米国に追随してロシア制裁を強めても日本経済が苦境に陥り、岸田内閣は国民からの批判を受けることにしかならない。
<記事原文 寺島先生推薦>
In Japan, Criticism of the Government Grows Over the Losses Caused by Sanctions against Russia
(日本で政府に対する批判の声が高まっている理由は、ロシアに対する制裁による損失だ)
筆者:ウラジミール・ダニロフ(Vladimir Danilov)
出典:Journal Neo
2022年6月27日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年7月20日

現在日本政府は、明らかに不用意な政策をとっており、その政策が原因となり、国民はこれまでにない大きな不利益を被っている。そのような状況を背景として、岸田文雄内閣に対する批判の声は確実に大きくなっており、この1ヶ月で内閣支持率は4.6%も低下し、現在56.9%に落ち込んでいる。このような状況を特に明らかにしているのは共同通信社が行った調査による数字だ。日本の主流ニュース会社である共同通信社の記事によれば、回答者の64.1%は、物価上昇に対する日本政府の対応に批判的な回答を寄せているとのことだ。
現在日本が抱えている経済問題の多くの原因は、輸出や輸入に関して課している制裁からきている。日本政府は以前北朝鮮に対して行った制裁を考慮にいれて対応しているが、ロシアに対する制裁の負の効果は、それよりもずっと大きくなっている。日本の諸企業が現在直面しているのは、天然資源やエネルギー価格の高騰に関わる問題がますます困難になっていることであるが、その原因はウクライナ状況や、ロシアに対する様々な制裁から来ている。日本でのドバイ原油の価格はここ14年間での最高値である1バレル8万3100円(640米ドル)に達していることが、東京商品取引所が調べた貿易数値から明らかになっている。しかし、米国政府に対して属国的忠誠を示している岸田政権は、日本に明らかな不利益が生じることを承知の上で、米国やEU諸国が決めた最新の嫌ロシア的政策に従い、「5月下旬にロシアからの石油輸入の一部禁輸を決めた」と、松野博一内閣官房長官は発表している。
しかしそのような動きは、ブーメランのように日本政府のエネルギー政策に跳ね返ってきた。日経新聞の6月6日の記事が警告していたのは、次の冬が厳冬になれば、日本は2011年の東日本大震災と津波以来最大のエネルギー危機を迎えるだろうということだった。原子力発電所の再稼働の進行具合は非常に遅れている。というのも原子力発電所が設置されている地方公共団体が、電力会社に対して必要な許可を出さないことが多いからだ。さらに閉鎖された火力発電所もいくつかある。ロシアに対する制裁が続く中、このような不透明な状況にロシアからの安定したエネルギー購入が不安定になっている状況も絡んできている。日経新聞の推測によれば、厳冬になった場合、日本国内の電力不足の合計は350万キロワットになるだろうとしている。そのうち150万キロワットは、火力発電所の再稼働でまかなえる可能性がある。しかし専門家の見積もりによれば、ロシアから日本への天然ガス輸出が止まることになれば、さらに400万キロワットのエネルギーがなくなることになるとのことだ。その結果最悪の場合、約110万世帯分の電力不足が生じる可能性があるとのことだ。
この点に関して、日本当局はすでに国民に対する節電の要求を開始している。6月7日の記者会見において萩生田光一経済産業大臣が語ったところによると、閣議において緊縮財政対策が承認され、経済を安定させるために大企業の電気使用制限などの措置を採ることも辞さないとのことだった。
少なくとも日本の企業の50.6%はウクライナとロシアの戦争が原因で様々な困難に直面していることを、帝京データバンク研究所が報告している。すでに商品価格を上げるか、今すぐにでも上げようとしている企業が4割以上あるとのことだ。5月下旬に朝日新聞が報じたところによると、ロシアに対する日本の制裁のせいで、程度の差はあれ1万5千社の日本企業が損害を出しており、すでに多くの会社は購入可能な類似品を探さざるをえなくなっているとのことだ。その原因は、ロシアに対する制裁と、供給網の崩壊だ。
