は、11月の投票結果にかかわらず、キエフを支援するために議会と協力し続けるとしている。

出典:RT

2022年10月20日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月1日


写真: ウラジーミル・ゼレンスキー・ウクライナ大統領と会談するロイド・オースティン米国防長官(左)、アントニー・ブリンケン国務長官(右) © AFP / US Department of Defense
 
 11月8日の中間選挙で共和党が議会を支配した場合、ロシアとの紛争の中でワシントンがウクライナに提供している大規模な援助が削減される可能性があると、アクシオス・インターネット放送局は報じている。

 共和党の中で最も厳しいプーチン批判者でさえ、キエフへの援助について「かつての幅広い超党派の常識から顕著な移行」があったことを認めていると、同放送局は水曜日(10月15日)に報じた。

 同局は、ケビン・マッカーシー下院少数党院内総務が今週初めにパンチボール・ニュースに語ったことを引用している。「人々は不景気にあえぎ、ウクライナに白紙小切手を出すことはないだろう」「ウクライナは重要かもしれないが、それが米政権の唯一の議題であるはずがない」と彼は主張した。

 共和党のドン・ベーコン下院議員も、ウクライナへの支持が下がっていることに「気づいている」といい、「ソーシャルメディアや一部の議員に見られるようになった」と述べた。



関連記事:ウクライナ軍への米軍助言者が戦争目標を明かす

 ベーコン氏の同僚ケリー・アームストロング氏は、この潮流の変化は議員が有権者から採った意識調査の結果であろうとアクシオス局に語った。「食料品の価格が13%上昇し、エネルギーや光熱費が2倍になった...国境沿いの地域が、移民やフェンタニル*中毒者であふれかえっているとき、ウクライナは頭の中から最も遠い存在になる」と指摘した。
*麻酔や鎮痛剤として使われる薬剤。ヘロインよりも30倍強力だと言われる。

 同局はまた、下院の共和党幹部の話を引用し、「(5月の支援策で)400億ドルを支払った後、多くの共和党員が "ウクライナの資金援助を支持するのはこれが最後だ "と言っていた」と主張している。

 共和党調査委員会(RSC)の委員長を務めるジム・バンクス下院議員は、アクシオス局へのコメントで、中間選挙後は国内問題に注力すると指摘している。「RSCは、国内がこれほど弱っているのに、海外を指導することなどできないと考えている。選挙後に多数派となるであろう我々共和党の課題は、自国の国境を確保し、燃料費高騰とインフレに対処して、アメリカを立ち直らせることである」とこの議員は説明した。



関連記事:ウクライナへの防空システム供与に関する米国のコメント

 ホワイトハウスの広報担当者カリーヌ・ジャンピエールは、ウクライナへの援助削減発言をしたマッカーシーの発言についてコメントを求められ、バイデン政権は「過去数カ月間と同様に、これらの取り組みについて議会と協力し続け、必要な限りウクライナを支援する」と主張した。この広報担当者の発言は、これがジョー・バイデンがウラジミール・ゼレンスキー・ウクライナ大統領にした「約束」であると念を押した。

 ホワイトハウスの側近が水曜日(10月15日)にポリティコ*に語ったところによると、バイデン政権は、選挙後に共和党が議会の少なくとも一院を支配した場合、アメリカの援助が終了する可能性についてキエフに警告していなかったという。しかし、キエフの当局者はこのような事態が起こりうることを認識しているという。
*政治に特化したニュースを配信している米国の報道機関のひとつ

 米国は、2月末のロシアとの紛争勃発以来、キエフの最大の支援者であり、HIMARS多連装ロケット発射機、M777榴弾砲、戦闘ドローンなどの高性能武器を含む168億ドル以上の軍事援助をキエフに提供している。

 モスクワは、これらの武器供与について、戦闘を長引かせ、ロシアとNATOの直接対決の危険性を高めるだけだと非難している。
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新型コロナウイルスに「合成ウイルス」と思われる痕跡が見つかったという研究結果が発表された