北海道新聞の報道によると、日本がロシアの木材輸入を禁じたために、日本国内の家屋建設に影響がでており、建物建築率が低下しているとのことだ。ロシアからの木材がなければ、家屋価格はさらに高騰し、建築業界での混乱状態が拡散する原因になるだろう。
日本のデイリー新潮も、日本がロシアに対する制裁のせいで深刻な損害をうけていることを報じ、ロシアの報復措置が日本の泣き所をついていることを指摘している。それは漁業だ。1998年に日露で交わされた同意では、日本の漁民は200海里経済水域内だけではなく、南千島列島近くのロシア領海内での漁業も許されていた。となると今回の報復措置により、北海道の漁民は大きな損害をうけることになるだろう。「これはロシア政府に対して我が国が行った制裁の”報復“だ。我が国が米国に追従することしか考えてこなかったせいだ!」とデイリー新潮は報じている。さらにデイリー新潮の記事が触れていたのは、つい最近ロシアが日本の制裁に対して、日本を「非友好国」であるとし、平和条約締結にむけた話し合いの延期を断固決定したことだ。その話し合いの中には北方領土問題も含まれている。さらに現在、状況はさらに悪化している。デイリー新潮が強調しているのは、日本政府による制裁に対するロシアの反応は、「日出ずる国」や現在の日本の首相になんら良いことももたらさないという事実だ。まもなく行われる7月の日本の参議院選において、漁業問題は争点のひとつになり得るだろう。
さらに状況を悪化させているのは、安定しない物価に対する政策であり、日本の円安である。円安により、輸入品の価格が向上し、それに伴い生産費も高騰している。米国ドルに対する円価格はすでにここ20年での最安値を記録していることを、最新の貿易数値が示している。日本の国債額は2021年度(2022年3月31日時点)、9兆5千億ドルを超過し、日本は米国の最大の債務国になっており、米国への依存を強めることになっている。6月11日付けの毎日新聞の社説は、黒田東彦日銀総裁の最近の発言を取り上げている。同総裁は物価高騰に「耐え」なければならない状況が続けば、中央銀行としての日銀の金融政策が国民からの支持を失う可能性があると語っていた。
ウクライナでの紛争開始以来日本政府が制裁を課しているのは、507名のロシア国民、253名のルガンスク人民共和国とドネツク人民共和国両国民、201のロシア企業や組織、11の銀行だ。米国政府の影響力と指導の下、日本は繰り返しロシアへの制裁品目の項目を増やし続けており、6月17日からは、トラックやダンプトラックやブルドーザーなども制裁の対象項目に加えられた。それに先だち、日本は高い技術をもつ石油精製装置や、量子コンピューターや、量子コンピューターの内部装置や、電子顕微鏡や、原子間力顕微鏡や、3Dプリンターや、3Dプリンターに関する消耗品の輸出を禁じている。しかしこれらの制限は日本が輸出により得られる利益を妨げることにしかなっていない。というのもロシアは、国内産業を活性化させる政策をとり、世界各国から制裁の対象となった品目の国内生産を比較的早い段階で成し遂げたり、他の外国諸国市場から入手したりしているからだ。従って日本政府による制裁措置は、日本と日本国民を苦しめる政策になっており、岸田政権に対する批判の声が日に日に強くなっている。
多くの専門家たちが指摘しているとおり、「日本はここ数ヶ月間、明らかに国民からは評判の悪い制裁措置を激化させており、さらにロシアとの関係を悪化(その中には8名のロシア大使を入国禁止処分にしたことも含まれている)させている。その原因は、日本が長年米国の影響下に甘んじ、政策決定を行う際に自発的な決定力を行使できずにきたことにあることに疑問を挟む余地はない」のだ。さらに米国は、米国との貿易を増やし、ロシアとの経済関係が途絶えたことで日本が受ける損失の補償をする気などないのだから、現在の日本政府は、こんな近視眼的な政策を採ったことについて、国民に説明責任が生じるであろう。日本政府に対する国民からの非難の声が強まっている中でのことだ。
Vladimir Danilov, political observer, exclusively for the online magazine “New Eastern Outlook”.
In Japan, Criticism of the Government Grows Over the Losses Caused by Sanctions against Russia
(日本で政府に対する批判の声が高まっている理由は、ロシアに対する制裁による損失だ)
筆者:ウラジミール・ダニロフ(Vladimir Danilov)
出典:Journal Neo
2022年6月27日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年7月20日

現在日本政府は、明らかに不用意な政策をとっており、その政策が原因となり、国民はこれまでにない大きな不利益を被っている。そのような状況を背景として、岸田文雄内閣に対する批判の声は確実に大きくなっており、この1ヶ月で内閣支持率は4.6%も低下し、現在56.9%に落ち込んでいる。このような状況を特に明らかにしているのは共同通信社が行った調査による数字だ。日本の主流ニュース会社である共同通信社の記事によれば、回答者の64.1%は、物価上昇に対する日本政府の対応に批判的な回答を寄せているとのことだ。
現在日本が抱えている経済問題の多くの原因は、輸出や輸入に関して課している制裁からきている。日本政府は以前北朝鮮に対して行った制裁を考慮にいれて対応しているが、ロシアに対する制裁の負の効果は、それよりもずっと大きくなっている。日本の諸企業が現在直面しているのは、天然資源やエネルギー価格の高騰に関わる問題がますます困難になっていることであるが、その原因はウクライナ状況や、ロシアに対する様々な制裁から来ている。日本でのドバイ原油の価格はここ14年間での最高値である1バレル8万3100円(640米ドル)に達していることが、東京商品取引所が調べた貿易数値から明らかになっている。しかし、米国政府に対して属国的忠誠を示している岸田政権は、日本に明らかな不利益が生じることを承知の上で、米国やEU諸国が決めた最新の嫌ロシア的政策に従い、「5月下旬にロシアからの石油輸入の一部禁輸を決めた」と、松野博一内閣官房長官は発表している。
しかしそのような動きは、ブーメランのように日本政府のエネルギー政策に跳ね返ってきた。日経新聞の6月6日の記事が警告していたのは、次の冬が厳冬になれば、日本は2011年の東日本大震災と津波以来最大のエネルギー危機を迎えるだろうということだった。原子力発電所の再稼働の進行具合は非常に遅れている。というのも原子力発電所が設置されている地方公共団体が、電力会社に対して必要な許可を出さないことが多いからだ。さらに閉鎖された火力発電所もいくつかある。ロシアに対する制裁が続く中、このような不透明な状況にロシアからの安定したエネルギー購入が不安定になっている状況も絡んできている。日経新聞の推測によれば、厳冬になった場合、日本国内の電力不足の合計は350万キロワットになるだろうとしている。そのうち150万キロワットは、火力発電所の再稼働でまかなえる可能性がある。しかし専門家の見積もりによれば、ロシアから日本への天然ガス輸出が止まることになれば、さらに400万キロワットのエネルギーがなくなることになるとのことだ。その結果最悪の場合、約110万世帯分の電力不足が生じる可能性があるとのことだ。
この点に関して、日本当局はすでに国民に対する節電の要求を開始している。6月7日の記者会見において萩生田光一経済産業大臣が語ったところによると、閣議において緊縮財政対策が承認され、経済を安定させるために大企業の電気使用制限などの措置を採ることも辞さないとのことだった。
少なくとも日本の企業の50.6%はウクライナとロシアの戦争が原因で様々な困難に直面していることを、帝京データバンク研究所が報告している。すでに商品価格を上げるか、今すぐにでも上げようとしている企業が4割以上あるとのことだ。5月下旬に朝日新聞が報じたところによると、ロシアに対する日本の制裁のせいで、程度の差はあれ1万5千社の日本企業が損害を出しており、すでに多くの会社は購入可能な類似品を探さざるをえなくなっているとのことだ。その原因は、ロシアに対する制裁と、供給網の崩壊だ。