<記事原文 寺島先生推薦>

New study claims to have determined origin of Covid-19

Covid-19の起源を特定したとする新たな研究結果
パンデミックの背景にあるウイルスは、「合成ウイルス」に典型的な遺伝子構造を持っている、と著者らは指摘する

出典:RT

2022年10月23日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月1日


ファイル写真。© Getty Images / Saul Loeb

 Covid-19パンデミックを引き起こしたウイルスは、実験室でつくられた可能性が高いと、ドイツとアメリカの科学者が主張する研究結果が発表された。

 3人の研究者からなるチームは、Sars-CoV-2の構造を 「野生」のものと実験室で作られた同等のものと比較した結果、遺伝子組み換えウイルスであると結論づけたのである。

 ドイツのヴュルツブルク大学のヴァレンティン・ブルッテルと、米国のセルバ・アナリティクス研究所のアレックス・ウォッシュバーンと、同じく米国のデューク大学のアントニウス・ヴァンドンゲンが発表した前刷り論文によれば、Sars-CoV-2は文字通り遺伝子操作の「指紋」を持っているとのことであった。今週発表された論文では、3人の科学者が「制限部位」と呼ばれる遺伝子構造要素が、繰り返し現れるのを発見したと報告しており、彼らはこれをウイルスのゲノム(染色体上の遺伝情報)が「縫合」された痕跡であると述べている。

 「研究室でウイルスを作る場合、研究者は通常、「制限部位」と呼ばれる縫合部位を追加したり削除したりするために、ウイルスゲノムを操作する。研究者がこれらの部位の変更する方法により、試験管内てゲノム合成を行った指紋のような役割を果たすことができる」と、この論文は主張している。
 
 この論文によると、Sars-CoV-2の構造は、「野生のコロナウイルスでは異常」だが、「実験室で組み立てられたウイルスでは一般的」な構造をしており、さらに、制限部位が特定できる「※同義変異(別名サイレント変異)」が起こっている、という。このような変異が集中して見られることは、「無作為な進化によって生じたとは極めて考えにくい」と、査読前であるこの論文は述べている。
※サイレント変異(別名:同義変異)・・・遺伝子の塩基の文字が別のものに変わっても,指定するアミノ酸には変化がないタイプの変異のこと

<関連記事>米国の科学者が、致死的なCovidの新しい変種を作成

 この研究結果は、「このウイルスは99.9%、の人工的で、おそらく操作された天然ウイルスの複製である」とブルッテル氏はドイツのニュースメディアntvテレビに語っている。この研究者は、自身の研究中に、自己免疫疾患のためのタンパク質ベースの薬を作るために日々行っているのと同様の操作の兆候を見つけたと語った。

 ブルッテル氏は、免疫学分野の博士号を持ち、バイオテクノロジー業界の全国フォーラム「German Biotechnology Days」で今年のイノベーション賞を受賞しているが、ウイルスゲノムの異常に初めて気づいた2021年夏から、この研究に取り組んでいたとntvテレビに語った。

 しかし、この研究は、カリフォルニア州ラ・ホーヤにあるスクリップス研究所のクリスティアン・アンダーソンを含む他の免疫学者から早速非難を浴びた。アンダーソンは、この論文を「ナンセンス」であり、「分子生物学の幼稚園程度の見識に合致しないほど深い欠陥がある」と烙印を押した。彼はまた、一連のツイートで自分なりのSars-CoV-2ゲノム解析の方法を提示した。

 ギーセン大学ウイルス研究所を率いるドイツのウイルス学者フリーデマン・ウェーバーは、ブルッテルらが見つけた「指紋」は、この研究が指摘している縫合などの技術がなくても、ウイルスを遺伝子操作することは可能なので、必ずしも人工的な起源を指しているとは言えないと述べている。同時に、 遺伝子操作を行う際、そのようなやり方は、「必ずしも必要な方法ではなく、実際非常に複雑な手法である」、ともしている。
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