北海道新聞の報道によると、日本がロシアの木材輸入を禁じたために、日本国内の家屋建設に影響がでており、建物建築率が低下しているとのことだ。ロシアからの木材がなければ、家屋価格はさらに高騰し、建築業界での混乱状態が拡散する原因になるだろう。
日本のデイリー新潮も、日本がロシアに対する制裁のせいで深刻な損害をうけていることを報じ、ロシアの報復措置が日本の泣き所をついていることを指摘している。それは漁業だ。1998年に日露で交わされた同意では、日本の漁民は200海里経済水域内だけではなく、南千島列島近くのロシア領海内での漁業も許されていた。となると今回の報復措置により、北海道の漁民は大きな損害をうけることになるだろう。「これはロシア政府に対して我が国が行った制裁の”報復“だ。我が国が米国に追従することしか考えてこなかったせいだ!」とデイリー新潮は報じている。さらにデイリー新潮の記事が触れていたのは、つい最近ロシアが日本の制裁に対して、日本を「非友好国」であるとし、平和条約締結にむけた話し合いの延期を断固決定したことだ。その話し合いの中には北方領土問題も含まれている。さらに現在、状況はさらに悪化している。デイリー新潮が強調しているのは、日本政府による制裁に対するロシアの反応は、「日出ずる国」や現在の日本の首相になんら良いことももたらさないという事実だ。まもなく行われる7月の日本の参議院選において、漁業問題は争点のひとつになり得るだろう。
さらに状況を悪化させているのは、安定しない物価に対する政策であり、日本の円安である。円安により、輸入品の価格が向上し、それに伴い生産費も高騰している。米国ドルに対する円価格はすでにここ20年での最安値を記録していることを、最新の貿易数値が示している。日本の国債額は2021年度(2022年3月31日時点)、9兆5千億ドルを超過し、日本は米国の最大の債務国になっており、米国への依存を強めることになっている。6月11日付けの毎日新聞の社説は、黒田東彦日銀総裁の最近の発言を取り上げている。同総裁は物価高騰に「耐え」なければならない状況が続けば、中央銀行としての日銀の金融政策が国民からの支持を失う可能性があると語っていた。
ウクライナでの紛争開始以来日本政府が制裁を課しているのは、507名のロシア国民、253名のルガンスク人民共和国とドネツク人民共和国両国民、201のロシア企業や組織、11の銀行だ。米国政府の影響力と指導の下、日本は繰り返しロシアへの制裁品目の項目を増やし続けており、6月17日からは、トラックやダンプトラックやブルドーザーなども制裁の対象項目に加えられた。それに先だち、日本は高い技術をもつ石油精製装置や、量子コンピューターや、量子コンピューターの内部装置や、電子顕微鏡や、原子間力顕微鏡や、3Dプリンターや、3Dプリンターに関する消耗品の輸出を禁じている。しかしこれらの制限は日本が輸出により得られる利益を妨げることにしかなっていない。というのもロシアは、国内産業を活性化させる政策をとり、世界各国から制裁の対象となった品目の国内生産を比較的早い段階で成し遂げたり、他の外国諸国市場から入手したりしているからだ。従って日本政府による制裁措置は、日本と日本国民を苦しめる政策になっており、岸田政権に対する批判の声が日に日に強くなっている。
多くの専門家たちが指摘しているとおり、「日本はここ数ヶ月間、明らかに国民からは評判の悪い制裁措置を激化させており、さらにロシアとの関係を悪化(その中には8名のロシア大使を入国禁止処分にしたことも含まれている)させている。その原因は、日本が長年米国の影響下に甘んじ、政策決定を行う際に自発的な決定力を行使できずにきたことにあることに疑問を挟む余地はない」のだ。さらに米国は、米国との貿易を増やし、ロシアとの経済関係が途絶えたことで日本が受ける損失の補償をする気などないのだから、現在の日本政府は、こんな近視眼的な政策を採ったことについて、国民に説明責任が生じるであろう。日本政府に対する国民からの非難の声が強まっている中でのことだ。
Vladimir Danilov, political observer, exclusively for the online magazine “New Eastern Outlook”.